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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1180374
審判番号 不服2004-3527  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-23 
確定日 2008-07-17 
事件の表示 平成 8年特許願第531180号「プロピオン酸フルチカゾン用計量投与用吸入器」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年10月17日国際公開、WO96/32151号、平成11年 3月26日国内公表、特表平11-503352号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年4月10日の出願(パリ条約による優先権主張1995年4月14日、米国)であって、平成15年11月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年2月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成16年3月24日付けで誤記の訂正を目的とする手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年3月24日付の手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「一以上のフルオロカーボンポリマーを一以上の非フルオロカーボンポリマーと組み合わせて含んでなるポリマーブレンドで内面の一部または全部が被覆された計量投与用吸入器であって、プロピオン酸フルチカゾンまたはその生理学的に許容される溶媒和物と、フルオロカーボン噴射剤と、場合によっては一以上の他の薬理学的に活性な薬剤または一以上の賦形剤とを組み合わせて含む吸入薬剤配合物を投与するための計量投与用吸入器。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-76380号公報(以下、引用例1という。)には、図面とともに、次の記載がある。

(a)「薬学的に活性なエーロゾルが所定の量で投与されるべきでありかつそれが、薬学的に活性な物質の他に少なくとも1種の噴射ガスを含むところの懸濁液の形態で容器中に供給されているエーロゾル容器であって、該エーロゾル容器は計量チャンバとバルブ軸よりなる計量バルブを有し、該計量チャンバは容器の内部と連通しており、そしてバルブ軸の第1の位置において所定量のエーロゾルで充満されかつバルブ軸の第2の位置において計量チャンバ内に供用された量のエーロゾルを放出するようになっており、噴射ガスは、フルオロクロロハイドロカーボンを含まない代替噴射ガス、好ましくはフルオロヒドロカーボンのみを含み、そして適当ならば、また補助溶媒および/もしくは界面活性剤をも含む噴射ガスであり、そして該容器の内壁はプラスチック塗料により被覆されている、エーロゾル容器。」(請求項1)

(b)【従来の技術】エーロゾルは今日薬学的に活性な物質の普通の投薬法である。多くのそれらエーロゾルは所定の(計量した)量で投与される。種々の理由(例えば、安定性)のために、ある種の薬学的に活性な物質は懸濁液の形態で提供される、即ち薬学的に活性な物質はエーロゾル容器内において、通常圧力下にて、液体中に小さな固体粒子がある形態で存在し、該液体はまた少なくとも噴射ガスよりなる。薬学的に活性な物質のこの種の配合は多くの物質、また特にはコルチコステロイドに適していることが証明されている。
【0003】所定量の薬学的に活性な物質を投与するために、普通のエーロゾル容器は計量チャンバを有する計量バルブを備えている。バルブの第1の位置において、計量チャンバは容器の内部に連通しており、そしてその位置で所定量の懸濁液が充満すようになっている。計量バルブの第2の位置において、計量チャンバ内に供用された量は液体/固体混合物が膨張するので、その後エーロゾルの形態において放出される。その方法において、エーロゾルは例えば経口的にもしくは鼻から使用者に投与されうる。(段落【0002】?【0003】)

(c)「特には、プラスチック塗膜に使用される都合の良い材料は、例えば、幅広くテフロンとして知られている、ポリテトラフルオロエチレン、およびまたペルフルオロエチレンプロピレンである。」(第3頁左欄28行-32行)

(d)「噴射ガスは炭化フッ素(好ましくは、例えばテトラフルオロエタンもしくはヘプタフルオロプロパン)を含み、従ってオゾン層には有害ではないので、容器1の内壁はプラスチック塗膜3により被覆されている。プラスチック塗膜3は好ましくは、広くテフロンの名前でも知られているポリテトラフルオロエチレンであり、またはペルフルオロエチレンプロピレンであり、または層は特定のプラスチックをベースとして製造されそして施用される。該材料の使用により容器1の内壁上に薬学的に活性な物質の大きな付着を防げる。容器の壁と液体もしくは懸濁液の間の懸濁および電解の作用もまた除かれる。」(段落【0017】)

(e)「投与される薬学的に活性な物質は、例えば有効ぜんそく鎮静剤もしくは製剤混合物、特にはコルチコステロイドもしくは抗炎症ステロイド群よりの製剤もしくは製剤混合物である。」(第4頁右欄25行-28行)

そして、上記(b)の記載から、エーロゾル容器は、計量投与用のものであり、また、エーロゾルは吸入されるものである点が認められる。また、上記(e)の記載から、投与される薬剤は、有効ぜんそく鎮静剤であって、コルチコステロイドもしくは抗炎症ステロイド群よりの製剤すなわち、いわゆるステロイド製剤である点が認められる。

これらの記載及び図面によれば、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる(以下「引用発明1」という)。

「ポリテトラフルオロエチレンで内面の一部または全部が被覆されたエーロゾル容器であって、ステロイド製剤である有効ぜんそく鎮静剤と、炭化フッ素を含む噴射剤とを含むエーロゾルを投与するためのエーロゾル容器。」

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特表平7-502033号公報(以下、引用例2という。)には、次の記載がある。

(f)「本発明は、吸入による薬剤投与に使用されるエアゾール製剤、特にサルメテロール、サルブタモール、プロピオン酸フルチカゾン、二プロピオン酸ベクロメタゾン並びにそれらの生理学的に許容される塩および溶媒化合物からなる群から選択される粒状薬剤と、フルオロカーボンまた水素含有クロロフルオロカーボン噴射剤とを含んでなる医薬エアゾール製剤であって、実質的に界面活性剤を含まない医薬エアゾール製剤に関する。上記の医薬エアゾール製剤の有効量を吸入投与することを含んでなる呼吸器系疾患の治療方法も記載される。」(要約)

(g)「本発明は、吸入による薬剤投与に用いられるエアゾール製剤に関する。」(第3頁左上欄3-4行)

(h)「特に好ましいエアゾール製剤は、サルブタモール(例えば、遊離塩基または硫酸塩として)またはサルメテロール(例えば、キンナホエート塩として)を、ベクロメタゾンエステル(例えば、二プロピオン酸エステル)等の抗炎症ステロイドまたはフルチカゾンエステル(例えば、プロピオン酸エステル)等の気管支拡張薬またはクロモグリク酸塩(例えば、ナトリウム塩として)等の抗アレルギー薬と組み合わせて含有している。サルメテロールとプロピオン酸フルチカゾン若しくは二プロピオン酸ベクロメタゾンとの組み合わせまたはサルブタモールとプロピオン酸フルチカゾン若しくは二プロピオン酸ベクロメタゾンとの組み合わせが好ましい。とりわけ、サルメテロールキシナホエートとプロピオン酸フルチカゾンとの組み合わせまたはサルブタモールと二プロピオン酸ベクロメタゾンとの組み合わせが好ましい。」(第5頁左上欄5行-19行)

上記の記載によれば、引用例2には、次のような発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「プロピオン酸フルチカゾンを含む、呼吸器系疾患の治療のための吸入による薬剤投与に用いられるエアゾール製剤。」

4.対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「ポリテトラフルオロエチレン」は、本願発明の「一以上のフルオロカーボンポリマー」に相当し、以下同様に、「エーロゾル容器」は「計量投与用吸入器」に、「炭化フッ素を含む噴射剤」は「フルオロカーボン噴射剤」に、「エーロゾル」は「吸入薬剤配合物」に、それぞれ相当する。
また、本願発明の「プロピオン酸フルチカゾン」は、ぜんそく用鎮静剤に用いられるステロイド製剤の一種であるので、引用例1の「ステロイド製剤である有効ぜんそく鎮静剤」と共通する。
そして、本願発明における「またはその生理学的に許容される溶媒和物」、および「場合によっては一以上の他の薬理学的に活性な薬剤または一以上の賦形剤とを組み合わせて含む吸入薬剤配合物」との発明特定事項は、これらを含まない態様を包含するものである。

したがって、両者は、
「一以上のフルオロカーボンポリマーで内面の一部または全部が被覆された計量投与用吸入器であって、ステロイド製剤であるぜんそく用鎮静剤またはその生理学的に許容される溶媒和物と、フルオロカーボン噴射剤と、場合によっては一以上の他の薬理学的に活性な薬剤または一以上の賦形剤とを組み合わせて含む吸入薬剤配合物を投与するための計量投与用吸入器。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]:本願発明は、プロピオン酸フルチカゾンを投与するためのものであるに対し、引用発明1は、ステロイド製剤である有効ぜんそく鎮静剤を投与するためのものではあるものの、ステロイド製剤としてそのような特定がされていない点。

[相違点2]:本願発明は、計量投与用吸入器の内面を、一以上のフルオロカーボンポリマーを一以上の非フルオロカーボンポリマーと組み合わせて含んでなるポリマーブレンドで被覆しているのに対し、引用発明1は、一以上のフルオロカーボンポリマーのみで被覆している点。

5.判断
上記相違点について検討する。

[相違点1]について
引用例2には、「プロピオン酸フルチカゾンを含む、呼吸器系疾患の治療のための吸入による薬剤投与に用いられるエアゾール製剤。」という引用発明2が記載されている。そして、プロピオン酸フルチカゾンが、ステロイド製剤の一種で、ぜんそく鎮静剤であることは、当業者に広く知られている事項であるから、引用発明1のステロイド製剤であるぜんそく用鎮静剤として、引用発明2のプロピオン酸フルチカゾンを採用し、本願発明の相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであり、これを妨げる特段の事情も見いだせない。

[相違点2]について
一般に、一以上のフルオロカーボンポリマーを一以上の非フルオロカーボンポリマーと組み合わせて含んでなるポリマーブレンドで基材を被覆することは、例えば、特開平2-89633号公報、特開平2-26661号公報等にも示されるように従来周知であるから、引用発明1に当該周知技術を採用して、本願発明の相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が必要に応じてなし得た設計的事項にすぎない。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明1、引用発明2、及び周知技術から当業者が予測できた範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用発明1、引用発明2、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-28 
結審通知日 2006-09-29 
審決日 2006-10-11 
出願番号 特願平8-531180
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北村 龍平石川 太郎寺澤 忠司  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 稲村 正義
一色 貞好
発明の名称 プロピオン酸フルチカゾン用計量投与用吸入器  
代理人 紺野 昭男  
代理人 中村 行孝  
代理人 吉武 賢次  
代理人 佐藤 一雄  
代理人 横田 修孝  

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