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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1180413
審判番号 不服2005-25164  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-27 
確定日 2008-07-02 
事件の表示 特願2001-105891「遊技台」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月15日出願公開、特開2002-301197〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年4月4日に出願されたものであって、平成17年11月29日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年12月27日付けで本件審判請求がされるとともに、平成18年1月25日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成18年1月25日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正内容と補正目的
本件補正は、特許請求の範囲の補正を含んでおり、【請求項2】についていうと、補正前の「遊技媒体が投入され、遊技者に通知する絵柄組みわせの変動を行うための操作により、前記絵柄組みわせの変動を行い、払い出しが必要な絵柄組み合わせが停止した場合には、所定量の前記遊技媒体を遊技者に払い出す遊技台であって」との記載を「外周面に複数種類の絵柄が施された複数のリールを備え、遊技媒体が投入され、前記複数のリールにより遊技者に通知する絵柄組み合わせの変動を行うための操作により、前記複数のリールを回転させることで前記絵柄組み合わせの変動を行い、前記複数のリールの停止により、払い出しが必要な絵柄組み合わせが停止した場合には、所定量の前記遊技媒体を遊技者に払い出す遊技台であって」と補正するとともに、「制御手段」について「経過時間に応じた演出が、抽選により定められる時間の間隔で繰り返し実行されるよう、液晶表示装置を制御する」との限定を付加するものであって、これらは特許請求の範囲の減縮(平成18年改正前特許法17条の第4項2号該当)に該当するものと認める。
そこで、本件補正後の請求項2に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか検討する。

2.補正発明の認定
補正発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項2】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「外周面に複数種類の絵柄が施された複数のリールを備え、遊技媒体が投入され、前記複数のリールにより遊技者に通知する絵柄組み合わせの変動を行うための操作により、前記複数のリールを回転させることで前記絵柄組み合わせの変動を行い、前記複数のリールの停止により、払い出しが必要な絵柄組み合わせが停止した場合には、所定量の前記遊技媒体を遊技者に払い出す遊技台であって、
遊技者に対して、演出を行う液晶表示装置と、
遊技者からの操作を受け付けることにより遊技開始を検知する手段と、
遊技開始を検知する以前の非遊技状態において、演出が行われるように液晶表示装置を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記非遊技状態に移行してからの経過時間に応じて、演出が変化するように液晶表示装置を制御し、かつ、前記経過時間に応じた演出が、抽選により定められる時間の間隔で繰り返し実行されるよう、液晶表示装置を制御することを特徴とする遊技台。」

3.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-19302号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下のア)?ス)の記載がある。
ア)「周面に複数の図柄が表された複数のリールを備え、この複数のリールを始動させて遊技を開始した後、複数のリールを停止させた時に、複数のリールの周面の一部が視認可能なリール表示窓内に表示された図柄配列により入賞または非入賞が決定されるスロットマシンにおいて、遊技が行われていない非遊技状態を検出する非遊技状態検出手段と、
この非遊技状態検出手段によって非遊技状態が所定時間に渡って検出されたことに応答して、上記複数のリールを動作させて、上記リール表示窓内に予め定める図柄配列を表示させるリール制御手段とを含むことを特徴とするスロットマシン。」(【請求項1】)
イ)「このスロットマシンは、周面に複数の図柄がそれぞれ表示された3個のリール11a,11b,11cを備えており、メダルを投入した後、各リール11a,11b,11cを回転および停止させることにより遊技を行うようになっている。機体の前面には、遊技に関する種々の情報が表示される表示部1と、遊技に際して操作される操作部2とが設けられている。操作部2は、スロットマシンの前面のほぼ中央部に配置されており、この操作部2の上方に、表示部1が配置されている。(段落【0017】)
ウ)「表示部1には、リール表示窓12、有効ラインランプ13a,13b,13c,13d,13e、メダル貯留枚数表示器14、メダル払出枚数表示器15およびゲームオーバランプ16などが配設されている。リール表示窓12内には、3個のリール11a,11b,11cの周面の一部が視認可能に配置されており、リール11a,11b,11cの回転中は、その回転状態をリール表示窓12から視認できるようになっている。」(段落【0018】)
エ)「始動レバー25が操作されると、リール11a,11b,11cが一斉に回転開始される。その後、停止釦スイッチ26a,26b,26cが押されると、回転中のリール11a,11b,11cが、押された停止釦スイッチに対応するリールから順に停止されていく。そして、上記したように、3つのリール11a,11b,11cがすべて停止された時点で、有効ライン上に整列した図柄の組み合わせが予め定める入賞にかかるものであれば、入賞の種類ごとに定められた所定の枚数のメダルが付与されて、その枚数がメダル払出枚数表示器15に表示されるとともに、その枚数分だけメダル貯留枚数表示器14の表示が加算される。」(段落【0024】)
オ)「遊技者による遊技が行われていない状態(非遊技状態)で、リール表示窓12内に機種特有の情報を表す図柄配列を表示させることにより、このスロットマシンに遊技客の注目を集め、このスロットマシンでの遊技に対する興味心を抱かせるようになっている。」(段落【0026】)
カ)CPU6は、ゲームオーバであると判断すると、ゲームオーバランプ16を点灯させるとともに(ステップS2)、点灯中の有効ラインランプ13a,13b,13c,13d,13eを消灯させる(ステップS3)。次に、メダル投入センサ28からの出力信号を取り込んで、メダル投入口21からメダルが投入されたか否かを判断する(ステップS4)。メダルが投入された場合には、CPU6は、遊技者によって新たなゲームが開始されると判断して、ゲームに関する処理(ゲーム制御)を実行する。(段落【0035】)
キ)CPU6は、ステップ4でメダルが投入されていないと判断した場合には、メダルが機内に預けられているか否かを判断する(ステップS5)。具体的には、メダル枚数カウンタ81のカウント値を参照して、このカウント値が「0」であるか否かを調べる。そして、カウント値が「0」でない場合には、遊技者のメダルが機内に預けられており、その遊技者によって引き続きゲームが行われると判断して、ゲームに関する処理を実行する。(段落【0036】)
ク)一方、メダル枚数カウンタ81のカウント値が「0」である場合には、CPU6は、遊技者による遊技が行われていない非遊技状態であると判断し、計時フラグに「1」がセットされているか否かを判断する(ステップS6)。計時フラグは、計時カウンタによるカウントが行われたか否かを表すフラグであり、この処理の開始時にリセットされて「0」になっている。したがって、このとき、ステップS6で計時フラグが「1」か否かの判断は否定されて、ステップS7に進み、計時カウンタ83のカウント動作が開始される。(段落【0037】)
ケ)計時カウンタ83は、メダルが投入されておらず、かつ、メダルが機内に預けられていない非遊技状態であると判断されてからの経過時間を計測する。計時カウンタ83による計測時間が所定時間(たとえば3分間)に達するまでは、ステップS8でタイムアップか否かの判断が否定されてステップS4に戻り、上述のステップS4以降の処理が繰り返される。そして、非遊技状態であると判断されてから上記所定時間が経過すると(ステップS8でYES)、計時フラグに「1」がセットされる(ステップS9)。(段落【0038】)
コ)次いで、CPU6は、原点センサ18a,18b,18cからオン信号が出力されたか否かを判断する(ステップS12)。原点センサ18a,18b,18cからオン信号が出力されるまでは、CPU6は、ステップS12の判断を否定して図3のステップS4に戻り、上述のステップS4以降の処理を繰り返す。このとき、計時フラグには「1」がセットされているので、CPU6は、ステップS7?S9の処理をスキップする。また、ステップS4?S12の処理を繰り返すうちに、遊技者によってメダルが投入された場合には、リール11a,11b,11cの回転を直ちに停止させて、ゲームに関する処理を実行する。」(段落【0040】)
サ)「この図5の図柄配列が表示された状態は、メダル投入口21からメダルが投入された後、始動レバー25が操作されてリール11a,11b,11cが回転されることにより解除される。以上のようにこの実施形態によれば、遊技者による遊技が行われていない非遊技状態が所定時間継続したことに応答して、リール11a,11b,11cを回転させて、リール表示窓12に図5に示す図柄配列を表示させる。」(段落【0045】)
シ)「この発明があらいぐまのキャラクタをイメージして作製されたスロットマシンに適用される場合には、非遊技状態が所定時間継続したことに応答して、リール表示窓12内に図6または図7に示す図柄配列が表示されるとよい。この図6および図7に示す図柄配列中には、スロットマシンのイメージを表すあらいぐまの図柄と、スロットマシンの製造業者を表す図柄とが含まれている。したがって、このスロットマシンに遊技客の注目を集めることができ、また、図6または図7に示す図柄配列を見た遊技客に、このスロットマシンのイメージを強く印象づけることができる。その結果、このスロットマシンでの遊技に対する興味心を奮起させることができる。」(段落【0050】)
ス)「上述の実施形態では、非遊技状態が所定時間継続した時点で図柄配列が変更された後、メダル投入口21からメダルが投入され、始動レバー25が操作されてリール11a,11b,11cが回転されるまで、その変更後の図柄配列が表示されるとしている。しかしながら、非遊技状態が所定時間継続した時点で図柄配列が一旦変更された後、さらに予め定める時間が経過した時点で、異なる図柄配列に変更されてもよい。たとえば、非遊技状態が所定時間継続した時点で、図6または図7に示す図柄配列が表示された後、さらに予め定める時間(たとえば10分間)が経過した時点で、図7または図6に示す図柄配列が表示されてもよい。また、その後さらに上記予め定める時間が経過した時点で、図8の図柄配列が表示されてもよい。」(段落【0052】)

4.引用例1記載の発明の認定
以上の記載事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用例1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「周面に複数の図柄が表された複数のリールを備え、
メダルを投入した後、始動レバー25が操作されると、リール11a,11b,11cが一斉に回転開始され、3つのリール11a,11b,11cがすべて停止された時点で、有効ライン上に整列した図柄の組み合わせが予め定める入賞にかかるものであれば、入賞の種類ごとに定められた所定の枚数のメダルが付与され、
機体の前面には、遊技に関する種々の情報が表示される表示部1が設けられ、表示部1にはリール表示窓12が配設され、リール表示窓12内には、3個のリール11a,11b,11cの周面の一部が視認可能に配置されており、
メダルが投入された場合には、CPU6は、遊技者によって新たなゲームが開始されると判断し、非遊技状態が所定時間に渡って検出されたことに応答して、上記複数のリールを動作させて、上記リール表示窓内に予め定める図柄配列を表示させるリール制御手段を含み、
非遊技状態が所定時間継続した時点で図柄配列が一旦変更された後、さらに予め定める時間が経過した時点で、異なる図柄配列に変更される
スロットマシン。」

5.補正発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1の「メダル」は補正発明の「遊技媒体」に相当する。記載シ)、図6及び図7の記載によれば、引用発明1における「図柄」は、「絵柄」を含むものといえる。
スロットマシンにおいて、入賞とは一般に、有効ラインに払い出しのある図柄が並ぶことを意味するため、引用発明1の「3つのリール11a,11b,11cがすべて停止された時点で、有効ライン上に整列した図柄の組み合わせが予め定める入賞にかかるものであれば」という事項は、補正発明の「払い出しが必要な絵柄組み合わせが停止した場合には」に対応する。また、記載エ)によれば、引用発明1において「所定の枚数のメダルが付与され」るとは、物理的なメダルの払い出しが行われるということではないが、スロットマシンにおいて、一般に「払い出す」とは、物理的なものに限らず貯留機能を備えてクレジット付与することを含め広く入賞価値を与えるという意味で用いられるため、補正発明における「所定量の遊技媒体を遊技者に払い出す」との事項と実質的に相違はなく、以下では一致点として扱う。
引用発明1は、「リール表示窓12」内に「3個のリール11a,11b,11c」の周面の一部を視認可能に配置し、「リール表示窓12内に機種特有の情報を表す図柄配列を表示させること」により遊技客の注目、興味心を抱かせるのであるから、「リール表示窓」と「リール」により「演出を行う」ということができる。
引用発明1は、メダルの投入という遊技者からの操作を受け付けることにより「新たなゲームが開始されると判断」(遊技開始を検知)するのであるから、引用発明1は、補正発明の「遊技者からの操作を受け付けることにより遊技開始を検知する手段」を実質的に備えている。
引用発明1における「リール制御手段」は、「非遊技状体が所定時間に渡って検出されたことに応答して、複数のリールを動作させて、リール表示窓内に予め定める図柄配列を表示させる」ものであるから、補正発明における「演出が行われるように表示装置を制御する制御手段」に対応する。
そして、引用発明1は「非遊技状態が所定時間継続した時点で図柄配置が一端変更された後、さらに予め定める時間が経過した時点で、異なる図柄配列に変更され」るため、補正発明の「非遊技状態に移行してからの経過時間に応じて、演出が変化する」ことと相違がない。
したがって、補正発明と引用発明1とは、
「外周面に複数種類の絵柄が施された複数のリールを備え、遊技媒体が投入され、前記複数のリールにより遊技者に通知する絵柄組み合わせの変動を行うための操作により、前記複数のリールを回転させることで前記絵柄組み合わせの変動を行い、前記複数のリールの停止により、払い出しが必要な絵柄組み合わせが停止した場合には、所定量の前記遊技媒体を遊技者に払い出す遊技台であって、
遊技者に対して、演出を行うことが可能であり、
遊技者からの操作を受け付けることにより遊技開始を検知する手段と、
遊技開始を検知する以前の非遊技状態において、演出が行われるように制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記非遊技状態に移行してからの経過時間に応じて、演出が変化するように制御する遊技台。」である点で一致し、以下の各点で相違する。

〈相違点1〉遊技者に対して、補正発明は「液晶表示装置」により演出を行うのに対し、引用発明1は「リール表示窓」と「リール」により演出を行う点。

〈相違点2〉制御手段に関し、補正発明が「経過時間に応じた演出が、抽選により定められる時間の間隔で繰り返し実行されるよう、液晶表示装置を制御する」のに対し、引用発明1ではそのような構成を有していない点。

6.相違点の判断及び補正発明の独立特許要件の判断
(1)相違点1について
スロットマシンにおいて、複数のリールとは別に、遊技者に対して演出を行う液晶表示装置を設ける点は、例えば、特開2000-325543号公報(段落【0036】)、特開平11-9761号公報(段落【0051】)に示すとおり従来より周知である。引用発明1に当該周知例を適用し、引用発明1の「リール表示窓」と「リール」による演出に換えて従来周知の「液晶表示装置」を採用し、相違点1に係る補正発明の構成とすることは当業者にとって想到容易である。

(2)相違点2について
当審で引用する特開平10-78744号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、以下のセ)?チ)の記載がある。
セ)「本発明は、コンピュータおよびワードプロセッサにおいて使用するアプリケーションに組み込まれた目的達成支援システムである。アプリケーションの動作中に、画像表示手段および音発生手段には、目的を達成するために支援する予め作成されていた画像および/または音が瞬間的に、かつ繰り返し所定の間隔で発生する。画像および/または音の表示または発生時間は、アプリケーションのタスクに悪影響を与えることのない短時間であり、画像および/または音の繰り返し間隔は、任意であり一定間隔、ランダムの間隔、あるいはコンピュータやワードプロセッサで選択できるようにすることができる。前記画像および/または音は、目的を達成するために支援するものであり、イメージ、パターン、写真、絵、背景、背景色、文字、模様、音声、音、音楽等の少なくとも一つが組み合わさって作成される。」(段落【0020】)
ソ)「本発明の目的達成支援システムは、画像および/または音の表示または発生順序、画像および/または音の繰り返し時間、画像および/または音の表示または発生時間等が規則正しいと、ユーザが意識してしまい、知らぬ間に脳裏に刻み込むことが困難になる。そこで、本発明の目的達成支援システムは、複数の画像および/または音の選択、画像および/または音の繰り返し時間、画像および/または音の表示または発生時間等をランダムにしている。」(段落【0023】)
タ)「アプリケーションの起動に伴い、乱数発生器21が稼働する(ステップ313)。乱数発生器21は、その稼働によりn番目の乱数が発生するようになっている(ステップ314)。・・乱数発生器21がn番目の乱数を発生した後、制御手段11は、n+1番目の乱数を選択する(ステップ315)。制御手段11は、上記n+1番目の乱数に基づく時間を設定する(ステップ316)。この設定時間は、表示された画像1とその次に表示される画像2との間隔になる。・・制御手段11は、画像表示手段25に画像1の表示が終了したと判断した場合、ステップ316によって設定された時間だけ次の乱数を発生させないようにする(ステップ323)。制御手段11は、ステップ316によって設定された時間が終了したか否かを調べる(ステップ324)。制御手段11は、設定された時間が終了していないと判断した場合、終了するまで調べ続ける。制御手段11は、前記設定時間が終了したと判断した場合、乱数発生器21に次の乱数を発生させる(ステップ314)。・・本実施例は、複数の異なる画像が乱数によって、異なる表示時間、あるいは異なる表示間隔で表示され、ユーザが全く予測できない状態であるため、知らずに画像の内容が体に入り込むことになる。」(段落【0045】?段落【0049】)
チ)「禁煙を達成する支援ソフトウエアである場合、「私は、禁煙できる」という表示を、ランダムにそして、短い時間だけ繰り返して行う。・・図10(ロ)は文字列の代わりに、ウインドウに禁煙の画像を表示する例である。」(段落【0060】)
記載セ),チ)によれば、引用例2は、同一の画像をランダムに繰り返し表示させるものであって、更に記載ソ),タ)によれば、引用例2は、画像の発生時間を不規則にすべく、設定時間(表示された画像と次の画像との間隔)を「乱数によって」異ならせることにより「画像の表示の発生時間等をランダム」にするのであるから、補正発明における「抽選により定められる時間の間隔で繰り返し実行されるよう」表示を制御する制御手段が実質的に備えられていると言える。
引用発明1において、ある一定時間は同一の図柄を表示させているところ、この間の表示を継続して行うか、あるいは、繰り返し実行するかは、表示装置の具体的態様や視認者の興味心の奮起具合を考慮し、当業者が適宜選択し得ることである。ここで、スロットマシンにおいて、液晶表示装置により演出を行うという相違点1に係る補正発明の構成を採用した場合に、引用例2に記載の同一の画像表示を繰り返し実行させる点を引用発明1に適用すること、及び、画像の発生時間を不規則にして突如として表示を開始させて一層興味心を奮起させるべく、同引用例2に記載の繰り返しを「抽選により定められる時間の間隔で」実行する点を合わせて採用することに格別の困難性はない。よって、相違点2に係る補正発明の構成は、引用発明1、引用例2及び周知例に基づいて当業者であれば容易に想到し得るものである。

(3)補正発明の独立特許要件の判断
以上述べたとおり、相違点1,2に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これらの構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は引用発明1、引用例2及び周知例に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

[補正の却下の決定のむすび]
補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反しており、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年5月17日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項2】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「遊技媒体が投入され、遊技者に通知する絵柄組み合わせの変動を行うための操作により、前記絵柄組み合わせの変動を行い、払い出しが必要な絵柄組み合わせが停止した場合には、所定量の前記遊技媒体を遊技者に払い出す遊技台であって、
遊技者に対して、演出を行う液晶表示装置と、
遊技者からの操作を受け付けることにより遊技開始を検知する手段と、
遊技開始を検知する以前の非遊技状態において、演出が行われるように液晶表示装置を制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記非遊技状態に移行してからの経過時間に応じて、演出が変化するように液晶表示装置を制御することを特徴とする遊技台。」
なお、【請求項2】には「絵柄組みわせ」とあるが、その余の特許請求の範囲の記載あるいは発明の詳細な説明の記載より、これが「絵柄組み合わせ」の誤記であることは明らかであるので、上記のように認定した。

2.本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
「第2[理由]5」で述べたことを踏まえると、本願発明と引用発明1は、
「遊技媒体が投入され、遊技者に通知する絵柄組み合わせの変動を行うための操作により、前記絵柄組み合わせの変動を行い、払い出しが必要な絵柄組み合わせが停止した場合には、所定量の前記遊技媒体を遊技者に払い出す遊技台であって、
遊技者に対して、演出を行うことが可能であり、
遊技者からの操作を受け付けることにより遊技開始を検知する手段と、
遊技開始を検知する以前の非遊技状態において、演出が行われるように制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記非遊技状態に移行してからの経過時間に応じて、演出が変化するように制御することを特徴とする遊技台。」である点で一致し、以下の点で相違する。

〈相違点1’〉遊技者に対して、本願発明は「液晶表示装置」により演出を行うのに対し、引用発明1は「リール表示窓」と「リール」により演出を行う点。

3.本願発明の進歩性の判断
上記相違点1’について検討するに、スロットマシンにおいて、複数のリールとは別に、遊技者に対して演出を行う液晶表示装置を設ける点は、「第2[理由]6(1)」にて示したとおり従来より周知である。よって、引用発明1に当該周知例を適用し、引用発明1の「リール表示窓」と「リール」による演出に換えて従来周知の「液晶表示装置」を採用し、相違点1’に係る本願発明の構成とすることは当業者にとって想到容易である。そしてこの構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1及び上記周知例に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができないから、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-07 
結審通知日 2008-05-09 
審決日 2008-05-21 
出願番号 特願2001-105891(P2001-105891)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 仁之一宮 誠  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 河本 明彦
三原 裕三
発明の名称 遊技台  
代理人 大塚 康弘  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康徳  
代理人 木村 秀二  

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