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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1180642
審判番号 不服2005-18952  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-30 
確定日 2008-07-07 
事件の表示 特願2003-323429「遊技機及び遊技機システム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月 7日出願公開、特開2005- 87400〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成15年9月16日の出願であって、平成17年8月30日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年9月30日付けで本件審判請求がされるとともに、同日付けで特許請求の範囲及び明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。
本件補正は、特許請求の範囲に限っていうと、補正前請求項1,5における「通常のアニメ映像から実写映像」を「通常の表示であるアニメ映像から特別の表示である実写映像」と補正し、補正前請求項2,6における「表示レベルを向上させた特別の演出表示」を「通常の表示から表示レベルを向上させた特別の演出表示」と補正するものであり、「通常」及び「特別」との用語が、「前記記録媒体に記録された記録情報のうちの所定の項目が予め定めた基準値を超える」かどうかにより使い分けられることを明確にしたものであるから、明りようでない記載の釈明(平成18年改正前特許法17条の2第4項4号該当)を目的とするものと認める。
また、本件補正が最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたことも認める。
したがって、本件補正を却下することはできず、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「遊技機における遊技を行った内容を記録した記録媒体の記録情報を読み取る媒体記録情報読み取り手段と接続され、かつ遊技と関連した補助表示を行う遊技補助表示手段を備えた遊技機であって、
前記遊技補助表示手段は、前記記録媒体に記録されている記録情報の一部又は全部の情報に対応する複数の表示内容を記憶する表示内容記憶手段と、前記媒体記録情報読み取り手段によって読み取られた媒体記録情報に基づいて、前記表示内容記憶手段に記憶された前記複数の表示内容のうちのいずれかを決定する表示内容決定手段と、を含み、
前記表示内容決定手段により決定された表示内容を表示させることによって、前記補助表示が行われ、
前記記録媒体に記録された記録情報のうちの所定の項目が予め定めた基準値を超えることを条件として、演出画像中に登場する所定キャラクタの表示態様を通常の表示であるアニメ映像から特別の表示である実写映像に変化させた演出表示が前記補助表示として行われることを特徴とする遊技機。」

第2 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-52130号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?サの記載が図示とともにある。
ア.「遊技者が遊技を進行するうえで入力操作する入力操作手段と、
遊技中に、遊技者の前記入力操作手段の入力操作に基づいて発現する所定の遊技実績を、更新しつつ記憶する遊技実績記憶手段と、
演出内容を定めた複数種類の演出パターンをそれぞれ記憶した複数の演出データテーブルと、
前記遊技実績記憶手段に記憶された遊技実績に基づいて、いずれかの演出データテーブルを選択する演出データテーブル選択手段と、
前記演出データテーブル選択手段により選択された前記演出データテーブルから、演出パターンを抽選によって選択する演出パターン選択手段と、
前記演出パターン選択手段により選択された演出パターンに従い、演出の出力を制御する演出出力制御手段とを備えることを特徴とするスロットマシン。」(【請求項1】)
イ.「請求項1又は請求項2に記載のスロットマシンにおいて、
前記遊技実績記憶手段に記憶された遊技実績のうち、特定の遊技実績値が所定値を超えたときに、演出データテーブルを変更するか否かを決定する演出データテーブル変更決定手段を備えることを特徴とするスロットマシン。」(【請求項3】)
ウ.「本発明が解決しようとする課題は、スロットマシンのそれまでの遊技実績に基づいて、遊技者に見合う演出を行うようにし、さらには、遊技実績に応じて演出内容が変化していくようにし、遊技者を飽きさせない演出を行うようにすることである。」(段落【0005】)
エ.「遊技実績としては、例えば以下のものが挙げられる。しかし、これらに限定されるものではない。・・・(1)所定期間における遊技回数。・・・(2)所定期間におけるメダルの獲得枚数。・・・(3)所定の遊技状態となった回数。・・・(4)小役の当選に対する入賞率。(5)過去の出玉率(メダルの差枚数)の推移。(6)リール31の停止時に、リーチ目等の特定の図柄の組合せが出現した回数。(7)単位時間当たりの遊技速度(単位時間当たりの消化遊技回数)。」(段落【0054】?【0057】)
オ.「本実施形態では、遊技実績記憶手段71は、過去の累積遊技回数、BBの入賞回数、当選小役の入賞率、BBゲームでの獲得枚数、及びこれらに基づき算出されるポイント値、さらにはこのポイント値を用いて算出した値を記憶する。」(段落【0058】)
カ.「遊技実績記憶手段71は、遊技回数に応じて、図2(a)に示す換算に基づき、ポイントP1を算出し、それを記憶するとともに、順次更新していく。・・・遊技実績記憶手段71は、BBの入賞回数に応じて、図2(b)に示す換算に基づき、ポイントP2を算出し、それを記憶するとともに、順次更新していく。・・・遊技実績記憶手段71は、その入賞率に応じて、図2(c)に示す換算に基づき、ポイントP3を算出し、それを記憶するとともに、順次更新していく。・・・遊技実績記憶手段71は、その獲得枚数に応じて、図2(d)に示す換算に基づき、ポイントP4を算出し、それを記憶するとともに、順次更新していく。」(段落【0059】?【0062】)
キ.「各演出データテーブル72と、第1演出出力装置33により画像表示されるキャラクタとが対応づけられている。本実施形態では、遊技実績に対応する特定のキャラクタを設定している。すなわち、遊技実績に対応する演出データテーブル72とキャラクタとが対応することとなる。」(段落【0075】)
ク.「本実施形態では、演出データテーブル選択手段73は、演出データテーブル変更決定手段73aを備える。この演出データテーブル変更決定手段73aは、遊技実績記憶手段71に記憶された遊技実績のうち、特定の遊技実績値が所定値を超えたときに、それまで選択していた演出データテーブル72を変更するか否かを決定するものである。」(段落【0084】)
ケ.「図7は、遊技実績記憶手段71に記憶された遊技実績のうち、ポイントP1とP2との加算値(P1+P2)と、ポイントP3とP4との加算値(P3+P4)とに対応するキャラクタを示すものである。例えば図7において、P1+P2の値が4であり、P3+P4の値が-1であるときは、対応するキャラクタはキャラクタBである。そして、キャラクタBに対応する演出データテーブル72は、第1演出データテーブル72aである。よって、演出データテーブル選択手段73は、この場合は、第1演出データテーブル72aを選択する。」(段落【0085】)
コ.「また、この場合において、P3+P4の値は-1のままであるが、BBに入賞したために(6回目の入賞であるとする)、ポイントP2の値が加算され、その結果、P1+P2の値が4から5に更新されたとする。このとき、演出データテーブル変更決定手段73aは、遊技実績記憶手段71に記憶された遊技実績のうち、BB入賞回数(特定の遊技実績値)が5回(所定値)を超えたと判別し、それまで選択していた演出データテーブル72を変更するか否かを、図7に示した対応関係に基づき決定する。そして、キャラクタBからキャラクタCに変更されるので、これに従い、演出データテーブル変更決定手段73aは、演出データテーブル72を、それまで選択していた第1演出データテーブル72aから第2演出データテーブル72bに変更するように決定する。」(段落【0086】)
サ.「特定の遊技実績値が所定値に到達したときにのみ選択される複数種類の演出パターンを設けておき、特定の遊技実績値が所定値に到達したときに、その複数種類の演出パターンの中からいずれかの演出パターンを抽選によって選択するようにしても良い。」(段落【0109】)

2.引用例1記載の発明の認定
記載ア?サを含む引用例1の全記載及び図示によれば、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「遊技者が遊技を進行するうえで入力操作する入力操作手段と、
過去の累積遊技回数、BBの入賞回数、当選小役の入賞率、BBゲームでの獲得枚数、及びこれらに基づき算出されるポイント値P1?P4を記憶する遊技実績記憶手段と、
演出内容を定めた複数種類の演出パターンをそれぞれ記憶し、キャラクタと対応させた複数の演出データテーブルと、
前記遊技実績記憶手段に記憶された遊技実績に基づいて、いずれかの演出データテーブルを選択する演出データテーブル選択手段と、
前記演出データテーブル選択手段により選択された前記演出データテーブルから、演出パターンを抽選によって選択する演出パターン選択手段と、
前記演出パターン選択手段により選択された演出パターンに従い、演出の出力を制御する演出出力制御手段を備え、
前記遊技実績記憶手段に記憶された遊技実績のうち、特定の遊技実績値が所定値を超えたときに、P1+P2及びP3+P4の値に基づいて演出データテーブルを変更するか否かを決定するスロットマシン。」(以下「引用発明1」という。)

3.本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1の「遊技実績」は本願発明の「遊技機における遊技を行った内容」及び「記録情報」に相当し、同じく「遊技実績記憶手段」は「記録媒体」に相当し、引用発明1においても記憶内容を読み取る必要があるから「媒体記録情報読み取り手段」は引用発明1にも備わっているものと認める。
引用発明1の「演出パターン」はキャラクタと対応しているから、何らかの表示手段に表示されるものであり、演出を「遊技と関連した補助表示」と表現することには何の問題もなく、当然引用発明1は「遊技補助表示手段」を備えているとともに、その「遊技補助表示手段」は「媒体記録情報読み取り手段」と接続されているものと認める。
引用発明1の「演出データテーブル」及び「演出データテーブル選択手段」は、本願発明の「表示内容記憶手段」及び「表示内容決定手段」にそれぞれ相当し、前者が「前記記録媒体に記録されている記録情報の一部又は全部の情報に対応する複数の表示内容を記憶する」点及び後者が「前記媒体記録情報読み取り手段によって読み取られた媒体記録情報に基づいて、前記表示内容記憶手段に記憶された前記複数の表示内容のうちのいずれかを決定する」点、並びに「前記表示内容決定手段により決定された表示内容を表示させることによって、前記補助表示が行われ」る点においても、本願発明と引用発明1の相違はない。
さらに、本願発明では「演出表示が前記補助表示として行われる」とされているから、「演出画像」は「補助表示」における画像であり、演出画像中にキャラクタが登場する点も本願発明と引用発明1の一致点である。
そして、引用発明1の「スロットマシン」が本願発明の「遊技機」に含まれることはいうまでもない。
したがって、本願発明と引用発明1は、
「遊技機における遊技を行った内容を記録した記録媒体の記録情報を読み取る媒体記録情報読み取り手段と接続され、かつ遊技と関連した補助表示を行う遊技補助表示手段を備えた遊技機であって、
前記遊技補助表示手段は、前記記録媒体に記録されている記録情報の一部又は全部の情報に対応する複数の表示内容を記憶する表示内容記憶手段と、前記媒体記録情報読み取り手段によって読み取られた媒体記録情報に基づいて、前記表示内容記憶手段に記憶された前記複数の表示内容のうちのいずれかを決定する表示内容決定手段と、を含み、
前記表示内容決定手段により決定された表示内容を表示させることによって、前記補助表示が行われ、
補助表示における演出画像中にはキャラクタが登場する遊技機。」である点で一致し、次の各点で相違する。
〈相違点1〉本願発明では「前記記録媒体に記録された記録情報のうちの所定の項目が予め定めた基準値を超えることを条件として、演出画像中に登場する所定キャラクタの表示態様を・・・変化させた演出表示が前記補助表示として行われる」のに対し、引用発明1では「特定の遊技実績値が所定値を超えたときに、P1+P2及びP3+P4の値に基づいて演出データテーブルを変更するか否かを決定する」としている点。
〈相違点2〉「演出画像中に登場する所定キャラクタの表示態様」を変化するに当たり、本願発明が「通常の表示であるアニメ映像から特別の表示である実写映像に変化」と限定しているのに対し、引用発明1ではそのような表示態様の変化を採用していない点。

4.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
本願発明の「前記記録媒体に記録された記録情報のうちの所定の項目が予め定めた基準値を超えることを条件として」及び「所定キャラクタの表示態様を変化」と引用発明1の「特定の遊技実績値が所定値を超えたときに」及び「演出データテーブルを変更」自体には相違はない。ここでの相違点は、このような条件を契機として「所定キャラクタの表示態様」を変化するのか、それとも変化するか否かを決定するかの相違である。
引用発明1では、上記条件成立時に、P1(過去の累積遊技回数に基づくポイント値)+P2(BBの入賞回数に基づくポイント値)及びP3(当選小役の入賞率に基づくポイント値)+P4(BBゲームでの獲得枚数に基づくポイント値)の値により、新たなキャラクタ(演出データテーブル)を決定し、それが従前のものと異なればキャラクタを変化させている。
そうである以上、引用発明1においては特定の遊技実績値が所定値を超えても、P1+P2及びP3+P4の値如何によってはキャラクタを変化しない場合があるし、P1+P2及びP3+P4の値によって定まるキャラクタが変更されても、特定の遊技実績値が所定値を超えない限りキャラクタを変化しない。
このように、引用発明1においては、本願発明よりも複雑な手順でキャラクタを変化させているが、これを単純な処理にし、特定の遊技実績値又は複数の遊技実績値に基づいて算出された値とキャラクタの対応関係を1対1に定め、相違点1に係る本願発明の構成に至ることに困難性があるとは到底認めることができない。引用例1記載サにおける「特定の遊技実績値が所定値に到達したときにのみ選択される複数種類の演出パターンを設け」との記載もこれを裏付けるものである。
以上のとおりであるから、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(2)相違点2について
引用発明1の課題の1つは「遊技者を飽きさせない演出を行う」(記載ウ)ことにあり、演出画像中に登場するキャラクタを変化させることが、この課題解決に寄与していることは明らかである。そうであれば、キャラクタを変化させるに当たっては、遊技者を飽きさせないようにさまざまな変化が採用できることは明らかである。
他方、原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-360823号公報(以下「引用例2」という。)には、「付与される特典は、パチンコ球の払い出しに限られるものではなく、下記(11)?(18)に記載したような特典でもよい。なお、下記の内(16)?(18)は、遊技者を有利とする特典ではなく、遊技者を退屈させない(楽しませる)特典である。・・・(16)表示されるキャラクタをアニメから実写に変更。」(段落【0035】)との記載があり、「遊技者を退屈させない(楽しませる)特典」は上記引用発明1の課題に通ずる。そして、引用例2には、「表示されるキャラクタをアニメから実写に変更」することが遊技者を退屈させないことに通ずる旨記載されているのだから、同じ課題を有する引用発明1におけるキャラクタ変化として、引用例2記載の技術を採用することには何の困難性もない。
請求人は「刊行物4(審決注;審決の「引用例2」)の発明における「表示されるキャラクタ」の表示する場所、表示の目的等についての説明の記載が一切なく、「表示されるキャラクタをアニメから実写に変更。」との記載の意味が不明です。」(審判請求書7頁2?5行)と主張するが、アニメから実写に変更することの目的が「遊技者を退屈させない」ことにあることは明確に記載されており、それ以上の説明は不必要であるから、請求人の主張を採用することはできない。
なお、本願発明における「通常の表示」及び「特別の表示」との用語については、「前記記録媒体に記録された記録情報のうちの所定の項目が予め定めた基準値を超える」までの表示が「通常の表示」であり、超えてからの表示が「特別の表示」であると解すべきであって、「通常」及び「特別」にそれ以上の意味があると認めることはできないから、引用発明1に上記引用例2記載の技術を採用した場合には、相違点2に係る本願発明の構成に至る。
したがって、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(3)本願発明の進歩性の判断
相違点1,2に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1及び引用例2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-13 
結審通知日 2008-05-14 
審決日 2008-05-27 
出願番号 特願2003-323429(P2003-323429)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 仁志  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 有家 秀郎
伊藤 陽
発明の名称 遊技機及び遊技機システム  

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