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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A41G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A41G
管理番号 1181518
審判番号 不服2005-12831  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-07 
確定日 2008-07-14 
事件の表示 特願2000-307987号「自毛活用型かつら及び自毛活用型かつらの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月19日出願公開、特開2002-115115号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成12年10月6日の出願であって、平成17年5月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年8月8日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成17年8月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年8月8日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
平成17年8月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項2は、
「かつらの隙間から装着者の自毛を引き出してかつらに取り付けた擬毛と混ぜ合わせて装着する自毛活用型かつらにおいて、
線状に形成した複数本のリブだけで構成すると共に、該複数本のリブを組み合わせてかつらのアウトラインを形成しないように、且つ、各リブの先端部がヘアラインから天頂部側へ入り込んで位置するように骨格様のフレームワークを形成し、
この骨格様のフレームワークに多数の擬毛を取り付けて周縁枠を有しない植毛フレームを構成し、
装着者の頭部に載せて、上記植毛フレームの間から出した装着者の自毛と上記リブに取り付けた擬毛とを混ぜ合わせて装着することを特徴とする、自毛活用型かつら。」
と補正された。(なお、下線は補正箇所を示す。)

2.補正の目的
本件補正は、補正前の請求項2に記載された発明を特定するために必要な事項である、「骨格様のフレームワーク」について、「各リブの先端部がヘアラインから天頂部側へ入り込んで位置するように」との限定を付加し、かつらの装着の仕方について、「装着者の頭部に載せて」との限定を付加したものであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項2に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3-1.引用例の記載事項
原査定において拒絶の理由に引用された、特表平4-505188号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に、次の事項が記載されている。
(1)「1.頭頂部区域から始まり、その自由端へと連続して伸びる中間区域(14)を一対で規定し、自由端で終わるロッド(12,13)によるかごとして備えられている支持部材を有することを特徴とする、湾曲したウエブより成る毛髪支持部材を有するヘアピース。
(中略)
3.前記頭頂部区域は前記ロッド(12,13)を放射状に広げる結合部品(11)を備えることを特徴とする、請求項1のヘアピース。
(中略)
6.前記ロッド(12,13;143)の外表面は直接毛髪で覆われていることを特徴とする、請求項1から5の1つによるヘアピース。」(【特許請求の範囲】)
(2)「本発明は湾曲したウエブ(薄い金属板)から成り毛髪を支持する部材を有するヘアピースに関するものである。」(2頁左上欄2?3行)
(3)「帽子のような支持部材によるかつらの欠点を克服するために自分自身の毛髪と人工又は天然の補助毛髪とを組み合わせることができ、使用者自身の毛髪を補助するヘアピースが備えられた。」(2頁左上欄12?15行)
(4)「ウエブとフレームとは頭を横切って横方向に伸び、周囲を密閉された開口部を有する格子を形成し、それを通して使用者自身の毛髪と補助毛髪とを混合するように人自身の毛髪を引き出すことができる。」(2頁左上欄19?22行)
(5)「本発明の目的はウエブの間の開口部を通して着用者の毛髪を引き出し易くし、生え際を含めて混合した毛髪が自然な外観を備えるように、湾曲したウエブより成る毛髪の支持部材を有するヘアピースを改良することである。」(2頁左下欄5?8行)
(6)「ロッドの間から人自身の毛髪のすべてを外に引き出すためにロッド間のそれぞれの区域内の毛髪は容易に引き上げられ、とがった物、即ちヘアピン又は柄付き櫛は生え際からヘアピースの頭頂部の方向へ引かれる。この手順は手早く容易に行うことができ使用者自身の毛髪と補助毛髪との均一な混合物は自然な外観を持ったふさふさした毛髪となって支持部材上で引き続いて櫛けずられる。」(2頁左下欄18?24行)
(7)「補助毛髪を高密度に備えるために多数のロッドが備えられるがしかし合理的な区域の中が着用者自身の毛髪を容易に引き出すことができるように開かれていなければならない。」(3頁左上欄4?6行)
(8)「毛髪はロッドに接着、締め付け又は溶着によって直接に取り付けられる。」(3頁左上欄15?16行)
(9)「縁なし帽子のような形状をした、ヘアピースの支持部材10は実質的にはプラスチック材料、好ましくは透明な材料から成る複数の弾性的なロッド12及び13から成っており、これらのロッドはかごを形成するように湾曲して、円形の結合部品11から放射状に伸びており、長さはいろいろであってもよい。」(3頁右下欄5?9行)
(10)「前部ロッド12は頭の前部に組み合わされ、それらが自由端で終わる生え際に向かって伸びている。それぞれの生え際の方向及び要求される髪型に従ってロッド12は切断して短くすることができる。ロッド13は前面ロッド12より短く結合部品11から頭の側部及び後部を横切って放射状に伸びている。」(3頁右下欄14?19行)

そして、第1、1A、2、3図に見るように、複数のロッド12,13からなる支持部材10は、結合部品11から放射状に、自由端で終わる生え際に向かって伸びていて、複数のロッド12,13から構成される支持部材10に補助毛髪20を取り付けて、周辺に枠を有しないヘアピースを構成し、着用者の頭に載せて装着しているかつらが開示されている。
また、(1),(2),(5)の記載から、引用例記載のかつらは、湾曲したウエブよりなり、ウエブの間の開口部を通して着用者の毛髪を引き出し、かつらに取り付けられた補助毛髪と混合しており、それは、かつら全体から見ると、かつらの間から着用者の毛髪を引き出して、かつらに取り付けられた補助毛髪と混合しているといえる。
(1),(7)の記載及び第1A図の図示内容から、支持部材に多数の補助毛髪を取り付けていることは明らかである。

そこで、上記記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。

「かつらの間から着用者の毛髪を引き出してかつらに取り付けられた補助毛髪とを混合して装着するかつらにおいて、
複数のロッドは、結合部品から放射状に、自由端で終わる生え際に向かって、伸びて支持部材を形成し、
複数のロッド及び結合部品からなる支持部材に多数の補助毛髪を取り付けて周辺に枠を有しないヘアピースを構成し、
着用者の頭部に載せて、ヘアピースのロッドの間から引き出した着用者の毛髪とロッドに取り付けた補助毛髪とを混ぜ合わせて装着するかつら。」

3-2.対比・判断
そこで、本願補正発明(以下、「前者」という。)と引用発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、後者の「かつら」も、「かつらの間から着用者の毛髪を引き出してかつらに取り付けられた補助毛髪とを混合して装着するかつら」ということでは、前者の「かつらの隙間から装着者の自毛を引き出してかつらに取り付けた擬毛と混ぜ合わせて装着する自毛活用型かつら」といえるから、後者の「かつら」は前者の「自毛活用型かつら」に相当し、以下同様に「着用者の毛髪」は「装着者の自毛」に、「補助毛髪」は「擬毛」に、「周辺に枠を有しないヘアピース」は「周縁枠を有しない植毛フレーム」にそれぞれ相当する。
また、同様に、後者の「着用者の頭部に載せて、ヘアピースのロッドの間から引き出した着用者の毛髪とロッドに取り付けた補助毛髪とを混ぜ合わせて装着するかつら」は、前者の「装着者の頭部に載せて、上記植毛フレームの間から出した装着者の自毛と上記リブに取り付けた擬毛とを混ぜ合わせて装着することを特徴とする、自毛活用型かつら」に相当する。

後者の「複数のロッド及び結合部品」は、前者の「線状に形成した複数本のリブ」とは、擬毛(補助毛髪)を取り付ける「骨部材」の点で共通する。

前者の「かつらのアウトライン」は、本願明細書の図19にあるように、周辺枠部材から構成されており、後者の「かつら」は、「複数のロッドは、結合部品から放射状に、自由端で終わる生え際に向かって、伸びて」いるので、ロッド同士を周縁で結合する周縁枠部材を有しないことから、前者の「かつらのアウトライン」に相当する部材は存在しない。
また、後者の「複数のロッド及び結合部品からなる支持部材」については、複数のロッド及び結合部品は骨部材といえるから、後者の「複数のロッド及び結合部品からなる支持部材」は前者の「骨格様のフレームワーク」に相当する。
よって、後者の「複数のロッド及び結合部品」は、結合部品から放射状に、自由端で終わる生え際に向かって、伸びてかつらのアウトラインを形成しないように、骨格様のフレームワークを形成しているといえる。

したがって、両者は、本願補正発明の用語を用いて表現すると、
「かつらの隙間から装着者の自毛を引き出してかつらに取り付けた擬毛と混ぜ合わせて装着する自毛活用型かつらにおいて、
骨部材で構成すると共に、かつらのアウトラインを形成しないように、骨格様のフレームワークを形成し、
この骨格様のフレームワークに多数の擬毛を取り付けて周縁枠を有しない植毛フレームを構成し、
装着者の頭部に載せて、上記植毛フレームの間から出した装着者の自毛と上記骨部材に取り付けた擬毛とを混ぜ合わせて装着する、自毛活用型かつら。」
である点で一致し、次の点で相違する(対応する引用例記載の用語を( )に示す)。

<相違点1>
骨格様のフレームワークを形成する、骨部材について、前者では、線状に形成した複数本のリブだけで構成されているのに対し、後者では複数のロッドと結合部品とから構成されている点。

<相違点2>
骨格様のフレームワークについて、前者では、骨格様のフレームワークを形成する各リブの先端部がヘアラインから天頂部側へ入り込んで位置するように形成しているのに対し、後者では骨格様のフレームワーク(支持部材)を構成する複数のリブ(ロッド)はヘアライン、天頂部との関係が不明な点。

上記相違点について、検討する。
<相違点1について>
かつらにおいては、外からかつらを装着しているとわからないように、骨部材を小さく目立たなくすることはかつらにおける当然の要請であって、後者における結合部品を限りなく小さくしてロッドに対して無視し得るほど小さくすることも当業者であれば、当然のようになし得ることであり、そうした場合、ロッドだけで骨部材を形成することになる。
よって、後者において線状の複数本のリブ(ロッド)だけで骨格様のフレームワークを形成することは、かつらにおける当然の要請の点から、当業者であれば容易に想到し得ることである。

<相違点2について>
かつらにおいて、かつらを装着していることが外観上わからないようにするため、リブを短くして、ヘアライン(毛髪の生え際)に達することなく、天頂部側に入り込んで位置するように骨格様のフレームワークを形成することも、かつらにおける当然の要請であって、後者における、骨格様のフレームワーク(支持部材)を構成する複数のリブ(ロッド)を短くしてヘアラインに達することなく、天頂部側へ入り込んで位置するように形成することは、かつらにおける当然の要請の点から、当業者であれば容易になし得ることである。

そして、本願補正発明を全体としてみた効果も、引用発明から当業者であれば予測できる範囲内のものであって、格別なものとはいえない。

以上のことから、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3-3.むすび
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年12月27日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「かつらの隙間から装着者の自毛を引き出してかつらに取り付けた擬毛と混ぜ合わせて装着する自毛活用型かつらにおいて、
線状に形成した複数本のリブだけで構成すると共に、該複数本のリブを組み合わせてかつらのアウトラインを形成しないよう骨格様のフレームワークを形成し、この骨格様のフレームワークに多数の擬毛を取り付けて周縁枠を有しない植毛フレームを構成し、
上記植毛フレームの間から出した装着者の自毛と上記リブに取り付けた擬毛とを混ぜ合わせて装着することを特徴とする、自毛活用型かつら。」

第4.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記第2.3-1.に記載したとおりである。

第5.対比、判断
本願発明は、前記第2.1.で検討した本願補正発明から、「骨格様のフレームワーク」についての限定事項である「各リブの先端部がヘアラインから天頂部側へ入り込んで位置するように」との発明特定事項を省き、かつらの装着の仕方についての限定事項である、「装着者の頭部に載せて」との発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正事項が、前記第2.3-2.に記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-06 
結審通知日 2007-11-13 
審決日 2007-11-27 
出願番号 特願2000-307987(P2000-307987)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A41G)
P 1 8・ 121- Z (A41G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村山 睦  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 増沢 誠一
北村 英隆
発明の名称 自毛活用型かつら及び自毛活用型かつらの製造方法  
代理人 平山 一幸  
代理人 平山 一幸  

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