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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B25J
管理番号 1181600
審判番号 不服2007-8417  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-22 
確定日 2008-07-17 
事件の表示 特願2003-326715「物体処理システム、物体処理方法及びロボット」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月 7日出願公開、特開2005- 88146〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年9月18日の出願であって、平成18年9月21日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月27日に手続補正がなされ、平成19年2月13日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年3月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成18年11月27日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「物体を操作するための物体操作用情報及び物体を画像認識するために必要な物体認識用情報が記憶されている情報サーバと、前記情報サーバに記憶されている物体認識用情報に基づいて前記物体を特定し、その特定した物体に対して、前記情報サーバに記憶されている物体操作用情報に基づいて操作をするロボットと、前記ロボットの環境を監視する監視装置とを備え、
前記監視装置は、前記ロボットの環境を監視して監視情報を得ており、
前記ロボットは、周囲を撮像する第1の撮像手段と、前記情報サーバから前記物体操作用情報及び物体認識用情報を読み込むための読み込み用情報を、前記物体に付されている非接触型タグから非接触で読み取る第1のタグリーダと、前記第1のタグリーダが読み取った前記読み込み用情報に基づいて、前記情報サーバから前記物体操作用情報及び物体認識用情報を読み込む第1の通信手段と、前記第1の通信手段が読み込んだ前記物体認識用情報と前記第1の撮像手段が得た撮像画像情報とを用いて前記物体を特定するとともに、その物体の特定に前記監視装置が得た監視情報も用いる物体特定手段とを備え、前記物体特定手段が特定した物体に対して、前記第1の通信手段が読み込んだ前記物体操作用情報に基づいて操作をすることを特徴とする物体処理システム。」

3.刊行物記載の発明
これに対し、本願出願前に頒布され、原審で引用された刊行物である特開2002-215655号公報(以下「刊行物1」という。)には、次のように記載されている。

ア.段落0001
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、対象物を特定し、特定した対象物に関する情報を検索する情報検索方法、情報検索装置およびロボットの動作制御装置に関する。」

イ.段落0014
「【0014】なお、タグ310が付与されている対象物31に関する情報は、製造メーカや情報提供者によって、データベース42?44に随時蓄積、更新されている。データベース42?44に蓄積されている情報は、ネットワーク41を経由して利用することができる。」

ウ.段落0027?0033
「【0027】-第二の実施の形態-
第二の実施の形態は、ロボットハンドを備えるロボットシステムに本発明を適用した場合の例である。ロボットは、あらかじめティーチング操作することなしに対象物を特定し、特定した対象物をロボットハンドで掴む。図8は、第二の実施の形態によるロボット11Aの概念図である。図8において、壁34,35および36に囲まれた部屋の中に、載置台33が備えられている。載置台33の上に対象物32が載置されている。壁36と壁38との間には通路37が設けられている。壁34?36、載置台33,対象物32、壁38および通路37には、それぞれタグ340?360,330,320,380および370が設けられている。
【0028】ロボット11Aは、カメラ12と、ロボットハンド13と、移動装置14とを備える。カメラ12は対象物31などを撮影する。カメラ12で撮影された画像データは、ロボット11A内の不図示の演算回路により画像処理される。ロボットハンド13は対象物32を把持する。ロボットハンド13は不図示の駆動機構を有し、ロボット11Aの演算回路からの指令により駆動される。駆動装置14は、ロボット11Aの演算回路から指令が送られると、ロボット11Aを任意の方向に移動させる。また、ロボット11Aは不図示のネットワークインターフェイス回路を有し、ネットワークインターフェイス回路を介してネットワーク41に接続されている。ネットワーク41には、対象物32に関する情報を記憶している少なくとも1つのデータベース42が接続されている。
【0029】ロボット11Aは、上述したタグの発見段階、属性情報の読み取り段階、対象物に関する情報取得段階の他に、タグの形状に関するデータとカメラ12により撮影されたタグの画像とを比較して、タグが設けられている対象物の姿勢を求め(幾何学情報の取得段階)、発見したタグの情報をデータベース42へ蓄積する。
【0030】ロボット11Aは、カメラ12で撮影された画像データの中からタグを抽出する。壁34?36、37および通路37に設けられるタグには、現在地などの位置を表す属性情報も与えておく。・・・。
【0031】データベース42には、その場所でどのように行動するかという情報も記憶させておく。・・・。
【0032】ロボット11Aには、あらかじめ対象物32を探すようにプログラムされている。・・・。
【0033】ロボット11Aが対象物32のタグ320を抽出すると、タグ320によって与えられる属性情報を用いて対象物32に関する情報をデータベース42から検索する。ロボット11Aが取得する情報は、対象物32のCADデータ(外形および寸法)、対象物32上でタグ320が付与されている位置、対象物32の把持すべき箇所(接触してはいけない箇所)、対象物32を把持する際の力などである。・・・。」

エ.段落0037?0038
「【0037】ロボット11Aは、実際にカメラ12によって撮影された画像データと、生成したイメージデータとがぴったり一致するように、対象物32とカメラ12との3次元的な位置関係の推定精度を向上させる。カメラ12による画像データが生成したデータと一致するか否かの判定は、たとえば、対象物32の輪郭部分を用いて行う。位置関係の推定精度の向上は、対象物32までの距離や対象物32を撮影する方向などを表す値を修正し、再度イメージデータを生成することにより行う。対象物32の姿勢および位置関係を推定すると、ネットワーク41を介して得た対象物32の把持すべき箇所(接触してはいけない箇所)の情報を参照し、ロボットハンド13を駆動して対象物32を把持する。
【0038】以上のロボット11Aで行われる制御処理の流れを示すフローチャートを図9に示す。図9のステップS21?ステップS25までは図7の処理と同じため説明を省略する。ステップS26において、ロボット11Aは、特定した対象物が探している対象物32であるか否かを判定する。ステップS26において、特定した対象物が探している対象物32であると肯定判定するとステップS27へ進み、否定判定するとステップS31へ進む。・・・」

オ.段落0043
「【0043】ロボット11Aと同様の複数のロボットを用いるようにしてもよい。複数のロボットでタグを抽出するとき、他のロボットが検知した情報もデータベース42に蓄えれば、タグが設けられている全ての物体の配置位置を知るのに要する時間は、ロボットを1台のみ用いる場合より短くできる。・・・」

カ.段落0044
「【0044】以上の説明では、ロボットハンド13は対象物を掴むように説明したが、スイッチなどの操作部材を操作するようにしてもよい。この場合には、対象物となる操作部材にタグを設けておき、対象物をどのように取り扱うか、すなわち、操作部材をどのように操作するかの情報をデータベースに記憶しておく。ロボット11Aは操作部材のタグを抽出すると操作部材に関する情報をデータベースから取得し、操作部材を操作する。このようなロボット11Aは、ベッドの操作部材や食器などにタグを設けておけば介護ロボットとして利用できる。また、工場などで人が近づけない環境下に配設されているパイプや操作部材などにタグを設けておけば、日常点検や非常時に復旧を行う作業ロボットとして利用できる。」

キ.段落0047
「【0047】なお、一つの視点からとらえた画像データからでは判断できないときには、判断しやすい視点はどこかをCADデータより算出し、その視点へカメラ12を動かせばよい。・・・」

ここで、ロボット11Aが取得する対象物の情報は、上記イ.の記載、ウ.の段落0033の記載から、「ネットワーク41を経由して」送られることから、刊行物1記載のものが、「データベースから対象物の情報を読み込む第1の通信手段」を有していることは明らかである。
また、上記エ.の特にステップS26に関する記載から、ロボット11Aが、「対象物を特定するための対象物の情報とカメラが得た画像データとを用いて、対象物を特定する物体特定手段」を有することは明らかである。

上記記載を、技術常識を踏まえ、本願発明に照らして整理すると、上記刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「対象物32を把持するための把持すべき箇所、把持する際の力などの対象物の情報、及び対象物を特定するための外径、寸法などの対象物の情報が記憶されているデータベース42と、前記データベースに記憶されている対象物を特定するための対象物の情報に基づいて前記対象物を特定し、その特定した対象物に対して、前記データベースに記憶されている把持するための対象物の情報に基づいて対象物を把持するロボット11Aとを備え、
前記ロボットは、周囲を撮像するカメラ12と、前記データベースから前記把持するための対象物の情報及び特定するための対象物の情報を読み込むための属性情報を、前記対象物に付されているタグから読み取るカメラと、前記カメラが読み取った前記属性情報に基づいて、前記データベースから前記把持するための対象物の情報及び対象物を特定するための対象物の情報を読み込む第1の通信手段と、前記第1の通信手段が読み込んだ前記対象物を特定するための対象物の情報と前記カメラが得た画像データとを用いて、前記対象物を特定する物体特定手段とを備え、前記物体特定手段が特定した対象物に対して、前記第1の通信手段が読み込んだ前記把持するための対象物の情報に基づいて把持する物体処理システム。」

4.対比・判断
本願発明と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明における「対象物」、「把持」、「把持するための対象物の情報」、「対象物を特定するための対象物の情報」、「データベース」、「属性情報」、「画像データ」、「ロボットの動作制御装置」は、本願発明における「物体」、「操作」、「物体操作用情報」、「物体を画像認識するために必要な物体認識用情報」、「情報サーバ」、「読み込み用情報」、「撮像画像情報」、「物体処理システム」に相当する又は含まれる。
また、刊行物1発明の「周囲を撮像するカメラ」は、本願発明の「周囲を撮像する第1の撮像手段」に相当し、刊行物1発明の「タグから読み取るカメラ」と、本願発明の「非接触型タグから非接触で読み取る第1のタグリーダ」とは、「タグから読み取る読取手段」である限りにおいて一致する。すなわち、刊行物1発明の「カメラ」は、「撮像手段」と「読取手段」を兼ねたものである。

そうすると、本願発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致する。
「物体を操作するための物体操作用情報及び物体を画像認識するために必要な物体認識用情報が記憶されている情報サーバと、前記情報サーバに記憶されている物体認識用情報に基づいて前記物体を特定し、その特定した物体に対して、前記情報サーバに記憶されている物体操作用情報に基づいて操作をするロボットとを備え、
前記ロボットは、周囲を撮像する第1の撮像手段と、前記情報サーバから前記物体操作用情報及び物体認識用情報を読み込むための読み込み用情報を、前記物体に付されているタグから読み取る読取手段と、前記読取手段が読み取った前記読み込み用情報に基づいて、前記情報サーバから前記物体操作用情報及び物体認識用情報を読み込む第1の通信手段と、前記第1の通信手段が読み込んだ前記物体認識用情報と前記第1の撮像手段が得た撮像画像情報とを用いて、前記物体を特定する物体特定手段とを備え、前記物体特定手段が特定した物体に対して、前記第1の通信手段が読み込んだ前記物体操作用情報に基づいて操作をする物体処理システム。」

そして、以下の点で相違する。
相違点1:本願発明は、「非接触型タグから非接触で読み取るタグリーダ」と「第1の撮像手段」を有するが、刊行物1発明は、「タグから読み取るカメラ」が「撮像手段」を兼ねている点。
相違点2:本願発明は、「ロボットの環境を監視して監視情報を得」る「監視装置」を備え「物体の特定に前記監視装置が得た監視情報も用いる」ものであるが、刊行物1発明は、そのようなものでない点。

相違点1について検討する。
「非接触型タグから非接触で読み取るタグリーダ」については、原審で引用文献4として引用された特開2003-50614号公報にみられるごとく周知である。
そして、かかる周知技術により利便性の向上が予想されることから、刊行物1発明の「タグから読み取るカメラ」を、周知の「非接触型タグから非接触で読み取るタグリーダ」とすることは、設計的事項にすぎない。
そして、「タグリーダ」とすることにより、「撮像手段」を兼ねることは困難となるが、必要な機能に応じて適した部材を選択することは、当然のことであるから、刊行物1発明における「カメラ」を、「タグリーダ」と「第1の撮像手段」とすることに、困難性は認められない。

相違点2について検討する。
物体の監視を確実に行うため、複数の監視手段を設けることは、原審で引用文献2として引用された特開平6-155349号公報、引用文献3として引用された特開平5-241626号公報、新たに引用する特開平6-15594号公報、特開平6-198586号公報にみられるごとく、周知である。
刊行物1発明においても、上記オ.キ.の記載から、複数の視点を用いることで、有利な効果が得られることが示唆されることから、物体の特定を一層確実に行うため、周知技術を適用し、相違点2に係るものとすることは、必要に応じてなしうる設計的事項にすぎない。

また、これら相違点を総合勘案しても、格別の技術的意義が生じるとは認められない。

請求人は、審判請求理由において、以下のとおり主張する。
「3.本願発明と引用発明の対比
本願に係る発明に対する原審の審査官殿の拒絶理由には承服致します。
一方、本願には、本願請求項1、3、5に係る発明における「物体操作用情報」が、物体の製造者が保持する情報を基に作成された情報である点を特徴点とする発明が記載されております。・・・。
すなわち、物体操作用情報は、物体に精通している製造者の情報を基に作成されている点に特徴があり、物体の外観だけからでは得られない該物体に関する複雑な情報からなるものであります。この結果、物体の情報に関して精度が高い情報であり、ロボットによる処理用の物体操作用情報に基づいて、ロボットが当該物体を処理できるようになるので、その物体を円滑に操作できる等、その処理精度も高くなる、といった効果が発揮されます。
・・・
現時点では補正をする機会はありませんが、前述のような特徴点を要旨として有する発明が特許されれば産業の発達におおいに寄与するものと期待されますので、本願に記載の発明を特許請求の範囲のものとするための補正の機会を与えていただきたくお願い申し上げます。
3.補正案
平成18年11月27日提出の手続補正書を基準とした特許請求の範囲の補正案を以下に示します。下線部が補正部分になります。
[特許請求の範囲]
[請求項1]
物体の製造者が保持する情報を基に作成された、当該物体を操作するための物体操作用情報及び物体を画像認識するために必要な物体認識用情報が記憶されている情報サーバと、前記情報サーバに記憶されている物体認識用情報に基づいて前記物体を特定し、その特定した物体に対して、前記情報サーバに記憶されている物体操作用情報に基づいて操作をするロボットと、前記ロボットの環境を監視する監視装置とを備え、
前記監視装置は、前記ロボットの環境を監視して監視情報を得ており、
前記ロボットは、周囲を撮像する第1の撮像手段と、前記情報サーバから前記物体操作用情報及び物体認識用情報を読み込むための読み込み用情報を、前記物体に付されている非接触型タグから非接触で読み取る第1のタグリーダと、前記第1のタグリーダが読み取った前記読み込み用情報に基づいて、前記情報サーバから前記物体操作用情報及び物体認識用情報を読み込む第1の通信手段と、前記第1の通信手段が読み込んだ前記物体認識用情報と前記第1の撮像手段が得た撮像画像情報とを用いて前記物体を特定するとともに、その物体の特定に前記監視装置が得た監視情報も用いる物体特定手段とを備え、前記物体特定手段が特定した物体に対して、前記第1の通信手段が読み込んだ前記物体操作用情報に基づいて操作をすることを特徴とする物体処理システム。」

しかし、補正案には、法的効果はないから、請求人の主張は採用できない。また、特許庁審判部では、かねてから、審判請求時までの適切な補正をお願いしているところである。

念のため、補正案について検討する。
刊行物1記載のものは、段落0008?0009、0014の記載からみて、「物体操作用情報及び物体認識用情報」の少なくとも一部は「物体の製造者が保持する情報を基に作成された」ものであるから、補正案の「物体の製造者が保持する情報を基に作成された、物体を操作するための物体操作用情報及び物体を画像認識するために必要な物体認識用情報」に含まれると解される。
さらに、補正案の「物体操作用情報及び物体認識用情報」が「ロボットによる操作が最適になされるための情報」であって、物体の製造者が保持する情報を基に作成されるものであるとしても、製造者は製造した物体についての情報を保持していることが自然であるから、必要な情報が、製造者が保持するものである場合に、効率性の観点から、既存の情報である製造者が保持する情報の利用を試みることに、困難性は認められない。
よって、補正案を基礎としても、結論に変わりはない。

5.むすび
本願発明は、刊行物1発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-14 
結審通知日 2008-05-20 
審決日 2008-06-04 
出願番号 特願2003-326715(P2003-326715)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B25J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松浦 陽佐々木 一浩  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 福島 和幸
菅澤 洋二
発明の名称 物体処理システム、物体処理方法及びロボット  
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