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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1181785
審判番号 不服2004-25580  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-15 
確定日 2008-07-24 
事件の表示 特願2001-155216「ディジタル式携帯通信ネットワークで無線音声モニタリングする方法とその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月20日出願公開、特開2002-368668〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成13年5月24日の出願であって、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものと認める。

【請求項1】 電話呼出しの振動ベルを自動受信し、
呼出し人に対して安全暗号を提示するようアラーム音を発生し、
設定時間内に呼出し人の入力した安全暗号を対比し、暗号が正確であるとき、高感度音波増幅回路を起動し、呼出し人が現場音声モニタリングを行えるようにする、ディジタル式携帯通信ネットワークで無線音声モニタリングする方法。

2.刊行物の記載
(1)刊行物1記載発明
本願の出願日前に頒布され、原査定の拒絶理由に引用された登録実用新案公報第3023776号(平成8年(1996)4月30日発行。以下、「刊行物1」という。)には、次のような記載がある。

【0011】
また、本考案においては、番号間違いや飼い主以外の者との通話を防止するために、発信者が予め定めたPB(Push Button )音信号などからなる暗証コードを送信したときにペットとの通話が可能となるようになされている。したがって、発信者はペットコンタクト用交信器10を呼び出した後に、所定の暗証番号に対応するPB音信号を送出することが必要である。
【0012】
図2に本考案のペットコンタクト用交信器10のブロック図を示す。図示するように、本考案のペットコンタクト用交信器10は通常のPHS端末PS11とほぼ同様に構成されており、この図において、101は前記基地局CS12との間で電波を送受信するためのアンテナ、102は高周波(RF)回路、103は受信信号を復調する復調器、104は送信信号を変調する変調器、105はPHSのアクセス/伝送方式であるマルチキャリアTDMA/TDD(Time Division Multiple Access/Time Division Duplex)方式の処理を行うためのTDMA/TDD処理回路、106は音声符号化復号化器107を含む音声処理部、108はスピーカ、109はマイクロフォンである。また、110は必要なときに通話チャンネルの切り換えを行うために通話品質監視を常時行う品質管理部、111は所定のデータを記憶したりテンポラリメモリなどとして使用されるRAM、112は制御プログラムや各種データが格納されているROM、113は装置全体の制御を行うCPU、114はキー入力部、115は表示部、116は各構成要素間のデータや制御信号などの転送を行うためのバスである。
【0013】
このように構成されたペットコンタクト用交信器10の動作について、図3に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
まず、ステップS1において前記PHS基地局CS12からの呼び出し信号が受信されたか否かを判定し、呼び出し信号が受信されるとステップS2に進み、PB音信号が受信されるか否かを判定する。PB音信号が受信されてステップS2の判定結果がYESとなったときは、ステップS3に進み、該受信したPB音信号が予め定めた暗証コードと一致するか否かを判定する。受信したPB音信号が暗証コードと一致したときは、ステップS4に進み、前記スピーカ108とマイクロフォン109を動作させ、発信者とペットとの間を通話可能状態とする。すなわち、いわゆるハンズフリー通話状態とされる。
【0014】
この通話可能状態において、飼い主などの発信者がペットに呼び掛けると、その呼び掛けがスピーカ108から発声され、ペットに聞こえる。そして、ペットがそれに応答したときにその声がマイクロフォン109から入力され、飼い主に聞こえることとなる。これにより、飼い主はペットの状態を知ることができ、また、同時に入力される周囲の音からペットがどのような環境にいるのかを知ることもできる。
なお、このとき、通常のPS端末11の場合と比較して耳とスピーカ108との距離が離れているために、スピーカ108から発生する音量は大きくしておくことが望ましい。また、マイクロフォン109から入力される信号は自動音量制御されることが望ましい。
【0015】
一方、前記ステップS2およびステップS3の判定結果がNOのときは処理を終了し、受信待機状態となる。
さて、ステップS4の通話状態中に、飼い主などの発信者が送受話器を置いて、通話終了信号が送信されると、ステップS5においてこれを判定し、ペットコンタクト用交信器10はステップS6において回線を切断し、再び受信待機状態となる。
なお、ステップS5における通話終了の検出は、タイマーなどを用いて、通話開始から所定時間が経過したことを検出することによって行うようにしてもよい。
【0016】
また、上述した実施の形態においては、暗証コードを利用することによって飼い主であるか否かを判定するようにしているが、必ずしもこれに限られることはなく、通常の電話などで行われている発信電話番号通知サービスを利用して発信電話番号を検出識別して特定の発信者であるか否かを判定するようにしてもよい。
さらにまた、上述した実施の形態においては、ペットコンタクト用交信器10は着信専用のものとして説明したが、通常のPHS端末PS11にこのペットコンタクト用交信器モードを設けて、動作モードを切り替えることにより、上述した実施の形態のように動作させることも可能である。
【0017】
さらにまた、上述した実施の形態においては、ペットコンタクト用交信器10はペットの動物に取り付けて使用されるものとして説明したが、必ずしもこれに限られることはなく、ペットが鎖につながれている場合や一つの部屋内にいる場合には、マイクロフォン109として集音マイクなどを使用し、ペットの近傍に設置するようにすることもできる。
さらにまた、上述した実施の形態においては、PHSを利用した場合について説明したが、携帯電話方式を用いても全く同様に構成することができる。
【0018】
なお、以上においては、本考案の交信器をペットに取り付けるものとして説明してきたが、必ずしもこれに限られることはない。
例えば、本考案の交信器を痴呆症の老人などに持たせることもできる。この場合には、痴呆症の老人などが徘徊しているときに、家族は本考案の交信器を用いて当該老人に話しかけることができ、当該老人の応答や周囲の音などから当該老人の状態や居る場所などを察知することができる。したがって、当該老人を早急に保護することが可能となり、非常に有益である。

以上の記載によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1記載発明」という。)が記載されているものと認められる。

通常のPHS端末PS11とほぼ同様に、基地局CS12との間で電波を送受信するためのアンテナ101、高周波(RF)回路102、受信信号を復調する復調器103、送信信号を変調する変調器104、PHSのアクセス/伝送方式であるマルチキャリアTDMA/TDD(Time Division Multiple Access/Time Division Duplex)方式の処理を行うためのTDMA/TDD処理回路105、音声符号化復号化器107を含む音声処理部106、スピーカ108、マイクロフォン109、必要なときに通話チャンネルの切り換えを行うために通話品質監視を常時行う品質管理部110、所定のデータを記憶したりテンポラリメモリなどとして使用されるRAM111、制御プログラムや各種データが格納されているROM112、装置全体の制御を行うCPU113、キー入力部114、表示部115、各構成要素間のデータや制御信号などの転送を行うためのバス116で構成され、番号間違いや飼い主以外の者との通話を防止するために、発信者が予め定めたPB(Push Button )音信号などからなる暗証コードを送信したときにペットとの通話が可能となり、携帯電話方式を用いても全く同様に構成することができるペットコンタクト用交信器10において、
ステップS1においてPHS基地局CS12からの呼び出し信号が受信されたか否かを判定し、呼び出し信号が受信されるとステップS2に進み、PB音信号が受信されるか否かを判定し、PB音信号が受信されてステップS2の判定結果がYESとなったときは、ステップS3に進み、該受信したPB音信号が予め定めた暗証コードと一致するか否かを判定し、受信したPB音信号が暗証コードと一致したときは、ステップS4に進み、前記スピーカ108とマイクロフォン109を動作させ、発信者とペットとの間を通話可能状態とする、いわゆるハンズフリー通話状態とされ、マイクロフォン109から入力される信号は自動音量制御され、
ペットの動物に取り付けて使用されるものに限られることはなく、ペットが鎖につながれている場合や一つの部屋内にいる場合には、マイクロフォン109として集音マイクなどを使用し、ペットの近傍に設置するようにすることもでき、
例えば、痴呆症の老人などに持たせる場合には、痴呆症の老人などが徘徊しているときに、当該老人の応答や周囲の音などから当該老人の状態や居る場所などを察知することができるペットコンタクト用交信器10。

(2)刊行物2記載発明
本願の出願日前に頒布され、原査定の拒絶理由に引用された特開2000-32125号(平成12年1月28日(2000.1.28)出願公開。以下、「刊行物2」という。)には、次のような記載がある。

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は携帯電話機等の通信端末装置に関する。

【0016】請求項4記載の通信端末装置の発明は、着信音をならさないモードの設定が可能な通信端末装置において、前記モードの設定がなされている状態で着信があり、かつ発呼者から暗証番号の入力があると、その暗証番号が正しい番号と一致するかを判定する暗証番号判定手段と、この暗証番号判定手段によって正しい暗証番号の入力であったと判定された場合に緊急時の着信であるとして、着信音を鳴らし着呼者に緊急の着呼であることを報知する緊急報知手段と、を有する構成とした。
【0017】緊急モードに切り換えるための暗証番号(ユーザーが使用する通信端末機器に固有の番号)を、あらかじめ特定の者(例えば、職場関係者)のみに知らせておき、その番号の入力があったときのみ緊急モードへの切換を可能とするものである。これにより、不要な緊急の呼び出しをある程度制限できる。
【0018】請求項5記載の通信端末装置の発明は、請求項4記載の発明において、前記発呼者による暗証番号の入力は、留守番サービスモードの場合には相手方のメッセージ録音期間の終了時以降、所定の期間内になされたときのみ有効とされ、バイブレーションによって着信を報知するマナーモードの場合には、バイブレーションによる前記報知の期間の終了時以降、所定の期間内になされたときにのみ有効とされる構成とした。

以上の記載によれば、刊行物2には、次の発明(以下、「刊行物2記載発明」という。)が記載されているものと認められる。

着信音をならさないモードの設定が可能な通信端末装置において、前記モードの設定がなされている状態で着信があり、かつ発呼者から暗証番号の入力があると、その暗証番号が正しい番号と一致するかを判定する暗証番号判定手段と、この暗証番号判定手段によって正しい暗証番号の入力であったと判定された場合に緊急時の着信であるとして、着信音を鳴らし着呼者に緊急の着呼であることを報知する緊急報知手段と、を有する携帯電話機等の通信端末装置において、
発呼者による暗証番号の入力は、所定の期間内になされたときにのみ有効とされるよう動作させる方法。

3.本願発明と刊行物1記載発明との比較
刊行物1記載発明の「呼び出し信号」、「暗証コード」、「発信者」は、それぞれ、本願発明の「電話呼出しの振動ベル」、「安全暗号」、「呼出し人」に相当する。
また、刊行物1記載発明において、装置全体の制御を行うCPU113が、ステップS1においてPHS基地局CS12からの呼び出し信号が受信されたか否かを判定し、呼び出し信号が受信されるとステップS2に進む動作を制御しているから、刊行物1記載発明の「ステップS1」の動作は、本願発明の「電話呼出しの振動ベルを自動受信」する動作に相当する。
また、刊行物1記載発明において、PHS端末PS11が音声符号化復号化器107を含み携帯電話方式を用いても全く同様に構成することができるから、刊行物1記載発明の「携帯電話方式」は、本願発明の「ディジタル式携帯通信ネットワーク」に相当する。
また、刊行物1記載発明において、PB音信号が受信されてステップS2の判定結果がYESとなったときは、ステップS3に進み、該受信したPB音信号が予め定めた暗証コードと一致するか否かを判定するから、刊行物1記載発明の「ステップS3」の動作と本願発明の「設定時間内に呼出し人の入力した安全暗号を対比」する動作とは、いずれも「呼出し人の入力した安全暗号を対比」する動作である点で一致する。
また、刊行物1記載発明において、受信したPB音信号が暗証コードと一致したときは、ステップS4に進み、前記スピーカ108とマイクロフォン109を動作させ、マイクロフォン109として集音マイクなどを使用し、ペットの近傍に設置するようにすることもでき、例えば、痴呆症の老人などに持たせる場合には、当該老人の応答や周囲の音などから当該老人の状態や居る場所などを察知することができるから、刊行物1記載発明の「マイクロフォン109として集音マイクなどを使用し、ペットの近傍に設置する」や「周囲の音などから当該老人の状態や居る場所などを察知する」は、本願発明の「現場音声モニタリング」や「無線音声モニタリング」に相当し、刊行物1記載発明の「ステップS4」の動作と本願発明の「暗号が正確であるとき、高感度音波増幅回路を起動し、呼出し人が現場音声モニタリングを行える」動作とは、いずれも「暗号が正確であるとき、呼出し人が現場音声モニタリングを行える」動作である点で一致する。
したがって、刊行物1記載発明と本願発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「電話呼出しの振動ベルを自動受信し、
呼出し人の入力した安全暗号を対比し、暗号が正確であるとき、呼出し人が現場音声モニタリングを行えるようにする、ディジタル式携帯通信ネットワークで無線音声モニタリングする方法。」である点。

[相違点1]
安全暗号の対比が、本願発明では、呼出し人に対して安全暗号を提示するようアラーム音を発生し、設定時間内に行うのに対し、刊行物1記載発明では、そのようなアラーム音や設定時間について明らかでない点。

[相違点2]
呼出し人が現場音声モニタリングを行えるようにするために、本願発明では、暗号が正確であるとき、高感度音波増幅回路を起動しているのに対し、刊行物1記載発明では、そのような高感度音波増幅回路を起動することが明らかでない点。

4.刊行物1記載発明と本願発明との相違点の検討
[相違点1]について
刊行物2記載発明の「発呼者」、「暗証番号」は、それぞれ、本願発明の「呼出し人」、「安全暗号」に対応する。
また、刊行物2記載発明において、発呼者による暗証番号の入力は、所定の期間内になされたときにのみ有効とされるから、刊行物2記載発明の「発呼者から暗証番号の入力があると、その暗証番号が正しい番号と一致するかを判定する」動作は、本願発明の「設定時間内に呼出し人の入力した安全暗号を対比」する動作に対応するから、刊行物2記載発明を本願発明の用語で表現すると、次のような発明と認められる。

携帯電話機等の通信端末装置において、設定時間内に呼出し人の入力した安全暗号を対比する方法。

そうすると、刊行物1記載発明において、「呼出し人の入力した安全暗号を対比」する動作を、刊行物2記載発明のように、設定時間内に呼出し人の入力した安全暗号を対比することは、当業者が容易になし得ることである。
また、呼出し人に対して安全暗号を提示するようアラーム音を発生することは周知(例えば、特開2000-59491号公報の段落【0022】の「「ピー」等の簡単な音でもよいし、或いは「パスワードを入力して下さい」等の言葉による指示でもよい。」、特開昭62-242458号公報の第5図(2)のS55、S63の「回線にピー音送出」、第4頁左下欄第13行?同欄第16行の「回線に「ピー」音を発生させ(S55)、相手オペレータに、暗証番号の登録開始を知らせ、5秒タイマをセットし(S56)、タイムオーバーを監視しながら(S57)」、第4頁右下欄第15行?同欄第19行の「タイムオーバーを監視しながら、暗証入力を待ち、暗証番号のDTMFが相手電話機から回線を通して入力された場合(S63、S64、S65、S66)」参照)であるから、刊行物1記載発明において、呼出し人に対して安全暗号を提示するようアラーム音を発生することは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。

[相違点2]について
刊行物1記載発明は、集音マイクなどを使用し、ペットの近傍に設置したり、老人の応答や周囲の音などから当該老人の状態や居る場所などを察知するもので、周囲の音などから当該老人の状態や居る場所などを察知するものである。
そして、周囲の音などは通常の通話音声よりも小さく、そのような小さな音を察知をするためには、音波増幅回路を高感度にすればよいことは技術常識であるから、刊行物1記載発明において、「マイクロフォン109として集音マイクなどを使用し、ペットの近傍に設置する」や「周囲の音などから当該老人の状態や居る場所などを察知する」(本願発明の「現場音声モニタリング」に相当)時には、高感度音波増幅回路を起動することは当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。

5.請求人の主張について
請求人は、審判請求書の平成17年3月22日付けの手続補正書の【請求の理由】(3)(A)(第2頁第22行?同頁末行)において、本願発明の特徴について次のように主張している。

本願発明の主要な目的は、現存のディジタル式携帯通信ネットワークを利用して無線音声モニタリングを行う伝送方法とその装置を提供することにあり、それは現存のGSM携帯通信システム或いはDCS携帯通信システムのディジタル伝送ネットワークを媒体とし、遠方無線音声モニタリング効果を達成し、周知の音声モニタリング装置における距離の制限と盗聴されやすい欠点を解決する伝送方法と装置である。
このような伝送装置は、携帯電話装置に高感度音波増幅回路を設けて、音源を収集でき、携帯電話装置の入線回路にDTMFデコードICを設けて、その構成は使用者が電話のキーで入力したDTMFコードをデコードして、使用者の安全暗号判別を行うことができる。さらに、携帯電話装置のCPUに自動受信素子が設けられ、それがかかってきた電話を自動受信し、並びに単方向に使用者に対して安全暗号入力の警告音を発生することができる。
また、本願の伝送方法は、使用者が正確な暗号を入力してはじめて、高感度音波増幅回路をオンとし、これにより音声モニタリングの機密性を確保することができる。
さらに、本願の伝送装置は、ディジタル式GSM或いはCDMA或いはPHS或いはDCSの携帯通信システムを伝送媒体とし、並びにDTMFデコードを利用して電話をかけた者による収音装置の起動を制御し、ゆえに装置よりキー、スクリーン、振動ベルを除去している。
このため、本願発明は、図1の周知のGSM携帯電話のキー11、スクリーン12、振動ベル13及び字形ROMの外部インタフェースを除去し、その他の例えばアンテナ15、送受信モジュール16、CPU17及びSIM(使用者身分モジュール)カードスロット18を保留している。
ゆえに本願発明の基本構造は、一部ローパワーの無線電波発射機及び受信器とされ、ただGSM連盟の制定したハンディーマシン標準により、局部のインタフェースを改良し、ゆえにSIMカードとRF発射パワー、ディジタル信号デコードとエンコードはいずれもGSM連盟の制定の標準に従い、ゆえに本機のSIMカードスロット部分もまた開放式スラオットとされ、SIMカードを挿入することによりGSMハニカム通信サービスネット内で正常なオンライン登録が行え、正常な待機状態に進入し、即ち、本発明は使用者が自分でSIMカードを挿入することにより使用可能で、そのSIMカードは使用者が、ハニカム通信サービス会社より購入取得するという特徴を有するものである。

しかし、前記「3.本願発明と刊行物1記載発明との比較」の項で検討したように、刊行物1記載発明は、「ディジタル式携帯通信ネットワークで無線音声モニタリングする」ものであるから、本願発明と同様、「遠方無線音声モニタリング効果を達成し、周知の音声モニタリング装置における距離の制限と盗聴されやすい欠点を解決する」ものである。
また、前記「[相違点2]について」の項で検討したように、刊行物1記載発明において、「マイクロフォン109として集音マイクなどを使用し、ペットの近傍に設置する」や「周囲の音などから当該老人の状態や居る場所などを察知する」(本願発明の「現場音声モニタリング」に相当)時には、高感度音波増幅回路を起動することは当業者が適宜なし得る設計事項にすぎないから、「携帯電話装置に高感度音波増幅回路を設けて、音源を収集できる」という特徴は、刊行物1記載発明から自明である。
また、刊行物1記載発明において、番号間違いや飼い主以外の者との通話を防止するために、発信者が予め定めたPB(Push Button )音信号などからなる暗証コードを送信しており、前記「3.本願発明と刊行物1記載発明との比較」の項で検討したように、刊行物1記載発明においても、呼出し人の入力した安全暗号を対比し、暗号が正確であるとき、呼出し人が現場音声モニタリングを行えるから、「使用者が正確な暗号を入力してはじめて、高感度音波増幅回路をオンとし、これにより音声モニタリングの機密性を確保することができる」という特徴は、刊行物1記載発明から自明である。
また、前記「3.本願発明と刊行物1記載発明との比較」の項で検討したように、刊行物1記載発明のCPU113が、「電話呼出しの振動ベルを自動受信」する動作を制御し、前記「[相違点1]について」の項で検討したように、呼出し人に対して安全暗号を提示するようアラーム音を発生することは周知であるから、携帯電話装置のCPUに自動受信素子が設けられ、それがかかってきた電話を自動受信し、並びに単方向に使用者に対して安全暗号入力の警告音を発生することができるという特徴も、刊行物1記載発明及び周知技術に基づいて当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
また、周知のGSM携帯電話のキー11、スクリーン12、振動ベル13等を除去することや、現存のディジタル式携帯通信ネットワークの技術である「ディジタル式GSM或いはCDMA或いはPHS或いはDCSの携帯通信システム」、「DTMFデコード」、「SIMカード」等、請求人の主張するその他の特徴についても、本願の請求項1に記載されていないから本願発明の特徴と認められないし、刊行物1記載発明のペットコンタクト用交信器10にGSM携帯電話等のディジタル式携帯通信ネットワークの周知技術を単に寄せ集めることや、刊行物1記載発明のペットコンタクト用交信器10としては不要な部分であるキー11、スクリーン12、振動ベル13等を除くことにすぎず、進歩性は認められない。

6.むすび
本願発明は、刊行物1記載発明、刊行物2記載発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-15 
結審通知日 2008-02-20 
審決日 2008-03-14 
出願番号 特願2001-155216(P2001-155216)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久松 和之  
特許庁審判長 大日方 和幸
特許庁審判官 田中 友章
桑原 清
発明の名称 ディジタル式携帯通信ネットワークで無線音声モニタリングする方法とその装置  
代理人 太田 明男  

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