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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1181851
審判番号 不服2006-23708  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-19 
確定日 2008-07-24 
事件の表示 特願2002-166776「デジタルコピーシステム及び試しコピー方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月15日出願公開、特開2004- 15475〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成14年6月7日の出願であって、平成18年9月12日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年10月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月7日付けで手続補正がなされたものである。

第2 手続補正の却下
1 補正却下の決定の結論
平成18年11月7日付けの手続補正を却下する。

2 理由
(1) 補正後の本願発明
本件補正後の本願の発明は、平成18年11月7日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載されたものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
読み取り装置で原稿を読み取り画像データを生成し、画像データを外部記憶装置に保存し、ユーザの設定した出力設定に従って保存した画像データを印刷機で印刷するデジタルコピーシステムにおいて、
複数頁からなる一連の原稿の印刷にて複数部数出力指定であった場合に1部数分の印刷だけを出力設定に従って出力させ、且つ、
前記1部数分の印刷がなされた一連の原稿のプレビュー画像を表示装置に表示させ、且つ、
前記表示装置によりプレビュー画像が表示された前記一連の原稿の画像データに関る編集処理を編集手段により実行させる為の編集要求を、前記表示装置を介して、ユーザから受付け可能にし、且つ、該一連の原稿の画像データに関る前記編集要求に応じた編集処理を、前記編集手段により、実行させ、且つ、
前記編集処理済みの前記一連の原稿の画像データの印刷を前記印刷機により実行可能にするものであって、
前記1部数分の印刷がなされた前記一連の原稿のプレビュー画像を前記表示装置により表示させる場合でも、前記一連の原稿に含まれる全ページのプレビュー画像を前記表示装置により表示させる事無く、前記一連の原稿の印刷を続行させる為の印刷続行要求を、少なくとも前記一連の原稿の1ページ分のプレビュー画像は表示させたままの状態で、前記表示装置を介して、ユーザから受付け可能にし、且つ、前記表示装置を介して該印刷続行要求をユーザから受付けた場合に、前記編集手段による編集処理の実行無しに、前記一連の原稿の印刷を前記印刷機により続行可能にする、ことを特徴とするデジタルコピーシステム。」

本件補正は、平成18年2月14日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「印刷続行要求を、前記表示装置を介して、ユーザから受付け可能」とする処理の際に、「少なくとも前記一連の原稿の1ページ分のプレビュー画像は表示させたままの状態で」という限定を付加したものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2) 引用例
原査定の拒絶の理由として引用された特開平9-27875号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が図面と共に開示されている。(記載箇所は段落番号等で表示)

ア 「【要約】
【目的】電子ソートによる画像データの印刷において、作成されたコピーに不具合があった場合に多量の紙の無駄を省き、手作業の発生を防止する。
【構成】コントローラ1は、コントロールパネル3から設定される電子ソート機能で試し印刷ボタンが押下された際、スキャナ部140 で原稿を読み取り、読み取った画像データを蓄積装置4に蓄積し、同時に画像形成部160 で印刷を行い、メモリ5には蓄積装置4に蓄積した画像データのアドレス値を保存して1部目の印刷が終了した時点で一時停止し、ユーザによる1部目のコピーの確認結果に応じたコントロールパネル3からの操作で2部目以降の蓄積装置4に蓄積した画像データの印刷を行う。」

イ 「【0015】
【実施例】以下、この発明の一実施例について図面を参照して説明する。図2は、この発明に係る画像形成装置としての電子ソート機能を有するデジタル複写機の全体構成を概略的に示すものである。この装置は読取手段としてのスキャナ部140 及びプリンタ等の印刷を行う画像形成手段としての画像形成部160を備え、上部に自動原稿送り装置(ADF:オート ドキュメント フィーダ)200 を装着している。」

ウ 「【0027】図1は、この発明に係る画像形成装置の制御回路を示すものである。すなわち、この制御回路は、画像形成装置全体を制御するCPU、ROM、RAM等で構成されるコントローラ1が設けられている。このコントローラ1には、種々の操作を行うコントロールパネル3、ハードディスク等の画像データを蓄積する蓄積装置4、ページ管理テーブル5aおよび片面原稿か両面原稿かの情報を保存しておくためのメモリ5、及び上述したスキャナ部140 、画像形成部160 、自動原稿送り装置200 が接続されている。
【0028】図3は、コントロールパネル3の概略構成を示すものである。コントロールパネル3は、部数表示部3a、倍率表示部3bと倍率設定ボタン3c、濃度表示部3dと濃度設定ボタン3e、テンキー3f、クリア/ストップボタン3g、オールクリアボタン3h、コピーボタン3i、ページ表示部3j、試し印刷ボタン90、入力終了ボタン91、表/裏ボタン92、差し替えボタン93、逆順出力ボタン94とから構成されている。
【0029】本実施例のデジタル複写機においては、電子ソート機能にコントロールパネル3の試し印刷ボタン90が押下されることにより実行される「試し印刷」機能が設けられている。この試し印刷機能は、先行印刷機能のように複数部のコピーを行う際、原稿をスキャナ部140 で1枚読み取る度にその読み取った画像データを蓄積装置4に蓄積すると同時に、画像形成部160で印刷も行うことによって1部目のコピーを作成するものである。また、この試し印刷機能は、スキャナ部140 での全原稿の読み込みと1部目の印刷が終了した時点で複写処理を一時停止し、ユーザによる操作を受け付ける待機状態となる機能でこの待機中に設定を変更等を行うものである。
【0030】複写処理の一時停止中にユーザは以下の操作を行うことができる。
1.印刷の再開
2.逆順出力の指定
3.印刷濃度の変更
4.印刷倍率の変更
5.残り複写部数の変更
6.ページ差し替え
7.印刷の中止
ユーザが印刷再開を指示すれば、デジタル複写機は変更された設定や差し替えられた画像データを用いて2部目以降を印刷する。試し印刷機能によりユーザは複数部のコピーを行う際に、試しとして1部目を印刷することができ、ユーザがその出来具合を確認した後、デジタル複写機の蓄積装置4に蓄積された画像データを用いて画像形成部160 において最適な出力形態で印刷されたコピーを2部目以降に得ることができる。
【0031】次に、このような構成においてデジタル複写機の試し印刷時の複写処理動作を図4のフローチャートを参照して説明する。コントローラ1は、ユーザがコントロールパネル3から複写部数などの複写動作の設定を行うと共に試し印刷ボタン90を押下することにより試し印刷処理を開始する(ST1)。」

エ 「【0037】印刷の再開:ユーザが再びコピーボタン3iを押すと(ST7)、コントローラ1は、蓄積装置4に蓄積された画像データを用いて2部目以降の印刷処理を再開する(ST8)。ユーザがページ差し替えなど他の操作を行った場合、例えばページ差し替えが行われた場合はその画像データを用い、あるいは出力設定が変更された場合にはその設定に従って2部目以降の印刷が行われ、残りの複写部数分のコピーが作成される。2部目以降の印刷では、設定されているフィニッシャ設定に従って出力される。」

オ 「【0042】ページ差し替え:ユーザが差し替えボタン93を押した場合には、ページ差し替え処理によって蓄積されている画像データをページ単位で新しく読み込む画像データに変更することができる(ST15)。この処理について詳しくは後述する。」

カ 【0055】図6の(a),(b)は、全部でNページの片面原稿を試し印刷機能を用いて原稿の入力処理を行った場合の蓄積装置4内に蓄積される画像データの状態と、ページ管理テーブル5aの状態を示している。
【0056】図6の(a)に示す画像データの蓄積方法では、蓄積装置4内のアドレス値A1 で示される場所に1ページ目の画像データが蓄積され、2ページ目の画像データはアドレス値A2 で示される場所に蓄積されるというように画像データの蓄積がなされており、Nページ目の画像データはアドレス値An の位置に蓄積されている。そしてコントローラ1によってページ管理テーブル5aには、原稿が読み込まれた順番にその画像データを蓄積した蓄積装置4のアドレス値が保存される。
【0057】図6の(b)で示すページ管理テーブル5aには、テーブル番号1に対応する値としてアドレス値A1 が保存され、テーブル番号2にはA2 が保存されるというようにしてアドレス値が保存され、テーブル番号nにはNページ目の画像データの位置を表すアドレス値An が保存されている。」

キ 「【0059】なお、原稿が両面原稿であるか、片面原稿であるかはメモリ5上に保持され、コントローラ1はいつでもその情報を参照することができる。次に、ページ差し替え処理におけるユーザの操作と複写機の動作を図7のフローチャートを参照して説明する。
【0060】ページ差し替え処理は、試し印刷機能において1部目の印刷を終了し、一時停止している間にユーザからの指示によって行うことができる。この機能は1部目のコピーにおいて、不具合のあるページがあった場合にそのページのみの再読み込みを行わせ、蓄積装置4に蓄積されている画像データのうち指定したページの画像データと新しく読み込んだ画像データとを蓄積装置4の内部で差し替えを行うものである。
【0061】また、デジタル複写機のスキャナ部140 に原稿を読み込む際の濃度を調整する機能を持たせることによって、新しく読み込ませるページの読み込み濃度を調整することができる。ユーザは以下の操作によってページ差し替えを行うことができ、画像形成部160 で印刷が再開されたときにコントローラ1は、差し替えられた画像データを用いて2部目以降の印刷を行う。
【0062】コントローラ1は、試し印刷機能での一時停止状態でユーザからの操作を受け付ける待機状態となっている(ST41)。ユーザが差し替えボタンを押す(ST42)とコントローラ1は、ページ差し替え処理を開始し(ST43)、ユーザに差し替えを行うページ番号を問い合わせる処理を行う(ST44)。
【0063】ユーザはテンキー3fによってそのページ番号を入力し(ST45)、原稿が両面原稿であった場合は表/裏ボタン92により表か裏かを指定し、ユーザの指定がなければコントローラ1は自動的に表ページを設定する。
【0064】ユーザは、原稿台2に原稿を用意し、このときに原稿の読み込み濃度の調整を行うことができる。ユーザは、コントロールパネル3の濃度設定ボタン3eを用いて原稿読み込みの濃度を調整することができる(ST46)。ユーザは、コピーボタン3iを押して原稿の読み込みをコントローラ1に指示する(ST47)。
【0065】コントローラ1は、コントロールパネル3で設定された原稿読み込み濃度で、用意された原稿の1ページ分を読み取る処理を行い(ST48)、読み取った画像データを内部の蓄積装置4に追加蓄積を行い、同時にそのページの印刷処理も画像形成部160 で行う(ST49)。画像データは、蓄積装置4内の予め蓄積されている画像データに追加して蓄積される。
【0066】コントローラ1は、ページ管理テーブル5aを更新し、ページ差し替え処理を行ってページ差し替え処理を終了し(ST51)、再び待機状態に戻す(ST52)。
【0067】コントローラ1は、ユーザからの操作を受け付ける状態となり、ユーザは再び複写処理の一時停止中に行うことのできる操作を行うことができる(ST53)。」

ク 【図4】には、一時停止・ユーザからの操作を受け付ける状態(ST6)から、ユーザが、ページ差し替えボタンを押すことなく、再びコピーボタンを押すと(ST7)、2部目以降の印刷処理(ST8)が行われるフローが記載されている。

前掲アないしクの記載及び図面によると、引用例1には、

「スキャナ部で原稿を読み取り、読み取った画像データを蓄積装置に蓄積し、変更された出力設定を用いて、蓄積された画像データを用いて画像形成部において印刷するデジタル複写機において、
Nページの原稿で複数部のコピーを行う際、ユーザがコントロールパネルから複写部数などの複写動作の設定を行うと共に試し印刷ボタンを押下し、1部目の印刷を終了した時点で一時停止し、
部数表示部やページ表示部、差し替えボタン、コピーボタンなどから構成されるコントロールパネルのページ差し替えボタンを押すことによってページ差し替え処理を開始し、コントローラは、ページの再読み込みを行わせ、蓄積装置4に蓄積されている画像データのうち指定したページの画像データと新しく読み込んだ画像データとを蓄積装置の内部で差し替えを行い、
印刷が再開されたときに、差し替えられた画像データを用いて2部目以降の印刷を前記画像形成部により行うものであって、
印刷の再開として、ユーザがページ差し替えボタンを押すことなく、前記コントロールパネルのコピーボタンを押すと、蓄積装置に蓄積された画像データを用いて前記画像形成部により2部目以降の印刷を再開する、ことを特徴とするデジタル複写機。」

の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

原査定の拒絶の理由として引用された特開平9-73530号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が図面と共に開示されている。(記載箇所は段落番号等で表示)

ケ 「【0022】本画像ファイリング装置は、以上のような構成を備え、資料原稿から画像を読み取って保存すると共に、操作者の指示に従って、保存済みの資料に対して並べ替えやページの削除・追加等の種々の編集作業を行う。ここで、本画像ファイリング装置が行う主な処理として、上記の保存処理と編集処理とを挙げ、それぞれ説明すると以下のとおりである。」

コ 「【0028】次に、本画像ファイリング装置にて行われる編集処理の大まかな流れについて、図4を参照しながら説明すると以下のとおりである。
【0029】まず、表示手段34に、例えば図28に示すような分割一覧表示画面が表示される(S11)。この画面の下部に表示されるファンクションキーを操作者が指示する(S12)ことによって、下記の7種類の編集処理が実行される。つまり、(1)両面原稿から読み取った画像をページの順に並べ替える並べ替え処理(S13)、(2)保存されている画像の中から白紙画像を自動的に認識して削除する白紙削除処理(S14)、(3)保存されている画像の中から重複している画像を認識して削除する重複削除処理(S15)、(4)画面に一覧表示されたページから操作者が選択した画像を削除する頁削除処理(S16)、(5)画面に一覧表示された画像の中で、操作者の指示に従って互いにその位置を入れ替える頁入替え処理(S17)、(6)画面に一覧表示された資料に対し、操作者が選択した位置に新たに画像を追加する頁追加処理(S18)、(7)画面に一覧表示されたページの位置を移動させる頁移動処理(S19)、の7種類の処理である。
【0030】これらの処理が操作者の指示に応じて行われた後、操作者が編集処理の終了を指示すると、編集処理の内容が二次記憶手段33へ転送されて記憶され(S20)、編集処理が終了する。
【0031】上記S11で表示される分割一覧表示画面は、図28に示すように、その下部には、キー40ないしキー50までの複数のキーで構成されたファンクションキーが表示され、操作者がキーを選択すると、選択されたキーに対応する処理が起動されるようになっている。例えば、「並替え」と表示されているキー41が選択されると、前記したS13の並べ替え処理が起動される。なお、キー50が選択されると、現在キー40ないしキー50が表示されている分割一覧表示画面の下部に、現在図示されていない他のファンクションキーが表示される。
【0032】図28に示されている主なキーと前記した編集処理との対応は次のとおりである。すなわち、「白紙削」と表示されたキー43はS14、「重複削」と表示されたキー42はS15、「頁削除」と表示されたキー47はS16、「頁入替」と表示されたキー46はS17、「頁追加」と表示されたキー44はS18、「頁移動」と表示されたキー49はS19をそれぞれ選択的に起動させる。また、「拡大」と表示されたキー45は、分割一覧表示されている領域を拡大イメージで表示するために選択されるものであり、詳細については後述する。
【0033】また、図28に示すように、分割一覧表示画面には、画像ファイリング装置に保存されている資料の各ページの画像の一部がページ番号と共に表示される。例えば、同図において、偶数ページの画像の一部がページ番号と共に左側の列に、奇数ページの画像の一部がページ番号と共に右側の列に一覧表示されている。これにより、操作者は画像ファイリング装置に保存されている資料中のページの整合性を確認することができる。
【0034】また、操作者は、この分割一覧表示画面において上記の各種編集処理の対象とするページを、例えばキーボード3に設けられたカーソルキーやマウス4等によって選択指示することができる。なお、この選択指示は、ページ単位で行うこともできるし、分割一覧表示画面における行単位あるいは列単位で行うこともできる。同図では、右側の列の一番上に表示されたページ番号部分が暗表示された例を示しているが、このように、操作者がどのページを選択したかが分かるようになっている。
【0035】ここで、上記したS13ないしS19の各編集処理の詳細な説明に先立って、画像管理情報について説明する。上記画像管理情報は、主に画像管理手段30によって作成・更新され、図5に示す資料管理ファイルと図6に示すページ管理ファイルとにそれぞれ格納される。」

サ 「【0087】また、本画像ファイリング装置は、分割一覧表示画面の表示方法を、操作者の指定に応じて様々に変化させる。つまり、図28に示した画面では、第1ページから第40ページまでの各ページの画像の一部が切り出されて、これらが同時に一覧表示されているが、同図に示した表示状態はあくまでもその一例であって、操作指示手段28にて操作者が行った指示に従って、画像加工手段35は様々な表示状態を実現する。
【0088】例えば、操作者が、1ページ分の画像から切り出して表示させる領域の大きさ(原画像の分割数N)を入力することにより、画像加工手段35は一次記憶手段32上の画像をN個の領域に分割し、これらの領域の1つを表示手段34へ出力する。例えば、原画像の分割数Nとして10が入力された場合、画像加工手段35は、図32に示すように、原稿1ページ分の画像を第1領域から第10領域までの10個の領域に分割する。
【0089】なお、操作者が分割数Nを大きく設定する程、より小さな領域が切り出されて表示されるため、表示手段34の画面により多くのページの小領域を同時に表示できる。一方、分割数Nを小さくすれば、同時に表示できるページ数は少なくなるが、各ページのより広い領域が表示される。つまり、操作者は必要に応じて分割数Nを設定すれば良い。また、分割した領域の内のいずれの領域を表示させるかを、操作者が操作指示手段28にて指示することができる。」

前掲ケないしサの記載によると引用例2には、

「資料原稿から読み取った画像を保存した画像ファイリング装置内の資料に対して、並び替えや頁入替処理、頁追加処理などの編集処理を操作者が指示する際、前記画像ファイリング装置に保存されている資料の各ページの画像の一部が表示された分割一覧表示画面を表示手段に表示し、操作者が、前記分割一覧表画面の下部に表示されたファインクションキーを指示すると共に、各種編集処理の対象となるページを選択指示する画像ファイリング装置。」

の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

(3) 対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「スキャナ部」、「蓄積装置」、「画像形成部」は、本願補正発明の「読み取り装置」、「記憶装置」、「印刷機」に相当する。また、引用発明1の「変更」とは、引用例1の段落【0030】に記載されているように、「印刷濃度の変更」、「残り複写部数の変更」のようなものであって、ユーザが行う操作であるから、引用発明1の「変更された出力設定」は、本願補正発明の「ユーザの設定した出力設定」に相当する。さらに、引用発明1の「デジタル複写機」は、「スキャナ部で原稿を読み取り、読み取った画像データを蓄積装置に蓄積し、変更された出力設定を用いて、蓄積された画像データを用いて画像形成部において印刷する」ものであって、「デジタル複写機」がスキャナ装置、記憶装置、プリンタ装置などの複数の装置から構成される複合的な装置であることは技術常識であることを鑑みれば、引用発明1の「デジタル複写機」は、本願発明と同様に「デジタルコピーシステム」ということができる。したがって、引用発明1の「スキャナ部で原稿を読み取り、読み取った画像データを蓄積装置に蓄積し、変更された出力設定を用いて、蓄積された画像データを用いて画像形成部において印刷するデジタル複写機」は、本願補正発明の「読み取り装置で原稿を読み取り画像データを生成し、画像データを外部記憶装置に保存し、ユーザの設定した出力設定に従って保存した画像データを印刷機で印刷するデジタルコピーシステム」に相当する。
引用発明1の「Nページの原稿」は、本願補正発明の「複数頁からなる一連の原稿」に相当するから、引用発明1の「Nページの原稿で複数部のコピーを行う際、ユーザがコントロールパネルから複写部数などの複写動作の設定を行うと共に試し印刷ボタンを押下し、1部目の印刷を終了した時点で一時停止し」との処理は、本願補正発明の「複数頁からなる一連の原稿の印刷にて複数部数出力指定であった場合に1部数分の印刷だけを出力設定に従って出力させ」ることに相当する。
引用発明1の「ページ差し替え処理」は、本願補正発明の「一連の原稿の画像データに係る編集処理」に相当し、引用発明1において「ページ差し替え処理」の具体的な処理である、「ページの再読み込みを行わせ、蓄積装置4に蓄積されている画像データのうち指定したページの画像データと新しく読み込んだ画像データとを蓄積装置の内部で差し替えを行」うことは、「コントローラ」が行うものであるから、引用発明1の「コントローラ」は本願補正発明の「編集手段」に相当する。また、引用発明1は「ページ差し替えボタンを押す」ことにより、前記「差し替え処理」を開始することから、前記「ページ差し替えボタンを押す」こと、または、それに伴い発生されることが明らかな信号は、本願補正発明の「編集要求」に相当する。さらに、引用発明1の「部数表示部やページ表示部、差し替えボタン、コピーボタンなどから構成されるコントロールパネル」は、表示部を備え、ページ差し替えの操作、つまり編集要求を行うものであるから、本願補正発明の「表示装置」に相当する。したがって、引用発明1の「部数表示部やページ表示部、差し替えボタン、コピーボタンなどから構成されるコントロールパネルのページ差し替えボタンを押すことによってページ差し替え処理を開始し、コントローラは、ページの再読み込みを行わせ、蓄積装置4に蓄積されている画像データのうち指定したページの画像データと新しく読み込んだ画像データとを蓄積装置の内部で差し替えを行い」との処理は、本願補正発明の「一連の原稿の画像データに関る編集処理を編集手段により実行させる為の編集要求を、表示装置を介して、ユーザから受付け可能にし、且つ、該一連の原稿の画像データに関る前記編集要求に応じた編集処理を、前記編集手段により、実行させ」ることに相当する。
引用発明1の「差し替えられた」画像データは、本願補正発明の「編集処理済み」の一連の原稿の画像データに相当する。したがって、引用発明1の「印刷が再開されたときに、差し替えられた画像データを用いて2部目以降の印刷を前記画像形成部により行う」ことは、本願補正発明の「編集処理済みの一連の原稿の画像データの印刷を印刷機により実行可能にする」ことに相当する。
引用発明1は、ユーザが「コピーボタンを押す」ことにより「印刷の再開」を行うことから、前記「コピーボタンを押す」こと、または、それに伴い発生されることが明らかな信号は、本願補正発明の「印刷続行要求」に相当する。また、上述したように、引用発明1の「部数表示部やページ表示部、差し替えボタン、コピーボタンなどから構成されるコントロールパネル」は、本願補正発明の「表示装置」に相当する。よって、引用発明1の「印刷の再開として、ユーザが・・・前記コントロールパネルのコピーボタンを押すと、蓄積装置に蓄積された画像データを用いて前記画像形成部により2部目以降の印刷を再開する」ことは、本願補正発明の「一連の原稿の印刷を続行させる為の印刷続行要求を、表示装置を介して、ユーザから受け付け可能にし」及び「前記表示装置を介して該印刷続行要求をユーザから受付けた場合」に相当する。さらに、引用発明1においては、ユーザがページ差し替えボタンを押すことなく、前記コントロールパネルのコピーボタンを押した場合、【図4】からも明らかなように、ページ差し替え処理(編集処理)は当然実行されない。したがって、引用発明1が「印刷の再開として、ユーザがページ差し替えボタンを押すことなく、前記コントロールパネルのコピーボタンを押すと、蓄積装置に蓄積された画像データを用いて前記画像形成部により2部目以降の印刷を再開する」ものであること、及び【図4】の記載から、引用発明1には、本願補正発明の「一連の原稿の印刷を続行させる為の印刷続行要求を、表示装置を介して、ユーザから受け付け可能にし、且つ、前記表示装置を介して該印刷続行要求をユーザから受付けた場合に、編集手段による編集処理の実行無しに、前記一連の原稿の印刷を印刷機により続行可能にする」ことに相当する構成が認められる。

以上を踏まえると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

【一致点】
読み取り装置で原稿を読み取り画像データを生成し、画像データを記憶装置に保存し、ユーザの設定した出力設定に従って保存した画像データを印刷機で印刷するデジタルコピーシステムにおいて、
複数頁からなる一連の原稿の印刷にて複数部数出力指定であった場合に1部数分の印刷だけを出力設定に従って出力させ、且つ、
前記一連の原稿の画像データに関る編集処理を編集手段により実行させる為の編集要求を、表示装置を介して、ユーザから受付け可能にし、且つ、該一連の原稿の画像データに関る前記編集要求に応じた編集処理を、前記編集手段により、実行させ、且つ、
前記編集処理済みの前記一連の原稿の画像データの印刷を前記印刷機により実行可能にするものであって、
前記一連の原稿の印刷を続行させる為の印刷続行要求を、前記表示装置を介して、ユーザから受け付け可能にし、且つ、前記表示装置を介して該印刷続行要求をユーザから受付けた場合に、前記編集手段による編集処理の実行無しに、前記一連の原稿の印刷を前記印刷機により続行可能にする、ことを特徴とするデジタルコピーシステム。」

【相違点】
a 「記憶装置」が、本願補正発明では「外部」記憶装置であるのに対して、引用発明1では、デジタル複写機の「内部」の蓄積装置である点。

b 「編集要求」が、本願補正発明では「1部数分の印刷がなされた一連の原稿のプレビュー画像を表示装置に表示させ、且つ、表示装置によりプレビュー画像が表示された前記一連の原稿の画像データ」に関して行われるものであるのに対して、引用発明1では、部数表示部やページ表示部、差し替えボタン、コピーボタンなどから構成されるコントロールパネルのページ差し替えボタンを押すことにより、ページ差し替え(編集要求)を受付けており、プレビュー画像が表示された画像データに関して行われるものではない点。

c 「印刷続行要求」が、本願補正発明では「1部数分の印刷がなされた一連の原稿のプレビュー画像を表示装置により表示させる場合でも、前記一連の原稿に含まれる全ページのプレビュー画像を前記表示装置により表示させる事無く、前記一連の原稿の印刷を続行させる為の印刷続行要求を、少なくとも前記一連の原稿の1ページ分のプレビュー画像は表示させたままの状態」で行われるものであるのに対し、引用発明1では、部数表示部やページ表示部、差し替えボタン、コピーボタンなどから構成されるコントロールパネルのコピーボタンを押すことで、印刷の再開(印刷続行要求)が行われるものである点。

(4) 当審の判断
まず、上記相違点aについて検討する。デジタル複写機の技術分野において、記憶装置を装置内部に設けることも、装置外部に設けることも、例を挙げるまでもなく周知な技術であって、記憶装置をどちらに設けるかは、当業者であれば適宜選択し得た設計変更にすぎない。したがって、引用発明1において、「蓄積手段」を外部記憶装置として構成することは、当業者が容易になし得たことである。

次に、上記相違点bについて検討する。
引用発明2における「各ページの画像の一部」は、画像ファイリング装置内に保存された画像の一部が表示されたものであるから、本願補正発明の「プレビュー画像」に相当するものであるから、引用発明2は、本願補正発明の「原稿のプレビュー画像を表示装置に表示させ、且つ、表示装置によりプレビュー画像が表示された原稿の画像データ」に関して編集処理を指示(要求)する点で共通するものである。
引用発明1において、蓄積装置に蓄積されている画像は「1部数分の印刷がなされた一連の原稿」であるのは、上記「3 対比」で述べた通りである。
そして、引用発明1と引用発明2とは、記憶された画像に対して編集処理を行うという共通の機能に関するものであるから、引用発明1に引用発明2の技術を適用し、引用発明1において、「ページ差し替え(編集要求)」を「1部数分の印刷がなされた一連の原稿」の「プレビュー画像を表示装置に表示させ、且つ、表示装置によりプレビュー画像が表示された」前記一連の原稿の画像データに関して行うように構成することは、当業者が容易になし得た事項である。

さらに、上記相違点cについて検討する。引用発明1において、蓄積装置に蓄積されている画像は、1部数分の印刷がなされた一連の原稿であること、それに対して印刷続行要求を行うものであることは、上記「3 対比」で述べた通りである。
そして、一連の原稿に含まれる全ページのプレビュー画像を表示装置により表示させる事無く、前記一連の原稿の印刷を指示する為の印刷要求を、少なくとも前記一連の原稿の1ページ分のプレビュー画像は表示させたままの状態で、表示装置を介して、ユーザから受付け可能とすることは、印刷ページのプレビュー表示として用いられている慣用技術にすぎない(例えば、本件出願以前に発売されたマイクロソフト社の「Microsoft Excel Ver.4.0」などに実装されている。また、特開2001-187479号公報(特に、段落【0023】?【0024】)参照)。したがって、引用発明1において、印刷続行要求を行う際に、一連の原稿に含まれる全ページのプレビュー画像を表示装置により表示させる事無く、前記一連の原稿の印刷を指示する為の印刷続行要求を、少なくとも前記一連の原稿の1ページ分のプレビュー画像は表示させたままの状態で、表示装置を介して、ユーザから受付け可能とするよう構成することは、当業者が容易になし得たことである。

そして、これら相違点を総合的に考慮してみても当業者が推考し難い格別のものであるとすることはできず、本願補正発明の奏する効果を検討してみても、引用例に記載された発明から想定される範囲を越えるものではない。

したがって、本願補正発明は、引用例1及び2に記載された発明、並びに慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5) むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成18年11月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年2月14日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】
読み取り装置で原稿を読み取り画像データを生成し、画像データを外部記憶装置に保存し、ユーザの設定した出力設定に従って保存した画像データを印刷機で印刷するデジタルコピーシステムにおいて、
複数頁からなる一連の原稿の印刷にて複数部数出力指定であった場合に1部数分の印刷だけを出力設定に従って出力させ、且つ、
前記1部数分の印刷がなされた一連の原稿のプレビュー画像を表示装置に表示させ、且つ、
前記表示装置によりプレビュー画像が表示された前記一連の原稿の画像データに関る編集処理を編集手段により実行させる為の編集要求を、前記表示装置を介して、ユーザから受付け可能にし、且つ、該一連の原稿の画像データに関る前記編集要求に応じた編集処理を、前記編集手段により、実行させ、且つ、
前記編集処理済みの前記一連の原稿の画像データの印刷を前記印刷機により実行可能にするものであって、
前記一部数分の印刷がなされた前記一連の原稿のプレビュー画像を前記表示装置により表示させる場合でも、前記一連の原稿に含まれる全ページのプレビュー画像を前記表示装置により実行させる事無く、前記一連の原稿の印刷を続行させる為の印刷続行要求を、前記表示装置を介して、ユーザから受付け可能にし、且つ、前記表示装置を介して該印刷続行要求をユーザから受付けた場合に、前記編集手段による編集処理の実行無しに、前記一連の原稿の印刷を前記印刷機により続行可能にする、ことを特徴とするデジタルコピーシステム。」

2 引用例
引用例1、2及びその記載事項は、前記「第2 2 (2)」の項で認定したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2 補正却下の決定」で検討した本願補正発明において、「印刷続行要求」を「ユーザから受付け可能」にする際の限定事項である「少なくとも前記一連の原稿の1ページ分のプレビュー画像は表示させたままの状態で」行うとの構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 2 (4)」に記載したとおり、引用例1、2、及び慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、2、及び慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、2、及び慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-21 
結審通知日 2008-05-27 
審決日 2008-06-11 
出願番号 特願2002-166776(P2002-166776)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 輝久  
特許庁審判長 原 光明
特許庁審判官 西山 昇
廣川 浩
発明の名称 デジタルコピーシステム及び試しコピー方法  
代理人 高梨 幸雄  

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