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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1182028
審判番号 不服2005-17591  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-14 
確定日 2008-07-31 
事件の表示 平成 9年特許願第 53464号「遊技機における可倒式表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 9月14日出願公開、特開平10-244066〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯
本願は平成9年3月7日の出願であって、平成17年8月10日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年9月14日付けで本件審判請求がされるとともに、同年10月6日付けで明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。


第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論 ]
平成17年10月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正内容

本件補正は特許請求の範囲の補正を補正事項に含んでおり、特許請求の範囲の補正に限ってみると、請求項2を削除するとともに、請求項1を次の(補正前)から(補正後)へと変更するものである。

(補正前)
「遊技機間に設けられて当該遊技機を用いて遊技を行う遊技者に対して所定の情報を表示する、遊技機における可倒式表示装置であって、
前記可倒式表示装置は、前記情報を表示する液晶パネルと操作部とを有しており、
前記液晶パネルの周囲は表示枠体で覆われ、当該表示枠体の上部と下部は回動軸に取り付けられ、
前記回動軸にて、前記遊技機の前面側に対して垂直状の位置から遊技者が正視可能な位置に、前記液晶パネルと前記表示枠体とが一体となって回動可能であり、
前記表示枠体には、前記液晶パネルと同じ側の面の異なる位置に前記操作部が設けられている、
ことを特徴とする遊技機における可倒式表示装置。」(下線部は省略)

(補正後)
「遊技機間に設けられて当該遊技機を用いて遊技を行う遊技者に対して所定の情報を表示する、遊技機における可倒式表示装置であって、
前記可倒式表示装置は、前記情報を表示する液晶パネルと操作部とを有しており、
前記液晶パネルの周囲は表示枠体で覆われ、当該表示枠体の上部と下部は、前記遊技機間に取り付けられる表示部受け枠体の回動軸に取り付けられ、
前記回動軸にて、前記遊技機の前面に対して垂直状の位置であり、且つ前記液晶パネルを前記遊技機の遊技者側に向けつつ、前記表示部受け枠体よりも張り出した位置から遊技者が正視可能な位置に、前記液晶パネルと前記表示枠体とが一体となって回動可能であり、
前記表示枠体には、前記液晶パネルと前記操作部とが同じ側の面の上下に配置されている、
ことを特徴とする遊技機における可倒式表示装置。」

本件補正前後の請求項1を比較すると、補正前の「回動軸に取り付けられ」を「、前記遊技機間に取り付けられる表示部受け枠体の回動軸に取り付けられ」と限定し(以下、「補正事項1」という。)、補正前の「前面側に対して垂直状の位置から」を「前面に対して垂直状の位置であり、且つ前記液晶パネルを前記遊技機の遊技者側に向けつつ、前記表示部受け枠体よりも張り出した位置から」と限定し(以下、「補正事項2」という。)、補正前の「前記液晶パネルと同じ側の面の異なる位置に前記操作部が設けられている」を「前記液晶パネルと前記操作部とが同じ側の面の上下に配置されている」と限定する(以下、「補正事項3」という。)ものである。
そうすると、本件補正は請求項2を削除するとともに、補正事項1-3による請求項1の限定を行うものであり、その点で特許請求の範囲の減縮(平成18年改正前特許法第17条の2第4項2号該当)を目的とするものと認める。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)について、特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうかを検討する。

2.補正発明の認定

補正発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される、「1.補正内容」に(補正後)として示したとおりのものと認める。

3.引用刊行物に記載される事項の認定

本願出願前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用された登録実用新案第3032427号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の記載がされている。

ア.「パチンコ台を所定の幅を有する狭隘部を介して複数列設してなるパチンコ台設備に設けられ、種々の情報を画像表示する表示体を備えたパチンコ台設備用ディスプレイ装置において、
上記パチンコ台周囲に取付けられ上記表示体を上記狭隘部の前方に支持するとともに上記狭隘部の前方の投影空間内に入る部分の幅が該狭隘部の幅と同等もしくはそれ以下に形成された支持体を備え、上記表示体の表示面に直交する方向の幅を上記狭隘部の幅と同等もしくはそれ以下に形成し、該表示体をその表示面が上記狭隘部の面に略直交し該狭隘部の前方の投影空間内に入る収納位置及び該収納位置から上記表示面の角度が変更されるよう突出する突出位置に移動可能に上記支持体に支持したことを特徴とするパチンコ台用ディスプレイ装置。」(【請求項1】)

イ.「上記表示体の一側端部を上記支持体に対して回動可能に軸支したことを特徴とする請求項1または2記載のパチンコ台用ディスプレイ装置。」(【請求項3】)

ウ.「上記支持体に、上記表示体の表示制御を行なうための制御ボタンを設けたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6または7記載のパチンコ台用ディスプレイ装置。」(【請求項8】)

エ.「・・・ 表示体10は、例えば、CRTや液晶ディスプレイ等からなる画像表示部11(実施の形態では液晶ディスプレイ)と、画像表示部11を収納するケース12とを備え、全体が略直方体状に形成されている。この表示体10の表示面10aに直交する方向の幅Tは、狭隘部2の幅Dと同等もしくはそれ以下に形成されている。・・・ 更に、表示体10の前面には、表示体10を移動させるための把手16が設けられている。この把手16は、画像表示部11の下側に設けられている。」(段落【0010】)

オ. 「次に、遊戯者がこのディスプレイ装置Sを使用するときは、以下のようにする。先ず、操作部31の電源スイッチを入れる。そして、表示体10の画像表示部11の画像を見ながら、把手16をもって、表示体10を収納位置Aから突出位置Bに移動させ、適宜の角度位置に位置決めする。この場合、表示体10を適宜の角度位置に位置させることができるので、遊戯者の体型や着座した状態等の条件に合わせて最適な位置に位置決めすることができる。また、把手16を持って表示体10を移動できるので、操作が容易になるとともに、把手16が表示面10aの下側に設けられているので、画像表示部11の表示面10aに手が触れにくく、表示面10aを汚しにくくなることから、表示面10aの保護が図られる。」(段落【0015】)

カ.「また、表示体10を見る際には、表示体10は、パチンコ台間に位置させられているので、目線をパチンコ台1の上の方に上げなくても良いことから、それだけ、疲労が低減させられる。しかも、遊戯者の体型や着座した状態等の条件に合わせて最適な角度位置に調整されているので、この点でも疲労が低減させられる。」(段落【0017】)

キ.「尚、上記実施の形態においては、表示体10を支持体20に対して回動可能に軸支したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、自在に折り曲げ可能な自在アームや、ユニバーサルジョイントを介して取付け、角度調整を多方向にできるようにする等、適宜変更して差し支えない。但し、回動自在に軸支した場合には、構造も簡単で、安価に作成できるというメリットがある。」(段落【0019】)

ク. 「尚また、支持体20の形状は上述したものに限定されるものではなく、・・・・、種々の形状に形成して良い。また、表示体10やランプ30のデザインも適宜変更して良い。」(段落【0020】)

ケ.また、引用例1の【図1】及び【図3】には、矢印によって、表示体の回動が上下軸の周りであることが図示されている。

4.引用刊行物記載の発明の認定

引用例1の【請求項1】における「パチンコ台を所定の幅を有する狭隘部を介して複数列設してなるパチンコ台設備に設けられ、種々の情報を画像表示する表示体を備えたパチンコ台設備用ディスプレイ装置」は、後続する箇所に記載されているように、「上記表示体」が「狭隘部の前方に支持」されており、また「該表示体」を「表示面の角度が変更されるよう」「移動可能に・・・支持」しているものであるから、これらを整理すると「パチンコ台を所定の幅を有する狭隘部を介して複数列設してなるパチンコ台設備に設けられ、パチンコ台設備の狭隘部の前方に支持されて、種々の情報を画像表示する、角度変更されるディスプレイ装置」と言い換えることができる。

ウ.に示した【請求項8】の記載に従えば、該ディスプレイ装置には「表示体の表示制御を行うための制御ボタン」を設けることが開示されている。
「表示体」の具体態様は、エ.に示した記載のとおり、「表示体10」は「画像表示部11(実施の形態では液晶ディスプレイ)と、画像表示部11を収納するケース12とを備え」るものである。そして、イ.に示した【請求項3】の記載に従えば「表示体」は「支持体に対して回動可能に軸支」されることが開示されており、ここでの「支持体」はア.に示した記載のとおり「表示体を上記狭隘部の前方に支持するとともに上記狭隘部の前方の投影空間内に入る部分の幅が該狭隘部の幅と同等もしくはそれ以下に形成された支持体」であるから、「狭隘部に取り付けられた」ものということができる。さらに、ケ.に示したとおり【図1】及び【図3】の図示から、表示体の回動は上下軸の周りであることが開示されている。
これらを整理すると、引用例1には、「液晶ディスプレイである画像表示部11と、画像表示部を収納するケース12とを備える表示体10を、狭隘部に取り付けられた支持体に対して上下軸周りに回動可能に軸支」する技術事項が開示されている。

【請求項1】における「該表示体をその表示面が上記狭隘部の面に略直交し該狭隘部の前方の投影空間内に入る収納位置及び該収納位置から上記表示面の角度が変更されるよう突出する突出位置に移動可能に上記支持体に支持した」については、オ.に示した「遊技者がこのディスプレイ装置Sを使用するときは、以下のようにする。・・・表示体10の画像表示部11の画像を見ながら、把手16をもって、表示体10を収納位置Aから突出位置Bに移動させ」との記載と合わせると、「収納位置」において「遊技者が画像を見ることができる状態」ということができる。また、オ.において後続する「・・・突出位置Bに移動させ、適宜の角度位置に位置決めする・・・適宜の角度位置に位置させることができるので、遊戯者の体型や着座した状態等の条件に合わせて最適な位置に位置決めすることができる」という記載と合わせると、「突出位置」への移動は「遊技者にとって最適な角度位置」への移動である。さらに、カ.に示した「表示体10を見る際には・・・目線をパチンコ台1の上の方に上げなくても良いことから、それだけ、疲労が低減させられる。しかも、遊戯者の体型や着座した状態等の条件に合わせて最適な角度位置に調整されているので、この点でも疲労が低減させられる。」という記載も合わせれば、「最適な角度位置」は遊技者が「視認」するのに最適な角度位置であることが明らかである。
すなわち、引用例1には、「その表示面が上記狭隘部の面に略直交し該狭隘部の前方の投影空間内に入る収納位置であって、かつ、画像表示部の画像を遊技者が見ることができる状態から、遊技者にとって視認に最適な角度位置に移動可能」という技術事項が開示されているということができる。

以上をまとめると、引用例1には、

「パチンコ台を所定の幅を有する狭隘部を介して複数列設してなるパチンコ台設備に設けられ、
パチンコ台設備の狭隘部の前方に支持されて、種々の情報を画像表示する、角度変更されるディスプレイ装置であって、
ディスプレイ装置には表示体の表示制御を行うための制御ボタンを備え、
液晶ディスプレイである画像表示部11と、画像表示部を収納するケース12とを備える表示体10を、狭隘部に取り付けられた支持体に対して上下軸周りに回動可能に軸支し、
その表示面が上記狭隘部の面に略直交し該狭隘部の前方の投影空間内に入る収納位置であって、かつ、画像表示部の画像を遊技者が見ることができる状態から、遊技者にとって視認に最適な角度位置に移動可能である、
パチンコ台設備における角度変更されるディスプレイ装置」

の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

5.補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定

引用発明の「パチンコ台を所定の幅を有する狭隘部を介して複数列設してなるパチンコ台設備に設けられ、パチンコ台設備の狭隘部の前方に支持されて、種々の情報を画像表示する、角度変更されるディスプレイ装置」は、前段部分において「狭隘部」がパチンコ台間であることが記載されており、また情報の表示が遊技者に対するものであることは明白であるから、補正発明における「遊技機間に設けられて当該遊技機を用いて遊技を行う遊技者に対して所定の情報を表示する、遊技機における可倒式表示装置」に相当する。

引用発明の「表示体の表示制御を行うための制御ボタン」は補正発明における「操作部」に、また「液晶ディスプレイである画像表示部11」は「液晶パネル」にそれぞれ相当するから、補正発明において「前記可倒式表示装置は、前記情報を表示する液晶パネルと操作部とを有して」いることは、両者で共通している。

引用発明における「画像表示部を収納するケース12とを備える表示体10」は、「ケース12」が「画像表示部」である液晶ディスプレイの周囲を枠状に囲むことは当然であるから、この点は補正発明における「前記液晶パネルの周囲は表示枠体で覆われ」なる事項と一致する。

引用発明における「表示体10を、狭隘部に取り付けられた支持体に対して上下軸周りに回動可能に軸支」は、「狭隘部」が補正発明における「遊技機間」と一致し、また表示体の「回動可能」な「軸支」が回動軸への取り付けでなされること、表示体の取り付けが液晶ディスプレイ面自体ではなく「ケース12」(補正発明における「表示枠体」に相当)の部分でなされることが明らかである。さらに、引用発明において「軸支」機能を含めた「支持体」は、「表示部軸支部材」という限度において補正発明の「表示部受け枠体」と一致する。
すなわち、引用発明における「表示体10を、狭隘部に取り付けられた支持体に対して上下軸周りに回動可能に軸支」と、補正発明における「当該表示枠体の上部と下部は、前記遊技機間に取り付けられる表示部受け枠体の回動軸に取り付けられ」とは、「当該表示枠体は、前記遊技機間に取り付けられる表示部軸支部材の回動軸に取り付けられ」という限度で一致する。

引用発明において「回動可能に軸支」された「表示体」の角度位置の移動は、表示体を構成する「液晶ディスプレイである画像表示部11と、画像表示部を収納するケース12」が一体で行うことが明らかであるから、補正発明において「前記回動軸にて」「前記液晶パネルと前記表示枠体とが一体となって回動可能」とされることは、引用発明と一致している。

引用発明における、「その表示面が上記狭隘部の面に略直交し該狭隘部の前方の投影空間内に入る収納位置であって、かつ、画像表示部の画像を遊技者が見ることができる状態から、」について検討すると、表示面が「上記狭隘部の面に略直交」していることは、「狭隘部」を介して「複数列設」されている「パチンコ台」の前面に対しても略直交しているに相違なく、また「画像表示部の画像を遊技者が見ることができる状態」であるからには、表示面は遊技者側を向いていなければならないから、引用発明の上記構成は、補正発明における「前記遊技機の前面に対して垂直状の位置であり、且つ前記液晶パネルを前記遊技機の遊技者側に向けつつ」に相当する。

引用発明における「視認に最適な角度位置」は、補正発明における「遊技者が正視可能な位置」と一致することが明らかである。

引用発明において「ケース12」に「液晶ディスプレイである画像表示部11」が収納されていることは、補正発明における「前記表示枠体には、前記液晶パネルと前記操作部とが同じ側の面の上下に配置されている」と、「前記表示枠体には、前記液晶パネルが配置されている」との限度で一致する。

以上をまとめると、補正発明と引用発明は、

「遊技機間に設けられて当該遊技機を用いて遊技を行う遊技者に対して所定の情報を表示する、遊技機における可倒式表示装置であって、
前記可倒式表示装置は、前記情報を表示する液晶パネルと操作部とを有しており、
前記液晶パネルの周囲は表示枠体で覆われ、当該表示枠体は、前記遊技機間に取り付けられる表示部軸支部材の回動軸に取り付けられ、
前記回動軸にて、前記遊技機の前面に対して垂直状の位置であり、且つ前記液晶パネルを前記遊技機の遊技者側に向けた位置から遊技者が正視可能な位置に、前記液晶パネルと前記表示枠体とが一体となって回動可能であり、
前記表示枠体には、前記液晶パネルが配置されている
ことを特徴とする遊技機における可倒式表示装置」

である点で一致し、以下の各点で相違あるいは一応のところ相違する。

<相違点1>
補正発明では表示枠体の「上部と下部」が取り付けられると記載されているのに対して、引用発明では、上下軸周りに回動可能に軸支されるとはいえ、「上部」と「下部」を取り付けるとの明記がない点。

<相違点2>
補正発明における表示部軸支部材は、「表示部受け枠体」とされ、表示枠体が遊技機の前面に対して垂直状の位置で「前記表示部受け枠体よりも張り出」すのに対して、引用発明ではそのような記載がない点。

<相違点3>
補正発明の「操作部」は、「表示枠体」の「液晶パネル」と「同じ側の面の上下」という配置関係であるのに対し、引用発明においてはそのような記載がない点。

6.相違点の判断及び補正発明の独立特許要件の判断

(1)相違点1について

上下軸周りに回動可能に軸支される部材を、その軸方向の両側である「上部と下部」で回動軸に取り付けることは、きわめて単純かつありがちな選択に過ぎないから、引用発明においてこれが直接記載はされていないという意味での相違点1は、実質的な相違点といえるものではない。また、これを実質的な相違点と扱っても、引用発明において軸支される表示体のケースを、その軸方向両側部で回動軸に取り付けるという、単純かつありがちな選択を採用して、相違点1に係る補正発明の構成を得ることは設計事項である。

(2)相違点2について

引用発明において表示体を軸支する部材は、狭隘部の面に略直交する支持位置で表示体が「表示部受け枠体よりも張り出」すような「表示部受け枠体」ではないが、表示体を回動可能に軸支する部材として、回動軸方向以外の方向への張り出し長さが表示体より短い枠状の部材を用いることは、本件出願前に頒布された特開平6-99777号公報(原審における平成17年5月20日付けの拒絶理由においても周知技術として参照された文献の一つである)における第13-14図(第13図の図番106参照)、及び第1-12図(図番18参照)に図示される支持部材がこれに該当するように、周知技術である。しかも、引用例1には、オ.及びカ.に示したように、表示体の回動軸支を行う支持体の形状変更や表示体のデザイン変更、さらには回動軸支以外の角度可変支持構造への変更に至るまで、適宜採用してよいことが記載されている。そのため引用発明においては、表示体を回動可能に支持する軸支部材の構造についても、適宜形状の部材を採用する設計変更が十分に許容されていることが明らかである。
そうであれば、引用発明における表示体の軸支部材形状として、前記周知の形状である、回動軸方向以外の方向についての張り出し長さは表示体より短い枠状のものを採用し、すなわち表示体が狭隘面に直交する支持位置において「より張り出した」状態となる「表示部受け枠体」を採用して、相違点2に係る補正発明の構成を得ることは設計事項と言わざるを得ない。

(3)相違点3について

引用発明には、操作部と液晶パネルを同じ面の上下に配置することは記載がされていないが、両者を回動可能な表示体上の同じ面に配置することは、本件出願前に頒布された実願平3-82336号(実開平5-27721号)のCD-ROM(原審における平成17年8月10日付けの査定の理由においても周知技術として参照された文献の一つである)の【図2】-【図3】(図番5及び図番22参照)、あるいは本件出願前に頒布された特開平6-154249号公報の第3欄第17-20行及び【図1】(図番21及び図番22参照)に示されるとおりの周知技術である。さらに、後者の【図1】においては「液晶表示パネル」(図番21)の下側に「操作部」(図番22)を配置する設計も示されている。
そして、引用発明における「制御ボタン」は「表示体の表示制御を行うため」のものであるから、表示体自体との関連性が密接なボタンであることに加えて、引用例1においてはク.に示したとおり「支持体20の形状は上述したものに限定されるものではなく、・・・・種々の形状に形成して良い。また、表示体10やランプ30のデザインも適宜変更して良い。」(段落【0020】)と記載があるから、表示体等の設計変更に任意性があることが明らかである。さらに、引用例1ではオ.に示したとおり、表示面の下側に設けた把手について「操作が容易になるとともに、把手16が表示面10aの下側に設けられているので、画像表示部11の表示面10aに手が触れにくく」という記載がされているので、表示面の下側という位置が、操作容易であるとともに表示面に手が触れないという意味で、遊技者が操作する部材の配置に好適な位置であることも、示唆されているということができる。
これらに照らせば、引用発明において表示体の表示制御を行うための制御ボタンを、前掲2つの周知技術の如く、回動可能な表示体の液晶と同じ面に配置する設計とすることは設計事項であり、さらに前掲後者の周知技術の如く、ボタンの配置を液晶表示部の下側とすることも設計事項と言わざるを得ない。
すなわち、相違点3に係る補正発明の構成を得ることは、設計事項である。

(4)補正発明の独立特許要件の判断

相違点1-3は実質的相違点ではないか、又は設計事項程度のものであり、これら相違点に係る補正発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。

したがって、補正発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

すなわち、本件補正は平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反している。

[補正の却下の決定のむすび]

以上述べたとおり、本件補正は平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反しているので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されなければならない。

よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件審判請求についての判断

1.本願発明の認定

平成17年10月6日付け手続補正は当審において却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年7月15日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される、「第2 補正の却下の決定」の「1.補正内容」において(補正前)として示したとおりのものと認める。

2.引用刊行物記載の発明の認定

本願出願前に頒布された刊行物である、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1には、「第2 補正の却下の決定」の「4.引用刊行物記載の発明の認定」において認定したとおりの引用発明が記載されている。

3.本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定、及び進歩性の判断

本願発明は補正発明に対して、「第2 補正の却下の決定」の「1.補正内容」で認定した補正事項1-3の補正がされる前のものである。すなわち本願発明は、補正発明における「、前記遊技機間に取り付けられる表示部受け枠体の回動軸に取り付けられ」が「回動軸に取り付けられ」と、「前面に対して垂直状の位置であり、且つ前記液晶パネルを前記遊技機の遊技者側に向けつつ、前記表示部受け枠体よりも張り出した位置から」が「前面側に対して垂直状の位置から」と、「前記液晶パネルと前記操作部とが同じ側の面の上下に配置されている」が「前記液晶パネルと同じ側の面の異なる位置に前記操作部が設けられている」と置き換えられたものである。

本願発明と引用発明とは、補正発明と本願発明との相違点1、及び相違点3のうち配置の「上下」を除く部分において相違し、その余の点で一致する。

そして、上記相違点1については、補正発明について検討したとおり、引用発明と本願発明との実質的相違点ではなく、また設計事項である。

また、上記相違点3のうち配置の「上下」を除く部分については、補正発明において検討したとおり、引用発明において、本件出願前に頒布された実願平3-82336号(実開平5-27721号)のCD-ROM(原審における平成17年8月10日付けの査定の理由においても周知技術として参照された文献の一つである)の【図2】-【図3】(図番5及び図番22参照)に示される周知技術の設計を採用することで、これに係る本願発明の構成を得ることができた、設計事項である。

すなわち、上記引用発明との相違点に係る本願発明の構成を得ることは、いずれも困難ではない。そして、そのようにして本願発明の構成を採用したことによる効果も格別のものとは認められない。

したがって、本願発明は原査定の理由に示された引用例に記載される引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-23 
結審通知日 2008-05-27 
審決日 2008-06-16 
出願番号 特願平9-53464
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 56- Z (A63F)
P 1 8・ 572- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治小林 英司  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 有家 秀郎
森 雅之
発明の名称 遊技機における可倒式表示装置  
代理人 岡田 英彦  

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