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審決分類 審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 訂正を認める。無効としない G01D
審判 全部無効 発明同一 訂正を認める。無効としない G01D
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない G01D
管理番号 1182853
審判番号 無効2002-35464  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-10-29 
確定日 2008-08-06 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2619728号「記録紙」の特許無効審判事件についてされた平成16年1月28日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成16年(行ケ)第83号 平成17年2月17日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第2619728号に係る手続の経緯の概要は、以下のとおりである。

平成2年1月25日 特許出願
平成9年3月11日 特許権の設定登録
平成9年6月11日 特許掲載公報の発行

平成11年6月3日 特許無効の審判の請求1
(平成11年審判第35263号、請求人:リンテック株式会社)
平成12年3月28日 審決(請求不成立)
平成12年5月2日 東京高裁へ出訴
(平成12年(行ケ)第149号、原告:リンテック株式会社)
平成13年2月22日 判決(請求棄却)

平成11年9月27日 特許無効の審判の請求2
(平成11年審判第35526号、請求人:リンテック株式会社)
平成12年6月13日 審決(請求不成立)
平成12年7月28日 東京高裁へ出訴
(平成12年(行ケ)第280号、原告:リンテック株式会社)
平成13年2月22日 判決(請求棄却)

平成12年2月16日 特許無効の審判の請求3
(無効2000-35092号、請求人:リンテック株式会社)
平成13年3月2日 審決(請求不成立)
平成13年4月10日 東京高裁へ出訴
(平成13年(行ケ)第147号、原告:リンテック株式会社)

平成14年10月29日 特許無効の審判の請求4:本件無効審判
(無効2002-35464号、請求人:リンテック株式会社)
平成14年1月24日 答弁書(被請求人)
平成15年9月2日 口頭審理陳述要領書(請求人)
平成15年9月2日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
平成15年9月2日 上申書(被請求人)
平成15年9月2日 口頭審理
平成15年9月30日 意見書(被請求人)
平成15年10月2日 意見書(請求人)
平成16年1月28日 審決(請求不成立)
平成16年3月5日 東京高裁へ出訴
(平成16年(行ケ)第83号、原告:リンテック株式会社)
平成17年2月17日 判決(審決取消)
平成17年2月17日 上申書(被請求人)
平成18年4月18日 上告受理却下の決定
(平成17年(行ヒ)第170号)

平成18年4月24日 上申書(被請求人)
平成18年5月10日 上申書(被請求人)
平成18年5月19日 上申書(請求人)
平成18年5月30日 無効理由通知、職権審理通知
平成18年6月29日 意見書、訂正請求書(被請求人)
平成18年7月3日 意見書(請求人)
平成18年8月7日 無効審判請求書補正書、弁駁書
平成18年9月19日 訂正拒絶理由通知、
平成18年10月6日 手続補正書(訂正請求書)
平成18年10月23日 意見書(被請求人)
平成18年11月13日 上申書(請求人)

第2 請求人の主張及び証拠方法
1.請求人は、「特許第2619728号の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、その理由として以下の無効理由1ないし3を挙げている。

[無効理由1]
訂正後の本件請求項1に係る発明は、甲第20号証ないし甲第23号証に示される本件出願前の周知技術または技術常識及び甲第40号証の記載を考慮すると、本件出願の出願日前の特許出願であってその出願後に出願公開(特開平2-80288号)がされた特願昭63-232200号(出願人:本州製紙株式会社、発明者:諸貫克己、佐々木恵二)の願書に最初に添付した明細書(甲第16号証、公開公報:甲第17号証)に記載された発明と同一であり、かつ、上記の出願の発明者が本件特許発明の発明者と同一であるとも、また本件出願の時においてその出願人が上記出願の出願人と同一であるとも認められないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。

[無効理由2]
訂正後の本件請求項1に係る発明は、本件出願前に頒布された甲第24号証(特公昭50-14567号公報)に記載された発明に基づき、または、これと甲第18、19号証に記載された発明の組み合わせから、さらにこれらに周知技術または技術水準としての甲第26号証ないし甲第29号証を加えた各甲号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

[無効理由3]
訂正後の本件特許明細書の記載は、特許法第36条第4項の規定を満たしていないから、訂正後の請求項1に係る発明は、特許を受けることができない。

2.請求人はさらに、平成18年8月7日付けの弁駁書において、訂正請求書で求める訂正は、発明を不明りょうとするものであり、特許法第126条第1項ただし書きに該当せず、同法第126条第3項の要件を満たしていないから当該訂正は認めるべきできなく、訂正前の本件請求項1及び2に係る発明は、無効理由1、2により特許を受けることができないものである旨、主張している。

3.請求人提出の証拠方法
・甲第1号証ないし甲第31号証(審判請求書に添付)
甲第1号証:特許第2619728号公報(本件特許公報)
甲第2号証:特願平2-15644号出願当初明細書
甲第3号証:平成3年4月25日付け手続補正書
甲第4号証:平成4年12月14日付け手続補正書
甲第5号証:平成5年8月24日付け拒絶理由通知書
甲第6号証:平成5年11月12日付け意見書(添付書類有り)
甲第7号証:平成5年11月12日付け手続補正書
甲第8号証:平成6年11月14日付け拒絶査定
甲第9号証:平成7年1月5日付け審判請求書
(平成7年審判第401号)
甲第10号証:平成7年2月6日付け審判請求理由補充書
甲第11号証:平成7年2月6日付け手続補正書
甲第12号証:平成7年7月6日付け「特許法第161条の4第3項の規定に基づく報告書」
甲第13号証:平成8年9月26日付け拒絶理由通知書(手交)
甲第14号証:平成8年9月26日付け手続補正書
甲第15号証:平成8年10月23日付け審決
(注:甲第1?15号証は、本件の手続の経緯に関する書類である。)

甲第16号証:特願昭63-232200号出願当初明細書「感熱記録体」
甲第17号証:特開平2-80288号公報「感熱記録体」(甲第16号証の公開公報)
甲第18号証:表面、Vol.26(1988年)、No.6、392?403頁、財部邦英「中空樹脂顔料の機能とその応用展開」
甲第19号証:色材、Vol.61(1988年)、No.9、494?508頁、財部邦英「中空樹脂顔料の性質と応用」
甲第20号証:特開昭62-5886号公報「感熱記録体」
甲第21号証:特開昭64-8088号公報「感熱記録体の製造方法」
甲第22号証:特開昭49-21153号公報「計測器用感熱または感圧記録紙」
甲第23号証:特公昭43-17821号公報「不透明フイルムの製造法」
甲第24号証:特公昭50-14567号公報「感圧コピーシートおよびその製造法」
甲第25号証:リンテック株式会社、柴崎俊久作成の平成13年12月15日付け「チャンピオン特許(特公昭50-14567)の説明」
甲第26号証:日本国有鉄道、若原彦一作成の昭和52年4月20日付け「記録計用紙(タコグラフ)の試験結果について」
甲第27号証の1:矢崎総業(株)製タコグラフ用記録紙(TCO-15-5 1日用 120K)のコピー
甲第27号証の2:矢崎総業(株)製タコグラフ用記録紙(TCO-15-5 S-7 120K)のコピー
甲第28号証:日本製紙(株)の原反を使用した小芝記録紙社製タコグラフ用記録紙(MSM TCO-15-5 120km)(No.24×7-120)のコピー
甲第29号証:LP社(ベルギー国)製タコグラフ用記録紙(LP806AUT 3300U/MIN)のコピー
甲第30号証:レンカー社(ドイツ国)の原反を使用した小芝記録紙社製タコグラフ用記録紙(KTC TCO15-6 140km)(M26H-140K)のコピー
甲第31号証:リンテック株式会社 永島孝作 作成の2001年10月13日付け「他社製タコグラフチャート紙」

・甲第32号証ないし甲第43号証(口頭審理陳述要領書に添付の参考資料1ないし12)
甲第32号証(参考資料1):リンテック株式会社、柴崎俊久作成の2003年7月24日付け「感熱紙について」
甲第33号証(参考資料2)参考資料2:JIS D 5607-1968「自動車用運行記録計」
甲第34号証(参考資料3):社団法人自動車技術会編「新編 自動車工学便覧 1984」58?59頁(特に、59頁右欄5行)、昭和59年10月10日発行
甲第35号証(参考資料4):特公昭47-35030号公報「記録用材料」
甲第36号証(参考資料5):特公昭43-778号公報「感圧記録材料」
甲第37号証(参考資料6):特公昭42-20141号公報「記録材料」
甲第38号証(参考資料7):特公昭42-3251号公報「記録材料」
甲第39号証(参考資料8):特公昭47-51737号公報「感圧記録材」
甲第40号証(参考資料9):カタログ「ローペイク OP-84J」ロームアンドハースジャパン株式会社発行、1?8頁
甲第41号証(参考資料10):平成13年(行ケ)第147号特許取消決定取消請求事件の「被告第四準備書面」(平成14年11月25日付け、被告:三水株式会社)
甲第42号証(参考資料11):リンテック株式会社、永島孝作作成の平成15年8月18日付け「本件特許発明と本州特許並びにチャンピオン特許との関係」
甲第43号証(参考資料12):特開昭57-137323号公報「微小球の乾燥及び膨張方法」

・甲第44号証ないし甲第55号証(平成15年10月2日付け意見書に添付の参考資料13ないし23)
甲第44号証(参考資料13):リンテック株式会社、柴崎俊久作成の2003年9月9日付け「隠蔽層の厚さ」
甲第45号証(参考資料14):特開昭64-14075号公報「感熱記録紙」
甲第46号証(参考資料15):リンテック株式会社、柴崎俊久作成の平成13年9月3日付け「手続補正対比表」
甲第47号証(参考資料16):リンテック株式会社、柴崎俊久作成の2003年9月9日付け「上申書反論」
甲第48号証(参考資料17):リンテック株式会社、柴崎俊久作成の平成15年9月4日付け「チャンピオン特許(特公昭50-14567)の説明」
甲第49号証(参考資料18):リンテック株式会社、柴崎俊久作成の2003年8月28日付け「請求項1記載の「記録紙」についての対比表」
甲第50号証(参考資料19):リンテック株式会社 永島孝作作成の2003年9月19日付け「「JIS D 5607-1968」と「尾見鑑定書(三水特許実施例の追試)」との関係」
甲第51号証(参考資料20):東京農工大学教授 尾見信三作成の平成14年2月9日付け「鑑定書(三水特許実施例の追試)」
甲第52号証(参考資料21):小芝記録紙株式会社 作成の2002年2月15日付け「鑑定書」
甲第53号証(参考資料22):東京農工大学教授 尾見信三作成の平成14年2月9日付け「鑑定書(本州特許当初明細書の実施例追試)」
甲第54号証(参考資料23):リンテック株式会社 並木伸一 作成の2003年9月29日付け報告書「隠蔽層の膜厚について」

・甲第56号証ないし甲第83号証及び甲第85号証(平成18年5月19日付け上申書に添付)
甲第56号証:リンテック株式会社、永島孝作作成の平成14年5月22日付け「報告書(三水品は感熱記録紙と成り得る)」
甲第57号証:リンテック株式会社、柴崎俊久作成の平成16年5月7日付け「陳述書」
甲第58号証:株式会社東京環境測定センター作成の平成16年5月10日付け「分析試験成績書」
甲第59号証:リンテック株式会社、永島孝作作成の平成16年5月13日付け「報告書」(「株式会社東京環境測定センターへの分析依頼及び分析試験成績書についての補充報告)、
甲第60号証:新編臨床検査講座11「医用工学概論」、医歯薬出版株式会社、1989年3月20日第1版第3刷発行、185?189頁
甲第61号証:新編臨床検査講座10「検査機器総論」、医歯薬出版株式会社、1989年3月20日発行、222?223頁
甲第62号証:「医学生物学大辞典第2巻」メヂカルフレンド社、昭和58年12月22日第1版第1刷発行、1205頁「心電計」の項
甲第63号証:特許・実用新案審査基準(特許庁)平成64年12月、第3部明細書の補正、1?4頁
甲第64号証:東京工業大学、高分子学科教授 渡辺順次作成の2004年5月12日付け「見解書-チャンピオン発明と三水発明について-」
甲第65号証:リンテック株式会社、並木伸一作成の2004年5月13日付け「陳述書(東京工業大学 渡辺順次教授の見解書について))」
甲第66号証:実公昭29-10475号公報
甲第67号証:平成3年3月8日最高裁第二小法廷判決、昭和62年(行ツ)第3号(いわゆるリパーゼ判決)
甲第68号証:「情報産業と記録紙」化学と工業33巻22号(1980)社団法人日本化学会発行、73頁表1
甲第69号証:「新・紙加工便覧」紙業タイムス社、昭和55年11月15日発行、687頁表2.2-1
甲第70号証:特公昭41-6113号公報「診断用機械」
甲第71号証:リンテック株式会社、永島孝作作成の平成16年5月13日付け「陳述書」
甲第72号証:特開平3-220415号公報(本件公開公報)
甲第73号証:「小学館英和中辞典」株式会社小学館、昭和55年12月5日初版1刷発行、1753頁右欄「sty・lus」の項
甲第74号証:米国特許第2,739,909号明細書、同訳文
甲第75号証:実願昭57-62444号(実開昭58-164773号)のマイクロフイルム「記録用紙」
甲第76号証:特開昭60-223873号公報「水性塗料組成物」
甲第77号証:「理化学辞典」株式会社岩波書店、平成7年9月8日第4版第10刷発行、143頁左欄「エマルション」の項
甲第78号証:「理化学辞典」株式会社岩波書店、平成7年9月8日第4版第10刷発行、1146頁左欄「分散系」の項
甲第79号証:JIS K5500-1987「JISハンドブック塗料」第1版第1刷、1990年4月20日発行
甲第80号証 JIS T1011-1988 医用電気機器用(共通編)平13年7月28日10刷発行、12頁「熱ペンレコーダ」の項
甲第81号証:実願昭49-156934号(実開昭51-83366号)のマイクロフイルム「チャート紙」
甲第82号証:特開昭60-69103号公報「水不溶性心/さやポリマー粒子の水性分散液の調製」
甲第83号証:リンテック株式会社、柴崎俊久作成の2006年7月28日付け「陳述書(水性)」
甲第85号証:竹田政民ら「記憶・記録・感光材」株式会社学会出版センター、1985年10月20日発行、135?140頁

・甲第84号証(平成18年8月7日付け弁駁書に添付)
甲第84号証:リンテック株式会社、柴崎俊久作成の2006年7月21日付け「陳述書-着色原紙の色調とは-」

・甲第86号証ないし甲第88号証(平成18年11月13日付け上申書に添付)
甲第86号証:カタログ「EXPANCEL MICROSPHRES」総代理店日本フィライト株式会社(1999年8月制作)
甲第87号証:特開昭59-201894号公報「感熱転写材」
甲第88号証:特開昭59-145273号公報「通孔性熱接着シート及びその製造方法」

第3 被請求人の主張の概要及び証拠方法
1.被請求人は、本件訂正請求は、訂正の要件を備えているものであり、訂正は認められるべきであると主張している。

2.被請求人は、乙第1号証ないし乙第6号証を提出し、上記無効理由1に対しては、訂正後の請求項1に係る発明は、特願昭63-232200号の出願当初の明細書(甲第16号証)に記載された発明と同一でない旨、無効理由2に対しては、訂正後の請求項1に係る発明は、本件出願前に頒布された甲第24号証、甲第18号証、甲第19号証、及び甲第26号証ないし甲第29号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない旨、また無効理由3に対しては訂正後の本件特許明細書の記載は明りょうで有る旨、反論している。

3.また、被請求人は、後記する当審において通知した無効理由4に対しては、訂正請求により訂正された訂正明細書により、無効理由4は解消した旨主張している。

4.被請求人提出の証拠方法
・乙第1号証及び乙第2号証(答弁書に添付)
乙第1号証:東京高裁平成7年(行ケ)304号事件、平成10年3月25日判決
乙第2号証:東京高裁平成13年(ネ)4146号特許権差止等請求控訴事件、平成14年10月30日判決

・乙第3号証(口頭審理陳述要領書に添付)
乙第3号証:「広辞苑 第4版」1357頁

・乙第4号証(上申書に添付)
乙第4号証:神津磁治雄著「合成樹脂塗料」174?180頁(株)高分子刊行会、昭和41年12月10日

・乙第5号証及び乙第6号証(平成18年6月29日付け訂正請求書に添付)
乙第5号証:東京高裁平成13年(行ケ)第147号事件、平成16年6月28日判決
乙第6号証:東京高裁平成16年(行ケ)第83号事件、平成17年2月17日判決

第4 当審における無効理由
当審においては、訂正前の特許請求の範囲に係る発明は、記録方法が限定されない「記録紙」であるところ、訂正前の明細書の発明の詳細な説明には、インクを用いない室温の尖針の摺動する力により記録が可能な記録紙については記載されているが、その他の方法による記録紙については何等記載がなく、訂正前の本件明細書の記載は、平成2年改正前特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものであるから、訂正前の本件請求項1及び請求項2に係る特許は、特許法第123条第1項第3号の規定により、無効にすべきものである旨の無効理由(以下、「無効理由4」という。)を通知した。

第5 補正の適否及び訂正の適否についての判断
1.訂正請求についての補正の適否
被請求人は平成18年10月6日付け手続補正書において、訂正請求書の「(3)訂正事項」中の「訂正事項g」の記載を削除し、「訂正事項h」及び「訂正事項i」をそれぞれ「訂正事項g」、「訂正事項h」に繰り上げ、「(4)訂正の原因」中の「7)訂正事項g」についての記載を削除し、「8)訂正事項h 訂正事項hは」を「7)訂正事項g 訂正事項gは」と補正し、「9)訂正事項i 訂正事項eは」を「7)訂正事項h 訂正事項hは」と補正し、「10)その他」を「9)その他」と補正し、補正された訂正明細書のとおりに訂正することを求めている。
上記補正は、訂正事項の削除及び誤記の訂正に相当し、特許法第131条の2第1項の規定に適合する。
したがって、本件訂正の補正を認める。

2.訂正の内容
本件訂正請求は、本件特許明細書を平成18年10月6日付け手続補正書により補正された訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、訂正の内容は次のようなものである(なお、訂正前の本件特許明細書の訂正対象箇所については特許公報の記載箇所で表示する)。
訂正事項a:特許請求の範囲の請求項1及び請求項2の記載
「(1)下記(A)と(B)の重量比が1から3の範囲の組成物からなる隠蔽層(5)が1から20ミクロンの膜厚で着色原紙(1a)、(1b)の表面に形成されたことを特徴とする、記録紙。
(A)隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子
(B)成膜性を有する水性ポリマー
(2)タコグラフ用の請求項1の記録紙。」
を、
「(1)下記(A)と(B)の重量比が1から3の範囲の組成物からなる着色原紙の色調を隠蔽する隠蔽層(5)が1から20ミクロンの膜厚で着色原紙(1a)、(1b)の表面に形成され、室温の尖針の記録ペンによって前記着色原紙の色調が現出するものであることを特徴とする、タコグラフ用記録紙。
(A)隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子
(B)成膜性を有する水性ポリマー」と訂正する。
訂正事項b:特許公報1頁1欄12行の「記録紙」を、「タコグラフ用記録紙」と訂正する。
訂正事項c:特許公報1頁1欄15行の「記録紙」を、「タコグラフ用記録紙」と訂正する。
訂正事項d:特許公報1頁2欄1行の「(A)隠蔽性を有する水性中空孔ポリマー粒子」を、「(A)隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子」と訂正する。
訂正事項e:特許公報2頁3欄9行の「含んでる」を、「含んでいる」と訂正する。
訂正事項f:特許公報2頁3欄25行?26行の「医療用(心電図等)測定記録紙及びダストメーター記録紙」を削除する。
訂正事項g:特許公報3頁5欄26行?28行の「更に本発明の記録紙は、タコグラフ用記録紙としての他、医療用記録紙としても有用である。」を削除する。
訂正事項h:特許公報4頁7欄2行の「資料」を、「試料」と訂正する。

3.訂正の目的の適否及び新規事項の有無
ア.訂正事項aのうち「隠蔽層(5)」を「着色原紙の色調を隠蔽する隠蔽層(5)」とする訂正(以下、「訂正事項aア」という。)は、「隠蔽層(5)」を「着色原紙の色調を隠蔽する」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ.訂正事項aのうち「記録紙」を「タコグラフ用記録紙」とする訂正(以下、「訂正事項aイ」という。)は、「記録紙」の用途を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
ウ.訂正事項aのうち、「室温の尖針の記録ペンによって前記着色原紙の色調が現出するものである」の記載を付加する訂正(以下、「訂正事項aウ」という。)は、記録紙への記録器具及び記録機構を記載することで、記録紙に要求される構造を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項aは、訂正前の本件特許明細書(以下、「訂正前明細書」という。)の請求項2及び「着色された原紙(例えば黒色塗料を塗布した上質紙や黒色に染色した樹脂フィルム)に隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子と成膜性を有する水性ポリマーとを混合して成る組成物を塗布して隠蔽層を形成したものである。」(特許公報3欄39行?43行)、「得られた記録紙は、尖針例えば鉄針、サファイヤー針、ダイヤモンド針等のインクを用いない室温の記録針によって隠蔽層の中空孔ポリマー粒子が潰れて透明化することにより着色原紙の色調が現出され、印字される。」(同5欄10行?13行)、「得られた記録紙は、タコグラフ装置で用いる記録紙として特に好適である。」(同5欄20行?21行)の記載に基づくものであって、願書に添付した明細書の記載の範囲内のものである。
エ.訂正事項bないしdは、訂正事項aに伴って、発明の詳細な説明の記載を、訂正事項aにより訂正された特許請求の範囲の記載と整合させようとするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
オ.訂正事項e及びhは、誤記の訂正を目的とする訂正に該当する。
カ.訂正事項f及びgは、訂正事項aにより特許請求の範囲に係る発明が「タコグラフ用記録紙」に限定されたことに伴い、これ以外の用途の記載を削除しようとするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
そして、訂正事項bないしd、f及びgは、願書に添付した明細書の記載の範囲内のものであり、訂正事項e及びhは、願書に最初に添付した明細書の記載の範囲内のものである。

4.特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項aないしhは、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

なお、請求人は、平成18年8月7日付け弁駁書において、上記訂正事項aア、の「着色原紙の色調を隠蔽する隠蔽層」、訂正事項aウの「着色原紙の色調」は、不明りょうな記載であり、かつ願書に最初に添付された明細書(以下、「当初明細書」という。)に記載された事項に基づかないものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとしても特許請求の範囲を実質的に変更するものであり、訂正事項b及びc、訂正事項f及hは、明りょうでない記載の釈明には相当せず、「タコグラフ用記録紙」とすることにより「記録紙」の技術的意義を変更するものであるから、上記訂正は訂正要件を満たしていない旨、主張しているので、以下検討する。
(1)「着色原紙の色調」に関する訂正について
訂正事項aアにより、「下記(A)と(B)の重量比が1から3の範囲の組成物からなる隠蔽層」は、「下記(A)と(B)の重量比が1から3の範囲の組成物からなる着色原紙の色調を隠蔽する隠蔽層」と訂正されことについて請求人は、訂正後の文は、「下記(A)と(B)の重量比が1から3の範囲の組成物からなる着色原紙の色調」「を隠蔽する隠蔽層」と解されるから意味が不明りょうであると主張するが、ここで訂正による追加された「着色原紙の色調を隠蔽する」は、「下記(A)と(B)の重量比が1から3の範囲の組成物からなる」と並列に「隠蔽層」を限定する事項として追加されたことは明らかであり、明細書における「組成物」についての「通常白い概観を呈する」などの記載からみて、上記記載は、「下記(A)と(B)の重量比が1から3の範囲の組成物からなる、着色原紙の色調を隠蔽する隠蔽層」と解釈することができ、意味が不明りょうであるとはいえない。
そして、訂正事項aア、aウは、いずれも上記3.で検討したとおり願書に添付した明細書(訂正前明細書)の記載に基づくものであって、特許請求の範囲の技術的事項を実質的に変更又は拡張するものではない。
なお、請求人は、「色調」については、当初明細書に記載が無く、かつ当初明細書の記載から明らかでもなく、「着色原紙の色調を隠蔽する」の意味が不明りょうであり、このような不明りょうな記載を加入することは技術的事項の変更にあたると主張している。
しかしながら、「隠蔽層」が、「室温の尖針の記録ペンによって着色原紙の色調が現出するものである」こと、言い換えれば「着色原紙の色調を記録として判読できない程度に隠蔽する」ものであることは、当初明細書に記載された事項から明らかである。
この点については、本件特許に係る平成13年(行ケ)第147号判決(平成16年6月28日言渡、乙第5号証)において、「当初明細書に接した当業者は,本件記録紙の記録機構として,記録ペンの記録紙上を摺動する力により,記録ペンの接する部位における隠蔽層の中空ポリマーの中空孔をつぶして多孔構造を消失させ,隠蔽層の隠蔽性を低下させることにより,着色原紙の色調を記録として判読可能な程度に現出させる機構・・・が記載されているのと同然であると理解するものと認めるのが相当である。」と判示されているところでもある。
(2)「タコグラフ用記録紙」とする訂正に伴う、発明の詳細な説明の訂正について
訂正事項aイは、訂正前の請求項2の記載に基いて「記録紙」を「タコグラフ用」に限定し、それ以外の用途を除外したものであることは明らかであり、訂正事項f及びgは、特許請求の範囲に係る発明が「タコグラフ用記録紙」に限定されたことに伴い、発明の詳細な説明の記載をこれに整合するものであり、特許請求の範囲の技術的意義を変更するものではない。
なお、請求人は、訂正前明細書の実施例1は「記録紙」の実施例であって、「タコグラフ用記録紙」の実施例は記載されていないとも主張しているが、実施例には、実施例1で製造した記録紙に「タコグラフ」用の針で記録したことが記載されており、タコグラフ用としての記録紙が記載されている。
したがって、請求人の主要は採用できない。

5.訂正の適否の結論
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項第1項ただし書き、及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第6 当審の判断
1.本件特許発明
上記のとおり訂正が認められるから、本件特許に係る発明は、平成18年10月6日付け手続補正書により補正された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「(1)下記(A)と(B)の重量比が1から3の範囲の組成物からなる着色原紙の色調を隠蔽する隠蔽層(5)が1から20ミクロンの膜厚で着色原紙(1a)、(1b)の表面に形成され、室温の尖針の記録ペンによって前記着色原紙の色調が現出するものであることを特徴とする、タコグラフ用記録紙。
(A)隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子
(B)成膜性を有する水性ポリマー」
(以下、「本件特許発明」という。)

2.無効理由1について
2-1 先願明細書、甲第20号証ないし甲第23号証及び甲第40号証の記載事項
本件出願前に出願され本件出願後に特開平2-80288号公報(甲第17号証)として公開された特願昭63-232200号の願書に最初に添付された明細書(甲第16号証)には、「感熱記録体」について次のとおり記載されている。
(a)「1.支持体上に着色層を設け、前記着色層上に熱可塑性樹脂からなる中空球体状微粒子を主成分とする層を設けたことを特徴とする感熱記録体。」(特許請求の範囲)、
(b)「[産業上の利用分野] 本発明は感熱記録体に関し、更に詳しくは、支持体上に着色層、その上に白色不透明の感熱層を設け、熱により前記感熱層が溶けて透明となり着色層が顕色する感熱記録体の改良に関する。」(明細書1頁8行?13行)、
(c)「[発明が解決しようとする課題] 近年、このロイコ染料と有機酸との組み合せによる感熱記録体の保存安定性を改良する研究が行なわれているが、未だ充分だとは言えない。そこで本発明者らは発色性、発色画像の保存安定性が良好で、しかもその他の具備すべき条件を満足する感熱記録体を見い出すことを目的として、広くかつ深く検討した結果、顕著な効果を有する感熱記録体を発明するに至った。
[課題を解決するための手段〕 すなわち、本発明は、支持体上に着色層を設け、その上に白色不透明の感熱層を設けた感熱記録体において、その白色不透明の感熱層に熱可塑性樹脂からなる中空球体状粒子を含有させ、従来のロイコ染料と有機酸の組み合わせによる感熱記録体の持つ保存安定性に欠けるという欠点を改良するように構成したものである。
なお、支持体上に着色層を設け、その上に白色不透明の感熱層を設けた感熱記録体は、古くから透明化法(ワックス型感熱紙)として知られており、熱により感熱層が溶けて透明となり、着色層が顕色する方式であって、心電計などに古くから使用されている。」(明細書2頁9行?3頁11行)、
(d)「本発明の感熱記録体は、支持体上に着色層を設け、その着色層上に熱可塑性樹脂からなる中空球体状粒子を主成分とする層を塗工したものからなっている。」(明細書4頁5行?8行)、
(e)「本発明の感熱層に含まれる熱可塑性樹脂からなる中空球体状微粒子は熱可塑性樹脂の殻で形成されている中空球体状すなわちマイクロカプセル状のプラスチックピグメントである。」(明細書4頁10行?13行)、
(f)「本発明の感熱記録体の感熱層中に含まれる中空球体状微粒子の含有量は、発色性の点から感熱層の全固形分の30?100重量%が好ましい。
中空球体状微粒子の粒子径は0.1?4μm、好ましくは1μm以下がよい。
更に本発明では感熱層中の中空球体状微粒子と共に例えばシリカ、クレー、炭酸カルシウム等を併用しても良い」(明細書5頁14行?6頁1行)、
(g)「上記感熱層中に微粒子状に分散された中空球体状微粒子を固着させるバインダーの種類としては、水溶性バインダーとしてポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、カゼイン、ゼラチン、でんぷん、およびこれらの誘導体等が挙げられる。」(6頁2行?7行)、
(h)「中空球体状微粒子は、支持体上に少なくとも1g/m^(2)以上必要であり、好ましくは2?15g/m^(2)程度である。」(6頁8行?10行)、
(i)「本発明に用いられる支持体としては、あらかじめ着色がほどこされた上質紙、中質紙、コート紙を始めとする紙が用いられるが、その他プラスチックシート、フィルムラミネート紙なども使用することが出来る。さらに着色層はカーボンブラックや着色顔料、染料などを前記水溶性バインダー中に分散させた塗工液を、支持体として用いる上記上質紙、中質紙、コート紙を始めとする紙やプラスチックシート、フィルムラミネート紙に塗工して作ってもよい。」(明細書6頁11行?20行)、
(j)「本発明の感熱記録体は上記着色支持体または、支持体に着色層を塗工した後に、さらにその上に中空球体状微粒子を含む塗工液を塗工して作られる。」(明細書7頁1行?4行)、
(k)「実施例1
a)感熱記録体の製造
着色層として支持体上にカーボンブラックを塗工量が3g/m^(2)になるようにマイヤーバーを用いて塗工、乾燥して、カーボン塗工層を設ける。
次にアクリル・スチレン共重合体からなる中空球体状微粒子(ローペイクOP84J 42.5%濃度のエマルジョン)を上記カーボン塗工層上にマイヤーバーを用いて乾燥後の塗工量が5g/m^(2)になるように塗工、乾燥した。
次にスーパーキャレンダー処理を行ないベック平滑度が1000秒になるように処理して感熱記録紙を得た。」(明細書7頁20行?8頁12行)、
(l)「[発明の効果] 以上述べたように、本発明の感熱記録体は、着色支持体上に加熱により不透明から透明に変化する熱可塑性樹脂からなる中空球体状微粒子を主成分とする感熱層を設けることにより、これによって得られる感熱記録体は、保存安定性に優れ、地肌濃度低く、特に感熱塗工面の均一性に優れ、ヘッドマッチング性を向上させることができる。また、従来のロイコ体を用いる感熱記録体に比較して乾燥条件範囲が広く操業条件の設定が楽であり、更に乾燥によるカブリ等も余裕が出るため製造スピードの向上が可能である。これらの利点は感熱層にワックス等を使用した透明化法に比較してもすぐれている。」(明細書11頁下から11行?12頁3行)。

・甲第20号証[特開昭62-5886号公報]には、「感熱記録体」について次のとおり記載されている。
(20a)「(1)支持体上に感熱記録層を設けた感熱記録体において、該支持体と記録層との間に、熱可塑性樹脂からなる外径5μm以下の非発泡性微小中空粒子を含有する中間層、及び、無機または有機顔料を含有する中間層とを設けたことを特徴とする感熱記録体。」(特許請求の範囲)、
(20b)「かかる特定の微小中空粒子は、一般に感熱記録層を構成する後述の如きバインダー中に分散して中間層用の塗液とされるが、特に、エマルジョン(ラテックス)系のバインダーは良好な塗液安定性を与え、しかも弾力性に優れた中間層が得られるため、より好ましく用いられる。なお、微小中空粒子の配合割合は、使用する中空粒子の外径およびその壁厚などに応じて調節されるため、特に限定するものではないが、中空粒子の樹脂成分が中間層の全固形分に対して5?95重景%重量ましくは60?85重量%の範囲となるように配合するのが望ましい。」(2頁右下欄12行?3頁左上欄3行)(20c)実施例1では、スチレン-アクリル系共重合体樹脂からなる微小中空粒子のエマルジョン140部と、スチレン・ブタジェン共重合体ラテックス40部と水20部とからなる組成物を塗布して中間層-1を形成したこと(6頁左下欄4行?16行)。

・甲第21号証[特開昭64-8088号公報]には、「感熱記録体の製造方法」について次のとおり記載されている。
(21a)「支持体上に熱膨張性微小中空粒子を含有する発泡層、及び無機または有機顔料を含有するアンダーコート層を順次形成し、該発泡層を加熱発泡せしめた後、アンダーコート層上に発色剤と呈色剤を含有する記録層を形成することを特徴とする感熱記録体の製造方法。」(特許請求の範囲)、

・甲第22号証〔特開昭49-21153号公報〕には、「計測器用感熱または感圧記録紙」について次のとおり記載されている。
(22a)「タコグラフにおいては・・・解像力の特に優れた記録紙の開発が必要とされている。本発明に用いる感熱または感圧記録紙は従来のこの種記録紙では得られなかった解像力の優れた機能を具備したもので、完全に解像力に対する要求を満足せしめるものである。」(1頁右下欄5行?13行)。

・甲第23号証〔特公昭43-17821号公報〕には、「不透明フィルムの製造法」について次とおり記載されている。
(23a)「本発明の目的は圧力あるいは熱を加えるかあるいは有機溶媒と接触させると不透明層の顕微鏡的空間がつぶれ、その結果その部分だけ選択的に透明化される不透明フィルムの製造および非画像の部分を濃度差あるいは色差を有する像を形成することである。」(1頁左欄22行?27行)、
(23b)「本発明の不透明フィルムは・・・タコグラフ用のシート・・・等に利用することができる。」(1頁左欄下から10行?右欄3行)

・甲第40号証には、「ローペイク OP-84J」について次とおり記載されている。
(40a)「OP-84Jは42.5%のエマルジョンの形で供給され粒子は外形0.55μ、内径0.3μのアクリル/スチレン共重合体の殻で形成されている中空球体状すなわちマイクロカプセル状のプラスチックピグメントです。この殻は非常に硬い樹脂の為、乾燥後の粒子が球状のまま独立しており、連続したフィルムを形成することはありません。中空といっても中に水が入っており、乾燥されると蒸発し、空気と置換して中空上になる非常にユニークな合成顔料として開発されました。」(1頁3行?8行)、
(40b)「OP-84Jは中空球体の為、嵩比重は0.81であり、塗工紙の軽量化が可能です。」(1頁下から2行)

2-2 対比、判断
上記記載事項(a)ないし(k)によれば、先願明細書には、次の発明が記載されていると認められる。
「熱可塑性樹脂からなる中空球体状微粒子、具体的には『アクリル・スチレン共重合体からなる中空球体状微粒子(ローペイクOP84J 42.5%濃度のエマルジョン)』を含有する白色不透明の感熱層が、着色支持体上に形成され、熱により前記感熱層が溶けて透明となり着色層が顕色する感熱記録体。」(以下、「先願発明」という。)。
本件特許発明と先願発明とを対比する。
先願発明における「着色支持体」は、本件特許発明の「着色原紙」に相当する。
先願発明における「白色不透明の感熱層」は、「あらかじめ着色がほどこされた上質紙、中質紙、コート紙を始めとする紙の上に中空球体状微粒子を含む塗工液を塗工して作られ」(摘記事項(h)、(i))、「白色不透明の感熱層」となっているものであり、着色原紙の色調を隠蔽していることは明らかであるから、本件特許発明の「着色原紙の色調を隠蔽する隠蔽層」に相当する。
先願発明における「熱可塑性樹脂からなる中空球体状微粒子」の具体例としてあげられている「アクリル・スチレン共重合体からなる中空球体状微粒子(ローペイクOP84J 42.5%濃度のエマルジョン)」は、本件特許明細書の実施例No.4において、「隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子」として記載されているものであるから(本件公報6欄27行)、「隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子」であることは明らかである。
また、本件特許発明の「タコグラフ用記録紙」と、先願発明における「感熱記録体」とは、「記録紙」である点で共通する。
したがって、両者は
「隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子を含有し、着色原紙の色調を隠蔽する隠蔽層が着色原紙の表面に形成された記録紙。」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:「記録紙」が、本件特許発明では「タコグラフ用記録紙」であるのに対し、先願発明は、「タコグラフ用」のものに限定されていない点。
相違点2:「記録紙」が、本件特許発明では「室温の尖針の記録ペンによって前記着色原紙の色調が現出するものである」のに対し、先願発明では、「熱により前記感熱層が溶けて透明となり着色層が顕色する」ものであって、「室温の尖針の記録ペンによって前記着色原紙の色調が現出するもの」ではない点。
相違点3:「隠蔽層」が、本件特許発明では、「(A)隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子と(B)成膜性を有する水性ポリマーの重量比が1から3の範囲の組成物からなる」のに対し、先願発明では、唯一の実施例においては、隠蔽層はローペイクOP-84Jのみからなるものであり、隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子と成膜性を有する水性ポリマーの重量比が1から3の範囲の組成物からなるものに限定されていない点。
相違点4:隠蔽層の膜厚が、本件特許発明では1?20ミクロンであるのに対し、先願発明では膜厚が限定されていない点。

相違点1について検討する。
先願明細書からは、記録紙の用途は、従来感熱記録紙が使用されていたものであればどのようなものでもよいことが把握でき、タコグラフ用に感熱紙が使用されていることは、甲第22号証及び甲第23号証に記載されているように、本件特許出願前に当業者の技術常識であったことが認められるから、先願明細書からは先願発明の記録紙として、実質的に「タコグラフ用記録紙」が把握でき、相違点1は実質的な差異ではない。

相違点2について検討する。
先願発明は、摘記事項(c)に示されているとおり、発色性、発色画像の保存安定性が良好な感熱記録体を見い出すことを目的とする、熱により感熱層が溶けて透明となり着色層が顕色する記録紙である。
請求人は、平成18年8月7日付け無効審判請求書補正書において、本件特許発明の記録紙は、訂正前の「記録紙」と実質的に相違はないから、平成16年(行ケ)第83号の判決の拘束力により、先願発明と差異がないと主張する。
しかしながら、平成16年(行ケ)第83号判決は、訂正前の本件特許発明が「インクを用いない記録ペンすなわち尖針などで印字(尖針による引掻き記録)できる記録紙」に限定する旨の記載がないにも拘わらず、平成16年1月28日付けの審決が、記録紙について上記のように限定解釈したこと、また数値範囲の臨界的意義について検討していないことから、訂正前の本件特許発明は先願発明と差異がないと判示したのであって、訂正により「室温の尖針の記録ペンによって着色原紙の色調が現出する記録紙」に限定されたのであるから、前判決の拘束力は及ばない。
そして、本件特許発明が「室温の尖針の記録ペンによって着色原紙の色調が現出するものである」との、記録器具及びその記録機構を限定することは、このような記録器具及び記録機構により記録するために要求される構造を有する記録紙であることを限定しているというべきである。
このことは、上記平成13年(行ケ)第147号判決において、「本件記録紙は,・・・着色原紙上に特定の被覆をさせて得られるものであるという構成を有するものであり,この特定の構成から,・・・多様な記録方法すべてに適用可能な記録紙であるということはできず,・・・記録器具及びその記録機構から,記録紙本来の目的である記録を得ることを可能とするために,記録紙に,特定の構造,機能,性質等が要求され,その要求に沿った記録紙の構成が規定されるものというべきである。」と判示されていることからも明らかである。
一方、先願発明は、熱により感熱層が溶けて透明となり着色層が顕色する記録機構に求められる記録紙の構成が規定されているものであり、記録機構が異なる以上、先願発明の記録紙が、室温の尖針の記録ペンによって着色原紙の色調が現出する記録紙に要求される構造を有しているということはできない。

相違点3について検討する。
本件特許発明に係る「タコグラフ用記録紙」は、「隠蔽層」を、「隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子と成膜性を有する水性ポリマーの重量比が1から3の範囲の組成物」から構成すること、及び「1から20ミクロンの膜厚で着色原紙の上に形成された」ものとするものである。
これらの数値範囲についてみると、水性の中空孔ポリマー粒子と成膜性を有する水性ポリマーの重量比について、訂正後の本件特許明細書(以下、「訂正後明細書」という。)には「隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子と成膜性を有する水性ポリマーの重量比が1未満のときは充分な隠蔽性が得られず、しかも室温の記録ペンのペン圧で中空孔ポリマー粒子が潰れ難くなり、記録できない。また重量比が3以上となると実用可能な隠蔽層を形成することができない。」(訂正明細書4頁20行?24行)と記載されていることから見て「重量比が1から3の範囲」は、充分な隠蔽性が得られ、室温の尖針の記録ペンによって中空ポリマー粒子の隠蔽性を低下させることができるのに好適な範囲を示すものと認められる。
一方、先願明細書には、「室温の尖針の記録ペンによって着色原紙の色調が現出する記録紙」は記載されていないから、当然のことであるが、そのような記録を実現するために、水性の中空孔ポリマー粒子と成膜性を有する水性ポリマーの重量比を1から3の範囲に調整することが示されているとすることはできない。

相違点4について検討する。
膜厚について、訂正後明細書には「・・・乾燥により、20?1ミクロンの膜厚の塗膜が形成される量を塗布させねばならない。より好ましい乾燥後の膜厚は10?3ミクロンである。得られる皮膜は着色原紙の色を完全に隠蔽し、通常白い外観を呈する。」(訂正明細書4頁9行?11行)と記載されていることから、「1?20ミクロン」の範囲は、中空ポリマー粒子の隠蔽性を発揮することができ、室温の尖針の記録ペンによって、中空ポリマー粒子の隠蔽性を低下させることができるのに好適な範囲を示すものと認められる。
一方、先願明細書には、「中空球体状微粒子は、支持体上に少なくとも1g/m^(2)以上必要であり、好ましくは2?15g/m^(2)程度である。」(摘記事項(h))、実施例1として「中空球体状微粒子(ローペイクOP84J 42.5%濃度のエマルジョン)を上記カーボン塗工層上にマイヤーバーを用いて乾燥後の塗工量が5g/m^(2)になるように塗工、乾燥した。」(摘記事項(k))と記載されているところ、甲第40号証によれば、「ローペイクOP84J」の嵩比重は0.81であるから、隠蔽層の膜厚を2.5?18.5ミクロン程度とすることが示され、本件特許発明と重複する範囲を含んでいるといえる。
しかしながら、相違点3についてで述べたとおり、先願明細書には、「室温の尖針の記録ペンによって着色原紙の色調が現出する記録紙」は記載されていないから、そのような記録を実現するために、膜厚を1?20ミクロンの範囲に調整することが示されているとすることはできない。

以上のとおり、先願明細書には、室温の尖針の記録ペンによって前記着色原紙の色調が現出する記録紙」について記載されていないから、そのような記録を実現するために、水性の中空孔ポリマー粒子と成膜性を有する水性ポリマーの重量比を1から3の範囲にし、膜厚を1?20ミクロンの範囲することは示されていない。
したがって、本件特許発明が先願発明と同一であるとすることはできない。

2-3 無効理由1のむすび
上記のとおり、本件特許発明は先願明細書に記載された発明と同一でないから、本件特許発明は先願明細書に記載された発明と同一であるので特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるとの請求人の主張は採用できない。

3.無効理由2について
3-1 証拠の記載事項
・甲第24号証〔特公昭50-14567号公報〕には、「感圧コピーシートおよびその製造法」について次のとおり記載されている。
(24a)「1 約1ミクロン以下の平均粒子直径を持つ本質的に球状の空気含有マイクロカプセル不透明化剤よりなる塗膜を持つ基体よりなり、前記不透明化剤は予め決められた部分的圧力により破壊され得るものであり、前記基体は前記不透明化剤の破壊により現出する着色表面を持っている感圧コピーシート。
2 油含有マイクロカプセル原材を作り、この原材を着色表面を持つ基体に塗布し、前記原材を持つ前記表面を加熱して空気含有不透明化剤を作り、それによって前記表面を見かけ上白色にすることを包含する感圧コピーシートの製造法。」(特許請求の範囲)
(24b)「本発明は新規な感圧コピーシステムに関するものである。さらに詳細には、本発明は圧力応用の部分において着色可視マークが得られる乾式感圧コピーシートに関するものであり、またかかるコピーシートの製造法に関するものである。」(1頁1欄36行?2欄3行)、
(24c)「普通のスタイラスあるいはタイプライターによってマイクロカプセル塗膜に圧力を応用することによって、本質的に球状の空気含有マイクロカプセル不透明化剤が破壊され、その結果圧力応用の部分において着色基体が現れ、それによって可視安定画像が得られる。
同様に、多数感圧コピーシステムが重ね合わせた多数のシートを使って可能であり、この場合前記シートの少なくとも一枚は本質的に球状で空気含有マイクロカプセル剤(粒子の平均直径が約1ミクロン以下)よりなる被覆膜を持ちまた着色表面を持つ基体より構成される。・・・
本発明のコピーシステムは従来のコピーシステムに比べて多くの明白な利点を持っている。例えば、マイクロカプセル不透明化剤は予め決められた圧力で破壊されるように構造的集成体で作られる。さらに、マイクロカプセル不透明化剤は本質的に均一な粒子直径をもって作られ、これにより基体へ塗布後圧力に均一に応答するようになる。かくしてこのような被覆膜を持つコピーシートの使用によって均一なマークが得られる。さらに本システムの他の利点は、不透明化剤が本質的に球形であり、すぐれた不透明性およびいんぺい力を持つ表面を作ることである。マイクロカプセル不透明化剤が破壊されてはじめて隠されていた下層の着色基体が出現し、これにより画像が得られる。」(2頁3欄4?37行)、
(24d)「塗布前のマイクロカプセル分散液にバインダーの調節された量を加えることによって、破壊されたマイクロカプセルが上に重ねられたシートの裏面へ転移するのを防止することができる。」(2頁4欄1行?4行)、
(24e)「本発明のマイクロカプセル不透明化剤は、ある適当な方法で油含有マイクロカプセル原材(precursor)を作り次にマイクロカプセルを以下に述べる方法で活性化してマイクロカプセルコア(Core)に空気を入れることにより調製される。
適当なマイクロカプセル原材は例えば
(a) 水に非混和性の油性物質に油溶性、部分縮合、熱硬化性縮合製品を溶かした油性溶液
(b) 水溶性重合物質の水性溶液
を単に混合することを包含する方法によって調製され、これによってエマルジョンが得られ、前記熱硬化性縮合製品および前記水溶性重合物質は相互に作用して固体の交サ結合樹脂性物質を作り、前記エマルジョンに前記重合物質が反応して前記油性物質の核の周りに固体カプセル壁を持つマイクロカプセル原材を作るような条件を与え、次にマイクロカプセルを活性化してマイクロカプセル不透明化剤が得られる。
油含有マイクロカプセル原材は適当な方法で活性化される。例えばスプレイ乾燥により油性のコア物質をマイクロカプセルの通気性が残っている壁から追い出し油と空気を入れ換える。」(2頁4欄22行?43行)、
(24f)「前述の水溶性重合物質は乳化剤およびカプセル化剤の両方の作用をする。・・・水溶性重合物質はホルムアルデヒド縮合重合体と反応してカプセル壁を形成する。好ましい熱可塑性水溶性重合は、スチレン-マレイン酸のアンモニウム塩、ポリビニルアルコール、メチルセルローズ、ヒドロキシチルセルロース・・・などを包含する。」(3頁6欄15行?30行)、
(24g)「本発明の種々の応用に使用される油溶性部分縮合熱硬化性樹脂はまた固体不融解状態において疎水性でなければならない。好ましくは、熱硬化性樹脂は部分縮合ホルムアルデヒド縮合製品として規定される広範囲の製品を包含し、ホルムアルデヒドとヒドロキシベンゼン(フェノール)・・・の縮合製品を包含する。熱の影響によってこれらの樹脂は融解性および(あるいは)溶解性物質から不融解性および不溶解性物質に不可逆的に変化する。」(4頁7欄2行?15行)、
(24h)「エマルジョンの非常に小さい液滴を得るために従って最終的に非常に小さいカプセルを得るために強力な撹拌が必要である。約1ミクロン以下の好ましくは約0.25?約0.8ミクロンの直径範囲のマイクロカプセルが本発明の実施に従って製造される。・・・本発明のマイクロカプセルの壁の厚みはマイクロカプセルの直径の約1/20である。従って約0.25?約1.0ミクロンの直径を持つ本発明の不透明化剤は例えば約0.0125?0.05ミクロン範囲の厚みを持つ。」(4頁7欄36行?41行)、
(24i)「第1図に空気含有マイクロカプセルを塗布したコピーシートを作る二種の方法を説明するものである。第1図に示されているカプセル化工程において、コアは低融点ワックスを含むミネラルスピリットのような油性物質およびホルムアルデヒド縮合製品によって例示され、これは乳化剤例えばスチレン-マレイン酸共重合体の水溶液と混合され、エマルジョン液滴の平均直径が1ミクロン以下になるまで撹拌が続行される。マイクロカプセルは随意的に例えばマイクロカプセル分散液を加熱することによりキュアされ、次に多くの方法のどれか一つが実施される。例えば、マイクロカプセル分散液は例えば80°?約100℃の温度でスプレイ乾燥され、油性物質がカプセル壁の細孔を通って除去され、次に空気含有マイクロカプセルが着色ウエブに塗布され乾燥される。マイクロカプセルが破壊されない限り、マイクロカプセルから油性物質を追い出すためにどんな適当な温度も使用される。
二者択一的に油含有マイクロカプセルは着色ウエブに塗布され、次に塗布されたマイクロカプセルはそれから油を追い出すために加熱される。
一般に、樹脂の分離後のマイクロカプセル分散液には充分な残余の乳化剤があり、追加のバインダーを必要としないエマルジョンのカプセル化が用いられる。メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびポリビニルアセテートエマルジョンの如き物質はバインダーとして使用されているが本発明にも使用される。」(4頁8欄22行?5頁9欄6行)、
(24j)「以下の実施例は、空気含有マイクロカプセル不透明化剤の製法およびそれを使用するコピーシートの作り方を例説するものである。実施例に使用された紙の連量は25インチ×38インチを500枚あるいは合計3300平方フィートである。同様に実施例に使用された紙はボンドペーパー(32.5ポンド/連)である。」(5頁9欄44行?10欄6行)、
(24k)「実施例1 80gのミネラルスピリットに溶解されたキャンデリラワックス2gおよびブチル化メラミンホルムアルデヒド樹脂50%のキシロール-ブタノール溶液20gよりなる混合物がスチレン-マレイン酸共重合体のアンモニウム塩の6%溶液150gおよび10%ポリビニルアルコール溶液10gに乳化させる。乳化はワーリングブレンダーによって行われる。乳化はエマルジョン液滴の平均粒子直径が約0.5ミクロンになるまで続行される。これで油含有マイクロカプセルが得られる。
マイクロカプセル分散液がスプレイ乾燥器に吐出され、過剰の水および溶剤が約90℃の温度でマイクロカプセルから除去され、これによって空気含有マイクロカプセルが得られる。得られた不透明化剤は次にバインダー溶液に懸濁され、樹脂の壁構造の交サ結合が進むように加熱される。この方法においては、カプセルの硬度は、乳化の油性溶剤および水が乾燥により除去された後において応用される熱の量によってさらに調節される。この方法においてはマイクロカプセル不透明化剤の懸濁液が作られる。」(5頁10欄7行?28行)、
(24l)「実施例2 実施例1のマイクロカプセル不透明化剤が、予めフタロシアニンブルー染料で濃青色に着色されたボンドペーパーのウエブに塗布される。得られた紙ウエブは見かけは白色であり、タイプライターの鍵で打たれた場合、鮮明で見易い青色画像がシートに作られる。これは不透明マイクロカプセルが破壊され下部の青色基体が現れるからである。」(5頁10欄29行?36行)、
(24m)「実施例3 実施例1のマイクロカプセル不透明化剤が白色ボンドペーパーのウエブに塗布され、前記ボンドペーパーは予めその一面に黒色塗料が塗布されており、前記塗料は39重量%カーボンブラック水分散液16部;クレイ充テン剤100部(商品名ウルトラホワイト90);50重量%スチレン-ブタジエンラテックス水分散液7部;スチレン-マレイン酸共重合体のアンモニウム塩よりなるバインダーの7重量%溶液;水116部が配合されたものである。
得られたボンドペーパーは両面とも白色である。マイクロカプセル塗膜に普通の筆記圧が与えられると、その被圧部分において黒色基体が現出し、それによって黒色画像が得られる。」(5頁10欄37行?6頁11欄7行)、
(24n)「実施例4 油相に添加されるキャンデリラワックスの代りに低分子量のポリエチレンが使用される以外は実施例1と同じ方法で油含有マイクロカプセルが作られる。得られた油含有マイクロカプセル分散液は赤色ペーパー基体に塗布され、普通の紙の乾燥温度範囲すなわち約50°から約100℃で乾燥され、カプセルのコアからミネラルスピリットが追い出されその部分が空気と入れ換わる。
ペーパーウエブの乾燥後スタイラスが普通の筆記圧で使用され、その結果下層の着色ウエブが出現する。ここにおいても鮮明で見易い画像がシート上に得られる。」(6頁11欄8行?20行)、
(24o)「実施例5 前記実施例のキャンデリラワックスの代りにそれぞれカルナウバワックスおよびパラフィンワックスを使用する二種類の実験で実施例4の方法が繰り返される。マイクロカプセル分散液は黄色ペーパーウエブに塗布され、約90℃の温度で乾燥される。得られたペーパーウエブがタイプライタに使用され、前記と同様にすぐれたコピーが得られる。」(6頁11欄21行?12欄3行)。
(24p)


・甲第18号証は「中空樹脂顔料の機能とその応用展開」と題する論文であり、次の事項が記載されている。
(18a)中空樹脂顔料の製法として、「異層構造粒子エマルジョン法」、「複合粒子エマルジョン法」、「揮発性成分含有法」があること、「異層構造粒子エマルジョン法」において、中空粒子構造を得る方法として「シード重合の最に、アルカリ親和性モノマーをコア成分として乳化重合した後、アンモニア水などの揮発性塩基にてこれを中和し、膨潤して中空化する方法がある。これらの方法で作成したエマルジョンはエマルジョン状態では内部に水を包含していて、乾燥時に水分が揮発し中空となる。」こと(392頁右欄?393頁右欄)、
(18b)「4.1 白色度および隠ぺい性
エマルジョン重合法、異層構造粒子エマルジョン法で作成した中空樹脂顔料の場合には粒子径、中空径の制御が容易で前述のように一次粒子径が0.1?0.8μmのものが得られる。組成的には顔料となるためにはTgが高いポリマーが主成分となっており、水が蒸発してもフィルムを形成せず、粒子状のままの形態が保たれ、その粒子内部が中空であるため中空径をコントロールすることにより、図6のように可視光線の反射および屈折を助長し、白色顔料として機能する(図7)。例えば写真6に示すように同一粒子径の樹脂顔料粒子で中空樹脂顔料の方が非中空のものより圧倒的に隠ぺい性が良好である。顔料としての白度、隠ぺい性は表7に示すように炭酸カルシウム、クレーなどの体質顔料や従来の単なる非中空のポリスチレン系の非中空樹脂顔料と比較すると良好であるが、酸化チタンに比較すると低い値となる。」(396頁左欄)、
(18c)「写真6 中空樹脂粒子エマルジョンの単独隠ぺい性
(a):中空樹脂粒子エマルジョン(大日本インキ化学工業)
(b):ポリスチレン系非中空樹脂粒子エマルジョン
ピグメント/バインダー=2/1(重量比)
塗膜厚:0.05mm(dry)」(396頁右欄)、
(18d)「表7 顔料単独の隠ぺい性
------------------
ピグメント 隠ぺい率
------------------
酸化チタン 0.97
炭酸カルシウム 0.08
チャイナ・クレー 0.11
中空粒子タイプ* 0.55
非中空粒子タイプ 0.15
TiO_(2)/レジンタイプ** 0.88
------------------
ピグメント/バインダー=4/6(重量比)
塗膜厚:0.05mm(dry)
*中空樹脂粒子エマルジョン(大日本インキ化学工業(株))
**Spindrift(ダルクス・オースラリア)」(396頁右欄)
(18e)「5.2紙
中空樹脂粒子エマルジョンを顔料の形で利用する方法は塗料以外の分野でも行われ始めている。・・・表10,11に示すように紙の白色度、不透明性を維持した状態で光沢アップが可能となる。チタンの代替材料として用いることが可能である。中空樹脂粒子はカレンダーの前後で破壊されない紙の分野における中空樹脂粒子顔料の応用はまだ始まったばかりであるが非中空に比べ白色度、不透明性、嵩さなどの向上がもたらされ、K&Nや耐ブリスタの向上なども期待され軽量コート紙、高級紙などの外填用途ばかりでなく、内填関係でも情報記録紙などの高級分野における展開が期待されている」(401頁右欄?402頁左欄)。

・甲第19号証は「中空樹脂粒子の性質と応用」と題する論文であり、次の事項が記載されている。
(19a)「3.中空樹脂粒子の機能
前節に示したような物理的性質をもつ中空樹脂粒子は一般にポリマーTgが高く、常温ではフィルムを形成しない非造膜性のものが多い。そこで造膜性成分と中空樹脂粒子をブレンドしてフィルムを作成し中空樹脂粒子の機能評価を行った。
3.1 白色度、隠ぺい性
隠蔽性は下地を隠す能力で、ピグメントとポリマーの屈折率の差に依存している。・・・通常のポリマーの組合わせだけでは隠ぺい性のある塗膜が得られない。空気の屈折率は1であるので空気を顔料として用いることができればかなり大きい隠ぺい性が得られる。そこで屈折率が1.0の空気をカプセル化した中空樹脂粒子は白色顔料として機能し得る。2節でも示したように、エマルジョン重合法、異層構造粒子エマルジョン法で作成した中空樹脂粒子の場合には粒子径、中空径の制御が容易で一次粒子径で0.1μm?0.8μmのものが得られる。フィルム中の中空樹脂粒子の光散乱挙動は、可視光線の波長の半波長分の中空径があれば、図-8のように可視光線の反射および屈折を助長し、白色顔料として機能する。例えば写真-4に示すように同一粒子径で比較すると、中空の方が非中空のものより圧倒的に隠ぺい性、白色度が良好である。」(498頁左欄?右欄、499頁右欄)、
(19b)「写真-4 中空樹脂粒子エマルジョンの単独隠ぺい性
(a):中空樹脂粒子エマルジョン(大日本インキ化学工業)
(b):ポリスチレン系非中空樹脂粒子エマルジョン
ピグメント/バインダー=2/1(重量比)
塗膜厚:0.05mm(dry)」(499頁左欄)
(19c)「4.2紙
プラスチックパウダーの使用は紙の分野では歴史が古く1970年頃からエマルジョンタイプの非中空樹脂粒子が用いられてい。・・・従って中空樹脂粒子は・・・酸化チタンの代替材料として用いることが可能である。例えば表-7,-8に示すように紙の白色度、不透明性を維持した状態で光沢アップが可能となる。表-8では中空樹脂粒子の優位性が認められるが、写真-7に示すようにここで用いた中空樹脂粒子はカレンダーの前後で破壊されたり変形したりしていない。紙の分野における中空樹脂粒子顔料の応用はまだ始まったばかりであるが非中空に比べ白色度、光沢ばかりでなくK&Nや耐ブリスタの向上等の特徴を活かし、軽量コート紙、板紙、高級紙等の外填用途、それに内填関係でも情報記録紙などの高級分野における展開が今後ますます促進されるであろう。」(505頁左欄?507頁左欄)」。

・甲第26号証は「記録計用紙(タコグラフ)の試験結果について」と題する昭和52年4月20日付の日本国有鉄道作成の書面であり、別紙の表中に
「3.性能及び試験
3.1塗膜性能試験
(2)塗膜の厚さ」という「試験項目」の欄が記載され、これに対応する「規格値」の欄には「常温、常湿(JISZ8703)で20±5μ」と記載されている。

・甲第27号証の1、甲第27号証の2は、本件特許出願前に販売されていたとされる、矢崎総業(株)製タコグラフ用記録紙のコピーである。

・甲第28号証は、本件特許出願前に販売されていたとされる、日本製紙(株)の原反を使用した小芝記録紙社製タコグラフ用記録紙のコピーである。

・甲第29号証は、本件特許出願前に販売されていたとされる、LP社(ベルギー国)製タコグラフ用記録紙のコピーである。

・甲第30号証は、本件特許出願前に販売されていたか不明である、レンカー社(ドイツ国)の原反を使用した小芝記録紙社製タコグラフ用記録紙のコピーである。

・甲第31号証は、「他社製タコグラフチャート紙」と題する2001年10月13日付のリンテック(株)永島孝作 作成の書面であり、甲第27号証の1?甲第30号証の各社タコグラフ用記録紙の概要についての分析内容の説明で、「矢崎総業」、「日本製紙」、「LP(ベルギー)」、「レンカー(ドイツ)」の「白色隠蔽層膜厚」が、それぞれ「10.5μ」、「9.5μm」、「20.0μm/15.7μm」、「7.5μm」と記載されている。

・甲第43号証(参考資料12)[特開昭57-137323号公報]には、「微小球の乾燥及び膨張方法」について次のとおり記載されている。
(43a)「エクスパンセル・・・は、ビニリデン/アクリルニトリル共重合体を有し、発泡剤としてイソブタンを含有する適当な市販微小球製品である。」(2頁右上欄5行?8行)、
(43b)「実施例 水中の微小球の44%混合物を調整した。微小球は、ビニリデンとアクリルニトリルの熱可塑性材料の外殻を有しそして発泡剤はイソブタンである。」(3頁左下欄7行?11行)。

・甲第86号証は、「EXPANCEL MICROSPHRES」のカタログであり、「エクスパンセルWU#642」は、未膨張マイクロスフェアーであること、ガスバリアー性のある熱可塑性プラスチック殻内に少量の液状炭化水素を内包し、重量平均粒径が10?16μmのプラスチック球体であることが記載されている。

・甲第87号証[特開昭59-201894号公報]には、「易揮発性有機液体を内包するマイクロカプセルは市販されており、たとえば・・・エクスパンセル(塩化ビニリデン/アクリルニトリル共重合体を壁剤として発泡剤イソブタンを内包)等があげられる。」(4頁左上欄1行?8行)と記載されている。

・甲第88号証[特開昭59-145273号公報]には、「発泡剤としては、・・・エクスパンセル(日本フェライト社製:ビニリデンとアクリルニトリル共重合体を殻として発泡剤イソブタンを内包しているカプセル)、・・・などがあげられる。」(2頁右下欄8行?18行)と記載されている。

なお、その他の請求人が提出した証拠、被請求人が提出した証拠については、摘示を省略する。

3-2 対比、判断
(1)甲第24号証に記載された発明
上記摘記事項(24a)ないし(24p)の記載によれば、甲第24号証には、次の発明が記載されていると認められる。
「約1ミクロン以下の本質的に球状の空気含有マイクロカプセル不透明化剤よりなる塗膜を持つ基体よりなり、前記不透明化剤はスタイラス又はタイプライターによる部分的圧力により破壊され得るものであり、前記基体は前記不透明化剤の破壊により現出する着色表面を持っている感圧コピーシート。」

(2)対比
本件特許発明と甲第24号証に記載された発明とを対比する。
(i)甲第24号証に記載された発明における「約1ミクロン以下の球状の空気含有マイクロカプセル不透明化剤」は、本件特許発明における「隠蔽性を有する中空ポリマー粒子」に相当する。
甲第24号証に記載された発明における「基体」は「着色表面を持っている」ものであるから、本件特許発明における「着色原紙」に相当する。
甲第24号証に記載された発明における「感圧コピーシート」に記録するのに使用される「スタイラス」は、本件特許発明における「室温の尖針の記録ペン」に相当する。
甲第24号証に記載された発明における「球状の空気含有マイクロカプセル不透明化剤よりなる塗膜」は、基体を隠蔽する表面を作るものであるから(摘記事項(24c))、本件特許発明における「隠蔽層」に相当する。

(ii)次に本件特許発明の「隠蔽層」と甲第24号証に記載された発明における「隠蔽層」(球状の空気含有マイクロカプセル不透明化剤よりなる塗膜)を対比する。
ア.本件特許発明における「隠蔽層」は、「下記(A)と(B)の重量比が1から3の範囲の組成物からなる隠蔽層」とされ、「(A)隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子」「(B)成膜性を有する水性ポリマー」と記載されているところ、訂正後明細書には、(A)について、「水性の中空孔ポリマー粒子とは、水中に分散している中空孔ポリマー粒子のことでありその組成および製造方法は、特許出願公開昭56-32513号、・・・などに記載されている」という記載(訂正明細書3頁1行?6行)があり、本件特許発明の「水性の中空孔ポリマー粒子」とは、「水中に分散している中空孔ポリマー粒子」と解することができ、この点については、請求人も「・・・中空孔ポリマー粒子も水に分散することが必要であって、本件特許ではこれを「水性」としている。」(無効審判請求書補正書17頁10行?12行)と述べており、当事者間に争いがない。
また、(B)については、「成膜性を有する水性ポリマーとは、乳化重合、溶液重合、塊状重合等で合成されたポリマーであり、成膜性を有する」、「この水性ポリマーは水中で分散ないし溶解した状態で提供される」、「水性分散ポリマー」、「水溶解型ポリマー」という記載(同3頁15行?17行、27行)があり、「成膜性を有する水性ポリマー」についても、「水中で分散ないし溶解した状態で提供される成膜性を有するポリマー」と解することができる。
そうすると(A)の「水性の中空孔ポリマー粒子」及び(B)の「成膜性を有する水性ポリマー」は、いずれも分散媒又は溶媒としての水を含む状態のものであるから、「下記(A)と(B)の重量比が1から3の範囲の組成物からなる隠蔽層」は、当該「組成物」を塗布し、乾燥した後は、「隠蔽性を有する中空孔ポリマー粒子と成膜性を有するポリマーを含有する層」となっていることは明らかである。
イ.一方、甲第24号証には、「隠蔽層」の形成方法として次の2つの方法が挙げられている(摘記事項(24i)、(24p))。
[方法1]:熱硬化性樹脂の油性溶液と熱可塑性水溶性重合物質の水溶液を混合攪拌し水中油型エマルジョンすなわち油含有マイクロカプセル(原材)の分散液を形成し、スプレイ乾燥して、油性物質がカプセル壁の細孔を通って除去された空気含有マイクロカプセルを形成し、次に空気含有マイクロカプセルを着色基体に塗布し乾燥する。
[方法2]:熱硬化性樹脂の油性溶液と熱可塑性水溶性重合物質の水溶液を混合攪拌し水中油型エマルジョンすなわち油含有マイクロカプセル(原材)の分散液を形成し、該エマルジョンを着色基体に塗布し、次に塗布されたエマルジョンを加熱し油含有マイクロカプセルから油を追い出し、マイクロカプセルを空気含有マイクロカプセルとする。
そして、[方法1]の実施例に相当する実施例1、実施例2(摘記事項(24k)、(24l))には、「空気含有マイクロカプセルが得られる。得られた不透明化剤は次にバインダー溶液に懸濁され、樹脂の壁構造の交サ結合が進むように加熱される。・・・この方法においてはマイクロカプセル不透明化剤の懸濁液が作られる。実施例1のマイクロカプセル不透明化剤が、予めフタロシアニンブルー染料で濃青色に着色されたボンドペーパーのウエブに塗布される。」と記載されており、「バインダー溶液」について、「メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびポリビニルアセテートエマルジョンの如き物質はバインダーとして使用されている」と記載されているところ、これらのバインダーは「水中で溶解した状態で提供される成膜性を有するポリマー」であり、「成膜性を有する水性ポリマー」といえるから、[方法1]により形成される「隠蔽層」は、「隠蔽性を有する中空ポリマー粒子と成膜性を有する水性ポリマーとの組成物」を塗布し、加熱乾燥して形成される「隠蔽性を有する中空ポリマー粒子と成膜性を有するポリマーを含有する層」といえる。
また、[方法2]の実施例に相当する実施例4(摘記事項(24n))には、「油含有マイクロカプセル分散液は赤色ペーパー基体に塗布され、普通の紙の乾燥温度範囲すなわち約50°から約100℃で乾燥され、カプセルのコアからミネラルスピリットが追い出されその部分が空気と入れ換わる。」と記載されているところ、油含有マイクロカプセルは、熱硬化性縮合製品および熱可塑性水溶性重合物質樹脂が反応した「ポリマー粒子」であり、エマルジョン中には、乳化剤として作用するポリビニルアルコール等の水溶性重合物質が含まれているものであり(摘記事項(24e)、(24f))、これらの水溶性重合物質は「成膜性を有するポリマー」といえるから、[方法2]により形成される「隠蔽層」は、「油含有ポリマー粒子エマルジョン」を塗布し、加熱乾燥して形成される「隠蔽性を有する中空ポリマー粒子と成膜性を有するポリマーを含有する層」といえる。
また、甲第24号証には「塗布前のマイクロカプセル分散液にバインダーの調節された量を加えることによって、破壊されたマイクロカプセルが上に重ねられたシートの裏面へ転移するのを防止することができる。」(摘記事項(24d))、「一般に、樹脂の分離後のマイクロカプセル分散液には充分な残余の乳化剤があり、追加のバインダーを必要としないエマルジョンのカプセル化が用いられる。メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびポリビニルアセテートエマルジョンの如き物質はバインダーとして使用されているが本発明にも使用される。」(摘記事項(24i))との記載があり、方法2において、マイクロカプセル分散液にさらに、バインダー、すなわち「成膜性を有する水性ポリマー」を加えることも示唆されており、[方法2]により形成される「隠蔽層」として、「油含有ポリマー粒子エマルジョンと成膜性を有する水性ポリマーとの組成物」を塗布し、加熱乾燥して形成される「中空ポリマー粒子と成膜性を有するポリマーを含有する隠蔽層」も開示されているといえる。

したがって、両者は、
「隠蔽性を有する中空孔ポリマー粒子と成膜性を有するポリマーを含有し、着色原紙の色調を隠蔽する隠蔽層が着色原紙の表面に形成され、室温の尖針の記録ペンによって前記着色原紙の色調が現出するものである記録紙。」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:「記録紙」が、本件特許発明では「タコグラフ用記録紙」であるのに対し、甲第24号証に記載された発明は、「タコグラフ用」に限定されていない点。
相違点2:「隠蔽層」が、本件特許発明では「(A)隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子と(B)成膜性を有する水性ポリマーの重量比が1から3の範囲の組成物からなる」のに対し、甲第24号証に記載された発明は、「隠蔽性を有する中空ポリマー粒子と成膜性を有する水性ポリマーとの組成物」、「油含有ポリマー粒子エマルジョン」あるいは「油含有ポリマー粒子エマルジョンと成膜性を有する水性ポリマーとの組成物」からなるものであり、本件特許発明の特定の組成物からなるものではない点。
相違点3:隠蔽層の膜厚が、本件特許発明では1?20ミクロンであるのに対し、甲第24号証に記載された発明では膜厚が限定されていない点。

(2)相違点についての判断
(i)相違点1について
甲第24号証に記載の記録手段である「スタイラス」は、上記のとおり「室温の尖針の記録ペン」に相当するものであり、タコグラフ用尖針も含む概念である。そして、甲第26号証ないし甲第29号証には、本件出願前に公知の室温の尖針の記録ペンにより記録するタコグラフ用記録紙が示されており、本件特許出願前に、室温の尖針の記録ペンにより記録するタコグラフ用記録紙は周知であったといえるから、甲第24号証に記載の発明には、記録紙を「タコグラフ用」とすることが実質的に開示されているということができ、相違点1は実質的な差異ではない。

(ii)相違点2について
本件特許明細書の「隠蔽層」について、訂正後明細書に「隠蔽性を有する中空孔ポリマー粒子が完全に分散された形態で供給され」と記載されていることからみて、本件特許発明の「水性の中空ポリマー粒子」すなわち中空ポリマー粒子が水中に分散している状態は、通常水よりも粘度の高い水性ポリマー中に中空ポリマー粒子を直接分散したものに比べて、中空ポリマー粒子の分散性が良好なものとなっていると認められ、「水性の中空ポリマー粒子」と「成膜性を有する水性ポリマー」とを重量比で1から3の範囲混合する組成物においても、中空ポリマー粒子の分散性が良好なものとなり、乾燥後の隠蔽層は、中空ポリマー粒子が、一定の重量比で存在する成膜性を有するポリマー中に均一に分散したものとなっていると認められる。
一方、甲第24号証に示される[方法1]の「隠蔽性を有する中空ポリマー粒子と成膜性を有する水性ポリマーの組成物からなる隠蔽層」は、中空ポリマー粒子と成膜性を有するポリマーの割合を示唆する記載はなく、また、中空ポリマー粒子を成膜性を有する水性ポリマー中に直接分散するものであるから、中空ポリマー粒子の分散状態は本件特許発明の組成物とは異なると考えられ、本件特許発明の「隠蔽層」と、甲第24号証の[方法1]により形成される「隠蔽層」とは、中空ポリマー粒子と成膜性を有するポリマーの割合及び中空ポリマー粒子の分散状態が同じであるとはいえず、両者の「隠蔽層」の構造が同じであるとすることはできない。
また、甲第24号証に示される[方法2]による「油含有ポリマー粒子エマルジョン」は、中空ポリマー粒子とするためには、塗布後に加熱してマイクロカプセル内部の油性物質を追い出す必要があるものであるから「水性の中空ポリマー粒子」には相当しない。また、油含有ポリマー粒子エマルジョン中には、乳化剤として含まれる成膜性を有するポリマーも含まれているから、「油含有ポリマー粒子エマルジョン」あるいは、「油含有ポリマー粒子エマルジョンと成膜性を有する水性ポリマーとの組成物」における、中空ポリマー粒子と成膜性を有するポリマーの割合は不明であり、[方法2]により形成された「隠蔽層」が、本件特許発明の「隠蔽層」と構造が同じであるとすることもできない。

なお、請求人は、平成18年11月13日付け上申書において、甲第85号証ないし甲第87号証を提出して、本件特許明細書において、「隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子」の例として「エクスパンセルWU#642(エクセパンセル社、ケマ・ノーベル社(スエーデン)製造)」が挙げられているが、「エクスパンセルWU#642」は、内部に液状ガスを内包した「空気含有中空孔粒子」であり、これが「隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子」に相当するのであれば、甲第24号証に記載された「空気含有中空ポリマー粒子」も「隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子」に相当する旨、主張しているが、甲第43号証(参考資料12)には、エクスパンセルのような内部に液状ガスを内包した「空気含有中空孔粒子」を水の分散液とすることが示されており、本件特許明細書の上記記載は、このような水に分散させた状態のものを意味していることは明らかであって、上記記載から、本件特許発明の「隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子」が、水に分散していない「空気含有中空ポリマー粒子」までも意味するとすることはできず、他方、甲第24号証に係る「中空孔ポリマー粒子」が水に分散しているといえないことは上述のとおりであって、甲第24号証に「隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子と成膜性を有する水性ポリマーの組成物」が開示されているとすることはできない。

本件出願前に頒布された刊行物である甲第18号証、甲第19号証には、本件特許発明の「中空孔ポリマー粒子」に相当する中空樹脂粒子がエマルジョン法で製造されること、中空樹脂粒子はフィルム形成能がないため、成膜性を有するバインダーと混合したエマルジョンとして塗布し、隠蔽性を有する塗膜を形成することが示されている(摘記事項(18b)、(18c)、(18d)、(19a)、(19b))。
甲第18号証には、中空樹脂粒子として、エマルジョン状態では内部に水を包含していて、乾燥時に水分が揮発し中空となる中空樹脂粒子があることが記載されているところ、甲第20号証には、微小中空粒子のエマルジョンすなわち水性の中空ポリマー粒子と、成膜性を有する水性ポリマーとの組成物からなる塗膜層を有する感熱記録紙が記載されており、水性の中空ポリマー粒子と成膜性を有する水性ポリマーとの組成物から塗膜層を形成することも本件出願前知られていたと言うことができる。
しかし、甲第18号証、甲第19号証には中空孔ポリマー粒子を、白色塗料として使用すること、紙の光沢度向上剤として使用することが示されているにすぎず(摘記事項(18e)、(19c))、中空樹脂粒子の塗布層を有する紙が、室温の尖針の記録ペンにより記録できる記録紙として応用できることを示唆するものでもない、また、甲第20号証の中空ポリマー粒子を含む塗膜層は感熱記録紙の中間層であって、室温の尖針の記録ペンにより記録できる隠蔽層として応用できることを示唆するものではなく、甲第18号証ないし甲第20号証は、そのような記録紙の隠蔽層とするための水性の中空ポリマー粒子と成膜性を有する水性ポリマーとの重量比を示唆するものではない。
また、甲第26号証ないし甲第29号証には、従来のタコグラフ用記録紙の隠蔽層等についての技術事項が記載されているが、タコグラフ用記録紙の隠蔽層として中空ポリマー粒子を使用できることを示唆するものではない。

そもそも、甲第24号証に記載された発明は、(a)水に非混和性の油性物質に油溶性、部分縮合、熱硬化性縮合製品を溶かした油性溶液、及び(b)水溶性重合物質の水性溶液とを単に混合することを包含する方法によって調製され、これによってエマルジョンが得られ、油性物質の核の周りに固体カプセル壁を持つマイクロカプセル原材を作るような条件を与えることにより、予め決められた圧力で破壊されるような中空ポリマー粒子を製造しようとするものであって、中空ポリマー粒子がどのようなものでも使用できるとするものではない。
そして、甲第18号証、甲第19号証及び甲第20号証に「中空ポリマー粒子」として例示されているものは、いずれもスチレンアクリル樹脂であって、甲第24号証に具体的に記載されている上記マイクロカプセルとは材質が異なり、例えば、甲第40号証にはスチレンアクリル樹脂からなる「ローペイクOP-84J」の殻は非常に硬い樹脂であることが記載されており、甲第18号証ないし甲第20号証に記載されている中空ポリマー粒子とバインダーを含有する塗膜層が、タコグラフ用の「室温の尖針の記録ペン」の圧力で破壊され、隠蔽性を低下させることができるものかどうかは予測することができないから、甲第24号証に記載の発明における「隠蔽層」において、「中空ポリマー粒子」として甲第18号証、甲第19号証又は甲第20号証に示される「中空ポリマー粒子」又は「水性の中空ポリマー粒子」を採用することは当業者が容易に想到しうることではない。
また、甲第18号証、甲第19号証には、「中空ポリマー粒子」として形成されたものを水に分散させた「水性の中空孔ポリマー粒子」としてから「成膜性を有する水性ポリマー」と混合することは示されていないから、甲第24号証の[方法1]に開示された「中空ポリマー粒子と成膜性を有する水性ポリマーとの組成物からなる隠蔽層」における「中空ポリマー粒子」を水に分散させた「水性の中空孔ポリマー粒子」とする理由もない。
したがって、甲第24号証に記載の発明における「隠蔽層」を、「隠蔽性を有する水性の中空ポリマー粒子と成膜性を有する水性ポリマーの重量比が1から3の範囲の組成物からなる」ものとすることが、当業者が容易に想到しうるとすることはできない。

(iii)相違点3について
本件特許発明の膜厚「1から20ミクロン」は上記第6 2.2-2で検討したとおり、中空ポリマー粒子の隠蔽性を発揮することができ、室温の記録ペンによって、中空ポリマー粒子の隠蔽性を低下させることができる範囲を示したものと認められるが、甲第24号証には「隠蔽層」に相当する「塗膜」の「膜厚」について何ら記載されていない。
甲第24号証に記載された発明の「隠蔽層」も、中空ポリマー粒子により隠蔽性を発揮することができ、記録ペンによって、中空ポリマー粒子の隠蔽性を低下させることができる膜厚であると認められるが、隠蔽性を低下させるに必要な膜厚は、中空ポリマー粒子の密度、記録ペンの幅や圧力等によって異なるものであるから、相違点2に係る特定の組成物からなる記録紙において、タコグラフの室温の記録ペンによって隠蔽性を低下させることができる範囲を「1から20ミクロン」とすることが、甲第24号証に記載された発明から当業者が容易に想到しうるとすることはできない。
また、甲第18号証及び甲第19号証の隠蔽性を示す実験においては、膜厚は0.05mm(50μm)であり(摘記事項(18c)、(18d)、(19b))、1から20ミクロンの範囲で中空ポリマー粒子により原紙の色調を隠蔽できることは示されていない。

なお、請求人は、甲第26号証ないし甲第31号証を提出し、隠蔽層の厚さが「1から20ミクロン」の範囲に含まれるタコグラフ用記録紙は周知であると主張するが、原紙の色調を隠蔽し、かつ記録ペンにより隠蔽性を低下させるために必要な膜厚は、隠蔽性を発揮する材料により異なることは明らかであり、中空ポリマー粒子を含有していないタコグラフ用記録紙の膜厚から、中空ポリマー粒子により原紙の色調を隠蔽し、かつタコグラフの室温の記録ペンによって、隠蔽性を低下させることができる膜厚を予測することはできない。
また、請求人は、(A)と(B)の重量比を限定したこと、及び膜厚を限定したことには臨界的意義がない旨主張するが、「隠蔽層が着色原紙の表面に形成され、室温の尖針の記録ペンによって前記着色原紙の色調が現出するタコグラフ用記録紙」において、「隠蔽層」を「隠蔽性を有する水性の中空ポリマー粒子と成膜性を有する水性ポリマーの組成物からなる」とすることが従来公知でない以上、数値範囲に臨界的意義があることを要しない。そして、上記数値範囲に技術的意義があることは訂正後明細書の実施例の記載から明らかである。

(3)本件特許発明の作用効果について
本件特許発明は、水性の中空ポリマー粒子を用いることにより、隠蔽層における中空ポリマー粒子の分散性が良好であり、経時的な変色が無く、「隠蔽性を有する水性の中空ポリマー粒子」と「成膜性を有する水性ポリマー」の「重量比が1から3」の範囲の組成物からなるものとすること及び膜厚を1?20μmとすることにより、記録原紙の色調を隠蔽し、かつタコグラフ用の室温の記録ペンによって隠蔽性を低下させることができる作用効果を奏するものであり、さらに隠蔽層が水性の材料のみの組成物のみからなるため、引火性や有毒性等の危険がある有機溶媒や揮発性成分が残存しない記録紙を提供できる効果を奏するものと認められる。

請求人は、上記した証拠方法以外にも種々の証拠方法を提出しているが、これらの証拠は、上記相違点2、3に係る構成を示唆するものではなく、これらの証拠によっても、上記判断は左右されない。

したがって、本件特許発明は、甲第24号証及び甲第18、19号証に記載された発明並びに本件出願前の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

3-3 無効理由2のむすび
以上のとおり、本件特許発明は甲第24号証及び甲第18、19号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとすることはできない。

4.無効理由3について
請求人は、訂正後明細書の発明の詳細な説明には、当初明細書に記載されていない「着色原紙の色調を隠蔽する隠蔽層」、「室温の尖針の記録ペンによって着色原紙の色調が現出するものである」との事項が含まれており、意味が不明りょうであるから、特許法第36条第4項に規定を満たしていない旨主張しているが、上記第3 4.で検討したとおり、上記記載の意味は明りょうであり、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項に規定を満たしていないとすることはできない。

5.無効理由4について
訂正により、無効理由4で指摘した本件明細書の不備は解消された。

第7 むすび
以上のとおり、審判請求人の主張する無効理由はいずれも理由のないものであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1に係る発明を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
記録紙
(57)【特許請求の範囲】
(1)下記(A)と(B)の重量比が1から3の範囲の組成物からなる着色原紙の色調を隠蔽する隠蔽層(5)が、1から20ミクロンの膜厚で着色原紙(1a)、(1b)の表面に形成され、室温の尖針の記録ペンによって前記着色原紙の色調が現出するものであることを特徴とする、タコグラフ用記録紙。
(A)隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子
(B)成膜性を有する水性ポリマー
【発明の詳細な説明】
《産業上の利用分野》
本発明は、インクを用いない記録ペンすなわち尖針などで印字(尖針による引掻き記録)できるタコグラフ用記録紙に関するものである。本発明は、着色された原紙上に下記の(A)及び(B)成分より成る組成物を塗布し乾燥させて得られるタコグラフ用記録紙に関する。
(A)隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子
(B)成膜性を有する水性ポリマー
《従来の技術》
特許出願公告昭34-8163には、インクを用いない記録紙として、硝化綿ラッカーを黒色の原紙に塗布し、多湿度条件下で塗膜層を白色隠蔽化する事により記録紙を得る方法が示されている。日本国特許第520631号には、光散乱層カプセル化層より成り、カプセルを尖針で破壊してカプセルに含まれる溶剤の滲出で光散乱層の一部を透明化する記録紙が示されている。
また、特許出願公告昭41-19274号、特許出願公開昭61-288118号、実用新案出願公開昭58-164773号、同51-83366号、同57-59660号及び実用新案出願公告昭39-33446号には、タコグラフに関する装置及び記録紙が示されている。
これらの公報には、着色原紙の上に種々の隠蔽剤層を塗布する方法が示されている。例えば実用新案出願公告昭39-33446号には、隠蔽剤として顔料を用いる方法、特許出願公告昭34-8163号には、硝化綿白化塗膜を用いる方法等が提案されている。
一方、塗料の分野では、特許出願公開昭60-69103号、特許出願公開昭60-223873号などに、内部に小孔(ミクロボイド)を有する非造膜性ビニル系樹脂エマルジョンと造膜性水性樹脂とを含んでいる水性塗料組成物が開示されており、内部に小孔(ミクロボイド)を有する非造膜性ビニル系樹脂は、隠蔽効果を発揮するので、単独で隠蔽性を有する塗料として使用することができる旨記載されている。しかし、前記非造膜性ビニル系樹脂が応力により容易に潰れること及び潰れた箇所が透明になることは示唆されておらず、隠蔽効果を有する中空孔ポリマー粒子を記録紙の隠蔽剤として利用することも全く示されていない。
《発明が解決しようとする課題》
従来、記録紙として感圧紙、感熱紙等が広く利用されている。しかしながら感圧、感熱紙は、染料を用いるため、印字スピードに劣ったり印字した紙の保存性(生地の黄変化)に問題があった。こうした欠点を改良するため、上記特許出願公告昭34-8163号などの方法に基づいた硝化綿及び酢酸セルロース等のラッカー層の白色隠蔽方法が現在主にタコグラフ用記録紙に用いられている。
しかし硝化綿ラッカー層の白色隠蔽化を利用した記録紙は、
(1)硝化綿及び酢酸セルロースを低沸点溶剤のケトン類(例えばアセトン)アルコール類(例えばメタノール)等に溶解して使用する必要があるため、火気引火性、爆発性、毒性等の危険が極めて高い。
(2)硝化綿ラッカー層の白色隠蔽化工程で適度の湿度下で低温乾燥する事が必要とされ、作業スピードが大幅に低下する。
等の点で著しい問題がある。
《課題を解決するための手段》
本発明の記録紙は、着色された原紙(例えば黒色塗料を塗布した上質紙や黒色に染色した樹脂フィルム)に隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子と成膜性を有する水性ポリマーとを混合して成る組成物を塗布して隠蔽層を形成したものである。
隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子とは、水中に分散している中空孔ポリマー粒子のことであり、その組成および製造方法は、特許出願公開昭56-32513号、特許出願公開昭61-185505号、特許出願公開昭60-69103号、特許出願公開昭63-213509号、特許出願公開昭63-135409号、特許出願公開昭60-223873号、特許出願公開昭63-110208号、特許出願公開昭61-87734号、特許出願公開昭62-127336号などに記載されている。市販品の例としては、ローペイクOP-42、ローペイクOP-84J、ローペイクOP-62(ロームアンドハース社(米国)製造)、ボンコートPP-1000、ボンコートPP-1001S、PP-2000、ボンコートPP-1100(大日本インキ化学工業製造)、JSR・SX862(A)、JSR・SX-850(B)(日本合成ゴム社製造)、エクスパンセルWU#642(エクセパンセル社、ケマ・ノーベル社(スエーデン)製造)等がある。
好ましくは、メタアクリル酸、またはメタクリル酸共重合体をコアー(芯)成分とし、スチレンをシエル(外殻)成分とするものを用いる。粒子径は、5?0.1ミクロンであり、好ましくは1?0.3ミクロンである。
成膜性を有する水性ポリマーとは、乳化重合、溶液重合、塊状重合等で合成されたポリマーであり、成膜性を有する。この水性ポリマーは水中で分散ないし溶解した状態で提供される。当該ポリマーのモノマー組成の例としてはアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、クロロブレン、塩化ビニリデン、酢酸ビニル等であり、天然ゴムラテックス、ジイソシアネート類とポリオール又はポリアミンとの反応によるポリマー(例えばウレタンラテックス)を用いることができる。ポリマーのガラス転移点(Tg)は100℃以下、好ましくは25℃?-80℃である。特に好ましいモノマー組成は、アクリル酸エチルエステル(EA)、アクリル酸ブチルエステル(BA)、アクリル酸2エチルヘキシルエステル(2EHA)、ブタジエンであり、これらのホモポリマー又はこれらを主成分とするコポリマーである。また、特に好ましいポリマーは、ヘキサメチレンジイソシアネートとポリカーボネートポリオールとの反応によるポリマーである。これらは水性分散ポリマーとして供給される。水溶解型ポリマーは、前述のモノマー組成にカルボキシル基を共重合させたポリマーであり、カルボキシル基を有するモノマー組成の例としては、アクリル酸(Aa)、メタクリル酸、モノメチルイタコン酸(MMI)、2-カルボキシエチルアクリル酸エステル等であり、カルボン酸のアルカリ金属塩又はアミン塩、又はアンモニウム塩で水溶化される。必要により可塑剤、湿潤剤、消泡剤、増粘剤、乳化剤、ワックス(カルナバワックス、パラフィンワックス等)も加えられる。
隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子と成膜性を有する水性ポリマーの重量比は1?3であり、両者を混合して得られた塗布液が着色原紙に塗布される。塗布方法はエアーナイフコーター、ロールコーター、スプレー、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ミヤバコーター等であり、均一に、かつ温風(50?200℃)乾燥により、20?1ミクロンの膜厚の塗膜が形成される量を塗布させねばならない。より好ましい乾燥後の膜厚は10?3ミクロンである。得られる皮膜は着色原紙の色を完全に隠蔽し、通常白い外観を呈する。
《作用》
着色原紙に塗布された隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子は、コアー(芯)が一部中空化しているため、高い隠蔽性を有し、且つ粒子は完全に水中で分散された状態である。成膜性を有する水性ポリマーは、上記中空孔ポリマー粒子を着色原紙に定着させるバインダーとして作用する。この成膜性を有する水性ポリマーは中空孔ポリマー粒子が潰れるのを妨げない可塑性を備えている。
得られた記録紙は、尖針例えば鉄針、サファイヤー針、ダイヤモンド針等のインクを用いない室温の記録針によって隠蔽層の中空孔ポリマー粒子が潰れて透明化することにより着色原紙の色調が現出され、印字される。隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子と成膜性を有する水性ポリマーの重量比が1未満のときは充分な隠蔽性が得られず、しかも室温の記録ペンのペン圧で中空孔ポリマー粒子が潰れ難くなり、記録できない。また重量比が3以上となると実用可能な隠蔽層を形成することができない。
得られた記録紙は、タコグラフ装置で用いる記録紙として特に好適である。タコグラフ装置自体については、特許出願公告昭41-19274号、特許出願公開昭61-288118号、実用新案出願公開昭58-164773号、同51-83366号、同57-59660号及び実用新案出願公告昭39-33446に記載されており、この発明の記録紙は、これらのタコグラフ装置の何れにも使用できる。
《実施例》
実施例1
第1図および第2図は本発明の記録紙の断面図で、図中、1aは上質紙2に黒色塗料3を塗布してなる黒色原紙、1bはポリエステルフィルム4又は紙を黒色の着色剤を含浸してなる黒色原紙である。5は黒色原紙1a、1bに塗布された隠蔽性を有する塗層(隠蔽層)で、隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子6と成膜性を有する水性ポリマー7とで形成されている。記録紙は下記の配合で得られた塗布液をタコグラフ用黒色原紙(約150g/m^(2))1a、1bにワイヤロッドバー(No.12)で塗布し、50℃乾燥機で30分間乾燥し、約7.5ミクロンの膜厚の隠蔽層を形成したものである。次の項目について性能評価を行い実施例2にまとめた。
白色度:肉眼で市販のタコグラフ用速度記録紙(矢崎総業製)と比較
◎市販品より優れている、○市販品と同等、△市販品より劣るが実用性あり
×市販品より著しく劣り実用性なし
外観:肉眼で外観の均一性を調べ白色度と同じ方法で優劣を調べた。
印字性:サファイヤー針で市販のタコグラフ記録計(矢崎総業製)を用いて印字の鮮明さを評価した。
印刷適正:市販のセロテープを塗布層に圧着し、テープを剥離し、隠蔽層の剥離を調べた。
配合 No.1
ローペイクOP-62 25
ロームアンドハース社製品 37.5%固形分
アクリルエマルジョンポリマー 12.5
BA:Maa=97:3 Tg:-50.5℃
水 20
フロラードFC-149(1%) 0.5
住友スリーエム社製 有効分1%水溶液
No.2
ボンコートPP-1000 25
大日本インキ化学工業製品 45%固形分
SBR0629 12.5
日本合成ゴム製品 スチレンブタジエン
ラテックス
水 20
No.3
ローペイクOP-42 25
ロームアンドハース社製品 40.0%固形分
ニカゾールTS-662 12.5
日本カーバイド工業製品 粘着剤アクリル
エマルジョンポリマー
塩化パラフィンワックス乳化液 4
40%固形分 水性乳化液
No.4
ローペイクOP-84J 25
日本アクリル化学工業製品 42.5%固形分
水溶液アクリルポリマー 12.5
EA:モノメチルイタコン酸エステル=80:20
重量平均分子量1万のアンモニウム塩水溶液
固形分 30%
水 30
参考例
顔料による隠蔽性層を試みた。
No.5
Ti-Pure P-610 25
デュポン社製品 酸化チタン粉末
ノプコサントK 6
ポリアクリル酸ソーダ(分散剤)
サンノプコ社製品
トライトンCF-10 0.5
ノニオン活性剤(湿潤剤)
ロームアントハース社製品
水 30
ペガールLV-19 12.5
高圧ガス工業製品 粘着剤用アクリル
エマルジョンポリマー 55.5%固形分
実施例2
評価結果を下表1にまとめた

《発明の効果》
本発明は尖針による記録紙として極めて有用性が高く、従来知られている方法に比べて水系の塗布液であるため扱い易や、火気の危険性、コスト等で大幅に改善された記録紙を提供することができる。
すなわち、上記作用の項で述べた理由により、本発明の記録紙は、次の利点を有し、従来の記録紙の問題点を克服できた。
(1)隠蔽性を有する中空孔ポリマー粒子及び成膜性を有するポリマーは、水系で供給されるため、溶剤類による引火性、有毒性等の危険性が全くない。
(2)隠蔽性を有する中空孔ポリマー粒子が完全に分散された形態で供給されるので、作業工程が大幅に短縮され、乾燥工程も高温で行えるため、作業スピードが向上する。
(3)印字を尖針で行えるため、インクの汚れがなく、印字スピードが早く、振動にも強く、タコグラフ等の自動車用記録紙として適している。
(4)染料の発色を用いないため、経時的な変色もない。
【図面の簡単な説明】
図は本発明の記録紙の断面図で、第1図は黒色塗料を塗布した上質紙に隠蔽層を形成したもの、第2図は黒色の着色剤を含浸したポリエステル製フィルムに隠蔽層を形成したものである。
図中、
1a、1bは黒色原紙、5は隠蔽層、6は隠蔽性を有する水性の中空孔ポリマー粒子、7は成膜性を有する水性ポリマーである。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2007-01-29 
結審通知日 2007-02-01 
審決日 2004-01-28 
出願番号 特願平2-15644
審決分類 P 1 112・ 121- YA (G01D)
P 1 112・ 531- YA (G01D)
P 1 112・ 161- YA (G01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 次一中野 修身  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 鐘尾 みや子
秋月 美紀子
多喜 鉄雄
鈴木 由紀夫
登録日 1997-03-11 
登録番号 特許第2619728号(P2619728)
発明の名称 記録紙  
代理人 田倉 整  
代理人 永井 義久  
代理人 志水 浩  
代理人 永井 義久  
代理人 田倉 保  
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