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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A61M
管理番号 1182856
審判番号 無効2007-800218  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-10-09 
確定日 2008-07-22 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3581695号発明「シリンジポンプ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3581695号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
(1)本件特許第3581695号に係る発明についての出願は、平成7年10月31日に出願した特願平7-283313号の一部を平成14年4月30日に新たな特許出願としたものであって、平成16年7月30日に特許権の設定登録がなされたものである。
(2)これに対し、請求人は、平成19年10月9日に本件特許無効審判を請求した。
(3)被請求人は、平成19年12月25日付けで訂正請求書及び答弁書を提出し、一方、請求人は平成20年2月12日付けで弁駁書を提出した。
(4)その後、請求人及び被請求人は平成20年4月22日付けでそれぞれ口頭審理陳述要領書を提出し、同日に口頭審理が行われた。


2.訂正の可否に対する判断
2-1.訂正の内容
本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)及び図面の訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、平成19年12月25日付け訂正請求書(以下、「訂正請求書」という。)に添付した訂正明細書によると、以下のような内容の訂正事項を含むものである。
(1)訂正事項A-1
本件特許明細書における特許請求の範囲の請求項1に、
「注入の一時停止を実行して注入を停止状態にした時は、消灯するようにしたこと」とあるのを、
「注入の一時停止を実行して注入を停止状態にした時は、消灯し、
前記動作インジケータは、上方に突起した形状の1つの透明樹脂部材に、互いに発光色が異なる複数の発光ダイオードを内蔵してなること」と訂正する。(下線は訂正箇所を示す。以下同様。)
(2)訂正事項A-2
本件特許明細書における特許請求の範囲の請求項2に、
「注入の一時停止を実行して注入を停止状態にした時は、消灯するようにしたこと」とあるのを、
「注入の一時停止を実行して注入を停止状態にした時は、消灯し、
警報を発するブザーを更に備え、
予め設定された予定量まで薬液を送り出す予定量モードにより薬液の送り出し動作を実行している場合であって、送り出した薬液の積算量が前記予定量に達した場合は、前記ブザーにより警報を発すると共に0.1ml/hの流量で薬液の送り出しを継続すること」と訂正する。
(3)訂正事項B-1
本件特許明細書の段落【0007】に、
「注入の一時停止を実行して注入を停止状態にした時は、消灯するようにしたこと」とあるのを、
「注入の一時停止を実行して注入を停止状態にした時は、消灯し、前記動作インジケータは、上方に突起した形状の1つの透明樹脂部材に、互いに発光色が異なる複数の発光ダイオードを内蔵してなること」と訂正する。
(4)訂正事項B-2
本件特許明細書の段落【0008】に、
「注入の一時停止を実行して注入を停止状態にした時は、消灯するようにしたこと」とあるのを、
「注入の一時停止を実行して注入を停止状態にした時は、消灯し、警報を発するブザーを更に備え、予め設定された予定量まで薬液を送り出す予定量モードにより薬液の送り出し動作を実行している場合であって、送り出した薬液の積算量が前記予定量に達した場合は、前記ブザーにより警報を発すると共に0.1ml/hの流量で薬液の送り出しを継続すること」と訂正する。
(5)訂正事項B-3
本件特許明細書の段落【0014】に、
「【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、少なくとも送り出しのための動作状態を離間位置からでも認識することができるシリンジポンプを提供することができる。」とあるのを、
「【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、少なくとも送り出しのための動作状態を離間位置からでも認識することができるシリンジポンプを提供することができる。また、これに加えて、請求項2の本発明によれば、送り出した薬液の積算量が予定量に達すると警報が発せられるので、離間位置からこれを認識することができると共に、0.1ml/hの流量で薬液の送り出しが継続され、逆流が防止できる。」と訂正する。

2-2.判断
(1)訂正事項A-1について
訂正事項A-1は、訂正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「動作インジケータ」について、「上方に突起した形状の1つの透明樹脂部材に、互いに発光色が異なる複数の発光ダイオードを内蔵してなる」との限定を付加したものであるから、訂正事項A-1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件特許明細書の段落【0026】には、「また、クランプ5の下方には透明アクリル樹脂等から上に向けて突起する形状になるように成形された動作インジケータ7が設けられており、内蔵の赤色と緑色に適宜光るようにした発光ダイオード7a?7dが点灯したり点滅したり、図示の矢印方向に回転するように内側で光が散乱するようにして、注入動作状態を電光表示できるようにしている。」と記載され、また、図面の図1、図4及び図6には、操作パネル部2fから上方に突起した形状の動作インジケータ7が図示されてており、ここで、「発光ダイオード7a?7d」のそれぞれは、赤色を発光する発光ダイオードと緑色を発光する発光ダイオードの組を総称したものであることは明らかであるから、訂正事項A-1に係る訂正は、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。
そうすると、訂正事項A-1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
よって、訂正事項A-1に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、また、同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項A-2について
訂正事項A-2は、訂正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「認識手段」について、「警報を発するブザーを更に備え」との限定を付加するとともに、「薬液を送り出す」態様について、「警報を発するブザーを更に備え、予め設定された予定量まで薬液を送り出す予定量モードにより薬液の送り出し動作を実行している場合であって、送り出した薬液の積算量が前記予定量に達した場合は、」「0.1ml/hの流量で薬液の送り出しを継続する」との一態様を具体的に規定し、「送り出しのための動作状態を離間位置からでも認識させる」態様について、「前記ブザーにより警報を発する」との一態様を具体的に規定したものであるから、訂正事項A-2に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件特許明細書の段落【0118】には、「予定量を設定して、注液を開始した場合において、積算量が予定量に達すると、予定量ランプ24が点滅してブザーが鳴る。」と記載され、段落【0119】には、「このように予定量の設定が行われた場合には、薬液の注入は、KVO(キープベインオープン)機能は0.1mlの流量で継続される。」と記載されており、この段落【0119】に記載された「0.1mlの流量」が、単位時間当たりの流量であることは、例えば、段落【0056】の「この時、流量は、KVO(0.1ml/h)表示するので」との記載から明らかであるから、訂正事項A-2に係る訂正は、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。
そうすると、訂正事項A-2に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
よって、訂正事項A-2に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、また、同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項B-1について
訂正事項B-1は、請求項1の訂正(訂正事項A-1)に伴って、請求項1の記載と本件特許明細書の記載とに齟齬が生じないように訂正したものであるから、訂正事項B-1に係る訂正は、明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項B-1に係る訂正は、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項B-1に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、また、同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項B-2について
訂正事項B-2は、請求項2の訂正(訂正事項A-2)に伴って、請求項2の記載と本件特許明細書の記載とに齟齬が生じないように訂正したものであるから、訂正事項B-2に係る訂正は、明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項B-2に係る訂正は、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項B-2に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、また、同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。
(5)訂正事項B-3について
訂正事項B-3は、請求項2の訂正(訂正事項A-2)に伴って、請求項2に係る発明の効果が不明瞭となる場合があることから、本件特許明細書の「発明の効果」の欄においてこれを明らかにしようとするものであるから、訂正事項B-3に係る訂正は、明りようでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
また、訂正事項B-3のうち、「離間位置からこれを認識することができる」という効果は、請求項2に記載された「送り出した薬液の積算量が予定量に達した場合は、前記ブザーにより警報を発する」との構成から自明な事項であり、また、「逆流が防止できる」という効果については、薬液は体液の圧力を上回る圧力を有することにより人体に供給され、供給が遮断されれば、体液の圧力により押し戻されて逆流し、供給を継続することで逆流を防止できることは当業者にとって自明であるから、請求項2に記載された「0.1ml/hの流量で薬液の送り出しを継続する」との構成から自明な事項であるといえる。
したがって、訂正事項B-3に係る訂正は、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、訂正事項B-3に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項B-3に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる事項を目的とし、また、同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するものである。

2-3.むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号、第3号に掲げる事項を目的とし、また、特許法第134条の2第5項において準用する同法126条第3項及び第4項の規定に適合するものであるから、本件訂正を認める。


3.請求人の主張
請求人は、「特許第3581695号の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする」(請求の趣旨)との審決を求め、証拠方法として以下の甲第1号証?甲第17号証を提出し、無効とすべき理由を次のように主張している。
(1)理由1
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証?甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである。
(2)理由2
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び本件特許の出願前に日本国内で販売された「トップシリンジポンプ TOP-5100」の公然実施された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである。
(3)理由3
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証及び甲第6号証に記載された発明、並びに本件特許の出願前に日本国内で販売された「アトム輸注ポンプ235」の公然実施された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである。
なお、請求人は、平成20年4月22日の口頭審理において、甲第4号証ないし甲第9号証及びこれに基づく主張を撤回したので、請求人が主張する無効理由は理由1のみとなった。

[証拠方法]
・甲第1号証:実願昭53-116353号(実開昭55-32772号)のマイクロフィルム
・甲第2号証:「トップシリンジポンプ TOP-5100」の取扱説明書(請求人、1991年6月発行)
・甲第3号証:「トップシリンジポンプ TOP-5100」のカタログ(請求人、1990年11月発行)
・甲第4号証:「トップシリンジポンプ用トッププラスチックシリンジ」のカタログ(請求人、1990年8月発行)
・甲第5号証:「トップシリンジポンプ TOP-5100」の写真(請求人代理人弁理士鷺健志、同代理人住所の事務所内にて平成19年10月6日撮影)
・甲第6号証:「アトム輸注ポンプ235」のカタログ(アトム株式会社、1985年4月発行)
・甲第7号証:「アトム輸注ポンプ235」の取扱説明書(アトム株式会社、1988年11月発行)
・甲第8号証:「アトム輸注ポンプ235」のカタログ(アトム株式会社、1989年11月発行)
・甲第9号証:「アトム輸注ポンプ235」の写真(請求人代理人弁理士鷺健志、同代理人住所の事務所内にて平成19年10月6日撮影)
・甲第10号証:平成19年8月20日付け判定請求書

また、「1つの透明樹脂部材に、互いに発光色が異なる複数の発光ダイオードを内蔵してなる多色発光ダイオード」が周知技術であることを立証するために、
・甲第11号証:実願平5-49473号(実開平7-10790号)のCD-ROM
・甲第14号証:実願昭61-177602号(実開昭63-84196号)のマイクロフィルム
・甲第15号証:実公昭64-3248号公報
・甲第16号証:特開平6-165031号公報
が提出され、
さらに、輸液装置において「送り出した薬液の積算量が予定量に達した場合においても、薬液の送り出しを継続すること」が周知技術であることを立証するために、
・甲第12号証:特開平4-114663号公報
・甲第13号証:特開平1-297076号公報
・甲第17号証:特公平7-2183号公報
が提出された。


4.被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」(答弁の趣旨)との審決を求め、本件訂正の請求をするとともに、答弁書、口頭審理陳述要領書等において、下記の理由から、本件特許は無効とされるべきものではない旨を主張している。
(1)訂正後の請求項1に係る発明について
甲第1号証に記載の発明において、「トップシリンジポンプ TOP-5100」の技術を組み合せるに足る動機付けとなるものは存在しない。また、甲第6号証?甲第9号証は、動作インジケータが「前記動作状態に応じて異なる表示色を点滅して表示し、注入の一時停止を実行して注入を停止状態にした時は、消灯」する点に関し、甲第1号証?甲第5号証に記載の発明以上のものを開示するものではない。さらに、甲第1号証?甲第9号証には、「前記動作インジケータは、上方に突起した形状の1つの透明樹脂部材に、互いに発光色が異なる複数の発光ダイオードを内蔵してなる」点に関する記載がなく、示唆もされていない。
具体的には、訂正後の請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、動作インジケータについて、訂正後の請求項1に係る発明の動作インジケータは、「前記動作状態に応じて異なる表示色を点滅して表示し、注入の一時停止を実行して注入を停止状態にした時は、消灯」するものであって、「上方に突起した形状の1つの透明樹脂部材に、互いに発光色が異なる複数の発光ダイオードを内蔵してなる」ものである点で、甲第1号証に記載された発明の動作インジケータとは相違する。
そして、上記相違点により規定される「動作インジケータ」を設けた請求項1に係る発明の技術思想は、薬液送り出しの動作状態を、異なる表示色で、外部から目立つように構成(上方に突出)された外観上単一の表示体により集約的に表示したことにある。
しかしながら、甲第1号証は、電源ランプ(3)及び警報ランプ(4)が離間して配置され、外観上単一の表示体により動作状態を集約的に表示することを示唆するものではない。また、「トップシリンジポンプ TOP-5100」(甲第2号証?甲第5号証)は、「輸液中」ランプと、「残量」ランプ等とが、線で仕切られて明確に区別されており、外観上単一の表示体により動作状態を集約的に表示することを示唆するものではない。
請求項1に係る発明の進歩性を判断するにあたっては、上記相違点の構成を備える「動作インジケータ」が公知であったか否かを判断の基礎とすべきである。
この点、甲第11号証には、状態表示用の多色LEDランプが開示されているが、どのような状態表示に適用するのかは何ら記載がなく、表示デバイスとしての多色LEDを開示するものに過ぎない。
そうすると、甲第11号証記載の多色LEDランプを甲第1号証記載の発明へ容易に適用できるというためには、甲第1号証に相応の動機付けとなるものが存在することを必要とするものである。
(2)訂正後の請求項2に係る発明について
訂正後の請求項2に記載された「予め設定された予定量まで薬液を送り出す予定量モードにより薬液の送り出し動作を実行している場合であって、送り出した薬液の積算量が前記予定量に達した場合は、前記ブザーにより警報を発すると共に0.1ml/hの流量で薬液の送り出しを継続する」点については、甲第2号証?甲第9号証には開示がない。そもそも、予定量を設定することについて何ら開示されていない。また、甲第1号証?甲第9号証は、上記の点を示唆する記載もない。
具体的には、甲第12号証及び甲第13号証には、KVO機能が発動したことを報知することについて開示も示唆もない。また、甲第2号証には、輸液完了時にブザーにより警報することが開示されているだけで、KVO機能が発動したことを報知することは開示も示唆もない。
よって、いずれの甲号証にもKVO機能が発動したことを報知することは開示も示唆もない。
(3)まとめ
以上述べたとおり、訂正後の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証ないし甲第9号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
したがって、特許法第123条第1項第2号の規定に該当しない。

なお、被請求人は、「1つの透明樹脂部材に、互いに発光色が異なる複数の発光ダイオードを内蔵してなる多色発光ダイオード」が周知技術であること、及び、輸液装置において「送り出した薬液の積算量が予定量に達した場合においても、薬液の送り出しを継続すること」が周知技術であることを認めている。


5.本件発明
上記「2.訂正の可否に対する判断」で示したとおり、本件訂正は認めらるので、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」「本件発明2」という。)は、平成19年12月25日付け訂正請求書に添付した訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
(1)本件発明1
「【請求項1】
薬液を送り出すとともに、送り出しのための動作状態を離間位置からでも認識させる動作インジケータを備えるシリンジポンプであって、
前記動作インジケータは、前記シリンジポンプの外部から見易い位置において上方に突出して設けられるとともに、前記動作状態に応じて異なる表示色を点滅して表示し、注入の一時停止を実行して注入を停止状態にした時は、消灯し、
前記動作インジケータは、上方に突起した形状の1つの透明樹脂部材に、互いに発光色が異なる複数の発光ダイオードを内蔵してなることを特徴とするシリンジポンプ。」
(2)本件発明2
「【請求項2】
薬液を送り出すとともに、送り出しのための動作状態を離間位置からでも認識させる認識手段を備えるシリンジポンプであって、
前記認識手段は、前記シリンジポンプの外部から見易い位置において上方に突出して設けられるとともに、前記動作状態に応じて異なる表示色を点滅して表示し、注入の一時停止を実行して注入を停止状態にした時は、消灯し、
警報を発するブザーを更に備え、
予め設定された予定量まで薬液を送り出す予定量モードにより薬液の送り出し動作を実行している場合であって、送り出した薬液の積算量が前記予定量に達した場合は、前記ブザーにより警報を発すると共に0.1ml/hの流量で薬液の送り出しを継続することを特徴とするシリンジポンプ。」


6.証拠方法
6-1.甲第1号証
これに対して、甲第1号証(実願昭53-116353号(実開昭55-32772号)のマイクロフィルム)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(1)「本考案は、駆動機構にて移動されるようになされたスライダーにて、シリンジの吸子を押圧して輸注動作を行うように構成してなる輸注ポンプに関するものであつて、人体等の静脈内輸液・動脈内加圧注入時、或いは栄養剤強制注入時、制癌剤持続注入時に用いて好適なものである。」(明細書1ページ15?20行)
(2)「第1図に示す輸注ポンプにおいて、ケーシング(1)の上面は操作面に形成され、デジタルスイツチ(2)、電源ランプ(3)、警報ランプ(4)、スタートダイヤル(5)、早送りボタン(6)が設けられている。」(明細書2ページ16?19行)
(3)「次いでデジタルスイツチ(2)を操作して、輸液剤の流量設定(ml/Hr)を行なうのであるが、この流量設定は0.1?99.9ml/Hrの範囲内で、0.1ml/Hrの単位で行われる。そしてスタートダイヤル(5)をスタート位置に切換えると、流量設定値に応じてパルスモータ(41)が回転し、電源ランプ(3)が点滅する。また送りネジ(34)が回転し、これによるネジ送り作用にて、スライダー(14)とスライダーブロツク(16)とが一体になつて矢印B方向に定速度状態で移動する。従つて吸子(45)がスライダー(14)によつて押され、シリンジ(43)内の輸液剤が体内へ注入される。」(明細書7ページ9?20行)
(4)「上述の如き輸液動作が行われて輸液剤の残量が1ml以下になると、警報装置(図示せず)の動作により断続警報音を発すると同時に警報ランプ(4)が点滅する。そしてパルスモータ(41)が回転停止になり、スライダー(14)及びスライダーブロツク(16)も停止状態になる。即ち輸液動作が完了するのであるが、ひきつづき輸液剤の残量を注入したい場合には、スタートダイヤル(5)をスタート位置に合せたまゝ、早送りボタン(6)を押し続ける。この結果スライダー(14)は、先に設定されていた設定流量の注入速度で移動し、輸液剤の残量の注入が行われる。なおこの間、警報音は鳴り続けている。」(明細書8ページ3?14行)
(5)第1図には、電源ランプ(3)と警報ランプ(4)とがケーシング(1)の傾斜した上面の上端付近において上方に突出して設けられている態様が図示されている。また、電源ランプ(3)と警報ランプ(4)とは、比較的近接して配置されている。

電源ランプ(3)は、輸液動作が行われているとき、即ち輸液中に点滅して表示し(上記(3)参照)、警報ランプ(4)は、輸液剤の残量が1ml以下になったときに点滅して表示する(上記(4)参照)ものであるから、電源ランプ(3)と警報ランプ(4)とを見れば、輸液のための動作状態を認識することができることは明らかである。また、電源ランプ(3)と警報ランプ(4)とは、ケーシング(1)の傾斜した上面の上端付近において上方に突出して設けられているので、離間位置からでもその動作状態を認識することができることも明らかである。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、甲第1号証には、
「輸液剤を送り出すとともに、輸液のための動作状態を離間位置からでも認識させる電源ランプ(3)及び警報ランプ(4)を備える輸注ポンプであって、
前記電源ランプ(3)及び警報ランプ(4)は、前記輸注ポンプのケーシング(1)の傾斜した上面の上端付近において上方に突出して設けられるとともに、輸液中は電源ランプ(3)を点滅して表示し、輸液剤の残量が1ml以下になると警報装置の動作により断続警報音を発すると同時に警報ランプ(4)を点滅して表示する、輸注ポンプ。」(以下、「甲第1号証発明」という。)が記載されていると認められる。

6-2.甲第2号証
甲第2号証は、「トップシリンジポンプ TOP-5100」の取扱説明書である。その取扱説明書の裏表紙の末尾に「91.6」と記載されており、本件特許の出願前である1991年6月に発行された刊行物であることが示されている。そうすると、甲第2号証の頒布日は、この発行時期からみて、1991年6月末日であると推定することができる。なお、甲第2号証が本件特許の出願前に頒布された刊行物であることは、被請求人もこれを認めており、争いがない。
甲第2号証には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(1)5ページには、「トップシリンジポンプ TOP-5100」の図面及び各部の名称が記載されており、シリンジポンプ本体の上面に配置された操作パネルに、「残量」ランプ11、「過負荷」ランプ12、「バッテリ」ランプ13、「シリンジ」ランプ14、及び「輸液中」を表示する「▲▲▲▲ 」ランプが設けられている点が記載されている(なお、三角形のマークについては正確な表示をすることができないので「▲」で代用した。以下同様。)。
(2)8ページの「6.輸液を開始します。」の欄には、「『スタート/ストップ』キーを押すと『停止中』ブザーが消え、『輸液中』表示ランプ▲▲▲▲ が右から左へ順次点灯して輸液が開始されます。」と記載されている。
(3)8ページの「7.輸液の一時停止および輸液流量を変更するとき」の欄には、「輸液を一時停止するときは『スタート/ストップ』キーを押してください。▲▲▲▲ランプが消灯し、『ピッピッピッ……』という停止中ブザーが鳴ります。」「輸液流量は、この状態で、輸液流量設定キーを押すと変更されます。」「再度『スタート/ストップ』キーを押すと輸液が再開されます。」と記載されている(なお、キーを表示するマークは省略した。)。
(4)10ページには、1.シリンジ内の薬液が残り少なくなったときに、「残量」ランプが「点滅」して表示すること、2.輸液回路が閉塞もしくは押子クランプの動きが悪くなったときに、「過負荷」ランプが「点滅」して表示すること、3.内臓バッテリーがなくなったときに、「バッテリー」ランプが「点滅」して表示すること、4.輸液が完了したとき、「残量」ランプ及び「過負荷」ランプが「点滅」して表示すること、5.シリンジもしくは外筒・押子クランプがはずれているとき、「シリンジ」ランプが「全部点滅又は一部点滅」して表示すること、が記載されている。
(5)10ページには、輸液が完了したとき、ブザーが「ピー」と鳴ることが記載されている。

これらの記載事項を総合すると、甲第2号証には、
「トップシリンジポンプ TOP-5100」は、輸液中には、輸液中を表示する「▲▲▲▲ 」ランプが「右から左へ順次点灯」し、シリンジ内の薬液が残り少なくなったときには「残量」ランプが「点滅」して表示し、輸液回路が閉塞又は押子クランプの動きが悪くなったときには「過負荷」ランプが「点滅」して表示し、内蔵バッテリーがなくなったときには「バッテリ」ランプが「点滅」して表示し、輸液が完了したときには「残量」ランプ及び「過負荷」ランプが「点滅」して表示し、シリンジ又は外筒・押子クランプがはずれているときには「シリンジ」ランプが「全部点滅又は一部点滅」して表示して、輸液の動作状態に応じて異なるランプが点滅して表示し、輸液を一時停止するときは、「スタート/ストップ」キーを押すと、輸液中を表示する「▲▲▲▲ 」ランプが消灯し、輸液が停止状態になる、シリンジポンプである点、が記載されていると認められる。

6-3.甲第3号証
甲第3号証は、「トップシリンジポンプ TOP-5100」のカタログである。そのカタログの裏表紙の末尾に、請求人が使用している製品カタログ印刷番号が「B09011-05」と記載されており、左から順に、「B」は印刷した印刷会社を、「0」は初版であることを、「9011」は1990年11月に発行されたことを、「05」は発行部数が5000部であることをそれぞれ示している。そうすると、甲第3号証の頒布日は、この発行時期からみて、1990年11月末日であると推定することができる。なお、甲第3号証が本件特許の出願前に頒布された刊行物であることは、被請求人もこれを認めており、争いがない。
甲第3号証には、次の事項が記載されている。
(1)表紙、2ページ及び3ページには、「トップシリンジポンプ TOP-5100」の写真が掲載されている。当該写真によれば、「トップシリンジポンプ TOP-5100」は、シリンジポンプ本体の上面に配置された操作パネルにおいて、「残量」の赤色の文字ランプからなる「残量」ランプ、「過負荷」の赤色の文字ランプからなる「過負荷」ランプ、「バッテリ」の赤色の文字ランプからなる「バッテリ」ランプ、シリンジ図形の中に左から順に「12」「25」「50」の緑色の数字ランプが配置されてなる「シリンジ」ランプ、及び「輸液中」を表示する緑色の「▲▲▲▲ 」ランプが形成されている点、が図示されている。
(2)3ページの下欄には、1.シリンジ内の薬液が残り少なくなったときに、「残量」ランプが「点滅」して表示すること、2.輸液回路が閉塞もしくは押子クランプの動きが悪くなったときに、「過負荷」ランプが「点滅」して表示すること、3.内蔵バッテリーの電圧低下のときに、「バッテリ」ランプが「点滅」して表示すること、4.輸液が完了したときに、「残量」ランプ及び「過負荷」ランプが「点滅」して表示すること、5.シリンジもしくは外筒・押子クランプがはずれているときに、「シリンジ」ランプが「すべて点滅」又は「ひとつ点滅」して表示すること、が記載されている。

これらの記載事項を総合すると、甲第3号証には、
「トップシリンジポンプ TOP-5100」は、シリンジポンプ本体の上面に配置された操作パネルにおいて、輸液中を表示する「緑色」の「▲▲▲▲ 」ランプ、「赤色」の「残量」ランプ、「赤色」の「過負荷」ランプ、「赤色」の「バッテリ」ランプ、及び、「緑色」の数字「12」「25」「50」が配置されてなる「シリンジ」ランプが形成されており、動作状態に応じて異なるランプを選択して点滅して表示するシリンジポンプである点、が記載されていると認められる。

6-4.甲第11号証
甲第11号証(実願平5-49473号(実開平7-10790号)のCD-ROM)には、次の事項が記載されている。
(1)「【請求項1】発光色を異にする複数のLED素子(2、3、4)を単一の成型樹脂体に封入してなる多色LEDランプ(1)において、・・・。」(実用新案登録請求の範囲)
(2)「【従来の技術】発光スペクトルを異にする複数のLED素子を樹脂モールドして得られる多色LEDランプを状態表示用のランプとして利用してする場合が多い・・・」(段落【0002】)

6-5.甲第12号証
甲第12号証(特開平4-114663号公報)には、次の事項が記載されている。
(1)「例えば、流量が125ml/hr、輸液予定量が125mlに設定された場合、最初は125ml/hrで輸液が行われ、輸液量が輸液予定量に達する1時間後にはKVO流量(静脈を開いておくのに必要な最低流量)に切り替わる。例えば5ml/hrで輸液が行われる。」(2ページ左上欄12?17行)
(2)「上記構成からなる輸液装置で輸液を行う場合は、通常、看護婦が医者の処方に基づいて、上記流量設定器32および輸液予定量設定器33でそれぞれ流量およぼ輸液予定量を設定し、その設定流量で輸液が開始される。そして、輸液量が輸液予定量に達するとKVO流量に切り替わり、以後、そのKVO流量で輸液が行われる。」(2ページ右上欄6?12行)

6-6.甲第13号証
甲第13号証(特開平1-297076号公報)には、次の事項が記載されている。
(1)「流体のポンピングの制御
流量の範囲は0.1ml/hrから999ml/hrまでである。静脈開放維持流量(keep-vein-open rate 以下KVO流量と略す)は、少量の流体を、カテーテルの先端に凝血塊が形成されて管路の閉塞が生じることを防止するのに充分な頻度の、時間間隔で供給するものである。」(10ページ左下欄12?18行)

6-7.甲第14号証
甲第14号証(実願昭61-177602号(実開昭63-84196号)のマイクロフィルム)には、次の事項が記載されている。
(1)「1つのパッケージに異なる色で発光する2つの発光体を内蔵した2色発光素子・・・」(実用新案登録請求の範囲)
(2)「テンポ表示部4は同一パック内に2色(赤と緑)発色可能なLEDを内蔵した2色発光素子Lを有し・・・」(明細書5ページ17?19行)

6-8.甲第15号証
甲第15号証(実公昭64-3248号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(1)「電話がかかつてきたときに、・・・発光ダイオード17が、例えば青色に発光し、送話者を待機させたときには、発光ダイオード16が、例えば赤色を発光して、第2図に示した同一発光ダイオード14で、用途に応じて色分け使用することができる。」(6ページ11欄12?18行)
(2)第2図には、電話機にその表面から上方に突出して設けられた発光ダイオード14が図示されている。

6-9.甲第16号証
甲第16号証(特開平6-165031号公報)には、次の事項が記載されている。
(1)「図2において、各選択ボタンは例えば緑とアンバーの2色の発光素子(以下、LEDという。)を内蔵し・・・」(段落【0008】)
(2)「・・・図1の(B)において、7は、手動スイッチ8(タクトスイッチ)を備え、面発光する緑色LED5及びアンバー色LED6を内蔵した押しボタン・・・」(段落【0021】)

6-10.甲第17号証
甲第17号証(特公平7-2183号公報)には、次の事項が記載されている。
(1)「始動釦21が押されると、表示燈45は、閃光から安定に変化し、ポンプ10は、第4図に関連して下記で更に詳細に説明する様に第2図の計算された点滴輪郭により栄養分の点滴を開始する。サイクルが完了して、投与すべき残りの量が零のとき、ポンプは、KVO比率で運転を継続して、点滴が完了したことを患者に警告するために可聴信号を発生する。」(3ページ5欄44?50行)


7.無効理由に対する当審の判断
7-1.本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲第1号証発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、後者における「輸液剤」は、前者における「薬液」に相当し、以下同様に、「輸液のための動作状態」が「送り出しのための動作状態」に、「電源ランプ(3)及び警報ランプ(4)」が「動作インジケータ」に、「輸液剤を送り出す」「輸注ポンプ」が「薬液を送り出す」「シリンジポンプ」に、それぞれ相当する。
また、甲第1号証発明の「輸注ポンプのケーシング1の傾斜した上面の上端付近」は、離れたところからでも比較的よく見える位置であるから、本件発明1の「シリンジポンプの外部から見易い位置」に相当する。
さらに、甲第1号証発明の「輸液中は電源ランプ(3)を点滅して表示し、輸液剤の残量が1ml以下になると」「警報ランプ(4)を点滅して表示する」ことは、動作状態に応じて異なるランプを点滅して表示することを意味するから、本件発明1の「動作状態に応じて異なる表示色を点滅して表示」することとは、「動作状態に応じて点滅して表示」する点で共通する。

してみると、両者は、本件発明1の用語を用いて表現すると、
「薬液を送り出すとともに、送り出しのための動作状態を離間位置からでも認識させる動作インジケータを備えるシリンジポンプであって、
前記動作インジケータは、前記シリンジポンプの外部から見易い位置において上方に突出して設けられるとともに、前記動作状態に応じて点滅して表示する、シリンジポンプ。」
の点で一致し、以下の点で相違する(かっこ内は甲第1号証に記載された対応する用語を示す。)。

相違点1:本件発明1は、動作インジケータが「動作状態に応じて異なる表示色を点滅して表示」するのに対して、甲第1号証発明は、動作インジケータ(電源ランプ(3)及び警報ランプ(4))が動作状態に応じて異なるランプを点滅して表示するが、それらの表示色が異なるかは不明である点。
相違点2:本件発明1は、動作インジケータが「注入の一時停止を実行して注入を停止状態にした時は、消灯」するのに対して、甲第1号証発明は、その点が明らかでない点。
相違点3:本件発明1においては、「動作インジケータは、上方に突起した形状の1つの透明樹脂部材に、互いに発光色が異なる複数の発光ダイオードを内蔵してなる」のに対して、甲第1号証発明においては、動作インジケータ(電源ランプ(3)及び警報ランプ(4))は上方に突出して設けられているものの、その具体的な構造がどのようになっているか明らかでない点。

(2)判断
そこで、まず相違点1について検討する。
上記「6-2,6-3」に摘記したように、甲第2号証及び甲第3号証によれば、「トップシリンジポンプ TOP-5100」においては、輸液中を表示する「緑色」の「▲▲▲▲ 」ランプが「緑色」に「右から左へ順次点灯」する、すなわち「点滅」する。また、シリンジ内の薬液が残り少なくなったときには「残量」ランプが「赤色」に「点滅」して表示し、さらに、輸液回路が閉塞又は押子クランプの動きが悪くなったときには「過負荷」ランプが「赤色」に「点滅」し、輸液が完了したときには「残量」ランプ及び「過負荷」ランプが「赤色」に「点滅」して表示する。
このように、甲第2号証及び甲第3号証に記載された「トップシリンジポンプ TOP-5100」は、輸液の動作状態に応じて異なる発光色のランプを選択して点滅して表示させる構成、すなわち、動作状態に応じて「異なる表示色」を点滅して表示する構成を備えたものである。
ところで、甲第1号証発明において、電源ランプ(3)は輸液動作が行われている状態であることを点滅して表示するものであり、警報ランプ(4)は輸液剤の残量が1ml以下になった状態であることを点滅して表示することによって警報を発するものである。そして、一般に、警報ランプは、警報を発するために、赤色に点灯又は点滅するように構成されているのが普通であるから、甲第1号証発明において、警報ランプ(4)の表示色を赤色とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。また、甲第1号証発明において、電源ランプ(3)と警報ランプ(4)とが近接して配置されていること、及び、電源ランプ(3)と警報ランプ(4)とでは表示しようとする動作状態が全く異なることからみて、両者を混同しないようにするために、電源ランプ(3)を、警報ランプ(4)とは異なる表示色で点滅して表示するように構成することも、当業者であれば容易に想到し得ることである。
しかも、上記のとおり、シリンジポンプにおいて、動作状態に応じて「異なる表示色」を点滅して表示することは、甲第2号証及び甲第3号証などに見られるように、従来からよく知られていることであるから、甲第1号証発明の電源ランプ(3)と警報ランプ(4)とを異なる表示色とすることが格別困難であったとする特段の理由もない。
そうすると、甲第1号証発明において、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

次に、相違点2について検討する。
甲第2号証には、上記「6-2」に摘記したとおり、輸液を一時停止するときは、「スタート/ストップ」キーを押すと、輸液中を表示する「▲▲▲▲ 」ランプが消灯し、輸液が停止状態になることが記載されている。即ち、甲第2号証には、動作インジケータが「注入の一時停止を実行して注入を停止状態にした時は、消灯」する点が記載されている。
そして、甲第1号証発明の輸注ポンプと甲第2号証に記載された「トップシリンジポンプ TOP-5100」は、同一技術分野に属するものであり、かつ、動作インジケータが薬液送り出しの動作状態を認識させる表示デバイスである点で共通しているから、甲第1号証発明の動作インジケータに甲第2号証に記載された「トップシリンジポンプ TOP-5100」の動作インジケータの構成を適用し、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

次に、相違点3について検討する。
表示デバイスとして「1つの透明樹脂部材に、互いに発光色が異なる複数の発光ダイオードを内蔵してなる多色発光ダイオード」は、甲第11号証、甲第14号証、甲第15号証、甲第16号証などに見られるように従来周知の技術にすぎず、また、多色発光ダイオードの透明樹脂部材を「上方に突起した形状」とすることも、例えば甲第15号証の第2図の発光ダイオード14に見られるように従来からよく知られている普通の形態にすぎない。
そうすると、甲第1号証発明において、輸注ポンプの動作状態を認識させる表示デバイスとして、電源ランプ(3)及び警報ランプ(4)に代えて上記周知の表示デバイスである多色発光ダイオードを採用することは、当業者であれば必要に応じて適宜なし得ることであり、その際、多色発光ダイオードの透明樹脂部材を「上方に突起した形状」とすることは、甲第1号発明の電源ランプ(3)及び警報ランプ(4)が上方に突出して設けられていること、及び甲第15号証の第2図の発光ダイオード14のように「上方に突起した形状」とすることが従来からよく知られている普通の形態にすぎないことを考慮すると、当業者にとって設計的事項にすぎないというべきである。

そして、表示デバイスとして周知の「多色発光ダイオード」は、甲第11号証にも記載されているように、それ自体が状態に応じて異なる表示色で点滅又は点灯して表示する機能を有するものであり、甲第15号証の第2図などにも見られるように、それ自体が外観上単一の表示体により集約的に表示する表示デバイスであるから、本件発明1による効果も、甲第1号証ないし甲第3号証、及び上記周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本件発明1は、甲第1号証発明、甲第2、3号証に記載された発明、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7-2.本件発明2について
(1)対比
本件発明2と甲第1号証発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、後者における「輸液剤」は、前者における「薬液」に相当し、以下同様に、「輸液のための動作状態」が「送り出しのための動作状態」に、「電源ランプ(3)及び警報ランプ(4)」が「認識手段」に、「輸液剤を送り出す」「輸注ポンプ」が「薬液を送り出す」「シリンジポンプ」に、それぞれ相当し、「警報装置の動作により断続警報音を発する」点は、「警報を発するブザーを更に備え」の点に相当する。
また、甲第1号証発明の「輸注ポンプのケーシング1の傾斜した上面の上端付近」は、離れたところからでも比較的よく見える位置であるから、本件発明2の「シリンジポンプの外部から見易い位置」に相当する。
さらに、甲第1号証発明の「輸液中は電源ランプ(4)を点滅して表示し、輸液剤の残量が1ml以下になると」「警報ランプ(4)を点滅して表示する」ことは、動作状態に応じて異なるランプを点滅して表示することを意味するから、本件発明2の「動作状態に応じて異なる表示色を点滅して表示」することとは、「動作状態に応じて点滅して表示」する点で共通する。

してみると、両者は、本件発明2の用語を用いて表現すると、
「薬液を送り出すとともに、送り出しのための動作状態を離間位置からでも認識させる認識手段を備えるシリンジポンプであって、
前記認識手段は、前記シリンジポンプの外部から見易い位置において上方に突出して設けられるとともに、前記動作状態に応じて点滅して表示し、警報を発するブザーを更に備える、シリンジポンプ。」
の点で一致し、以下の点で相違する(かっこ内は甲第1号証に記載された対応する用語を示す。)。

相違点4:本件発明2は、認識手段が「動作状態に応じて異なる表示色を点滅して表示」するのに対して、甲第1号証発明は、認識手段(電源ランプ(3)及び警報ランプ(4))が動作状態に応じて異なるランプを点滅して表示するが、それらの表示色が異なるかは不明である点。
相違点5:本件発明2は、認識手段が「注入の一時停止を実行して注入を停止状態にした時は、消灯」するのに対して、甲第1号証発明は、その点が明らかでない点。
相違点6:本件発明2は、「予め設定された予定量まで薬液を送り出す予定量モードにより薬液の送り出し動作を実行している場合であって、送り出した薬液の積算量が前記予定量に達した場合は、前記ブザーにより警報を発すると共に0.1ml/hの流量で薬液の送り出しを継続する」との構成を備えているのに対して、甲第1号証発明は、そのような構成を備えていない点。

(2)判断
まず、相違点4及び5について検討する。
相違点4及び5は、それぞれ相違点1及び2の「動作インジケータ」なる文言を、「動作インジケータ」を含む上位概念の「認識手段」に置き換えたものである。
したがって、相違点4に係る本件発明2の発明特定事項は、相違点1と同様の理由で、当業者が容易に想到できたものであり、相違点5に係る本件発明2の発明特定事項は、相違点2と同様の理由で、当業者が容易に想到できたものである。

次に、相違点6について検討する。
輸液装置において「送り出した薬液の積算量が予定量に達した場合においても、薬液の送り出しを継続すること」(上記「6-5.甲第12号証」「6-6.甲第13号証」「6-10.甲第17号証」参照)は、いわゆるKVO機能を意味するものであるから、従来周知の技術にすぎず、また、「送り出した薬液の積算量が予定量に達した場合は、ブザーにより警報を発すること」(上記「6-2.甲第2号証(5)」「6-10.甲第17号証」参照)も、シリンジポンプにおいて一般に採用されている手段であり、周知技術にすぎない。
そうすると、甲第1号証発明に必要に応じて上記周知技術を適用することは、当業者であれば適宜なし得ることであり、その際、KVO流量の大きさをどの程度にするかは、静脈を開いておくのに必要な最低流量を考慮して当業者が適宜決定すべき事項であり、設計的事項にすぎないというべきである。
したがって、相違点6に係る本件発明2の発明特定事項は、当業者が容易に想到できたものである。

そして、甲第13号証に記載されているように、KVO流量として少量の流体を継続して供給することにより、凝血塊が形成されて管路の閉塞が生じるのを防止する技術が従来周知であることからみて、逆流を防止できるという本件発明2の作用効果は、当業者であれば予測できる範囲内のものであって格別なものとはいえない。

したがって、本件発明2は、甲第1号証発明、甲第2、3号証に記載された発明、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7-3.むすび
以上のとおり、本件発明1及び本件発明2は、いずれも甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


8.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1及び本件発明2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当するから、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
シリンジポンプ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を送り出すとともに、送り出しのための動作状態を離間位置からでも認識させる動作インジケータを備えるシリンジポンプであって、
前記動作インジケータは、前記シリンジポンプの外部から見易い位置において上方に突出して設けられるとともに、前記動作状態に応じて異なる表示色を点滅して表示し、注入の一時停止を実行して注入を停止状態にした時は、消灯し、
前記動作インジケータは、上方に突起した形状の1つの透明樹脂部材に、互いに発光色が異なる複数の発光ダイオードを内蔵してなることを特徴とするシリンジポンプ。
【請求項2】
薬液を送り出すとともに、送り出しのための動作状態を離間位置からでも認識させる認識手段を備えるシリンジポンプであって、
前記認識手段は、前記シリンジポンプの外部から見易い位置において上方に突出して設けられるとともに、前記動作状態に応じて異なる表示色を点滅して表示し、注入の一時停止を実行して注入を停止状態にした時は、消灯し、
警報を発するブザーを更に備え、
予め設定された予定量まで薬液を送り出す予定量モードにより薬液の送り出し動作を実行している場合であって、送り出した薬液の積算量が前記予定量に達した場合は、前記ブザーにより警報を発すると共に0.1ml/hの流量で薬液の送り出しを継続することを特徴とするシリンジポンプ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、種々の異なるシリンジを不動状態に着脱自在に保持してから、スライダ手段に対してシリンジの押子を不動状態にセットしてから、スライダ手段を所定駆動することでシリンジの内容物を正確に送り出すシリンジポンプに係り、特にかなりの操作を自動化したシリンジポンプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シリンジポンプは、ICU、CCU、NICUでの、栄養補給や輸血、化学療法剤、麻酔剤などの薬液注入を高い精度で行うことを主目的としたものであり、その薬液流量制御等が他の形式のポンプに比較して優れていることから多用されている。
【0003】
その使用方法は、シリンジに薬液を入れた状態のものを、シリンジポンプのクランプを用いて不動状態にセットしてから、スライダに対してシリンジの押子をセットしてから、スライダを駆動することで押子のピストン運動によりシリンジ中の内容物を正確に送り出すものであって、構造が単純で比較的精度が良いので多く実用化されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、容積が夫々異なるシリンジを使用する場合において、例えば50cc容量のシリンジを用いて長時間に渡り患者に対して注入を行うような場合には、多忙なナースが患者のそばに留まることは困難となる。
【0005】
通常は、多数の患者を1人で監視することから、ベッドに固定されたシリンジポンプの全てを見渡すことで、全てのポンプまたは他の医療機器の動作状況を把握することは出来ない。
【0006】
したがって、本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、少なくとも送り出しのための動作状態を離間位置からでも認識することができるシリンジポンプの提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、薬液を送り出すとともに、送り出しのための動作状態を離間位置からでも認識させる動作インジケータを備えるシリンジポンプであって、前記動作インジケータは、前記シリンジポンプの外部から見易い位置において上方に突出して設けられるとともに、前記動作状態に応じて異なる表示色を点滅して表示し、注入の一時停止を実行して注入を停止状態にした時は、消灯し、前記動作インジケータは、上方に突起した形状の1つの透明樹脂部材に、互いに発光色が異なる複数の発光ダイオードを内蔵してなることを特徴としている。
【0008】
また、薬液を送り出すとともに、送り出しのための動作状態を離間位置からでも認識させる認識手段を備えるシリンジポンプであって、前記認識手段は、前記シリンジポンプの外部から見易い位置において上方に突出して設けられるとともに、前記動作状態に応じて異なる表示色を点滅して表示し、注入の一時停止を実行して注入を停止状態にした時は、消灯し、警報を発するブザーを更に備え、予め設定された予定量まで薬液を送り出す予定量モードにより薬液の送り出し動作を実行している場合であって、送り出した薬液の積算量が前記予定量に達した場合は、前記ブザーにより警報を発すると共に0.1ml/hの流量で薬液の送り出しを継続することを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態につき添付図面を参照して説明する。図1はシリンジポンプ1の外観斜視図であって、操作パネル部2fを前方にして、通常右手で操作される設定ダイヤル6が見えるように示した図である。
【0011】
本図において、このシリンジポンプ1は、ICU、CCU、NICUでの、栄養補給や輸血、化学療法剤、麻酔剤などの薬液注入を目的とした、微量持続注入ポンプであって、流量表示等を行うための操作パネル部2fが図示のように上面において略集中するように設けられており、操作性を良くしている。
【0012】
また、この操作パネル2fは基本的にエンボスシートカバーで覆われており、JIS0920の防滴試験を満足する防滴設計がなされており、例えば不注意にこぼれた薬液等を簡単に拭きとることができるようにするとともに、薬液等が内部に侵入するのを防ぐための、高い防滴性を備えている。
【0013】
このために上カバー2と下カバー3は耐薬品性を備える成形樹脂材料から一体成形されるとともに、各カバー2、3の互いの接続面において例えばシリコーンエラストマー製のラバーシール4を介在させてからネジ止めする構成にすることで、内部に液体等の異物が入り込むことを防止するように構成されている。
【0014】
また、注入の高精度と操作性の向上を重視するためにマイクロコンピュータ制御による精密な注入動作制御を実現可能にするとともに、外部から見易い位置において上方に突出して設けられた動作インジケータ7が赤色または緑色に多色に点灯、点滅したり、回転点灯表示するようにしてその動作状態や警報状態が遠方からでもモニターできるようにして安全性を万全にしている。さらにまた、ブザーも内蔵されており、安全性を考えた、各種警報機能が備わっている。
【0015】
また、小型・軽量であるので、持ち運びも簡単であり、複数台数を同時使用する場合にも使用に便利となるように設計されている。さらにまた、装置の右側面の設定ダイヤル6を回すことで回転速度と回転方向に応じた数値設定が短時間でできるようにする一方で、表示パネルの表示部11に設定値を表示できるようにして、流量などの数値の設定変更時は、設定ダイヤル6の操作によりワンアクションで簡単に行えるようにしている。
【0016】
さらに、多連使用(多数併用)できる形状と、使い易くさらにビルドアップ可能なデザインとなっており、形状寸法は、例えば高さH:110mm×幅W:322mm×奥行きD:115mmと小型であり、また体積比は80%以下で重量は2.0Kg程度とするとともに、電源はAC商用電源と、内蔵バッテリ、DC12VAの3系統にしている。
【0017】
また内蔵バッテリは充電時間は24H(時間)であり、外部から簡単に交換可能にするために下カバー3の底部において蓋で被われて、コネクタ接続されて着脱可能に設けられている。また、交換寿命は3年以上とする一方で、充電コントロールをトリクル充電としている。さらに、充電バッテリーのセル破損検出/セル破損安全対策により過放・充電防止を実現している。そして、耐熱用(Ni-Cd)バッテリーを使用し、新品バッテリーで警報発生まで120分以上,シャットダウンまで150分以上動作できるようにしている。
【0018】
また、ガンマ注入のための表示部10と、流量・予定量・積算量の各表示部11他が操作パネル2f上に設けられる一方で、設定ダイヤル6は洗浄のために簡単に取り外すことができるように凹部6eが形成されており、この部分に爪先を入れて回動しつつ外側に移動して外すことができるように構成されている。
【0019】
次に、シリンジの本体Sをセットするために上カバー2にはシリンジステージ2aとシリンジの本体と一体的に形成されているフランジ部SFがセットされるスリット部2cが一体射出成形される一方で、クランプ5を回動自在に支持するクランプ支柱2b(破線図示)も同様に一体形成されている。
【0020】
そして、図中の矢印A4方向に駆動されるスライダ組立体50は、ケースの凹部2d上を往復移動する一方で、破線図示のスライダー送り機構に対して後述するパイプシャフト、インナークラッチシャフトの端部において連結固定されており、スライダ組立体50のクラッチレバー52を手動で操作することで押子SPを簡単に装着または取り外すことができるように構成されている。
【0021】
次に、図2は図1の本体1の右側面図であって、本図において、既に説明済みの構成には同一符号を付して説明を割愛して述べると、下カバー3にはDC電源コネクタ9と、ACインレット8が並設されている。
【0022】
また、図3は図1の本体1の左側面図であって、下カバー3の側面底部には外部通信コネクタ12が配設されており、後述する外部通信機能、例えば外部医療用モニターに接続しての外部通信機能を行えるようにしており、閉塞検出やモーター駆動を遠隔操作可能にしている。また、この外部通信コネクタ12の隣りにはナースコール用のナースコールコネクタ13が並設されており、院内において設置する際にベッド近傍のナースコール接続端子に接続して異常状態発生を看護婦に知らせることができるようにしている。
【0023】
また、図3に示すようにポールPに対してクランプNで固定するための雌ネジ部14(破線図示)が下カバー3にインサート成形されている。
【0024】
図4は、操作パネル部2fの平面図である。本図において、電源スイッチ15と、AC/DCランプ16とバッテリーランプ17が左端部において集中配設されている。これらランプの隣りにはガンマ設定表示部10が配設されているが、このガンマ設定表示部10が無い機種も十分に使用可能であるので、無い機種もある。このガンマ設定表示部10には、表示オン/オフスイッチ10aと、項目切り換えスイッチ10bが設けられている。
【0025】
一方、この表示部10の上にはクランプ5を使用してセットしたときに、クランプの上下方向の移動量を電気信号に変換してからシリンジ直径を自動計測してセットされたシリンジの容積10cc(ml),20cc(ml),30cc(ml)、50cc(ml)を表示するようにしたシリンジ表示ランプ18が設けられている。
【0026】
また、クランプ5の下方には透明アクリル樹脂等から上に向けて突起する形状になるように成形された動作インジケータ7が設けられており、内蔵の赤色と緑色に適宜光るようにした発光ダイオード7a?7dが点灯したり点滅したり、図示の矢印方向に回転するように内側で光が散乱するようにして、注入動作状態を電光表示できるようにしている。
【0027】
クランプ5の隣りにはシリンジポンプに設けられている閉塞検出機構による設定検出圧力を3段切り換え表示する表示ランプ19a、19b、19cが設けられている。これらランプの隣りには、残量アラームランプ20、バッテリーアラームランプ22他が集中的に配設されている。
【0028】
これらのランプの隣りには流量・予定量・積算量ランプ23、24、25を備えた7セグメントのLEDの表示部11が設けられている。また、この表示部11の右側には表示切り換えスイッチ26と積算クリアスイッチ27が設けられている。そして、表示部11の下方には早送りスイッチ30と、開始スイッチ29と停止/消音スイッチ28が設けられている。
【0029】
以上の構成において、図5(a)と図6の要部外観斜視図と図5(b)のクランプ5の要部断面図に示したように、シリンジSをセットするためにクランプ5を上方の矢印D3(図6(a))に引き上げてから矢印D4方向に約90度回転することで、クランプ支柱2bの縦突起部2b-1、2b-2、2b-3に対してスプライン嵌合した状態に保持されたクランプ5がクランプ支柱の上端部において不図示の引っ張り力に抗して留まることができる状態になる。
【0030】
続いて、シリンジのフランジSFをスリット2cにセットするためにシリンジのフランジSFを、スリット2cに入れる。その後にシリンジの本体Sをシリンジステージ2a上にセットするようにしてから、クランプ5を矢印D1方向(図5(a))に回動すると、上記のロック状態が解除されて図中の矢印D2方向に引っ張られてシリンジのクランプが行われる。
【0031】
以上のスリット2cとシリンジステージ2aには図示のようにさらに小径の円弧溝部2a-2、2a-3、2a-1が図示のようにさらに一体形成されており、小容量小径のシリンジを不動状態で保持することができるようにしている。以上でシリンジのセットが終了する。
【0032】
続いてクラッチを解除してスライダーを移動させるが、このとき図1に示すスライダー組立体50のクラッチレバー52を押すと、スライダーが手で動かせるようになる。
【0033】
そこで、シリンジの押子SPがスライダー組立体50に当接するようにしてから、クラッチレバー52を離すと、左右フック53、54がシリンジSの押子SPを自動的に保持するようになる。即ち、クラッチレバー52を離すと、スライダーのフックがシリンジの押子を挟み込む状態になる。以上が基本のセット動作である。
【0034】
図7と図8は上カバー2に内蔵されるスライダ送り機構の外観斜視図である。両図において、亜鉛ダイカスト製のように剛性と防振性に優れたベース34には左右壁面34a(但し、片方は不図示)が一体形成されており、ギアトレイン36のギアを一端に固定したリードネジ37と、インナークラッチシャフト43と、案内シャフト38の夫々を左右壁面34a(但し、片方は不図示)で挟まれる空間部位において支持しており、リードネジ37は不図示の軸受により回動自在に支持されている。
【0035】
インナークラッチシャフト43にはガイドブッシュ48により矢印A4方向に移動可能になるようにされたパイプシャフト40が同軸状に摺動自在に案内されている。また、案内シャフト38は不動状態でベース34に固定されている。このパイプシャフト40の端部には上記の案内シャフト38に挿通されて回り止めするためのポリアセタール樹脂製のブッシュ42を固定したブロック41が固定されている。また、インナークラッチシャフト43には図示の破線矢印A1方向に常時付勢されており歯部45aがリードネジ37の歯部に常時歯合するようにしたハーフナットブロック45を固定したナットホルダー44が固定されており、このインナークラッチシャフト43が実線の矢印A3方向に回動されたときのみ歯合状態が外れたフリー状態になるようにして、矢印A5方向に自由に移動できるように構成されている。また、案内シャフト38にはクラッチセンサ板39が回動軸支されている。
【0036】
また、このスライダ送り機構33にはさらに閉塞検出機構が設けられている。スライダ送り機構33の構成は、エンコーダをその出力軸に固定したモータ35の回転をギアトレイン36を介して送りネジであるリードネジ37に固定してある最終ギアに動力伝達することによりナットホルダー44が移動し、シリンジの押子SPを押すことにより中に入っている薬液を注入することができるようにしているが、この時に、ナットホルダー44は送り方向へ進もうとするが、シリンジS及びその他の輸液流路中の抵抗の作用によって、逆方向へ作用する力が生じる。
【0037】
このようにして、生じた力はナットホルダー44に固定されたハーフナット45とシードネジ37の噛合状態によって、送りネジ全体が送り方向とは逆方向の反力を受ける。この結果、送りネジ全体が逆方向に移動して、送りネジの先端部位が不図示のレバーを経由してフォースセンサーにその力が伝達される。
【0038】
このようにして、伝達された力は、フォースセンサーのたわみとなり、この機構的なたわみを電気的な出力に変換して、ある設定値(E2PROM、(但半角2は上付きを示す)に記憶されている)にまで達すると異常状態を知らせるアラームとして動作インジケータ7に表示するとともに警報音(ブザー)を発生(鳴動)する。
【0039】
また、このようにシリンジ及びその他の輸液流路中の抵抗から生じる負荷設定は、上カバー2上の表示パネルに設けられた3個の表示ランプ19a、19b、19cにより3段切り換え表示されて、その負荷設定値は、下記の通りとなっている。
【0040】
(1)H(高);(800±200mmHg)
(2)M(中);(500±100mmHg)
(3)L(小);(300±100mmHg)
また、閉塞検出機構にはシリンジの摺動抵抗の考慮もなされており、各メーカー,シリンジ容積種類(50cc,30cc,20cc,10cc)を検知して、シリンジの摺動抵抗により自動補正する。CPU内部の交換メモリ(E2PROM)には、10社分のシリンジの摺動抵抗データを予め記憶されており、任意のメーカーを設定することができるようになっている。
【0041】
一方、残量検出機構は動作途中で残量が少なくなった場合に重要な機能であって、ポンプが動作を継続してブロック41とナットホルダー44が移動されてシリンジの押子SPが移動されてある任意の位置に到達すると、パイプシャフト40に固定されているブロック41に固定されている不図示の金具が本体の上カバー2の内部に固定されているポテンショメータのレバーに接する状態になる。このように当接した状態から、さらに移動が継続されると、ポテンショメータの値が予め記憶された所定値に達する。この時に、異常状態を知らせるアラームとして動作インジケータ7に表示するとともに警報音を発生して残量アラームを表示する。
【0042】
以上のようにして、ポンプの薬液注入の動作が完了すると、送り方向とは逆方向へ移動して、初期の位置へスライダーは戻されて、ポテンショメータのレバーは、レバーに接続された引張りバネの力により、初期の位置に戻るように構成されている。また、クラッチはずれ検出機構は、ポンプの送り動作中に、誤ってクラッチレバー52が握られて、クラッチを構成するハーフナット45とリードネジ37の歯合状態が切られたか、或いは、何らかの負荷の作用等により、同様のことが起った場合に警報音を発生し、動作インジケータ7により異常を知らせるものである。
【0043】
このためにスライダ組立体50のクラッチレバー52を握ると、パイプシャフト40を介して、ハーフナット45が図7に示した破線矢印A1とは逆方向に回転されることになる結果、リードネジ37のネジ山部37aとハーフナット45のネジ山部45aとの間の歯合状態が外れるように構成されている。
【0044】
また、このようにハーフナット45が回転されると、ハーフナット45の摺動面45cに対して常時摺動面39cが当接するように不図示の付勢手段により付勢力を受けているクラッチセンサー板39が同時に回転されて、クラッチセンサー板39の一端のレバー部39bが上カバーの内部に固定されているフォトセンサー(透過型)46であって、通常は遮光しているセンサを、クラッチセンサー板39が回転することにより、光が透過する状態になるので、これを検出することによってアラームを表示するように構成されている。
【0045】
また、図8において、押子を移動させるためにモータ35が駆動されると、リードネジ37が回転駆動されこれに歯合するハーフナット45を固定しているナットホルダー44が矢印B1方向に移動されるのでパイプシャフト40も矢印B2方向に移動されるとともにスライダー組立体50の移動が行われる。このとき、クラッチセンサー板39の一端のレバー部39bはフォトセンサー(透過型)46を遮光している。
【0046】
次に、シリンジ断面積データの保持はCPU内部の交換可能メモリ(E2PROM)に、10社分のシリンジ断面積データが記憶されており、任意にメーカーを設定することができる。また、バッテリ故障検出機構が設けられており、バッテリの2セル以上のショートモードの破損を検出可能にしている。さらにγ(ガンマ)注入と、予定量注入、アラーム・駆動状態表示が設けられており、アラームは立体表示となっており、駆動状態で、LED点灯箇所が回転するようにしている。
【0047】
バッテリー残量表示はバッテリーの残量が3段階にバッテリーランプ17において表示されるようにしている。また、従来は、バッテリー残量の検知についてはバッテリー電圧に基づき行っていたが、本機では電流の積算で行うことで、より高精度にバッテリー残量を検出する。
【0048】
また、設定ダイヤル6は側面において3箇所の凹部6aを設けており、これらの凹部6a中に指先を入れてから回転するように構成された所謂ジョグタイプである。この設定ダイヤル6は、非接触式であってダイヤルの回転を検出するエンドレスのエンコーダー式であり、凹部6aに指先を入れてから高速度で回転することができるようにして、回転角度に応じて設定ができるように配慮される一方、必要に応じて簡単に着脱可能にしており、シリンジ内容液がポンプ装置上に漏洩した場合において、他の防滴対策が十分な操作パネルと同様に水洗いできるようにしている。この、設定ダイヤル6は時計まわりに回転すると各種設定値がアップされて図4に示された表示部11に表示が行われる。同様に反時計まわりに設定ダイヤル6が回転されると設定値がダウンするように表示部11に表示されるようにしている。
【0049】
具体的には、図4の表示パネル上に配設された表示切り換えスイッチ26を押圧すると、流量ランプ23と、予定量ランプ24と積算量ランプ25が順次点灯されて、各設定が行えるようになっている。
【0050】
そこで、流量設定を行うときは、表示切り換えスイッチ26を押圧して流量ランプ23が点灯する状態にしてから、設定ダイヤル6を回転するようにして設定する。この結果表示部11において設定値の表示がおこなわれる。この表示範囲は、0.0?1200ml/h(?999.9:0.1ml/hステップ)(1000?:1ml/hステップ)となっており、最低流量→0.0とするとともに広い注入範囲を設定可能にしている。また、各メーカーの各種類のシリンジについて保証できるようにしている。また、流量設定値「0」のとき、ブザーがワンショット発報して開始できないようにしている。さらに流量設定値が駆動可能な流量範囲を越えている場合にも、ブザーがワンショット発報して開始できないようにしている。
【0051】
また、積算量を設定するためには、表示切り換えスイッチ26を押圧して積算ランプ25が点灯する状態にしてから、図4に示した表示部11を見ながら上記の設定ダイヤル6を回転して設定する。このときの積算量の表示範囲は、0.0?999.9ml(0.1mlステップ)であって、最低流量→0.0となっており、モータ35の出力軸に固定されているエンコーダーのパルスカウント値から積算する一方、早送りスイッチ30が押圧されてから早送りされる早送り量を加算されるようにしている。
【0052】
また、注入量の設定は体重;0.0?300.0Kg(0.1Kgステップ)で、薬剤量;0.0?300.0mg(0.1mgステップ)、溶液量;0.0?300.0ml(0.1mlステップ)、γ量;0.00?50.00γ(μg/Kg/min)(0.01γステップ)で可能なようにしている。
【0053】
そして、最低流量は0.0から流量表示され、体重,薬剤量,溶液量,γ量を入力すると、流量が自動計算され表示されるようになっており、表示された流量で開始できるようになっている。この計算結果が、設定可能流量(0.1ml/h以上,1200ml/h以下)を逸脱していた場合には、表示部11の流量表示が、数字以外の「----」となる表示になり、これに前後してブザーがワンショット発報してポンプ動作を開始できないようにしている。
【0054】
一方、計算結果が1200ml/h以内のとき、計算結果を表示するが、300.1ml/h以上の計算結果であって、かつシリンジの種類が10?30ccであることが自動検知された場合には、開始スイッチ29が押されてもブザーがワンショット発報して開始できないようにしている。
【0055】
次に、早送りスイッチ30が押されると送液流量がアップされて、シリンジ50ccの場合には1200ml/h、30ccの場合には500ml/h、20ccの場合には400ml/h、シリンジ10ccの場合には300ml/hでの送液が行われる。
【0056】
また、予定量設定の表示範囲は0.0?999.9ml(0.1mlステップ)で、最低流量→0.0となっており、内部の選択スイッチにより、動作選択できるようになっている。そして、予定量=0.0の場合には開始スイッチ29が押された時に、ブザーがワンショット発報するとともに予定量LEDの予定量ランプ24が点滅して開始出来ないようになっている。また、予定量<=積算量では予定量ランプ24のLEDが点滅してブザー発報して続行できないようにしている。また、注入中において予定量<=積算量となると予定量ランプ24のLEDが点滅してブザーの発報がなされて、自動的にKVO運転に切り換わる。この時、流量は、KVO(0.1ml/h)表示するので、停止・消音スイッチ28を一度押すと消音する。このKVO運転継続中に再アラームがあり、再度停止スイッチ28が押されると停止する。
【0057】
一方、装置に対する電源投入時の初期表示は、メモリーモード以外の時において、「0」mlとなっている。
【0058】
次に、図9(a)はスライダ組立体50の外観斜視図、また図9(b)はカバー55を取り外して示した外観斜視図である。図10は図9(b)の正面図である。
【0059】
先ず、図9において、スライダ組立体50は上記のスライダ送り機構33のインナークラッチシャフト43とパイプシャフト40の端部において固定されて種々の異なるシリンジを不動状態に着脱自在に保持し、かつこれを駆動することでシリンジ内容物を正確に送り出すための重要な機能を有する。また、ブーツ51がパイプシャフト40に被せられている。
【0060】
図9において、押子を把持するために矢印B3、B4方向に同期して開閉自在に操作される略L字形状及び逆L字形状の一対の左右フック部材53、54が、押子が把持されるベースの側面部位において回動部53k、54kにおいて夫々回動自在に支持されている。
【0061】
これらの左右フック部材には第1アーム部53-1、54-1と第2アーム部53-2、54-2とが図示のように形成されており、第2アーム部53-2、54-2には図10に示す溝部53a、54aがピン61に挿通するようにして設けられており、このピン61がクラッチレバー52の矢印B1方向の押圧操作により矢印B2方向に移動することで左右フック部材53、54が矢印B3、B4方向に同期して開くように構成されている。以上で、クラッチレバー52の操作により、左右フック部材53、54が開くことが理解されよう。
【0062】
また、図9(a)においてカバー55の側面部位において押子を載置するために設けられる突起部55aが少なくとも1箇所の段差を形成するように設けられており、大小異なる押子を載置可能にするとともに、下方に押子が落下することを防止している。
【0063】
図11は、スライダ組立体50を背面側から見た外観斜視図である。また、図12は図11のクラッチレバー52を取り外して示した正面図、図13は図11の正面図であって、既に説明済みの構成には同一符号を付して説明を割愛すると、スライダベース60において摺動自在に設けられるスライダ部品65とクラッチレバー52のフック部52dの間で引っ張りバネ63が張設されており、このスライダ部品65に植設された上記ピン61の作用により左右フック部材53、54が常時閉じる状態に付勢されている。
【0064】
また、このスライダ部品65において摺動自在に設けられるプレートカム部品64の突起部64aが潜入するカム溝52a(図13中において破線図示される)がクラッチレバー52に形成されており、クラッチレバー52を矢印B1方向に手動で回動させることで、プレートカム部品64を矢印B9方向に移動するようにしている。
【0065】
また、ベース60の側面部位には一端がトーションバネの作用により常時突出するように付勢されたストッパー部品57であって、プレートカム部品64の摺動面64g上を滑るピン58が圧入された部品57がプレートカム部品64を貫通するように設けられている。
【0066】
一方、図13において、破線図示のインナークラッチシャフト43の端部は平行に切削加工された係止部43eが形成されており、この係止部43eに対して厚手のステンレス板からなるプレート67がネジ66により固定されており、このプレート67に固定されている調整ボルト77がクラッチレバー57の回動に伴い当接するように構成されている。また、クラッチレバー52は上記のパイプシャフト回りに回動自在に支持されており、その長溝部52cにネジ66がセットされている。
【0067】
また、図16は、スライダ部品65とプレートカム部品64とストッパー部品57との相互関係を示した外観斜視図である。本図において、スライダ部品65はスライダーベース60において上下方向に移動できるように内蔵される一方、ピン61がインサート成形されており、引っ張りバネ63が矢印C方向に移動付勢しているので、外力が作用しない場合には矢印C1方向に移動されてピン61に係合している左右フック部材53、54を閉じるように移動する。
【0068】
また、プレートカム部品64はクラッチレバー52の可動により突起部64aが矢印B9方向に移動されると、当接面64cがスライダ部品65の当接面65aに対して当接することになり、スライダ部品65とともに矢印B9方向に移動されて、ピン61の作用により左右フック部材53、54が開くようになる。
【0069】
一方、ストッパー部品57は、開口部64k中を挿通されるとともに、プレートカム部品64の摺動面64g上を滑るようにして脱落防止する圧入ピン58を設けており、段差部64tに圧入ピン58が落ちる状態ではスライダ部品65の移動を規制するように構成されている。
【0070】
即ち、図14と図15はスライダ部品65のみ省いて示した要部断面図であって、両図においてクラッチレバー52の操作でフック部材53、54を開状態にしたときに、クラッチレバー52の動きがプレート67を介してインナークラッチシャフト43に伝達されてスライダ組立体50がスライダ送り機構33から非係合状態にされるので、長手方向に移動する。
【0071】
一方、シリンジがスライダベース60にセットされるとストッパー部品57の圧入ピン58は段差部64tに落ちる状態になり、クラッチレバー52の操作を不能な状態にするとともにフック部材53、54を閉状態に移動する。また、このときにスライダ組立体50がスライダ送り機構33に対する歯合状態になるように構成されている。
【0072】
次に、図17は通信コードを示し、また図18は接続状態のブロック図である両図において本体内部のスイッチにより、RS-232CとRS-485を切り換えることができるようになっており伝送速度も本体パネルのスイッチ操作で伝送速度を4800bpsから19200bpsの範囲で換えることができるようになっている。
【0073】
また、同期方法は調歩同期式であって、図17に示すようにスタートビットは1ビット、データビットは8ビット(LSBファースト)パリティービットはなし、ストップビットは1または2ビット(2ビット工場出荷時)であり、スイッチ操作で切り換え可能になっている。
【0074】
伝送手順は外部医療用モニターからシリンジポンプに命令を送るとシリンジポンプは応答を開始する。このときシリンジポンプは、受信内容が自分宛のものでないとき、いっさい応答を返さない。またシリンジポンプは通信終了符号(ETX)を受信できないとき、待機の状態を維持する。このETXを受信する前に通信開始符号(STX)を受信したとき、後から受信した応答が正常でもフェーズエラー扱いにする。
【0075】
但し、▲1▼待ち時間が3秒を越えたとき、▲2▼自分宛でない「STX?ETX」を受信したときは、それまでの受信データは無効にする。
【0076】
シリンジポンプの”受信→送信”の伝送タイミングは、受信完了→送信部の開始準備時間は40ms以上、送信部の開始準備時間→送信開始時間は10ms以上、送信完了→送信部の終了準備時間は20ms以上となっている。
【0077】
また、伝送符号は通信開始符号(STX):FFH、通信終了符号(ETX):OOHに設定されており、アドレスは該当番号:31Hに設定するようにしている。
【0078】
ID番号が任意にの8桁数字で設定可能になっており(工場出荷時、00000000が設定されている)。
【0079】
また、シーケンス番号は以下のようになっている。
【0080】

シリンジポンプにおいて、シーケンス番号が、前回受信した番号と同じときは、何も処理をおこなわず、前回応答として返したものを再送するが、シーケンス番号0のときは、無条件で命令に対する処理を行う。シリンジポンプからの応答におけるシーケンス番号は、受信したシーケンス番号と同じものを使用する。
【0081】
また、通信エラーのシーケンス番号は、FFH(255)を使用する。
【0082】
命令は01Hでシリンジポンプ本体内部情報を要求し、補助命令は00Hで基本動作状態を、また01Hでガンマ情報を、02Hで予定量情報を夫々要求するように設定されている。
【0083】
図19は、設定ダイヤルの中心断面図である。また、図20は設定ダイヤル6の分解斜視図である。既に説明済みの構成には同一符号を付して説明を割愛して述べると、両図において、設定ダイヤル6は上記のカバー2、3と略同様の諸仕様を満足する樹脂材料から射出成形されてなり、その回転中心において油含有メタル等からなる耐久性に優れた軸受部(金属ブッシュ)73がインサート成形等されて一体的に設けられている。
【0084】
また、内部には厚さ方向に異なる極性となるように着磁された永久磁石70の16個分が等間隔になるように内蔵されており、プラスチックシート75により被覆されている。または、図20に示したように、帽子状に予め形成されたプラスチックシート75を被せるようにして、外部に永久磁石70が直接露出しないようにして、水洗時において錆びないように配慮している。また、この永久磁石磁性材料を分散してなるゴム等のエラストマーで形成させても良い。
【0085】
一方、上ケース2側には、軸受部(金属ブッシュ)73を回動自在に軸支するための埋設シャフト72が植設されており、設定ダイヤル6の軸受部(金属ブッシュ)73を着脱可能にするとともに挿入された状態において、図19に示すように永久磁石70が上ケース2の側面部位に配設されているホールIC71と、鉄、鋼、コバルト、ニッケル等の常磁性体またはこれらを分散させたプラマグ等のエラストマーで形成された磁性体リング74の凸部74aに対向する位置になるようにしている。
【0086】
また、図19に示したように設定ダイヤル6が装着された状態において、上カバー2に固定されているホールIC71と、磁性体リング74と永久磁石70の側面部位の間の寸法が図示のような位置関係になるように、金属ブッシュ73の端面が上カバーに当接するようにしている。
【0087】
次に、図22は図19のX-X矢視断面図であって、ホールIC71と、磁性体リング74のみ示した図である。本図において磁性体リング74には図示のような凸部74aが略半円分に渡り10箇所等間隔で一体形成されている。また、ホールIC71は半円で開いた部分に配設されており、上記のように16個分が等間隔で配置されている永久磁石70がホールIC71と、磁性体リング74の凸部74aに対して夫々対向して吸引及びホールIC71のオン/オフを行い得るようにしている。また、凸部74aの設けられているピッチと永久磁石70の設けられているピッチを異なるようにして、設定ダイヤル6の回転時のクリック抵抗感が出るように互いに吸引するようにしている。このために通常の状態では磁性体リング74と永久磁石とが設定ダイヤル6が固定軸体から脱落防止する手段として働く。
【0088】
図23は、ホールIC71が接続されたブロック図である。本図に示したように、2個のホールIC71がメイン基板101に対してコネクタ103を介して接続されており、直流5ボルトの電力供給を行うとともに各ホールIC71間のA相、B相に発生するバイアス電圧変化を約90度の位相差を持った出力として検出してCPU102のポートに入力して設定ダイヤル6の回転操作に伴う回転方向及び回転数(回転角度)を検出する手段としての作用を可能にしている。
【0089】
以上の構成において、設定ダイヤル6の操作が暫く行われない状態から、設定ダイヤル6の回転操作が行われたときに最初の180度分の回転では設定値は変化しないようにして、誤って回転された時の対処をしている。回転角度が180度を超えると、確認のためのブザーが発生し、設定値が回転方向及び回転数に応じて変化するようにするために、ある周期でカウントされた値がnカウントでn周期以上(nは整数)の場合に上位桁の数値が変化するようにする。また、停止/消音スイッチ28を押したままで設定ダイヤル6を回すと上位桁の数値が変化する。例えば、ml毎に設定値を変化させるときは、10mlステップで10ml毎に設定値を変化させるときは100mlステップで設定値が変化する。
【0090】
以上のように構成される設定ダイヤル6は取り外すことで清掃できるが、図21の使用説明図のように、以下の手順で行う。先ず、シリンジポンプ本体上部の溝部と設定ダイアル6の凹部6eが一致するようにする。本体と設定ダイアルの凹部6eとの間に、爪または指先をかける。次に、設定ダイアル6を左右にゆらしながら矢印の方向に引き、本体1から設定ダイアル6を取り外す。この後に本体、埋設シャフト72、及び設定ダイアル6をそれぞれをきれいに拭くか水洗いする。清掃が終了したら、設定ダイアル6を本体1の埋設シャフト72の付け根部分まで突き当たるまで挿入する。
【0091】
最後に、図24は内蔵されたブザーの動作対応図表であって、上記の動作インジケータ7との同期により鳴動パターンと発報間隔が図表に示したように発生されて、使用者に報知し認識させるようにする。なお、図表において、「3音」とは「ピー、ピー、ピー」と音が3つ連続することを示している。「5音」も同様である。また、鳴動の優先順位としては、基本的には、(a)閉塞、シリンジ外れ、クラッチ外れの発生、(b)バッテリー電圧低下(2分、4分、6分、8分、10分、10分以上)、(c)残量警報、(d)開始忘れ音の順となるように、優先順位が高く設定されている。また、多重的に警報が発生するときは、順次の高い方に切り換えるようにしている。同様に、消音時において、警報が多重的に発生したときは、優先順位の高いアラームを発するようにするとともに、開始忘れ音のように間欠的に発生する間に、キークリック、ワンショット発報は割り込んで鳴動することができるようにしている。
【0092】
一方、再度、図4を参照して、動作インジケータ7の動作は、(a)正常運転中は、設定流量に対応して4段階の異なる速度で、内蔵の発光ダイオード7a?7dが緑色に時計回転方向に順次点滅する。(b)運転停止中は警報時の赤色点灯を除いて、緑色は消灯する。(c)開始忘れの時は、全て発光ダイオード7a?7dが赤色点滅する。(d)外部からの通信を受信したときは、一瞬緑色に点滅するようになっている。
【0093】
以上説明のシリンジポンプの使用説明を行うと、下準備として、まず、用具の確認をして、シリンジポンプ1と付属のポールクランプとAC電源ケーブルと輸液スタンドPと薬液の入ったシリンジ、留置針の以上が揃っていることを確認する。この後に、ポールクランプを輸液スタンドPに固定して、ポールクランプを輸液スタンドにしっかりと固定する。このために、シリンジポンプの底にあるネジ穴に、ポールクランプの取りつけネジをいれて固定する。次に、本体右側面のACインレット8にAC電源ケーブルを接続し、プラグをアース端子付のAC100Vのコンセントに接続する。
【0094】
AC電源が接続されると、バッテリーランプ17が点灯して、内蔵バッテリーに充電されている状態になっていることが表示される。
【0095】
そこで、電源を入れるために電源スイッチ15を約1秒押して電源をいれるとすべてのランプが3回点滅して、またブザーが鳴って自動的にセルフチェックが行われる。このときAC/DCランプ16は点灯する一方で、流量・予定量・積算量の各表示ランプ23、24、25が点灯する。また流量・予定量・積算量の表示部11に、予め設定されているシリンジメーカーが約3秒間、数字で表示される。シリンジメーカー設定ラベルは使用するシリンジポンプに貼り付けられているので、シリンジメーカー設定ラベルと本体で設定されているシリンジメーカーが一致していることを、必ず確認する。
【0096】
所定時間経過後に流量・予定量・積算量の表示部11のシリンジメーカーの数字が消えて、表示部11に「0.0」と表示される。また動作インジケータ7はこの時、消灯している。
【0097】
一方、シリンジの種類の表示ランプ18は内蔵の4個の全ての表示ランプが点滅した状態で、シリンジが装着されていないことを表示してシリンジセットを促す。
【0098】
シリンジSのセットは以上の表示がすべて確認できたら行われる。シリンジを注入ライン(チューブ)と薬液が満たされたシリンジを無菌的な環境で行い接続したら、シリンジの本体Sをステージ2a上にセットしてクランプ5を上までいっぱいに引き上げてから、矢印D1方向に回す。すなわち、図5の要部外観斜視図に示したように、シリンジの本体Sをセットするためにクランプ5を上方に引き上げてから約90度回転することで上方位置に留まることができるようになっているのでクランプ5を上に引き矢印D1方向に回す。
【0099】
続いて、シリンジのフランジSFをスリット2cにセットするためにシリンジのフランジSFを、スリット2cに入れる。その後にシリンジの本体Sをシリンジステージ2a上にセットするようにしてから、クランプ5を矢印D1方向に回動すると、ロック状態が外れて矢印D2方向に移動されてシリンジクランプを行う。
【0100】
続いて、スライダー組立体50のクラッチレバー52を押して、クラッチを解除してスライダーを移動するが、このときスライダーのクラッチレバー52を押すと、スライダーが手で動かせるようになる。
【0101】
そこで、シリンジの押子SPがスライダー組立体50に当接するようにしてから、クラッチレバー52を離すと、左右フック53、54が押子SPを自動的に保持するようになる。即ち、クラッチレバー52を離すと、スライダーのフックがシリンジの押子を挟み込む状態になる。
【0102】
この後に、上記のようにクランプ5を矢印D1方向に回して、矢印D2方向に降ろしてシリンジSを固定する。以上のようにしてシリンジのセットが終わったら、プライミングを行う。
【0103】
このプライミングは、患者に穿刺する前に必ず行う必要があり、早送りスイッチ30を押すと動作インジケータ7が回転表示されて、ポンプ動作が開示されて留置針の先端から薬液が出る。この早送りスイッチ30を押し続け、薬液を留置針の先端まで送ると、積算量ランプ25が点滅する。また、流量・予定量・積算量の表示部11は早送り中は、積算量ランプ25が点滅し、流量・予定量・積算量の表示部11に、プライミング量が表示される。このプライミング量は、0.1mlステップで積算量に加算される。ここで、積算クリアスイッチ27を押すことにより、積算量を「0」にクリアすることもできる。
【0104】
このプライミングは、シリンジと本体の隙間を無くすことで本体のスライダー組立体50の作用面がシリンジの押子SPと隙間なく当接する状態にするために重要であるので、必ず行うようにする。
【0105】
以上のプライミングが終了したら、流量の設定を行うが、このとき先ず流量ランプ23が点灯していることを確認する。この流量ランプ23が点灯していない場合には、表示切換スイッチ26を押して、流量ランプ23を点灯させる状態にする。
【0106】
この後に、設定ダイヤル6を回して、1時間当たりの流量を設定するが、このとき設定ダイヤル操作の誤動作防止を図り安全を確保するために、回しはじめてから半周の間は数値が変化しないようになっている。また、半周を超えるとブザーが鳴り数値が変化する。
【0107】
この数値の増減は設定ダイヤル6を手前に回すと数値が減り、後ろに回すと数値は増えるようになっている。また、停止/消音スイッチ28を押した状態で設定ダイヤル6を回すと数値は上位桁で急速に変化する。
【0108】
シリンジ種類と最大流量については、シリンジの種類により、設定できる最大流量が設定されており、例えば30mlのシリンジで最大流量1500mlとなっている。したがって、最大流量より大きな数値を設定し、開始スイッチ29を押した場合には、流量設定値が点滅して、注入は開始されないようになっているので、再度、設定する。
【0109】
以上のようにして流量の設定が終わったら、本体1が停止状態になっていることを確認して、留置針を患者の腕等に穿刺し、すべての準備が完了したら、薬液を注入を行う。このために、開始スイッチ29が押されると注入が開始される。動作インジケータ7が回転点灯するので薬液の注入は、回転点灯することで遠方からも確認できる。
【0110】
なお、シリンジを本体1にセットしてから、流量設定が終了した時点から約2分間経過しても、注入が開始されない場合には、ブザーが鳴って開始忘れを知らせる。そこで、停止/消音スイッチ28を押すとブザーが鳴り止むようにしている。
【0111】
注入中に、流量の変更を行う場合は、注入の一時停止を実行して注入を停止状態にする。このために停止/消音スイッチ28を押すと動作インジケータ7が消灯する。
【0112】
注入が開始された後に、積算量を確認するためには、表示切換スイッチ26を押すと積算量ランプ25が点灯する状態になる。すると流量・予定量・積算量の表示部11に、注入開始からの積算量が0.1mlステップで約15秒間表示される。
【0113】
また、積算量をクリアしたい時は、停止/消音スイッチ28を押して本体1を停止状態にしてから、表示切換スイッチ26を押して、積算量を表示させて、積算クリアスイッチ27を約1.5秒押すと、ブザーが鳴り、流量・予定量・積算量の表示部11の積算量が「0.0ml」にクリアされる。
【0114】
予定した量の薬液が注入されたら、停止状態を確認して、シリンジを取り外すが、このためにクランプ5を上方に引き上げから、約90度回す状態にして保持する。続いて、スライダー50のクラッチレバー52を押して、左右フック部材53、54を開くようにしてシリンジを取り外す。その後に、再度使用しない場合には電源スイッチ15を約2秒以上押し続けて切る。
【0115】
上記の機能を備えるシリンジポンプにより十分に所望の機能が達成できるものであるが、ガンマ注入設定機能により、より効果的な薬液注入ができる。
【0116】
このために、先ず表示ON/OFFスイッチ10aを約2秒以上押し続けるとガンマ注入設定画面10が点灯し、ガンマ注入が可能となる。続いて、項目切換スイッチ10bを押すとガンマ設定画面が変化し項目切換スイッチ10bを押すごとに、ガンマ量、体重、薬剤量、溶液量が点滅表示される。表示が点滅している箇所が設定変更の可能な項目となるので、所望の項目を表示した状態で設定ダイヤル6を回すことで、ガンマ設定設定画面10上の数値を変化させて数値を設定する。また停止/消音スイッチ28を押しながら設定ダイアル6を回すと、それぞれのステップ値が急速に変化させることができる。このガンマ注入設定画面10は設定した、ガンマ量、体重、薬剤量、溶剤量により、流量を自動計算して、表示される。
【0117】
図3に示した外部通信接続コネクタ12はシリンジポンプの状態を、外部の医療用モニターで監視するために設けられている。また、ナースコールコネクタ13はオプションのナースコールケーブルを用いて、ナースコールと接続できるようになっている。
【0118】
特殊機能の設定として、本体内部の切り換えスイッチの操作により、必要に応じた各モードの設定変更が可能となっている。これらの特殊機能として流量・予定量・積算量の表示部11の予定量を標準モードと、予定量モードに変更できるようになっている。標準モードでは、表示切換スイッチ26を押すごとに、流量、積算量の順で表示され、予定量の設定はできなくなっている。また、本体内部の切り換えスイッチの操作によって、予定量モードに切り換えると、表示部11の表示は、流量、予定量、積算量の順になり、予定量を設定することが可能となる。こ予定量の設定のためには表示切換スイッチ26を押して予定量ランプ24が点灯した状態にしてから、設定ダイヤル6を回して予定量を設定する。この設定は、0.1mlステップで変更できる。予定量を設定して、注液を開始した場合において、積算量が予定量に達すると、予定量ランプ24が点滅してブザーが鳴る。
【0119】
このように予定量の設定が行われた場合には、薬液の注入は、KVO(キープベインオープン)機能は0.1mlの流量で継続される。途中で確認したい場合は停止/消音スイッチ28を押すと動作インジケータ7が点灯し、ブザーが鳴り止む。この時、キープベインオープン機能は継続しており、停止/消音スイッチ28をもう一度押すと、動作インジケータ7が消灯し、キープベインオープン機能が解除されて停止状態になり、予定量モードでの注入が終る。
【0120】
再アラームは、標準モードと消音モードに変更でき、動作インジケータ7の赤色点滅し、ブザーが鳴る状態であって、ブザー消音後、2分以上アラーム状態が解除されない場合、ブザーが再度鳴るようにする標準モードと、消音モードであって、2分以上アラーム状態が続いても、再アラーム機能が作動しない状態に設定できる。
【0121】
開始忘れ警告は、標準モードと消音モードに変更でき、動作インジケータ7が赤色点滅し、ブザーが鳴る標準モードであって開始可能な状態で、停止状態が2分以上続いた場合、ブザーが鳴り、開始忘れを知らせるモードと、消音モードであって、停止状態が2分以上続いても、開始忘れアラーム機能が作動しないモードに設定できる。
【0122】
シリンジメーカーの変更は、内部切り換えスイッチにより可能としているが、この特殊機能の設定は、不注意に行うと事故発生にもなるので通常は行えないようにしている。
【0123】
閉塞検出圧レベルの設定とブザー音量の設定は、停止/消音スイッチ28を押し、表示切換スイッチ26を押して行う。先ず、閉塞検出圧レベルの設定変更は、停止/消音スイッチ28を押しながら、同時に表示切換スイッチ26を押すと、流量・予定量・積算量の表示部11に「PrES」と表示され、設定モードになる。そのまま停止/消音スイッチ28を押しながら、表示切換スイッチ26を離して、押すことで、閉塞圧設定値ランプ19a、19b、19cの近傍の印刷文字の「L」「M」「H」が順番に点灯するので希望する設定になったら、すべてのスイッチから指を離し、停止/消音スイッチ28を押し、積算クリアスイッチ27を押すことで閉塞検出圧レベルの設定ができる。
【0124】
また、ブザー音量の設定変更は、停止/消音スイッチ28を押しながら、同時に積算クリアスイッチ27を押し、流量・予定量・積算量の表示部11に、「bEL*2」と表示されて、設定モードになる。そのまま停止/消音スイッチ28を押しながら、積算クリアスイッチ27を離して、押すことで、表示が「bEL:1],「bEL:2].「bEL:3]とブザー音量の大、中、小に対応して変化するので希望する音量になったら、すべてのスイッチから指を離してブザー音量の設定が行う。
【0125】
電源集中ボックスにより、DC電源での使用もできる。この場合には、AC電源ケーブルが本体1から外れていることを確認し、本体右側面のDCコネクタ9にDCケーブルを接続する。続いて、電源スイッチ15を入れるとAC/DCランプ16が点灯してDC電源が供給される。
【0126】
また、AC電源とDC電源がどちらも供給されない場合には、自動的に内蔵バッテリーに切り換わり、AC/DCランプ16は消灯し、内蔵バッテリーで約2時間連続使用できるようになる。また、内蔵バッテリーは電源のON/OFFに拘わらず、AC電源か、DC電源が接続されている時に充電される。この充電中はバッテリーランプ17が点灯して、バッテリーの残量を3段階のレベルで表示する。このバッテリー残量の目安としては、3個全てのランプが点灯している場合は、約80分以上の使用が可能となり、ランプが2個点灯ときは約30分以上の動作時間があり、ランプが1個のみ点灯している場合は、約15分以上の使用が可能となる。3個全てが点滅している場合は、2個または1個しか点灯しない場合はバッテリーが劣化していることを示す。
【0127】
また、内蔵バッテリーの残量がさらに低下すると、バッテリーアラームランプ22が点滅し、またブザーが鳴るのでAC電源を接続して速やかにACかDCの電源に接続して使用する。
【0128】
以上の仕様をまとめると本実施形態のシリンジポンプの動作音が静かで最悪条件でも55dB以下であり、常用条件(0.1?150ml/h)では本体より10mmの位置で47dB以下を達成できた。また、クリーニング性も良く、外層クリーニングし易く、ガーゼ,綿棒でクリーニングでき、さらにユーザーが工具を使用せず、ある程度分解洗浄できるようにできた。またメンテナンス性が容易であって、特殊工具を必要とせず、各構成部品がユニット化されているので供給が容易であり、調整が簡便でありまた内部スイッチにより、A/D値を表示させ、調整確認できるように構成されている。
【0129】
また、ノイズマージンは例えば電気メスを近傍で使用した場合を想定して、電源インパルス;2KV,500nSec、ラジエーション;1KV,3方向を満足するようにした。さらに携帯電話(5W)を近傍で使用しても耐えるようにしてある。また、静電気ノイズマージンは10KVで誤動作せず、15KVで破損しないようにして、ノイズ規格の国内;VCIMグループ1クラスAと、海外;FCC Prat.18とCISPR 11(IEC601-1-2)とVDEDIN57871を満足するようにした。
【0130】
電撃防護形式はCLASS *I(3KV以上)でTYPE CF(接地洩れ;0.5mA以下)の国内;JIS T1001,T1002と海外;IEC 601-1を満足するようにした。
【0131】
耐薬品性はアルコールで拭かないようにしたが、アルコール程度の耐薬品性を備えるように外層はABSグレードV0にし、かつ銘版,印刷文字,表示等が消失しないように裏側印刷する等して対処した。
【0132】
また駆動推力(押子を押す力)は最大で約15Kg・fで約20Kg・fに耐えるとともに、実測で機械(送り)精度が±1%以内の高精度にすることができ、かつシリンジの各メーカーの各種類について保証できるようにした。
【0133】
具体的にはスライダーの移動量を実測することで、
▲1▼流量<1.0ml/h
60分(long-term);±5%以下
▲2▼1.0ml/h≦流量<5.0ml/h
2分のobservation window;±2%以下
かつ、
60分(long-term);±1%以下
▲3▼5.0ml/h≦流量
2分のobservation window;±1%以下
にした。
【0134】
また、流量精度は±3%以内の高精度にするために各メーカーの各種類について保証できるようにして吐出量を実測した。
▲1▼1.0ml/h≦流量<5.0ml/h
2分のobservation window;±5%以下
▲2▼1.0ml/h≦流量
60分(long-term);±3%以下
▲3▼開始後10分で95%以上となることを確認した。
【0135】
また残量アラーム発生の目安は10cc:0.5ml、20cc:1.0ml、30cc:1.0ml、50cc:1.0mlとしてある。
【0136】
γ量表示部10はバックライト付き(イエロー又はグリーン)の液晶でる。各7セグメントからなる数字表示着である。体重・Kg・薬剤量・mg・溶液量ml・γ量・μg/Kg/minの表示ができ、体重;7SEG4桁+小数点1SEG、薬剤量;7SEG4桁+小数点1SEG、溶液量;7SEG4桁+小数点1SEG、γ量;7SEG4桁+小数点1SEGで表示する。また通常注入モード選択のとき、全画面がバックライト消灯する。
【0137】
また流量・積算量・予定量表示部11は見やすいLED表示であり、7SEG4桁+小数点1SEGであってγモード設定中のとき、自動的に流量表示に切り換わる。また、γモード設定中設定値に対応し逐次流量表示が切り換わる、積算量又は予定量表示のとき、約15秒間放置されると自動的に流量表示に切り換わるようにしている。
【0138】
アラームはEr*とCPU暴走とスイッチ操作とセルフチェックの時に発生するが、分かり易い音色でかつ不快感がないようにしており、さらに海外規格対応と音量3段階切り換え可能(パネル操作)とし、また設定音量の記憶と設定時の音量レベル表示を可能にしている。その最大音量は1m離れて65dB以上としてあり、さらに自励式(CPUの暴走時に発報するよう)にしている。
【0139】
また、音色は3周波数(2?4KHz程度)であってCPUからPWM出力可としてあり、(アラーム→PWM出力、ウォッチドッグ→ハード発振)するようにしてある。この音量切り換え手順は、(1)アラーム状態(電圧低下、残量を除く)のとき、切り換え不可であって積算クリアを押し、(2)停止スイッチを押しながら、スイッチを押す度に中→大→小→中→・・・と変化(ブザーは1.5秒発報する)(3)ブザーに同期して流量表示部に、7Segにて中=「b-2」、大=「b-3」、小=「b-1」と表示される。(4)結果をEEPROMに書き込むようにしている。
【0140】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、少なくとも送り出しのための動作状態を離間位置からでも認識することができるシリンジポンプを提供することができる。また、これに加えて、請求項2の本発明によれば、送り出した薬液の積算量が予定量に達すると警報が発せられるので、離間位置からこれを認識することができると共に、0.1ml/hの流量で薬液の送り出しが継続され、逆流が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シリンジポンプ本体1の外観斜視図である。
【図2】図1の本体1の右側面図である。
【図3】図1の本体1の左側面図である。
【図4】操作パネル部2fの平面図である。
【図5】(a)本体1の上カバー2の要部外観斜視図である。(b)クランプ5の要部断面図である。
【図6】(a)シリンジセット準備のためのクランプ5の動作説明図である。(b)シリンジセットのクランプ5の動作説明図である。
【図7】スライダ送り機構の外観斜視図である。
【図8】スライダ送り機構の動作説明の外観斜視図である。
【図9】(a)スライダ組立体50の外観斜視図である。(b)カバー55を取り外して示した外観斜視図である。
【図10】図9(b)の正面図である。
【図11】スライダ組立体50の外観斜視図である。
【図12】スライダ組立体50の正面図である。
【図13】スライダ組立体50の背面図である。
【図14】スライダ部品65のみ省いて示した動作説明のための要部断面図である。
【図15】スライダ部品65のみ省いて示した動作説明のための要部断面図である。
【図16】スライダ部品65とプレートカム部品64とストッパー部品57との相互関係を示した外観斜視図である。
【図17】通信コードである。
【図18】接続状態のブロック図である。
【図19】設定ダイヤルの中心断面図である。
【図20】設定ダイヤルの分解斜視図である。
【図21】設定ダイヤルの動作説明図である。
【図22】図19のX-X矢視断面図である。
【図23】ホールIC71が接続されたブロック図である。
【図24】内蔵されたブザーの動作対応図表である。
【符号の説明】
1…シリンジポンプ本体、2…上カバー、3…下カバー、4…ラバーシール、5…クランプ、6…設定ダイヤル、7…動作インジケータ、7a?7d…発光ダイオード、8…ACインレット、9…DC電源コネクタ、10…ガンマ設定表示部、11…流量・予定量・積算量の表示部、12…外部通信コネクタ、13…ナースコールコネクタ、15…電源スイッチ、16…AC/DCランプ、17…バッテリーランプ、18…シリンジ表示ランプ、19a?19c…閉塞ランプ、21…残量アラームランプ、22…バッテリーアラームランプ、23…流量ランプ、24…予定量ランプ、25…積算量ランプ、26…切り換えスイッチ、27…積算クリアスイッチ、28…停止/消音スイッチ、29…開始スイッチ、30…早送りスイッチ、33…スライダ送り機構、34…ベース、35…モータ(エンコーダ付き)、36…ギアトレイン、37…リードネジ、38…案内シャフト、39…クラッチセンサー板、40…パイプシャフト、41…ブロック、42…ブッシュ、43…インナークラッチシャフト、44…ナットホルダー、45…ハーフナット、46…センサー、48…ガイドブッシュ、50…スライダ組立体、51…ブーツ、52…クラッチレバー、53…右フック、54…左フック、55…カバー、57…ストッパー部品、60…スライダベース、61…ピン、62…トーションバネ、63…引っ張りバネ、64…プレートカム部品、65…スライダ部品、67…プレート、70…永久磁石、71…ホールIC、72…埋設シャフト、73…金属ブッシュ、74…磁性体リング
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-05-26 
結審通知日 2008-05-28 
審決日 2008-06-10 
出願番号 特願2002-129123(P2002-129123)
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (A61M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 北村 英隆  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 八木 誠
阿部 寛
登録日 2004-07-30 
登録番号 特許第3581695号(P3581695)
発明の名称 シリンジポンプ  
代理人 大塚 康徳  
代理人 木村 秀二  
代理人 大塚 康徳  
代理人 木村 秀二  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康弘  
代理人 佐藤 辰彦  
代理人 鷺 健志  
代理人 大塚 康弘  
代理人 西川 恵雄  
代理人 高柳 司郎  
代理人 西川 恵雄  

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