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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01M 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01M 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 H01M 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H01M 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H01M |
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管理番号 | 1183022 |
審判番号 | 不服2004-19173 |
総通号数 | 106 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-09-16 |
確定日 | 2008-09-02 |
事件の表示 | 特願2001-391121「リチウム金属分散系である二次電池用アノード」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月25日出願公開、特開2002-313324〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成13年12月25日(優先日:2000年12月22日 米国)の出願であって、平成15年7月28日付けで拒絶理由が通知され、平成16年2月2日付けで手続補正書が提出され、同年6月15日付けで拒絶査定がなされ、同年9月16日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年10月18日付けで手続補正書が提出されたものである。 第2 平成16年10月18日付け手続補正についての補正の却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成16年10月18日付けの手続補正を却下する。 〔決定の理由〕 1 補正の内容 平成16年10月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成16年2月2日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項19に記載された 「二次電池用のアノードを製作する方法であって、 電気化学システムの中にリチウムを吸着及び脱着することができるホスト材料を設置するステップと、 前記ホスト材料の中にリチウム金属を分散するステップと、 前記ホスト材料とその中に分散された前記リチウム金属とをアノードに形成するステップと、 を含むことを特徴とする方法。」を 「二次電池用のアノードを製作する方法であって、 電気化学システムの中にリチウムを吸着及び脱着することができるホスト材料を設置するステップと、 前記ホスト材料の中にリチウム金属を分散するステップと、 前記ホスト材料とその中に分散された前記リチウム金属とをアノードに形成するステップとを含み、前記アノード内のリチウム金属の量は、前記アノードが再充電される場合、前記アノード内の前記ホスト材料の中に入り込む、前記ホスト材料と合金を作る、又は前記ホスト材料に吸着されるに十分な最大の量以下であることを特徴とする方法。」とする補正を含むものである(下線部は補正部分である。)。 2 補正の適否の判断 上記補正により、請求項19は、「アノード内のリチウム金属の量」を上記1のとおり特定の範囲に限定するものとなるが、請求項19に係る発明は、方法に係る発明であって、上記補正前の請求項19に係る発明及び請求項19を引用する請求項20?30に係る発明(方法の発明)はいずれも「アノード内のリチウム金属の量」を発明の特定事項として含むものではないから、上記補正は、特許法第17条の2第4項2号に掲げる事項、いわゆる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものとはいえないし、さらに、同項の他の各号に掲げる事項(請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明)のいずれを目的とするものともいえない。 3 まとめ したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項1号乃至4号の規定に違反するから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成16年10月18日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたから、本願発明は、平成16年2月2日付けの手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?30に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、以下のとおりである。 「二次電池用に製作されたアノードであって、電気化学システム内でリチウムを吸着及び脱着することができるホスト材料と、前記ホスト材料の中に既に分散されているリチウム金属と、を含むことを特徴とするアノード。」 2 原査定の理由の概要 原査定の理由の概要は、請求項1?30に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の(1)?(9)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない(理由A)、又は下記の(1)?(9)に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(理由B)、というものである。なお、下記の各刊行物はいずれも、本願優先日前においても日本国内において頒布されたということができることは明らかである。 記 (1)特開平5-234621号公報 (2)特開平4-39859号公報(以下、「刊行物2」という。) (3)特開平11-25975号公報 (4)特開平4-126374号公報 (5)特開2000-164210号公報 (6)特開平10-223259号公報 (7)特開2000-067853号公報 (8)特開平10-270086号公報 (9)特開昭63-013282号公報 3 刊行物2の主な記載事項 刊行物2には以下の事項が記載されている。 (a)「負極電極に関して鋭意研究を重ねた結果、炭素質物と繊維状の有機高分子のバインダーとの混合物からなる担持体に、アルカリ金属、好ましくはリチウムを活物質として担持させてなる電極の構成とする」(2頁右上欄6?10行) (b)「本発明の二次電池電極は、上記の構成をとる負極電極に特徴があり、他の要素は従来の二次電池電極と同じように構成することができる。 本発明にかかる負極電極において、活物質はアルカリ金属、好ましくはリチウムである。この活物質は、電池の充放電に伴って、例えばリチウムの場合、Liイオンと金属リチウムを反復する。」(2頁左下欄4?11行) (c)「担持体に活物質を担持させる方法としては、・・・物理的方法などがあり、例えば、・・・担持体の成形体を得る過程でアルカリ金属の粉末、好ましくはリチウムまたはリチウム合金の粉末を混合する方法等を適用することができる。」(5頁左下欄15行?同頁右下欄3行) (d)「このようにしてあらかじめ負極担持体に担持させたアルカリ金属、好ましくはリチウムの量は、担持体1重量部あたり:好ましくは0.030重量部以上0.250重量部以下、・・・最も好ましくは0.080重量部以上0.100重量部以下である。」(5頁右下欄9?18行) (e)「このようにして構成された二次電池では、負極電極においては充電時に担持体に活物質イオンが担持され、放電時には担持体中の活物質イオンが放出されることによって充放電の電極反応が進行する。」(6頁左下欄4?8行) 4 当審の判断 4-1 刊行物2に記載された発明 刊行物2には、「負極電極に関して、炭素質物と繊維状の有機高分子のバインダーとの混合物からなる担持体に、アルカリ金属、好ましくはリチウムを活物質として担持させてなる電極」(a)が記載され、その電極は「二次電池」(b)用のものであること、その電極の活物質は「電池の充放電に伴って・・・Liイオンと金属リチウムを反復する」(b)こと、さらに「担持体に活物質を担持させる方法として・・・担持体の成形体を得る過程で・・・リチウムまたはリチウム合金の粉末を混合する方法を適用することができる」(c)ことが記載されているから、これら記載を本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物2には、「二次電池用に製作された炭素質物を含む負極電極であって、電池の充放電に伴ってLiイオンと金属リチウムを反復するリチウムを活物質として担持することができる担持体と、前記担持体に混合されているリチウム金属と、を含む負極電極」という発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されているといえる。 4-2 対比・判断 本願発明1と刊行物2発明とを対比する。 刊行物2には、「このようにして構成された二次電池では、負極電極においては充電時に担持体に活物質イオンが担持され、放電時には担持体中の活物質イオンが放出されることによって充放電の電極反応が進行する」(e)ことが記載されているように、刊行物2発明の「負極電極」が本願発明1の「アノード」に相当することは、当業者にとって明らかである。 また、負極電極を構成する「炭素質物」がリチウムを担持することは技術常識である(必要があれば下記「刊行物A」を参照)から、刊行物2発明の「炭素質物」は、本願発明1の「ホスト材料」に相当するといえる。 そして、刊行物2発明の「負極電極」は、「担持体の成形体を得る過程で・・・リチウム・・・の粉末を混合する方法を適用することができる」(c)ものであり、その混合割合は、「負極担持体に担持させた・・・リチウムの量は、担持体1重量部あたり・・・最も好ましくは0.080重量部以上0.100重量部以下」(d)であって、担持体に対してリチウムの量は少量(8?10重量部%)が最も好ましいことが記載されていることからして、担持体の成形体を得る過程で「リチウム金属の粉末」を混合することによって、担持体に用いる「炭素質物」の中に少量の「リチウム金属」が分散された状態になるといえる。 そうしてみると、両者は、「二次電池用に製作されたアノードであって、電気化学システム内でリチウムを吸着及び脱着することができるホスト材料と、前記ホスト材料の中に既に分散されているリチウム金属と、を含むアノード」で一致し、相違する点はないといえる。 したがって、本願発明1は、刊行物2に記載された発明であるといえる。 刊行物A:「リチウムイオン二次電池の話」(西美緒著、発行所株式会社裳華房、1997年5月20日第1版)の25?57頁 5 補足 平成16年10月18日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に対して 仮に平成16年10月18日付けの手続補正による明細書の補正を認めたとしても、補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)は、以下に示すとおり進歩性を有しないから、独立特許要件を満たさない。 すなわち、補正発明(前者)と刊行物2発明(後者)とを対比すると、「アノード内のリチウム金属の量」が、前者は、「アノードが再充電される場合、アノード内のホスト材料の中に入り込む、ホスト材料と合金を作る、又はホスト材料に吸着されるに十分な最大の量以下である」のに対し、後者は、そのような限定がない点(相違点A)で相違し、その余の点は上記4-2に示したように一致していると認められる。 そこで、上記相違点Aについて検討する。 本願優先日前において日本国内において頒布された上記「刊行物A」に記載されているように、「リチウムイオン電池の負極に炭素質材料を用い、その炭素質材料が黒鉛である場合のリチウムの黒鉛層間へのドープ量は、LiC_(6)の化学量論組成を上限にそれを越える分は層間に収容しきれずに金属リチウムとして析出し金属リチウム電池と同様の問題が現れるので好ましくない」ことは、リチウムイオン二次電池の分野において周知の技術事項であるといえる。 また、刊行物2には、「負極相持体に担持させた・・・リチウムの量は、担持体1重量部あたり・・・最も好ましくは0.080重量部以上0.100重量部以下」(d)ことが記載されており、この最も好ましいリチウムの量は、炭素質材料が黒鉛である場合のリチウムがインターカレートする量(LiC_(6)の化学量論組成)にほぼ相当する量であるといえるから、刊行物2発明において、炭素質材料に混合するリチウムの量は、リチウムが炭素質材料の層間等にドープされ得る上限の値であって金属リチウムとして析出しない程度とすること、すなわち上記相違点Aの構成とすることは、当業者であれば容易に想到をすることができたといえる。 6 むすび したがって、本願発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その余の発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-09-21 |
結審通知日 | 2006-09-22 |
審決日 | 2006-10-03 |
出願番号 | 特願2001-391121(P2001-391121) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(H01M)
P 1 8・ 571- Z (H01M) P 1 8・ 574- Z (H01M) P 1 8・ 572- Z (H01M) P 1 8・ 573- Z (H01M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 植前 充司 |
特許庁審判長 |
吉水 純子 |
特許庁審判官 |
高木 康晴 平塚 義三 |
発明の名称 | リチウム金属分散系である二次電池用アノード |
代理人 | 松島 鉄男 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 有原 幸一 |