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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1183496
審判番号 不服2004-16575  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-09 
確定日 2008-08-22 
事件の表示 平成 7年特許願第508244号「ミシン目のある不織外科用テープのロール」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 3月 9日国際公開、WO95/06450、平成 9年 3月 4日国内公表、特表平 9-502111〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成6年8月31日(パリ条約による優先権主張 1993年8月31日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成16年4月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年8月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成16年9月8日に手続補正がなされたものである。

2 平成16年9月8日にした手続補正(以下、「本件手続補正」という。)についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
本件手続補正を却下する。

〔理由〕
(1)補正後の本願発明
本件手続補正により、明細書の特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 主要表面上に感圧接着剤をコートされているタテ軸とヨコ軸をもつバインダー含有不織ウェブであってそのヨコ軸に沿っての裂けに実質的に抵抗性があり、かつ、ライナーのないものを含む接着剤テープのロールであって;当該接着剤がコートされたウェブは、テープの0.1?1mmの連結セグメントにより分離された一連の0.2?5mmのミシン目及び1:1?10:1のミシン目長さ対連結セグメント長さの比により定められる、多数のタテ方向に間隔をあけて配置され、ヨコ方向に延びる、ミシン目のある分離線を有し、当該ミシン目の形状は、線状、斜め、Y-形、V-形、2本斜めオフセット又はシヌソイドであり、ここで当該ミシンのあるテープは、1センチメーター幅当り少なくとも400グラム且つ1センチメーターの幅当り3000グラム以下の引っ張り強度を有する、前記接着剤テープのロール。」と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明の構成に欠くことができない事項である「バインダー含有不織ウェブ」について「ライナーのないもの」との限定事項を付加し、同じく発明の構成に欠くことができない事項である「ミシン目」について「当該ミシン目の形状は、線状、斜め、Y-形、V-形、2本斜めオフセット又はシヌソイドであり」との限定事項を付加し、同じく発明の構成に欠くことができない事項である「接着剤テープ」を「接着剤テープのロール」と限定するものである。これらの限定した事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されており、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではなく、上記補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第3項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
さらに、上記補正は、補正前の請求項1に記載された「その接着剤コートされたウェブが」を「当該接着剤がコートされたウェブは」に、「もち」を「有し」に、「そのミシンのあるテープが」を「ここで当該ミシンのあるテープは」に、「もつ」を「有する」にそれぞれ補正するものであって、平成6年改正前特許法第17条の2第3項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項1に記載された事項により構成される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日(以下、「優先日」という。)前に頒布された刊行物である実願平1-39902号(実開平2-131432号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、次の記載がある。

a「(1)一方の面に感圧性接着剤を塗工された不織布製の基布からなり、かつ前記感圧性接着剤の塗工面に通気部を有するロール状の包帯材において、前記基布を貫設する切込部と非切込部とを交互に有する基布幅方向にわたるカット線を、基布の長手方向に対して所定間隔で形成したことを特徴とするカット包帯材。
(2)前記切込部の基布幅方向の寸法を少なくとも前記非切込部の基布幅方向寸法よりも大きくした前記請求項1記載のカット包帯材。
……」(実用新案登録請求の範囲)

b「本考案は包帯材に係り、特に施用の際の巻端部の切断処理が極めて容易なカット包帯材に関する。」(明細書2頁5ないし6行)

c「(作用) 本考案のカット包帯においてはロール体から巻出された包帯が所要の長さのところで基布の巾方向にわたって形成されたカット線に沿って切断される。カット線は基布を貫設する切込部と非切込部とを交互に隣接させて形成されており、通常の巻回等によっては基布がこのカット線に沿って裂けることはないが、外側縁から幅方向に意図的な切断力を作用させると容易に裂断される。このカット線に沿う裂断を容易なものとするためには、切込部の幅方向の長さを少なくとも非切込部のそれよりも大きく、たとえば約2倍程度の長さとすることが好ましい。また、切込線は基布の長手方向間隔に沿って設けられ、任意の長さだけロールから巻出した後に所定の箇所のカット線のところで切断される。」(同4頁3ないし18行)

d「第1図は本考案に係る実施例のカット包帯を一部巻出した状態で示す説明図である。」(同5頁13ないし14行)

e「基布1にはその幅方向に沿って基布1を貫設する長さ約2mmの切込部4Aと長さ約1mmの非切込部4Bとを交互に隣接されてなるカット線4、4…が、包帯基布1の長手方向に対して約5cmの間隔で形成されている。」(同6頁2ないし6行)

f「本考案の実施例に用いた二液型の感圧性接着剤の接着力(…)は塗布直後から次第に減少して3週間経時後には約200/12mm程度の接着力となり、その後はほとんど変化しない。この状態で……積層体のロールCを巻出しながら基布1及び剥離紙5に対して前記カット線4の切込み部4Aおよび非切込部4Bを基布1および剥離紙5を貫通するシン目加工によって施す。次いで……不織布の基布1を剥離紙5側から剥す。すると……接着剤は容易に剥離紙5から離れて基布1側に転写され、これによって不織布の基布1の裏面に前記第1図に示すような……塗布層2が得られる。……尚基布1および剥離紙5は前記カット線の形成後、剥離紙5を剥離せずに再びロール状に巻直していわゆるセパ付き包帯としてもよい。」(同7頁6行ないし8頁10行)

g「患部への巻き付けが終わったところで、基布1の終端部において対応する位置のカット線4の側縁部(図中Xの部分)から幅方向に力を加えると、基布1はこのカット線4に沿って容易に裂断される。不織布は通常の織布生地に比較すれば裂け易い生地ではあるが、そのまゝ指先等で裂断すると不規則な破れや伸びを生じやすい。本実施例では、このようなカット線4を設けることによって基布1がより確実かつ容易に切断され、またカット線4によって方向性が与えられるので切口が不規則になることがない。特に本実施例ではカット線4の切込部4Aと非切込部4Bとの幅方向寸法の比を約2:1としてあるので、通常の巻回動作ではこの非切込部4Bによって基布の裂断が防止されると共に、切断時には幅方向への意図的な力を加えることにより容易に切断される。」(同9頁3ないし20行)

そして、上記記載fの「不織布の基布1を剥離紙5側から剥す。すると……接着剤は容易に剥離紙5から離れて基布1側に転写され、これによって不織布の基布1の裏面に前記第1図に示すような……塗布層2が得られる。……尚基布1および剥離紙5は前記カット線の形成後、剥離紙5を剥離せずに再びロール状に巻直していわゆるセパ付き包帯としてもよい。」との記載は、通常、不織布の基布1は剥離紙5が剥離されて再びロール状に巻直されるものであることを意味していることは明らかである。
以上の記載及び第1図によれば、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。
「一方の面に感圧性接着剤を塗工された不織布製の基布であって、剥離紙のないものを含むカット包帯材のロールであって、接着剤が塗工された基布は、包帯材の長さ約1mmの非切込部により分離された一連の長さ約2mmの切込部及び約2:1の切込部長さ対非切込部長さの比により定められる、多数のタテ方向に間隔をあけて配置され、ヨコ方向に延びる、切込部のあるカット線を有し、当該切込部の形状は線状である、カット包帯材のロール。」

(3)対比
本願補正発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「一方の面」、「感圧性接着剤」、「塗工」、「不織布製の基布」、「剥離紙」、「カット包帯材」、「非切込部」、「切込部」及び「カット線」は、本願補正発明の「主要表面」、「感圧接着剤」、「コート」、「不織ウェブ」、「ライナー」、「接着剤テープ」、「連結セグメント」、「ミシン目」及び「分離線」に相当する。
そして、引用例記載の発明の「不織布製の基布」は、上記記載cの「通常の巻回等によっては基布がこのカット線に沿って裂けることはないが、外側縁から幅方向に意図的な切断力を作用させると容易に裂断される」との記載によると、そのヨコ軸に沿っての裂けに実質的に抵抗性があるということができる。
そうすると、両者は、
「主要表面上に感圧接着剤をコートされているタテ軸とヨコ軸をもつ不織ウェブであってそのヨコ軸に沿っての裂けに実質的に抵抗性があり、かつ、ライナーのないものを含む接着剤テープのロールであって;当該接着剤がコートされたウェブは、テープの1mmの連結セグメントにより分離された一連の2mmのミシン目及び2:1のミシン目長さ対連結セグメント長さの比により定められる、多数のタテ方向に間隔をあけて配置され、ヨコ方向に延びる、ミシン目のある分離線を有し、当該ミシン目の形状は、線状である、前記接着剤テープのロール」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1
本願補正発明では、不織ウェブが、バインダー含有不織ウェブであるのに対して、引用例記載の発明では、不織ウェブが、バインダーを含有するのか不明である点。

相違点2
本願補正発明では、ミシン(当審注:ミシン目の誤記)のあるテープは、1センチメーター幅当り少なくとも400グラム且つ1センチメーターの幅当り3000グラム以下の引っ張り強度を有するのに対して、本願補正発明では、ミシン目のあるテープの引っ張り強度が不明である点。

(4)相違点の検討
そこで、上記各相違点について検討する。
《相違点1について》
一般に、不織布は、フリース形成と繊維間結合の2工程により製造され、フリースが形成された後、繊維間結合工程において繊維同士が結合される。この繊維同士の結合方法として、フリースにエマルジョン系の接着樹脂を含浸あるいはスプレー等で付着させ繊維の交点を接着する方法は、ケミカルボンド法として知られ、代表的なものである。
引用例には、不織ウェブについて、どのような方法で繊維間結合が行われたのか記載がなく不明であるが、引用例記載の発明において、不織ウェブの繊維間結合工程における繊維同士の結合方法として、ケミカルボンド法を採用して、本願補正発明のようにバインダー含有不織ウェブとすることは、当業者が必要に応じ適宜なし得たことである。

《相違点2について》
本願補正発明の「引っ張り強度」に関して、本願明細書12頁8ないし12行に、「本明細書中に述べるプロトコールに従って計測されたタテ方向(11)(図2)におけるテープ(10)のミシン目セクションの引っ張り強度は、望ましくは、約400?約3000グラム/cm幅……である。」との記載がある。この記載によると、本願補正発明の引っ張り強度は、タテ方向(11)(図2)における接着剤テープ(10)のミシン目セクションの引っ張り強度を意味しているものと解される。
ところで、不織布の片面に感圧接着剤をコートした接着剤テープの引っ張り強度は0.4kg/cmないし1.0kg/cm程度であることは、本願の優先日前に周知の技術的事項(例えば、特開昭61-22855号公報参照。)であり、接着剤テープにヨコ方向に分離線を設けた場合には、引っ張り強度がそれよりも減少することは自明のことである。
一方、ヨコ方向に分離線を設けたロール状の接着テープが、テープ繰り出し等の使用時に不用意に分離線のところで分離しない程度の、また過大な力を要することなく分離できる程度の引っ張り強度を有するようにすることは、当業者であれば当然に考慮する事項であるといえる。
そして、本願補正発明におけるテープの引っ張り強度の数値は、上記周知の事項から想定される程度のものであり、そのような数値にしたことによる格別の技術的な意義も認められない。
そうしてみると、引用例記載の発明における接着テープの引っ張り強度の数値を、本願補正発明のような数値とすることは、接着テープの使用時の利便性を考慮して当業者が容易に想到し得たことといえる。
したがって、本願補正発明は、引用例記載の発明及び周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下されるべきものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、本件手続補正は却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成13年6月20日にした手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1は、次のとおり記載されている。
「【請求項1】 主要表面上に感圧接着剤をコートされているタテ軸とヨコ軸をもつバインダー含有不織ウェブであってそのヨコ軸に沿っての裂けに実質的に抵抗性があるものを含んで成る接着剤テープのロールであって;その接着剤コートされたウェブが、テープの0.1?1mmの連結セグメントにより分離された一連の0.2?5mmのミシン目及び1:1?10:1のミシン目長さ対連結セグメント長さの比により定められる、多数のタテ方向に間隔をあけて配置され、ヨコ方向に延びる、ミシン目のある分離線をもち、そのミシンのあるテープが1センチメーター幅当り少なくとも400グラム且つ1センチメーターの幅当り3000グラム以下の引っ張り強度をもつ、前記接着剤テープ。」
(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明1」という。)

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及び記載事項は、上記2(2)に記載したとおりであり、引用例には、上記2(2)に記載したとおりの発明が記載されているものと認められる。

(3)対比・判断
本願発明1は、上記2(1)で検討した本願補正発明から、「バインダー含有不織ウェブ」についての「ライナーのないもの」との限定事項、「ミシン目」についての「当該ミシン目の形状は、線状、斜め、Y-形、V-形、2本斜めオフセット又はシヌソイドであり」との限定事項、及び「接着剤テープ」についての「ロール」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明1の構成に欠くことができない事項を全て含み、さらに他の構成に欠くことができない事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2(4)に記載したとおり、引用例記載の発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用例記載の発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-26 
結審通知日 2007-02-27 
審決日 2007-03-13 
出願番号 特願平7-508244
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 二ッ谷 裕子  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 中西 一友
関口 勇
発明の名称 ミシン目のある不織外科用テープのロール  
代理人 樋口 外治  
代理人 中村 和広  
代理人 鶴田 準一  
代理人 西山 雅也  
代理人 石田 敬  

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