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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1183606 |
審判番号 | 不服2007-32057 |
総通号数 | 106 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-11-28 |
確定日 | 2008-08-28 |
事件の表示 | 特願2002- 35056「着色組成物およびそれを用いたカラーフィルター」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月22日出願公開、特開2003-232914〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本願発明の認定 本願は平成14年2月13日の出願であって、平成19年7月19日付けで拒絶の理由が通知され、平成19年9月14日付けで意見書が提出されたが、平成19年10月24日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として平成19年11月28日付けで本件審判請求がされたものである。 したがって、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、願書に最初に添付した明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「C.I.ピグメントイエロー194およびC.I.ピグメントイエロー214からなる群から選ばれる少なくとも1種の黄色顔料、緑色顔料およびバインダー樹脂を含む着色組成物。」 第2 当審の判断 1 引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-310716号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の(ア)?(ク)の記載がある。 (ア)「【請求項1】 緑色顔料とC.I.ピグメントイエロー185を樹脂に分散させてなる緑色樹脂組成物。」 (イ)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、緑色樹脂組成物、感光性緑色樹脂組成物、緑色画像形成用感光液、着色画像の製造法及びカラーフィルターの製造法に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、液晶表示デバイス、センサー及び色分解デバイスなどにカラーフィルターが多用されている。このカラーフィルターの製造法としては、従来は、染色可能な樹脂、例えば天然のゼラチンやカゼインをパターニングし、そこに主に染料を用いて染色し、画素を得るという方法が採られていた。しかし、この方法で得た画素は、材料からの制約で耐熱性及び耐光性が低いという問題があった。そこで、最近、耐熱性及び耐光性を改良する目的で顔料を分散した感光材料を用いる方法が注目され、多くの検討が行われるようになった。この方法によれば製法も簡略化され、得られたカラーフィルターも安定で、寿命の長いものになることが知られている。 【0003】しかし、染料と比較し、顔料を用いた場合には、光の透過率が低いという問題があった。」 (ウ)「【0004】 【発明が解決しようとする課題】請求項1に記載の発明は、顔料を分散した感光材料の問題点である光透過率を向上させ、従来の技術の問題点を解消した緑色樹脂組成物を提供するものである。(以下省略)」 (エ)「【0006】 【発明の実施の形態】本発明において、顔料としては、緑色顔料に黄色顔料が併用され、黄色顔料には、C.I.ピグメントイエロー185(カラーインデックス名)が必須成分として使用される。 【0007】本発明における黄色顔料として、C.I.ピグメントイエロー185以外に、他の黄色顔料を使用することができるが、その使用量としては、黄色顔料全体に対して0?90重量%とすることが好ましく、0?50重量%とすることがより好ましい。C.I.ピグメントイエロー185以外の黄色顔料の使用量が多くなりすぎると光透過率が低下する傾向がある。他の黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー20、24、83、93、109、110、117、125、139、147、154など一般によく知られたものがを使用することができる。」 (オ)「【0010】本発明に用いる緑色樹脂組成物に用いられる樹脂としては、着色画像形成材料としたときに、顔料分散性を有するものであれば特に制限はなく、さらに成膜性を有するものが好ましく、さらに、感光性を妨げず、現像性を有するものが好ましい。」 (カ)「【0049】実施例2 (1)緑色着色樹脂組成物の製造 樹脂として共重合体A30g、顔料としてC.I.ピグメントグリーン9を14g、C.I.ピグメントイエロー185を8g及びC.I.ピグメントイエロー139を5g並びにジエチレングリコールジメチルエーテル200gをビーズミルを用いて2時間分散処理して緑色着色樹脂組成物を得た。この緑色樹脂組成物、モノマーとしてペンタエリスリトールテトラクリレート32g、光開始剤としてベンゾフェノン6g及びN,N′-テトラエチル-4,4′-ジアミノベンゾフェノン2g並びに有機溶剤であるジエチレングリコールジメチルエーテル200gを加えて混合し、緑色の着色画像形成用感光液を得た。 【0050】(2)着色画像の製造 この感光液を、ガラス基板(コーニング社製、商品名7059)上にスピンコート法により塗布し、更に110℃で5分間乾燥を行い、膜厚2.0μmの膜を形成した。得られた膜に、ネガマスクを通して超高圧水銀灯により画像状に100mJ/cm2の露光を行い、次いで、水酸化カリウムを0.3重量%含む水溶液により現像を行った。得られた緑色画素の反射率及び色度を表1に示す。」 (キ)段落【0058】の【表1】から、実施例2のY値が60.5であることが読み取れる。 (ク)「【0059】反射率及び色度はカラーテクノシステム(株)製分光色彩計JP7200Fを用いて測定した。測定値のY、x及びyは、CIE標準表色系となっているXYZ(Yxy)表色系に基づくY値、x値及びy値であり、Y値は反射率で、x及びyは色度である。 【0060】表1から、黄色顔料にC.I.ピグメントイエロー185を用いることにより色度のYの値が大きくいろ純度が良いことか分かる(実施例1?3)。これに対してC.I.ピグメントイエロー185を用いない場合(比較例1、2)では色度のYの値が低く光透過率も良くないことが認められる。また、図1は、緑色画素の透過曲線を示し、曲線1は、実施例1の緑色画素の透過曲線、曲線2は比較例1の緑色画素の透過曲線を示す。図1から明らかなように、実施例1は比較例1に比較して光透過性が優れる。このように従来になく光透過率の高い緑色感光液及び感光性エレメントを用いて作製したカラーフィルター(実施例4)が、光学特性に優れ、画像表示素子として有効であることを確認した。 【0061】 【発明の効果】請求項1における緑色樹脂組成物は、請求項2又は3記載における感光性緑色樹脂組成物、請求項4における緑色画像形成用感光液に基づく緑色画像は光透過率に優れる。請求項5又は6における着色画像の製造法によれば、光透過率が優れる緑色画像を得ることができる。請求項7における製造法により、光透過率が優れる緑色画素を有するカラーフィルタが製造できる。」 2 引用例1記載の発明の認定 引用例1の上記記載事項(ア)乃至(ク)から、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。 「緑色顔料と、C.I.ピグメントイエロー185と、C.I.ピグメントイエロー20、24、83、93、109、110、117、125、139、147、154など一般によく知られた他の黄色顔料と、を顔料分散性を有する樹脂に分散させてなるカラーフィルターの緑色画素用の緑色樹脂組成物。」(以下、「引用発明1」という。) 3 本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定 (ア)引用発明1の「C.I.ピグメントイエロー185と、C.I.ピグメントイエロー20、24、83、93、109、110、117、125、139、147、154など一般によく知られた他の黄色顔料」、「顔料分散性を有する樹脂」、「カラーフィルターの緑色画素用の緑色樹脂組成物」は、それぞれ、本願発明の「少なくとも1種の黄色顔料」、「バインダー樹脂」、「着色組成物」に相当する。 (イ)したがって、本願発明と引用発明1とは、 「少なくとも1種の黄色顔料、緑色顔料およびバインダー樹脂を含む着色組成物。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 〈相違点〉 本願発明の「少なくとも1種の黄色顔料」は「C.I.ピグメントイエロー194およびC.I.ピグメントイエロー214からなる群から選ばれる」ものであるのに対し、引用発明の「黄色顔料」は、「C.I.ピグメントイエロー185と、C.I.ピグメントイエロー20、24、83、93、109、110、117、125、139、147、154など一般によく知られた他の黄色顔料」である点。 4 相違点についての判断 カラーフィルターに用いられる黄色顔料として、C.I.ピグメントイエロー194は、本願出願時において当業者に周知の顔料である(国際公開第01/04215号パンフレット(第1頁第8?12行、第8頁第10行?第9頁第5行、第17頁第23?27行)、特開平10-319229号公報(段落【0003】、【0029】)を参照。)。 すると、引用発明1の「C.I.ピグメントイエロー20、24、83、93、109、110、117、125、139、147、154など一般によく知られた他の黄色顔料」として上記周知のC.I.ピグメントイエロー194を採用することは、当業者にとって容易に想到し得る。 したがって、前記相違点に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。 また、前記相違点に係る本願発明の発明特定事項を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 5 むすび したがって、本願発明は引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そして、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-06-25 |
結審通知日 | 2008-07-01 |
審決日 | 2008-07-14 |
出願番号 | 特願2002-35056(P2002-35056) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 濱野 隆 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
江塚 政弘 日夏 貴史 |
発明の名称 | 着色組成物およびそれを用いたカラーフィルター |
代理人 | 中山 亨 |