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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1183923
審判番号 不服2006-253  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-05 
確定日 2008-09-04 
事件の表示 特願2000-133382「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月13日出願公開、特開2001-314550〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成12年5月2日の出願であって、平成17年11月30日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として平成18年1月5日付けで本件審判請求がされるとともに、同年2月2日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成18年2月2日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正事項及び補正目的
本件補正は特許請求の範囲の補正を含んでおり、請求項1において、「可変表示手段」を「複数の可変表示手段」と補正(3箇所)するとともに、「前記表示内容選択手段による遊技者の選択に基づいて前記別表示手段に表示される内容は、スタート操作により発生した信号を検出した場合に表示される予兆表示、前記停止ボタンの操作により発生した信号を検出した場合に表示される可変表示手段回転中表示、前記複数の可変表示手段の全てが停止したことにより発生した信号を検出した場合に表示される全停止後表示を含む」との事項を追加するものである。
前者の補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。
後者の補正については、補正後請求項1に係る発明は、「スタート操作により発生した信号」、「停止ボタンの操作により発生した信号」及び「複数の可変表示手段の全てが停止したことにより発生した信号」を検出すること並びにこれら信号の検出に基づき各種表示を行うこととなるが、それらは「別表示手段」の表示制御を司る手段(表示制御手段)の限定である。ところが、補正前請求項1には表示制御手段が発明特定事項として記載されていない。
そのため、本件補正が特許請求の範囲の減縮(他の補正目的に適合しないことは明らかである。)に該当するかどうか疑義がある(適合しなければ、平成18年改正前特許法17条の2第4項違反として却下される。)ものの、別表示手段を備えた遊技機が表示制御手段をも備えることは自明であり、その自明な手段を補正前において省略したものと理解し、特許請求の範囲の減縮に該当するものと認める。
以上の理由により、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)については、特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか検討する。

2.補正発明の認定
補正発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「スタート操作により信号を発生する手段と、
前記スタート操作に応じて複数の図柄を可変表示する複数の可変表示手段と、
前記可変表示を停止するための停止ボタンの操作により信号を発生する手段と、
前記複数の可変表示手段の可変表示開始から停止までのゲーム毎に所定の時点で決定される内部当選役に基づいて、可変表示を停止制御する停止制御手段と、
前記複数の可変表示手段とは別の表示を行う別表示手段とを備えた遊技機において、
前記スタート操作により発生した信号及び前記停止ボタンの操作により発生した信号の少なくともいずれか1つを検出した場合に前記別表示手段に表示される内容は、遊技者の選択により変更可能に構成され、その選択するための表示内容選択手段を設け、
前記表示内容選択手段による遊技者の選択に基づいて前記別表示手段に表示される内容は、スタート操作により発生した信号を検出した場合に表示される予兆表示、前記停止ボタンの操作により発生した信号を検出した場合に表示される可変表示手段回転中表示、前記複数の可変表示手段の全てが停止したことにより発生した信号を検出した場合に表示される全停止後表示を含むことを特徴とする遊技機。」

3.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-51436号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?セの記載が図示とともにある。
ア.「本発明は、スロットマシンに関し、詳しくは、表示状態が変化可能な可変表示装置を有し、該可変表示装置の表示結果が導出表示されることにより1ゲームが終了し、該可変表示装置の表示結果が所定の表示態様となった場合に所定の入賞が発生するスロットマシンに関する。」(段落【0001】)
イ.「スロットマシン1の前面側の所定箇所には表示窓71が設けられている。この表示窓71の内側には、可変表示装置70(図2参照)によって可変表示される図柄等の識別情報を遊技者に視認させるための左可変表示部5L、中可変表示部5C、右可変表示部5Rが設けられている。」(段落【0016】)
ウ.「可変表示部5L、5C、5Rの周囲には、各種表示ランプや表示器が設けられている。たとえば、画像表示部177aは,遊技状態や遊技者のコイン獲得状況等について所定のキャラクタを交える等して表示し、遊技の利便性を高めるとともに遊技の演出効果を高めることの可能な表示部であり」(段落【0017】)
エ.「スタートランプ72が点灯した状態でスタートレバー12を操作すれば、可変表示装置70が可変開始されて各可変表示部5L、5C、5Rにおいて複数種類の図柄が可変表示される。可変表示の開始から所定時間が経過すれば、各操作有効ランプ11L、11C、11Rと操作有効ランプ14の表示色が所定の操作無効色から操作有効色に変化する。これにより、左停止ボタン9L、中停止ボタン9C、右停止ボタン9Rの押圧操作が有効な状態になったことが遊技者に報知される。そして、遊技者が各停止ボタン9L、9C、9Rのうち、いずれかを押圧操作すれば、対応する停止ボタンの操作有効ランプ11L、11C、11Rの表示色が所定の操作有効色から操作無効色に変化するとともに、やがて、対応する可変表示部の可変表示が停止される。」(段落【0020】)
オ.「左可変表示部5L、中可変表示部5Cの可変表示が終了した段階で両可変表示部で形成される有効ライン上に同一の役図柄が揃って停止表示されている場合には、リーチが成立する。リーチが成立した場合には、画像表示部177aによる画像やスピーカ28による報知音などによってその旨が報知される。」(段落【0032】)
カ.「ランダムRカウンタは、ビッグボーナス、レギュラーボーナス、リプレイゲーム、および小役などすべての入賞を発生させるか否かを決定するために使用されるランダムカウンタである。このランダムRカウンタは、「0?16383」の範囲で各値を繰返し更新し、乱数を発生する。」(段落【0076】)
キ.「図9および図10は、“通常ゲーム”において、各種小役入賞あるいはリプレイゲームが発生する確率を示した図である。」(段落【0091】)
ク.「SB8の後、SB9に進み、ビッグボーナス当選フラグあるいはボーナス当選フラグが既に設定されているか否かの判断が行なわれ、設定されていない場合にはSB15に進み、読出されたランダムRと一致するビッグボーナス当選判定値があるか否かが判断される。ランダムRと一致するビッグボーナス当選判定値がある場合にはSB21に進み、ビッグボーナス当選フラグが設定される。次に、SB21aに進み、ビッグボーナスゲーム当選フラグが設定されたことが画像表示部177aにより報知される(図29(b)参照)。その後、SB20に進む。一方、SB15でNOと判断された場合にはSB16に進み、読出されたランダムRと一致するボーナス当選判定値があるか否かが判断される。ランダムRと一致するボーナス当選判定値がある場合にはSB22に進み、ボーナス当選フラグが設定された後にSB20に進む。SB16でNOと判断された場合にはSB17に進み、読出されたランダムRと一致する小役当選判定値があるか否かが判断される。ランダムRと一致する小役当選判定値がある場合にはSB23に進み、小役当選フラグが設定された後にSB20に進む。SB17でNOと判断された場合にはSB18に進み、読出されたランダムRと一致するリプレイ当選判定値があるか否かが判断される。ランダムRと一致するリプレイ当選判定値がある場合にはSB19に進み、リプレイ当選フラグが設定された後にSB20に進む。一方、ランダムRと一致するリプレイ当選判定値がない場合には、SB18によりNOの判断がなされてSB20に進む。」(段落【0126】)
ケ.「各当選フラグが設定されると、リール引込み制御が行なわれることによって目押しに不慣れな遊技者でも比較的容易に各当選フラグに応じた可変表示結果を導出させることが可能になる。」(段落【0127】)
コ.「ビッグボーナス当選フラグまたはボーナス当選フラグが設定されている場合には、30%の確率で各リールが同時に始動し、50%の確率で左リール6L、中リール6C、右リール6Rの順で始動し、20%の確率で右リール6R、中リール6C、左リール6Lの順で始動する。一方、ビッグボーナス当選フラグおよびボーナス当選フラグが共に設定されていない場合には、93%の確率で各リールが同時に始動し、2%の確率で左リール6L、中リール6C、右リール6Rの順で始動し、5%の確率で右リール6R、中リール6C、左リール6Lの順で始動する。」(段落【0132】)
サ.「ゲームが開始された際に左リール6L、中リール6C、右リール6Rの順で始動した場合には、ビッグボーナス当選フラグまたはボーナス当選フラグが設定されている可能性が高い。これにより、ビッグボーナス当選フラグまたはボーナス当選フラグが設定されている可能性の高いことを遊技者に報知できる。」(段落【0133】)
シ.「遊技者が左停止ボタン9Lを押圧操作すればSB38によりYESの判断がなされてSB39に進み、左リール停止フラグが設定される。次に遊技者が中停止ボタン9Cを押圧操作すればSB40によりYESの判断がなされてSB41に進み、中リール停止フラグが設定される。遊技者が右停止ボタン9Rを押圧操作すればSB42によりYESの判断がなされてSB43に進み、右リール停止フラグが設定される。」(段落【0138】)
ス.「図29は、CRT表示器177の画像表示部177aに表示される画像例を示す図である。図29(a)?図29(d)に示すように、画像表示部177aには刻々と変化する遊技状況を明確に遊技者自身に報知可能であるとともに他の遊技者へのアピール度合いの高い演出効果満点の様々な画像が表示される。」(段落【0189】)
セ.「スロットマシン内部の制御によってビッグボーナス当選フラグが設定された場合には、その設定のタイミングで、図29(b)に示すように「ビッグボーナス」の文字と所定のキャラクタとが表示される。」(段落【0191】)

4.引用例1記載の発明の認定
引用例1の記載カには「ビッグボーナス、レギュラーボーナス」と、記載ク等には「ビッグボーナス当選フラグあるいはボーナス当選フラグ」とあり、用語が統一されていない。後者の「ボーナス」は「ビッグボーナス」と対比されているので、前者の「レギュラーボーナス」と同義と解する。以下では、ビッグボーナスをBBとレギュラーボーナスをRBと略記する。
記載ア?セを含む引用例1の全記載及び図示によれば、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「左可変表示部、中可変表示部、右可変表示部、スタートレバー、左停止ボタン、中停止ボタン、右停止ボタン及び画像表示部を備え、スタートレバーの操作により各可変表示部の可変表示が開始し、各停止ボタンの押圧操作により対応する可変表示部の可変表示が停止し、該可変表示装置の表示結果が所定の表示態様となった場合に所定の入賞が発生するスロットマシンであって、
ランダムRカウンタが発生する乱数を抽出し、該乱数に基づきBB、RB、リプレイゲーム又は小役に当選したかどうかを決定し、各当選フラグが設定されるとリール引込み制御が行なわれ、
各可変表示部は、BB又はRBの当選フラグが設定されている場合には、30%の確率で各可変表示部が同時に可変開始し、50%の確率で左可変表示部、中可変表示部、右可変表示部の順で始動し、20%の確率で右可変表示部、中可変表示部、左可変表示部の順で可変開始する一方、BB又はRB当選フラグが共に設定されていない場合には、93%の確率で各可変表示部が同時に可変開始し、2%の確率で左可変表示部、中可変表示部、右可変表示部の順で可変開始始動し、5%の確率で右可変表示部、中可変表示部、左可変表示部の順で可変開始するように制御され、
画像表示部には、リーチの成立やBB当選フラグが設定されたことを表示するスロットマシン。」(以下「引用発明1」という。)

5.補正発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1の「左可変表示部、中可変表示部、右可変表示部」は補正発明の「複数の図柄を可変表示する複数の可変表示手段」に相当する。
引用発明1における「スタートレバーの操作」及び「各停止ボタンの押圧操作」は、補正発明における「スタート操作」及び「停止ボタンの操作」と異ならず、引用発明1においては、これら操作を契機として各種制御がなされるのだから、引用発明1が「スタート操作により信号を発生する手段」及び「前記可変表示を停止するための停止ボタンの操作により信号を発生する手段」を備えることは明らかである。
引用発明1が「前記複数の可変表示手段の可変表示開始から停止までのゲーム毎に所定の時点で決定される内部当選役に基づいて、可変表示を停止制御する停止制御手段」を備えるかどうか検討するに、引用発明1の「当選フラグ」が補正発明の「内部当選役」に相当することは明らかである。ところで、補正発明は上記のように特定しているところ、「可変表示開始から停止まで」を1回のゲームとして捉え、1回のゲームで1回の内部当選役決定することだけを特定し、「所定の時点」が1回のゲーム期間外であることを許容、すなわち「可変表示開始から停止まで」以外の時点であることを許容するのか、それとも「所定の時点」も「可変表示開始から停止まで」の時点でなければならないのか、請求項1の記載のみからは明らかでない。
そこで、発明の詳細な説明を参酌するに、「図6のST11に移り、確率抽選処理を行う。この確率抽選処理では、上記ST9の処理で抽出された乱数値をメインプログラムROM42に記憶されている入賞確率テーブルと照合することによりBB、RB、各種小役のいずれかの内部当選役或いはハズレを決定する。」(段落【0076】)、「続いて、「テーブル番号選択処理」を行う(ST12)。」(段落【0076】)及び「ST12の処理後、リール3L,3C,3Rの回転駆動を開始する。」(段落【0083】)との各記載があり、確率抽選処理(この時点が内部当選役を決定する「所定の時点」である。)は、可変表示開始前、すなわちゲーム期間外にされているから、補正発明は「所定の時点」がゲーム期間内であることまで限定していないと解する。そうであれば、内部当選役決定の「所定の時点」に関して、補正発明と引用発明1は一致しており、引用発明1において「各当選フラグが設定されるとリール引込み制御が行な」うことと補正発明において「内部当選役に基づいて、可変表示を停止制御する」ことにも相違がないから、結局のところ、引用発明1は補正発明の「停止制御手段」を備える。
引用発明1の「画像表示部」は「左可変表示部、中可変表示部、右可変表示部」とは別の表示部であり、これは補正発明の「別表示手段」に相当する。
そして、「スロットマシン」(引用発明1)が「遊技機」(補正発明)の1つであることはいうまでもない。
したがって、補正発明と引用発明1は、
「スタート操作により信号を発生する手段と、
前記スタート操作に応じて複数の図柄を可変表示する複数の可変表示手段と、
前記可変表示を停止するための停止ボタンの操作により信号を発生する手段と、
前記複数の可変表示手段の可変表示開始から停止までのゲーム毎に所定の時点で決定される内部当選役に基づいて、可変表示を停止制御する停止制御手段と、
前記複数の可変表示手段とは別の表示を行う別表示手段とを備えた遊技機。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉補正発明が「前記別表示手段に表示される内容は、遊技者の選択により変更可能に構成され、その選択するための表示内容選択手段」を設けたのに対し、引用発明1には「表示内容選択手段」が設けられていない点。
〈相違点2〉補正発明が、「前記スタート操作により発生した信号及び前記停止ボタンの操作により発生した信号の少なくともいずれか1つを検出した場合に前記別表示手段に表示され」かつ「前記表示内容選択手段による遊技者の選択に基づいて前記別表示手段に表示される内容は、スタート操作により発生した信号を検出した場合に表示される予兆表示、前記停止ボタンの操作により発生した信号を検出した場合に表示される可変表示手段回転中表示、前記複数の可変表示手段の全てが停止したことにより発生した信号を検出した場合に表示される全停止後表示を含む」と限定しているのに対し、引用発明1の「画像表示部」に表示されるのは、「リーチの成立やBB当選フラグが設定されたこと」である点。

6.相違点の判断及び補正発明の独立特許要件の判断
(1)相違点1について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-244045号公報(以下「引用例2」という。)には、「パチンコ機の中には、図柄変動が所定時間行われない場合(すなわち、所定時間遊技が行われない場合や、普通電動役物に遊技球が入賞しない等、所定条件が充足されない場合)には、遊技者が退屈しないように、図柄表示部において演出表示(デモンストレーション画面、たとえば、キャラクターがゴルフをする動画)が行われるものもある。」(段落【0002】)、「遊技機は、図柄表示部が3種類の演出表示を切替実行するものに限定されず、2種類の演出表示を切替実行するものや、4種類、5種類の演出表示を切替実行するものであっても良い。さらに、演出表示の内容も、キャラクターがゴルフ、野球、サッカーをする動画に限定されず、自由に設定することができる。」(段落【0034】)、「遊技機は、演出図柄切替スイッチが設けられており、遊技者等がその演出図柄切替スイッチを操作することにより演出図柄を切り替えられるものであっても良い。かかる構成を採用した場合には、遊技機は、遊技者が演出表示を随時選択することができるものとなり、より趣向性が高いものとなる。」(段落【0036】)及び「上記各実施形態においては、本発明の遊技機を第1種のパチンコ機として用いた一例について説明したが、本発明の遊技機は、第3種のパチンコ機等の別型式のパチンコ機、スロットマシーン、あるいはテレビゲーム等として用いることも可能である。」(段落【0037】)との各記載がある。
複数の図柄を可変表示し、その表示結果に応じて遊技者に利益を与えることはスロットマシンとパチンコ機に共通するものの、引用例2記載の演出表示はデモンストレーション画面であり、可変表示に関連した表示を行うわけではないから、表示内容において引用発明1における「リーチの成立やBB当選フラグが設定されたこと」とは異なる。
しかし、「遊技者が演出表示を随時選択することができるものとなり、より趣向性が高いものとなる。」(引用例2の段落【0036】)との作用効果は、単なるデモンストレーション画面だけでなく、可変表示に関連した表示にも共通することが明らかであるから、引用発明1の表示内容を遊技者が選択可能とすること、そのために、予め複数の選択肢を有する表示内容を定め、その1つをデフォルトの表示内容とした上で、「遊技者の選択により変更可能に構成され、その選択するための表示内容選択手段」を設けること、すなわち相違点1に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(2)相違点2について
引用発明1では、画像表示部にリーチの成立やBB当選フラグが設定されたことを表示するのであるが、それ以外にもBB又はRB当選フラグ設定を、各可変表示部の可変開始順序によっても報知しており、本件出願当時には当選フラグ設定(特にBB又はRBについて)をさまざまな時点において、さまざまな手法により報知することが周知である。
実際、本件出願前に請求人(又はその関連企業)が製造販売したスロットマシンであるサンダーV,バーサス及びハナビ(これらの販売開始時期は、平成9年12月?平成10年7月である。)においては、スタート操作時の予告音、各リール(可変表示手段)停止時のリール消灯及び全リール停止後のフラッシュパターンによりフラグ報知を行っており(例えば、「パチスロ必勝本SPECIAL vol.1」(平成10年9月10日 辰巳出版株式会社発行)36?65頁にサンダーVの紹介記事が掲載されており、43頁下段に「完全網羅!!解析から判明したチャンスパターンの全て!」と題する表が示されているほか、多くの攻略本に同様の記事が掲載されている。)、スタート操作により発生した信号を検出した場合の予兆報知、停止ボタンの操作により発生した信号を検出した場合の可変表示手段回転中報知及び複数の可変表示手段の全てが停止したことにより発生した信号を検出した場合の全停止後報知は、本件出願当時の周知技術と認める。
そして、引用発明1では、画像表示部においてBB当選フラグを表示するだから、上記周知のスタート操作時、各可変表示手段停止時及び全可変表示手段停止後のフラグ報知を、画像表示部において行えない理由はない。現実に、本件出願前に頒布された特開2000-70437号公報には、「各遊技開始音1,2が発生するタイミングは図6(a)に示され、同図(e)に示す入賞態様抽選タイミング直後から時間t1の間出力される。」(段落【0034】)、「ランプ駆動回路48、バックランプ57a?57cおよびマイコン30は、各停止ボタン16?18の操作によって各リール3?5の回転表示が停止されるのに連動し、4種類の表示態様の中の1つの表示態様で各リール3?5の表示を順次演出する連動演出手段を構成している。この連動演出手段によって演出される表示態様は、入賞態様の種類に応じて後述するように選択される。」(段落【0035】)、「ランプ駆動回路48、バックランプ57a?57cおよびマイコン30は、各リール3?5の回転表示の全てが停止したときに、10種類の表示態様の中の1つの表示態様で各リール3?5の表示を演出する停止演出手段をも構成している。この停止演出手段によって演出される表示態様は、入賞態様の種類に応じて後述するように選択される。」(段落【0043】)、「リールバックランプ等の表示態様の演出組合せによって予兆報知を行う代わりに、液晶表示部24にキャラクタ等を登場させ、このキャラクタ表示の変化の組合せによって予兆報知を行ったり、その背景画像表示の変化の組合せによって予兆報知を行ってもよい。そして、この液晶表示部24の表示を予兆報知と異なる特定の態様で表示させて告知手段の告知をするようにしてもよい。」(段落【0120】)があり、他の手段による報知を液晶表示部(引用発明1の「画像表示部」は液晶表示部ではないが、機能的に同等である。)の表示に代替えすることが記載されている。
そうであれば、引用発明1を出発点として「前記別表示手段に表示される内容は、スタート操作により発生した信号を検出した場合に表示される予兆表示、前記停止ボタンの操作により発生した信号を検出した場合に表示される可変表示手段回転中表示、前記複数の可変表示手段の全てが停止したことにより発生した信号を検出した場合に表示される全停止後表示を含む」との事項を採用することは当業者にとって想到容易である。
ここで、補正発明の「前記スタート操作により発生した信号及び前記停止ボタンの操作により発生した信号の少なくともいずれか1つを検出した場合に前記別表示手段に表示され」との事項について検討するに、「停止ボタンの操作」が複数回あることから、「少なくともいずれか1つ」が「複数回の停止ボタンの操作により発生した信号の少なくともいずれか1つ」の意味であるのか、「スタート操作により発生した信号」と「停止ボタンの操作により発生した信号」のうちの「少なくともいずれか1つ」であるのか明らかではないものの、「スタート操作により発生した信号」を検出した場合、複数回の「停止ボタンの操作により発生した信号」を検出した場合のすべての場合に別表示手段に表示すれば、この要件を満たすことは明らかであり、引用発明1の画像表示部にて上記周知技術の報知を行えば、この要件を満たすことになる。
そして、相違点1に係る補正発明の構成を採用した場合には、当然表示内容は遊技者の選択により変更されるから、別表示手段に表示につき「前記スタート操作により発生した信号及び前記停止ボタンの操作により発生した信号の少なくともいずれか1つを検出した場合に前記別表示手段に表示され」ること及び「前記表示内容選択手段による遊技者の選択に基づいて前記別表示手段に表示される内容」が「スタート操作により発生した信号を検出した場合に表示される予兆表示、前記停止ボタンの操作により発生した信号を検出した場合に表示される可変表示手段回転中表示、前記複数の可変表示手段の全てが停止したことにより発生した信号を検出した場合に表示される全停止後表示を含む」ことは当然の帰結である。
以上のとおりであるから、相違点2に係る補正発明の構成を採用することも当業者にとって想到容易である。

(3)補正発明の独立特許要件の判断
相違点1,2に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は引用発明1、引用例2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

[補正の却下の決定のむすび]
以上のとおり、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反しているから、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年8月9日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「スタート操作により信号を発生する手段と、
前記スタート操作に応じて複数の図柄を可変表示する可変表示手段と、
前記可変表示を停止するための停止ボタンの操作により信号を発生する手段と、
該可変表示手段の可変表示開始から停止までのゲーム毎に所定の時点で決定される内部当選役に基づいて、可変表示を停止制御する停止制御手段と、
前記可変表示手段とは別の表示を行う別表示手段とを備えた遊技機において、
前記スタート操作により発生した信号及び前記停止ボタンの操作により発生した信号の少なくともいずれか1つを検出した場合に前記別表示手段に表示される内容は、遊技者の選択により変更可能に構成され、その選択するための表示内容選択手段を設けたことを特徴とする遊技機。」

2.本願発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
「第2[理由]5」で述べたことを踏まえると、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は次のとおりである。
〈一致点〉「スタート操作により信号を発生する手段と、
前記スタート操作に応じて複数の図柄を可変表示する複数の可変表示手段と、
前記可変表示を停止するための停止ボタンの操作により信号を発生する手段と、
前記複数の可変表示手段の可変表示開始から停止までのゲーム毎に所定の時点で決定される内部当選役に基づいて、可変表示を停止制御する停止制御手段と、
前記複数の可変表示手段とは別の表示を行う別表示手段とを備えた遊技機。」
〈相違点〉本願発明が「前記スタート操作により発生した信号及び前記停止ボタンの操作により発生した信号の少なくともいずれか1つを検出した場合に前記別表示手段に表示される内容は、遊技者の選択により変更可能に構成され、その選択するための表示内容選択手段を設けた」としているのに対し、引用発明1には「表示内容選択手段」が設けられておらず、「画像表示部」に表示されるのは、「リーチの成立やBB当選フラグが設定されたこと」である点。

3.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
「第2[理由]6(1)」で説示したとおり、「別表示手段に表示される内容」を「遊技者の選択により変更可能に構成」すること、及び「その選択するための表示内容選択手段」を設けることは当業者にとって想到容易である。
残る検討事項は、遊技者の選択により変更可能とされる表示内容を「前記スタート操作により発生した信号及び前記停止ボタンの操作により発生した信号の少なくともいずれか1つを検出した場合に前記別表示手段に表示される内容」とすることの容易性である。
「第2[理由]6(2)」で述べたように、本願発明の構成における「少なくともいずれか1つ」が「複数回の停止ボタンの操作により発生した信号の少なくともいずれか1つ」の意味であるのか、「スタート操作により発生した信号」と「停止ボタンの操作により発生した信号」のうちの「少なくともいずれか1つ」であるのか明らかではない。
後者であるとすれば、「スタート操作により発生した信号を検出した場合に前記別表示手段に表示」すれば十分である。引用発明1では、BB当選フラグが設定されたことを画像表示部に表示しており、この時期を「スタート操作により発生した信号を検出した場合」とすることは設計事項というよりなく、この表示内容を「遊技者の選択により変更可能」とすることにも何の困難性もない。
前者であるとすれば、「第2[理由]6(2)」で述べたように、スタート操作により発生した信号を検出した場合、及び各停止ボタンの操作により発生した信号を検出した場合に、当選フラグを報知することは周知であるから、この周知技術を採用し、その際の報知を画像表示部での表示により行うことに困難性はなく、それらの場合における表示内容を「遊技者の選択により変更可能」とすることにも何の困難性もない。
以上のとおり、「前記スタート操作により発生した信号及び前記停止ボタンの操作により発生した信号の少なくともいずれか1つを検出した場合」をどのように解釈しても、相違点に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、そのことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1、引用例2記載の技術(及び周知技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-02 
結審通知日 2008-07-08 
審決日 2008-07-22 
出願番号 特願2000-133382(P2000-133382)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井海田 隆  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 河本 明彦
森 雅之
発明の名称 遊技機  
代理人 藤田 和子  

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