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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1184026
審判番号 不服2006-1079  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-16 
確定日 2008-09-10 
事件の表示 特願2001- 31598「遊技台」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月20日出願公開、特開2002-233612〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成13年2月7日の出願であって、平成17年12月12日付けで拒絶の査定がされた(同日付けで平成17年3月14日付け手続補正は却下された。)ため、これを不服として平成18年1月16日付けで本件審判請求がされるとともに、同年2月14日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成18年2月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正事項及び補正目的
本件補正は特許請求の範囲の補正を含んでおり、補正前(平成17年3月14日付け手続補正が却下されたため、平成16年4月20日付け手続補正後)の請求項4を削除(平成18年改正前特許法17条の2第4項1号該当)するとともに、「前記特別遊技を終了させる複数の終了条件の中から選択することにより変更する遊技回数に関連する第1終了条件」を「前記特別遊技を終了させる複数の終了条件の中から選択することにより変更可能な遊技回数に関連する第1終了条件」と補正及び「前記第1終了条件は、一旦設定された後、前記開始された特別遊技中に所定の変更条件が成立した場合に変更される」との記載を追加、並びに「遊技媒体の獲得量に関連する第2終了条件」を「遊技媒体の獲得量に関連する、単一の第2終了条件」と補正するものであり、これらは第1終了条件及び第2終了条件を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮(平成18年改正前特許法17条の2第4項2号該当)を目的とするものと認める。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか検討する。

2.補正発明の認定
補正発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「外周面に特定絵柄を含む複数種類の絵柄を配列して回転可能に構成したリールを複数列配置し、遊技媒体を投入して遊技の開始操作をすることにより前記複数列のリールの移動を開始させると共に内部抽選を実行して、前記特定絵柄の組み合わせを含む予め設定された前記絵柄の組み合わせに対応した入賞役への当否を決定し、前記内部抽選の結果とリールの停止操作とに基づいて前記内部抽選の結果に対応した前記絵柄の組み合わせが入賞ライン上に停止するように前記各リールを停止させ、前記特定絵柄の組み合わせが前記入賞ライン上に揃って停止した場合に特別遊技開始の入賞と判定して、以降複数遊技に渡る特別遊技を開始させるよう制御を行なう遊技台であって、
前記遊技台の制御部は、前記特別遊技を終了させる複数の終了条件の中から選択することにより変更可能な遊技回数に関連する第1終了条件と、予め設定され変更されることのない遊技媒体の獲得量に関連する、単一の第2終了条件とに基づいて、前記開始された特別遊技の終了制御を行ない、
前記第1終了条件は、一旦設定された後、前記開始された特別遊技中に所定の変更条件が成立した場合に変更されることを特徴とする遊技台。」

3.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-5381号公報(以下「引用例」という。)には以下のア?コの記載が図示とともにある。なお、摘記に当たり丸付き数字については、〇1などと表記する。
ア.「複数のシンボル列を個別に移動させて表示した後、各シンボル列の移動表示を順次停止させ、所定位置にシンボル列毎に所定のシンボルを停止状態で表示するとともに、停止状態で表示されたシンボル組合せがあらかじめ定められた複数とおりのシンボル組合せのいずれかであるとき、遊技者に有利な条件をもたらす特別ゲームを実行するようにしたシンボル可変表示遊技機において、
前記特別ゲームについて、遊技者に与えられる有利な条件が各シンボル組合せ間で一様とならないような複数とおりのゲーム内容を設定するとともに、前記複数とおりのシンボル組合せにそれぞれいずれかのゲーム内容を対応づけて記憶するゲーム内容記憶手段と、
各シンボル列の移動表示の開始にともない、各シンボル列の停止時に成立させるシンボル組合せを決定するための抽選を実行する抽選手段と、
前記抽選手段により、前記特別ゲームにかかる複数とおりのシンボル組合せのいずれかを成立させることが決定したとき、各シンボル列の移動表示の停止動作を制御して決定されたシンボル組合せを成立させた後、その組合せに応じたゲーム内容の特別ゲームを実行する制御手段とを具備して成るシンボル可変表示遊技機。」
イ.「この種のスロットマシンでは、遊技者によるゲーム開始操作に応じて、機体内部で抽選により入賞を成立させるかどうかを決定するようにしており、所定の確率で「ビッグボーナス」、「レギュラーボーナス」などと称される特別入賞が成立するように設定されている。このような特別入賞が成立すると、以後、入賞確率の高い特別ゲーム(以下「ボーナスゲーム」という)が所定回数実行され、遊技者に多数枚のメダルが払い出しされる。」(段落【0004】)
ウ.「現行のスロットマシンでは、「BAR」「BAR」「BAR」のような所定のシンボルの組合せが成立すると、レギュラーボーナスとなり、高確率で入賞が成立するボーナスゲームが、8回の入賞が得られるまで、または最大12回まで実行される。」(段落【0005】)
エ.「【実施例】図1は、この発明が適用されたスロットマシンの外観を、図2は機体内部の構成を、それぞれ示す。このスロットマシンの機体1は、ボックス形状の本体部2の前面開口に扉部3を開閉可能に取り付けて成る。前記本体部2の中空内部には、上段位置にリールブロック4や、制御回路などが配置された回路基板5などが組み込まれ・・・前記リールブロック4は、金属フレーム7に3個のリール8a,8b,8cが一体に組み付けられて成る。各リール8a,8b,8cの外周面には、赤色、青色、白色が彩色された3種類の「7」のシンボル(以下各色毎に「赤7」「青7」「白7」と示す)のほか、「BAR」や「フルーツ(FRUIT)」の文字を配した図柄、チェリー,すいか、ベルを模した図柄など、複数種のシンボルが、所定の順序で21駒分配備されている。さらにこのリールブロック4には、各リール8a,8b,8cを個別に回転駆動するステッピングモータ9a,9b,9cが組み付けられている。」(段落【0020】?【0021】)
オ.「上記構成のスロットマシンにおいて、遊技者によるメダル投入操作(前記したメダル投入、またはベット釦スイッチ24a?24cの操作のいずれかを意味する)で所定数の停止ラインが有効化され、ついで始動レバー14の操作により全てのリール8a,8b,8cが一斉に始動すると、後記する制御回路部25内で抽選処理が行われ、有効ライン上に入賞のシンボルの組合せを整列表示させるかどうかが決定される。そしていずれかのシンボルによる「当たり」を成立させることが決定すると、その後、制御回路部25は、停止釦スイッチ15a,15b,15cが操作される都度、対応するリール8a,8b,8cに対し、有効ライン上に決定されたシンボルを停止させる引込み制御を実行し、入賞を成立させる。」(段落【0030】)
カ.「「BAR」「BAR」「BAR」、または「BAR」「BAR」「赤7」の各組合せは、レギュラーボーナス用のシンボル組合せとして機能する。ただしビッグボーナス時にレギュラーボーナスの入賞が発生した場合は、これらのシンボル組合せは出現しないように制御され、代わりに「プラム」「プラム」「プラム」の組合せが成立するような引込み制御が行われる。」(段落【0033】)
キ.「<実施例〇4>図14は、この実施例にかかる各レギュラーボーナスRB1,RB2,RB_(BB)の設定例を示す。図中、左欄の「最大ゲーム数」は、レギュラーボーナスの成立により実行可能なボーナスゲームの上限値を、中央欄の「最大入賞回数」は入賞の制限回数を、それぞれ示す。また右欄の「当たり度数(入賞確率)」は、各ボーナスゲーム毎に適用されるもので、ROM28内には、各レギュラーボーナス毎に、この度数データに基づく抽選テーブルがセットされている。」(段落【0075】)
ク.「<実施例〇5>この実施例は、各レギュラーボーナスRB1,RB2,RB_(BB)とも、最大ゲーム数,最大入賞回数を同一数に設定する一方、ボーナスゲーム毎の入賞確率を変動させるようにしたものである。図15は、レギュラーボーナスRB1,RB2,RB_(BB)の設定例であって、いずれも最大ゲーム数が12回、最大入賞回数が8回というように、同一の設定がなされている。ただし入賞確率については、RB1は75%,RB2は85%,RB_(BB)は90%と、それぞれ個別の値が設定されている。」(段落【0078】)
ケ.「<実施例〇6>この実施例は、各レギュラーボーナスRB1,RB2,RB_(BB)毎に、最大ゲーム数,最大入賞回数,入賞確率の各設定値をすべて変動させるようにしたもので、図16にその設定の具体例が示してある。」(段落【0080】)
コ.「なおここでは、この発明をボーナスゲームや高確率役物遊技に適用した場合の各例について説明したが、この発明はこれらに限定されるものではなく、例えば、「チャレンジタイム」と称される、少なくとも1つのリールの引込み制御が解除された特別ゲームにも適用できる。この場合は、複数とおりのシンボル組合せ毎に、ゲームの実行回数やメダルの払出し枚数などが異なるゲームが設定され、「チャレンジタイム」時には、成立したシンボル組合せに応じた内容のゲームが展開されることになる。」(段落【0120】)

4.引用例記載の発明の認定
<実施例〇4>(記載キ)においては、「レギュラーボーナス」が記載アの「特別ゲーム」に該当し、記載アの「複数とおりのゲーム内容を設定」に該当するのは、「ボーナスゲームの上限値」及び「入賞の制限回数」である。
記載アの「シンボル列」の具体例は、記載エの「リール」であり、この外周面には複数種のシンボルが配備されている。
したがって、引用例には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「外周面には複数種のシンボルが配備された3個のリールを個別に移動させて表示した後、各リールの移動を順次停止させ、所定位置にリール毎に所定のシンボルを停止状態で表示するとともに、停止状態で表示されたシンボル組合せが、「BAR」「BAR」「BAR」若しくは「BAR」「BAR」「赤7」の各シンボル組合せ又はビッグボーナス時に「プラム」「プラム」「プラム」のシンボル組合せのいずれかであるとき、遊技者に有利な条件をもたらすレギュラーボーナスを実行するようにしたシンボル可変表示遊技機において、
前記レギュラーボーナスについて、複数とおりのシンボル組合せの何れであるかに応じて、ボーナスゲームの上限値及び入賞の制限回数をゲーム内容として設定するとともに、前記複数とおりのシンボル組合せにそれぞれいずれかのゲーム内容を対応づけて記憶するゲーム内容記憶手段と、
各シンボル列の移動表示の開始にともない、各リールの停止時に成立させるシンボル組合せを決定するための抽選を実行する抽選手段と、
前記抽選手段により、前記レギュラーボーナスにかかる複数とおりのシンボル組合せのいずれかを成立させることが決定したとき、各リールの移動表示の停止動作を制御して決定されたシンボル組合せを成立させた後、その組合せに応じたゲーム内容のレギュラーボーナスを実行する制御手段とを具備して成るシンボル可変表示遊技機。」(以下「引用発明」という。)

5.補正発明と引用発明の一致点及び相違点
引用発明の「BAR」及び「シンボル」は、補正発明の「特定絵柄」及び「絵柄」に相当し、引用発明の「リール」が「回転可能に構成」されていることは明らかである。
上記引用発明としては特に認定していないが、引用発明の「シンボル可変表示遊技機」とは「スロットマシン」であり、「遊技媒体を投入して遊技の開始操作をすることにより前記複数列のリールの移動を開始させる」ことは技術常識に属する(記載オには明記されている。)。
引用発明は「各シンボル列の移動表示の開始にともない、各リールの停止時に成立させるシンボル組合せを決定するための抽選を実行する抽選手段」を具備するから、「前記複数列のリールの移動を開始させると共に内部抽選を実行して、前記特定絵柄の組み合わせを含む予め設定された前記絵柄の組み合わせに対応した入賞役への当否を決定」する点において補正発明と一致する。さらに、上記引用発明の認定では「前記レギュラーボーナスにかかる複数とおりのシンボル組合せのいずれかを成立させることが決定したとき、各リールの移動表示の停止動作を制御して決定されたシンボル組合せを成立」としたが、「レギュラーボーナスにかかる複数とおりのシンボル組合せ」以外が抽選により当選した場合にも、かかるシンボル組合せが成立するように引き込み制御を行うことが明らか(記載オ参照)であるから、「前記内部抽選の結果とリールの停止操作とに基づいて前記内部抽選の結果に対応した前記絵柄の組み合わせが入賞ライン上に停止するように前記各リールを停止させ」ることも補正発明と引用発明の一致点である。
引用発明の「BAR」が補正発明の「特定絵柄」に相当することは上記のとおりであるから、「BAR」「BAR」「BAR」のシンボル組合せは補正発明の「前記特定絵柄の組み合わせ」に相当し、「前記特定絵柄の組み合わせが前記入賞ライン上に揃って停止した場合に特別遊技開始の入賞と判定して、以降複数遊技に渡る特別遊技を開始させるよう制御を行なう」ことも補正発明と引用発明の一致点である。なお、補正発明は「前記特定絵柄の組み合わせが前記入賞ライン上に揃って停止した場合に特別遊技開始の入賞と判定」するのであるが、これは「特定絵柄の組み合わせ」以外の組み合わせが入賞ライン上に揃って停止した場合に特別遊技開始の入賞と判定することを排除するものではない。例えば、発明の詳細な説明の段落【0143】には、「赤7-赤7-赤7」、「青7-青7-青7」及び「白7-白7-白7」の組み合わせを特別遊技開始の入賞と判定する旨記載されているところ、赤7,青7又は白7のどれか1つだけが「特定絵柄」だとすると、特定絵柄の組み合わせ以外でも特別遊技開始の入賞と判定することになるし、赤7,青7及び白7すべてを「特定絵柄」だとすれば、「赤7-青7-白7」なども「特定絵柄の組み合わせ」に該当するにもかかわらず、これらは特別遊技開始の入賞と判定されない。百歩譲って、「前記特定絵柄の組み合わせが前記入賞ライン上に揃って停止した場合のみ特別遊技開始の入賞と判定」するのだとしても、特別遊技の遊技内容(終了条件を含む。)を複数の中から選択するに当たり、1種類の組み合わせを特別遊技開始の入賞と定めておいて、抽選等により特別遊技の遊技内容を別途選択することは周知である(例えば、パチスロ機「クロスCT」では、「7-7-7」の組み合わせのみをビッグボーナス(特別遊技)開始の入賞と判定し、別途ルーレットによりそのビッグボーナスにCT(チャレンジタイム)を付加するかどうかを決定しており、ブラックジャック777ではビッグボーナス当選後ST(ストックタイム)のゲーム数を別途決定している。)から、「前記特定絵柄の組み合わせが前記入賞ライン上に揃って停止した場合のみ特別遊技開始の入賞と判定」するかどうかを相違点と認定しても、設計事項程度の微差であり、進歩性(独立特許要件)の判断を左右しない。そのため、上記のとおり、「前記特定絵柄の組み合わせが前記入賞ライン上に揃って停止した場合に特別遊技開始の入賞と判定して、以降複数遊技に渡る特別遊技を開始させるよう制御を行なう」ことは補正発明と引用発明の一致点とする。
引用発明の「ボーナスゲームの上限値」及び「入賞の制限回数」は、何れもレギュラーボーナスの終了条件であり、特に前者は補正発明の「前記特別遊技を終了させる複数の終了条件の中から選択することにより変更可能な遊技回数に関連する第1終了条件」に相当する。そのように対比すれば、後者の「入賞の制限回数」は「第2終了条件」といえる。引用発明が、第1終了条件と第2終了条件とに基づいて、開始された特別遊技の終了制御を行なう「制御部」を具備することはいうまでもなく、引用発明の「シンボル可変表示遊技機」(スロットマシン)は「遊技台」ということもできる。
したがって、補正発明と引用発明は、
「外周面に特定絵柄を含む複数種類の絵柄を配列して回転可能に構成したリールを複数列配置し、遊技媒体を投入して遊技の開始操作をすることにより前記複数列のリールの移動を開始させると共に内部抽選を実行して、前記特定絵柄の組み合わせを含む予め設定された前記絵柄の組み合わせに対応した入賞役への当否を決定し、前記内部抽選の結果とリールの停止操作とに基づいて前記内部抽選の結果に対応した前記絵柄の組み合わせが入賞ライン上に停止するように前記各リールを停止させ、前記特定絵柄の組み合わせが前記入賞ライン上に揃って停止した場合に特別遊技開始の入賞と判定して、以降複数遊技に渡る特別遊技を開始させるよう制御を行なう遊技台であって、
前記遊技台の制御部は、前記特別遊技を終了させる複数の終了条件の中から選択することにより変更可能な遊技回数に関連する第1終了条件と、第2終了条件とに基づいて、前記開始された特別遊技の終了制御を行なう遊技台。」である点で一致し、次の各点で相違する。
〈相違点1〉補正発明の第1終了条件は「一旦設定された後、前記開始された特別遊技中に所定の変更条件が成立した場合に変更される」のに対し、引用発明のそれが特別遊技中に変更されるとはいえない点。
〈相違点2〉補正発明の第2終了条件が「予め設定され変更されることのない遊技媒体の獲得量に関連する、単一の第2終了条件」であるのに対し、引用発明のそれは「入賞の制限回数」である点。

6.相違点の判断及び補正発明の独立特許要件の判断
(1)相違点1について
一般に時間又は回数に制限のあるゲームにおいて、何らかの条件が成立することをもって、時間又は回数を変更することは周知である。
そのことは、本件出願前に頒布された特開平11-290517号公報に「ラウンドの消化数が49回以上の場合にリミッタを作動させる代わりに、確率変動状態の終了条件を前回における60回の始動入賞から10回の始動入賞にすることにより、確率変動状態の終了条件を厳しくするようにしてもよい。」(段落【0132】)と、特開平8-323043号公報に「ランクAを設定すると、最初のゲーム時間が63秒であり、この63秒の間に最初の延長ポイントを通過すると、さらに43秒ゲーム時間が延長され、次の延長ポイントを通過すると、さらに33秒の時間が延長されるようになる。」(段落【0073】)と及び特開平9-313670号公報に「ステップ16の判定が「NO」のとき、CPU21は、ステップ20で、有効ライン上に引込制御の解除に関わる特定のシンボルが停止しているか否かをチェックする。この判定が「YES」であれば、CPU21は、つぎのステップ21で、現在の引込制御解除回数nに所定の回数Nを加算した後、続くステップ22で、引込解除表示部12に前記加算更新後の引込解除回数nを表示させる。」(段落【0050】)とそれぞれ記載されているとおりである。
引用発明において、「ボーナスゲームの上限値」(第1終了条件)を、レギュラーボーナス中に変更してはならない理由はないから、上記周知技術を採用して、相違点1に係る補正発明の構成に至ることは当業者にとって想到容易である。

(2)相違点2について
「遊技媒体の獲得量」という場合、賭けた遊技媒体(メダル)は無視し、払い出されたメダル数をいう場合と、メダルの純増枚数をいう場合がある。引用発明の特別遊技は「レギュラーボーナス」であり、第2終了条件は「入賞の制限回数」である。そして、1回の入賞における払い出し枚数は、レギュラーボーナス中の遊技では、入賞時の払い出し枚数が通常固定枚数であるから、「入賞の制限回数」と払い出されたメダル数の上限は等価である。
「遊技媒体の獲得量」が純増枚数の意味であるとしても、「入賞の制限回数」と純増枚数の上限は実質的に等価である。なぜなら、引用例の【図14】によれば、RB1の「最大ゲーム数」及び「最大入賞回数」は10回及び6回、RB2のそれは8回及び4回、RB_(BB)のそれは12回及び8回とされているところ、1回の入賞における払い出し数を15枚、賭け数を1枚(レギュラーボーナスの場合、これが通常である。)最大入賞回数の入賞によりレギュラーボーナスを終了する場合の純増枚数は、RB1では80?84枚、RB2では52?56枚及びRB_(BB)では108?112枚となり、純増枚数の上限をそれら枚数の最小値(又はそれよりもわずかに小さな数)に設定したのと等価になるからである。
加えて、引用例の記載コに「チャレンジタイム」に適用する旨の記載があるところ、チャレンジタイムでは、終了条件の1つを純増枚数とすることが周知である(先に紹介した「クロスCT」のほか、「ウルトラマン倶楽部3」においても採用されているし、原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-24174号公報にもそのことが記載されている。)。
そうであれば、引用発明の「第2終了条件」を「遊技媒体の獲得量に関連する」条件とすることはせいぜい設計事項といわなければならない。
残る検討項目は、第2終了条件である「遊技媒体の獲得量に関連する」条件を、「予め設定され変更されることのない・・・単一の」条件とすることの容易性のみである。
そこで検討するに、引用例には実施例〇4のほかに、実施例〇5及び実施例〇6の示されており、実施例〇5では、すべてのレギュラーボーナスにおける最大ゲーム数(第1終了条件)及び最大入賞回数(第2終了条件)を同一に設定し、その代わりに入賞確率を異ならせている。実施例〇4と実施例〇6を比較すると、実施例〇4ではRB1とRB2の入賞確率が同一であるが、実施例〇6ではそれらの確率が異なっている。
このように、レギュラーボーナスのゲーム内容の設定として、終了条件だけでなく入賞確率を設定することもあり、各種設定条件のどれを異ならせるかは任意であり、すべてを異ならせてもよいし、一部だけを異ならせてもよいことは引用例の記載自体から明らかである。
そして、引用発明においてはレギュラーボーナスの終了条件が2つあるところ、終了条件の1つを異ならせないとすることに何らかの阻害要因があると認めることはできないから、終了条件の1つである第2終了条件を、複数のレギュラーボーナスに共通の条件、すなわち「予め設定され変更されることのない単一の」条件とすることには何の困難性もない。第2終了条件を共通にすれば、ゲーム展開のバリエーションが損なわれるというのであれば、実施例〇5のように他の条件設定で補うこともできる。
以上のとおりであるから、相違点2に係る補正発明の構成を採用することも当業者にとって想到容易である。

(3)補正発明の独立特許要件の判断
相違点1,2に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
すなわち、補正発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

[補正の却下の決定のむすび]
補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反しており、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
平成17年3月14日付け手続補正は原審において、本件補正は当審においてそれぞれ却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年4月20日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「外周面に特定絵柄を含む複数種類の絵柄を配列して回転可能に構成したリールを複数列配置し、遊技媒体を投入して遊技の開始操作をすることにより前記複数列のリールの回転を開始させると共に内部抽選を実行して、前記特定絵柄の組み合わせを含む予め設定された前記絵柄の組み合わせに対応した入賞役への当否を決定し、前記内部抽選の結果とリールの停止操作とに基づいて前記内部抽選の結果に対応した前記絵柄の組み合わせが入賞ライン上に停止するように前記各リールを停止させ、前記特定絵柄の組み合わせが前記入賞ライン上に揃って停止した場合に特別遊技開始の入賞と判定して、以後複数遊技に渡る特別遊技を開始させるよう制御を行う遊技台であって、
前記遊技台の制御部は、前記特別遊技を終了させる複数の終了条件の中から選択することにより変更する遊技回数に関連する第1終了条件と、予め設定され変更されることのない遊技媒体の獲得量に関連する第2終了条件とに基づいて、前記開始された特別遊技の終了制御を行うことを特徴とする遊技台。」

2.本願発明の進歩性の判断
「第2[理由]5」で述べたことを踏まえると、本願発明と引用発明は、「第2[理由]5」で述べた一致点において一致し、次の点で相違する。
〈相違点2’〉本願発明の第2終了条件が「予め設定され変更されることのない遊技媒体の獲得量に関連する第2終了条件」であるのに対し、引用発明のそれは「入賞の制限回数」である点。
そこで検討するに、「第2[理由]6(2)」で述べたと同様の理由により、相違点2’に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明(及び周知技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-15 
結審通知日 2008-07-18 
審決日 2008-07-30 
出願番号 特願2001-31598(P2001-31598)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲吉▼川 康史  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 太田 恒明
森 雅之
発明の名称 遊技台  
代理人 大塚 康徳  
代理人 木村 秀二  
代理人 大塚 康弘  
代理人 高柳 司郎  

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