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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F |
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管理番号 | 1184098 |
審判番号 | 不服2005-503 |
総通号数 | 106 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-01-07 |
確定日 | 2008-09-11 |
事件の表示 | 特願2002-336278「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月17日出願公開、特開2004-166963〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は平成14年11月20日の出願であって、平成16年11月25日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として平成17年1月7日付けで本件審判請求がされたものである。 請求人は審判請求後の平成17年2月7日付けで明細書について手続補正をしたが、当審では同手続補正を却下するとともに、平成20年1月28日付けで新たな拒絶の理由を通知した。請求人はそれに対して、同年3月25日付けで意見書及び手続補正書を提出したので、当審で再度審理した結果、同年4月4日付けで再度拒絶理由(いわゆる「最後の拒絶理由」)を通知したところ、請求人は同年6月3日付けで意見書及び手続補正書(この手続補正を、以下「本件補正」という。)を提出した。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成20年6月3日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正事項 本件補正は特許請求の範囲の補正を含んでおり、補正前後の請求項1の記載は次のとおりである。 (本件補正前の請求項1) 「図柄を可変表示する可変表示手段と、前記図柄を背後から白色光で照明する発光ダイオードからなる第1の光源と、前記可変表示手段の前面に配置された前側表示手段と、前記第1の光源の発光および前記前側表示手段の表示を制御する制御手段とを備え、前記前側表示手段は、前記可変表示手段を透視可能な液晶表示パネルと、上下端に一対の第2の光源を有し、前記第1の光源から出射された光および前記第2の光源から出射された光を前記液晶表示パネル全体に導く導光板と、この導光板に導かれて前記液晶表示パネルに照射される光を拡散する拡散手段と、前記導光板に出射された光を前記液晶表示パネル側へ反射するリアホルダとを含んで構成されていると共に、前記導光板、拡散手段およびリアホルダには、前記可変表示手段の可変表示の視認性を確保する透過領域が設けられており、前記リアホルダの各前記透過領域の背面側の周縁角部は削がれており、前記リアホルダの各前記透過領域の背面側の上下の削がれた部分付近には第3の光源が設けられており、前記制御手段は、内部入賞態様の種類およびその時の遊技状態に応じて、前記図柄を背後から照明する前記第1の光源を発光制御すると共に、前記液晶表示パネルの表示領域における演出表示を制御することを特徴とする遊技機。」 (本件補正後の請求項1) 「図柄を可変表示する可変表示手段と、前記図柄を背後から白色光で照明する発光ダイオードからなる第1の光源と、前記可変表示手段の前面に配置された前側表示手段と、前記第1の光源の発光および前記前側表示手段の表示を制御する制御手段とを備え、前記前側表示手段は、前記可変表示手段を透視可能な液晶表示パネルと、上下端に一対の第2の光源を有し、前記第2の光源から出射された光を前記液晶表示パネル全体に導く導光板と、この導光板に導かれて前記液晶表示パネルに照射される光を拡散する拡散手段と、前記導光板に出射された光を前記液晶表示パネル側へ反射するリアホルダとを含んで構成されていると共に、前記導光板、拡散手段およびリアホルダには、前記可変表示手段の可変表示の視認性を確保する透過領域が設けられており、前記リアホルダの各前記透過領域の背面側の周縁角部は削がれており、前記リアホルダの各前記透過領域の背面側の上下の削がれた部分付近には第3の光源が設けられており、前記第1の光源は、前記液晶表示パネルをも照明し、前記制御手段は、内部入賞態様の種類およびその時の遊技状態に応じて、前記図柄を背後から照明する前記第1の光源を発光制御すると共に、前記液晶表示パネルの表示領域における演出表示を制御することを特徴とする遊技機。」 要するに本件補正は、請求項1において「前記第1の光源から出射された光および」との記載の削除(以下「補正事項1」という。)及び「前記第1の光源は、前記液晶表示パネルをも照射し、」との記載(以下「補正事項1」という。)の加入を行うものである。 2.補正目的の検討 本件補正と同日に提出された意見書において、請求人は補正事項1,2の補正目的について述べていないので、いかなる目的であるのか審尋したところ、請求人は、補正事項1については「審判官殿が平成20年4月4日付け起案日の拒絶理由通知書で、「導光板が「第1の光源から出射された光を液晶表示パネル全体に導く」ことは当初明細書に記載されていないし、自明の事項でもない」、とご指摘されたことを受けて行ったもの」と、補正事項2については「上記の削除補正により請求項の記載が不明りょうにならないように、明りょうでない記載の釈明を目的として行ったもの」と回答した。 特許法(平成18年改正前の趣旨である。以下同様。)17条の2第4項は、最後の拒絶理由通知後に特許請求の範囲について補正する場合の補正目的を同項1?4号に掲げる事項に制限しており、新規事項追加の解消はどの号にも掲げられていない。同項1?4号に掲げる事項を目的として補正した結果、新規事項追加の解消に至る場合には、適法な補正目的であるといえるが、新規事項追加の解消自体を補正目的として認めているのではない。したがって、補正事項1は特許法17条の2第4項の規定に違反している。 次に補正事項2について検討する。特許法17条の2第4項4号は、補正目的として「明りようでない記載の釈明」をあげているが、補正前にも「図柄を可変表示する可変表示手段と、前記図柄を背後から白色光で照明する発光ダイオードからなる第1の光源」及び「前記前側表示手段は、前記可変表示手段を透視可能な液晶表示パネル」との事項が特定されているから、「第1の光源」の光が「可変表示手段」を介して「液晶表示パネル」に到達することは明確であり、補正事項2がそれと同旨ならば、「明りようでない記載の釈明」に該当しないだけでなく、特許法17条の2第4項4号は「明りようでない記載の釈明」を無条件に認めているのではなく、「(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」との条件を課しているが、補正前の記載が明りようでない旨の拒絶理由は通知されていない。 請求人は、補正事項1により削除した事項の代わりとして補正事項2を追加することが、「明りようでない記載の釈明」に該当すると主張しているのかもしれないが、「明りようでない記載の釈明」とは、発明特定事項として同一事項であることが前提である。ところが、補正事項1によって「前記第1の光源から出射された光・・・を前記液晶表示パネル全体に導く導光板」との発明特定事項が削除されたことになり、これと補正事項2による追加事項が同一であるとは到底認めることができない。 [補正の却下の決定のむすび] 以上のとおり、本件補正は特許法17条の2第4項の規定に違反しているから、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。 よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求についての判断 1.特許請求の範囲の記載 本件補正が却下されたから、特許請求の範囲【請求項1】の記載は平成20年3月25日付けで補正された次のとおりのものである。 「図柄を可変表示する可変表示手段と、前記図柄を背後から白色光で照明する発光ダイオードからなる第1の光源と、前記可変表示手段の前面に配置された前側表示手段と、前記第1の光源の発光および前記前側表示手段の表示を制御する制御手段とを備え、前記前側表示手段は、前記可変表示手段を透視可能な液晶表示パネルと、上下端に一対の第2の光源を有し、前記第1の光源から出射された光および前記第2の光源から出射された光を前記液晶表示パネル全体に導く導光板と、この導光板に導かれて前記液晶表示パネルに照射される光を拡散する拡散手段と、前記導光板に出射された光を前記液晶表示パネル側へ反射するリアホルダとを含んで構成されていると共に、前記導光板、拡散手段およびリアホルダには、前記可変表示手段の可変表示の視認性を確保する透過領域がけられており、前記リアホルダの各前記透過領域の背面側の周縁角部は削がれており、前記リアホルダの各前記透過領域の背面側の上下の削がれた部分付近には第3の光源が設けられており、前記制御手段は、内部入賞態様の種類およびその時の遊技状態に応じて、前記図柄を背後から照明する前記第1の光源を発光制御すると共に、前記液晶表示パネルの表示領域における演出表示を制御することを特徴とする遊技機。」 2.新規事項追加の判断 上記のとおり、請求項1には「前記第1の光源から出射された光および前記第2の光源から出射された光を前記液晶表示パネル全体に導く導光板」との記載がある。 導光板が「第2の光源から出射された光を前記液晶表示パネル全体に導く」ことは、導光板の機能からみて当然のことであり、願書に最初に添付した明細書(添付図面を含む。以下「当初明細書」という。)に記載されていることは認める。しかし、導光板が「第1の光源から出射された光を液晶表示パネル全体に導く」ことは当初明細書に記載されていないし、自明の事項でもない。 請求人は、平成20年3月25日付け意見書において、補正の根拠として当初明細書の段落【0019】,【0020】及び【0028】並びに当初図面の【図3】(a)をあげており、これらの記載又は図示から、第1の光源から出射された光が液晶パネルを照明することが当初明細書に記載されていることまでは認めることができるものの、その光が導光板により液晶表示パネル全体に導かれることまでは認めることができない。 すなわち、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たさない補正がされている。 第4 予備的判断 本件補正を却下しないとした場合の、請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)の進歩性の判断を予備的にしておく。 1.補正発明の認定 補正発明は本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「図柄を可変表示する可変表示手段と、前記図柄を背後から白色光で照明する発光ダイオードからなる第1の光源と、前記可変表示手段の前面に配置された前側表示手段と、前記第1の光源の発光および前記前側表示手段の表示を制御する制御手段とを備え、前記前側表示手段は、前記可変表示手段を透視可能な液晶表示パネルと、上下端に一対の第2の光源を有し、前記第2の光源から出射された光を前記液晶表示パネル全体に導く導光板と、この導光板に導かれて前記液晶表示パネルに照射される光を拡散する拡散手段と、前記導光板に出射された光を前記液晶表示パネル側へ反射するリアホルダとを含んで構成されていると共に、前記導光板、拡散手段およびリアホルダには、前記可変表示手段の可変表示の視認性を確保する透過領域が設けられており、前記リアホルダの各前記透過領域の背面側の周縁角部は削がれており、前記リアホルダの各前記透過領域の背面側の上下の削がれた部分付近には第3の光源が設けられており、前記第1の光源は、前記液晶表示パネルをも照明し、前記制御手段は、内部入賞態様の種類およびその時の遊技状態に応じて、前記図柄を背後から照明する前記第1の光源を発光制御すると共に、前記液晶表示パネルの表示領域における演出表示を制御することを特徴とする遊技機。」 2.引用刊行物の記載事項 当審における平成20年1月28日付けの拒絶理由に引用した特開平7-124290号公報(以下「引用例」という。)には、以下のア?ケの記載又は図示がある。 ア.「複数の回転リールを横方向に並列し、各回転リールの外周の表面に複数のシンボルマークを所定間隔で表示し、各回転リールの外周の表面の一部をフロントパネルに開設した表示窓に臨ませるとともに、各回転リールを回転させてシンボルマークを移動表示するスロットマシンにおいて、 上記フロントパネルには、前記表示窓の位置に少なくとも液晶表示装置を配置し、ゲームの開始前には液晶を遮光状態とするとともに、その遮光面にインフォメーションを液晶表示し、ゲーム中は液晶を透光状態としたことを特徴するスロットマシン」(【請求項1】) イ.「センターパネル21のほぼ中央には、図2に示すように、3個の表示窓22?24を横並びに形成している。各表示窓22?24の内部には、各回転リール30?32の表面をそれぞれ臨ませている。そして、各表示窓22?24には、回転リール30?32を回転させることにより、上下方向に3個のシンボルマークを所定間隔で高速で移動表示させることができる。」(段落【0016】) ウ.「前記センターパネル21の裏側には、図1に示すように、液晶表示装置を構成する液晶パネル40が、センターパネル21の裏面のほぼ全体にわたって配置されている。」(段落【0018】) エ.「液晶パネル40の制御は、スロットマシン10内に設けたマイクロコンピュータ等からなる電気的制御装置(図示せず)により行われている。前記液晶パネル40の裏側には、図1に示すように、液晶パネル40をその裏側から照明するためのバックライトユニット50が配置されている。」(段落【0019】) オ.「上記バックライトユニット50は、図1に示すように、各表示窓22?24の位置を除き、液晶パネル40の裏面のほぼ全体にわたって配置された面発光板51と、この乱反射板51の端面に配置された蛍光灯52とから構成されている。なお、面発光板51を、各表示窓22?24の位置を除いて配置したことから、液晶パネル40の透光状態では、スロットマシン10の内部に配置された各回転リール30?32のシンボルマークを、センターパネル21を透してスロットマシン10の前面より見ることができる。」(段落【0020】) カ.「液晶の透光面の一部を遮光状態として、図4に示すように、中央ライン60を液晶表示して、1本の有効ラインを表示する。」(段落【0024】) キ.「3個のストップスイッチ13?15を全て操作し、全ての回転リール30?32を停止させる。その結果、有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせが形成されると、特別の賞態様、例えば、図7に示す右下がりの斜めライン63上に「7」の文字から成る図柄が3個揃うと、いわゆる「ビッグボーナス」の役が成立し、15枚のメダルが遊技者に払い出される。」(段落【0028】) ク.「「ビッグボーナス」が成立すると、図8に示すように、上下に長く透光状態となっていた各表示窓22?24が、右下がりの斜めライン63上に揃った「7」の図柄を残して遮光状態となり、「ビッグボーナス」の当たり図柄を遊技者から見易いように強調する。さらに、各表示窓22?24の図7において向かって右側に表示されていた5個のメダル投入表示部70?74が、消灯し、その箇所に、図8に示すように、「ビッグボーナス」の文字が表示され、「ビッグボーナス」が成立したことを遊技者にわかり易く表示する。」(段落【0029】) ケ.【図1】には、「蛍光灯52」を「面発光板51」の上下端面に配置することが図示されている。 3.引用例記載の発明の認定 引用例の記載イ?オ及び【図1】?【図3】によれば、各表示窓22?24の位置に対応する液晶パネル部分にはバックライトユニットが設けられておらず、バックライトユニットと液晶パネルは略同サイズと認めることができ、表現を変えれば、液晶パネルと略同サイズのバックライトユニットに各表示窓22?24該当の開口部があるということができる。 遊技者側からみると、液晶パネル、バックライトユニット(表示窓22?24該当の開口部あり)及び3個の回転リールが並んでいる。 したがって、引用例には次のような発明が記載されていると認めることができる。 「遊技者側からみて、液晶パネル、バックライトユニット及び3個の回転リールが並んで配置されたスロットマシンであって、 各回転リールは、外周の表面に複数の図柄を所定間隔で表示したものであり、 バックライトユニットは、面発光板とその上下端面に配置した蛍光灯からなり、そこには3個の開口部が設けられ、液晶パネルが透光状態であれば、各開口部を通して背後の回転リールを各リールごとに3図柄を視認できるように構成され、 液晶パネルの透光面の一部を遮光状態として、有効ラインを表示し、 全ての回転リールが停止し、有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせとしてビッグボーナスが成立すると、特定の図柄の組み合わせが形成された図柄該当部分を残して液晶パネルの開口部該当部分を遮光状態とし、常時はメダル投入表示部とされる液晶パネル部分にビッグボーナスの文字を表示するスロットマシン。」(以下「引用発明」という。) 4.補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定 引用発明の「3個の回転リール」及び「液晶パネル」は、補正発明の「図柄を可変表示する可変表示手段」及び「液晶表示パネル」にそれぞれ相当し、引用発明では「液晶パネルが透光状態であれば、各開口部を通して背後の回転リールを各リールごとに3図柄を視認できる」のだから、「液晶パネル」が「可変表示手段を透視可能」なことは明らかである。また、引用発明における「液晶パネル」と「バックライトユニット」を併せたものが補正発明の「前側表示手段」に相当(引用発明の「上下端面に配置した蛍光灯」が補正発明の「上下端に一対の第2の光源」に相当する。)し、「前記可変表示手段の前面に配置された」ことは補正発明と引用発明の一致点である。逆に補正発明からみると、「上下端に一対の第2の光源を有し、前記第2の光源から出射された光を前記液晶表示パネル全体に導く導光板と、この導光板に導かれて前記液晶表示パネルに照射される光を拡散する拡散手段と、前記導光板に出射された光を前記液晶表示パネル側へ反射するリアホルダ」を「バックライトユニット」ということができる。引用発明の「面発光板」が導光機能を有することは明らかであり、かつ引用発明の「開口部」は補正発明の「前記可変表示手段の可変表示の視認性を確保する透過領域」に相当するから、バックライトユニットの構成において、「上下端に一対の第2の光源を有し、前記第2の光源から出射された光を前記液晶表示パネル全体に導く導光板」が存すること、及びバックライトユニットに「前記可変表示手段の可変表示の視認性を確保する透過領域が設けられて」いることも補正発明と引用発明の一致点である。 引用発明において「ビッグボーナスが成立すると、特定の図柄の組み合わせが形成された図柄該当部分を残して液晶パネルの開口部該当部分を遮光状態とし、常時はメダル投入表示部とされる液晶パネル部分にビッグボーナスの文字を表示する」ことは「演出表示」といえるから、「前記液晶表示パネルの表示領域における演出表示を制御する」「前側表示手段の表示を制御する制御手段」は引用発明にも備わっている。 そして、引用発明の「スロットマシン」が補正発明の「遊技機」に含まれることはいうまでもない。 したがって、補正発明と引用発明は、 「図柄を可変表示する可変表示手段と、前記可変表示手段の前面に配置された前側表示手段と、前記前側表示手段の表示を制御する制御手段とを備え、前記前側表示手段は、前記可変表示手段を透視可能な液晶表示パネルと、上下端に一対の第2の光源を有し、前記第2の光源から出射された光を前記液晶表示パネル全体に導く導光板を含み、前記可変表示手段の可変表示の視認性を確保する透過領域が設けられているバックライトユニットを含んで構成されており、前記制御手段は、前記液晶表示パネルの表示領域における演出表示を制御する遊技機。」である点で一致し、以下の各点で相違する。 〈相違点1〉補正発明の「バックライトユニット」が「上下端に一対の第2の光源を有し、前記第2の光源から出射された光を前記液晶表示パネル全体に導く導光板と、この導光板に導かれて前記液晶表示パネルに照射される光を拡散する拡散手段と、前記導光板に出射された光を前記液晶表示パネル側へ反射するリアホルダ」を含み、「前記導光板、拡散手段およびリアホルダには、前記可変表示手段の可変表示の視認性を確保する透過領域が設けられており、前記リアホルダの各前記透過領域の背面側の周縁角部は削がれており」と限定しているのに対し、引用発明のそれは「面発光板とその上下端面に配置した蛍光灯からな」るものであり、導光板は有するものの、「拡散手段」及び「リアホルダ」を有するとはいえない点。 〈相違点2〉補正発明が「第2の光源」のほかに「前記図柄を背後から白色光で照明する発光ダイオードからなる第1の光源」及び「前記リアホルダの各前記透過領域の背面側の上下の削がれた部分付近には第3の光源」を設け、「前記第1の光源は、前記液晶表示パネルをも照明し」と限定するのに対し、引用発明にはそれら光源がない点。 〈相違点3〉補正発明の「制御手段」が「内部入賞態様の種類およびその時の遊技状態に応じて、前記図柄を背後から照明する前記第1の光源を発光制御すると共に、前記液晶表示パネルの表示領域における演出表示を制御する」のに対し、引用発明のそれがかかる制御を行うとはいえない点。なお、補正発明において「前記第1の光源の発光・・・を制御する制御手段」とあるが、この発明特定事項は、上記相違点3の構成に含まれているから、別途独立した相違点には当たらない。 5.相違点の判断及び補正発明の進歩性の判断 (1)相違点1について 導光板を含むバックライトユニットにおいて、導光板の前面側(液晶パネル側)に拡散手段を、背面側に反射手段を配し、適宜のホルダにて保持することは、例えば特開2001-5406号公報に「【従来の技術】液晶表示装置に代表される非発光表示装置においては、背面に照明のためのバックライトユニットが設けられる。このバックライトユニットは、・・・導光板裏面側に設けられ裏面から抜けた光を再び導光板内に戻すための反射シートとを備えるものが知られている。また、出射面の上方には、必要に応じて、出射面から出射される光(出射光)を視野角内に集光し輝度を向上させるためのレンズシートや、輝度の均一化のための拡散板を備えるものもある。そして、これらはバックライトユニットの外形を成すホルダに納められる。」(段落【0002】)と記載されているように周知技術(以下「周知技術1」という。)と認める。また、ホルダを導光板と略同面積にして反射手段を兼ねさせることに格別困難性がないことは明らかである。そのことは、上記文献に「5は導光板の裏面23側において表示装置全体を保持する第1ホルダ」(段落【0029】)及び「第1ホルダ5には、導光板の裏面23と対向してこれを覆い表面が反射面である裏面部としての後面反射面51・・・が設けられている。」(段落【0031】)と記載されているとおりである。ここで、同文献記載の「第1ホルダ」は導光板の裏面にあるから「リアホルダ」と称することができる。 そうである以上、引用発明のバックライトユニットとして、上記周知技術1を採用し、ホルダに反射機能を持たせること、すなわち「上下端に一対の第2の光源を有し、前記第2の光源から出射された光を前記液晶表示パネル全体に導く導光板と、この導光板に導かれて前記液晶表示パネルに照射される光を拡散する拡散手段と、前記導光板に出射された光を前記液晶表示パネル側へ反射するリアホルダ」を含む構成とすることは当業者にとって想到容易である。 その場合、開口部を通しての図柄視認性を確保するために、導光板だけでなく、拡散手段及びリアホルダにも開口部(透過領域)を設けなければならないことは当然である。 また、本件出願の相当以前に頒布された特開昭62-195523号公報に「また、窓部12の端面12aは前側より後側へ傾斜されているため、運転者から端面12aが見えなくなり、外観上体裁がよい。」(2頁右下欄3?5行)と、同じく実願昭60-122436号(実開昭62-33039号)のマイクロフィルム に「顎部20aが開口部20の内周に形成されており」(2頁6?7行)と記載されているように、窓ということができる開口部の背面側の周縁角部が削がれたものとすることは、周知技術(以下「周知技術2」という。)と認めることができ、周知技術2はその構造から「周辺角部が視認されることがない」との作用効果を奏していることは明らかである。 そうすると、引用発明を出発点として、開口部(その数は面発光板の開口部数に一致する。)を有するリアホルダを設けた場合、リアホルダの各開口部の背面側の周縁角部を削ぐことは、単に周知技術2を適用した程度のことであり、設計事項というべきである。 結局のところ、相違点1に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。 (2)相違点2について 引用発明においても、回転リール表面の図柄を開口部を通して視認する必要上、回転リールに対しての光源が存することは自明である。それがどのようなものか引用例の記載からは明らかでないものの、回転リール表面用の光源として、図柄を背後から照明する光源(補正発明の「第1の光源」に相当」)や、回転リールの前側から図柄を照らす光源(補正発明の「第3の光源」に相当」)を設けること、及びこれら2種類の光源を両方設けることは周知である。そのことは、例えば、特開平6-98964号公報に「リールユニット30は、図4に示すように、・・・個々に回転される3個の回転リール12?14と、各回転リール12?14のそれぞれ内側に位置するとともに、前記ベース50に対して固定され、3個の回転リール12?14をその内側から個々に照明する発光源としての3本の蛍光管70・・・とを備えている。」(段落【0019】)及び「前記照明ユニット40は、図1,3に示すように、発光源としての1本の蛍光管41を備え、この蛍光管41は、リールユニット30の3個の回転リール12?14の外側に配置されている。より具体的には、スロットマシン10のフロントパネルの窓部11の裏側に位置し、3個の回転リール12?14の斜め上方に、ほぼ水平に配置されている。」(段落【0025】)と、特開2001-170244号公報に「蛍光灯34は、図5に示すように、正面パネル11の背面に連接された支持部材35により支持されて、各リール8a,8b,8cの外周面を斜め上方位置から照明する。」(段落【0030】)及び「さらに各リール8a,8b,8cの裏側には、それぞれ各シンボルの停止表示位置を個別に照明するための3個の光源21が配備される(以下この光源を「バックライト光源21」という)。各バックライト光源21は、前面に透光部を有するケース体21aの内部にLED21bを組み込んで成るもので、各透光部をリール周面側に向けた状態で、リール内側の適所に固定配備される。」(段落【0031】)と記載されていることによって裏付けられる。 この周知技術を引用発明に採用することには何の困難性もない。その際、「第1の光源」については、「発光ダイオード」とすることが前掲特開2001-170244号公報に記載されており、図柄の多くが着色されていることを考慮すれば、色の認識が可能なように「白色光で照明する発光ダイオード」とすることは設計事項に属する。 また、「第2の光源」については、照明を行う際の効果的な位置として「前記リアホルダの各前記透過領域の背面側の上下の削がれた部分付近」を選択することは設計事項に属する。 したがって、相違点2に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。 (3)相違点3について スロットマシンにおいて、内部入賞態様の種類およびその時の遊技状態に応じて、図柄を背後から照明する光源を発光制御することや、同じく内部入賞態様の種類およびその時の遊技状態に応じて、液晶表示パネルにおける演出表示を制御することは、例えば特開2000-135306号公報又は特開2001-129156号公報に記載されているように周知技術(以下「周知技術3」という。)であり、周知技術3を相違点2の構成とともに引用発明に適用することは当業者にとって想到容易である。 また、前掲特開2001-129156号公報に「各停止ボタン16?18の操作に連動し、各リール3?5のバックランプ57a?57cが例えば「消灯,消灯,点灯」されると共に、長さが異なる音が例えば「ブー,ブーー,ブ」と3回出音される。」(【要約】の【解決手段】欄)と記載されているように、同一情報を異なる形態で報知することも周知であるから、周知技術3の適用に当たり、内部入賞態様の種類およびその時の遊技状態に応じて、「前記図柄を背後から照明する前記第1の光源を発光制御」と「前記液晶表示パネルの表示領域における演出表示を制御」を同時採用することは設計事項というべきであるから、結局のところ、相違点3に係る補正発明の構成に至ることは当業者にとって想到容易である。 (4)補正発明の進歩性の判断 相違点1?3に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、補正発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第5 むすび 以上のとおり、本件補正は却下されなければならず、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たさない補正がされているから、本願は拒絶を免れない。 仮に本件補正を許容するとしても、本件補正後の請求項1に係る発明が特許を受けることができないから、上記結論は変更されない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-07-14 |
結審通知日 | 2008-07-15 |
審決日 | 2008-07-29 |
出願番号 | 特願2002-336278(P2002-336278) |
審決分類 |
P
1
8・
574-
WZ
(A63F)
P 1 8・ 55- WZ (A63F) P 1 8・ 121- WZ (A63F) P 1 8・ 57- WZ (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鉄 豊郎、池谷 香次郎 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
▲吉▼川 康史 伊藤 陽 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 峯岸 武司 |