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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) A01K
管理番号 1184295
判定請求番号 判定2008-600027  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2008-10-31 
種別 判定 
判定請求日 2008-05-27 
確定日 2008-09-19 
事件の表示 上記当事者間の特許第3609855号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号写真に示す「ペット用わくわくシーツトレー」は、特許第3609855号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 請求の趣旨
判定請求書に添付したイ号写真およびその説明に示したところの、被請求人である株式会社リッチェルが製造販売している「ペット用わくわくシーツトレー」(以下、「イ号物件」という。)は、特許第3609855号の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

第2 本件特許発明
本件特許発明は、願書に添付された明細書及び図面(以下、「特許明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、これを構成要件に分説すると、次のとおりである。

A トイレ本体と、
B トイレ本体に対してシーツを固定する押さえ枠と、
C 押さえ枠をトイレ本体に固定する固着手段と、
D トイレ本体の押さえ枠との対峙面に形成された嵌合突起と、
E 押さえ枠のトイレ本体との対峙面に形成されて嵌合突起に筒状を成して嵌合する筒状嵌合部と、
F 前記押さえ枠のほぼ全周に渡り形成され、当該押さえ枠が前記固着手段により前記トイレ本体に固定された状態で、前記トイレ本体に敷かれたシーツに接する押圧部
G とを備えたことを特徴とするペット用トイレ。
(以下、本件発明の構成要件AないしGという。)

第3 イ号物件
1 請求人の主張
請求人は、イ号物件は、判定請求書に添付されたイ号写真(甲第4号証の1乃至8)に示すように、下記の構成を備えていると主張している。
(a)トレー本体120
(b)トレー本体120に対してシーツを固定する枠130
(c)枠130をトレー本体120に固定する固着手段140
(d)トレー本体120の枠130との対峙面に形成された嵌合突起ka
(e)枠130のトレー本体120との対峙面に形成されて嵌合突起kaに筒状を成して嵌合する筒状嵌合部Ta
(f)前記枠130のほぼ全周に渡り形成され、当該枠130が前記固着手段140により前記トレー本体120に固定された状態で、前記トレー本体120に敷かれたシーツに接する突状片150
(g)とを備えたことを特徴とするペット用わくわくシーツトレー。

2 被請求人の主張
他方、被請求人は、判定請求答弁書において、イ号物件の写真及び図面である乙第1号証及び乙第4号証を提出し、イ号物件は、下記の構成を備えていると主張している。
(a’)底面の周縁部に凹溝が形成されたトイレ本体120と、
(b’)トイレ本体120に対してシーツを固定する枠130と、
(c’)枠130をトイレ本体120に固定する固着手段140と、
(d’)トイレ本体120の枠130との対峙面に形成された嵌合突起Kaと、
(e’)枠130のトイレ本体120との対峙面に形成された筒状嵌合部Taであって該筒状嵌合部Taの底部が嵌合突起Kaの上端に当接した状態で筒状嵌合物Taの下端面とトイレ本体120との間に隙間を有するように形成された筒状嵌合部Taと、
(f’)前記枠130のほぼ全周に渡り形成され、当該枠130が前記固着手段140により前記トイレ本体120に固定された状態で、前記トイレ本体120に載置されその周縁部が嵌合突起Kaと筒状嵌合部Taによって固定されたシーツ4を凹溝内に押し下げて張力を与える突状片150
(g’)とを備えたことを特徴とするペット用わくわくシーツトイレ。

3 イ号写真について
判定請求答弁書に添付されたイ号写真である乙第1号証の3、及び同じく添付されたイ号図面である乙第2号証の2を検討すると、イ号物件について、以下の事項が認められる。
(1)突状片150の下方の先端部と凹溝との間には隙間aが生じている。

4 当審によるイ号物件の特定
上記1及び2に示した両当事者の主張内容、並びに、判定請求書に添付された甲第4号証1ないし8の写真、並びに、判定請求答弁書に添付された乙第1号証乃至乙第4号証の写真及び図面を参酌すると、イ号物件の構成は、次のとおりのものと認められる。
(イ号物件の構成)
a 底面の周縁部に凹溝が形成されたトイレ本体120と、
b トイレ本体120に対してシーツを固定する枠130と、
c 枠130をトイレ本体120に固定する固着手段140と、
d トイレ本体120の枠130との対峙面に形成された嵌合突起Kaと、e 枠130のトイレ本体120との対峙面に形成された筒状嵌合部Taであって該筒状嵌合部Taの底部が嵌合突起Kaの上端に当接した状態で筒状嵌合物Taの下端面とトイレ本体120との間に隙間を有するように形成された筒状嵌合部Taと、
f 前記枠130のほぼ全周に渡り形成され、当該枠130が前記固着手段140により前記トレー本体120に固定された状態で、前記トレー本体120に敷かれたシーツに接し、シーツを凹溝内に押し下げる突状片であって、突状片の下方の先端部と凹溝との間に隙間aが生じている、突状片150
g とを備えたことを特徴とするペット用わくわくシーツトレー。
(以下、イ号物件の構成aないしgという。)

第4 本件発明とイ号物件との対比・判断
1 争いのない点について
本件特許発明とイ号物件とを対比すると、イ号物件の構成aが本件特許発明の構成要件Aを、以下同様に、bがBを、cがCを、dがDを、gがGをそれぞれ充足することは、明らかである。

2 構成要件Eの充足性について
イ号物件の構成eが本件特許発明の構成要件Eを充足するかどうかについて判断するに、イ号物件の構成eと本件特許発明の構成要件Eは、イ号物件の構成eが「筒状嵌合部Taの底部が嵌合突起Kaの上端に当接した状態で筒状嵌合物Taの下端面とトイレ本体120との間に隙間を有するように形成され」ている点で異なるとしても、両者は「筒状嵌合物が嵌合突起に筒状を成して嵌合する」点で一致するから、文言上一致するものであり、そうすると、イ号物件の構成eは本件特許発明の構成要件Eを充足するといえる。
なお、被請求人は、本件特許発明の構成要件Eの「筒状嵌合部T」は、その下端面がトイレ本体との間でシーツを押さえ付ける固定形態となる機能を備えるものである旨主張しているが、構成要件Eは「押さえ枠のトイレ本体との対峙面に形成されて嵌合突起に筒状を成して嵌合する筒状嵌合部」と限定されているのみであって、「その下端面がトイレ本体との間でシーツを押さえ付ける固定形態となる機能を備える」とまで限定されておらず、また、特許請求の範囲の記載、及び、明細書の記載全体をみてもそのように解さなければならない事情もなく、したがって、被請求人の構成要件Eに係る主張は採用することができない。

3 構成要件Fの充足性について
(1)構成要件Fについて
イ号物件の構成要件fが本件特許発明の構成要件Fを充足するかどうかについて判断するに、本件特許発明の構成要件Fとイ号物件の構成fとを対比すると、少なくとも文言上違いがあるのは、本件特許発明の構成要件Fが「シーツに接する押圧部」であるのに対し、イ号物件の構成fが「シーツに接し、シーツを凹溝内に押し下げる突状片であって、突状片の下方の先端部と凹溝との間に隙間aが生じている、突状片150」である点である。
そこで、本件特許発明の構成要件Fにおける「シーツに接する押圧部」の技術的意義について検討するに、特許明細書の記載を参酌すると、次の記載がある。
ア「【発明が解決しようとする課題】
従来のペット用トイレは、シーツを固定する力が弱く、ペットがシーツ上で激しく動いた場合には、シーツが外れてしまうことがあった。
本発明は、前記課題に着目してなされたものであり、ペットがシーツ上で激しく動いた場合にも、シーツが外れることを防止できるペット用トイレを提供することを目的とする。」(乙第5号証である特許公報の段落【0007】【0008】)

イ「【作用】
請求項1の発明によれば、押さえ枠とトイレ本体との間に、嵌合突起と、嵌合突起に嵌合する筒状嵌合部とを備えたことにより、嵌合突起と筒状嵌合部との間にシーツを挟み込んで押さえ、かつ、固着手段により押さえ枠がトイレ本体に固定された状態で、押さえ枠のほぼ全周に渡り形成されている押圧部がトイレ本体に敷かれたシーツに接するので、極めて強い押さえ込みができる。」(同特許公報の段落【0011】)

ウ「さらに、トイレ本体12に敷かれたシーツ4は、底面14の凸部16と押さえ枠13の押圧部31とにより上下方向から交互に挟みこまれているので、シーツ4のズレは、より効果的に防止される。」(同特許公報の段落【0023】)

エ「【発明の効果】
請求項1の発明によれば、押さえ枠とトイレ本体との間に、嵌合突起と、嵌合突起に嵌合する筒状嵌合部とを備えたことにより、嵌合突起と筒状嵌合部との間にシーツを挟み込んで押さえ、かつ、固着手段により押さえ枠がトイレ本体に固定された状態で、押さえ枠のほぼ全周に渡り形成されている押圧部がトイレ本体に敷かれたシーツに接するので、極めて強い押さえ込みができ、トイレ本体内でペットが激しく動いた場合でもシーツが不用意にはずれない信頼性の高いペット用トイレを提供できる。」(同特許公報の段落【0029】)

また、本件特許発明の出願経過をみると、本件特許発明の構成要件Fは、本件特許の審査の段階で、平成16年4月16日提出の手続補正書(判定請求答弁書に添付された乙第6号証)により加えられた構成であり、また、同日付けで提出された意見書(同乙7号証)には、当該構成に関して、以下の記載がある。

オ「(4)そして、係る特有の事項を具備する本願発明によれば明細書の段落「0029」に記載したように、「押さえ枠とトイレ本体との間に、嵌合突起と、嵌合突起に嵌合する筒状嵌合部とを備えたことにより、嵌合突起と筒状嵌合部との間にシーツを挟み込んで押さえ、かつ、固着手段により押さえ枠がトイレ本体に固定された状態で、押さえ枠のほぼ全周に渡り形成されている押圧部がトイレ本体に敷かれたシーツに接するので、極めて強い押さえ込みができ、トイレ本体内でペットが激しく動いた場合でもシーツが不用意にはずれない信頼性の高いペット用トイレを提供できる。」という作用効果を奏します。
つまり、シーツは、
第1に、嵌合突起と筒状嵌合部との間に挟み込んで押さえられ、
第2に、固着手段により押さえ枠がトイレ本体に固定された状態で、押さえ枠のほぼ全周に渡り形成されている押圧部がシーツのほぼ全周に渡り接することで押さえられることとなります。
そして、この第1及び第2の押さえによる相乗効果により、トイレ本体内でペットが激しく動いた場合でもシーツが不用意にはずれない信頼性の高いペット用トイレを提供できることとなります。しかも、第2の押さえは、押さえ枠のほぼ全周に渡り形成されている押圧部により、シーツのほぼ全周に渡りなされるので、効果的な押さえともなります。」(乙第7号証第2頁第1?16行参照。)

カ「(5)しかるに、方形状留め部材3(押さえ枠)に形成に形成された前記ピン15と、便器本体1(トイレ本体)に形成された円筒形突片7との係合のみにより、吸水シート2(シーツ)を固定する引用文献記載のものでは、前記第1の押さえは得られても、第2の押さえは得られません。よって、これら第1及び第2の押さえによる相乗効果に起因する「トイレ本体内でペットが激しく動いた場合でもシーツが不用意にはずれない信頼性の高いペット用トイレを提供できる。」という作用効果は、引用文献記載記載の発明によってはそうすることのできない、本願請求項1に係る発明に特有のものに他なりません。」(乙第7号証第2頁第17?23行参照。)

上記特許明細書の記載事項並びに意見書の内容を参酌すると、本件特許発明は、「嵌合突起と筒状嵌合部との間に挟み込んで押さえ」るという第1の押さえ作用に加えて、「固着手段により押さえ枠がトイレ本体に固定された状態で、押さえ枠のほぼ全周に渡り形成されている押圧部がシーツのほぼ全周に渡り接することで押さえられ」るという第2の押さえ作用を奏することにより、両者の押さえ作用の相乗効果によって、ペットが激しく動いた場合でもシーツが不用意にはずれないという特有の効果を奏するものであり、本件発明の構成要件Fにおける「シーツに接する押圧部」は、ペットが激しく動いた場合でもシーツが不用意にはずれないための上述の第2の押さえ作用を実現できるという技術的意義を有するものということができる。
一方、「押圧」、すなわち「押し圧す」とは、「押しつけてつぶす」ことを意味する言葉であり(広辞苑第五版)、そして、本件特許発明における「押圧部」は、トイレ本体に敷かれたシーツを、トイレ本体に対して押しつけてつぶす部材であるといえる。

(2)構成fについて
他方、イ号物件の構成fは、突状片150の下方の先端部とトイレ本体120の底面の周縁部に形成された凹溝の間に「隙間a」が存在しており、突状片150はシーツを押し下げるように接しているとはいえるが、シーツをトイレ本体に対して押しつけてつぶしているとはいえない。
この点につき、判定請求答弁書の乙第4号証の2及び乙第4号証の3をみても、イ号物件の構成fにおける「突状片150」は、シーツに対して押し下げるように接して張力を与えるという作用を奏するものであるとはいえるが、ペットが激しく動いた場合でもシーツが不用意にはずれないよう、シーツをトイレ本体に対して押しつけてつぶしているとはいえない。
したがって、イ号物件の構成fの「突状片150」は、「シーツと接している」とはいえるものの、シーツをトイレ本体に押圧する部材ではない。

(3)してみると、イ号物件の構成fは本件特許発明の構成要件Fを充足しているとはいえない。

4 甲第2号証の実験データについて
イ号物件の構成fについて、請求人は、判定請求書で甲第2号証の実験データを示して、イ号物件は実際の使用時にシーツを押圧する効果が生じていることが判明したとして、イ号物件の構成fは、シーツを押圧する効果を明確に奏しているものである旨主張しているので、甲第2号証について検討する。

甲第2号証には、所見の欄の【試験方法】に、以下の記載がある。
「【試験方法】
トレーの長辺部片側(突起部が事前に切り取られている側)にシートの短辺部をシートが突起部に重ならない所までに合わせて枠を取り付ける。
枠を取り付けたままの状態と、枠を取り外した状態それぞれでシートの端を引っ張り、枠から外れる最大強度を測定する。」

この記載をみても、「(突起部が事前に切り取られている側)」という記載の「突起部」が試験品のトレーのどの部分を示すのか不明であり、また、「シートが突起部に重ならない所までに合わせて枠を取り付ける。」という記載についても、「突起部に重ならない所」がトレーのどの部分なのかがわからず、したがってシートがどのように取り付けられたか不明であるため、試験がどのように行われたのかわからない。さらに、【試験方法】の記載全体、及び、甲第2号証全体の記載をみても、試験品としてどのようなトレーが使われ、どのように試験が行われたのか理解できない。そして、請求人は、判定請求書の中において、甲第2号証の試験方法の具体的なやり方について何も述べていない。
また、請求人は、判定請求書内において、「本判定事件に添付しました実験データ-(甲第2号証)によれば、実際の使用時に、シーツを押圧する効果が生じていることが判明致しました。」と述べているが、上記【試験方法】の「(突起部が事前に切り取られている側)」という記載は、試験品のトレーの一部が事前に切り取られていることを意味するものといえ、そうすると、今回試験品として使用されたトレーは、構成の一部が欠けた、つまり、実際の使用時のトレーとは異なるものを使用していると解される。
例えば、被請求人が判定請求答弁書において主張しているように、甲第2号証における「(突起部が事前に切り取られている側)」の突起部とは、イ号物件の「嵌合突起Ka」であり、「突起部に重ならないところ」とは、突起部が事前に切り取られていることを前提に考えて「突起部の元あった部位に重ならないところ」とも理解でき、そして、甲第2号証の試験は、嵌合突起Kaを切り取ることにより嵌合突起Kaと筒状嵌合物Taがシーツ固定手段としての機能を発揮しない状態にし、この状態で引っ張り試験を行うことにより、突状片150自体のシーツに対する押圧機能を証明しようとしたとも考えられ、そうすると、この試験方法は、実際の使用時のトレーとは異なる試験品を用いて試験を行っており、実際の使用時のトレーの突状片150の押圧の機能を証明するものとはいえない。

そうすると、甲第2号証の実験データは、イ号物件が実際の使用時にシーツを押圧する効果が生じていることを示しているとはいえず、したがって、甲第2号証は、イ号物件の構成fがシーツを押圧する効果を有することを示しているとはいえない。

してみると、甲第2号証を参酌してもなお、イ号物件の構成fは、本件特許発明の構成要件Fを充足しないものといわざるをえない。

第5 むすび
以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Fを充足しないから、本件特許発明の技術的範囲に属するということはできない。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2008-09-09 
出願番号 特願平6-203108
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (A01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 佳代子  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 山村 祥子
後藤 時男
登録日 2004-10-22 
登録番号 特許第3609855号(P3609855)
発明の名称 ペット用トイレ  
代理人 石川 壽彦  
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