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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1185056
審判番号 不服2002-20490  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-22 
確定日 2008-09-11 
事件の表示 特願2001- 77308「電子請求書管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月13日出願公開、特開2002-259900〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年3月16日(国内優先権主張 平成12年12月28日)の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年6月25日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。
「電子請求書を発行する請求人が有する情報端末である複数の請求人情報端末と、電子請求書によって支払が請求される被請求人が有する情報端末である複数の被請求人情報端末との双方に、ネットワークを介してつながっている電子請求書管理システムであって、
前記複数の請求人端末の各々から送られる電子請求書を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した電子請求書について、所定の期間内に同一の被請求人に対して異なる請求人から発行された電子請求書を集めてそれらの電子請求書の支払を一括してできるようそれらの電子請求書に含まれる情報をとりまとめるとりまとめ手段と、
とりまとめ手段がとりまとめた情報を所定の時期にその被請求人が有する被請求人情報端末にネットワークを介して送信する送信手段とから成り、
前記受信手段が受信した電子請求書の中から、その電子請求書における請求人が誰であるかに関する情報である請求人情報と、その電子請求書における被請求人が誰であるかに関する情報である被請求人情報と、その電子請求書における請求金額の情報である金額情報と、その請求金額が対価として請求されるに至った原因に関する情報である原因情報とを、それぞれ抽出する抽出手段を備えており、
前記とりまとめ手段は、抽出手段が抽出した情報のうち、請求人情報、金額情報及び原因情報とを前記同一の被請求人ごとにとりまとめてリスト化した請求リストを作成するものであって、前記送信手段はこの請求リストを送信するものであり、
前記とりまとめ手段は、請求リストにある請求金額の合計を算出してその請求リストに表示されるようにするものであり、
さらに、
請求人に自分が発行した電子請求書の支払い状況についてモニタさせる支払い状況モニタ手段が設けられており、
前記請求リストは、請求リストに含まれる個々の電子請求書について、個々に支払いの意志の有無を入力する欄を有しており、
支払い状況モニタ手段は、前記請求リストを受信した前記被請求人端末において、前記支払いの意志の有無の欄に意志有りが入力されて送信されると、その電子請求書を発行した請求人が有する請求人情報端末に、その支払い意志有りの旨のデータを送信するものであることを特徴とする電子請求書管理システム。」

なお、第2段落の「前記複数の請求人端末の各々から送られる電子請求書を受信する受信手段と、 前記受信手段が受信した電子請求書について、…」は、「…受信手段と、」と「 前記受信手段が…」との間で改行がなされるべきものであり、また、第5段落の「…リスト化した請求リストを作成ものであって、…」は、「…リスト化した請求リストを作成するものであって、…」の誤記であることが明らかであるので、本願発明を上記のように認定した。

2.引用例
これに対して、当審の拒絶の理由に引用した、簗栄司 他2名,Electronic Bill Presentment and Payment(EBPP)サービスモデルの比較分析,電子情報通信学会技術研究報告,Vol.100 No.206,社団法人電子情報通信学会,2000年7月12日,7?14頁(以下、「引用例」という。)には、図面とともに下記(a)ないし(e)の事項が記載されている。
(a)「1.はじめに
World Wide Webの進歩および普及により,インターネット上で提供されるサービスが急激な発達を遂げ^([アドバ00]),急速に社会的に受け入れられ始めている.請求が発生する商取引には明細書や請求書が発行され,利用者もしくは支払者に支払請求をし,支払決済を行うが,それらの作業をインターネット上で電子的に実施するサービスが,Electronic Bill Presentment and Payment(以下,EBPPと呼ぶ)サービスである.
米国では既にAT&TやMCI/Worldcomといった通信業者^([Tel99])をはじめとする個別企業によるEBPPサービスや,CheckFree Corporation^([Che00]),TransPoint LLC^([Tra00])といったサービスプロバイダによる共同利用型のEBPPサービスが,実際に提供を行っている.日本では,決済方式が米国とは異なるため,Electronic Bill Presentment(以下,EBPと呼ぶ)サービスからではあるが,株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ^([ドコモ00])をはじめとする個別企業によるサービス提供が始まっている.また,1999年7月に発足され,EBPPサービスのビジネスモデルや技術仕様の検討を目的とした,インターネット明細情報サービス推進協議会^([推進協99])や,2000年5月に発足され,日本特有の決済方法からのアプローチによるEBPPサービス提供の検討を目的とした,日本マルチペイメントネットワーク推進協議会^([マルチ00])といった,コンソーシアムによる実現検討も行われている.
本報告では,先行してEBPPの実サービスを提供している米国における,実フィールドで起こっているサービスモデルの推移を報告すると共に,各サービスモデルを比較分析した結果について述べる.
第2章では,これまで米国での先行民間3社が提唱するEBPPビジネスモデルや,NACHA(National Automated Clearing House Association)の請求支払委員会が中心となり提唱しているモデルを報告する.第3章では,現在のEBPPビジネスモデルの発達背景を検証する.そして第4章では現行で主要となっているEBPPサービスのサービスモデルを分析比較し,それらEBPPサービスのサービスモデルの本質的違いを考察する.」(8頁左欄1行?右欄3行)
(b)「2.EBPPサービスの一般モデル
米国AT&T,Intuit,Just in Timeの3社は,1998年春にOpen Internet Billing Model(以下,OIB Modelと呼ぶ)として,Direct Model,Thick Consolidation Model,Thin Consolidation Modelの3方式を提案している^([OIB98]).またNACHAでは,請求書支払い委員会が中心になり,Biller Direct Model,Service Provider Consolidation Model,Customer Consolidation Modelの3つのモデルを提唱^([日経デ99-1])している.NACHAの提案は,OIB Modelを受け包含しているが,OIB Modelで区別している二つのConsolidation Modelの差異性が次第に意味をなさなくなった背景を受け,Service Provider Consolidation Modelとして一つにまとめている.
(中略)
2-2.Service Provider Consolidation Model
Biller Direct Modelに対し,サービス利用者の個人情報や明細請求情報を請求業者から預かり,サービス利用者への明細請求情報の提示や支払処理を委託代行するコンソリデータ(サービス統合提供者)が介在するモデルが,Service Provider Consolidation Modelである.このモデルは,請求業者が共同利用型コンソリデータを利用することにより,サービス利用者が複数請求業者の明細請求情報を一括して参照し,支払処理をすることができる.また,Service Provider Consolidation Modelには,コンソリデータに転送する情報の範囲によって大きく,2種類のモデルに分けることができる.」(8頁右欄4行?9頁左欄6行)
(c)「4.サービスモデルの推移
これら請求業者や金融機関のコスト削減重視のEBPPサービスモデルにおける,サービス利用者の直接的な利益としては,郵送コスト(1件あたり35セント)を削減することができる点と,請求書の開封から小切手の郵送までの手作業が一括でネットワーク上において処理できる点を挙げられる.しかし,顧客ニーズの欠落がマーケット反応により顕在化している.本稿では,これら請求業者や金融機関のコスト削減重視のEBPPサービスモデルをBiller主導EBPPサービスモデルと呼び,それに対しサービス利用者ニーズ解決重視のEBPPサービスモデルをConsumer主導EBPPサービスモデルと呼ぶ.
Harvard Businessによるeカンパニービジネスモデルの一般化表記^([ダイヤ00])を用いて,Biller主導EBPPサービスモデルとConsumer主導EBPPサービスモデルを図6,図7に示す.」(11頁左欄25?41行)
(d)「4-1.Biller主導EBPPサービスモデル
図6は,TransPoint LLC^([Tra00])の例を用いたBiller主導EBPPサービスモデルである.このモデルはThin Consolidation ModelをベースとしたCheckFree Corporation^([Che00])やTransPoint LLCが提供するEBPPサービスのサービスモデルである.各請求事業者は,予めコンソリデータと契約をし,明細請求情報をオンラインでコンソリデータに送信するための準備を必要とする.
TransPointの場合,各請求業者の持つ明細請求情報を,TransPointのデータセンタで利用可能なデータフォーマットに変換するために,BIS(Biller Integration System)と呼ばれるツールを提供している.
各請求業者は,定期的に明細請求情報をコンソリデータに送り,コンソリデータはサービス利用者毎に情報を集約し,提供する.
前述のTransPointの例では,請求者はBIS経由で明細請求情報をTransPointに送り(図中〔2〕),集約された明細請求情報は,TransPointが契約し,かつサービス利用者が取引を行っている金融機関(TransPointではCSP,Consumer Service Providerと呼ぶ)の内,サービス利用者が取引しているCSPに送られる.各サービス利用者は,集約された(図中〔3〕)明細請求情報を,CSPを通して確認(図中〔4〕,〔5〕)し,CSPを通して支払手続きを実施する(図中〔6〕).」(11頁左欄42行?右欄23行)
(e)図6(Biller主導EBPPサービスモデル)には、サービス利用者が支払指示を金融機関(CSP)に出すと、ACH(Automated Clearing House)において、決済処理がなされ、ACHからは各Billerに支払処理がなされることが記載されている。

なお、引用例中の丸数字は、〔 〕で囲まれた数字に置き換えた。

上記引用例の記載を以下に検討する。
(ア)上記摘記事項(a)の記載によれば、「EBPPサービス」は、請求書の発行から支払決済までの作業をインターネット上で電子的に実施するサービスであると認められる。
(イ)そして、上記摘記事項(d)、(e)の記載によれば、図6に記載された「Biller主導EBPPサービスモデル」では、
(1)各請求業者は、明細請求情報をオンラインでコンソリデータ(図6の「TransPoint」)に送信し、各サービス利用者は、明細請求情報をCSP(Consumer Service Provider)(図6の「金融機関」)を通して確認し、支払手続きを実施するのだから、コンソリデータには、コンソリデータのコンピュータシステムが有り、請求業者には、明細請求情報を発行する情報端末である請求業者情報端末が有り、サービス利用者には、明細情報によって支払が請求される情報端末であるサービス利用者情報端末が有ることは明らかである。
(2)各請求業者は、明細請求情報をオンラインでコンソリデータに送信するのだから、請求業者情報端末は通信回線を介してコンソリデータのコンピュータシステムにつながっているといえる。
(3)サービス利用者はCSP(Consumer Service Provider)を通してコンソリデータにつながっているのだから、サービス利用者情報端末はネットワークを介してコンソリデータのコンピュータシステムにつながっているといえる。
(4)各請求業者は明細請求情報をコンソリデータに送り、コンソリデータはサービス利用者毎に情報を集約し各サービス利用者にその情報を提供するのだから、コンソリデータのコンピュータシステムは、複数の請求業者情報端末の各々から送られる明細請求情報を受信する受信手段と、前記受信手段が受信した明細請求情報の中から、その明細請求情報における請求業者が誰であるかに関する情報である請求業者情報と、その明細請求情報におけるサービス利用者が誰であるかに関する情報であるサービス利用者情報と、を抽出する抽出手段を有することは明らかであり、また、明細請求情報には、請求金額の情報、その請求金額が対価として請求されるに至った原因に関する情報である原因情報が含まれることは、社会常識であるから、上記抽出手段は、上記明細請求情報の中から、その明細請求情報における請求金額の情報である金額情報と、その請求金額が対価として請求されるに至った原因に関する情報である原因情報と、をもそれぞれ抽出しているといえる。
(5)コンソリデータは、サービス利用者毎に情報を集約し、提供するのだから、情報の集約は、所定の期間内において集約されることが明らかであり、コンソリデータのコンピュータシステムは、所定の期間内に同一のサービス利用者に対して異なる請求業者から発行された明細請求情報を集めて、前記抽出手段が抽出した情報のうち、請求業者情報、金額情報及び原因情報とを同一のサービス利用者ごとにとりまとめて集約された明細請求情報を作成するとりまとめ手段を有しているといえる。
(6)コンソリデータは、サービス利用者毎に情報を集約し、提供し、各サービス利用者は、集約された明細請求情報を、CSP(Consumer Service Provider)を通して確認するのだから、コンソリデータのコンピュータシステムは、とりまとめ手段がとりまとめた集約された明細請求情報をそのサービス利用者が有するサービス利用者情報端末にネットワークを介して送信する送信手段を有しているといえる。
(7)サービス利用者が支払指示を金融機関(CSP)に出すと、ACH(Automated Clearing House)において、決済処理がなされ、ACHからは各Billerに支払処理がなされるのだから、各サービス利用者は、異なる請求業者の請求についてCSPに支払い指示ができるようになっていることは明らかである。

そうすると、上記引用例には、
「明細請求情報を発行する請求業者が有する情報端末である複数の請求業者情報端末に通信回線を介してつながっており、明細請求情報によって支払が請求されるサービス利用者が有する情報端末である複数のサービス利用者情報端末にネットワークを介してつながっているコンソリデータのコンピュータシステムであって、
前記複数の請求業者端末の各々から送られる明細請求情報を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した明細請求情報について、所定の期間内に同一のサービス利用者に対して異なる請求業者から発行された明細請求情報を集めてそれらの明細請求情報の支払をできるようそれらの明細請求情報に含まれる情報をとりまとめるとりまとめ手段と、
とりまとめ手段がとりまとめた情報をそのサービス利用者が有するサービス利用者情報端末にネットワークを介して送信する送信手段とから成り、
前記受信手段が受信した明細請求情報の中から、その明細請求情報における請求業者が誰であるかに関する情報である請求業者情報と、その明細請求情報におけるサービス利用者が誰であるかに関する情報であるサービス利用者情報と、その明細請求情報における請求金額の情報である金額情報と、その請求金額が対価として請求されるに至った原因に関する情報である原因情報とを、それぞれ抽出する抽出手段を備えており、
前記とりまとめ手段は、抽出手段が抽出した情報のうち、請求業者情報、金額情報及び原因情報とを前記同一のサービス利用者ごとにとりまとめて集約された明細請求情報を作成するものであって、前記送信手段はこの集約された明細請求情報を送信するものであり、
さらに、
前記集約された明細請求情報を受信した前記サービス利用者情報端末において、支払指示が入力されて送信されることを特徴とするコンソリデータのコンピュータシステム。」
の発明が記載されているといえる。

3.周知例
3-1.特開平7-249145号公報(以下、「周知例1」という。)
上記周知例1には、図面とともに下記の事項が記載されている。
(f)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、請求書に記入された請求金額を読み取り、現金もしくはカード引落し等で支払うようにした料金自動受付機に関し、特に、複数枚の請求書を一括して処理することを可能にした料金自動受付機に関する。」
(g)「【0013】ステップ21の判定の結果、一部の請求書に対する処理を取消す場合は「一部取消」キーを押下すると(ステップ25)、図6(b)のような表示が現れる。そこで、3枚目の請求書の処理を中止する場合には、タッチパネルにより3枚目を選択すると、図7に示すように、3枚目の金額欄が空欄になり、また請求金額合計欄、手数料表示欄には1枚目と2枚目の請求書から得られた金額が表示される(ステップ26)。取り消される取引がそれ以上なければ、ステップ22?24の処理を行なう。なお、この場合には、ステップ23で1枚目と2枚目の請求書に対する取引処理(スタックから請求書の取り出し、1枚目および2枚目の請求書への認証印字)を、ステップ24で受領書と3枚目の請求書とおつりの返却を行なう。ステップ21の判定の結果、全ての請求書に対する処理を取り消す場合には「取消」キーを押下する(ステップ27)ことにより全ての請求書および計数した現金を返却する(ステップ28の取消処理)。」

3-2.国際公開第2000/072245号パンフレット(国際公開日 平成12年11月30日)(特表2003-500762号公報参照)(以下、「周知例2」という。)
上記周知例2には、図面とともに下記の事項が記載されている。
「8.3.3 Listing Due Bills
The bill manager automatically sends a list of due bills to the user at the start of each week. The Due Bills List 528 is sent directly to the user's netpage printer. The Due Bills List 528 can alternatively be sent to the user's netpage e-mail account.
The user can request a list of due bills at any time by signing the Bill Manager main page 522 and pressing the button.
The Due Bill List 528, as shown in Figure 63, shows bills due within the next seven days. For each bill the list shows the due date, biller, amount due, minimum payment due, default payment method (if there is one), and the bill status.
The user can pay one or more bills immediately by checking the Pay checkbox next to the required bill lines, signing the form and pressing the button. The bills are paid using the default payment method specified in the biller setup. For each bill successfully paid a Bill Payment Receipt page 530 is printed, as shown in Figure 72.
If the user has not yet set up defaults for a biller, the due bill list is reprinted with one or more error messages at the top of the page.
The user can print a copy of a bill by pressing the button next to the required bill line. A copy of the original bill 527 537 is printed as shown in Figures 70 and 71.
The user can cancel a bill and remove it from the due bill list by pressing the button next to the required bill line. A Bill Cancel Confirmation page 526 (not shown) is printed, showing the details of the bill being cancelled. The user signs the form and presses the button. The Due Bill List 528 is reprinted with the cancelled bill removed.」
[仮訳]特表2003-500762号公報
「 【0367】
8.3.3 支払請求書のリスト化
請求書管理者は、各週の初めに支払請求書のリストをユーザに自動的に送る。支払請求書リスト528は、ユーザのネットページプリンタに直接送られる。一方、支払請求書リスト528は、ユーザのネットページ電子メール口座に送ることができる。
【0368】
ユーザは請求書管理者メインページ522に署名し、<支払請求書のリスト化>ボタンを押すことによって、何時でも支払請求書のリストを要求できる。
図63に示すように、支払請求書リスト528は、翌7日以内の支払予定の請求書を示す。各請求書に対して、リストは、支払期日、請求書発行者、請求額、最低支払額、(1つの場合)既定の支払方法、及び請求書状態を示している。
【0369】
ユーザは要求された請求書行の隣にある支払チェックボックスにチェックを入れ、フォームに署名して、<即時払>ボタンを押すことによって、即座に1つ以上の請求書を支払うことができる。請求書は、請求書発行者設定において指定された規定の支払方法を用いて支払われる。図72に示すように、支払が無事終了した各請求書に対して、請求書支払受領ページ530が出力される。」

上記周知例1及び2の記載より、とりまとめた複数の請求書についてその支払を一括してできるように、複数の請求書をリスト化し、請求リストに含まれる個々の請求書について、個々に支払指示を入力する欄を設けることは、本願の出願前周知の事項であると認められる。

4.対比・判断
本願発明(以下、「前者」という。)と引用例に記載された発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、
(1)後者の「明細請求情報」は、請求業者からコンソリデータにオンラインで送信するのだから、電子的に作成されたものであって、前者の「電子請求書」に相当することは明らかである。
(2)後者の「請求業者」は、前者の「請求人」に相当し、後者の「サービス利用者」は、請求書を受け取るのだから、前者の「被請求人」に相当する。
そうすると、後者の「請求業者情報端末」、「サービス利用者情報端末」は、前者の「請求人情報端末」、「被請求人情報端末」に、それぞれ相当し、また、後者の「請求業者情報」、「サービス利用者情報」は、前者の「請求人情報」、「被請求人情報」に、それぞれ相当する。
(3)後者の「コンソリデータのコンピュータシステム」は、「請求業者情報端末」と「サービス利用者情報端末」との双方につながっていて、「明細請求情報」を管理するのだから、前者の「電子請求管理システム」に相当する。
(4)前者の「支払いの意志」とは、「支払いの承認」に他ならなく、また、後者の「支払指示」も「支払いの承認」の意志を含むものであるから、両者は、「支払いの承認」という概念で共通する。
そうすると、前者の「支払いの意志有りが入力されて送信される」ことと、後者の「支払指示が入力されて送信される」こととは、「支払いの承認が入力されて送信される」こと、という概念で共通する。
(5)前者の「リスト化した請求書リスト」と、後者の「集約された明細請求情報」とは、「集約された明細請求情報」という概念で共通する。

そうすると、両者は、
「電子請求書を発行する請求人が有する情報端末である複数の請求人情報端末と、電子請求書によって支払が請求される被請求人が有する情報端末である複数の被請求人情報端末との双方に、つながっている電子請求書管理システムであって、
前記複数の請求人端末の各々から送られる電子請求書を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した電子請求書について、所定の期間内に同一の被請求人に対して異なる請求人から発行された電子請求書を集めてそれらの電子請求書の支払をできるようそれらの電子請求書に含まれる情報をとりまとめるとりまとめ手段と、
とりまとめ手段がとりまとめた情報をその被請求人が有する被請求人情報端末にネットワークを介して送信する送信手段とから成り、
前記受信手段が受信した電子請求書の中から、その電子請求書における請求人が誰であるかに関する情報である請求人情報と、その電子請求書における被請求人が誰であるかに関する情報である被請求人情報と、その電子請求書における請求金額の情報である金額情報と、その請求金額が対価として請求されるに至った原因に関する情報である原因情報とを、それぞれ抽出する抽出手段を備えており、
前記とりまとめ手段は、抽出手段が抽出した情報のうち、請求人情報、金額情報及び原因情報とを前記同一の被請求人ごとにとりまとめて集約された明細請求情報を作成するものであって、前記送信手段はこの集約された明細請求情報を送信するものであり、
前記集約された明細請求情報を受信した前記被請求人端末において、支払いの承認が入力されて送信されることを特徴とする電子請求書管理システム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
前者の電子請求書管理システムは、電子請求書を発行する請求人が有する情報端末である複数の請求人情報端末と、電子請求書によって支払が請求される被請求人が有する情報端末である複数の被請求人情報端末との双方に、ネットワークを介してつながっているのに対して、後者の電子請求書管理システムは、電子請求書を発行する請求人が有する情報端末である複数の請求人情報端末とは通信回線を介してつながっており、電子請求書によって支払が請求される被請求人が有する情報端末である複数の被請求人情報端末とはネットワークを介してつながっている点。
[相違点2]
前者のとりまとめ手段は、受信手段が受信した電子請求書について、所定の期間内に同一の被請求人に対して異なる請求人から発行された電子請求書を集めてそれらの電子請求書の支払を一括してできるようにそれらの電子請求書に含まれる情報をとりまとめるものであるのに対して、後者のとりまとめ手段は、受信手段が受信した電子請求書について、所定の期間内に同一の被請求人に対して異なる請求人から発行された電子請求書を集めてそれらの電子請求書の支払をできるようにそれらの電子請求書に含まれる情報をとりまとめるものであるが、それらの電子請求書の支払を一括してできるようになっているか、不明な点。
[相違点3]
前者の送信手段は、とりまとめ手段がとりまとめた情報を所定の時期にその被請求人が有する被請求人情報端末にネットワークを介して送信しているのに対して、後者の送信手段は、とりまとめ手段がとりまとめた情報をその被請求人が有する被請求人情報端末にネットワークを介して送信しているが、その送信の時期は、不明な点。
[相違点4]
前者では、とりまとめ手段は、抽出手段が抽出した情報のうち、請求人情報、金額情報及び原因情報とを同一の被請求人ごとにとりまとめてリスト化した請求リストを作成するものであって、送信手段はこの請求リストを送信するものであるのに対して、後者では、とりまとめ手段は、抽出手段が抽出した情報のうち、請求人情報、金額情報及び原因情報とを同一の被請求人ごとにとりまとめて集約された明細書請求情報を作成するものであるが、リスト化した請求リストを作成するのか、不明であり、送信手段はこの請求リストを送信するか、不明な点。
[相違点5]
前者のとりまとめ手段は、請求リストにある請求金額の合計を算出してその請求リストに表示されるようにするものであるのに対して、後者のとりまとめ手段は、この点が不明な点。
[相違点6]
前者では、請求人に自分が発行した電子請求書の支払い状況についてモニタさせる支払い状況モニタ手段が設けられているのに対して、後者では、この点が不明な点。
[相違点7]
前者では、請求リストは、請求リストに含まれる個々の電子請求書について、個々に支払いの意志の有無を入力する欄を有するのに対して、後者では、この点が不明な点。
[相違点8]
前者では、支払い状況モニタ手段は、前記請求リストを受信した被請求人端末において、支払いの意志の有無の欄に意志有りが入力されると、その電子請求書を発行した請求人が有する請求人情報端末に、その支払い意志有りの旨のデータを送信するのに対して、後者では、そうでない点。

上記相違点について、以下に検討する。
[相違点1]について
コンピュータ間をネットワークを介してつなげることは周知の事項であるから、後者の電子請求書管理システムと請求人情報端末とを通信回線を介してつなげる代わりに、ネットワークを介してつなげるようにすることは、当業者であれば容易に想到することができたものと認められる。
[相違点2]について
複数の請求書をとりまとめて一括して支払いできるようにすることは、周知の事項(周知例1及び2参照)であるから、後者のとりまとめ手段においても、受信手段が受信した電子請求書について、所定の期間内に同一の被請求人に対して異なる請求人から発行された電子請求書を集めてそれらの支払いを一括してできるように、電子請求書に含まれる情報をとりまとめるようにすることは、当業者であれば容易に想到することができたものと認められる。
[相違点3]について
送信元から送信先に請求に係る情報を送信する場合に、所定の時期に送信元から送信先に送信することは、周知の事項であるから、とりまとめ手段がとりまとめた情報を所定の時期に被請求人に送信するようにすることは、当業者であれば容易に想到することができたものと認められる。
[相違点4]について
とりまとめた複数の請求書をリスト化することは、周知の事項(周知例1及び2参照)であるから、抽出手段が抽出した情報のうち、請求人情報、金額情報及び原因情報とを同一の被請求人ごとにとりまとめてリスト化するようにすることは、当業者であれば容易に想到することができたものと認められる。
[相違点5]について
リスト化された数値データについてその合計を算出してリストに表示させることは、周知の事項であるから、とりまとめ手段が、請求リストにある請求金額の合計を算出してその請求リストに表示させるようにすることは、当
業者であれば容易に想到することができたものと認められる。
[相違点6]について
請求人に自分が発行した電子請求書の支払い状況についてモニタさせる支払い状況モニタ手段を設けて、支払い状況を送信することは、周知の事項(例えば、国際公開第99/05628号パンフレットの26?27頁の請求項10([仮訳]特表2001-511567号公報の3?4頁の請求項10)等参照)である。
したがって、[相違点6]で挙げた前者のような構成を得ることは、当業者であれば容易に想到することができたものと認められる。
[相違点7]について
リスト化された個々の請求書について、個々に支払いの指示を入力する欄を設けることは、周知の事項(周知例1及び2参照)であり、また、個々の請求書について、その内容を確認し、支払いの意志がある場合に、支払いをすることは、日常普通に行われていることである。
そして、支払い処理の過程をどのように設計するかは、取り決めにすぎず、支払いの過程を「支払い指示」にするか、「支払いの意志」にするかは、当業者が適宜設定することができる設計的事項にすぎない。
したがって、[相違点7]で挙げた前者のような構成を得ることは、当業者であれば容易に想到することができたものと認められる。
[相違点8]について
リスト化された個々の請求書について、個々に支払いの意志を入力する欄を設けることは、[相違点7]について述べたように容易であり、支払い状況モニタ手段を設けて、請求人にその状況を送信することが周知の事項であれば、「支払い状況モニタ手段は、請求リストを受信した被請求人端末において、支払いの意志有りが入力されると、その電子請求書を発行した請求人が有する請求人情報端末に、その支払い意志有りの旨のデータを送信する」ことは、直ちに導出されるものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例に記載された発明、及び周知の事項に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
したがって,本願発明は,引用例に記載された発明、及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-08-23 
結審通知日 2007-08-28 
審決日 2007-09-10 
出願番号 特願2001-77308(P2001-77308)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 丹治 彰  
特許庁審判長 小林 信雄
特許庁審判官 久保田 健
久保田 昌晴
発明の名称 電子請求書管理システム  
代理人 保立 浩一  

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