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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1185179
審判番号 不服2006-4310  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-09 
確定日 2008-09-24 
事件の表示 特願2000-326787「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月 5日出願公開、特開2001-149585〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年8月25日に出願した特願平10-255963号の一部を平成12年10月26日に新たな特許出願としたものであって、平成18年2月7日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年3月9日付けで本件審判請求がされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成18年3月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】 複数の図柄を可変表示可能な図柄表示部と、図柄始動口と、大当たり判定手段と、この大当たり判定手段の値を複数個記憶可能な判定メモリを有し、
前記図柄始動口への入賞に伴って、大当たり判定手段の値を判定メモリに記憶し、この記憶による図柄変動開始信号によって、図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に図柄が確定表示する可変表示ゲームを行なう遊技機であって、
可変表示ゲーム開始時に、判定メモリには少なくとも2個以上の可変表示ゲームを行う記憶があり、且つ、それらの判定メモリには少なくとも2個以上の大当たりとなる記憶があるときには、前記2個以上の可変表示ゲームを1回の可変表示ゲームで処理すると共に、他の大当たりを判定メモリに記憶し、今回の大当たりが終了後に、前記判定メモリに前記他の大当たりとなる記憶を含む少なくとも1個以上の記憶があるときには、1個以上の可変表示ゲームを1回の可変表示ゲームで前記他の大当たり処理を実施することを特徴とする遊技機。
【請求項2】 複数の図柄を可変表示可能な図柄表示部と、図柄始動口と、大当たり判定手段と、この大当たり判定手段の値を複数個記憶可能な判定メモリを有し、
前記図柄始動口への入賞に伴って、大当たり判定手段の値を判定メモリに記憶し、この記憶による図柄変動開始信号によって、図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に図柄が確定表示する可変表示ゲームを行なう遊技機であって、
可変表示ゲーム開始時に、判定メモリには少なくとも2個以上の可変表示ゲームを行う記憶があるときには、前記2個以上の可変表示ゲームを1回の可変表示ゲームで処理すると共に、その可変表示ゲームにおいて、少なくとも判定メモリに記憶された個数に対応する数の図柄を図柄表示部に表示して処理を行うことを特徴とする遊技機。
【請求項3】 請求項2における可変表示ゲームにおいて、図柄表示部に競争シーンを表示し、その競争シーンに、判定メモリに記憶された個数に対応する図柄と対象図柄とを表示して競争させることを特徴とする遊技」
と補正された。

そして、本件補正前の特許請求の範囲は、平成17年7月27日付け手続補正書に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】 複数の図柄を可変表示可能な図柄表示部と、図柄始動口と、大当たり判定手段と、この大当たり判定手段の値を複数個記憶可能な判定メモリを有し、
前記図柄始動口への入賞に伴って、大当たり判定手段の値を判定メモリに記憶し、この記憶による図柄変動開始信号によって、図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に図柄が確定表示する可変表示ゲームを行なう遊技機であって、
可変表示ゲーム開始時に、判定メモリに記憶の少なくとも2個以上の大当たりとなる記憶があるときには1回の可変表示ゲームで処理すると共に、他の大当たりを記憶し、今回の大当たりが終了後に、大当たり処理を実施することを特徴とする遊技機。
【請求項2】 複数の図柄を可変表示可能な図柄表示部と、図柄始動口と、大当たり判定手段と、この大当たり判定手段の値を複数個記憶可能な判定メモリを有し、
前記図柄始動口への入賞に伴って、大当たり判定手段の値を判定メモリに記憶し、この記憶による図柄変動開始信号によって、図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に図柄が確定表示する可変表示ゲームを行なう遊技機であって、
可変表示ゲーム開始時に、判定メモリに記憶の少なくとも2個以上の可変表示ゲームとなる記憶があるときには、1回の可変表示ゲームで処理すると共に、図柄表示部に表示する図柄における大当たりとなる確率を前記判定メモリに記憶の数に対応して選定することを特徴とする遊技機。
【請求項3】 複数の図柄を可変表示可能な図柄表示部と、図柄始動口と、大当たり判定手段と、この大当たり判定手段の値を複数個記憶可能な判定メモリを有し、
前記図柄始動口への入賞に伴って、大当たり判定手段の値を判定メモリに記憶し、この記憶による図柄変動開始信号によって、図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に図柄が確定表示する可変表示ゲームを行なう遊技機であって、
可変表示ゲーム開始時に、判定メモリに記憶の少なくとも2個以上の可変表示ゲームとなる記憶があるときには、1回の可変表示ゲームで処理すると共に、その可変ゲームにおいて、少なくとも判定メモリに記憶された個数に対応する数の図柄を図柄表示部に表示して処理を行うことを特徴とする遊技機。
【請求項4】 複数の図柄を可変表示可能な図柄表示部と、図柄始動口と、大当たり判定手段と、この大当たり判定手段の値を複数個記憶可能な判定メモリを有し、
前記図柄始動口への入賞に伴って、大当たり判定手段の値を判定メモリに記憶し、この記憶による図柄変動開始信号によって、図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に図柄が確定表示する可変表示ゲームを行なう遊技機であって、
可変表示ゲーム開始時に、判定メモリに記憶の少なくとも2個以上の可変表示ゲームとなる記憶があるときには1回の可変表示ゲームで処理すると共に、図柄表示部に表示する競争シーンにおいて、対象図柄に対して前記判定メモリに記憶された個数に対応する図柄とで競争させることを特徴とする遊技機。」

すなわち、本件補正は、
補正前の請求項1を限定的に減縮して請求項1とし、補正前の請求項2を削除し、補正前の請求項3を限定的に減縮するとともに請求項2に繰り上げ、補正前の請求項4を限定的に減縮するとともに請求項2の従属項とするものであるので、平成18年改正前特許法17条の第4項第1号及び第2号の請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項2に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)検討する。
補正発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項2】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「複数の図柄を可変表示可能な図柄表示部と、図柄始動口と、大当たり判定手段と、この大当たり判定手段の値を複数個記憶可能な判定メモリを有し、
前記図柄始動口への入賞に伴って、大当たり判定手段の値を判定メモリに記憶し、この記憶による図柄変動開始信号によって、図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に図柄が確定表示する可変表示ゲームを行なう遊技機であって、
可変表示ゲーム開始時に、判定メモリには少なくとも2個以上の可変表示ゲームを行う記憶があるときには、前記2個以上の可変表示ゲームを1回の可変表示ゲームで処理すると共に、その可変表示ゲームにおいて、少なくとも判定メモリに記憶された個数に対応する数の図柄を図柄表示部に表示して処理を行うことを特徴とする遊技機。」

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-38294号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、
【0005】始動口への入賞に基づき乱数値を抽出し、その抽出された乱数値に基づいて大当り(特別遊技)を判定し、記憶分の始動入賞も同様に乱数値として記憶して、その記憶分の可変表示ゲームを行う際に、記憶された乱数値を判定することにより大当り(特別遊技)の発生を決定していた。
【0014】・・・遊技の所定期間中とは、遊技中の任意に定めうる期間で、例えば、可変表示ゲーム中、特別遊技中などである。遊技球の特定状態とは遊技球が始動口に入賞したり、始動用のスルーチャッカーを通過する状態などである。特別遊技の発生確率を変化させるように停止識別情報態様を変化させるとは、例えば、遊技球の特定状態の検出数に応じて、大当りの発生確率を高める方向に停止識別情報を変化させるなどである。可変表示ゲーム態様を変化させるとは、特別遊技を発生させる可変表示自体の態様や停止識別情報態様の数を増やし、或いは停止した複数の識別情報の特別遊技を発生させる組合せラインを変化させ、或いは変動する識別情報の数を変化させたりして、特別遊技を発生させる態様を増やすなどして、特別遊技の発生確率に変化を与えるようにすることである。
【0022】請求項4記載の発明は、請求項1又は2記載の遊技機において、所定期間中における前記特定状態の検出数は、前記可変表示ゲーム中および特別遊技中に前記特定状態の検出があった場合に前記可変表示ゲームの開始数を一時記憶する記憶数であり、前記記憶数に応じて前記可変表示ゲーム態様を変化させる構成とされている。
【0024】請求項5記載の発明は、請求項1,2,3又は4記載の遊技機において、前記遊技球の特定状態の検出に基づき前記特別遊技の発生をランダムに決定する乱数値を抽出し、前記記憶数分の可変表示ゲームを一度に行うことにより、該一度に行われた可変表示ゲームにおいて前記記憶数分の乱数値の判定を行い、該判定結果に基づき前記特別遊技の発生を決定する構成とされている。
【0025】この請求項5記載の発明によれば、特に、所定の遊技期間中(可変表示ゲーム中、特別遊技中など)に検出された遊技球の特定状態の検出の記憶数分だけの可変表示ゲームが一度に行われるとともに、特定状態検出時に抽出された乱数値が特別遊技を発生させる乱数値か否かが判定されて特別遊技の発生が決定されるので、その特定状態の検出記憶数分だけ特別遊技の発生確率がアップされ、それによって、遊技上の興趣が増加される。
【0032】この遊技領域3には、特別図柄(特図)の可変表示部4aを有する特別図柄(特図)可変表示装置4、開閉扉5aにより開閉される大入賞口5bを有する特別変動入賞装置5、左右一対の開閉部材6a,6aと普通図柄(普図)可変表示装置6bを有し特別図柄(特図)始動口を兼ねた普通変動入賞装置6、スルーチャッカー形式の普通図柄(普図)始動口7,7、一般入賞口8a,8a,8a、風車と呼ばれる打球方向変換部材8b,8b、サイドランプ8c,8c、アウト穴9などが配設されている。
【0033】そして、普通変動入賞装置6内の入賞流路には特図始動スイッチ6dが、普通図柄始動口7,7内の通過流路には普通図柄(普図)始動スイッチ7a,7aが、それぞれ配設されている。
【0040】・・・その特別図柄の可変表示ゲームが、モード切換スイッチ213の切換え操作によりスペシャルゲームモードで行われていれば、その特別図柄可変表示ゲーム開始時の始動記憶数に応じて有効組合せラインが増える。つまり、始動記憶数が「2」であれば中段横方向の組合せラインと上段横方向の組合せラインと下段横方向の組合せラインの3つの組合せラインが有効組合せラインとなり、始動記憶数が「3」であれば中段横方向の組合せラインと上段横方向の組合せラインと下段横方向の組合せラインと右下がり斜め方向組合せラインの4つの組合せラインが有効組合せラインとなる。
【0044】特別図柄の可変表示ゲーム中、或いは特別遊技中、普通変動入賞装置6に、さらに遊技球が入賞したときには、特図始動記憶表示器4cが点灯して例えば4個まで記憶され、特別図柄の可変表示ゲームの終了後、或いは特別遊技の終了後にその記憶に基づいて特別図柄の可変表示ゲームが順次行われる。
【0065】このように構成されていて、役物用IC11が、普図始動スイッチ7aや特図始動スイッチ6dからの検出信号に基づき、ROM12中の遊技制御プログラムに従って、普通図柄可変表示装置6bに普通図柄の可変表示ゲームを行わせたり、表示制御回路40Aを介して特別図柄可変表示装置4に特別図柄の可変表示ゲームを行わせたりする。
【0126】この発明の実施の形態に係るパチンコ遊技機は、上記のように構成されているので、特別図柄の可変表示ゲーム中或いは特別遊技時における普通変動入賞装置(特図始動口)6への遊技球の検出数の記憶に応じて特別遊技を発生させる特別図柄可変表示ゲームの停止結果の有効組合せラインの数が変化されてその検出記憶数分だけの特別図柄可変表示ゲームが1度にまとめて行われ、その分、特別遊技発生の可能性が変化して、可変表示ゲームの単調さが解消されて遊技上の興趣が増す。
との各記載がある。
摘記した【0014】の記載から、引用文献1において、「遊技球の特定状態」の具体例は、「遊技球の普通変動入賞装置6への入賞」である。したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「特別図柄(特図)の可変表示部4aを有する特別図柄(特図)可変表示装置4、特別図柄(特図)始動口を兼ねた普通変動入賞装置6が配設され、
遊技球の普通変動入賞装置6への入賞の検出に基づき特別遊技の発生をランダムに決定する乱数値を抽出し、所定の遊技期間中に検出された遊技球の普通変動入賞装置6への入賞の記憶数分の可変表示ゲームを一度に行うことにより、該一度に行われた可変表示ゲームにおいて前記記憶数分の乱数値の判定を行い、該判定結果に基づき前記特別遊技の発生を決定する構成とされ、
普通変動入賞装置6内の入賞流路には特図始動スイッチ6dが配設され、特図始動スイッチ6dからの検出信号に基づき、ROM12中の遊技制御プログラムに従って、可変表示ゲームを行わせ、
特別図柄の可変表示ゲーム中、或いは特別遊技中、普通変動入賞装置6に、さらに遊技球が入賞したときには、例えば4個まで記憶され、その記憶に基づいて特別図柄の可変表示ゲームが順次行われるパチンコ遊技機であって、
前記記憶数に応じて、特別遊技を発生させる特別図柄可変表示ゲームの停止結果の有効組合せラインの数が変化されて、その記憶数分だけの特別図柄可変表示ゲームが1度にまとめて行われるパチンコ遊技機。」

3.補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
引用発明の「特別図柄(特図)の可変表示部4aを有する特別図柄(特図)可変表示装置4」は、補正発明の「複数の図柄を可変表示可能な図柄表示部」に相当し、以下同様に、
「特別図柄(特図)始動口を兼ねた普通変動入賞装置6」は「図柄始動口」に、「特別図柄」は「図柄」に、「パチンコ遊技機」は「遊技機」に、それぞれ相当し、
さらに、引用文献1全体の記載等からみて、以下のことが言える。
a.引用発明において、「乱数値の判定を行い、判定結果に基づき特別遊技(大当り)の発生を決定する」ためには、補正発明の「大当たり判定手段」に相当する構成を備えていなければならないことは明らかである。そして、該「乱数値」は「大当たり判定手段の値」に他ならず、引用発明は、所定の遊技期間中に検出された遊技球の普通変動入賞装置への入賞の記憶数分の乱数値の判定を行うことから、該「乱数値」を複数個記憶可能であり、補正発明における「大当たり判定手段の値を複数個記憶可能な判定メモリ」に相当する構成を有するものと認められる。

b.引用発明における「特図始動スイッチ6dからの検出信号」は「普通変動入賞装置6」(補正発明の「図柄始動口」に相当)への入賞により発生されることは明白である。また、引用発明における「普通変動入賞装置6に、さらに遊技球が入賞したときには、例えば4個まで記憶され」るのは「乱数値」であることが、摘記した【0005】の記載等から把握できる。更に、引用発明における「可変表示ゲーム」が、図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に図柄が確定表示するものであることは自明の事項であるから、引用発明における「普通変動入賞装置6に、さらに遊技球が入賞したときには、例えば4個まで記憶され、その記憶に基づいて特別図柄の可変表示ゲームが順次行われる」ことと、補正発明における「図柄始動口への入賞に伴って、大当たり判定手段の値を判定メモリに記憶し、この記憶による図柄変動開始信号によって、図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に図柄が確定表示する可変表示ゲームを行なう」こととは実質的に同じことであると言える。

c.摘記した【0040】の記載から、2個以上の可変表示ゲームを行う記憶があるときには、個数に対応した有効組合せラインの数としていることが明らかであるから、引用発明の「前記記憶数に応じて、特別遊技を発生させる特別図柄可変表示ゲームの停止結果の有効組合せラインの数が変化されて、その記憶数分だけの特別図柄可変表示ゲームが1度にまとめて行われる」ことと、補正発明における「可変表示ゲーム開始時に、判定メモリには少なくとも2個以上の可変表示ゲームを行う記憶があるときには、前記2個以上の可変表示ゲームを1回の可変表示ゲームで処理する」こととは実質的に同じことであると言える。

以上を総合勘案すると、補正発明と引用発明とは、
「複数の図柄を可変表示可能な図柄表示部と、図柄始動口と、大当たり判定手段と、この大当たり判定手段の値を複数個記憶可能な判定メモリを有し、
前記図柄始動口への入賞に伴って、大当たり判定手段の値を判定メモリに記憶し、この記憶による図柄変動開始信号によって、図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に図柄が確定表示する可変表示ゲームを行なう遊技機であって、
可変表示ゲーム開始時に、判定メモリには少なくとも2個以上の可変表示ゲームを行う記憶があるときには、前記2個以上の可変表示ゲームを1回の可変表示ゲームで処理するパチンコ遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
記憶数分の可変表示ゲームを1回の可変表示ゲームで処理するにあたり、補正発明が「少なくとも判定メモリに記憶された個数に対応する数の図柄を図柄表示部に表示して処理を行う」のに対し、引用発明では、可変表示ゲームの個数に応じて有効組合せラインの数を変化させて、対応した数の「図柄の組合せ」を表示するものの、対応した数の図柄を表示するものとはいえない点。

4.相違点の判断及び補正発明の独立特許要件の判断
(1)相違点の判断
パチンコ遊技機において、始動口に入賞した記憶の個数に対応する数の図柄を図柄表示部に表示して可変表示ゲーム処理を行う点は、例えば特開平8-164251号公報(段落【0055】、【0060】-【0061】、図1及び図6参照)、特開平9-24141号公報(段落【0047】-【0048】、【0079】、図22及び図23参照)に記載されている。また、パチンコ遊技機に密接に関連する技術分野に属するスロットマシンにおいても、可変表示ゲームを行う賭数に対応する数の図柄を表示させる点が、国際公開第95/17932号公報(第16頁14?18行及び図2参照)に記載されている如く、遊技機において、2個以上の可変表示ゲームを1回の可変表示ゲームで処理する場合に、可変表示ゲームの個数に応じた数の図柄を表示させる点は、本願出願時における周知技術である。
そして、引用発明において、2個以上の可変表示ゲームを1回の可変表示ゲームで処理する場合に「可変表示ゲームの個数に応じて有効組合せラインの数を変化させて、対応した数の「図柄の組合せ」を表示する」ことに換えて、上記周知技術を採用することに格別の困難性は見い出すことはできないので、相違点に係る補正発明の構成は、パチンコ遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に想到し得ることである。
なお、請求人は「引用文献1に開示の発明は、大当たりの確率を判定メモリに記憶の数に対応するものであるが、本願の表示は、大当たりの確率を変更するのではなく、大当たりとなる可能性が高くなる旨の表示であり、その本質は相違する。」(平成18年3月9日付け審判請求書6頁17?19行)と主張するが、摘記した引用文献1の【0040】には「特別図柄可変表示ゲーム開始時の始動記憶数に応じて有効組合せラインが増える。」と記載され、引用発明においても、有効組合わせラインが増えることにより大当たりとなる可能性が高くなる旨を表示可能と認められるため、上記主張を採用することは出来ない。

(2)補正発明の独立特許要件の判断
以上述べたとおり、相違点に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これらの構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

[補正の却下の決定のむすび]
補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反しており、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年7月27日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項3】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「複数の図柄を可変表示可能な図柄表示部と、図柄始動口と、大当たり判定手段と、この大当たり判定手段の値を複数個記憶可能な判定メモリを有し、
前記図柄始動口への入賞に伴って、大当たり判定手段の値を判定メモリに記憶し、この記憶による図柄変動開始信号によって、図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に図柄が確定表示する可変表示ゲームを行なう遊技機であって、
可変表示ゲーム開始時に、判定メモリに記憶の少なくとも2個以上の可変表示ゲームとなる記憶があるときには、1回の可変表示ゲームで処理すると共に、その可変ゲームにおいて、少なくとも判定メモリに記憶された個数に対応する数の図柄を図柄表示部に表示して処理を行うことを特徴とする遊技機。」

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及びその記載事項は、上記「第2[理由]2」に記載したとおりである。

3.本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
「第2[理由]3」で述べたことを踏まえると、本願発明と引用発明は、
「複数の図柄を可変表示可能な図柄表示部と、図柄始動口と、大当たり判定手段と、この大当たり判定手段の値を複数個記憶可能な判定メモリを有し、
前記図柄始動口への入賞に伴って、大当たり判定手段の値を判定メモリに記憶し、この記憶による図柄変動開始信号によって、図柄表示部の図柄が変動を開始し、所定時間後に図柄が確定表示する可変表示ゲームを行なう遊技機であって、
可変表示ゲーム開始時に、判定メモリに記憶の少なくとも2個以上の可変表示ゲームとなる記憶があるときには、1回の可変表示ゲームで処理するパチンコ遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
記憶数分の可変表示ゲームを1回の可変表示ゲームで処理するにあたり、本願発明が「少なくとも判定メモリに記憶された個数に対応する数の図柄を図柄表示部に表示して処理を行う」のに対し、引用発明では、個数に応じて有効組合せラインの数を変化させて、対応した数の「図柄の組合せ」を表示するものの、対応した数の図柄を表示するものではない点。

4.本願発明の進歩性の判断
上記<相違点>について検討するに、上記「第2[理由]4」で検討したとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されるべきものであり、本願発明が特許を受けることができないから、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-14 
結審通知日 2008-07-22 
審決日 2008-08-04 
出願番号 特願2000-326787(P2000-326787)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 太田 恒明  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 森 雅之
河本 明彦
発明の名称 遊技機  
代理人 犬飼 達彦  

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