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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A63H
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A63H
管理番号 1185197
審判番号 不服2006-14195  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-05 
確定日 2008-10-02 
事件の表示 特願2002-353174「組ブロック具」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月 2日出願公開、特開2004-181026〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年12月5日に出願された特願2002-353174号であって、平成17年2月23日付け拒絶理由通知に対して、同年4月27日付けで手続補正がされ、同年10月31日付け拒絶理由通知に対して、平成18年1月10日付けで手続補正がされたが、同年5月30日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年7月5日付けで審判請求がされ、平成19年12月21日付けで拒絶理由通知がされたものである。

第2 本願について
(1)本願発明
本願の請求項1乃至4に係る発明は、組ブロック具に関するものであり、平成18年1月10日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1乃至4に係る発明は以下のとおりのものである。

「【請求項1】
複数のブロック単体を係合により結合させて構成され特定の意味を持つ対象物が表出される組ブロック具であって、
上記各ブロック単体を、上記対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる文字列の各文字に夫々対応して設け、
上記対象物としてその文字列が4以上の文字になるものにし、
該各ブロック単体の輪郭形状に、対応する文字の形状を表出したことを特徴とする組ブロック具。
【請求項2】
複数のブロック単体を係合により結合させて構成され特定の意味を持つ対象物が表出される組ブロック具であって、
上記対象物にこれに関連する付帯物を付加して構成し、該付帯物の形状を表出したブロック単体を含め、
上記各ブロック単体を、上記対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる文字列の各文字に夫々対応して設け、
上記対象物としてその文字列が4以上の文字になるものにし、
該各ブロック単体の輪郭形状に、対応する文字の形状を表出したことを特徴とする組ブロック具。
【請求項3】
上記対象物としてその文字列が6以上の文字になるものにしたことを特徴とする請求項1または2記載の組ブロック具。
【請求項4】
上記各ブロック単体を、木製にし、互いに係合されて組み立てられ、係合を解除することにより分解されるように、文字の輪郭形状を構成する凸部や凹部あるいは孔を適宜の形状や大きさにして形成したことを特徴とする請求項1,2または3記載の組ブロック具。」

(2)当審での拒絶理由通知

当審において通知した拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

「2.拒絶理由(第36条)
本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。

(1)本願の請求項1乃至4には、「係合により結合させて」「特定の意味を持つ対象物」を構成する「ブロック単体」であって、「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」、「輪郭形状に、対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」が記載されている。
しかし、発明の詳細な説明には、実施例として、「特定の意味を持つ対象物」がうさぎ或いは鳥である場合において、「係合により結合させて」「特定の意味を持つ対象物」を構成する「ブロック単体」であって、「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」、「輪郭形状に、対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」が記載されているのみで、「特定の意味を持つ対象物」がうさぎ或いは鳥以外の一般の対象物である場合において、「係合により結合させて」「特定の意味を持つ対象物」を構成する「ブロック単体」であって、「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」、「輪郭形状に、対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」をどのように構成するのかについては何等記載されていない。
そこで、本願出願時の技術常識に照らして、発明の詳細な説明に開示された内容から、本願の請求項1乃至4に係る発明における、「係合により結合させて」「特定の意味を持つ対象物」を構成する「ブロック単体」であって、「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」、「輪郭形状に、対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」が具体的にどのようなものか理解することができるか検討する。

請求人は、平成18年7月5日付け審判請求書を補正の対象とする同年9月12日付け補正書の「(4-1-3)「対象物の部分とブロック単体との対応付け」の一般化について」の「(b)本願発明の性質と論点(問題)の所在」において、「ところで、本願発明においては、(A)対象物の部分と文字との対応付けをどのようにするか、また、(B)係合部をどのように形成するかについては、一定の規則性がなく、設計上はやや程度の高い試行錯誤が必要であり、この点は否めない。本願発明は、設計上、(A)(B)について同時にやや程度の高い試行錯誤をしなければならない性質の発明ということができる。従って、論点(問題)の所在は、設計上、(A)(B)についてやや程度の高い試行錯誤をしなければならない性質の発明における一般化にあるものと考える。」と主張し、「(4-2)論点についての主張」の「(4-2-1)本願発明における当業者のレベルの高さと一般化の判断」において、「本願発明のような性質を有した技術としては、例えば、添付資料1にあるように、「箱根組み木細工」がある。この「箱根組み木細工」においては、木製の組ブロックを、職人が種々創作しており、例えば、「象」,「ライオン」,「猿」,「河馬」に見られるように(添付資料1の第89頁)、創作者は、設計上、上記の(A)(B)について試行錯誤して創作しており、その程度も相当高いものと考えられる。このような当業者であれば、経験則ないし技術常識に照らして、(A)(B)についてどのように構成するかは十分推認できるのであり、本願発明の構成から、本願発明に係る具体的な種々の組みブロック具を創作できるはずである。従って、本願発明は、この技術に関しては一般化できるものと思料する。」と主張している。しかし、上記添付資料1における「箱根組み木細工」の各ブロックは、「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」、「輪郭形状に、対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」ではないので、当業者といえども、上記添付資料1に記載された事項から、上記本願発明における「(A)対象物の部分と文字との対応付けをどのようにするか」の点について実施することができる程度に理解できるものではない。また、添付資料2乃至4にも、「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」、「輪郭形状に、対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」は記載されていないので、上記添付資料2乃至4に記載された事項から、上記本願発明における「(A)対象物の部分と文字との対応付けをどのようにするか」の点について実施することができる程度に理解できるものではない。したがって、本願出願時の技術常識に照らしてみても、発明の詳細な説明に開示された内容から、本願の請求項1乃至4における、「係合により結合させて」「特定の意味を持つ対象物」を構成する「ブロック単体」であって、「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」、「輪郭形状に、対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」が具体的にどのようなものか理解することができるとはいえない。

したがって、本願の請求項1乃至4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

(2)発明の詳細な説明には、実施例として、「特定の意味を持つ対象物」がうさぎ或いは鳥である場合において、「係合により結合させて」「特定の意味を持つ対象物」を構成する「ブロック単体」であって、「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」、「輪郭形状に、対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」が記載されているが、「特定の意味を持つ対象物」がうさぎ或いは鳥以外の一般の対象物である場合において、「係合により結合させて」「特定の意味を持つ対象物」を構成する「ブロック単体」であって、「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」、「輪郭形状に、対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」をどのように構成するのかについては何等記載されていない。また、上記(1)において検討したように、本願出願時の技術常識に照らしてみても、発明の詳細な説明に開示された内容から、本願の請求項1乃至4における、「係合により結合させて」「特定の意味を持つ対象物」を構成する「ブロック単体」であって、「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」、「輪郭形状に、対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」が具体的にどのようなものか理解することができないので、本願明細書の記載からは、「特定の意味を持つ対象物」がうさぎ或いは鳥以外の一般の対象物である場合において、「係合により結合させて」「特定の意味を持つ対象物」を構成する「ブロック単体」であって、「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」、「輪郭形状に、対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」をどのように構成するのかについては、当業者といえども、実施することができない。

なお、請求人は、平成18年7月5日付け審判請求書を補正の対象とする同年9月12日付け補正書の「(4-2-3)発明者(=当業者)の実際の実施能力からの一般化の判断」において、「添付資料5に示されるように、本願発明者は、審査官が例に挙げた「PENGUIN」を、試行錯誤したが、作成できた。また、面接審査において、その他の作成例をいくつか提示した。」と主張しているが、添付資料5に記載された「PENGUIN」の例を参照しても、添付資料5には、「特定の意味を持つ対象物」がうさぎ、鳥、或いは「PENGUIN」以外の一般の対象物である場合において、「係合により結合させて」「特定の意味を持つ対象物」を構成する「ブロック単体」であって、「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」、「輪郭形状に、対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」をどのように構成するのかについては何等記載されておらず、本願出願時の技術常識に照らしてみても、「係合により結合させて」「特定の意味を持つ対象物」を構成する「ブロック単体」であって、「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」、「輪郭形状に、対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」をどのように構成するのかについては、当業者に過度に試行錯誤を強いるものであり、実施可能要件を満足しているとはいえない。

したがって、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1乃至4に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはなっていない。」

第3 請求人の主張

上記拒絶の理由に対する請求人の主張の概要は以下のとおりである。

(1)2.拒絶理由(第36条)(1)に対して

(i)「対象物の名称の綴りから構成されるアルファベット」を理解できないものは当業者にはいないし、当業者でなくても理解できる。また、これら「文字の形状」も、これを理解できないものは当業者にはいないし、当業者でなくても理解できる。更に、「ブロック単体」の一般的概念も、これを理解できないものは当業者にはいないし、当業者でなくても理解できる。そして、この「文字の形状」を、ブロック単体の「輪郭形状」に「表出する」点についても、ブロックというものには、輪郭があって、それが、「文字の形状」をしているということなのであるから、これとて、これを理解できないものは当業者にはいないし、当業者でなくても理解できる。従って、本願発明の概念として、「対象物の名称の綴りから構成されるアルファベットからなる」、「輪郭形状に、対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」を、理解できないものは当業者にはいない。

(ii)本願発明の分野は、ある程度試行錯誤の程度が高く設定されてしかるべき、組ブロックの分野(IPC分類:A63H33/08,A63F9/10,A63F9/12)の技術であり、この分野における当業者は、個別の例において、具体的に記載された設計図のようなものがなくとも、ある程度、試行錯誤をし、「対象物の名称の綴りから構成されるアルファベットからなる」、「輪郭形状に、対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」の概念が理解できれば、具体化して理解できる。

(iii)請求人が挙げた、例えば、特公平4-18876号(添付資料第2号)を見ても、クレームにおいて、「都市の形態」,「基地の形態」というブロック体を、「展開,折りたたみ自在」に構成し、相互に「連結」し、と特定されているが、「都市の形態」,「基地の形態」を複数のブロック体に表出するための具体的構成について、実施例以外は何ら特定されていないし、「展開,折りたたみ自在」に構成し、相互に「連結」することも、実施の仕方としては種々あるのであるから、個別の理解に当たっては、当然に試行錯誤が有るし、即座には具体化できない。しかし、「発明の概念を理解」できれば、この分野の技術レベルの当業者であれば、具体化して理解できるのであり、本願発明は、そのような性質の発明として、先例と同様に取り扱われるべきものである。

(2)2.拒絶理由(第36条)(2)に対して
本願発明のような性質の発明においては、逐一、実施例を挙げることは、それは、無限に例を挙げなければならないことになって、不可能であり、また、逐一、実施例を挙げて明らかにしなくても、上述した理由等から、一般化が成立する。

第4 当審の判断

1.実施可能要件について
平成18年1月10日付けの手続補正により補正された明細書の発明の詳細な説明が、本願の特許請求の範囲の請求項1乃至4に係る発明について、当業者がその発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものか否かについて検討する。

発明の詳細な説明には、【0015】乃至【0023】段落において「対象物」が「うさぎ」である場合が記載されており、【0024】乃至【0031】段落において「対象物」が「鳥」である場合が記載されている。また、【0032】段落には、「尚、上記実施の形態において、対象物を、動物の「うさぎ」「鳥」にしたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、どのようなものを対象物としても良いことは勿論である。」と記載されている。そして、「係合により結合させて」「特定の意味を持つ対象物」を構成する「ブロック単体」であって、「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」、「輪郭形状に、対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」に関しては、特に、【0019】段落において、

「各ブロック単体(B1,B2,B3,B4,B6)は、互いに係合されて組み立てられ、係合を解除することにより分解されるように、文字の輪郭形状を構成する凸部や凹部あるいは孔を適宜の形状や大きさにすることにより、形成されている。」

という記載があり、【0028】段落において、

「各ブロック単体(B1,B2,B3,B4)は、互いに係合されて組み立てられ、係合を解除することにより分解されるように、文字の輪郭形状を構成する凸部や凹部あるいは孔を適宜の形状や大きさにすることにより、形成されている。」

という記載がある。

そこで、上記【0032】段落に記載されるように、どのようなものを対象物としても、すなわち、一般の対象物においても「係合により結合させて」「特定の意味を持つ対象物」を構成する「ブロック単体」であって、「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」、「輪郭形状に、対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」を形成できるか否か検討する。

上記【0019】段落及び【0028】段落においては、各ブロック単体が、互いに係合されて組み立てられ、係合を解除することにより分解されるように、文字の輪郭形状を構成する凸部や凹部あるいは孔を適宜の形状や大きさにすることにより形成されていることが記載されている。しかし、「係合により結合させて」「特定の意味を持つ対象物」を構成する「ブロック単体」であって、「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」、「輪郭形状に、対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」を形成する際には、各々の「ブロック単体」を「対象物」の如何なる部分に対応させるのか、各々の「ブロック単体」の凸部や凹部あるいは孔を、係合を解除することにより分解されるように、且つ、文字の輪郭形状を構成するために、如何なる形状及び大きさとするのか、等の多くの事項を決定する必要があるが、各々の「ブロック単体」を「対象物」の如何なる部分に対応させるのか、及び、「ブロック単体」の凸部や凹部あるいは孔を如何なる形状及び大きさとするのかについて、並びに、各々の「ブロック単体」の凸部や凹部あるいは孔の形状及び大きさの相互関係について、どのように決定するのか明細書には具体的に記載されていない。

例えば、【0015】乃至【0023】段落に記載された、対象物が「うさぎ」の場合において、【0017】及び【0018】段落には、「R」を表出するブロック単体により耳付きの頭部を構成し、「A」を表出するブロック単体により前足を構成し、2個の「B」を表出するブロック単体により胴部及び後足を構成し、「T」を表出するブロック単体により頸部を構成し、「I」を表出するブロック単体により人参を構成するという対応関係が示されている。しかし、「うさぎ」という対象物の各部分と「R,A,B,B,I,T」の文字の輪郭形状を有する各ブロック単体との対応関係については前記の例に限られるものではなく、例えば、「B」を表出する第1のブロック単体により耳を構成し、「B」を表出する第2のブロック単体により頭部を構成し、「R」を表出するブロック単体により両前足及び両後足を構成し、「I」を表出するブロック単体により人参を構成し、残りの「A,T」により胴部を構成するという対応関係であってもよいが、発明の詳細な説明には、単に「うさぎ」という対象物の各部分と「R,A,B,B,I,T」の文字の輪郭形状を有する各ブロック単体との対応関係について前記の例が1つ示されているのみであり、「うさぎ」の各部分と「R,A,B,B,I,T」の各ブロック単体との対応関係をどのように決定するかについて、発明の詳細な説明には何等その指針が示されていない。また、【0024】乃至【0031】段落に記載された、対象物が「鳥」の場合においても、「鳥」の各部分と「B,I,R,D」の各ブロック単体の対応関係について例が1つ示されているのみであり、「鳥」の各部分と「B,I,R,D」の各ブロック単体との対応関係をどのように決定するかについて、発明の詳細な説明には何等その指針が示されていない。したがって、発明の詳細な説明が、「対象物」が「うさぎ」或いは「鳥」である場合において、対象物の各部分と各ブロック単体との対応関係をどのように決定するかについて何等その指針を示したものではない以上、発明の詳細な説明の記載に基づいて、「うさぎ」或いは「鳥」以外の一般の「対象物」について、対象物の各部分と各ブロック単体との対応関係をどのように決定するかについて、当業者といえども何等その指針を得ることはできない。

また、【0015】乃至【0023】段落、及び、【0024】乃至【0031】段落には、「うさぎ」或いは「鳥」の各例において、各単体ブロックを係合する際に、各単体ブロックの文字の輪郭形状を構成する凸部や凹部あるいは孔を如何なる形状及び大きさにするかについて、上記の対応関係における構成方法が記載されているのみであって、「うさぎ」或いは「鳥」以外の一般の「対象物」について、各単体ブロックの文字の輪郭形状を構成する凸部や凹部あるいは孔の形状及び大きさをどのように決定するかについて、発明の詳細な説明は、何等その指針を示したものとはなっていない。

したがって、発明の詳細な説明及び図面の記載だけでは、「うさぎ」或いは「鳥」以外の一般の「対象物」の場合においては、「係合により結合させて」「特定の意味を持つ対象物」を構成する「ブロック単体」であって、「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」、「輪郭形状に、対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」を形成する際に、各々の「ブロック単体」を「対象物」の如何なる部分に対応させるのか、及び、各々の「ブロック単体」の凸部や凹部あるいは孔を如何なる形状及び大きさとするのかの決定において、過度の試行錯誤が必要となることから、当業者といえども、「係合により結合させて」「特定の意味を持つ対象物」を構成する「ブロック単体」であって、「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」、「輪郭形状に、対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」を容易に認識できるとはいえない。

よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1乃至4に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

なお、請求項1には、「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる文字列」という記載があるが、「アルファベット」とは、「文字が音素を表す文字体系の総称。ラテン文字・ヘブライ文字・アラビア文字など。ギリシア文字の初めの2字α(アルファ)とβ(ベータ)とを合せて呼んだことに基づく。(株式会社岩波書店、広辞苑第五版)」、又は、「ローマ字、特に英語で用いる26文字のこと。(株式会社岩波書店、広辞苑第五版)」であり、「ラテン文字」とは「ローマ字に同じ。(株式会社岩波書店、広辞苑第五版)」であり、「ローマ字」とは「ラテン語を表すのに用いる文字。音素文字の一。フェニキア文字、古代ギリシア文字を経て、ローマ周辺にいた先住民エトルリア人に受け継がれた文字を取り入れたもの。今日では世界中で広く用いられる。英語では、26文字。ラテン文字。(株式会社岩波書店、広辞苑第五版)」である。
してみると、「アルファベット」には、英語等において用いられるラテン文字の他に、キリル文字(ロシア語において用いられる)、ギリシア文字、ヘブライ文字、アラビア文字等が含まれる。しかし、発明の詳細な説明においては、英語において使用されるラテン文字を表す単体ブロックによって対象物を構成した例のみが記載されており、他の「アルファベット」を表す単体ブロックによって対象物を構成した例については記載されていない。

また、仮に、請求項1における「アルファベット」が「ローマ字、特に英語で用いる26文字」であるとしても、ローマ字によって表記される言語には、英語の他にもドイツ語、フランス語などの西欧言語があり、また、日本語であってもローマ字表記があるので、「うさぎ」についても「KANINCHEN」、「LAPIN」あるいは「USAGI」という表記があり、「鳥」についても「VOGEL」、「OISEAU」あるいは「TORI」という表記がある。また、英語には「うさぎ」及び「鳥」を意味する単語として「RABBIT」及び「BIRD」の他にも、「HARE」及び「FOWL」という単語がある。さらに、単語の表記法については、「RABBIT」及び「BIRD」という大文字による表記の他、「rabbit」及び「bird」という小文字による表記もある。しかし、発明の詳細な説明においては、「うさぎ」及び「鳥」を「RABBIT」及び「BIRD」として表記した例のみが記載されており、他の表記法による例については記載されていない。

したがって、発明の詳細な説明は、対象物の名称を英語でラテン文字の大文字を用いて表記した場合における、ブロック単体の形成方法を示しているのみであって、対象物の名称を「アルファベット」を用いた他の表記法によって表記した場合においては、各々の「ブロック単体」を「対象物」の如何なる部分に対応させるのか、及び、各々の「ブロック単体」の凸部や凹部あるいは孔を如何なる形状及び大きさとするのかについて何等その指針を示したものとはなっていないので、当業者といえども、他の表記法における、「係合により結合させて」「特定の意味を持つ対象物」を構成する「ブロック単体」であって、「対象物の名称の綴りから構成されアルファベットからなる」、「輪郭形状に、対応する文字の形状を表出した」「ブロック単体」を容易に認識できるとはいえない。

よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1乃至4に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

2.サポート要件について

上記1.において検討したように、発明の詳細な説明の記載は、「うさぎ」或いは「鳥」以外の一般の「対象物」の場合において、対象物の各部分と各ブロック単体との対応関係をどのように決定するかについて、及び、各単体ブロックの文字の輪郭形状を構成する凸部や凹部あるいは孔の形状及び大きさをどのように決定するかについて、何等その指針を示したものとはなっていないので、発明の詳細な説明に記載された、「対象物」が「うさぎ」或いは「鳥」である場合を、「対象物」が一般の「対象物」である場合に一般化することは不可能である。

よって、請求項1乃至4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

なお、発明の詳細な説明には、上記1.において検討したように、対象物の名称を英語でラテン文字の大文字を用いて表記した場合における、ブロック単体の形成方法が記載されているのみであって、対象物の名称を「アルファベット」を用いた他の表記法によって表記した場合においては、各々の「ブロック単体」を「対象物」の如何なる部分に対応させるのか、及び、各々の「ブロック単体」の凸部や凹部あるいは孔を如何なる形状及び大きさとするのかについて何等その指針を示したものとはなっていないので、発明の詳細な説明に記載された、英語での対象物の名称をラテン文字の大文字で表記した場合を、対象物の名称を他の表記法によって表記した場合に一般化することは不可能である。

よって、請求項1乃至4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

第5 むすび

以上のとおりであるから、本件出願は、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-26 
結審通知日 2008-04-01 
審決日 2008-04-14 
出願番号 特願2002-353174(P2002-353174)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (A63H)
P 1 8・ 537- Z (A63H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中澤 言一  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 植野 孝郎
安田 明央
発明の名称 組ブロック具  
代理人 丸岡 裕作  

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