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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1185295
審判番号 不服2007-25104  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-13 
確定日 2008-10-02 
事件の表示 平成11年特許願第 54295号「レンズ鏡胴の手動及び電動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月14日出願公開、特開2000-249895〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯
本願は平成11年3月2日の出願であって、平成19年4月6日付けで拒絶の理由が通知され、平成19年6月11日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成19年8月7日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として平成19年9月13日付けで本件審判請求がされるとともに、平成19年10月2日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。


第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成19年10月2日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、平成19年6月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲についての

「【請求項1】 レンズを移動可能に保持する鏡胴と、
上記レンズを自動的に移動させるための電動モータと、
この鏡胴の外周部に回動自在に配置され、手動により上記レンズを移動操作するリングであって、上記電動モータの回転を伝達する伝達用歯車と噛合する外歯を形成したレンズ操作リングと、
このレンズ操作リングの外歯と上記電動モータとの接続を連結及び切断するためのクラッチ機構と、
このクラッチ機構の連結及び切断動作をするためのクラッチ作動モータと、
上記レンズを電動駆動させる操作のための電動操作スイッチとを含み、
上記電動操作スイッチにより出力される操作制御信号に基づき上記クラッチ作動モータを駆動し、この操作制御信号が出力されているとき上記クラッチ機構の連結動作を実行し、上記操作制御信号が出力されなくなったときクラッチ機構の切断動作を実行するレンズ鏡胴の手動及び電動装置。
【請求項2】 上記クラッチ機構は、歯車機能を有し上記クラッチ作動モータの駆動により軸方向で移動する歯車可動板と、この歯車可動板の側面が接触可能に構成され、歯車機能を有し軸方向で固定となる歯車固定板とを備え、これらの歯車の一方を上記電動モータ側に接続し、他方を上記レンズ操作リングの外歯に接続すると共に、 上記クラッチ作動モータ側の歯車に接続され、当該クラッチ作動モータの駆動により軸方向へ移動する移動歯車と、
この移動歯車と上記歯車可動板との間に配置され、この歯車可動板を移動歯車とは別個に回転させるための第1スラストベアリングと、
上記歯車固定板と支持部との間に配置され、この歯車固定板を支持部とは別個に回転させるための第2スラストベアリングとを設け、
上記クラッチ作動モータの駆動により上記移動歯車を軸方向へ移動させ、上記スラストベアリングを介して上記歯車可動板を上記歯車固定板に接触させることにより、クラッチ機構の連結を行い、
このクラッチ機構の切断時には、上記レンズ操作リングの外歯に接続されている歯車可動板又は歯車固定板を上記第1スラストベアリング又は第2スラストベアリングによって回転自在にする切断時回転機構が構成されるようにしたことを特徴とする請求項1記載のレンズ鏡胴の手動及び電動装置。」

の記載を、

「【請求項1】 レンズを移動可能に保持する鏡胴と、
上記レンズを自動的に移動させるための電動モータと、
この鏡胴の外周部に回動自在に配置され、手動により上記レンズを移動操作するリングであって、上記電動モータの回転を伝達する伝達用歯車と噛合する外歯を形成したレンズ操作リングと、
このレンズ操作リングの外歯と上記電動モータとの接続を連結及び切断するためのクラッチ機構と、
このクラッチ機構の連結及び切断動作をするためのクラッチ作動モータと、
上記レンズを電動駆動させる操作のために設けられ、上記電動モータに操作制御信号を出力する電動操作スイッチとを含み、
上記電動操作スイッチにより出力される上記操作制御信号に基づき上記クラッチ作動モータを駆動し、この操作制御信号が出力されているとき上記クラッチ機構の連結動作を実行し、上記操作制御信号が出力されなくなったときクラッチ機構の切断動作を実行するレンズ鏡胴の手動及び電動装置。
【請求項2】 上記クラッチ機構は、歯車機能を有し上記クラッチ作動モータの駆動により軸方向で移動する歯車可動板と、この歯車可動板の側面が接触可能に構成され、歯車機能を有し軸方向で固定となる歯車固定板とを備え、これらの歯車の一方を上記電動モータ側に接続し、他方を上記レンズ操作リングの外歯に接続すると共に、
上記クラッチ作動モータ側の歯車に接続され、当該クラッチ作動モータの駆動により軸方向へ移動する移動歯車と、
この移動歯車と上記歯車可動板との間に配置され、この歯車可動板を移動歯車とは別個に回転させるための第1スラストベアリングと、
上記歯車固定板と支持部との間に配置され、この歯車固定板を支持部とは別個に回転させるための第2スラストベアリングとを設け、
上記クラッチ作動モータの駆動により上記移動歯車を軸方向へ移動させ、上記スラストベアリングを介して上記歯車可動板を上記歯車固定板に接触させることにより、クラッチ機構の連結を行い、
このクラッチ機構の切断時には、上記レンズ操作リングの外歯に接続されている歯車可動板又は歯車固定板を上記第1スラストベアリング又は第2スラストベアリングによって回転自在にする切断時回転機構が構成されるようにしたことを特徴とする請求項1記載のレンズ鏡胴の手動及び電動装置。」

と補正することを含むものである。

2 本件補正の適否の検討
(1)目的要件(平成18年改正前の特許法第17条の2第4項)についての検討
本件補正における請求項1乃至2についての補正は、本件補正前の旧請求項1に係る発明では「操作制御信号」が「クラッチ作動モータを駆動」するために「電動操作スイッチにより出力される」とされていたものを、本件補正後の請求項1に係る発明では「操作制御信号」が「クラッチ作動モータを駆動」するために「電動操作スイッチにより出力される」ばかりでなく、「電動モータに」も「出力」されるとする補正であって、「操作制御信号」の出力の態様を限定する補正であるから、平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に当たる。
したがって、本件補正は、同法第17条の2第4項の規定に適合する。

(2)独立特許要件についての検討
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか、すなわち、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか否かについて、検討する。

ア 補正発明の認定
補正発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲の【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「レンズを移動可能に保持する鏡胴と、
上記レンズを自動的に移動させるための電動モータと、
この鏡胴の外周部に回動自在に配置され、手動により上記レンズを移動操作するリングであって、上記電動モータの回転を伝達する伝達用歯車と噛合する外歯を形成したレンズ操作リングと、
このレンズ操作リングの外歯と上記電動モータとの接続を連結及び切断するためのクラッチ機構と、
このクラッチ機構の連結及び切断動作をするためのクラッチ作動モータと、
上記レンズを電動駆動させる操作のために設けられ、上記電動モータに操作制御信号を出力する電動操作スイッチとを含み、
上記電動操作スイッチにより出力される上記操作制御信号に基づき上記クラッチ作動モータを駆動し、この操作制御信号が出力されているとき上記クラッチ機構の連結動作を実行し、上記操作制御信号が出力されなくなったときクラッチ機構の切断動作を実行するレンズ鏡胴の手動及び電動装置。」

イ 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭48-90540号(実開昭50-51646号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、以下の(ア)?(キ)の記載が図示とともにある。

(ア)「電動機と、この電動機と電源との間に介挿され上記電動機を正・逆回転および停止させる切換スイッチと、上記電動機に駆動される駆動軸と、この軸に、互の間に所定の間隔をあけて取着され、その各対向面に互に反対方向に傾倒する係合歯を刻設した一対の一方向クラッチギヤと、この両クラッチギヤ間に前記駆動軸に対して軸方向に移動自在かつ回転自在に軸支され、その各端面にそれぞれ前記クラッチギヤの係合歯に係合する係合歯を刻設し、その外周面の、中央部を除く部位に歯形を突設した駆動歯車と、この歯車に噛合してズームレンズを駆動するズーミング歯車と、前記切換スイッチの動作に連動して前記駆動歯車を上記の一対のクラッチギヤに選択的に係合させかつ前記ズーミング歯車に噛合する位置、および上記クラッチギヤと係合せず、かつズーミング歯車に噛合しない位置に選択的に位置させる連動操作機構とを具備したことを特徴とするシネカメラのズーミング装置。」(第1頁第5行?第2頁第4行)

(イ)「このように、従来では、ズーミング操作を電動でも手動でも行なえるようにするために、駆動経路中に摩擦伝達機構を介しておき、手動のときは、上記摩擦伝達機構のフリクションに抗してズームレンズを移動動作するようにし、電動機での駆動の場合は、そのフリクションによって駆動力を伝達するようにしていた。したがつて、手動でのズーミング操作が上記フリクションによつてひじょうに重く、操作し難いという欠点があつた。
この考案は、このような問題にかんがみてなされたもので、クラッチ機構を使用することによつて手動でのズーミング操作を軽く行なえるようにするとともに、そのクラッチ機構の動作が確実に行えるようにしたシネカメラのズーミング装置を提供するものである。」(第2頁第14行?第3頁第9行)

(ウ)「電動機1と電源2との間に、上記電動機1を正・逆回転および停止させる切換スイッチ3を介挿している。この切換スイッチ3は、回動自在の操作レバー4を一側面から外部に突出させ、このレバー4を第1図に示す中央の位置に位置させたとき電動機1を停止させ、第2図あるいは第3図に示す左右の回動位置に位置させたとき電動機1を正あるいは逆回転させるようにしているものである。上記切換スイッチ3の上方には操作釦5を、その中央部を軸支して上下方向に回動自在に配置しており、この操作釦5と前記切換スイッチ3との間にY字状の揺動レバー6を配置している。この揺動レバー6は、その中央部を回動自在に軸支し、上端部の、分岐した各先端を前記操作釦5の各端部下面に近接させ、下端部を二股状に形成してその二股間に前記切換スイッチ3の操作レバー4先端に突設した突起4aを介挿し、かつ、この下端部および軸支部との中間部にたて長の長孔6aをあけている。前記電動機1は減速機構7を介して駆動軸8を回動駆動するようにしている。上記減速機構7は、たとえば電動機軸にウォーム歯車7aを軸着し、このウォーム歯車7aに歯車7bを噛合し、この歯車7bの軸にさらにウォーム歯車7cを軸着し、このウォーム歯車7cを、駆動軸8に軸着した歯車7dに噛合するようにしているものである。上記駆動軸8には一対の一方向クラッチギヤ9a,9bを、互の間に所定の間隔をあけて取着している。上記クラッチギヤ9a,9bは、その各対向面に互に反対方向に傾倒する係合歯10a,10bを刻設しているものである。つまり、両クラッチギヤ9a,9bは互に同形状の部品であつて、係合歯を設けた各面を対向させることによつて各係合歯10a,10bが互に反対方向に傾倒するような関係となるようにしているものである。前記両クラッチギヤ9a,9b間には駆動歯車11を、前記駆動軸8に対して軸方向に移動自在かつ回転自在に軸支している。この駆動歯車11は、その各端面にそれぞれ前記クラッチギヤ9a,9bの係合歯10a,10bに係合する係合歯11a,11bを刻設するとともに、その外周面の中央部にリング状の凹部12を刻設し、外周面の、上記凹部12を除く部位に歯形13を突設しているものである。図中14はズームレンズ系を内装した鏡筒で、その後端に、ズームレンズを駆動するズーミング歯車15を回転自在に装着している。このズーミング歯車15は、その一側を前記両クラッチギヤ9a,9b間に位置させ、前記駆動歯車に選択的に噛合されるように配置されている。図中16は前記駆動軸8に対して平行かつ進退自在に配置された連結杆17、およびこの連結杆17の一端部に取着し、先端を前記駆動歯車11の凹部12に入り込ませた係合爪18からなる連動操作機構で、連結杆17の他端は二股状に形成され、その二股間に前記揺動レバー6の中間部を挿入し、上記二股間に貫通したピン19が揺動レバー6の長孔6aに挿通するようにしているものである。」(第3頁第12行?第6頁第11行)

(エ)「このような構成であれば、操作釦5が第1図に示す水平な位置にあるとき、切換スイッチ3の操作レバー4は電動機1を停止させる中央の位置にあり、前記駆動歯車11は前記係合爪18によつて、いずれのクラッチギヤ9a,9bにも、またズーミング歯車15にも噛合しない位置に保持されている。」(第6頁第12行?第6頁第18行)

(オ)「そこで、操作釦5の一端を押圧操作し、第2図に示すように回動すれば、その回動動作に伴なつて揺動レバー6の上端部の、分岐した一方の先端が押されるから、揺動レバー6は回動する。そうすると、この揺動レバー6の回動動作に連動して切換スイッチ3の操作レバー4が、たとえば電動機1を正回転させる方向に回動し、同時に、連動操作機構16の連結杆17を一方向に移動して係合爪18で前記駆動歯車11を、駆動軸8の回転方向をその係合方向とする側のクラッチギヤ9a,9bに係合させる。すなわち係合歯11aをクラッチギヤ9aの係合歯10aに係合させる。そして、このとき駆動歯車11の歯形13はズーミング歯車15に噛合するようになる。したがつて、駆動歯車11は電動機1にクラッチギヤ9aを介して回転駆動され、鏡筒14内のズームレンズをズーミング歯車15を介して駆動し、たとえばワイドから拡角へズーミング操作を行なうようになる。
また、操作釦5の他端を押圧操作し、この操作釦5を第3図に示すように回動すれば、揺動レバー6は反対方向に回動し、その回動動作に連動して切換スイッチ3の操作レバー4は電動機1を逆回転させる方向に回動し、同時に(審決注:「回時に」は明らかな誤記である。)連動操作機構16を介して駆動歯車11が他方のクラッチギヤ9bに係合し、かつズーミング歯車15に噛合する。したがって、上記ズーミング歯車は反対方向に回転するようになり、たとえば拡角からワイドへのズーミング操作が行なわれるようになる。」(第6頁第18行?第8頁第8行)

(カ)「なお、手動によるズーミング操作を行なう場合は、操作釦5を第1図に示す水平の位置に位置させ、電動機1を停止させ、かつ駆動歯車11のズーミング歯車15に対する噛合を解いた状態で行なえばよい。そうすれば、電動機1からズーミング歯車15に至る駆動経路が断たれ、電動機1に駆動される減速機構7、駆動歯車11等の駆動機構がズーミング操作に対する負荷とならないから、ズーミング操作を軽く行うことができ、しかも手動の際、電動機1は停止されるから、電源を不必要に消耗することを防止できるものである。」(第8頁第9行?第8頁第20行)

(キ)「以上詳述したように、この考案によれば、切換スイッチの、電動機を回転させる動作に連動して駆動歯車をズーミング歯車に選択的にズーミング歯車に噛合させることができ、手動でズーミング操作を行なうときは電動機を停止させるとともに上記駆動歯車をズーミング歯車に対して噛合させない位置に保持することによつて、手動でのズーミング操作を軽く行なうことができ、また、電源を不必要に消耗しないようにしたシネカメラのズーミング装置を提供できるものである。」(第9頁第1行?第9頁第11行)

ウ 引用例1記載の発明の認定
引用例1の上記記載事項(ア)乃至(キ)から、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。

「電動機と、
前記電動機と電源との間に介挿され前記電動機を正・逆回転および停止させる切換スイッチと、
前記切換スイッチの上方に配置された操作釦と、
前記操作釦と前記切換スイッチとの間に配置された揺動レバーと、
前記電動機に駆動される駆動軸と、
前記駆動軸に、互の間に所定の間隔をあけて取着され、その各対向面に互に反対方向に傾倒する係合歯を刻設した一対の一方向クラッチギヤと、
前記一対の一方向クラッチギヤ間に前記駆動軸に対して軸方向に移動自在かつ回転自在に軸支され、その各端面にそれぞれ前記一対の一方向クラッチギヤの前記係合歯に係合する係合歯を刻設し、その外周面の、中央部を除く部位に歯形を突設した駆動歯車と、
鏡筒の後端に回転自在に装着され前記駆動歯車に噛合して前記鏡筒に内装されたズームレンズを駆動するズーミング歯車と、
前記切換スイッチの動作に連動して前記駆動歯車を前記一対の一方向クラッチギヤの一つに選択的に係合させかつ前記ズーミング歯車に噛合する位置、および、前記一対の一方向クラッチギヤと係合せずかつ前記ズーミング歯車に噛合しない位置に選択的に位置させる連動操作機構と
を具備したシネカメラのズーミング装置であって、
電動によるズーミング操作を行う場合には、前記操作釦の一端または他端を押圧操作して前記操作釦を回動させ、前記操作釦の回動動作に伴って前記揺動レバーが回動し、前記揺動レバーの回動動作に連動して前記切換スイッチが前記電動機を回転させ、同時に、前記連動操作機構が移動して前記駆動歯車を移動させ前記駆動歯車を前記一対の一方向クラッチギヤの一つに選択的に係合させかつ前記ズーミング歯車に噛合させて、前記駆動歯車は、前記一対の一方向クラッチギヤの一つを介して前記電動機により回転駆動され、前記鏡筒内の前記ズームレンズを前記ズーミング歯車を介して駆動し、
手動によるズーミング操作を行う場合には、前記操作釦を水平の位置に位置させ、前記切換スイッチが前記電動機を停止させ、同時に、前記連動操作機構が前記駆動歯車を前記一対の一方向クラッチギヤと係合させずかつ前記ズーミング歯車に噛合させないようにしたシネカメラのズーミング装置。」(以下、「引用発明1」という。)

エ 補正発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
(ア)引用発明1の「ズームレンズ」は、補正発明の「レンズ」に相当する。
また、引用発明1の「シネカメラのズーミング装置」では、「鏡筒に内装されたズームレンズ」が「ズーミング歯車」により「駆動」されるから、引用発明1の「ズームレンズ」は「ズーミング歯車」により「駆動」されるように「鏡筒に内装され」ている。
したがって、引用発明1の「ズーミング歯車」により「駆動」されるように「ズームレンズ」を「内装」する「鏡筒」は、補正発明の「レンズを移動可能に保持する鏡胴」に相当する。

(イ)引用発明1の「シネカメラのズーミング装置」では、「電動によるズーミング操作を行う場合」には、「前記操作釦の一端または他端を押圧操作し」て「電動機を回転させ」、「駆動歯車は」「前記電動機により回転駆動され、前記鏡筒内の前記ズームレンズを前記ズーミング歯車を介して駆動」するから、引用発明1の「電動機」は、「電動によるズーミング操作を行う場合」に「ズームレンズ」を「駆動」するためのものである。
したがって、引用発明1の「電動によるズーミング操作を行う場合」に「ズームレンズ」を「駆動」するための「電動機」は、補正発明の「上記レンズを自動的に移動させるための電動モータ」に相当する。

(ウ)引用発明1の「シネカメラのズーミング装置」では、「手動によるズーミング操作を行う場合」に「ズームレンズを駆動する」ことができるのは「ズーミング歯車」しかないから、引用発明1の「鏡筒の後端に回転自在に装着され」「て前記鏡筒に内装されたズームレンズを駆動するズーミング歯車」は、補正発明の「この鏡胴の外周部に回動自在に配置され、手動により上記レンズを移動操作する」「レンズ操作リング」に相当する。
また、引用発明1の「シネカメラのズーミング装置」では、「電動によるズーミング操作を行う場合」には、「前記操作釦の一端または他端を押圧操作し」て「電動機を回転させ」、「駆動歯車は」「前記電動機により回転駆動され、前記鏡筒内の前記ズームレンズを前記ズーミング歯車を介して駆動」するから、引用発明1の「駆動歯車」は補正発明の「上記電動モータの回転を伝達する伝達用歯車」に相当し、引用発明1の「ズーミング歯車」の「歯」は補正発明の「外歯」に相当する。

(エ)引用発明1の「シネカメラのズーミング装置」では、「電動によるズーミング操作を行う場合には、前記操作釦の一端または他端を押圧操作して前記操作釦を回動させ、前記操作釦の回動動作に伴って前記揺動レバーが回動し、前記揺動レバーの回動動作に連動して前記切換スイッチが前記電動機を回転させ、同時に、前記連動操作機構が移動して前記駆動歯車を移動させ前記駆動歯車を前記一対の一方向クラッチギヤの一つに選択的に係合させかつ前記ズーミング歯車に噛合させて、前記駆動歯車は、前記一対の一方向クラッチギヤの一つを介して前記電動機により回転駆動され、前記鏡筒内の前記ズームレンズを前記ズーミング歯車を介して駆動し」、「手動によるズーミング操作を行う場合には、前記操作釦を水平の位置に位置させ、前記切換スイッチが前記電動機を停止させ、同時に、前記連動操作機構が前記駆動歯車を前記一対の一方向クラッチギヤと係合させずかつ前記ズーミング歯車に噛合させないようにし」ている。
したがって、引用発明1の「シネカメラのズーミング装置」のうち「駆動歯車」、「一対の一方向クラッチギヤ」及び「ズーミング歯車」からなる部分が補正発明の「クラッチ機構」に相当し、引用発明1の「連動操作機構」と補正発明の「クラッチ作動モータ」とは、「クラッチ機構の連結及び切断動作をするための」部材である点で一致する。

(オ)引用発明1の「切換スイッチ」は「電動機を正・逆回転および停止させる」ものであるから、引用発明1の「切換スイッチ」から「電動機」へ「電動機を正・逆回転」「させる」信号が出力されていることは明らかである。したがって、引用発明1の「切換スイッチ」から「電動機」へ出力される「電動機を正・逆回転」「させる」信号が補正発明の「操作制御信号」に相当する。
また、引用発明1の「シネカメラのズーミング装置」では、「電動によるズーミング操作を行う場合には、前記操作釦の一端または他端を押圧操作して前記操作釦を回動させ、前記操作釦の回動動作に伴って前記揺動レバーが回動し、前記揺動レバーの回動動作に連動して前記切換スイッチが前記電動機を回転させ、同時に、前記連動操作機構が移動して前記駆動歯車を移動させ前記駆動歯車を前記一対の一方向クラッチギヤの一つに選択的に係合させかつ前記ズーミング歯車に噛合させて、前記駆動歯車は、前記一対の一方向クラッチギヤの一つを介して前記電動機により回転駆動され、前記鏡筒内の前記ズームレンズを前記ズーミング歯車を介して駆動し」ているから、引用発明1の「シネカメラのズーミング装置」のうち「操作釦」、「揺動レバー」及び「切換スイッチ」からなる部分が、補正発明の「上記レンズを電動駆動させる操作のために設けられ、上記電動モータに操作制御信号を出力する電動操作スイッチ」に相当する。

(カ)引用発明1の「電動によるズーミング操作を行う場合には、前記操作釦の一端または他端を押圧操作して前記操作釦を回動させ、前記操作釦の回動動作に伴って前記揺動レバーが回動し、前記揺動レバーの回動動作に連動して」「前記連動操作機構が移動して前記駆動歯車を移動させ前記駆動歯車を前記一対の一方向クラッチギヤの一つに選択的に係合させかつ前記ズーミング歯車に噛合させ」ることと補正発明の「電動操作スイッチにより出力される上記操作制御信号に基づき上記クラッチ作動モータを駆動」することとは、「電動操作スイッチ」「に基づき」「クラッチ機構の連結及び切断動作をするための」部材を駆動する点で一致する。
また、引用発明1の「シネカメラのズーミング装置」において「電動によるズーミング操作を行う場合には、前記操作釦の一端または他端を押圧操作して前記操作釦を回動させ、前記操作釦の回動動作に伴って前記揺動レバーが回動し、前記揺動レバーの回動動作に連動して前記切換スイッチが前記電動機を回転させ」るから、引用発明1の「シネカメラのズーミング装置」において「電動によるズーミング操作を行う」ために「操作釦の一端または他端を押圧操作して前記操作釦を回動させ」る場合には、引用発明1の「切換スイッチ」から「電動機」へ「電動機を正・逆回転」「させる」信号が出力されていることは明らかである。したがって、引用発明1の「電動によるズーミング操作を行う場合には、前記操作釦の一端または他端を押圧操作して前記操作釦を回動させ、前記操作釦の回動動作に伴って前記揺動レバーが回動し、前記揺動レバーの回動動作に連動して前記切換スイッチが前記電動機を回転させ、同時に、前記連動操作機構が移動して前記駆動歯車を移動させ前記駆動歯車を前記一対の一方向クラッチギヤの一つに選択的に係合させかつ前記ズーミング歯車に噛合させ」ることは、補正発明の「この操作制御信号が出力されているとき上記クラッチ機構の連結動作を実行」することに相当する。
さらに、引用発明1の「シネカメラのズーミング装置」において「手動によるズーミング操作を行う場合には、前記操作釦を水平の位置に位置させ、前記切換スイッチが前記電動機を停止させ」るから、引用発明1の「シネカメラのズーミング装置」において「手動によるズーミング操作を行う」ために「前記操作釦を水平の位置に位置させ」る場合には、引用発明1の「切換スイッチ」から「電動機」へ「電動機を正・逆回転」「させる」信号が出力されていないことは明らかである。したがって、引用発明1の「手動によるズーミング操作を行う場合には、前記操作釦を水平の位置に位置させ、前記切換スイッチが前記電動機を停止させ、同時に、前記連動操作機構が前記駆動歯車を前記一対の一方向クラッチギヤと係合させずかつ前記ズーミング歯車に噛合させないようにした」ことは、補正発明の「上記操作制御信号が出力されなくなったときクラッチ機構の切断動作を実行する」ことに相当する。
また、上記(ウ)で述べたとおり、引用発明1の「シネカメラのズーミング装置」は、「電動」及び「手動」により「ズーミング歯車」を「駆動」して「鏡筒に内装されたズームレンズを駆動」しているから、引用発明1の「鏡筒に内装されたズームレンズ」を「電動」及び「手動」により「駆動する」「シネカメラのズーミング装置」は、補正発明の「レンズ鏡胴の手動及び電動装置」に相当する。

(キ)すると、補正発明と引用発明1とは、

「レンズを移動可能に保持する鏡胴と、
上記レンズを自動的に移動させるための電動モータと、
この鏡胴の外周部に回動自在に配置され、手動により上記レンズを移動操作するリングであって、上記電動モータの回転を伝達する伝達用歯車と噛合する外歯を形成したレンズ操作リングと、
このレンズ操作リングの外歯と上記電動モータとの接続を連結及び切断するためのクラッチ機構と、
このクラッチ機構の連結及び切断動作をするための部材と、
上記レンズを電動駆動させる操作のために設けられ、上記電動モータに操作制御信号を出力する電動操作スイッチとを含み、
上記電動操作スイッチに基づき上記クラッチ機構の連結及び切断動作をするための部材を駆動し、この操作制御信号が出力されているとき上記クラッチ機構の連結動作を実行し、上記操作制御信号が出力されなくなったときクラッチ機構の切断動作を実行するレンズ鏡胴の手動及び電動装置。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

〈相違点〉
補正発明では、クラッチ機構の連結及び切断動作をするための部材が「クラッチ作動モータ」であり、前記「クラッチ作動モータ」が「電動操作スイッチにより出力される上記操作制御信号に基づ」いて「駆動」されるのに対し、引用発明1では、クラッチ機構の連結及び切断動作をするための部材が「連動操作機構」であり、「前記操作釦を水平の位置の端部を押圧操作して前記操作釦を回動させ、前記操作釦の回動動作に伴って前記揺動レバーが回動し、前記揺動レバーの回動動作に連動して」「前記連動操作機構が移動」される点。

オ 相違点についての判断
クラッチ機構の連結及び切断動作をするための部材としてモータを用いることは、本願出願時において周知である(原査定で引用された登録実用新案第3007107号公報(段落【0025】、図3)、原査定で引用された実願平5-50019号(実開平7-19716号)のCD-ROM(段落【0008】乃至【0009】、【0043】乃至【0044】、【0046】、図1,3)、特開平4-218006号公報(特許請求の範囲の欄、段落【0005】乃至【0006】、【0019】乃至【0026】)を参照。)。
すると、上記周知事項に基づいて、引用発明1の「連動操作機構」を「モータ」に置き換えることは、当業者にとって容易に想到し得る。その際、引用発明1では、「前記揺動レバーの回動動作に連動して前記切換スイッチが前記電動機を回転させ」ることと「前記連動操作機構が移動して前記駆動歯車を前記一対の一方向クラッチギヤの一つに選択的に係合させかつ前記ズーミング歯車に噛合させ」ることを「同時に」行っているから、引用発明1の「切換スイッチ」から「電動機」へ出力される「電動機を正・逆回転」「させる」信号を「駆動歯車」を移動させるための上記周知の「モータ」を駆動するためにも利用することは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。
したがって、上記相違点に係る補正発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。
また、補正発明の効果は、引用発明1及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものに過ぎない。

カ 補正発明の独立特許要件の判断
以上のとおり、補正発明は引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3 むすび
したがって、本件補正は平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するから、本件補正は同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本件審判請求についての判断
1 本願発明の認定
本件補正が却下されたから、平成19年6月11日付けの手続補正により補正された明細書及び図面に基づいて審理すると、本願の請求項1に係る発明は、平成19年6月11日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「レンズを移動可能に保持する鏡胴と、
上記レンズを自動的に移動させるための電動モータと、
この鏡胴の外周部に回動自在に配置され、手動により上記レンズを移動操作するリングであって、上記電動モータの回転を伝達する伝達用歯車と噛合する外歯を形成したレンズ操作リングと、
このレンズ操作リングの外歯と上記電動モータとの接続を連結及び切断するためのクラッチ機構と、
このクラッチ機構の連結及び切断動作をするためのクラッチ作動モータと、
上記レンズを電動駆動させる操作のための電動操作スイッチとを含み、
上記電動操作スイッチにより出力される操作制御信号に基づき上記クラッチ作動モータを駆動し、この操作制御信号が出力されているとき上記クラッチ機構の連結動作を実行し、上記操作制御信号が出力されなくなったときクラッチ機構の切断動作を実行するレンズ鏡胴の手動及び電動装置。」(以下、「本願発明」という。)

2 引用刊行物の記載事項及び引用例1記載の発明の認定
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1には、前記「第2 補正の却下の決定」の「2 本件補正の適否の検討」の「(2)独立特許要件についての検討」の「イ 引用刊行物の記載事項」の欄に摘記したとおりの事項が記載されており、引用例1に記載された発明(引用発明1)は、前記「第2 補正の却下の決定」の「2 本件補正の適否の検討」の「(2)独立特許要件についての検討」の「ウ 引用例1記載の発明の認定」の欄に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、補正発明の発明特定事項から、前記「第2 補正の却下の決定」の「2 本件補正の適否の検討」の「(1)目的要件(平成18年改正前の特許法第17条の2第4項)についての検討」の欄で述べた限定事項を省いたものである。
そして、本願発明の発明特定事項をすべて含み、他の発明特定事項を付加したものに相当する補正発明が、前記「第2 補正の却下の決定」の「2 本件補正の適否の検討」の「(2)独立特許要件についての検討」の欄に記載したとおり、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、前記「第2 補正の却下の決定」の「2 本件補正の適否の検討」の「(2)独立特許要件についての検討」の欄で示した理由と同様の理由により、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は引用例1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そして、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-22 
結審通知日 2008-07-29 
審決日 2008-08-18 
出願番号 特願平11-54295
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菊岡 智代  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 日夏 貴史
佐藤 昭喜
発明の名称 レンズ鏡胴の手動及び電動装置  
代理人 緒方 保人  
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