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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1185533
審判番号 不服2007-2030  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-18 
確定日 2008-10-02 
事件の表示 特願2000-260780「光ファイバ保持構造およびこれを用いたレーザ加工機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月12日出願公開、特開2002- 72020〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年8月30日の出願であって、平成18年8月29日付けで拒絶理由が通知されたところ、同年11月2日付けで手続補正がなされたが、同年11月30日付けで拒絶査定がなされた。そして、これに対し、平成19年1月18日付けで拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同年2月16日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成19年2月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年2月16日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
平成19年2月16日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
少なくとも光ファイバ及び該光ファイバの外周を被覆するスリーブを有してなる光ファイバコネクタと、前記光ファイバコネクタが挿入される空洞を有するレセプタクルとを接続することによって形成される、レーザ加工機用の光ファイバの保持構造であって、
前記レセプタクルに挿入された光ファイバコネクタを前記空洞内面の一方向に押し付ける当該レセプタクルのコネクタ位置決め手段を有することによって、光ファイバの長手方向に垂直な断面方向について光ファイバの中心合わせを行うこと、及び、前記空洞に挿入されるスリーブの外周表面において、コネクタ位置決め手段の先端の一部分に接触可能に構成される部分が、切削面として形成されていることを特徴とする光ファイバ保持構造。」
と補正された。
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「光ファイバの保持構造」について、「レーザ加工機用」であるとの限定を付加し、また、同じく「コネクタ位置決め手段」について、「光ファイバの長手方向に垂直な断面方向について光ファイバの中心合わせを行う」との限定を付加し、さらに「コネクタ位置決め手段の先端の一部分に接触可能に構成される部分」について、「空洞に挿入されるスリーブの外周表面」におけるものであるとの限定を付加するものであるので、平成14年改正前特許法第17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成14年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)本願補正発明について
(i)本願補正発明
本願補正発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記2.(1)のとおりのものである。

(ii)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開99/63370号(以下「引用例」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

a.「Figure 1 illustrates an illumination system 10 having, for example, a medical device 12 connected through a single fiber optic 14 to a light source system 16.
・・・(略)・・・
The ball plunger prevents the proximal connector from accidentally sliding out of the aperture. The proximal connector can only be manually removed by pulling on the proximal connector with sufficient force to displace the ball plunger out of the indented ring allowing free removal of the connector.」(第7頁第14行?第9頁第1行)
(日本語訳)
「図1は、たとえば医療器具12を単一光ファイバ14で光源システム16に接続した照明システム10を示している。医療器具12は、手術用ヘッドランプ、手術用照明器具、内視鏡、ボアスコープなどであってもよい。光源システム16は、メタルハライドまたはキセノンアークランプなどの高強度光源18と、光源18からの光を集める光学系20とを含む。光学系20は、たとえば米国特許第4,757,431号に記載されている光源システムに従って構成された鏡などの1つまたは複数の光学素子を含むことができる。

光ファイバ14は、光源システム16のハウジングの受けブロック内に形成された開口に「スナップ」挿入されるように構成された基部コネクタ22を有する。次に、残りの図面を参照しながら、基部コネクタ22およびそれが挿入される受けブロックを説明する。

図2は、光源システム16のハウジング28の受けブロック26の開口24に挿入される前の位置にある基部コネクタ22の側面図である。基部コネクタ22は、開口24の内部輪郭と符合した三次元対称輪郭を有する。さらに具体的に言うと、基部コネクタ22は、円筒形ベース部分31と切頭端部33を備えたテーパ状円錐形チップ32とを有するステンレス鋼フェルール30を含む。ベース部分31は、ほぼ直円柱であるがテーパ状切頭部分38から距離を置いて凹みリング36を設けたケース34内に取り付けられている。光ファイバ14がケース34およびフェルール30の内孔内に保持されている。光ファイバ14の入口開口は、フェルール30の前切頭端部33と同一平面上に位置している(したがって、図面では見えない)。

前述したように、基部コネクタの輪郭は、開口24の内部輪郭と符合している。言い換えると、開口24は、基部コネクタの対応部分とほぼ同一の寸法および形状を有する円筒形および円錐形部分を含む。しかし、1つの例外として、開口は凹みリング36に符合する形状の外向きリングを備えていない。代わりに、ハウジングブロック26の内側壁44に沿ってボールプランジャばね付勢機構42が取り付けられている。ボールプランジャ42は、基部コネクタが開口24内に完全に挿入されている間だけ凹みリング36に係合するように配置されている。これが図3に示されている。これによって、ボールプランジャ42は基部コネクタを挿入時に所定位置にスナップ固定することができる。

ボールプランジャは、基部コネクタが誤って開口から滑り落ちることを防止している。ボールプランジャを凹みリングから離脱させてコネクタを自由に取り外すことができるようにする十分な力で基部コネクタを引っ張るだけで、基部コネクタを手動で取り外すことができる。」

b.FIG.2、FIG.3から、基部コネクタ22の外周に凹みリング36が設けられていることが見てとれる。また、ボールプランジャばね付勢機構42は、基部コネクタ22の凹みリング36に係合し、基部コネクタ22を一方向に押し付けていることが見てとれる。

以上の記載事項からみて、引用例には、以下の発明が記載されていると認められる。
「光ファイバ14が内孔内に保持され、外周に凹みリング36が設けられた基部コネクタ22と、前記基部コネクタ22が挿入される開口24を有する受けブロック26とを固定する光ファイバの固定構造であって、
前記受けブロック26は、前記受けブロック26の内側壁44に沿って取り付けられたボールプランジャばね付勢機構42を有し、
前記ボールプランジャばね付勢機構42は、前記基部コネクタが前記開口24内に完全に挿入されている間だけ前記凹みリング36に係合し、前記基部コネクタ22を一方向に押し付けることにより、前記基部コネクタを前記受けブロック26の所定位置に固定する光ファイバの固定構造」(以下「引用例発明」という。)

(iii)対比
引用例発明と本願補正発明とを対比すると、引用例発明の「光ファイバ14」、「基部コネクタ22」、「開口24」、「受けブロック26」、「光ファイバの固定構造」は、本願補正発明の「光ファイバ」、「光ファイバコネクタ」、「空洞」、「レセプタクル」、「光ファイバの保持構造」にそれぞれ相当する。
また、引用例発明の「基部コネクタ22」は「光ファイバ14が内孔内に保持」されるものであるので、本願補正発明の「光ファイバコネクタ」と同じく、「少なくとも光ファイバ及び該光ファイバの外周を被覆するスリーブを有してなる」ものであることは、明らかである。
さらに、引用例発明の「ボールプランジャばね付勢機構42」は、「前記基部コネクタが前記開口24内に完全に挿入されている間だけ前記凹みリング36に係合し、前記基部コネクタ22を一方向に押し付ける」ものであるから、本願補正発明の「レセプタクルに挿入された光ファイバコネクタを前記空洞内面の一方向に押し付ける当該レセプタクルのコネクタ位置決め手段」に相当する。
また、引用例発明の「凹みリング36」は、基部コネクタ22の外周に設けられ、ボールプランジャばね付勢機構42と係合するものであるから、引用例発明が、本願補正発明の「空洞に挿入されるスリーブの外周表面において、コネクタ位置決め手段の先端の一部分に接触可能に構成される部分が、切削面として形成されている」点を備えていることは明らかである。

したがって、引用例発明と本願補正発明とは、
「少なくとも光ファイバ及び該光ファイバの外周を被覆するスリーブを有してなる光ファイバコネクタと、前記光ファイバコネクタが挿入される空洞を有するレセプタクルとを接続することによって形成される、光ファイバの保持構造であって、
前記レセプタクルに挿入された光ファイバコネクタを前記空洞内面の一方向に押し付ける当該レセプタクルのコネクタ位置決め手段を有すること、及び、前記空洞に挿入されるスリーブの外周表面において、コネクタ位置決め手段の先端の一部分に接触可能に構成される部分が、切削面として形成されている光ファイバ保持構造。」
である点で一致し、次の点で相違するものと認められる。
[相違点]
i.本願補正発明の「コネクタ位置決め手段」は、「光ファイバの長手方向に垂直な断面方向について光ファイバの中心合わせを行う」ものであるのに対し、引用例発明のものは、ボールプランジャばね付勢機構42により、開口24内の内側壁に押し付けられてはいるものの、光ファイバの中心合わせを行うものであるか否か不明である点。

ii. 本願補正発明が「レーザ加工機用」であるのに対し、引用例発明は「レーザ加工機用」ではない点。

(iv)判断
上記相違点について検討する。
ア.相違点iについて
光ファイバの保持構造において、「レセプタクルに挿入された光ファイバコネクタを空洞内面の一方向に押し付ける当該レセプタクルのコネクタ位置決め手段を有することによって、光ファイバの長手方向に垂直な断面方向について光ファイバの中心合わせを行うこと」は、例えば、原査定の拒絶の理由で引用した実願平04-016712号(実開平5-79507号公報)のCD-ROM(【0008】、図1を参照。)、特開平3-14409号公報(第3頁右上欄第14行?同頁左上欄第9行、第1図を参照)、特開平7-43568号公報(【0018】、図1,図3を参照。)に見られるように、本願出願前に周知である。
そして、引用例発明も、ボールプランジャばね付勢機構42により、開口24内の内側壁に押し付けられているものであるから、引用例発明に上記周知技術を適用して、光ファイバの中心合わせを行うものとすることは、当業者であれば容易になし得ることである。

イ.相違点iiについて
本願補正発明の「レーザ加工機用」との発明特定事項は、「光ファイバ保持構造」が使用される機器を特定することにより、「光ファイバ保持構造」自体を特定しようとするものである。
しかし、光ファイバコネクタとレセプタクルとを接続することによって形成される光ファイバの保持構造が「レーザ加工機用」とされることによって、光ファイバの保持構造自体、或いはその機能が変わることはないから、相違点iiについての上記発明特定事項は「光ファイバ保持構造」の発明を特定する上での技術上の意味を有するものではない。
したがって、相違点iiにおいて、本願補正発明と引用例発明とは実質的に相違しない。

ウ.そして、本願補正発明の作用効果も、引用例発明及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

エ.したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年11月2日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
少なくとも光ファイバ及び該光ファイバの外周を被覆するスリーブを有してなる光ファイバコネクタと、前記光ファイバコネクタが挿入される空洞を有するレセプタクルとを接続することによって形成される光ファイバの保持構造であって、
前記空洞に挿入されるスリーブの外周表面において、前記レセプタクルに挿入された光ファイバコネクタを前記空洞内面の一方向に押し付ける当該レセプタクルのコネクタ位置決め手段の先端の一部分に接触可能に構成される部分が、切削面として形成されていることを特徴とする光ファイバ保持構造。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記「2.(2)(ii)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記2.(2)で検討した本願補正発明から「光ファイバの保持構造」について、「レーザ加工機用」であるとの限定を省き、同じく「コネクタ位置決め手段」について、「光ファイバの長手方向に垂直な断面方向について光ファイバの中心合わせを行う」との限定を省き、さらに「コネクタ位置決め手段の先端の一部分に接触可能に構成される部分」について、「空洞に挿入されるスリーブの外周表面」におけるものであるとの限定を省くものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2.(2)(iv)に記載したとおり、引用例発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-30 
結審通知日 2008-08-05 
審決日 2008-08-20 
出願番号 特願2000-260780(P2000-260780)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 公夫  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 西村 直史
稲積 義登
発明の名称 光ファイバ保持構造およびこれを用いたレーザ加工機  
代理人 田村 恭生  
代理人 鮫島 睦  

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