• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1185620
審判番号 不服2006-1928  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-03 
確定日 2008-10-06 
事件の表示 平成10年特許願第236636号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月29日出願公開、特開2000- 61048〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願補正発明の認定
本願の主な経緯は以下の通り。
平成10年 8月24日 出願
平成17年 5月 6日 拒絶理由通知
平成17年 7月 8日 意見書・補正書
平成17年 9月22日 拒絶理由通知
平成17年11月25日 意見書・補正書
平成17年12月27日 補正却下の決定・拒絶査定
平成18年 2月 3日 審判請求・補正書

第2 平成18年2月3日付の手続補正についての補正却下の決定
1.補正却下の決定の結論

平成18年2月3日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

2.理由

(1)本件補正の内容と補正の適否

本件補正は、平成17年7月8日付の手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項1を削除し、特許請求の範囲の請求項2に記載された
「基板の前面に複数の障害物および入賞装置が取り付けられてなる遊技盤を備えた遊技機において、
前記基板が透光性樹脂部材からなり、
前記基板の端面近傍に、該端面に沿うようにして発光手段が配置されており、
前記発光手段が、支持部材を用いて前記基板に取り付けられており、
前記基板の背面に格子状パターンの切り込みが形成されていることを特徴とする遊技機。」を、

「基板の前面に、複数の障害物および入賞装置が取り付けられ発射部から発射された遊技球が流下する遊技部が設けられてなる遊技盤を備えた遊技機において、
前記基板が透光性樹脂部材からなり、
前記基板の端面近傍に、該端面に沿うようにして発光手段が配置されており、
前記発光手段が、支持部材を用いて前記基板に取り付けられており、
前記基板の背面の全面に、前記遊技部と対向するように格子状パターンの切り込みが形成されてなることを特徴とする遊技機。」とするとともに、請求項1に繰り上げるものである。

本件補正は、遊技盤について「発射部から発射された遊技球が流下する遊技部」を有する点を限定し、基板の背面の格子状パターンについて「全面に、前記遊技部と対向するように」設ける点を限定したものであり、それぞれ遊技盤と格子状パターンについて限定しており、発明特定事項の限定に当たるので、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的としたものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際、独立して特許を受けることができるかどうか検討する。

3.本願補正発明の認定

本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「基板の前面に、複数の障害物および入賞装置が取り付けられ発射部から発射された遊技球が流下する遊技部が設けられてなる遊技盤を備えた遊技機において、
前記基板が透光性樹脂部材からなり、
前記基板の端面近傍に、該端面に沿うようにして発光手段が配置されており、
前記発光手段が、支持部材を用いて前記基板に取り付けられており、
前記基板の背面の全面に、前記遊技部と対向するように格子状パターンの切り込みが形成されてなることを特徴とする遊技機。」(以下「本願補正発明」という。)

4.引用刊行物の記載事項及び引用発明並びに引用発明2の認定
(1)引用例1に記載の事項および引用発明について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-318026号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のA?Dの記載が図示とともにある。

A「【請求項1】 遊技板の表側に透光性樹脂層を形成すると共に前枠側の遊技板取付枠に発光手段を設け、該発光手段で前記遊技板の透光性樹脂層を側方から照らすようにしてなることを特徴とするパチンコ機。」

B「【0010】一方、遊技板3は合成樹脂製であって、裏側が硬質塩化ビニル低発泡樹脂からなる発泡樹脂層9で、表側が透明な非晶性ポリエステル樹脂からなる透光性樹脂層10である。透光性樹脂層10を構成する非晶性ポリエステル樹脂や発泡樹脂層9を構成する硬質塩化ビニル低発泡樹脂は、従来のベニヤ板に似た性質を有するもので、障害釘12aや風車12bなどを打ち込んでも割れない。従って、釘打ち箇所をポンチで刻印して障害釘12aや風車12bを打ち込むなど、従来通りの方法で遊技板3のゲージを作ることができ、また、日常の釘調整が可能になる。さらにまた、発泡樹脂層9を構成する低発泡樹脂は、金型成形が可能で加工性がよいため、遊技板3の裏面に例えば他の部品の取付台や入賞球の案内樋などを一体成形する、といった複雑な加工も可能である。」

C「【0011】また、発泡樹脂層9と透光性樹脂層10の間には適宜な図柄を印刷したフィルム11が挟み込まれており、透光性樹脂層10を介して該フィルム11の図柄が見える。なお、透光性樹脂層10は公知の光拡散樹脂で形成するようにしてもよい。透光性樹脂層10を光拡散樹脂で形成した場合には、後述する発光手段13の光が透光性樹脂層10内で乱反射するから遊技板3の表側がほぼ均一に発光する。」

D「【0012】而して、前記左右の遊技板取付枠5c,5dには図1,図2のように発光手段13が設けられている。図示した発光手段13はコンパクトサイズの蛍光灯であって、遊技板取付枠5c,5dの立壁6に形成した凹状の取付溝14内に組み込まれていて前記遊技板3の透光性樹脂層10の側面に対向する。この発光手段13は、蛍光灯以外にも発光ダイオードや白熱電球など、照明としての機能があれば何でもよい。発光ダイオードはチップ状の形態にして遊技板取付枠5a?5dの全周に貼り付けることが可能であり、また、発光色の異なる発光ダイオード(例えば光の三原色)を交互に配置して選択的に点灯させるようにすれば、遊技板3の色を自由に変更することができる。また、発光手段13の取付位置も立壁6に限るものではなく、図1に二点鎖線で示したように、当壁7に取付溝14を形成してそこに組み込むようにしてもよい。立壁6に発光手段13を組み込んだ場合は当壁7を、また、当壁7に発光手段13を組み込んだ場合は立壁6を、例えば白色にしたり鏡面加工を施すなどして反射板として利用するようにすれば、光の拡散度が向上して好ましい。」

E「【0015】また、入賞装置15の裏側に突出する案内箱を次のようにすれば、案内箱が遊技板3を貫通していても発光手段13の光が拡散し易くなる。」

F「【0017】また、発泡樹脂層9と透光性樹脂層10の間にあるフィルム11に、温度の高低によって変色する塗料で図柄を印刷し、さらに発泡樹脂層9にヒーターを組み込んでフィルム11の温度を制御するようにすれば、自由に図柄の色を変化させることができる。また、実施例の遊技板3は、合成樹脂の二層構造であるが、例えば透光性樹脂層10の単体構造にしたり、或いは発泡樹脂層9を従来のベニヤ板に替えて合成樹脂(透光性樹脂層10)と木の複合構造にするようにしてもよい。」

上記C及びFの記載から遊技板3を透光性樹脂層10の単体構造とできる点が開示されているから、遊技板3が透光性樹脂層10からなっているといえることは明らかであり、かつその遊技板3の透光性樹脂層10を光拡散樹脂で形成出来る点が開示されている。
また上記D及び図1,図2の記載からみて、発光手段13は細長い形状で、透光性樹脂層10に隣り合った配置となっており、また「遊技板3の透光性樹脂層10の側面に対向する」と記載されているので、発光手段13は透光性樹脂層10の側面近傍に沿うように配置されているものと認められる。

したがって、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。(以下「引用発明」という。)
「透光性樹脂層10からなる遊技板3に障害釘12aや風車12bを打ち込み、入賞装置15を有するパチンコ機において、透光性樹脂層10は光を乱反射させる光拡散樹脂で形成され、該透光性樹脂層10の側面近傍に沿うように発光手段13が配置されており、前記発光手段13が遊技板取付枠5c,5dの立壁6に形成した凹状の取付溝14内に組み込まれているパチンコ機。」

(2)引用例2に記載の事項および引用発明2について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-269548号公報(以下「引用例2」という。)には、以下のGの記載が図示とともにある。

G「【0016】このようにして、パネルフレーム90とパネル押え100とにより上部パネル30を挟むようにして、上部パネル30をパネルフレーム90に固定することができる。上部パネル30を後方から照明する面発光体120は、図4に示すように、板状の導光体121の前面に拡散シート122を張り付けるとともに、導光体121の後面に反射シート123を張り付け、導光体121の両端側にそれぞれ冷陰極管124,124を臨ませたもので、冷陰極管124,124を発光させることにより導光体121の全体を均一に発光させることができるものである。
【0017】
上記面発光体120を上部パネル30後方に取り付けるには、図2,3に示すように、上部パネル30の後側から面発光体120を臨ませるとともに、上部パネル30と面発光体120の辺部間に緩衝材130を介在させ、面発光体120後面から面発光体押え具110を臨ませ、面発光体押え具110のネジ孔111にネジ(図示せず)を挿通し、ネジの先端を面発光体押え取付部93のネジ穴95にネジ込めばよい。」

上記G及び図4の記載からみて、面発光体120は導光体121と発光手段である冷陰極管124、拡散シート122、反射シート123で構成されており、段落【0017】の記載からみて、これらの部材は事前に組み立てられて一体化しているものと認められる。したがって発光手段である冷陰極管124と導光体121は何らかの手段により結合された状態となっているといえる。つまり冷陰極管124と導光体121の関係は、何らかの手段によりいずれかがいずれかに取り付けた状態となっており、導光体121の両端側を主体とみれば導光体121に冷陰極管124が固定手段によって取り付けられていると言える。

したがって、引用例2には次のような発明が記載されていると認めることができる。(以下「引用発明2」という。)
「導光体121の両端側に固定手段によって発光手段である冷陰極管124を取り付けた面発光体。」

5.本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点の認定
引用発明の「表側」は本願補正発明の「前面」に相当する。以下同様に、「障害釘12aや風車12b」は「複数の障害物」に、「打ち込む」は「取り付け」に、「入賞装置15」は「入賞装置」に、「遊技板3」は「遊技盤」に、「パチンコ機」は「遊技機」に、「透光性樹脂層10」は「透光性樹脂部材」に、「側面近傍」は「端面近傍」に、「発光手段13」は「発光手段」にそれぞれ相当する。

そして引用発明において、以下のことがいえる。
引用発明においても透光性樹脂層10には障害釘12aや風車12b、入賞装置15が取り付けられており、その点では本願補正発明の基板と何ら差異はない。
また引用例1には、本願補正発明の「発射部から発射された遊技球が流下する遊技部」は明記されていないが、引用発明はパチンコ機であって、透光性樹脂層10は、その表側に障害釘12aや風車12bを打ち込んでおり、遊技部を構成していることは明らかであり、かつ、透光性樹脂層10からなる遊技板3上を遊技球が通過するものであるから、引用発明の遊技板3は該構成を当然備えているものであると認められる。

以上を勘案すると、本願補正発明と引用発明とは、
「基板の前面に、複数の障害物および入賞装置が取り付けられ発射部から発射された遊技球が流下する遊技部が設けられてなる遊技盤を備えた遊技機において、
前記基板が透光性樹脂部材からなり、
前記基板の端面近傍に、該端面に沿うようにして発光手段が配置されてなることを特徴とする遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
1.本願補正発明においては発光手段が、支持部材を用いて前記基板に取り付けられているのに対し、引用発明においては、発光手段は取付枠5c,5dの立壁6に形成した凹状の取付溝14内に組み込まれている点。
2.本願補正発明においては基板の背面の全面に、前記遊技部と対向するように格子状パターンの切り込みが形成されているのに対し、引用発明においてはそのような切り込みが存在しない点。

6.相違点の判断及び本願補正発明の独立特許要件の判断
引用発明2は「導光体121の両端側に固定手段によって発光手段である冷陰極管124を取り付けた面発光体」である。
そして、引用発明と引用発明2は、遊技機分野における照明装置の改良という技術課題の点で共通するのであるから、引用発明に引用発明2を適用することに格別の困難性はない。
そうすると引用発明の発光手段を、引用発明2のように固定手段(本願補正発明の「支持部材」に相当)によって透光性樹脂層10の側面に取り付けられること、すなわち本願補正発明の上記相違点1に係る構成とすることは、当業者であれば容易になしうる。

次に引用発明においても透光性樹脂層10で乱反射させ、その結果、遊技板3の表側をほぼ均一に発光させる点が開示され、その乱反射によって光を外方へ導いている。ところで照明装置において、光をレンズ外方へ導くための凹凸部分を設けることは、拒絶理由で提示した実願昭60-35400号(実開昭61-153201号)のマイクロフィルム等に記載されるとともに、格子状パターンの切り込みを形成することも、例えば、特開平7-294745号公報(特に段落【0054】)、特開平8-101313号公報、特開平8-94840号公報に開示されているように、本願出願前に既に周知の技術である。そして上記特開平7-294745号公報の段落【0002】に記載されるように、これらの照明装置が種々の電気機器やゲーム機器に適用されることもよく知られている。
したがって引用発明の透光性樹脂層10に、上記周知の技術を適用して、本願補正発明の上記相違点2に係る構成とすることは、当業者であれば容易になしうることにすぎない。
また、本願補正発明の作用効果は、引用発明、引用発明2及び周知の技術に基づいて当業者が容易に予測できる程度のものである。

よって、本願補正発明は、引用例明、引用発明2及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に該当して、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

7.補正却下の決定のむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項及び第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明の認定
上記第2のとおり平成18年2月3日付の手続補正が却下されたので、平成17年7月8日付の手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、本願の請求項2に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「基板の前面に複数の障害物および入賞装置が取り付けられてなる遊技盤を備えた遊技機において、
前記基板が透光性樹脂部材からなり、
前記基板の端面近傍に、該端面に沿うようにして発光手段が配置されており、
前記発光手段が、支持部材を用いて前記基板に取り付けられており、
前記基板の背面に格子状パターンの切り込みが形成されていることを特徴とする遊技機。」 (以下、「本願発明」という。)

2.特許法第29条2項の適用
(1)引用例発明及び引用発明2について

引用発明及び引用発明2は、上記第2の4.(1)、(2)に示したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、本願補正発明において、基板について「発射部から発射された遊技球が流下する遊技部」を、基板の背面に格子状パターンについて「全面に、前記遊技部と対向するように」をそれぞれ削除したものである。

そうすると、本願発明の構成要素を全て含み、さらに、他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2の5.から6.に説示したように、引用発明、引用発明2及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明、引用発明2及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用例明、引用発明2及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-10 
結審通知日 2008-07-17 
審決日 2008-08-25 
出願番号 特願平10-236636
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 陽飯野 茂  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 深田 高義
小原 博生
発明の名称 遊技機  
代理人 川野 宏  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ