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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1185748
審判番号 不服2005-15806  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-18 
確定日 2008-10-10 
事件の表示 特願2001-356631「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月27日出願公開、特開2003-154117〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
1.本願の主な経緯は以下の通り。
平成13年11月21日 出願
平成17年 4月19日 拒絶理由通知
平成17年 6月14日 意見書・補正書
平成17年 7月12日 拒絶査定
平成17年 8月18日 審判請求

2.本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年6月14日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「図柄変動表示器が設けられ、始動条件が成立することで複数の図柄を変動表示する第1場面と、複数の図柄を変動表示した後にリーチ状態を経て各図柄の変動を停止させる第2場面と、該第2場面における停止図柄が所定の特別態様であった場合に該停止図柄を再変動させ確定図柄にて再停止させる第3場面を夫々前記図柄変動表示器に表示し、前記停止図柄が前記特別態様であることに基づいて可変入賞装置が開成状態となることにより遊技者にとって有利な特別遊技を発生させ、前記確定図柄が所定の特定態様であった場合は特別遊技が終了した後における停止図柄が特別態様になる確率を通常遊技中よりも上昇させることにより遊技者にとってさらに有利な特定遊技を発生させる遊技機であって、通常遊技中は第2場面の時間を第3場面の時間よりも長く設定し、特定遊技中は第3場面の時間を第2場面の時間よりも長くかつ通常遊技中の第3場面の時間よりも長く設定したことを特徴とする遊技機。」

第2 当審の判断

1.引用刊行物の記載事項
(1)第1引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-300760号公報(以下「第1引用例」という。)には、以下のA?Hの記載が図示とともにある。

A「遊技盤1の表面には、発射された打玉を誘導するための誘導レール2がほぼ円状に植立され、該誘導レール2で区画された領域が遊技領域3を構成している。遊技領域3のほぼ中央には、後述する各特別図柄表示部43?45での識別情報(以下、特別図柄という)の可変表示(以下、変動ともいう)を可能にする特別可変表示装置40が配置されている。」(段落0007)

B「特別可変表示装置40の左側方には、普通可変表示装置8が配置されている。普通可変表示装置8は、その上端に玉通過口9を備えると共に該玉通過口9の内部に備えた通過玉検出器10が通過玉を検出することで、玉通過口9の下方に備えた普通図柄表示器11での識別情報(以下、普通図柄という)の変動を許容するようになっている。なお、普通図柄表示器11は、普通図柄が当り図柄となったときに、普通可変入賞球装置4の可動翼片6a・6bを所定時間が経過するまで開放制御するものであるが、後述する確率変動(大当り判定確率を通常時と異なる確率に変更した遊技状態)が生じたときには、開放時間が長くなるように設定されている。」(段落0009)

C「打玉が普通可変入賞球装置4に入賞して始動玉検出器7をONさせると、特別可変表示装置40が変動を開始し、一定時間が経過すると、例えば左・右・中の順で特別図柄が確定され、その確定された図柄の組み合せが大当り図柄(特定表示結果)となったときに特定遊技状態となる。そして、この特定遊技状態においては、特別可変入賞球装置15の開閉板19が所定期間(例えば、29秒)あるいは所定個数(例えば、10個)の入賞玉が発生するまで開放する(開放サイクル)ように設定され、その開放している間遊技盤1の表面を落下する打玉を受け止めるようになっている。」(段落0011)

D「確率変動の具体的な制御は、確変図柄による特定遊技状態(条件装置の作動)の終了を契機に当り確率を高確率に変動させ、」(段落0016)

E「普通可変入賞球装置4に打玉が入賞して始動玉検出器7(同図中には、始動口入賞と記載)がONされ始動信号を導出すると、その始動信号の立ち上がり時にランダム1・3からランダム数を抽出してこれを格納する。このようなランダム1・3の抽出時期は、始動記憶となる場合でも同一である。その後、始動信号の導出から微少時間(0.132秒)が経過したときに、格納したランダム1の値を読み出して当り外れを判定し、これと同時にランダム2を抽出する。なお、このとき、ランダム1の値から大当りを判定した場合には、格納したランダム3の読み出しを行う。その後、始動信号の導出から0.134?0.150秒後には、ランダム1・2の抽出に伴いリーチとなる場合、ランダム6を抽出する。
【0022】その後、始動信号の導出から0.190秒が経過すると、変動パターンAで左・中・右の図柄の変動を同時に開始させる。そして、左図柄に対しては、変動開始から6.300秒が経過すると、停止図柄の1図柄手前をセットして0.160秒間変動パターンBで変動させる。右図柄に対しては、変動開始から6.460秒が経過すると、停止図柄の5図柄手前をセットして0.800秒間変動パターンBで変動させる。なお、このような左右の図柄変動は、リーチ以外及びリーチ1・2の変動パターンであり、リーチ3・4については後で詳述する。また、左右の図柄変動において、確率変動時(高確率時)には、変動パターンAの変動時間がそれぞれ2.160秒、2.320秒に短縮される。
【0023】最終停止図柄となる中図柄に対しては、図9に示すように、リーチ以外の場合では、変動開始から7.260秒が経過すると、停止図柄の5図柄手前をセットして0.800秒間変動パターンBで変動させる。」(段落0021?0023)

F「また、上記したリーチ1・2では、表示結果が大当りとなり、非確変図柄で大当りもしくは確変図柄で大当り且つランダム7の抽出値が「0」となった場合、各リーチ1・2の終了時点で一旦仮当り図柄を導出し、その後、再変動を実行するようになっている。つまり、リーチ1・2の終了時点で前記仮停止表示用のランダム8の抽出値に応じた仮当り図柄(非確変図柄)を一旦停止し、再変動後に大当り図柄配列用のランダム3の抽出値に応じた最終的な当り図柄を導出する。具体的には、図12に示すように、仮当り図柄の導出後、左・中・右の図柄がそれぞれ同期して再変動を行う。即ち、仮当り図柄の導出から960ms間一旦停止し、その後、120ms(0.5図柄分、30ms/STEP)の変動パターンで逆回転し、再度960ms間の一旦停止を行った後に2040?5880ms(8+0.5?24+0.5図柄分(4図柄毎に停止位置)、30ms/STEP)の変動パターンで変動して最終的な表示結果(当り図柄)を導出する。」(段落0026)

また上記E及びFの記載からみて、リーチ1では左・中・右の図柄変動を開始した後、全図柄を変動させる状態と、その後に左図柄、右図柄の順に停止させてリーチとした後、中図柄を停止させる状態と、仮当り図柄を一旦停止し、再変動後に最終的な当り図柄を導出する状態をそれぞれ特別可変表示装置に表示する場合があると認められる。

(2)第2引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-238359号公報(以下「第2引用例」という。)には、以下のG、Hの記載が図示とともにある。

G「確率変動時におけるキャラクタ画像のリーチ変動時間を短縮することで遊技進行の迅速化を招来し、ひいては遊技の興趣を向上し得る可変表示装置を備えた弾球遊技機を提供することにある。」

H「通常確率時と高確率時とで前記第一可変表示部にて表示するリーチ時のリーチ変動表示態様を異ならせるリーチ変動表示態様制御手段」

2.引用例記載の発明の認定

記載A?Fを含む第1引用例の全文記載及び図示によれば第1引用例には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「特別可変表示装置が設けられ、普通可変入賞球装置4に打玉が入賞して始動玉検出器7がONされ始動信号を導出すると、左・中・右の図柄変動を開始した後、全図柄を変動表示させる状態と、その後に左図柄、右図柄の順に停止させてリーチとした後中図柄を停止させる状態と、仮当り図柄を一旦停止し、再変動後に最終的な当り図柄を導出する状態を夫々特別可変表示装置に表示し、確定された左・中・右の図柄の組み合せが大当り図柄となったときに、特別可変入賞球装置15の開閉板19が所定期間開放する特定遊技状態となり、前記確定された左・中・右の図柄の組み合せが確変大当り図柄となった場合は前記特定遊技状態の終了を契機に大当り判定確率を通常時と異なる確率に変更した遊技状態を生じさせる弾球遊技機。」

3.本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定

そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、
引用発明の「特別可変表示装置」は、本願補正発明の「図柄変動表示器」に相当し、以下同様に、
「普通可変入賞球装置4に打玉が入賞して始動玉検出器7がONされ始動信号を導出すると」は「始動条件が成立することで」に、
「左・中・右の図柄の変動を開始」は「複数の図柄を変動表示」に、
「左・中・右の図柄変動を開始した後、全図柄を変動表示させる状態」は「複数の図柄を変動表示する第1場面」に、
「その後に左図柄、右図柄の順に停止させてリーチとした後中図柄を停止させる状態」は「複数の図柄を変動表示した後にリーチ状態を経て各図柄の変動を停止させる第2場面」に、
「仮当り図柄を一旦停止し、再変動後に最終的な当り図柄を導出する状態」は「該停止図柄を再変動させ確定図柄にて再停止させる第3場面」に、
「大当り図柄となったときに」は「特別態様であることに基づいて」に、
「特別可変入賞球装置15の開閉板19が所定期間開放する特定遊技状態となり」は「可変入賞装置が開成状態となることにより遊技者にとって有利な特別遊技を発生させ」に、
「確定された左・中・右の図柄の組み合せが確変大当り図柄となった場合」は「確定図柄が所定の特定態様であった場合」に、
「特定遊技状態の終了を契機に大当り判定確率を通常時と異なる確率に変更した遊技状態を生じさせる」は「特別遊技が終了した後における停止図柄が特別態様になる確率を通常遊技中よりも上昇させることにより遊技者にとってさらに有利な特定遊技を発生させる」に、
「弾球遊技機」は「遊技機」に、それぞれ相当する。

また、引用発明の「確定された左・中・右の図柄の組み合せ」と本願発明の「第2場面における停止図柄」は、いずれも「複数の図柄の停止態様」である点で共通していると言える。

以上を総合すると、両者は、
「図柄変動表示器が設けられ、始動条件が成立することで複数の図柄を変動表示する第1場面と、複数の図柄を変動表示した後にリーチ状態を経て各図柄の変動を停止させる第2場面と、該停止図柄を再変動させ確定図柄にて再停止させる第3場面を夫々特別可変表示装置に表示し、複数の図柄の停止態様が特別態様であることに基づいて可変入賞装置が開成状態となることにより遊技者にとって有利な特別遊技を発生させ、前記確定図柄が所定の特定態様であった場合は特別遊技が終了した後における停止図柄が特別態様になる確率を通常遊技中よりも上昇させることにより遊技者にとってさらに有利な特定態様を発生させる遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1
本願発明が「第2場面における停止図柄が特別態様であることに基づいて可変入賞装置が開成状態となる」のに対して、引用発明は「確定された左・中・右の図柄の組み合せ(本願発明の「確定図柄」に相当)が大当り図柄となったときに、特別可変入賞球装置15の開閉板19が所定期間開放する」点。

相違点2
本願発明においては、「通常遊技中は第2場面の時間を第3場面の時間よりも長く設定し、特定遊技中は第3場面の時間を第2場面の時間よりも長くかつ通常遊技中の第3場面の時間よりも長く設定」しているのに対し、引用発明においては、「通常時」(本願発明の通常遊技中に相当)と「大当り判定確率を通常時と異なる確率に変更した遊技状態」(本願発明の特定遊技中に相当、以後「確率変更遊技状態」という)とで「その後に左図柄、右図柄の順に停止させてリーチとした後中図柄を停止させる状態」(本願発明の第2場面に相当、以後「第2の状態」という)の時間と「仮当り図柄を一旦停止し、再変動後に最終的な当り図柄を導出する状態」(本願発明の第3場面に相当、以後「第3の状態」という)の時間を変更するようになっていない点。

4.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
相違点1について
本願発明においては第2場面の停止図柄が特別態様であることによって、可変入賞装置が開成状態となる特別遊技を発生させることが遊技者に示される。引用発明においては、本願発明の第2場面の停止図柄に相当するものは仮当り図柄であるが、第1引用例の上記記載F(段落0026)の「ランダム8の抽出値に応じた仮当り図柄(非確変図柄)」からは仮当り図柄が特定遊技状態(特別遊技)となることを遊技者に示すものか否かは明らかでない。そして引用発明は「確定された左・中・右の図柄の組み合せ」(確定図柄)が大当り図柄(特別態様)となったときに特定遊技状態(特別遊技)となるものである。
しかし第1引用例の上記記載F(段落0026)の「リーチ1、2では・・・・・・再変動を実行するようにしている。」からすると、表示結果が大当りとなる場合に、一旦仮当り図柄を導出し、その後再変動を実行するのであるから、仮当り図柄を非確変図柄の大当り図柄(特別態様)として、遊技者に事前に特定遊技状態になることを示すことは、従来事前に大当り告知を行うことが広く行われている技術背景を考慮すると、当業者が容易に想到し得ることである。また本願発明は第2場面の停止図柄が特別態様である場合に、可変入賞装置が開成状態となるタイミングや、停止図柄の種類によってどのような開成状態となるかを格別限定したものではないので、特別遊技を第2場面の停止図柄に基づいて発生させるか、引用発明のように第3の状態において確定された左・中・右の図柄の組み合せに基づいて発生させるかによる実質的な差異はない。

相違点2について
第2引用例の上記摘記Gに記載されているように確率変動時(特定遊技中)に、遊技の興趣を向上するためリーチ変動時間を通常確率時よりも短縮する、いわゆる時短という制御がなされる。また第2引用例の上記摘記Hには通常確率時と高確率時(確率変動時)とで、表示部にて表示するリーチ時のリーチ変動表示態様を異ならせることが記載されている。これらの記載から通常確率時と確率変動時では時短やリーチの表示態様の変更など演出パターンを変更するという思想が本願の出願前に既に開示されていると認められる。
表示態様の変更を行う動機は、遊技者にとっての関心事項である部分を盛り上げる、あるいは遊技者に期待を抱かせるためであり、様々な表示態様の変更は遊技機の分野で通常行われていることである。そして表示態様については、例えば、図柄の変動の時間を変えることや、引用発明にあるように再変動を行わせることなど、様々な形態が考えられるが、一般的には遊技者にとって有利な状態になる確率が高い時、演出に時間をかけることが行われている。
ところで、遊技者にとって最も関心の大きい有利な状態とは通常直接の利益となる大当りであるが、大当りの確率が通常時よりも高い確変に突入するか、確変時であれば確変が継続するかということも挙げられる。
また、遊技機において、通常時における確変突入率よりも確変時(特定遊技状態)における確変継続率の方が高いということは、例えば、特開平8-32300号公報(段落0075)、特開平9-276498号公報(段落0036)にあるように確率の設定手法として一般的である。そのような場合、確変突入または確変継続か否かという遊技者にとって有利な状態になる確率は、確率変更遊技状態の方が通常時よりも高いと言える。
そうであれば引用発明においても通常時よりも、確率変更遊技状態において、「左・中・右の図柄の組み合せ」が確変大当たり図柄となるか否かが確定する第3の状態(本願の第3場面)に時間をかけることは、当業者であれば通常行う設計的事項である。
このことは時短と矛盾するものではない。なぜならば時短は変動表示結果がハズレである場合に、次回の変動表示を素早く行うことに意義があり、ハズレであればそもそも第3状態が存在しないからである。
さらに、前記したように、確率変動時にいわゆる時短という制御がなされることも知られているので、引用発明において、確率変更遊技状態で、第2の状態(本願発明の第2場面)を通常時よりも短縮し、結果的に通常時は第2の状態を第3の状態より長く設定し、確率変更遊技状態では第3の状態を第2の状態よりも長く設定することは、当業者が容易に想到し得ることである。
以上のように相違点2は演出効果を考慮すれば、当業者であれば容易になしうる設定にすぎない。

そして、上記相違点を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。

したがって、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび

本願発明が特許を受けることができない以上、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-09 
結審通知日 2008-05-20 
審決日 2008-08-21 
出願番号 特願2001-356631(P2001-356631)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大浜 康夫  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 小原 博生
深田 高義
発明の名称 遊技機  
代理人 伊藤 浩二  

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