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審決分類 審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C08F
審判 全部無効 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  C08F
審判 全部無効 2項進歩性  C08F
管理番号 1186283
審判番号 無効2006-80174  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-09-06 
確定日 2008-09-09 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2132069号発明「重合可能なセメント混合物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯・本件発明

(1)手続の経緯
本件特許第2132069号に係る発明についての出願は、昭和61年10月9日に出願(優先日 1985年10月9日 西ドイツ)され、平成6年9月7日に出願公告されたところ、株式会社クラレ及び山本美奈子より特許異議の申し立てがなされ、平成7年12月27日付けで手続補正書が提出され、平成9年6月6日付けで「この特許異議の申立は、理由がないものと決定する」との決定がなされるとともに本件発明について特許査定なされ、同年9月12日に特許権の設定登録がなされたところ、平成18年9月6日付けで、特許請求の範囲第1項に係る特許について、株式会社ジーシーにより本件無効審判請求がなされ、平成19年1月11日付けで請求人より上申書が提出され、平成19年1月29日付けで被請求人より答弁書及び訂正請求書が提出され、平成19年3月12日付けで請求人より弁駁書が提出され、平成19年4月24日付けで請求人より口頭陳述要領書、上申書(2)及び上申書(3)が提出され、同日付けで被請求人より口頭陳述要領書、上申書及び上申書(2)が提出され、平成19年4月24日に特許庁第2審判廷において、第1回口頭審理がなされ、口頭審理終了後に書面審理へ移行が宣言されたものである。

(2)訂正請求
平成19年1月29日付け訂正請求書による訂正請求の趣旨は、特許第2132069号の訂正前の明細書を、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することであって、次のとおりである。

訂正事項1:
特許請求の範囲の請求項1について、訂正前に
「1 次の成分:
(a)酸基及び/またはその酸から誘導される反応性誘導体基を含む、重合可能な不飽和モノマー及び/またはオリゴマー及び/またはプレポリマーと、
(b)ホスフェートセメント(ZnO/MgO)、Ca(OH)_(2)セメント、シリケートセメント、アイオノマーセメントまたはイオン交換ゼオライトから選ばれる、該酸基または酸誘導体基と反応しうる反応性充填剤と、
(c)硬化剤と
を含有する重合可能なセメント混合物であって、
該成分(a)及び(b)は、該成分(a)における酸基または酸誘導体基が該成分(b)の微粉状の反応性充填剤とイオン的に反応し、セメント反応を受け得るように選ばれることを特徴とする重合可能なセメント混合物。」であったものを、
「1 次の成分:
(a)酸基及び/またはその酸から誘導される反応性誘導体基を含み、次の(b)の成分と混合された場合において、重合可能であると共に(b)の成分とのイオン反応をなしうる、不飽和モノマー及び/またはオリゴマー及び/またはプレポリマーと、
(b)ホスフェートセメント(ZnO/MgO)、Ca(OH)_(2)セメント、シリケートセメントまたはアイオノマーセメントから選ばれる、該酸基または酸誘導体基とのイオン反応を介して硬化しうる微粉状の反応性充填剤と、(c)硬化剤と
を含有する重合可能なセメント混合物であって、
該成分(a)及び(b)は、該成分(a)における酸基または酸誘導体基が該成分(b)の微粉状の反応性充填剤とイオン的に反応し、セメント反応を受け得るように選ばれることを特徴とする重合可能なセメント混合物。」
と訂正するものである。

訂正事項2:特許明細書第34頁11行における、「ゼオライト、」との記載を削除する訂正。

訂正事項3:特許明細書第34頁末行における、「ゼオライト、」を削除する訂正。

訂正事項4:特許明細書第35頁17行における「あるいはイオン交換性ゼオライト」との記載を削除する訂正。

訂正事項5:特許明細書第35頁末行ない次第36頁第1行における、「アイオノマーセメント粉末、またはゼオライト粉末」との記載を、「またはアイオノマーセメント粉末」とする訂正。

訂正事項1について
訂正事項1は、成分(a)に関する記載において、「次の(b)の成分と混合された場合において、重合可能であると共に(b)の成分とのイオン反応をなしうる」の記載が追加され(以下、「訂正事項1-(a)」という。)、成分(b)に関する記載において、選択肢の1つである「イオン交換ゼオライト」が削除される(以下、「訂正事項1-(b)-1」という。)とともに、「該酸基または酸誘導体基と反応しうる」を 「該酸基または酸誘導体基とのイオン反応を介して硬化しうる」に変更したもの(以下、「訂正事項1-(b)-2」という。)である。

訂正事項1-(a)について
訂正事項1-(a)は、成分(a)をさらに「次の(b)の成分と混合された場合において、重合可能であると共に(b)の成分とのイオン反応をなしうる」と限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、当該追加の記載は訂正前の請求項1の記載である「該成分(a)及び(b)は、該成分(a)における酸基または酸誘導体基が該成分(b)の微粉状の反応性充填剤とイオン的に反応し」に基づいたものであるから、訂正事項1-(a)は、成分(a)を「次の(b)の成分と混合された場合において、重合可能であると共に(b)の成分とのイオン反応をなしうる」と限定的に減縮するものである。

訂正事項1-(b)-1について
訂正事項1-(b)-1は、択一的記載の要素の削除に相当するから、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。

訂正事項1-(b)-2について
訂正事項1-(b)-2は訂正前の「反応しうる」を「イオン反応を介して硬化しうる」と変更したものであるが、「イオン反応を介して硬化しうる」の記載は、発明の詳細な説明欄の「重合可能な化合物中に含まれる酸基または酸誘導体基と反応しうる本発明の複合セメント混合物の反応性充填剤としては、・・・充填剤が微粒状で存在し、重合可能なモノマーの酸基とイオン反応を介して反応可能であり、この際にある程度の凝固または硬化が生じ、・・・」(訂正前の明細書第34頁7?17行)の記載からみて、訂正前の「反応しうる」を原的的に減縮するものである。

訂正事項2?5について
訂正事項2?5は特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合性を図るために、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、これらの訂正事項はいずれも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、上記訂正は、平成6年改正前特許法第134条第2項ただし書に適合し、特許法第134条の2第5項において準用する平成6年改正前特許法第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

(3)本件発明
以上のとおりであるから、本件発明は、平成19年1月29日付け訂正請求書に添付された訂正明細書(以下、「特許明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載される次のとおりのものである。
「1 次の成分:
(a)酸基及び/またはその酸から誘導される反応性誘導体基を含み、次の(b)の成分と混合された場合において、重合可能であると共に(b)の成分とのイオン反応をなしうる、不飽和モノマー及び/またはオリゴマー及び/またはプレポリマーと、
(b)ホスフェートセメント(ZnO/MgO)、Ca(OH)_(2)セメント、シリケートセメントまたはアイオノマーセメントから選ばれる、該酸基または酸誘導体基とのイオン反応を介して硬化しうる微粉状の反応性充填剤と、(c)硬化剤と
を含有する重合可能なセメント混合物であって、
該成分(a)及び(b)は、該成分(a)における酸基または酸誘導体基が該成分(b)の微粉状の反応性充填剤とイオン的に反応し、セメント反応を受け得るように選ばれることを特徴とする重合可能なセメント混合物。」

2.請求人の主張の概要及び甲各号証に記載された事項

請求人は、本件発明に係る特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出し、併せて参考試料1?11を提出した。

請求人の主張する無効理由は、審判請求書および平成19年3月12日付の弁駁書に記載されたとおりのものであるが、その概要は次のとおりである。

(i)本件発明は、甲第1、2、3号証に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができなかったものであるから、本件特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである(以下「無効理由1」という。)。
(ii)本件特許明細書には、記載不備があり、特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たしていないから、平成6年改正前特許法第123条第1項第4号により無効とすべきである(以下「無効理由2」という。)。

(証拠方法)
甲第1号証:特開昭60-197609号公報
甲第2号証:米国特許第4224023号明細書
甲第3号証:英国特許出願公開第2094326号明細書
甲第4号証:米国特許第3971754号公報
甲第5号証:Ishiyaku EuroAmerica,Inc.,S.KATSUYAMAら編,
GLASS IONOMER DENTAL CEMENT,1993年に発行,第16頁
甲第6号証:欧州特許第219058号の異議申立に対する答弁書
参考資料1:特公平6-70088号公報
参考資料2:欧州特許第219058号明細書
参考資料3:平成17年(行ケ)第10013号審決取消請求事件の判決 文
参考資料4:特開2001-72688号公報
参考資料5:実験報告書1(2007年2月26日 戸崎 敏 作成)
参考資料6:実験報告書2(2007年2月14日 戸崎 敏 作成)
参考資料7:「岩波理化学辞典第4版」(岩波書店 1987年発行) 1107頁
参考資料8:木村博編「歯科理工学」(クインテッセンス出版 1985 年発行)194頁
参考資料9:長谷川二郎編「新しい歯科材料」(株式会社シーエムシー 1984年発行)137頁
参考資料10:実験報告書3(2007年4月17日 戸崎 敏 作成)
参考資料11:GC EUROPE ホームページ

甲第1号証には次のような記載がある。
(1-1):「(1)分子内に酸性基を有するビニル系モノマーと該モノマーを可視光線により光重合しうる開始剤とからなる歯科用樹脂組成物において、該開始剤が・・・を主要成分とすることを特徴とする歯科用組成物。」(請求項1)
(1-2):「本発明の組成物には上述の重合性単量体および光重合開始剤の他に目的に応じて各種の充填剤が加えられてもよい。この充填剤は有機物であっても無機物であってもよく、有機物としてはポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチルなどの他に、後述の無機充填剤をポリマーで被覆した材料であってもよい。また無機物としては、二酸化ケイ素、アルミナ、各種ガラス類、セラミックス類、珪藻土、カオリン、モンモリロナイト等の粘土鉱物、活性白土、合成ゼオライト、マイカ、弗化カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタンなどよりなる粉末状、繊維状、薄片状のものでありその最大粒子径が100mμ?500mμのものが好ましい。」(第7頁左下欄2?16行)

甲第2号証には次のような記載がある。
(2-1)「1.歯の頸部の非う蝕性腐食病変(a non carious erosion lesion)を修復する際に使用される歯医者のための歯科用修復キットであって、該キットが、・・・(a)充填材を形成させるために(b)と混合させるために調整される粒状固体系は(i)95?105部の微細なシラン処理されたガラス、(ii)0.1?2部の微細シリカ、(iii)0.5?2.5部の過酸化ベンゾイル・・・とから構成されており、(b)また充填材を形成させるために(a)と混合させるために調整される液体結合剤系は・・・(iv)0.001?3部のメタクリル酸・・・とから構成されており、・・・」(第4頁6欄33行?第5頁7欄2行)
(2-2)「3.請求項1の歯科用修復キットにおいて、シラン処理されたガラスが以下の成分を有している。
(1)30?45部の石英、
(2)20?30部の酸化アルミニウム、
(3)10?20部の氷晶石、
(4)4?10部のリン酸アルミニウム、
(5)10?20部の蛍石」(第5頁8欄5?12行)

甲第3号証には次のような記載がある。
(3-1)「本発明に係る3組み(three kits)の例は以下に概略的に記載されており、・・
充填材(粒子の大きさが4?10μm) 100部
過酸化ベンゾイル(BPO)触媒 0.2?2部
ここで、充填材は下記の1つ又は何れかの組合せとすることができる。
(1)石英
(2)米国特許第4,224,023号に記載されているガラス
(3)米国特許第3,971,754号に記載されているガラス・・・・
液体A
・・・メタクリル酸(MAA)0.5部・・・」(第2頁66?110行)

甲第4号証には次のような記載がある。
(4-1)「本発明の充填組成物は、・・・全体を溶け合わせて一体にしたガラス組成物中に訳5?60%、好ましくは25?40%の範囲の濃度で含まれていて、そのガラス組成物が修復基質(restorative matrix)に混入されている。X線不透過材料が取り入れられるそのガラス組織(glass network)は、重量比で25?50%、より好ましくは30?40%のSiO_(2)から形成されており、・・・、Al_(2)O_(3)は・・・5?30%の間、より好ましくは10?20%の間の量で付加されている。・・・融剤(fluxing agents)としては蛍石(CaF_(2))や氷晶石(Na_(3)AlF_(6))が30%まで、より好ましくは10?20%の間の量で付加されている。・・・」(第2頁2欄11?52行)

甲第5号証には次の事項が記載されている。
(5-1)「表2-1はグラスアイオノマー粉末の組成物を示している。G200はグラスアイオノマーセメントの開発者A.D.Wilsonの配合であり、アイオノマーセメントの先駆者の(配合)形式と言うべきものである。製品A及びB(Table2-1)から分かるように、CaF_(2)の量は減らされ、今日のセメントでは美的外観及び透明度の改善のためにAl_(2)O_(3)/SiO_(2)の比が変化している。」(第16頁左欄24?34行)
(5-2)第16頁右欄Table2-1には、グラスアイオノマーセメントの粉末組成物として次ぎのような組成を有する3種類の製品が記載されている。
「A SiO_(2)(41.9) Al_(2)O_(3)(28.6) CaF_(2)(15.7) F1F_(3)(1.6) AlPO_(4)(3.8) NaF(9.3)
B SiO_(2)(35.2) Al_(2)O_(3)(20.1) CaF_(2)(20.1) F1F_(3)(2.4) AlPO_(4)(12.0) NaF(9.9)
G200 SiO_(2)(29.0) Al_(2)O_(3)(16.5) CaF_(2)(34.3) F1F_(3)(7.3) AlPO_(4)(9.9) NaF(3.0)」

甲第6号証は、欧州特許第219058号(本件特許と同じ独国特許出願(DE3536076)を基にした優先権主張がなされたもの)の答弁書である。なお文中のD1とは、甲第3号証(英国特許出願公開第2094326号明細書)を指していて、この答弁書は甲第3号証に対して進歩性を有する旨を主張したものとなっており、具体的には次のような記載がある。
(6-1)「D1に関する比較実験I:0.5/5%メタクリル酸
比較された3つの試験片は次のような構成を有している。
1)0.5%のメタクリル酸を含む、D1の実施例1に従った混合物
2)メタクリル酸を含まない、D1の実施例1に従った混合物
3)5%のメタクリル酸を含む、D1の実施例1に従った混合物
得られた試験片は圧縮強さについて調べられた。3つの試験片全てにおいて、24時間後の圧縮強さは同様に150MPaであった。
1週間の保管後、圧縮強さは10%低下して130MPaとなった。
一連の本件特許における重合可能なセメントの現象が、後養生のセメント反応によって圧縮強さの増加が一週間以内に起こるという事実に基づいていることは明らかである。上記比較実験(圧縮強さは低下した)では、圧縮強さの増加が起こらなかったので、上記比較実験ではセメント反応が起こらなかったと結論づけることは正当であるように思われる。」(第2頁1?20行)

参考資料5には、ホスフェートセメント用粉末0.95重量%と25%マレイン酸水溶液5重量%を混合練和した混合物は、セメント硬化体とならなかったことが記載されている。(参5-1)

参考資料7には次の事項が記載されている。
(参7-1)「沸石・・・ゼオライトともいう。テクトアルミノケイ酸塩・・・化学組成の一般式はW_(m)Z_(n)O_(2n)・SH_(2)O(W=Na,Ca,K,まれにBa,Sr,Z=Si+Al(Si:Al>1),S=不定)」(第1107頁右欄1?8行)

参考資料8には次の事項が記載されている。
(参8-1)「9-4 ケイ酸(塩)セメント(silicate cement)・・・・
1 組成^(3))
粉末:石英、アルミナ(各々30-40%)。
リン酸ソーダ、リン酸カルシウム(約10%)。
クリオライト、フルオライト(約25%)。」(第194頁下から12?5行)

参考資料9には次の事項が記載されている。
(参9-1)「2.成形修復用セメント(グラスアイオノマー)
・・・・・・・・・・・・
2.2組成と反応機構
ほとんどの歯科用セメントの粉末成分が酸化亜鉛(ZnO)であるのに対して、グラスアイオノマー、シリケートセメントのみがアルミノシリケートガラスを使用している。・・・このガラスは・・・約40%のSiO_(2)と約30%のAl_(2)O_(3)と適量のフッ化物などからなり、」(第137頁1?23行)

参考資料10の実験報告書3には、80重量%メタクリル酸水溶液とグラスアイオノマーセメント粉末を重量比1:3の割合で混合練和したところ、硬化した旨が記載されている。(参10-1)

3.被請求人の答弁の概要
これに対して被請求人は、答弁書及び口頭審理陳述要領書において、本件発明は、甲第1、2、3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでないし、明細書の記載に不備はない旨主張している。

4.当審の判断
(1)無効理由1について
以下、請求人が主として主張するところの本件(b)成分について検討する。
甲第1号証における本件(b)成分に相当すると請求人が主張する充填剤は、摘示記載(1-2)にあるように「各種ガラス類、合成ゼオライトなどよりなる粉末状、繊維状、薄片状のもの」であるが、請求人は口頭審理陳述要領書において、参考資料7、8、9を提出し、また上申書(2)を提出し、甲第1号証の「各種ガラス類、合成ゼオライト」の代わりに、同じケイ酸塩である、アイオノマーセメントやシリケートセメントを用いることは当業者が容易に想到できる旨主張している。
しかしながら、「合成ゼオライト、各種ガラス」とアイオノマーセメントやシリケートセメントの組成は、構成する一部の元素が同じというだけで、類似しているとは言い難く(摘示記載(参7-1)(参8-1)(参9-1))、両者が甲第1号証の充填剤として置換可能であるとは、当業者といえども容易に想到しうるものではない。

甲第2号証における本件(b)成分に相当すると請求人が主張する充填剤は、摘示記載(2-1)(2-2)にあるように、「微細なシラン処理されたガラスであって、それが以下の成分を有している。
(1)30?45部の石英、
(2)20?30部の酸化アルミニウム、
(3)10?20部の氷晶石、
(4)4?10部のリン酸アルミニウム、
(5)10?20部の蛍石」(以下「甲第2号証のガラス」という。)であり、ここで石英はSiO_(2)に、酸化アルミニウムはAl_(2)O_(3)に、氷晶石はNa_(3)AlF_(6)に、リン酸アルミニウムはAlPO_(4)に、蛍石はCaF_(2)に相当するので、甲第2号証のガラスは以下の成分を有していると認める。
「SiO_(2) 30?45部
Al_(2)O_(3) 20?30部
Na_(3)AlF_(6) 10?20部
AlPO_(4) 4?10部
CaF_(2) 10?20部」
これについて請求人は甲第5号証を提出し、甲第2号証のガラスはアイオノマーセメントであると主張している。
しかしながら、甲第5号証はその公知年が1993年であり、そこに記載されている3種類のグラスアイオノマーセメントのうち、甲第2号証のガラスと組成が類似しているA,Bなる製品が(摘示記載(5-2)参照)、本件出願時において公知であったとの証拠はないことから、甲第2号証のガラスはアイオノマーセメントと認めることはできない。
したがって、甲第2号証には本件成分(b)が記載されておらず、示唆もない。

甲第3号証における本件成分(b)に相当すると請求人が主張する充填剤は、摘示記載(3-1)にあるように、「(2)米国特許第4,224,023号に記載されているガラス(3)米国特許第3,971,754号に記載されているガラス」であって、それぞれ甲第2号証に記載のガラス、甲第4号証に記載のガラスに相当する。甲第2号証に記載のガラスは前述したように、本件成分(b)に該当しないので、甲第4号証に記載のガラスについて検討すると、摘示記載(4-1)にあるように、歯科用充填組成物に含まれるガラス組成物(ガラス粉末)は、X線不透過材料約5?60%と残りのガラス組織(glass network)とから構成され、このガラス組織に、SiO_(2)が重量比で25?50%、Al_(2)O_(3)が重量比で5?30%、CaF_(2),Na_(3)AlF_(6)が重量比で30%まで含まれている旨記載されており、この記載に基づいてX線不透過材料を下限値の5%として(すなわちガラス組織が最大限含まれている場合に相当する)計算したガラス組成物全体に対するそれぞれの成分の割合は次のようになっている。
SiO_(2) 23.75?47.5%
Al_(2)O_(3) 4.75?28.5%
CaF_(2),Na_(3)AlF_(6) 28.5%まで
請求人は甲第5号証の記載を基に、甲第4号証のガラス組成物はアイオノマーセメントであると主張しているが、甲第5号証はその公知年が1993年であり、そこに記載されている3種類のグラスアイオノマーセメントのうち、甲第4号証に記載のガラスと組成が類似しているA,Bなる製品が(摘示記載(5-1))、本件出願時において公知であったとの証拠はないことから、甲第3号証のガラスはアイオノマーセメントと認めることはできない。
したがって、甲第3号証には本件(b)成分が記載されておらず、示唆もない。
上記のとおり、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証には本件成分(b)について記載も示唆もなく、また甲第1号証において参考資料7,8,9に記載の事項を参酌しても、成分(b)を想到することは当業者が容易になし得る事項ではないから、他の成分について検討するまでもなく、本件発明は甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証それぞれに基づいて当業者が容易に発明できたものではない。

(2)無効理由2について
請求人は概ね次ぎの2つの点について記載不備を主張している。

ア.成分(a)の配合割合を低くした場合には本件発明の効果を奏さない(摘示記載(参5-1)参照)ので、本件発明において発明の効果が奏される範囲に配合割合が規定されている必要があるが、本件発明に成分(a)?(c)の配合割合が記載されていない点。
イ.甲第6号証に示されているようにメタクリル酸を成分(a)として使用した場合には本件発明の効果が得られないにもかかわらず、本件発明から成分(a)としてメタクリル酸が除外されていない点。

それに対し被請求人は概ね次のように主張している。

アについて
本件特許明細書の発明の詳細な説明欄の記載を見ても、本件発明が成分(a)ないし(c)を特定の配合割合で配合することを特徴ないし必須の事項とするものである旨の記載は存在しないから、請求項1に各成分の配合割合が記載されていなくても、発明の構成に欠くことの出来ない事項のみについて記載されてないとは言えない。また、本件特許明細書の発明の詳細な説明欄には、成分(b)の一般的配合割合については明記されており、また重合可能な化合物中における成分(a)の割合も記載されているのであるし、実施例1ないし実施例13には具体的にそれぞれの成分の割合が記載されているのであるから、それら記載に基づいて、当業者が実施のための成分割合の示唆を受けることは十分に可能である。
また参考資料5については、実験報告書1において硬化剤がその具体的物質名も使用量も明かにしていないのであるから、このような実験は採用できないし、例え採用できたとしても、当業者であれば発明の詳細な説明欄に記載されている配合割合を参考にし、作用効果が奏される割合で発明を実施することは当然なし得る事項である。

イについて
請求人が引用している甲第6号証は、甲第3号証に記載されている実施例1についての実験報告書であって、本件特許発明についての実験報告書ではないので、これを基にメタクリル酸を本件発明の成分(a)に該当しないということはできない。

(当審の判断)
アについて
請求人は、上記記載不備がある理由として、成分(a)の配合割合が低く、成分(b)の配合割合が高い場合、成分(b)同士は何らの結合もしないので、成分(b)が微粉状のまま残り全体が固形化しない点を主張し、参考資料5の実験報告書1において実験結果を示している。
しかしながら、確かに本件発明の成分について配合割合は規定されていないが、そうであるからといって、任意の配合割合で所期の効果が奏されるわけではないのは自明であるし、本件発明の詳細な説明には、「酸基または反応性酸誘導体基含有化合物が重合可能な化合物の全体量に占める割合は、特に好ましい混合物では、20%?60%の範囲であり、好ましい混合物では5%?100%の範囲であるが、5%以下の混合物も本発明による混合物に特徴的である明白な効果を有している。」(特許明細書第33頁12?18行)や「反応性充填剤が全充填剤に占める割合は、好ましい混合物で5重量%より多く、特に好ましい混合物では30重量%より多い。しかし、幾つかの例では少ない割合でも、例えばアルカリ性のような、明白な効果を示すことができ、このことは象牙質領域の充填剤には重要である。本発明による混合物の総充填剤含量は特に10%?95%の間であり、好ましくは全混合物の30%?85%(重量%)である。」(第36頁18行?第37頁6行)等の配合割合に関する記載があるし、発明の実施の態様としての記載である実施例1ないし実施例13において、具体的にそれぞれの成分の配合割合が示されているのであるから、当業者であれば所期の効果が奏されるセメント混合物の発明を容易に実施できる。

イについて
請求人は、上記記載不備がある理由として、甲第6号証に記載されている実験報告書の結果を示している。
甲6号証には、D1すなわち甲第3号証の実施例1に従い、0.5%のメタクリル酸と5%のメタクリル酸を含む混合物を実験しているところセメント反応が起こらなかったことが記載されている(摘示記載(6-1))。ここで甲第3号証の実施例1を見てみると、次のような組成のキットAが記載されている。
「粉末AI
Ca(OH)_(2)粉末(Baker Chemical Co.社のF.C.C.グレードのもの) 100部
粉末AII
US4224923号のシラン処理されたガラス 100部
20%の水を含んだBPO(過酸化ベンゾイル) 1.3部
微粒シリカ 0.1部
Fe_(2)O_(3)(黄色染料) 0.02部
液体B
ビスフェノールAグリシジルメタクリレート 56部
ヒドロキシメチルメタクリレート(HEMA) 15部
エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA) 28部
メタクリル酸(MMA) 0.5部
p-メトキシフェノール(MEHQ:抑制剤) 0.06部
N,N-ジヒドロキシエチル-p-トルイジン(DHET:促進剤)0.5部
粉末AIと粉末AIIと5滴の液体A(液体Bの誤記と認められる)5滴と混ぜて作られた。」

上記実験で使用されているUS4224923号のシラン処理されたガラスとは甲第2号証のガラスに相当し、上記4の(1)で述べたように本件発明の成分(b)に該当するとは言えないから、上記実験を行った結果セメント反応が起きなかったからといって、メタクリル酸が本件発明の成分(a)、すなわち本件発明の成分(b)とイオン的に反応し、セメント反応を受け得るものに相当しないとは言えない。

さらに言うなら、請求人が上申書(3)に添付した参考資料10の実験報告書3において、メタクリル酸水溶液とグラスアイオノマーセメント粉末を混合したところ硬化したことが記載されている(参10-1)ことからも、メタクリル酸は本件発明の(a)成分に相当しないとは言えない。
したがって、上記請求人の主張は採用できない。

(3)まとめ
以上のとおり、本件発明は、甲第1?3号証に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないし、さらに参考資料7?10の記載を参酌しても、甲第1?6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないし、また、本件特許明細書には、請求人が主張するような記載不備がなく、本件出願は特許法第36条第3項及び第4項に規定する要件を満たさないとすることもできない。

(4)結論
したがって、上記無効理由には理由がなく、本件発明の特許は、特許法第123条第1項第2号の規定および平成6年改正前特許法第123条第1項第4号に該当しない。

5.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明の特許を無効にすることができない。
審判に関する費用は、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
重合可能なセメント混合物
(57)【特許請求の範囲】
1 次の成分:
(a)酸基及び/またはその酸から誘導された反応性酸誘導体基を含み、次の(b)の成分と混合された場合において、重合可能であると共に(b)の成分とのイオン反応をなしうる、不飽和モノマー及び/またはオリゴマー及び/またはプレポリマーと、
(b)ホスフェートセメント(ZnO/MgO)、Ca(OH)_(2)セメント、シリケートセメントまたはアイオノマーセメントから選ばれる、該酸基または酸誘導体基とのイオン反応を介して硬化しうる微粉状の反応性充填剤と、
(c)硬化剤と
を含有する重合可能なセメント混合物であって、
該成分(a)及び(b)は、該成分(a)における酸基または酸誘導体基が該成分(b)の微粉状の反応性充填剤とイオン的に反応し、セメント反応を受け得るように選ばれることを特徴とする重合可能なセメント混合物。
2 重合可能な化合物が少なくとも2個の重合可能な基と少なくとも2個の酸基もしくはその反応性誘導体基を含有することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の混合物。
3 重合可能な化合物が3個以上の重合可能な基及び3個以上の酸基もしくはその反応性誘導体基を含有することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の混合物。
4 重合可能な不飽和化合物がアクリル基、メタクリル基、ビニル基、スチリル基またはこれらの基の混合物を含有することを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第3項のいずれか1項に記載の混合物。
5 重合可能な不飽和化合物がアクリル基またはメタクリル基を含むことを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第3項のいずれか1項に記載の混合物。
6 酸基がカルボン酸残基もしくはその塩、
次式:

[式中、Rはアルケニル、アリールまたはビニルを意味する。]
を有するリンの酸の残基もしくはその塩、次式:-SO_(2)H、-SO_(3)Hまたは-O-SO_(3)Hを有する硫黄酸の残基もしくはその塩、または次式:

[式中、Rはアルケニル、アリールまたはビニルを意味する。]
を有するホウ素の酸の残基もしくはその塩であることを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第5項のいずれか1項に記載の混合物。
7 反応性酸誘導体基が酸ハロゲン化物、酸無水物の形で存在することを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第6項のいずれか1項に記載の混合物。
8 不飽和モノマーがビスGMAのハロリン酸エステルであることを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第7項のいずれか1項に記載の混合物。
9 オリゴマーまたはプレポリマーが、オリゴマーまたはプレポリマーの基本骨格に結合した重合可能な不飽和基と酸残基、その塩またはその反応性誘導体基とを含有するような化合物であることを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第7項のいずれか1項に記載の混合物。
10 オリゴマーまたはプレポリマーの基本骨格がエチレン系不飽和モノマーのホモポリマーまたはコポリマーであることを特徴とする特許請求の範囲第9項記載の混合物。
11 ポリ(メタ)アクリル化オリゴマレイン酸,ポリ(メタ)アクリル化ポリマレイン酸,ポリ(メタ)アクリル化ポリ(メタ)アクリル酸,ポリ(メタ)アクリル化ポリカルボキシルポリホスホン酸,ポリ(メタ)アクリル化ポリクロロリン酸,ポリ(メタ)アクリル化ポリスルホネートまたはポリ(メタ)アクリル化ポリホウ酸を含有することを特徴とする特許請求の範囲第10項記載の混合物。
12 オリゴマーまたはプレポリマーの基本骨格がポリエステル,ポリアミド,ポリエーテル,ポリスルホン,ポリホスファゼンまたは多糖であることを特徴とする特許請求の範囲第9項記載の混合物。
13 オリゴマーが少なくとも500の分子量を有することを特徴とする特許請求の範囲第9項乃至第12項のいずれか1項に記載の混合物。
14 プレポリマーが少なくとも1,500の分子量を有することを特徴とする特許請求の範囲第9項乃至第12項のいずれか1項に記載の混合物。
15 プレポリマーが最大100,000の分子量を有することを特徴とする特許請求の範囲第9項乃至第12項のいずれか1項に記載の混合物。
16 プレポリマーが最大20,000の分子量を有することを特徴とする特許請求の範囲第9項乃至第12項のいずれか1項に記載の混合物。
17 モノマー、オリゴマーまたはプレポリマーが酸基と重合可能な基とに加えて、アルデヒド基,エポキシド基,イソシアネート基またはハロトリアジン基を付加的に含有することを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第16項のいずれか1項に記載の混合物。
18 酸基または容易に加水分解しうるその反応性酸誘導体基を含有しない、他の重合可能な不飽和モノマー及び/またはオリゴマー及び/またはプレポリマーを付加的に含有することを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第17項のいずれか1項に記載の混合物。
19 酸基または容易に加水分解しうるその反応性酸誘導体基を有するが、不飽和の重合可能な基を含有しない他の化合物を付加的に含むことを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第18項のいずれか1項に記載の混合物。
20 酸基またはその反応性酸誘導体基を含有する重合可能な化合物が、重合可能な化合物の少なくとも5%の割合で存在することを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第19項のいずれか1項に記載の混合物。
21 酸基またはその反応性酸誘導体基を含有する重合可能な化合物が、重合可能な化合物の20%?60%の割合で存在することを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第19項のいずれか1項に記載の混合物。
22 銀または銀合金の微細な粉末がアイオノマーセメントまたはシリケートセメントの微細な粉末とともに焼結されていることを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第21項のいずれか1項に記載の混合物。
23 セメント凝固反応の意味では反応しない無機または有機充填剤がさらに混合されていることを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第2項のいずれか1項に記載の混合物。
24 全充填剤含量に占める反応性充填剤の割合が少なくとも5%であることを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第23項のいずかれ1項に記載の混合物。
25 全充填剤含量に占める反応性充填剤の割合が少なくとも30%であることを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第23項のいずれか1項に記載の混合物。
26 全充填剤の割合が混合物の10%?95%の範囲内であることを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第25項のいずれか1項に記載の混合物。
27 硬化剤が重合触媒または重合触媒系であることを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第26項のいずれか1項に記載の混合物。
28 重合触媒系が光反応性であり、α-ジケトンと第3アミン及び/または第3ホスフィンとから成るものであることを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第20項のいずれか1項に記載の混合物。
29 重合触媒系が別々の2種類の成分から成り、1の成分が有機過酸化物であり、他の成分が第3アミン、硫黄が+2価もしくは+4価の酸化段階で存在する硫黄化合物、または両化合物の混合物であるか、あるいは2価のキレート形成金属イオンを含有することを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第27のいずれか1項に記載の混合物。
30 硫黄化合物含有の2成分混合物の成分が酸含有もしくは酸基含有の重合可能な化合物を含まないが、少なくとも1種類の重合可能な水酸基含有モノマーを含むことを特徴とする特許請求の範囲第29項記載の混合物。
【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は、特に歯科治療と医療に用いるための重合可能なセメント混合物に関する。
(従来の技術並びに発明が解決しようとする問題点)
歯科医術では、一連のセメントが種々な用途に用いられており、例えば歯冠及びインレイならびに矯正用装置の固定用、根管充填物として、歯神経保護のための歯科用補修材を挿入するためのプライマーとして、または充填剤そのものとして用いられる。
医療では、幾つかのこのようなセメントが骨用のセメントとして用いられている。歯科用及び医療用セメントは一般に、リン酸またはポリカルボン酸またはサリチル酸誘導体を本質的に含有する処理液とする反応する、微粒状金属酸化物,金属水酸化物,シリケートセメント溶融物またはイオン遊離性ガラスの混合物から成る。
リン酸とシリケートセメント溶融物(シリケートセメント)もしくは金属酸化物(ホスフェートセメント)を主成分とするセメントは高い機械的強度(シリケートセメント)または低い機械的強度(ホスフェートセメント)を示すが、歯髄適合性が非常に低い上に、砕けやすく、また水溶性でありすぎる。ポリカルボン酸と金属酸化物(カルボキシレートセメント)もしくはイオン遊離性ガラス(アイオノマーセメント)を主成分とするセメントは高い機械的強度(アイオノマーセメント)または低い機械的強度(カルボキシレートセメント)を示すが、非常に組織適合性が大きく、歯基質に良好に接着する。しかし、このセメントも砕けやすく、さらに水性媒質中で非常に洗い流されやすく、プラスチック充填剤に化学的に接着せず、プラスチック充填剤とともに凝固しない。
サリチレートと金属酸化物または金属水酸化物、特に水酸化カルシウムとを主成分するセメントは覆髄剤及び根管充填剤として用いられる(例えば、米国特許明細書第3,047,408号)。このタイプのセメントはそのpH値が高いために、充填剤中に含まれることのある酸その他の有害物質に対する保護バリヤーとして作用する。
さらに、このセメントは二次象牙質の形成をもたらす。しかし、硬化した製品の機械的強度は特に高くはなく、また比較的水溶性であるため、この物質はかなり迅速に溶解する。
中和反応、塩形成反応、キレート形成反応または結晶化反応のようなイオン反応を介して、水の存在下で硬化が進行することが、セメントにとって重要である。
セメントは用途に応じて、歯科治療または医療に多かれ少なかれ役立って来た。
セメントは主として、プライマーとして、固定剤として、および、例外的に、歯肉疾患の場合の充填剤としても用いられる。
セメントの大きな欠点、すなわちその易洗出性と低い機械的負荷能力のために、充填剤としてのセメントに代わって耐久性があり、機械的負荷能力が大きく、縁端強度も大きく、非溶解性であり、美容上有利な重合可能なプラスチック充填剤、いわゆる複合材料が用いられるようになっている。
複合材料は、有機または無機の充填剤によって強化される重合可能な結合剤から本質的に構成される。重合可能な結合剤としてはオレフィン性不飽和基を有する化合物、歯科及び医療的用途には特に、任意の他のビニルモノマーとの混合物としての1価アルコールまたは多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルが適している。
無機充填剤としては、周囲の重合可能な結合剤と化学的に結合せず、重合可能な結合剤との良好な結合を得るために連結剤として重合可能なシランを往々にして含有している微粉状石英、微粒状ケイ酸、酸化アルミニウム、バリウムガラス、その他の鉱物性粒子が役立つ。複合材料として重要なことは、その硬化が結合剤のオレフィン性不飽和基の重合によって進行すること、すなわち水の存在を必要としないラジカル反応として進行することである。
現在、歯科用補修剤として主として複合材料(アマルガム以外の)が用いられているとしても、それらの用途は限定されている。複合材料の使用は組織刺激性があり、毒性があるために、深い歯窩に対して、並びに、歯肉縁及び象牙質を補修する場合には複合材料の用途が制限される。複合材料は歯基質に粘着しない。このような場合には、補修剤としてポリカルボン酸と金属酸化物(カルボキシレートセメント)もしくはイオン遊離性ガラス(アイオノマーセメント)を主成分とするセメントが一般に用いられる。このような補修剤は低毒性であり、歯及び骨基質に良好に粘着する。
機械的強度、特に溶解性、分解性及びセメントと複合材料との適合性を改良する試みはまだ行なわれていない。水溶性を減ずるためには、例えば水酸化カルシウムセメントまたはカルボキシレートセメントに、ポリスチレン,ポリビニルアセテートまたはポリビニルブチラールまたはパラフィン油,アマニ油,コロホニウムまたは他の天然樹脂のようなポリマーが加えられていた。分解現象はステアリン酸亜鉛またはエチルトルエンスルホンアミドのような表面活性物質によって低下されていた。
例えば5-メトキシコニフェリンのエステル、いわゆるシリンガ酸誘導体のようなオレフィン系二重結合含有添加物をラジカル反応性触媒の添加と併用すると、機械的強度は幾らか改善され、溶解性は幾らか低下し、複合材料に対する或る程度の結合性が生じた。
(問題点を解決するための手段)
本発明は、一方では歯及び骨基質に対する良好な接着力及び組織適合性のような、ポリカルボン酸とサリチレートとを主成分とするセメントの本質的に有利な特徴を有し、他方では低い溶解性と大きな機械的強度のような、複合材料の有利な特徴を有し、複合材料と共重合することができ、はっきりした分野現象を示さない新規な歯科用混合物を開発すると云う課題に基づいている。
この課題は本発明によると、次の成分:(a)酸基及び/またはその反応性酸誘導体基を含む、重合可能な不飽和モノマー及び/またはオリゴマー及び/またはプレポリマーと、(b)微粉状の金属化合物及び/または金属化合物を含有するガラス及び/または金属化合物を含有するセラミック及び/またはゼオライト及び/または酸化可能な金属及び/または窒化ホウ素、及び/またはこれらの充填剤及び/またはガラスまたはセラミックの混合物の焼結生成物及び/またはこれらの成分と貴金属との焼結生成物と、(c)硬化剤を含有する重合可能なセメント混合物によって解決される。
歯基質に対する接着剤として開発された幾つかの重合可能な樹脂混合物と、通常セメント中に凝固に重要な成分として含まれるような反応性充填剤との組合せによって、硬化可能な混合物が得られ、この混合物はラジカル反応によってもイオン反応によっても硬化しうることが驚くべきことに判明した。これによって、改善された性質と新しい用途の可能性を有する非常に多様な新規な複合セメントが得られる。
酸化物系物質と歯基質に対する良好なプライマーとしても知られている、酸基または反応性酸誘導体基を有する重合可能な不飽和モノマーの例には、リン酸またはホスホン酸の不飽和有機エステル(西ドイツ公告明細書第27-11-234号、西ドイツ公開明細書第31-50-285号)、モノフルオロリン酸の不飽和有機エステル(米国特許明細書第3,997,504号)、塩素または臭素がリンに直接接合したリンの酸の不飽和有機エステル(ヨーロッパ特許出願明細書第0058,483号)、環式ピロホスフェート(無水物)として存在するリン酸の不飽和有機エステル(西ドイツ公開明細書第30-48-410号)、4-メタクリロイルオキシエチルトリメリト酸とその無水物[エム・タケヤマ(M.Takeyama)等のアイ.ジャプ.ソク.エフ.デント.アプ.ア.マト(I.Jap.Soc.f.Dent.App.a.Mat.)19巻、179頁(1978)]、またはポリメリト酸のビス-2-メタクリロイルエチルエステルがある。
通常セメント中に含まれる凝固に重要な成分の例は、例えば西ドイツ特許明細書第2061513号、スイス特許明細書第588863号、西ドイツ公開明細書第2751069号、西ドイツ公開明細書第2750326号、米国特許明細書第4,250,277号、ヨーロッパ特許出願明細書第0023013号、米国特許明細書第4,376,835号に述べられている。
本発明による重合可能なセメント混合物の重合可能な不飽和モノマー、オリゴマーまたはプレポリマーは、アルケニル、アルケニルオキシ、シクロアルケニル、アラルケニルまたはアルケニルアリール基であるが、アクリル、メタクリル、ビニルまたはスチリル基を好ましくは、中でも歯科材料中の多くのモノマーの重合可能な基であるアクリル基またはメタクリル基を特に好ましくは含有することができる。
酸基としては、酸化物糸,無機質系、セラミック系,ガラス系または金属系充填剤と反応しうる基を全て含めることができる。このような酸基は好ましくは、カルボン酸残基、次式:

[式中、Rは例えばアルケニル、アリールまたはビニルを意味する]
を有するリンの酸の残基、次式:-SO_(2)H、-SO_(3)H,または-O-SO_(3)Hを有する硫黄酸の残基、又は次式:

[式中、Rはアルケニル、アリールまたはビニルを意味する]
を有するホウ素の酸の残基である。
-NR_(2)H^(+)または-PR_(2)H^(+)(R=H,アルキル)のようなカチオン性酸残基も適している。
反応性酸誘導体基は反応性充填剤とイオン交換反応、中和反応、塩形成反応またはキレート成形反応しうるかぎり、酸ハロゲン化物、酸無水物、容易に酸に加水分解しうる酸アミド、酸ニトリル及び、例えばシリルエステルまたはt-ブチルエステルのような酸エステルでありうる。カルボキシレート、ホスフェート、ホスホネート、スルホネートまたはボレートの酸残基としてまたはこれらの反応性誘導体としての酸基または反応性酸誘導体基が特に好ましい。
少なくとも2個の重合可能な基または少なくとも2個の酸基もしくは酸誘導体基を含有するような化合物が特に適している。
例を挙げると、グリセリンジメタクリレートのリン酸エステルまたは1-メタクリルオキシエタン-1,1-ジホスホン酸である。
リン対ビスGMAの比が2:1であるときにビスGMAと塩化ホスホリルとの反応によって容易に製造することができる、ビスフェノールAグリシジルメタクリレート(ビスGMA)のクロロまたはブロモリン酸エステルのように、少なくとも2個の重合可能な基と少なくとも2個の酸基とを含有する化合物が特に好ましい。
酸基または酸誘導体基を含有する重合可能な不飽和オリゴマーまたはプレポリマーの例は化学的に非常に安定な分子の基本骨格に結合した重合可能な基と酸基もしくは酸誘導体基とを含有するような化合物である。
重合可能な不飽和オリゴマーまたはプレポリマーは2個の不飽和基及び/または2個の酸基もしくは2個の反応性酸誘導体基を含有するのが好ましいが、3個以上の不飽和基と3個以上の酸基もしくは3個以上の反応性酸誘導体基を有するのが特に好ましい。
このような化合物は、酸化物系基質、無機質系基質、セラミック系基質、ガラス系質、金属系基質及び生物学的基質、特に歯基質に対する非常に良好なプライマー要素であり、本発明によるセメント混合物の成分として特に適したものである。
このような化合物の分子基本骨格は直鎖状、分枝鎖状または環式でありうる。
分子基本骨格が充分に加水分解安定性であり、他方では好ましい重合可能な基を付加でき、好ましい酸基を有するか、または、この好ましい酸基を付加することができる限り、前記化合物はエチレン系不飽和モノマーのポリマー、オリゴマー、または、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリホスファゼン、多糖等のような、ポリマー化合物であってもよい。基本骨格が例えばアルコール,ハロゲン,酸ハロゲン化物,アミノ,エポキシドまたはイソシアネート基のような、グラフト反応を可能にする、結合した多くの官能基を含む場合には、好ましい基をグラフト結合することができる。
このことは、上記基本骨格がどのような要素から構成されているかに拘わず、例えば一般に純粋な形状または混合した形状のポリオール,ポリハロゲン化物,ポリ酸ハロゲン化物,ポリアミン,ポリエポキシド,ポリイソシアネート、ポリ無水物として、本発明による混合物のオリゴマーまたはポリマー化合物を形成しうることを意味する。特に好ましい基本骨格はエチレン性不飽和モノマーのポリマーである。
好ましいオリゴマーまたはプレポリマーの化合物を製造するための基礎となる好ましいオリゴマーまたはプレポリマーの基本骨格化合物は重合可能なモノマーからオリゴマーまたは種々の重合度のポリマーを生ずる適切な反応過程によって製造することができる。
この場合に、一方ではホモオリゴマーまたはホモポリマーを形成するようなモノマー群が適切であり、他方では種々なモノマーの組合せによってコオリゴマーまたはコポリマーを形成するようなモノマー群が適している。
ホモポリマー群からは例えば、酸塩化物として用いられる下記(A)のような不飽和酸のオリゴマーまたはポリマーが適切である。

これを次に第1段階で好ましい割合まで例えばヒドロキシエチルメタクリレートと反応させることができ、遊離の酸基が好ましい場合には、次に第2段階で酸塩化物の残基を加水分解する。基の統計的分布は例えば下記(B)のようになる。

しかし、第2段階(加水分解)の代りに、例えば、1-ヒドロキシエタン-1,1ジホスホン酸のような酸基含有アルコールによるアルコリシス段階を用いて、下記(C)のような生成物を得ることもできる。

本発明の化合物に適した他の基本骨格は、不飽和アルコールからの下記ホモポリマー(D)である。ヒドロキシル基の一部に例えば不飽和酸もしくは不飽和酸塩化物とのエステル化によって、重合可能な基を付加することができる。他の部分は例えばホウ酸または塩化ホスホリルのような酸または酸塩化物と反応して対応する本発明の下記化合物(E)、(F)になることができる。


[(D)、(E)、(F)中R、R′は存在しないか、または、不活性基である]オリゴマーまたはポリマー基本骨格が分子内無水物基または分子内イミド基を含有する場合には、重合可能な基と酸基を1段階で結合させることができる。
下記のような無水マレイン酸のオリゴマーまたはポリマーが特に好ましい。

これは例えば1:1の割合でヒドロキシアルキルメタクリレートと反応して、下記(G)のような生成物を生ずる。若干のヒドロキシメタクリレート及びこの代りの付加的なヒドロキシ酸誘導体を添加すると、下記(H)のような2種類の異なる粘着性基を有する生成物が容易に得られる。

[式中、Sは一般的に酸残基または酸誘導体基であり、Rは任意の基である]
他の群の好ましい基本化合物、すなわちコオリゴマーまたはコポリマーの場合には、例えばビニルホスフェート,ビニルホスホネート,リン酸またはホスホン酸のメタクリル酸エステル,リン,ホウ素及び硫黄の酸基を有するスチリル化合物(例えば、スルホン化スチレン)のような、酸含有または酸誘導体含有のビニルモノマー,スチレンモノマーまたは(メタ)アクリルモノマーを、例えばビニルクロロアセテートまたはクロロメチル化スチレンのような不飽和化合物と共重合させて、例えば下記(I)のような化合物または例えば下記(K)のような化合物が得られる。

このような化合物は、例えば、メタクリル酸ナトリウムに置き換えて重合可能な下記の化合物(L)にすることができる。

不飽和アルコールと不飽和酸との下記コポリマー(M)も例えばメタクリル酸クロライドのような化合物との反応によって下記生成物(N)になる。

基本骨格を構成する場合に、酸基も重合可能な基も有しない単位をも組入れることができる。このようにして、一方では、例えば下記のような不活性なメチルメタクリレート単位(O)を組入れる場合のように、溶解度を変えるためにこれを利用することができる。

他方では、例えばハロトリアゼン基、エポキシド基、イソシアネート基またはアルデヒド基を有する下記の付加的単位(P)の組入れは、歯基質または骨基質のコラーゲン部分との付加的な反応のために利用することができる。

重合触媒系の一部である基を有する単位を組入れることも有利であり、この場合にこれらの基は必ずしも基本骨格の単独重合または共重合の際にこのような基として存在する必要はなく、後から例えばハロゲン、アルコール、無水物またはアミンの官能基を介して結合させることができる。
オリゴマーまたはプレポリマーの基本化合物を生ずる反応過程の性質は、溶剤、溶解度、濃度、温度の選択及び重合触媒系の選択によって決定することができ、このことは当業者に周知である。
用いた重合触媒が反応自体によって分解されることまたはこの残基を、重合可能な基を基本骨格に結合させる前に除去することは重要である。オリゴマー化合物は500より大きい分子量を有するのが好ましく、プレポリマー化合物は1,500より大きく、好ましくは100,000以下特に好ましくは20,000以下の分子量を有するのが有利である。
本発明による混合物は、酸基及び/またはその塩及び/または反応性で容易に加水分解しうる酸誘導体基を含有しない他の重合可能な不飽和モノマー及び/またはオリゴマー及び/またはプリポリマーを含有することもできる。例えばビスGMAまたはトリエチレングリコールジメタクリレートのような通常の複合材料の成分であるモノマーが、特に適している。同様に混合物は、酸基及び/またはその塩及び/または反応性で容易に加水分解する酸誘導体基を含有するが、不飽和の重合可能な基を含有しないような他の化合物を任意にさらに含有することができる。この場合には、多塩基酸または反応性で容易に加水分解しうるその誘導体が好ましい。特に好ましい多塩基酸は酒石酸またはクエン酸のようなヒドロキシ酸であるが、ポリカルボン酸、ポリリン酸またはポリホスホン酸またはポリスルホン酸のようなポリ酸も特に好ましい。
酸基または容易に加水分解する酸誘導体基を含有しない化合物であるキレート形成基含有化合物も加えることができる。このような化合物の例はバニリン酸塩、シリンガ酸塩及びサリチル酸塩である。
酸基または反応性酸誘導体基含有化合物が重合可能な化合物の全体量に占める割合は、特に好ましい混合物では、20%?60%の範囲であり、好ましい混合物では5%?100%の範囲であるが、5%以下の混合物も本発明による混合物に特徴的である明白な効果を有している。この場合に、反応性の酸基または酸誘導体基を含有する重合可能な化合物の全量またはその一部を、反応性充填剤の混合物への混入前に、この混合物上に塗布し、場合によっては痕跡量の水と表面(イオン性)とを反応させるが、重合可能な二重結合は反応させないようにすることが有利である。この操作はこの前処理充填剤を全混合物中に混入した後に初めて、同混合物の重合時に行うべきである。
重合可能な化合物中に含まれる酸基または酸誘導体基と反応しうる本発明の複合セメント混合物の反応性充填剤としては、原則として金属化合物、金属化合物含有ガラスもしくはセラミック、酸化可能な金属、窒化ホウ素ならびに、これらの成分の混合物の焼結生成物が適している。充填剤が微粒状で存在し、重合可能なモノマーの酸基とイオン反応を介して反応可能であり、この際にある程度の凝固または硬化が生じ、反応生成物がなるべく低溶解性であることが前提である。この反応が充填剤の表面においてのみ行なわれることは、充分追求するに値することである。前記金属化合物、ガラス、セラミックまたは卑金属の粉末と、無機充填剤として複合材料中に通常存在するが、それ自体のみでは酸基含有の重合可能モノマーとの反応を全くまたは殆ど示さない貴金属、他のガラスとセラミック、SiO_(2)及び酸化アルミニウム等の粉末との焼結生成物も、有用な充填剤になりうる。
本来のセメント反応をなし、イオン反応を介して行なわれる硬化の一部が、口腔において初めて、重合したセメント物質中に水分が浸透することによって行なわれることも、きわめて満足すべきことであり、有利である。金属が特にカルシウム、マグネシウムまたは亜鉛である金属酸化物と金属水酸化物は本発明の複合セメント混合物にとって、特に適している。
さらに、シリケートセメントの粉末またはアイオノマーセメントの粉末(イオン遊離性ガラス)も好ましいが、この場合にカルシウムを遊離または交換することが特に好ましい。シリケートセメント粉末またはアイオノマーセメント粉末と銀もしくは銀合金の粉末とを混合または焼結し、焼結生成物を粉砕するとしても、好ましい実施例が生ずる。
反応性充填剤は必ずしも単独の充填剤として本発明による混合物に含まれる必要はない。通常、複合材料にとっては、イオン反応またはセメント凝固反応という意味では反応しない有機または無機の他の充填剤、特にシラン化充填剤を混合することも可能である。これは例えば、硬化した生成物が高い機械的または化学的抵抗力を有さなければならない場合に、有利である。さらに、本発明による混合物を別々の成分として貯蔵するために分割し、例えば1方の成分が酸基を含む重合可能なモノマーと非反応性充填剤であり、他方の成分が酸基を含まない重合可能なモノマーと反応性充填剤であるようにすることが必要である。
反応性充填剤が全充填剤に占める割合は、好ましい混合物で5重量%より多く、特に好ましい混合物では30重量%より多い。しかし、幾つかの例では少ない割合でも、例えばアルカリ性のような、明白な効果を示すことができ、このことは象牙質領域の充填剤には重要である。本発明による混合物の総充填剤含量は特に10%?95%の間であり、好ましくは全混合物の30%?85%(重量%)である。
硬化剤としては、オレフィン系化合物のラジカル重合を開始させうるような、全ての系が原則として適している。この場合に、触媒反応は加熱、触媒を反応させる活性剤の添加または光の照射によって開始されることは重要なことでない。触媒系が混合物中に充分に溶解し、酸基または酸誘導体基を含有する重合可能な化合物によって本質的に遮断されたり分解したりしないことがむしろ重要である。
光硬化性混合物に対しては、例えばフランス特許明細書第2,152,760号に述べられているような、α-ジケトンと第三アミンから成る硬化系、または例えばヨーロッパ特許出願明細書第0-132-318号に述べられているような、スルフィン酸塩とキサントンまたはチオキサントンの組合せが好ましい。
2成分混合物の場合には、有機過酸化物を含む成分と、第三アミン及び/または、+2または4価の酸化段階の硫黄を含む化合物を含む他の成分とから成る特別な組合せが適している。過酸化物を含まない成分はキレート形成2価金属イオン、特にカルシウムイオンを含有するのが好ましい。有機過酸化物としては過酸化ベンゾイル、硫黄化合物としてはベンゼンスルフィン酸ナトリウムまたはパラトルエンスルフィン酸ナトリウムが特に好ましい。
スルフィン酸ナトリウムを含有する成分に、この塩が充分に溶解するまで、1種類以上の重合可能なオレフィン性不飽和基を含有するアルコールを加えると、特に有利な混合物が得られる。この場合、例えばヒドロキシエチルメタクリレートのようなヒドロキシアルキルメタクリレートまたは、アリルアルコールのようなヒドロキシル基含有ビニル化合物が適しており、特にビスフェノールAグリシジルメタクリレートもしくはグリセリンジメタクリレートのようなヒドロキシル基含有ジメタクリレート化合物、またはグリセリンジアリルエーテルのようなヒドロキシル基含有のジビニル化合物が適している。一般に、このようなヒドロキシル基含有の重合可能なモノマーを10?20重量%添加することが必要である。
さらに、例えば水または酒石酸またはメリット酸のような、セメントに典型的に用いられて、イオン反応を促進するような硬化剤を加えることができる。
本発明による複合セメントは、まだ硬化していないペーストまたは硬化した製品の外観及び安定性に公知のように好ましい影響を与える顔量、UV安定剤、酸化防止剤等のような通常のプラスチック添加剤を当然含むことができる。また、例えばFe、Cu、Mn、Co、Sn、Cr、Ni及びZnの塩のような重金属塩を少量加えることもできる。これらは例えば歯基質に対する粘着性に良好に作用する。
例えばコルチゾンもしくはコルチコイドまたは牛脚油のような治療成分の添加剤も加えることができるが、化学的-物理的理由からではなく、純粋に医学的理由から適用することができない。複合セメントはセメントとしての本来の機能及び任意のカルシウムイオン遊離体及びpH環境提供体としての機能の他に、薬剤学的デポとしても用いられる。同様な理由から、例えばフルオロリン酸ナトリウムまたはフッ化アミンのようなフッ化物遊離化合物を加えることもできる。
(発明の効果)
本発明による複合セメントは、今までは一方では複合体のみに、他方ではセメントのみに顕著に特徴的であった性質を部分的に有する。
従って、この複合セメントは大ていの場合に、良好な破断時引張り強さ、縁端強度、良好な硬度及び低いぜい性を有する他、良好な組織適合性を有し、強アルカリ性に反応するプラスチックク充填剤に可能性を与えることになる。さらに、この複合セメントは同じような充填剤を含有するセメントよりもかなり難溶性である。この複合セメントは重合可能な不飽和モノマーを主成分とするプラスチックな充填剤と共重合可能であり、強固な化学結合を与えることができる。
他方では、この複合セメントはイオン反応によってセメント及び歯基質に対して化学的に堅く粘着する。
光硬化性複合セメントを得ることも可能である。
特に、或る種のセメントの場合には稠度または溶解性の理由から必要であるような、パラフィン油、アマニ油、表面活性物質等の添加も実際に省略することができる。
酸基または酸誘導体基を含有する重合可能な化合物は多くの場合それ自体が表面活性物質として作用することができ、無機充填剤を良好に表面活性する。
この新規な複合セメントの興味深い性質は、凝固過程において一方では重合抑制プロセスが起り、他方ではこのプロセスが同時のまたは後からの水吸収(例えば、水和過程)によって再び退行し、過剰補償されることもあるということである。このプロセスは重合しない混合物中に存在する水分量によって制御されるが、重合後の周囲媒質中の水分にも依存する。
本発明による複合セメントは、その組成に応じて、根管充填物用、覆髄剤用、プライマー用に充填剤入りの葉窩ライナーとして、充填剤として、さらに歯冠とブリッジ用、矯正接着用のセメントとして、腐食したエナメルの保護フィルムとして、セメントと複合材料との間の粘着性不透明層として、またプライマー中間層として適している。特に、重合可能な、粘着性で破断強度の大きい歯科用石こうを調製することもできる。さらに、骨用セメントとして、また一般目的向けのセメントとしての用途も生じる。
本発明による複合セメントは成形物の製造にも適しており、これを直接または、金属骨組に結合させる場合のように、他の有効物質とともに用いることもできる。特に成形物がCa化合物を含有する場合には、この複合セメントは髄植組織として非常に適している。
(実施例)
下記の製剤及び実施例では本発明をさらに詳しく説明するために役立つものである。他に記載しないかぎり、部と%値は重量に基づくものである。
製剤例1ポリメタクリル化オリゴマレイン酸の製造:無水マレイン酸260gにトルエン2,000mlと過酸化ベンゾイル40gを加えて、6日間還流加熱した。黄褐色の沈澱が生成した。反応が終了した後に、上清のトルエン溶液をデカンテーションし、残渣をヘキサンで洗浄した、収量は200gであった。この200gの同量のテトラヒドロフランを加えた。
分子量測定による平均分子量は439であり、これは無水マレイン酸4単位のオリゴマー化度にほぼ相当した。IRスペクトルは無水物基のC=O吸収帯(1,790cm^(-1))を示したが、酸のOHと二重結合の吸収帯は存在しなかった。オリゴ無水マレイン酸のテトラヒドロフラン溶液100gに亜鉛粉末10gを加え、撹拌し、再び濾別すると、溶液の色は明らかに明色化した。
ヒドロオキシエチルメタクリレート60gと触媒量のオルトリン酸を加えた後、混合物を2週間放置した。混合物は明らかに粘稠になった。揮発性成分を真空下で除去し、ヘキサンで洗浄した後に、粘稠な油が得られた。これはアセトンに非常に易溶であり、TEDMAとビスGMAにも可溶であった。
IRスペクトルによると、無水物のC=O吸収帯は殆ど消失し、酸のOH吸収帯と二重結合吸収帯は明白に現われた。
製剤例2ポリメタクリル化ポリカルボン酸ポリホスホン酸の製造:製剤例1のオリゴ無水マレイン酸のテトラヒドロヒドロフラン溶液100gを亜鉛粉末と共に撹拌し、ヒドロキシエチルメタクリレート30gを加えた。
この混合物を室温において2週間反応させた後、ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸40gを溶かし込み、さらに2週間放置した。テトラヒドロフランを除去した後、非常に粘稠な液体が得られ、これをヘキサンで洗浄した。IRスペクトルは1,640cm^(-1)にC=C吸収帯、1,200cm^(-1)にP(O)OH吸収帯を示した。この物質は酸性反応を示し、活性剤/過酸化物の添加によってゲル化した。
製剤例3プレポリマー型ポリメタクリル化ポリマレイン酸の製造:無水マレイン酸60gと過酸化ラウロイル9gをテトラヒドロフラン150ml中で4日間還流下で沸騰させ、テトラヒドロフランを再び除去し、得られた粘稠な油をヘキサンで洗浄した(ポリ無水マレイン酸、分子量1,850,約17単位に相当、IRスペクトルは製剤例1の前段階としてのオリゴ無水マレイン酸と同じである)。
この油9.8gをTHF30ml中に溶かし、ヒドロキシメタクリレート12gを加えて2週間撹拌した。THFを除去した後、ポリメタクリル化ポリマレイン酸の粘稠な油が得られ、そのIRスペクトルは製剤例1のポリメタクリル化オリゴマレイン酸のIRスペクトルと同じであった。
製剤例4プレポリマー型ポリメタクリル化ポリクロロホスフェートの製造:ヒドロキシエチルメタクリレート42gと過酸化ラウロイル8gをトルエン400ml中に溶解し、65℃に1時間保持した。生成した粉末を濾別し、ヘキサンで洗浄し、乾燥させた。収量40gでポリヒドロキシエチルメタクリレート(Poly-HEMA)が得られた。
分子量は5,700で、約44モノマー単位であり、IRスペクトルはアルドリッチ社(Firma Aldrich)のより高分子のポリHEMA製品と同じであった。
自家製造したPoly-HEMA13gにメタクリル酸クロライド8gとトリエチルアミン8gを加えて3日間撹拌し、沈澱を水で洗浄して、乾燥させた。
収量15gで一部メタクリル化したPoly-HEMAが得られた。
この粉末3.3gにテトラヒドロフラン50ml中で塩化ホスホリル1.5gを加え、4日間室温撹拌した。沈澱を濾別し、ヘキサンで洗浄した後に、白色粉末3.8gが得られた。これのIRスペクトルは、-O-P(O)Cl_(2)基を有するポリメタクリル化生成物と良好に一致した。この生成物はC-OH吸収体は殆ど示さないが、メタクリル基のC=O(1,730cm^(-1))とC=C吸収体(1,640cm^(-1))ならびにP-O-アルキルの領域(1,030cm^(-1))に新たに生じた吸収体を示した。
製造例5ポリメタクリル化ポリスルホネートの製造:ヒドロキシエチルメタクリレート5.4g、メタクリロイルプロピルスルホン酸カリウ10.1gと過酸化ラウロイル1.6gとを、メタノール80mlとトルエン20ml中で65℃において、沈澱形成が終了するまで加熱した。沈澱を濾別し、ヘキサン洗浄して乾燥させた。
収量6.4gで水溶性コポリマーが得られた。
分子量は7,490で、用いた両モノマーのそれぞれの約20単位に相当する。
このコポリマー1.88gにメタクリル酸クロライド0.54gとトリエチルアミン0.50gを加えてテトラヒドロフラン50mlで4日間、室温において撹拌した。生成した沈澱をヘキサンで洗浄し、乾燥させた。
収量1.92gで、水溶性の白色粉末状ポリメタクリルポリスルホン酸カリウムが得られた。
IRスペクトルは再び明確にC=C吸収体(1,640cm^(-1))を示した。カリウム含量は7.9%で硫黄含量は6.2%であった。
製剤例6ポリメタクリル化ポリホウ酸の製造:製剤例4からの部分メタクリル化Poly-HEMA3.3gにホウ酸3.1gとリン酸4.1gを加えてジオキサン中で、沈澱形成が終了するまで80℃に加熱した。沈澱を濾別した後に水によって、ホスフェートとホウ酸を含まないように洗浄して、乾燥させ、淡褐色のポリメタクリル化ポリホウ酸3.45gを得た。
IRスペクトル分析によると、C=C吸収帯とC=C吸収帯は変化しなかったが、スペクトルの3,220cm^(-1)に新しい吸収帯が生じた。
ホウ素含量は2.4重量%であることが判明した。
実施例1ハロホスホリル化ビスGMAとホスフェートセメント粉末(ZnD/MgO)を主成分とする2成分複合セメントの製造:下記のような種々な2成分混合物を調製し、反応させた。
I.第1成分として、ビスフェノールAグリシジルメタクリレート(ビスGMA)10部、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEDMA)10部と塩化ホスホリル1部から成る樹脂混合物を製造し、室温に5日間放置した(樹脂1,重合可能なハロリン酸化合物、ヨーロッパ特許出願明細書第0058-483号に相応)。
樹脂1の一部に触媒としての1%過酸化ベンゾイルを加えた(樹脂2)。樹脂2を22部と微細に粉砕したシラン化バリウムガラス(非反応性充填剤)78部を完全混合することによって、触媒ペーストを製造した。この混合物は濃厚ペースト状の稠度を有した。
II.第2成分として、次の成分:

から樹脂混合物(樹脂3)を製造した。
樹脂3を24部とホフマン・リヒター社(Fa.Hoffmann&Richter)(ベルリン)の「ハーバート(Harvard)」ホスフェートセメント(酸化亜鉛と酸化マグネシウムを主成分とするホスフェートセメント生成物)である粉状成分(反応性充填剤)76部とを混合することによって、活性剤ペーストを製造した。
触媒ペーストと活性剤ペーストとを混合した後に、物質は1?2分間以内で硬化した。
約30分後に、バーコル高度54が測定された。37℃において24時間湿式貯蔵した後に、圧縮強度は1,800Kg/cm^(2)であった。
本発明によるセメントは非常に組織適合性であることが判明し、骨セメントとして良好に使用された。
実施例2実施例1に比較するものとして、上記「ハーバート」ホスフェートセメントの粉状セメントを「カルボキシレートセメント」製品[ボコケミー(Voco Chemie)、クックスハ-フェン]のカルボキシレート液によって硬化させた。硬化時間はカルボキシレートセメントの通常の硬化時間、5?8分間であった。
約30分間後に、バーコル硬度はほとんど得られなかった。測定ピンは大きな抵抗を受けることなく、成形物中に侵入し、成形物を容易に破壊した。3時間後には、5以下の小さい値が表示された。物質はさらに非常に破壊しやすくなった。37℃において24時間湿式貯蔵した後の圧縮強度は550Kg/cm^(2)であった。この範囲の圧縮強度は他の典型的なカルボキシレートセメントの場合にも認められた。改良された製品は石英粉末のような不活性の充填剤またはポリマーもしくはキレート形成剤をセメントに加えた場合にも、800?900Kg/cm^(2)の圧縮強度を示した。
実施例3ハロホスホリル化ビスGMAとアイオノマーセメント粉末を主成分とする硬化性2成分複合セメント:実施例1からの樹脂3を3部にアイオノマーセメント粉末「フジ(Fuji)」(G-Cデンタル社(Dental Corp.,)日本)7部を加えて、活性剤ペーストを調製した。このペーストに実施例1からの触媒ペースト同部を混合すると、この物質は迅速に硬化した。30分後に、バーコル硬度57が測定された。24時間/37℃後の圧縮強度は2,100Kg/cm^(2)であった。37℃の水中に24時間貯蔵した後に、溶解性は確認されなかった。
実施例4ポリメタクリルポリカルボン酸とホスフェートセメント粉末とを主成分とする混合によって硬化可能な2種類のペースト:混合によって硬化可能なペースト(樹脂4)を製造した。第1ペーストとしては、トリエチレングリコールジメタクリレート90部、製剤例1によるポリメタクリルポリカルボン酸7部と過酸化ベンゾイル2部からの混合物を製造した。この樹脂4にシラン化した無定形の焼結二酸化ケイ素を68%まで充填し、触媒ペーストを形成した。
第2ペーストとして、次の成分:ビスGMA50部ヒドロキシエチルメタクリレート50部N,N-ビスヒドロキシエチルパラトルイジン1部及びベンゼンスルフィン酸ナトリウム3部にホスフェートセメントを加えた混合物をこね上げた。この活性剤ペーストの充填剤は75%であった。硬化のために、活性剤ペーストと触媒ペーストを混合した。
硬化した複合セメントは、1,500Kg/cm^(2)の圧縮強度を有した。バーコル硬度は51であった。
この物質はストレステスト(0℃と60℃の交互の水浸せき浴)で4,000サイクル後に疲労現象を全く示さなかった。かえって、バーコル硬度は59に上昇し、この物質は大きい縁端強度を示した。これはウシの歯の象牙質とエナメル質に非常に良好に粘着した。
実施例5次の成分:実施例1からの樹脂3 24部水酸化カルシウム22部及び硫酸バリウム22部からなる活性剤ペーストに、同部の実施例1からの触媒ペーストを混合して、強アルカリ性セメント混合物が得られ、硬化可能であった。数分間後にすでに、バーコル硬度20と圧縮強度2,000Kg/cm^(2)を有する硬い物質が得られた。
pH値は11以上であるが、この製品は非常に耐水性である。Ca(OH)_(2)製剤が二次象牙質形成を刺激することを考えると、この性質によってこのX線透視可能なセメントはプライマー、根管充填物、及び歯根構成のための金属ピン固定剤として好適である。
ポリカルボン酸またはサリチレートを主成分とする改良されたCa(OH)_(2)セメント自体はたった300kg/cm^(2)の最大圧縮強度を示したにすぎなかった。さらにこれは周知のように、数年後には溶解して、中空部を残した。このことは本発明による複合セメントでは、ポリマーネットワークによって覆われているので、予想されないことである。
実施例6次の成分:トリエチレングリコールジメタクリレート50部製剤例2によるポリメタクリルポリカルボン酸ポリホスホン酸50部及びブチルパーマレエート1部を混合し、この混合物6部に水酸化カルシウム5部と硫酸バリウム5部とを混合することによって、他の重合可能なCa(OH)_(2)セメントを製造した。
5?7分後に、この混合物は硬化した。
実施例7次の成分:トリエチレングリコールジメタクリレート50部製剤例1のポリメタクリルオリゴマレイン酸50部カンファーキノン1部ジメチルアミノエチルメタクリレート1部水酸化カルシウム50部硫酸バリウム50部を混合することによって、光硬化可能なCa(OH)_(2)セメントを得た。
この混合物を光硬化装置リテマ(Litema)HL150からのハロゲン光によって1分間で硬化させた。40秒後に、表面が硬化し、直ちに光硬化性「コンポジット メルツ(Composite Merz)」から成る次の層を重合させることができた。
実施例1?7の調製した重合可能なセメント混合物は全て、不飽和オレフィン系化合物を主成分とする重合可能なフラスチック充填物または樹脂物質とも共重合可能である。
従って、本発明による複合セメントは通常の複合材料と強固な結合を形成することができる。
実施例8光硬化可能な複合材料-アイオノマーセメントの調製:アイオノマーセメント「セラマフィル アルファー(Ceramfil Alpha)」(PSP デンタル(Dental)社、イギリス、ケント州、ベルベデール)の粉状成分30g上に、次の成分:ビスGMA50部トリエチレングリコールジメタクリレート50部ポリメタクリル化ポリマレイン酸(製剤例3)20部から成る混合物5gのエタノール溶液を塗布して乾燥させた。この粉末5gに、製品「セラマフィル ベータ アクア セット(Ceramfil Beta,Aqua Set)」(PSP デンタル社)のポリアクリル酸被覆アイオノマー粉末5gを完全に混合して、光硬化性アイオノマーセメントとして新しいアイオノマーセメント粉末(1)を製造した。
次の成分:H_(2)O15gヒドアキシエチルメタクリレート10gN,N-ビスヒドロキシエチルパラトルイジン0.15gベンゼンスルフィン酸ナトリウム0.45gカンファーキノン0.08gから液体(II)を調製した。
アイオノマーセメント粉末(I)に液体(II)をペースト状稠度になるまで(粉末約4部と液体1部)混合し、混合物の1部を暗所に放置し(A)、他の1部はリテマ社(西ドイツ)のランプ(「THL 150」)からのハロゲン光によって硬化させた(B)。
(A)の場合の硬化は10分後に開始し、20分後に終了した。(B)の場合には、2mm厚さの層の混合物が40秒後に良好に硬化した。
硬化方法(A)と(B)によって、それぞれDIN規格13922に相当する試験片を製造し、3時間後に曲げ強度を測定した。ガラス-アイオノマーセメント「セラマフィル ベータ アクア セット」から混合(粉末、H_(2)O)後に同様に試験片を製造し(3分後に硬化開始、10分後に良好に硬化終了)、3時間後と20時間後に曲げ強度を測定した。

実施例9光強度性アイオノマーセメント:セラマフィル ベータ アクア セット製品アイオノマーセメント1.75g上に、ポリメタクリル化ポリクロロホスフェート(製剤例4)1.50gとトリエチレングリコール0.25gの混合物をエタノール溶液として塗布し、乾燥させた(粉末成分)。反応パートナーとして、次の成分:ヒドロキシエチルメタクリレート150部水50部カンファーキノン1部N,N-ビスヒドロキシエチルパラトルイジン2部ベンゼンスルフィン酸ナトリウム5部の混合物を調製した(液体成分)。
粉末成分4部と液体成分1部をペースト状稠度になるまで混合し、1部をハロゲン光で硬化させ(20秒間)、他の1部は暗所に放置した(硬化するまで約50分間)。
ハロゲン光で硬化させた試験片は3時間後に18.4N/mm^(2)、20時間後に27.2N/mm^(2)の曲げ強度を示した。
実施例10歯の根管充填物次の成分:ヒドロキシエチルメタクリレート12部グリセリンジメタクリレート11部N,N-ビスヒドロキシエチルパラトルイジン1部及びセラマフィルアルファ製品のアイオノマー粉末76部から成るペーストに、次の成分:ポリメタクリル化ポリホウ酸(製剤例6)5部ビスGMA50部トリエチレングリコールジメタクリレート45部及び過酸化ベンゾイル3部から成る樹脂を同部まで混合し、空虚な歯根管に充填した。2分後に、混合物は硬化した。この歯をメチレンブルー浴中に14日間浸せきし、縦にうすく切断し、研磨した。歯基質と充填材との間に染料の侵入は認められなかった。
実施例11接着セメント製品「オムニフィル(Omnifil」(ヨタ(Jota)社、西ドイツ)のシリケートセメント粉末から、粒度20μ未満のフラクションを選抜し、その100部にベンゼンスルフィン酸ナトリウム0.2部、N,N-ビスヒドロキシエチルパラトルイジン0.4部、ビスGMA7部とトリエチレングリコールジメタクリレート8部を混合し、ペースト(I)を得た。選抜した製品の他の100部上に過酸化ベンゾイル5部を塗布し、これにビスGMA7部とトリエチレングリコールジメタクリレート8部を同様に混合して、ペースト(II)を得た。
次の成分:リン酸13部ヒドロキシエチルメタクリエート15部水60部ポリメタクリル化ポリスルホネート(製剤例5)12部から液体(III)を製造した。
ペーストIとIIならびに液体IIIからそれぞれ1部ずつを取り、混合して、腐蝕した歯エナメルと(レジロイ(Resilloy)(レンファート(Renfert)社、西ドイツ)製小プレートとの間に挿入した。この金属小プレートを軽く加圧した。2分間後に、接着剤混合物は硬化した。
3時間後に、接着した試験片は張力試験機により5.6N/mm^(2)の負荷で再び剥離した。
実施例12膨張性光硬化性窩洞ライナー次の成分:ビスGMA50部トリエチレングリコールジメタクリレート50部カンファーキノン1部ブチルジメチルアニリン1部ポリメタクリル化ポリマレイン酸(製剤例3)10部微粉状シラン化ケイ酸40部セラフィルベータアクアセット製品のアイオノマーセメント粉末240部から光硬化性複合セメントを製造した。
この複合セメントは層の厚さが3mmになるまで20秒間ハロゲン光を照射した後に完全に硬化した。水中での重合収縮は10分後に0.0%まで起らず、試験体は30分後に0.24%、16時間後に0.80%の膨張を示した。その後、この値は殆ど変化しなかった。この複合セメントはこの性質によって歯充填剤の窩洞ライナーとしては特に適している。
これは複合充填剤の重合収縮の大部分をその膨張性によって緩和することができる。
実施例13実施例1の樹脂1と共に10部のアルコール溶液を、モルダノ石こう(バイエル(Bayer))90部にかけ、溶剤を除去することによって重合可能な石こうを製造した。
このようにして得られた石こうに、N,N-ビスヒドロキシエチルパラトルイジン1%とベンゼンスルフィン酸ナトリウム3%を含む水25部と、ヒドロキシエチルメタクリレート75部とから成る混合物を流動性のかゆ状になるまで加える。これを型に流し入れると、約2分後に硬化した。型を除いた後、壊れにくく、良好な引かき強度を有する、すぐれたモデル成形物が得られた。
実施例14未処理石こうに流動性のかゆ状になるまで水を混合した以外は、実施例13に従って処理した。このかゆは凝固するのに30分間を要し、非常にもろく、引かき強度は低かった。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2007-05-10 
結審通知日 2007-05-14 
審決日 2007-06-05 
出願番号 特願昭61-239386
審決分類 P 1 113・ 531- YA (C08F)
P 1 113・ 121- YA (C08F)
P 1 113・ 532- YA (C08F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松井 佳章佐藤 邦彦  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 一色 由美子
渡辺 陽子
登録日 1997-09-12 
登録番号 特許第2132069号(P2132069)
発明の名称 重合可能なセメント混合物  
復代理人 鈴木 秀彦  
復代理人 鈴木 秀彦  
代理人 野間 忠之  
代理人 鈴木 秀雄  
代理人 鈴木 秀雄  
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