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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1186806
審判番号 不服2007-26096  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-25 
確定日 2008-10-31 
事件の表示 平成11年特許願第213722号「納豆容器および納豆の収納方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月13日出願公開、特開2001-039482〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年7月28日の出願であって、平成19年8月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年9月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、本願の請求項1ないし3に係る発明は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1は次のとおり記載されている。

「【請求項1】底壁周縁から起立する周壁2の上端に外向きフランジ3を付設し、かつ該外向きフランジ上面に小突部4を相互に近接させて多数付設した納豆入りの容器体1と、上記外向きフランジ3の上面に外周部下面を熱溶着により気密かつ剥離可能に貼着させて、容器体周壁2の上方開口面を密封するシート状蓋5とからなる納豆容器。」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明1」という。)


2.引用例
2-1.引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭61-109234号(実開昭63-17086号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

(a)「【実用新案登録請求の範囲】発泡ポリスチレン樹脂シートによつて成型される容器本体と、蓋体とからなる納豆用包装容器において、前記容器本体の開口部の側面壁から外方に向けて延設されたフランジ部の所定個所に設けられた容器内部から外部に亘る1つ又はそれ以上の溝部と、前記フランジ部先端の外周線に設けられた前記溝部から連なる切欠部とを有することを特徴とする納豆用包装容器。」(実用新案登録請求の範囲)

(b)「この溝部(11)の数は納豆用包装容器(20)の大きさ等に会わせ適宜決定すればよく、例えば第2図の実施例のごとく連続的に多数設けてもよく、・・・」(第6頁第2行?第4行)

(c)「蓋体と容器本体とが安定して被蓋でき、被蓋後のシールも容易であるという効果もある。」(第9頁第17行?第18行)

(d)「【図面の簡単な説明】第1図は本考案に係る納豆用包装容器の蓋を開いた状態の斜視図、第2図は容器本体の別の実施例を表わす斜視図、・・・ 符号の説明、・・・、2……容器蓋体、・・・、8……容器開口部、9……側面壁、10……フランジ部、11……溝部、15……切欠部、20……納豆用包装容器。」(図面の簡単な説明)

そして、第2図には、納豆用包装容器の容器本体が記載されており、該容器本体のフランジ部10上面における溝部11と溝部11との間には、突部が付設されており、該突部は相互に近接されて多数付設されて成ることが記載されており、また第1図には、前記容器本体に被蓋される容器蓋体2が記載されている。
また、上記摘示事項(c)において、蓋体と容器本体とが被蓋され、シールされた後には、前記容器本体内には、納豆が入っていることは明らかであるし、さらに、前記蓋体と前記容器本体とが被蓋され、シールされた後に、納豆を取り出すために、前記蓋体と前記容器本体とが剥離可能に貼着されていることは自明のことである。

以上のことを総合すると、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる。

「側面壁(9)から外方に向けてフランジ部(10)を延設し、かつ該外方に向けたフランジ部(10)上面に突部を相互に近接させて多数付設した納豆入りの容器本体と、上記外方に向けたフランジ部(10)上面に外周部下面をシールにより剥離可能に貼着させて、容器本体の側面壁(9)の上方にある容器開口部(8)を被蓋シールする容器蓋体(2)とからなる納豆用包装容器(20)。」
(以下、この発明を「引用発明」という。)

2-2.引用例2
また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物であって、拒絶理由通知書の中で従来例として挙げた特開平10-304843号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

(e)「【請求項1】 納豆容器に、納豆菌を接種した煮豆を収容して被蓋し、通気性を保有するように、蓋と容器の口部とを一部シールした後、発酵させ、発酵後冷却熟成の冷却前又は後に、容器口部と蓋とを再シールして密封することを特徴とした密封納豆の製造方法。
【請求項2】 シールは熱シールであり、一部シールは蓋と、容器の方形口部の四隅付近とすることを特徴とした請求項1記載の密封納豆の製造方法。
【請求項3】 請求項1で使用する納豆容器の、少なくとも再シール面に凸部を設けたことを特徴とする納豆容器。
【請求項4】 凸部は、一部シール部に近接して設けたことを特徴とする請求項3記載の納豆容器。」(特許請求の範囲)

(f)「【発明の実施の形態】・・・容器に、納豆菌を接種した煮豆を盛り込み、・・・、容器の上部を・・・フィルムで覆い、方形の容器においては、その四隅あるいは四隅の近辺を熱シールにより仮止めする。」(段落【0013】)

(g)「その後、通常の納豆製造と同様に発酵させる。発酵終了後、あるいは発酵終了に続く熟成終了後に残りの部分も熱シールする。」(段落【0014】)

(h)「・・・ただ単に一部を仮シールするだけでは、納豆発酵時の空気の流通が不十分で、発酵状態にバラツキが生じる。そこで、納豆の発酵時にシールされていない側面からの通気量を一定にし、発酵状態のバラツキをなくすためには、納豆容器のシール面あるいはその内側にシール面よりも僅かに(0.2?1.0mm程度)高い凸部を設け、仮止めしたトップフィルムとシール面の間に隙間を設ければよいことがわかった(図4)。尚、この凸部の形状及び数は特に限定されるものではないが、・・・、方形の容器の場合、各側辺の仮シール部分に近い場所にそれぞれ二カ所あるのが好ましい。」(段落【0016】)

(i)「【実施例2】納豆容器の実施例を図3について説明する。・・・容器4の方形口部に、等幅のシール面5を設け、該シール面5の四隅へ、仮止部3、3を設け、この各仮止部3、3に近接して、凸部6、6を夫々設けて、本発明のトレー1を構成した。前記凸部6の頂部は、シール面5の上面より僅かに高く(例えば約0.2?1.0mm)してあり、蓋と容器口部とを仮シールした場合に、隙間7を生じるようにし、十分の通気性を保有することを目途にしている。前記凸部の形状に制約はないが、フィルム2とシール面5の間に十分の通気性を確保し、しかも再シール(完全シール)し易い形状が好ましい。」(段落【0018】)

(j)「・・・容器口部の再シール面に凸部を設けたので、再シール前は、該部が通気間隙を形成し、必要な通気量を確保し得る好適の納豆容器となる。」(段落【0020】)


3.対比(一致点、相違点の認定)
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「側面壁(9)」、「外方に向けてフランジ部(10)を延設」、「納豆用包装容器(20)の容器本体」、「容器開口部(8)」は、それぞれ本願発明1の「底壁周縁から起立する周壁2」、「外向きフランジ3を付設」、「納豆入りの容器体1」、「上方開口面」に相当する。

そこで、本願発明1の用語を用いて表現すると、本願発明1と引用発明とは、
「底壁周縁から起立する周壁の上端に外向きフランジを付設し、かつ該外向きフランジ上面に突部を相互に近接させて多数付設した納豆入りの容器体と、上記外向きフランジの上面に外周部下面を剥離可能に貼着させて、容器体周壁の上方開口面を封する蓋とからなる納豆容器。」
である点で一致し、以下の点で相違する。


《相違点1》
本願発明1では、外向きフランジの上面に「小突部」を付設し、該外向きフランジの上面に蓋の外周部下面を貼着させるに際して、「熱溶着」により「気密かつ剥離可能」に貼着させているのに対して、引用発明では、突部があるものの、その突部が「小突部」であるか否かは明確でなく、また、「シール」により「剥離可能」に貼着させているが、そのシールは熱溶着であるか否かは明確でなく、かつ、「気密」に貼着させているか否かは明確でない点。

《相違点2》
本願発明1では 、蓋が「シート状蓋」であるのに対して、引用発明では、蓋がシート状蓋であるか否かは明確でない点。


4.判断(相違点についての検討)
そこで、上記相違点について検討する。
《相違点1について》
引用発明において、第2図に記載されている容器本体における外方に向けて延設されたフランジ部10の上面の溝部11と溝部11との間に付設されている「突部」は、第2図及び上記摘示事項(b)の記載からみて、小さな突部を排除してはおらず、したがって該「突部」は小さな突部も含むものと解することができるし、そもそも本願発明1における「小突部」の「小」が意味する数値範囲が明細書全体をみても、定量的に明らかに記載されているわけではなく、一方、「突部」を「小突部」としたことの技術的意義は、突部は小さすぎると通気性が確保できないし、大きすぎると熱溶着が困難になるので、納豆が発酵し、適度に熟成するまでは、納豆の熟成に必要な通気性を確保し、その後は、それ以上発酵が進みすぎて品質劣化するのを防ぐために、外気の出入りがないように気密に密封するするための熱溶着が可能な程度の大きさの突部とすることであるが、引用発明のように、容器内部に発生する納豆特有の臭気の常時排出を望む場合には、外気の出入りを可能となるように通気孔を残存させて密封しないようにすればよく、それに対して、引用例2に記載された発明のように、納豆が発酵し、適度に熟成した後に、それ以上発酵が進みすぎて品質劣化するのを防ぐことを望む場合には、外気の出入りがないように気密に密封すればよいのであって、当業者がいずれを選択したいのか、すなわち、納豆特有の臭気の常時排出を望むか、あるいは、納豆の過度の発酵の防止を望むかは、当業者が実施に際して適宜選択できることであるから、引用発明において、引用例2に記載された発明のように、納豆の過度の発酵の防止を目論んで、容器口部と蓋(本願発明における「容器体周壁の上方開口面」と「蓋」に相当する。)とを「気密」に貼着させて「密封」するために、上記摘示事項(h)(i)に記載されているように、納豆容器のシール面(本願発明における「外向きフランジの上面」に相当する。)に、シール面よりも僅かに(0.2?1.0mm程度)高い凸部(本願発明における突部に相当する。)を設け、上記摘示事項(e)、(f)、(g)に記載があるように、熱シールすなわち「熱溶着」することは、当業者が容易に行えることであり、その際の前記凸部(突部)は、上記の大きさ(0.2?1.0mm程度)から判断して小突部であることは明白である。

《相違点2について》
引用例2には、上記(f)(h)(i)の記載及び図1,図4にあるように、蓋としての「フィルム2」が記載されており、これは本願発明における「シート状蓋」に相当することは明らかであるから、引用発明において、その蓋として「シート状蓋」を採用することに何ら困難性はないものと認められる。

そして、全体構成としてみても、本願発明1が奏する効果も、引用発明及び引用例2に記載の技術事項から当業者が予測し得たものであって、格別なものともいえない。

したがって、本願発明1は、引用発明及び引用例2に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。


5.むすび(結論)
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-28 
結審通知日 2008-09-02 
審決日 2008-09-17 
出願番号 特願平11-213722
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 市野 要助  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 佐野 健治
遠藤 秀明
発明の名称 納豆容器および納豆の収納方法  
代理人 今岡 憲  

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