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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02C
管理番号 1186898
審判番号 不服2007-23065  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-23 
確定日 2008-10-30 
事件の表示 特願2000-131983「コンタクトレンズの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月 9日出願公開、特開2001-311915〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年5月1日の出願であって、平成19年4月17日付けで拒絶の理由が通知され、平成19年6月25日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成19年7月13日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として平成19年8月23日付けで本件審判請求がされるとともに、平成19年9月25日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。


第2 本願発明の認定
本件補正は、平成19年6月25日付けの手続補正により補正された請求項1ないし4における請求項1,4を削除するとともに、平成19年6月25日付けの手続補正により補正された請求項2の「前記第2の凹部とは異なる形状の第2の凹部」を「前記第1の凹部とは異なる形状の第2の凹部」とする補正である。したがって、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第1号に掲げる「請求項の削除」及び同法第17条の2第4項第3号に掲げる「誤記の訂正」を目的とする補正に該当する。
したがって、本件補正は、同法第17条の2第4項の規定に適合する。
すると、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本件補正によって補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「コンタクトレンズの製造方法であって、
コンタクトレンズの素材と同一または異なるモノマーに第1の色相の色素を混合して第1のインクを製造し、
コンタクトレンズの素材と同一または異なるモノマーに第1の色相とは異なる第2の色素を混合して第2のインクを製造し、
前記第1のインクを、所定以上の径を有する環状に配置された第1の凹部に注入し、
該凹部に転写用のパッドを押圧することにより、該第1の凹部のインクをパッドにて採取し、
該パッドをコンタクトレンズの凸型および凹型の成型型のうち凸型に押圧することにより、コンタクトレンズの成形箇所に転写し、
第2のインクを、前記第1の凹部とは異なる形状の第2の凹部に注入し、
該凹部に転写用のパッドを押圧することにより、該第2の凹部のインクをパッドに採取し、
該パッドをコンタクトレンズの凸型および凹型の成型型のうち凸型に押圧することにより、コンタクトレンズの成形箇所に転写し、
該転写された凸型と前記凹型とを用いてコンタクトレンズの凹面および凸面の成型を行なうコンタクトレンズの製造方法。」


第3 当審の判断
1 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平2-134612号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の(ア)ないし(シ)の記載が図示とともにある。

(ア)「1.透明な中央視覚部分と、それを取巻く色付虹彩部分を有する成形コンタクトレンズを製造する方法であって、
(a)硬化性又は熱可塑性の色付液状物をコンタクトレンズ成形金型の金型面の、前記レンズの虹彩部分を形成する部位に被覆して、該金型面上に、金型の内部空間に露出した表面と金型面に接触した表面を有する色付フィルムを形成し、
(b)該色付フィルムを該虹彩部分の部位に維持した状態でレンズの本体を形成するためのレンズ形成用液状物を前記金型に装入して該色付フィルムの周りに形造りし、それによって、該成形されたレンズが金型から取出されたとき色付フィルムが該レンズの本体と一体になり、色付フィルムの表面がレンズの外表面の一部となるようにすることを特徴とする成形コンタクトレンズ製造方法。
2.前記色付フィルム及びレンズの表面は、実質的に平滑で連続していることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の成形コンタクトレンズ製造方法。
3.前記色付液状物は、前記レンズ形成用液状物と実質的に同じ硬化性液状物であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の成形コンタクトレンズ製造方法。」(公報第1頁左欄第6行ないし第1頁右欄第12行)

(イ)「12.前記色付フィルムは、前面成形用金型と後面成形用金型の少なくとも一方の金型面に被覆することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の成形コンタクトレンズ製造方法。」(公報第2頁左上欄第20行ないし第2頁右上欄第3行)

(ウ)「15.前記色付フィルムは、前面成形用金型と後面成形用金型の両方の金型面に被覆することを特徴とする特許請求の範囲第12項記載の成形コンタクトレンズ製造方法。」(公報第2頁右上欄第12行ないし第15行)

(エ)「17.該コンタクトレンズをキャスト成形によって成形することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の成形コンタクトレンズ製造方法。」(公報第2頁右上欄第19行ないし第2頁左下欄第1行)

(オ)「本発明の重要な特徴は、深さを有する色付パターンをプラスチック製コンタクトレンズに創生し、それによって眼に見えるテクスチャー(色模様)を与え、しかもレンズの表面を平滑にすることができることである。本発明のレンズの表面には、着用者の眼を刺激するような隆起が存在しない(従来の印刷法によってレンズに色を施した場合には隆起が生じる)。従って、本発明のレンズは、着用したとき快適であり、そのテクスチャーによりダイナミックな美容効果を提供する。」(公報第6頁右下欄第6行ないし第15行)

(カ)「色付フィルムは、いろいろな印刷法によって金型に被覆することができる。実際、色付フィルムは、ブラシで金型に塗布してもよい。いうまでもなく、レンズの商業的生産においては、周知の自動技法を用いて、例えばポリジメチルシロキサンゴム等の軟質ゴムパッドを介して蝕刻プレートから転写印刷することによってパターン(色付フィルム)を金型に印刷することが望ましい。」(公報第7頁左上欄第8行ないし第15行)

(キ)「金型面に色付フィルムを形成するのに用いられる色付液状物は、通常、ビヒクルと着色剤とから成る。このビヒクルは、液状の熱可塑性コーチング材又は硬化性コーチング材を包含する。そのようなコーチング材は、それ自体が液体であるか、あるいは溶剤又は稀釈剤を用いて液状にされる。ビヒクルは、多相の組成物、例えばコーチング材を水などの稀釈剤に分散させたものである。そのようなビヒクルるの例としてはラテックス又はエマルジョンがある。着色剤は、コンタクトレンズに色付けするのに使用されている慣用の反応性又は不反応性の染料、又は、コーチング技術において一般に使用されているいろいろな顔料の内の任意のものであってよい。コーチング材は、レンズの滅菌に通常使用されるオートクレーブ処理の条件に耐えることができるものであることが望ましい。例えば、コーチング材は、最終コンタクトレンズが150℃のオートクレーブに約5?30分間通される際にそれに耐えることができることが望ましい。樹脂と混合した、最終コンタクトレンズ内の着色剤は、通常の使用においてレンズを処理するのに用いられる催涙液又は洗浄剤及び殺菌剤に対して耐性を有し、催涙液や洗浄剤及び殺菌剤によって除去されないものであることが望ましい。
色付液状物のビヒクルは、熱可塑性又は硬化性であってよい。この液状物は、当業者には周知の態様で液状で供給されるプラスチック又は樹脂内に選択された着色剤を混合することによって調製することが望ましい。」(公報第7頁右上欄第8行ないし第7頁左下欄第17行)

(ク)「本発明に使用することができるもう1つの樹脂は、硬化性の樹脂である。この硬化性樹脂は、熱可塑性にされ得ないものであるという点で熱硬化性樹脂の部類に分類することができる。この種の樹脂には、本発明に使用し得るものが多数あるが、最も望ましいのは、レンズ形成用液状混合物に対して親和性を有する樹脂か、あるいはレンズ形成用液状混合物と同じ樹脂である。この場合、色付フィルムは、液体として金型面に被覆し、半ば又は完全硬化させることができる。樹脂は、液体として金型面に被覆された段階では、A又はB段階であってよい、即ち、全く硬化していない状態(A段階)か、又は半ば硬化しているが、まだ液状である状態(B段階)であってよい。金型面に被覆した樹脂がA段階である場合は、その樹脂をある程度硬化させてB段階に変換することが望ましい。この被覆樹脂は、レンズ形成用液状混合物を金型へ注ぎ込む前に完全硬化(C段階)させてもよく、あるいは、その完全硬化は、レンズ形成用液状混合物を金型へ注ぎ込み、レンズを成形し、該混合物をC段階へ完全硬化させるまで保留してもよい。」(公報第7頁右下欄第17行ないし第8頁左上欄第18行)

(ケ)「本発明によれば、レンズ形成用材料を金型へ供給する前に、レンズの瞳孔即ち視覚部分を透明のままに残すようにしてレンズの虹彩部分に色付けするように金型面に液状色付フィルムを形成しておく。いうまでもなく、レンズの視覚部分の寸法は、眼の拡大に対応する大きさとする。金型面上に形成する液状色付フィルムのパターンは、慣用の技法によって蝕刻されたパターンを有する金属板を用いて形成することができる。蝕刻されたパターンは、色付液状物を充填して平にならし柔軟なシリコーンゴム製の転写スタンプをパターンに押しつけてパターンをスタンプの面に写し取る。次いで、そのスタンプを金型面に押圧してパターンをスタンプから金型面に転写させ、金型面に色付フィルムを被覆する。次いで、この色付フィルムを、そのビヒクルが熱可塑性でない場合は、部分重合又は完全硬化させることができる。その後、レンズ形成用材料を金型へ供給する。」(公報第10頁右上欄第6行ないし第10頁左下欄第3行)

(コ)「次ぎの工程は、第2A図に示されている。この工程では、インキを含有していない慣用のレンズ形成用モノマー混合物(液状物)6を第1図の金型1内の金型面2上へ流し込んで先に重合又は半ば重合している色付フィルム又は熱可塑性色付フィルム4の上に重ね、色付フィルム4をレンズ形成用モノマー混合物6の下に埋没させる。
第2B図は、レンズ形成用モノマー混合物が金型の回転により金型面上にスピンキャスト(回転流延)され、慣用のスピンキャストレンズ8の形とされたところを示す。このレンズの前面(コンタクトレンズを着用する人の眼に接触しない外側面)の幾何学的寸法形状は、金型面によって決定され、レンズの後面(コンタクトレンズを着用する人の眼に接触する内側面)の幾何学的寸法形状は、スピンキャストの物理学的条件によって決定される。この慣用のレンズ形成用モノマー混合物を重合させるために、やはり重合条件に付す。この重合条件は、先の工程で色付フィルムが部分的に(半ば)しか重合されていない場合は、レンズ形成用モノマー混合物並びに色付フィルムを完全重合状態にもたらすように選定される。色付フィルムの部分的重合は、その色付フィルムの表面と、レンズ形成用モノマー混合物によって形成される透明なレンズマトリックス(レンズ本体)との間の強固な結合を促進するためには好ましい方法である。」(公報第11頁左上欄第17行ないし第11頁左下欄第3行)

(サ)「本発明は、スピンキャスト法だけではなく、キャスト(注型、流し込み)成形法にも適用することができる。第5図は、キャスト成形法のための前面用(レンズの前面を成形するための)金型20を示す。この金型の内側面即ち金型面22に上述したいろいろなパターンのうちの任意のパターン23の色付フィルムを被覆する。第5A図は、それによって得られたレンズ27を示す。このレンズは、先に説明した本発明のスピンキャストレンズと実質的に同じ形態を有する。
第6図は、キャスト成形法のための後面用(レンズの後面を成形するための)金型24を示す。この金型の金型面25に上述したいろいろなパターンのうちの任意のパターン26の色付フィルムを被覆する。第6A図は、それによって得られたレンズ29を示す。
上記第5図の方法と第6図の方法を組合せて用いることもできる。その場合、ある特定の色(例えば白色)の色付パターンを後面用金型に被覆し、それと同じ色又は異なる色(例えば濃青色)の色付パターンを前面用金型に被覆する。これによって、例えば見る人に実際に生きているような感覚を与える多色模様付外観、あるいは、見る人の側に反射する白色の背景を用いた明るい色調を有する色付コンタクトレンズが得られる。そのようなレンズは第7図に示されている。
レンズの両面に色付パターンを施すこの方法は、まずパターンを上述したような後面用金型と前面用金型の両方に固定することによって実施することができる。次いで、レンズ形成用モノマー混合物を各金型にそれぞれ供給し、各モノマー混合物を部分的に重合し、それによってパターンをそれぞれレンズの後面及び前面に固着させる。次いで、2つの金型を合わせ、重ね合わされた後面と前面のレンズ形成用モノマー混合物を重合させて結合し、硬化を完了させて、両面にパターンを有する色付コンタクトレンズを形成する。
以上、本発明を実施例に関連して説明したが、本発明は、ここに例示した実施例の構造及び形態に限定されるものではなく、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、いろいろな実施形態が可能であり、いろいろな変更及び改変を加えることができることを理解されたい。」(公報第11頁左下欄第20行ないし第12頁右上欄第2行)

(シ)第5図から、キャスト成型法のための前面用金型は凹型であることが読み取れる。また、第6図から、キャスト成型法のための後面用金型は凸型であることが読み取れる。

原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭46-117254号(実開昭48-71855号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、以下の(ス)ないし(ソ)の記載が図示とともにある。

(ス)「識別可能に着色した事を特徴とするコンタクトレンズ」(明細書第1頁第5行ないし第6行)

(セ)「本考案は部分的に円周部等を着色したコンタクトレンズに関するものである。コンタクトレンズは透明で小さく元来目の悪い(視力の弱い)人が使用するため置いてある場所がわからなかったり表と裏が識別出来なかったりその他の取扱いが困難であった。本考案はこれらの欠点をおぎなうべく研究して完成されたものである。本考案はこれらの欠点をおぎなうべく研究して完成されたものである。本考案はレンズの周囲等を識別可能に着色したコンタクトレンズである。目に装着した時にレンズとして使わない部分を識別可能な色に着色する事により使用者が使用し始める際に目につきやすく表と裏が簡単に見分けがつき取扱いを容易にしたものである。さらに図を示しながら詳しく述べると第1図?第5図は本考案の例図で図中(1)はコンタクトレンズ本体、(2)は着色部分を示す。第1図はコンタクトレンズの周囲を着色したものである。第2図はコンタクトレンズの縁の少し内側をリング状に着色したもので置いてある場所が明確に識別出来るものである。第3図はクサビ状の着色をしたもので第4図は矩形(略)状の着色をしたものである。これはコンタクトレンズに方向性のあるもの例えばラン視用のものなどでコンタクトレンズの方向を明示するものである。第5図は使用限界ギリギリまで着色したもので目の所詮黒目といわれている部分の色をかえるメーキャップなどに使用出来る」(明細書第1頁第7行ないし第2頁第19行)

(ソ)「色は青、黒、焦茶、などが一般的で好ましい。用途に応じて赤、緑、黄、むらさき、金色、銀色、その他それら1種以上をマダラに組合せたもの等種々の形態模様にする事が出来る。図において第1図と第2図を組合せても良く他の模様と組合せても良い。色はコンタクトレンズの表と裏を変えるとなお好ましく模様についても同様である。」(明細書第3頁第3行ないし第3頁第11行)

2 引用例1記載の発明の認定
引用例1の上記記載事項(ア)ないし(シ)から、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。

「透明な中央視覚部分とそれを取巻く色付虹彩部分を有し、一方の面に白色のパターンが施され他方の面に濃青色のパターンが施された多色模様付外観を有する成形コンタクトレンズを製造する方法であって、
金属板に蝕刻されたパターンにレンズ形成用モノマー混合物と実質的に同じ硬化性液状物と白色の着色剤とを含む硬化性の白色液状物を充填し、転写スタンプを前記パターンに押しつけて前記白色液状物のパターンを前記スタンプの面に写し取り、次いで、前記スタンプを金型面に押圧して前記白色液状物のパターンを前記スタンプから凸型である後面用金型面に転写して、コンタクトレンズの虹彩部分に色付けするように前記後面用金型面上に液状白色フィルムのパターンを形成し、前記後面用金型面上に形成された液状白色フィルムを部分重合させ、
金属板に蝕刻されたパターンに前記レンズ形成用モノマー混合物と実質的に同じ硬化性液状物と濃青色の着色剤とを含む硬化性の濃青色液状物を充填し、転写スタンプを前記パターンに押しつけて前記濃青色液状物のパターンを前記スタンプの面に写し取り、次いで、前記スタンプを金型面に押圧して前記濃青色液状物のパターンを前記スタンプから凹型である前面用金型面に転写して、コンタクトレンズの虹彩部分に色付けするように前記前面用金型面上に液状濃青色フィルムのパターンを形成し、前記前面用金型面上に形成された液状濃青色フィルムを部分重合させ、
レンズの本体を形成するための前記レンズ形成用モノマー混合物を各金型にそれぞれ供給し、各レンズ形成用モノマー混合物を部分的に重合して前記液状白色フィルム及び前記液状濃青色フィルムのパターンをそれぞれコンタクトレンズの後面及び前面に固着させ、次いで、2つの金型を合わせ、重ね合わされた後面と前面のレンズ形成用モノマー混合物を重合させて結合し、硬化を完了させる成形コンタクトレンズ製造方法。」(以下、「引用発明1」という。)

3 本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
(ア)引用発明1の「レンズ形成用モノマー混合物と実質的に同じ硬化性液状物」、「白色の着色剤」、「白色液状物」は、それぞれ、本願発明の「コンタクトレンズの素材と同一」の「モノマー」、「第1の色相の色素」、「第1のインク」に相当する。
また、引用発明1の「成形コンタクトレンズ製造方法」では、「金属板に蝕刻されたパターンにレンズ形成用モノマー混合物と実質的に同じ硬化性液状物と白色の着色剤とを含む硬化性の白色液状物を充填」しているから、「金属板に蝕刻されたパターンにレンズ形成用モノマー混合物と実質的に同じ硬化性液状物と白色の着色剤とを含む硬化性の白色液状物を充填」する前に、「レンズ形成用モノマー混合物と実質的に同じ硬化性液状物」に「白色の着色剤」を混合して「白色液状物」を製造していることは明らかである。
したがって、引用発明1の「レンズ形成用モノマー混合物と実質的に同じ硬化性液状物と白色の着色剤とを含む硬化性の白色液状物」を製造することは、本願発明の「コンタクトレンズの素材と同一」の「モノマーに第1の色相の色素を混合して第1のインクを製造」することに相当する。

(イ)引用発明1の「レンズ形成用モノマー混合物と実質的に同じ硬化性液状物」、「濃青色の着色剤」、「濃青色液状物」は、それぞれ、本願発明の「コンタクトレンズの素材と同一」の「モノマー」、「第1の色相とは異なる第2の色素」、「第2のインク」に相当する。
また、引用発明1の「成形コンタクトレンズ製造方法」では、「金属板に蝕刻されたパターンにレンズ形成用モノマー混合物と実質的に同じ硬化性液状物と濃青色の着色剤とを含む硬化性の濃青色液状物を充填」しているから、「金属板に蝕刻されたパターンにレンズ形成用モノマー混合物と実質的に同じ硬化性液状物と濃青色の着色剤とを含む硬化性の濃青色液状物を充填」する前に、「レンズ形成用モノマー混合物と実質的に同じ硬化性液状物」に「濃青色の着色剤」を混合して「濃青色液状物」を製造していることは明らかである。
したがって、引用発明1の「レンズ形成用モノマー混合物と実質的に同じ硬化性液状物と濃青色の着色剤とを含む硬化性の濃青色液状物」を製造することは、本願発明の「コンタクトレンズの素材と同一」の「モノマーに第2の色相の色素を混合して第2のインクを製造」することに相当する。

(ウ)引用発明1の「レンズ形成用モノマー混合物と実質的に同じ硬化性液状物と白色の着色剤とを含む硬化性の白色液状物」が「充填」される「金属板に蝕刻されたパターン」は、本願発明の「第1の凹部」に相当する。
また、引用発明1の「成形コンタクトレンズ製造方法」は、「透明な中央視覚部分とそれを取巻く色付虹彩部分を有」「する成形コンタクトレンズを製造する方法」であって、「コンタクトレンズの虹彩部分に色付けするように前記後面用金型面上に液状白色フィルムのパターンを形成」する工程を含むものであるから、引用発明1の「レンズ形成用モノマー混合物と実質的に同じ硬化性液状物と白色の着色剤とを含む硬化性の白色液状物」が「充填」される「金属板に蝕刻されたパターン」の形状は、虹彩の形状と同じ環状であることは明らかである。
したがって、引用発明1の「レンズ形成用モノマー混合物と実質的に同じ硬化性液状物と白色の着色剤とを含む硬化性の白色液状物を」「金属板に蝕刻されたパターンに」「充填」することは、本願発明の「前記第1のインクを、所定以上の径を有する環状に配置された第1の凹部に注入」することに相当する。

(エ)引用発明1の「転写スタンプを前記パターンに押しつけて前記白色液状物のパターンを前記スタンプの面に写し取」ることは、本願発明の「該凹部に転写用のパッドを押圧することにより、該第1の凹部のインクをパッドにて採取」することに相当する。
また、引用発明1の「前記スタンプを金型面に押圧して前記白色液状物のパターンを前記スタンプから凸型である後面用金型面に転写して、コンタクトレンズの虹彩部分に色付けするように前記後面用金型面上に液状白色フィルムのパターンを形成」することは、本願発明の「該パッドをコンタクトレンズの凸型および凹型の成型型のうち凸型に押圧することにより、コンタクトレンズの成形箇所に転写」することに相当する。

(オ)引用発明1の「レンズ形成用モノマー混合物と実質的に同じ硬化性液状物と濃青色の着色剤とを含む硬化性の濃青色液状物」が「充填」される「金属板に蝕刻されたパターン」は、本願発明の「第2の凹部」に相当する。
したがって、引用発明1の「レンズ形成用モノマー混合物と実質的に同じ硬化性液状物と濃青色の着色剤とを含む硬化性の濃青色液状物を」「金属板に蝕刻されたパターンに」「充填」することと、本願発明の「第2のインクを、前記第1の凹部とは異なる形状の第2の凹部に注入」することとは、「第2のインクを、第2の凹部に注入」する点で一致する。

(カ)引用発明1の「転写スタンプを前記パターンに押しつけて前記濃青色液状物のパターンを前記スタンプの面に写し取」ることは、本願発明の「該凹部に転写用のパッドを押圧することにより、該第2の凹部のインクをパッドに採取」することに相当する。
また、引用発明1の「前記スタンプを金型面に押圧して前記濃青色液状物のパターンを前記スタンプから凹型である前面用金型面に転写して、コンタクトレンズの虹彩部分に色付けするように前記前面用金型面上に液状濃青色フィルムのパターンを形成」することと、本願発明の「該パッドをコンタクトレンズの凸型および凹型の成型型のうち凸型に押圧することにより、コンタクトレンズの成形箇所に転写」することとは、「該パッドをコンタクトレンズの成型型に押圧することにより、コンタクトレンズの成形箇所に転写」する点で一致する。

(キ)引用発明1の「レンズの本体を形成するための前記レンズ形成用モノマー混合物を各金型にそれぞれ供給し、各レンズ形成用モノマー混合物を部分的に重合して前記液状白色フィルム及び前記液状濃青色フィルムのパターンをそれぞれコンタクトレンズの後面及び前面に固着させ、次いで、2つの金型を合わせ、重ね合わされた後面と前面のレンズ形成用モノマー混合物を重合させて結合し、硬化を完了させる」ことは、本願発明の「該転写された凸型と前記凹型とを用いてコンタクトレンズの凹面および凸面の成型を行なう」ことに相当する。

(ク)したがって、本願発明と引用発明1とは、

「コンタクトレンズの製造方法であって、
コンタクトレンズの素材と同一のモノマーに第1の色相の色素を混合して第1のインクを製造し、
コンタクトレンズの素材と同一のモノマーに第1の色相とは異なる第2の色素を混合して第2のインクを製造し、
前記第1のインクを、所定以上の径を有する環状に配置された第1の凹部に注入し、
該凹部に転写用のパッドを押圧することにより、該第1の凹部のインクをパッドにて採取し、
該パッドをコンタクトレンズの凸型および凹型の成型型のうち凸型に押圧することにより、コンタクトレンズの成形箇所に転写し、
第2のインクを、第2の凹部に注入し、
該凹部に転写用のパッドを押圧することにより、該第2の凹部のインクをパッドに採取し、
該パッドをコンタクトレンズの成型型に押圧することにより、コンタクトレンズの成形箇所に転写し、
該転写された凸型と前記凹型とを用いてコンタクトレンズの凹面および凸面の成型を行なうコンタクトレンズの製造方法。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

〈相違点1〉
本願発明の「第2のインク」が「注入」される「第2の凹部」は「第1のインク」が「注入」される「第1の凹部」とは「異なる形状」であるのに対し、引用発明1の「濃青色液状物」が「充填」される「金属板に蝕刻されたパターン」が「白色液状物」が「充填」される「金属板に蝕刻されたパターン」とは異なる形状であるとの限定がない点。

〈相違点2〉
本願発明の「第2のインク」が「採取」された「パッド」を「コンタクトレンズの凸型および凹型の成型型のうち凸型に押圧する」のに対し、引用発明1の「濃青色液状物」が「写し取」られた「転写スタンプ」を「金型面に押圧して前記濃青色液状物のパターンを前記スタンプから凹型である前面用金型面に転写」する点。

4 相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
引用例2の上記記載事項(ソ)から、引用例2には、一枚のコンタクトレンズが複数の色で着色されるとともに色毎に模様、すなわち、パターンの形状を異ならせたコンタクトレンズが記載されていることは明らかである。
そして、引用発明1の「コンタクトレンズ」と引用例2に記載された発明の「コンタクトレンズ」とは、一枚のコンタクトレンズが複数の色で着色されたカラーコンタクトレンズである点で一致する。また、引用例1の上記記載事項(オ)(サ)及び引用例2の上記記載事項(セ)の「メーキャップなどに使用出来る」との記載から、引用発明1の「コンタクトレンズ」と引用例2に記載された発明の「コンタクトレンズ」とは、美容効果を有するカラーコンタクトレンズである点でも一致する。さらに、引用発明1の「透明な中央視覚部分とそれを取巻く色付虹彩部分を有し、一方の面に白色のパターンが施され他方の面に濃青色のパターンが施された多色模様付外観を有する成形コンタクトレンズ」もまた、引用例2に記載された発明の「コンタクトレンズ」と同様に、識別可能に着色されたコンタクトレンズであることも明らかである。
以上のような引用発明1の「コンタクトレンズ」と引用例2に記載された発明の「コンタクトレンズ」との共通点に照らせば、引用発明1の「コンタクトレンズ」に引用例2に記載された発明を適用して引用発明1の「コンタクトレンズ」の「白色」「パターン」の形状を「濃青色」「パターン」の形状と異ならせるために、引用発明1の「成形コンタクトレンズ製造方法」において「濃青色液状物」が「充填」される「金属板に蝕刻されたパターン」を「白色液状物」が「充填」される「金属板に蝕刻されたパターン」と異なる形状とすることは、当業者にとって容易に想到し得ることである。
したがって、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

(2)相違点2について
一枚のコンタクトレンズが複数の色で着色されたカラーコンタクトレンズの分野において、コンタクトレンズの一方の面側にのみ前記複数の色からなる着色部を形成することは本願出願時において周知の事項である(特開2000-62034号公報(段落【0042】、図2)、特開平3-54519号公報(公報第6頁右下欄第14行?第7頁左上欄第1行)を参照。)。
そして、引用発明1の「成形コンタクトレンズ」は「一方の面に白色のパターンが施され他方の面に濃青色のパターンが施された多色模様付外観を有する成形コンタクトレンズ」であるから、引用発明1の「成形コンタクトレンズ」も、一枚のコンタクトレンズが複数の色で着色されたカラーコンタクトレンズである。
そうすると、引用発明1の「コンタクトレンズ」に上記周知事項を適用して引用発明1の「コンタクトレンズ」の「濃青色」「パターン」を「白色」「パターン」が形成された面と同一の面に形成するために、引用発明1の「成形コンタクトレンズ製造方法」において「前記濃青色液状物のパターン」を「液状白色フィルムのパターン」が形成された面である「凸型である後面用金型面」に転写することは、当業者にとって容易に想到し得ることである。
したがって、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。

(3)本願発明の進歩性の判断
以上のとおりであるから、上記相違点1,2に係る本願発明の発明特定事項を採用することは当業者にとって想到容易である。
また、本願発明の効果は、引用例1,2に記載された発明及び周知事項から予測し得る程度のものである。
したがって、本願の請求項1に係る発明は引用例1,2に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は引用例1,2に記載された発明及び周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そして、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
 
審理終結日 2008-09-01 
結審通知日 2008-09-02 
審決日 2008-09-16 
出願番号 特願2000-131983(P2000-131983)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴野 幹夫  
特許庁審判長 佐藤 昭喜
特許庁審判官 森林 克郎
日夏 貴史
発明の名称 コンタクトレンズの製造方法  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  

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