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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06K
管理番号 1187380
審判番号 不服2005-8209  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-02 
確定日 2008-11-04 
事件の表示 平成 7年特許願第177790号「電気スマートカード用ポータブルインターフェース」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 3月 8日出願公開、特開平 8- 63556〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年7月13日(パリ条約による優先権主張1994年7月13日、フランス国)の出願であって、平成16年5月10日付けで拒絶の理由が通知され、平成17年1月21日付けで拒絶査定がなされたのに対し、同年5月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月31日付けで手続補正がなされ、当審において、平成19年11月16日付けで拒絶の理由が通知され、平成20年5月19日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年5月19日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。

「カードリーダーにプラグ接続でき、電気接続タブ(33、66、88、98、132、135)を備えた少なくとも1つの電気スマートカード(26、52、54、75、76、130)とカードリーダーとの間のポータブルインターフェースにおいて、
長さ、幅及び厚さを有し、カードリーダーに受け入れられるように設計され、且つモジュールの長さの一端に前記カードリーダーとの接続用のプラグ接続可能な電気接続手段(16)を含むモジュールを有し、モジュール(10、80、120)は、PCMCIA規格に従う長方形の平行六面体の形状であり、且つ前記スマートカードの幅にほぼ相当する幅を有し、モジュールはスマートカードが通ることができる横方向のスロット(82)を含み、
前記スマートカードの挿入用のスロット(24、122)を含み、且つプラグ接続可能な電気接続手段(16)と反対側の、モジュール(10、80、120)の長手方向の他端に固着された端部分(18、121)を有し、端部分の幅はモジュールの幅よりも大きく、
スマートカードの少なくとも一部分を受け入れるための、前記スロットから前記端部分の少なくとも一部分を突き抜ける、ほぼ平らな形状のハウジング(28、82)を備え、前記ハウジングはスマートカード用のガイド及び位置決め手段(34、36、102、104、125、128)を有し、前記ガイド及び位置決め手段は、スマートカード(76)がハウジング(84)に挿入されるとき、スマートカード(76)を案内し、
さらに、スマートカードの前記電気接続タブとの電気接続手段(32、68、70、133、136)を備えている、
ことを特徴とするインターフェース。」

なお、上記本願の特許請求の範囲における請求項1の記載では、図面において使用した符号が括弧をして記載されているが、これら図面において使用した符号の記載は、以下の引用発明との対比、相違点の認定及び判断の記述においては省略するものとする。

3.引用発明
当審の拒絶理由に引用された刊行物である特開平6-131508号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

A.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ICカードの情報の読取り、書込み等の情報処理を行うICカード情報処理装置に係わり、詳しくは携帯型パソコン等のコンピュータ機器に接続して使用するICカード情報処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ICカード情報処理装置は、外置型でコネクタケーブル等でコンピュータ機器に設けられたRS-232C等のインターフェイスに接続して使用するようになっている。
【0003】一方、携帯型のコンピュータ機器においては、一般に機能拡張用の拡張基板が装着できるように拡張スロットを備えている。近年、この拡張基板のカード化および標準化が進められており、サイズが統一化される傾向にある。
【0004】今後、標準化される拡張スロットとして、例えばPCMCIAカードスロットがあり、このスロットに挿入されるカードは、米国での拡張ICカード標準化団体であるPCMCIA(PC Memory Card International Association) が基準を定めている。
【0005】そして、半導体メモリを搭載したICメモリは、タイプ2として厚さ5mmとサイズが決められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、従来のICカード情報処理装置は、接続するコンピュータ機器と別置でサイズも大きく、コネクタケーブル等でRS-232C等のインターフェイスに接続する必要があり、使用場所に制約されたり、運搬上も繁雑で不便であった。また、RSー232C等のインターフェイスを占有してしまい、他のI/O機器を接続する時には取外さなければならない等の不便さもあった。
【0007】本発明は、上記事情に基づきなされたもので、携帯型パソコン等のコンピュータ機器の規格化されたメモリカード用スロットに挿入接続が可能であって、コンピュータ機器と一体で使用や運搬が行え、使用場所を選ばず使えて利便性が大幅に向上するとともにRSー232C等のインターフェイスを占有せず他のI/O機器類を接続したままで使用することも可能なICカード情報処理装置を提供することを目的とする。」

B.「【0012】図1は本発明のICカード情報処理装置1の外観を示し、図2は拡張メモリ等のメモリカード(図示しない)を差し込むメモリカード用スロット2Aを備えたノート型パソコン等のコンピュータ機器2を示す。
【0013】コンピュータ機器2の前記メモリカード用スロット2Aの内部は、各種のメモリカード規格に準じた形状寸法になっている。そして、本発明のICカード情報処理装置1をメモリカード用スロット2Aに挿入することにより、その先端部に設けられたコネクタ部3がコンピュータ機器2内の接続コネクタ2B(図13参照)に電気的に接続されるようになっている。
【0014】ICカード情報処理装置1は、大部分がメモリカードの規格に準じた形状寸法、具体的には厚さ方向では最大5mm、幅方向ではICカード6とほぼ同じ寸法である54mmとなっており、メモリカード用スロット2Aに内蔵される部分1Aとコンピュータ機器2外に出る部分1Bとが一体に構成されている。ただしこの外に出る部分1Bはコンピュータ機器2のメモリカード用スロット2Aの形状によっては内蔵も可能な部分ではある。」

C.「【0016】図中9は各機構部材を保持するメインフレーム10と、このメインフレーム10が固定されるとともに外形を構成するメインフレーム枠11とからなる装置本体である。装置本体9の構成部材であるメインフレーム枠11のメモリカード用スロット2Aに内蔵される部分1Aは適用対象のメモリカードの規格に合った形状寸法になっている。」

D.「【0017】メインフレーム枠11のコンピュータ機器2外に出る部分1Bの端面には、ICカード6の挿入ガイドとなるガイド部11A,11B,11Cを有したカード挿入口11Gが設けられている。このカード挿入口11Gは入り口が広く、ICカード6の挿入方向(矢印A方向)に向かって狭まり所定の開口部寸法になるように形成されている。
【0018】カード挿入口11Gのガイド部11Cの近傍には、ガイドローラ26A,26Bがガイドローラばね26CによってICカード6の挿入方向に向かって右方向(矢印B方向)に付勢された状態かつ回転自在に保持されていてカード付勢手段26を構成している。そして、これらガイドローラ26A,26BによりICカード6を矢印B方向に押圧し、カード挿入口11Gと連通するICカード挿入路7の一側に設けられたガイド面11D,11Eに突き当たることによりカード挿入口11G付近での幅方向の位置決めがなされるようになっている。」

E.「【0069】しかして、上記のように構成されたカード情報処理装置1にあっては、ICカード6を挿入するカード挿入口11Gを有した装置本体9と、この装置本体の前記カード挿入口11Gから挿入されたICカード6の接点としてのコンタクト部6Bに接離するコンタクト23,24と、このコンタクト23,24と電気的に接続し制御を行なう制御部51と、この制御部51をコンピュータ機器2の規格化されたメモリカード用コネクタ2Bに接続するコネクタ3とを有し、コンピュータ機器2のメモリカード用スロット2Aに挿入接続して使用できる構成となっている。」

上記A,B及び引用文献1の図1,2の記載からみて、引用文献1に記載のICカード情報処理装置は、コンピュータ機器のメモリカード用スロットに挿入接続できるものであり、ICカードと前記コンピュータ機器との間で用いられるものである。
また、上記Eの記載からみて、前記ICカードは、接点としてのコンタクト部を備えている。

上記B,C及び引用文献1の図1の記載からみて、前記ICカード情報処理装置は、メモリカード用スロットに内蔵される部分を有しており、当該メモリカード用スロットに内蔵される部分は、適用対象のメモリカードの規格に合った形状寸法を有するとともに、前記ICカードとほぼ同じ寸法の幅を有しており、その長手方向の先端部に、前記コンピュータ機器内の接続コネクタに電気的に接続されるコネクタ部を含むものである。
ここで、前記メモリカード用スロットに内蔵される部分は、「メモリカード用スロットに内蔵される」ものであるから、前記コンピュータ機器のメモリカード用スロットに受け入れられる、すなわち、前記コンピュータ機器に受け入れられるように設計されていることは明らかである。

上記B,D及び引用文献1の図1の記載からみて、前記ICカード情報処理装置は、コンピュータ機器外に出る部分を有しており、当該コンピュータ機器外に出る部分は、前記ICカードの挿入用のカード挿入口を含むとともに、前記コネクタ部と反対側の、前記メモリカード用スロットに内蔵される部分の長手方向の他端に設けられており、その幅は、前記メモリカード用スロットに内蔵される部分の幅よりも大きい。

上記D及び引用文献1の図14の記載からみて、前記ICカード情報処理装置は、前記カード挿入口と連通するICカード挿入路を備えており、当該ICカード挿入路が、ICカードの少なくとも一部を受け入れるためのものであって、ほぼ平らな形状をしていることは明らかである。
そして、前記ICカード挿入路は、前記コンピュータ機器外に出る部分に設けられた前記カード挿入口から前記メモリカード用スロットに内蔵される部分にわたって連通して設けられているから、前記カード挿入口から前記コンピュータ機器外に出る部分の少なくとも一部分を突き抜けている。
また、前記ICカード挿入路の入り口部分にあたる前記カード挿入口には、前記ICカードの挿入ガイドとなるガイド部が設けられ、さらに、前記ICカード挿入路の一側には、前記ICカードの幅方向の位置決めをするためのガイド面が設けられているから、前記ICカード挿入路は、ICカードのガイド及び位置決めを行うガイド部及びガイド面を有しており、これらのガイド部及びガイド面は、ICカードがICカード挿入路に挿入されるときに、ICカードを案内するものであることは明らかである。

上記Eの記載からみて、前記ICカード情報処理装置は、ICカードの接点としての前記コンタクト部に接離するコンタクトを備えている。

したがって、上記A-Eの記載事項及び関連する図面を参照すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「コンピュータ機器のメモリカード用スロットに挿入接続でき、接点としてのコンタクト部を備えたICカードと前記コンピュータ機器との間で用いられるICカード情報処理装置において、
適用対象のメモリカードの規格に合った形状寸法を有し、前記コンピュータ機器に受け入れられるように設計され、その長手方向の先端部に前記コンピュータ機器内の接続コネクタに電気的に接続されるコネクタ部を含む、メモリカード用スロットに内蔵される部分を有し、当該メモリカード用スロットに内蔵される部分は、前記ICカードとほぼ同じ寸法の幅を有しており、
前記ICカードの挿入用のカード挿入口を含み、前記コネクタ部と反対側の、前記メモリカード用スロットに内蔵される部分の長手方向の他端に設けられた、コンピュータ機器外に出る部分を有し、当該コンピュータ機器外に出る部分の幅は前記メモリカード用スロットに内蔵される部分の幅よりも大きく、
ICカードの少なくとも一部を受け入れるための、前記カード挿入口から前記コンピュータ機器外に出る部分の少なくとも一部分を突き抜ける、ほぼ平らな形状のICカード挿入路を備え、前記ICカード挿入路は、ICカードのガイド及び位置決めを行うガイド部及びガイド面を有し、前記ガイド部及びガイド面は、ICカードがICカード挿入路に挿入されるときに、ICカードを案内し、
さらに、ICカードの接点としての前記コンタクト部に接離するコンタクトを備えている、
ことを特徴とするICカード情報処理装置。」

4.対比
(a)本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「コンピュータ機器」及び「ICカード」は、それぞれ、本願発明の「カードリーダー」及び「電気スマートカード」(単に「スマートカード」と表記されている場合を含む。)に相当する。
また、引用発明の「ICカード情報処理装置」は、ICカードとコンピュータ機器との間で用いられて、両者のインターフェースとしての機能を果たすものであって、その形状からみて可搬(ポータブル)なものとして構成されていることは明らかである。
さらに、引用発明の「挿入接続」及び「接点としてのコンタクト部」は、本願発明の「プラグ接続」及び「電気接続タブ」に相当する。
よって、引用発明の「コンピュータ機器のメモリカード用スロットに挿入接続でき、接点としてのコンタクト部を備えたICカードと前記コンピュータ機器との間で用いられるICカード情報処理装置」は、本願発明の「カードリーダーにプラグ接続でき、電気接続タブを備えた少なくとも1つの電気スマートカードとカードリーダーとの間のポータブルインターフェース」に相当する。

(b)引用発明の「メモリカード用スロットに内蔵される部分」は、「適用対象のメモリカードの規格に合った形状寸法を有し」ているのであるから、所定の長さ、幅及び厚さを有していることは明らかである。
また、引用発明の「メモリカード用スロットに内蔵される部分」が有する「前記コンピュータ機器内の接続コネクタに電気的に接続されるコネクタ部」は、本願発明の「モジュール」が有する「前記カードリーダーとの接続用のプラグ接続可能な電気接続手段」に相当する。
よって、引用発明の「適用対象のメモリカードの規格に合った形状寸法を有し、前記コンピュータ機器に受け入れられるように設計され、その長手方向の先端部に前記コンピュータ機器内の接続コネクタに電気的に接続されるコネクタ部を含む、メモリカード用スロットに内蔵される部分」は、本願発明の「長さ、幅及び厚さを有し、カードリーダーに受け入れられるように設計され、且つモジュールの長さの一端に前記カードリーダーとの接続用のプラグ接続可能な電気接続手段を含むモジュール」に相当する。
そして、引用発明のメモリカード用スロットに内蔵される部分が「前記ICカードとほぼ同じ寸法の幅を有し」ていることは、本願発明のモジュールが「前記スマートカードの幅にほぼ相当する幅を有し」ていることに相当する。

(c)引用発明の「前記ICカードの挿入用のカード挿入口」は、本願発明の「前記スマートカードの挿入用のスロット」に相当するから、引用発明の「前記ICカードの挿入用のカード挿入口を含み、前記コネクタ部と反対側の、前記メモリカード用スロットに内蔵される部分の長手方向の他端に設けられた、コンピュータ機器外に出る部分」と、本願発明の「前記スマートカードの挿入用のスロットを含み、且つプラグ接続可能な電気接続手段と反対側の、モジュールの長手方向の他端に固着された端部分」とは、「前記スマートカードの挿入用のスロットを含み、且つプラグ接続可能な電気接続手段と反対側の、モジュールの長手方向の他端に設けられた端部分」である点で一致する。
そして、引用発明において「当該コンピュータ機器外に出る部分の幅は前記メモリカード用スロットに内蔵される部分の幅よりも大き」いことは、本願発明において「端部分の幅はモジュールの幅よりも大き」いことに相当する。

(d)引用発明の「ICカードの少なくとも一部を受け入れるための、前記カード挿入口から前記コンピュータ機器外に出る部分の少なくとも一部分を突き抜ける、ほぼ平らな形状のICカード挿入路」は、本願発明の「スマートカードの少なくとも一部分を受け入れるための、前記スロットから前記端部分の少なくとも一部分を突き抜ける、ほぼ平らな形状のハウジング」に相当する。
また、引用発明の「ICカードのガイド及び位置決めを行うガイド部及びガイド面」は、本願発明の「スマートカード用のガイド及び位置決め手段」に相当するから、引用発明において「前記ICカード挿入路は、ICカードのガイド及び位置決めを行うガイド部及びガイド面を有し、前記ガイド部及びガイド面は、ICカードがICカード挿入路に挿入されるときに、ICカードを案内」することは、本願発明において「前記ハウジングはスマートカード用のガイド及び位置決め手段を有し、前記ガイド及び位置決め手段は、スマートカードがハウジングに挿入されるとき、スマートカードを案内」することに相当する。

(e)引用発明の「ICカードの接点としての前記コンタクト部に接離するコンタクト」は、本願発明の「スマートカードの前記電気接続タブとの電気接続手段」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、

「カードリーダーにプラグ接続でき、電気接続タブを備えた少なくとも1つの電気スマートカードとカードリーダーとの間のポータブルインターフェースにおいて、
長さ、幅及び厚さを有し、カードリーダーに受け入れられるように設計され、且つモジュールの長さの一端に前記カードリーダーとの接続用のプラグ接続可能な電気接続手段を含むモジュールを有し、モジュールは、前記スマートカードの幅にほぼ相当する幅を有しており、
前記スマートカードの挿入用のスロットを含み、且つプラグ接続可能な電気接続手段と反対側の、モジュールの長手方向の他端に設けられた端部分を有し、端部分の幅はモジュールの幅よりも大きく、
スマートカードの少なくとも一部分を受け入れるための、前記スロットから前記端部分の少なくとも一部分を突き抜ける、ほぼ平らな形状のハウジングを備え、前記ハウジングはスマートカード用のガイド及び位置決め手段を有し、前記ガイド及び位置決め手段は、スマートカードがハウジングに挿入されるとき、スマートカードを案内し、
さらに、スマートカードの前記電気接続タブとの電気接続手段を備えている、
ことを特徴とするインターフェース。」
である点で一致し、以下の3点で相違している。

[相違点1]
本願発明のモジュールが、「PCMCIA規格に従う長方形の並行六面体の形状」であるのに対し、引用発明においては、メモリカード用スロットに内蔵される部分が、「適用対象のメモリカードの規格に合った形状寸法」を有する旨は特定されているが、PCMCIA規格に従う長方形の平行六面体の形状であるか否かは特定されていない点。

[相違点2]
本願発明のモジュールが、「スマートカードが通ることができる横方向のスロット」を含むのに対し、引用発明においては、メモリカード用スロットに内蔵される部分が、ICカードが通ることができる横方向のスロットを含むか否か特定されていない点。

[相違点3]
本願発明の端部分が、モジュールの一端に「固着」されるものであるのに対し、引用発明においては、コンピュータ機器外に出る部分が、メモリカード用スロットに内蔵される部分に、固着する形で設けられているか否か特定されていない点。

5.当審の判断
以下、上記相違点について検討する。

[相違点1]について
引用文献1においては、上記3.Aの段落【0004】において、PCMCIAカードスロットについて言及されているように、メモリカードの規格の一つとしてPCMCIA規格が念頭に置かれており、さらに、上記3.Bの段落【0014】に記載されているように、大部分がメモリカードの規格に準じたICカード情報処理装置の具体的形状寸法として、PCMCIAのType IIカードの規格寸法と同じ、厚さ5mm、幅54mmが上げられている。
したがって、引用発明における適用対象のメモリカードの規格をPCMCIA規格とし、適用対象のメモリカードの規格に合った形状寸法を有するメモリカード用スロットに内蔵される部分の形状を、本願発明のモジュールと同様、「PCMCIA規格に従う長方形の平行六面体の形状」とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

[相違点2]について
当審の拒絶理由に引用された刊行物である実願平4-56677号(実開平6-19052号)のCD-ROM(以下、「引用文献2」という。)の段落【0014】?段落【0016】及び図3には、メモリカードとアダプタの幅がほぼ同一の場合に、メモリカードが挿入される部分について、アダプタの横方向を開放状態とした構成が記載されている。
ここで、引用発明のICカード情報処理装置は、ICカードのアダプタとしての機能を有するものであり、メモリカード用スロットに内蔵される部分において、ICカードとほぼ同じ寸法を有するのであるから、引用発明のICカード情報処理装置に、上記引用文献2に記載の公知技術を適用し、メモリカード用スロットに内蔵される部分のICカードが挿入される部分の横方向を開放状態とし、本願発明の「ICカードが通ることができる横方向のスロット」と同様の開放部分を有する構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

この点に関し、審判請求人は平成20年5月19日付けの意見書において、「しかし、スマートカードとPCMCIAカードちょうど同じ幅のものではないから、スマートカードとPCMCIAカードは完全に合っていないと言えるが、事実、スマートカードの幅は、53.92mmと54.03mmの間に含まれる。PCMCIAカードの仕様書は、54mmを指示しているが、幅は、45.1mmに相当する2.13インチに等しいと定められている。このことを考慮すると、当業者は、PCMCIAカードをスマートカードよりも少し大きくすることができる機械的な遊びが,PCMCIAカードの寸法について存在すると考える。従って、請求項1に記載の横方向スロットは自明ではない。」と主張する。
確かに、審判請求人が主張するように、PCMCIAカードをスマートカードよりも少し大きくすることができる機械的な遊びがある場合、横方向を開放状態とすることは必須ではないが、横方向を開放状態とすることを阻害するものでもなく、引用発明を知る当業者が、引用文献2に記載の上記公知技術に接した場合に、当該引用文献2に記載の公知技術を引用発明に適用しようとすることは、上述したような分野や構成の共通性を考えればごく自然であり、その適用にも何らの困難性は認められない。

また、審判請求人は上記意見書において、「引用文献1では、PCMCIAカードがスマートカードよりも大きい(図14-17参照)ことが分かる。加えて、横方向スロットがあるとしても、スマートカードはこの横方向スロットを貫通することができない。引用文献1は、スマートカードをガイド部材34と35の間に受け入れるため、PCMCIAカードの内側のスマートカードの案内を保証するためのガイド部分11Eを有する。このことからでも分かる様に、引用文献1はこのような請求項1に係る発明の構成乃至特徴を開示も示唆もしていない。」とも主張する。
しかしながら、本願の請求項1においては「スマートカードが通ることができる横方向のスロット」と規定されているのみであって、スマートカードが横方向スロットを「貫通」することについては記載されていないから、上記主張は特許請求の範囲の記載に基づくものではない。
また、上記本願の請求項1における「通ることができる」との表現が、「貫通することができる」ことを意味するとしても、引用文献1の実施例におけるガイドローラ26A,26Bは、上記3.Dに記載されているようにばねによって付勢されるものであって、ICカードの左右方向の動きを完全に固定するものではなく、引用発明の実施例のようにガイド部分11Eがあったとしても、ICカードは左右方向に動き得るから、メモリカード用スロットに内蔵される部分に横方向のスロットを設けた場合、ICカードが当該横方向のスロットを貫通することもあり得るのであって、上記出願人の主張は採用できない。

[相違点3]について
コンピュータ機器外に出る部分と、メモリカード用スロットに内蔵される部分とを一体的なものとして構成するか、コンピュータ機器外に出る部分と、メモリカード用スロットとを別部材とし、前者が後者に固着されるものとして構成するかは、当業者が適宜選択すべき事項であり、相違点3は格別なものではない。

そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用発明及び引用文献2に記載の公知技術から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-03 
結審通知日 2008-06-09 
審決日 2008-06-20 
出願番号 特願平7-177790
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安田 太夏目 健一郎  
特許庁審判長 赤川 誠一
特許庁審判官 野仲 松男
鈴木 匡明
発明の名称 電気スマートカード用ポータブルインターフェース  
代理人 村社 厚夫  
代理人 今城 俊夫  
代理人 中村 稔  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 小川 信夫  
代理人 大塚 文昭  

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