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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A23L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1188292
審判番号 不服2006-1981  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-03 
確定日 2008-11-18 
事件の表示 特願2003-426700「餅の製造方法及び餅の製造セット並びに熱処理用容器及び餅」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月 5日出願公開、特開2004-215659〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年12月24日(優先権主張 平成14年12月26日)の出願であって、平成17年12月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年2月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成18年3月3日付けで手続補正がなされ、当審で通知した審尋に対し、平成18年12月29日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成18年3月3日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年3月3日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
平成18年3月3日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る
「上部に開口部と蒸気吹出口を有し、通常時は折り畳まれてシート状を呈しているが、使用時に平坦な底部を有する角筒状を形成できる構成で、内側に離型処理を施した非誘電加熱性材料製かつ紙製の熱処理容器を用い、まず、粉状又は粉粒状を呈した餅の原料と水とを良く混ぜ合わせた混合液を作り、この混合液を前記平坦な底部を有する角筒状を形成できるように開いた前記熱処理容器内部の前記開口部より上部に空間部が形成できるように注ぎ込み、次いで、前記開口部を前記熱処理容器の上部に錐状の空間部ができかつ前記蒸気吹出穴口を前記錐状の空間部の頂部に残した状態となるようにして閉じ、次いで該熱処理用容器ごと誘電加熱機を用いて誘電加熱処理を施して餅を製造することを特徴とする、餅の製造方法。」を、
「上部に開口部と蒸気吹出口を有し、通常時は折り畳まれてシート状を呈しているが、使用時に平坦な底部を有する角筒状を形成できる構成で、内側に離型処理を施した非誘電加熱性材料製かつ紙製の熱処理容器を用い、まず、粉状又は粉粒状を呈した餅の原料と水とを良く混ぜ合わせた混合液を作り、この混合液を前記平坦な底部を有する角筒状を形成できるように開いた前記熱処理容器内部の前記開口部より上部に空間部が形成できるように注ぎ込み、次いで、前記開口部の側を折り畳んで前記熱処理容器の上部に錐状の空間部を形成でき、かつ前記蒸気吹出穴口を前記錐状の空間部の頂部に残した状態となるようにして閉じ、次いで、前記折り畳んだ部分を前記熱処理容器に粘着テープで貼着し、次いで、該熱処理用容器ごと誘電加熱機を用いて誘電加熱処理を施して餅を製造することを特徴とする、餅の製造方法。」とする補正を含むものである。
上記補正により、特許請求の範囲の請求項1は、「開口部の側を折り畳んで」及び「次いで、前記折り畳んだ部分を前記熱処理容器に粘着テープで貼着し」という事項が加入され、これらはいずれも、「餅を製造すること」という発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年改正前特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(同法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)刊行物に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-152952号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の記載がある。
(1a)「60?120メッシュに製粉した餅粉を生粉のまま、その含水率が最低でも約7%程度に保持されるよう規制された範囲内で消毒殺菌して成る餅粉に対して、100?160重量パーセントの割合となる水を添加して均質に混練した上、その混練された練り餅粉を電子レンジで3?5分間だけ加熱して糊化するようにした即席餅の製造方法。」(特許請求の範囲第3項)
(1b)「この発明は、即席餅用として市販できる全く新しいタイプの餅粉と、その餅粉を使用して極めて簡単に餅を作ることが可能となる新規なやり方による即席餅の製造方法とを提供しようとするものである。」(1頁右欄4?8行)
(1c)「実験例1
・・・
餅粉(水分13.5%):50g
加水量 :60g
加熱時間 :3分
容器(円筒型、蓋付、 :75mmφ
耐レンジ容器) 65mm深さ
レンジ出力 :600w 」(3頁右上欄3行?下から5行)
(1d)「そして、その餅粉を使って即席餅を製造する方法も、定められた割合の水を添加して単に混練し、僅かな時間だけ電子レンジで加熱するだけで、従来の即席餅では実現できなかった搗きたて同様の食感を有する餅を作ることができ、この効果は、先の安価に提供できる効果と相俟って、餅の消費拡大に大いに貢献することができるものといえる。」(4頁右上欄7?14行)

同特開2001-146275号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の記載がある。
(2a)「【請求項37】開口側端部と底部側端部と2つの側端部とをそれぞれ有し、少なくとも前記側端部及び底部側端部にて結合して主収納部を形成する前面パネル及び背面パネルを提供する1以上のシート状の柔軟性素材と、開口しているか或いは開口することができる開口部及びトラフ部を有するか又はこれらを含んで構成され、前記前面パネルと前記背面パネルとの間にて物品を含むポーチ部と、を含んで構成される包装具。」(特許請求の範囲の請求項37)
(2b)「【請求項71】前記底部が、ガセット形状の底部としてシール処理されていることを特徴とする請求項37?請求項70のいずれか1つに記載の包装具。
【請求項72】前記ガセット形状の底部が、前記包装具の端部部分においてその概ね開くことができるガセット部がシールされる部分を除いて幅方向に拡張可能なものであることを特徴とする請求項71記載の包装具。」(特許請求の範囲の請求項71、72)
(2c)「本発明は、包装具に関する。より詳細には、それに限定されるものではないが、電磁波のエネルギーによって加熱することができる食品を含む包装具、又はそのような食品を入れるための包装具に関する。」(段落【0001】)
(2d)「前記少なくとも1つの他のプライは、紙又は紙ボード状の素材から成るのが好ましい。前記紙又は紙ボード状の素材は、前記内側のプライにラミネートされるのが好ましい。」(段落【0020】)
(2e)「本包装具は、内部の食品を調理したり或いは加熱したりするために、食品が包装具に含まれているか又はユーザが食品を包装具に入れることができるように提供される状態で、その食品の末端ユーザ或いは顧客に提供することができる。」(段落【0052】)
(2f)「最も好ましい形態では、包装具は、これが自立できるような形状に操作されるか又は操作することができる基部を備える。」(段落【0054】)
(2g)「包装具が内部にいかなる食品も含まずに提供された場合は、この段階で食品を包装具の収納部に提供するのがよい。
この後、包装具及びその内容物に電磁波のエネルギーを与えることができ、または、加えられた水分が湯又は熱湯であって、包装具及びその内容物が電磁波のエネルギーによって加熱されるのが望ましくないか又はその必要がない場合には、十分な時間そのままにしておくようにするだけでよい。内容物の電磁波による調理或いは加熱は、図3に示される状態の包装具によって達成できるし、また、包装具の収納部内に熱を含めるために、弱み線或いは折返線によって形成されるフラップ部を折り返すことにより、包装具の収納部の露出を規制することもできる。」(段落【0055】?【0056】)
(2h)「前面パネル及び背面パネルの底部は、ガセット部9を介して接合されるのが最も好ましい。ガセット部を設けることにより、パネルがそれらの底部に沿って相互に外側へ向けて拡張可能となり、本発明の包装具を自立できるようにする安定した基部が形成される。ガセット部の形態は、(前面パネル及び背面パネルと同じ素材であっても、そうでなくても)素材の単層折曲プライであるのが好ましく、包装具の底端部に沿って及び側部7の下方にてシールされるか又は前面パネル及び背面パネルの一部を形成するのが好ましい。この側部におけるシール部は、図8に点線で示されている。」(段落【0062】)
(2i)「

」(図8)
(2j)「包装具の使用は、これまでに実質的に開示された工程のためのものであってよいが、包装具の内容物の調理前に、再閉可能なプロファイルストリップを使用して包装具の開口部を閉じることができ、また、切取ストリップ或いは切取パネル25を除去することにより、調理時における包装具の膨張及び/又は蒸気の循環を可能にする通気用の開き口26を提供することができる。内容物が十分に加熱されるか又は調理されると、包装具の上部部分を切り取って、加熱されるか或いは調理された食品を含む収納部へ便利に接触することができる。図23から図30に示される包装具の他の構造は、パネルのうち少なくとも一方から切り取ることができる1以上のストリップ或いは部分を含んでよく、また、それらを両方のパネルに設けてもよい。」(段落【0092】)

同特開2001-58680号公報(以下、「刊行物3」という。)には、次の記載がある。
(3a)「本発明は、開封容易な電磁加熱用包装体に関し、特にコンビニエンスストアなどで販売されているホットドックやハンバーガーなどの食品を包装したまま電子レンジなどの電磁加熱器で再加熱処理した時に、食品から出る余分な水分や油によって食品の風味が損なわれることを防ぎ、さらに食品を取り出す時の開封を容易かつ確実にすることを目的とした包装体に関する。」(段落【0001】)
(3b)「食品包装材料として、例えばパンやハンバーガー、ご飯等の被包装物は、でんぷん質やセルロース質など、いずれも親水性の高い成分から成り立っており、従来紙製品を食品に使用する場合には、剥離の目的で、パラフィンやシリコン系の撥水処理がなされてきた。この意味で、パンやハンバーガー等の食品を電子レンジ加熱させた場合、オレフィン系の繊維から成る親水性の低い素材で出来た不織布を使用すると、食品が内層シートにくっつかず、剥離性が良く、包装物から食品を取り出しやすくなる。本発明においても、撥水性をさらに増したり、親水性を低下させるために、不織布表面に撥水加工剤を塗布することは可能であるが、このような後加工剤は、使用時や製品加工時に脱離し、食品に吸着し、人体に入る恐れがあることを考慮すると望ましくない。これらを勘案しても、食品包装材量の表面材は、実質的にポリオレフィン系のポリマーから成るものが好ましい。」(段落【0023】)

(3)対比
刊行物1には、(1a)に示した餅の製造方法が記載され、その際に、(1c)に示したように耐レンジ容器を用いているから、刊行物1には、
「餅粉に水を添加して均質に混練した上、その混練された練り餅粉を耐レンジ容器に入れて電子レンジで加熱して糊化するようにした即席餅の製造方法」という発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているといえる。
そこで、本願補正発明と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1に具体的に記載された実験例1における容器の容積と内容量からみて(記載事項1c)、練り餅粉は、容器に目一杯ではなく上部に空間ができるように収納されることは当然のことであるから、両者は、
「粉状を呈した餅の原料と水とを良く混ぜ合わせた混合液を作り、この混合液を熱処理容器内部の開口部より上部に空間部が形成できるように注ぎ込み、次いで、該熱処理用容器ごと誘電加熱機を用いて誘電加熱処理を施して餅を製造することを特徴とする、餅の製造方法」
で一致し、(イ)?(ハ)の点で相違する。
(イ)用いる熱処理容器が、前者では「上部に開口部と蒸気吹出口を有し、通常時は折り畳まれてシート状を呈しているが、使用時に平坦な底部を有する角筒状を形成できる構成で、内側に離型処理を施した非誘電加熱性材料製かつ紙製の熱処理容器」であるのに対し、後者ではそうでない点
(ロ)混合液を注ぎ込むのが、前者では「平坦な底部を有する角筒状を形成できるように開いた熱処理容器」であるのに対し、後者ではそうでない点
(ハ)前者では、「前記開口部の側を折り畳んで前記熱処理容器の上部に錐状の空間部を形成でき、かつ前記蒸気吹出穴口を前記錐状の空間部の頂部に残した状態となるようにして閉じ、次いで、前記折り畳んだ部分を前記熱処理容器に粘着テープで貼着」するのに対し、後者ではそうでない点

(4)判断
(4-1)相違点(イ)、(ロ)について
刊行物1と同様に、電磁波のエネルギーによって加熱することができる(記載事項2c、2g)、食品を入れるための(記載事項2c、2e)包装具、について記載されている刊行物2について検討すると、刊行物2に記載された包装具は、紙製であって(記載事項2d)、上部に開口部と蒸気用の開き口を有し(記載事項2a、2j)、底部はガセット形状をしており、幅方向に拡張可能であり(記載事項2b、2h)、使用時には自立できるものである(記載事項2f)。
そして、刊行物2に記載の包装具は、食品を入れて使用するまでは当然に折り畳まれて、例えばシート状をしていると考えられ、使用時には底部が平坦になって自立するから角筒状を形成するものであって、その内側が離型処理されているのも当然のことであるから(記載事項3a、3b参照)、刊行物2には、
「上部に開口部と蒸気吹出口を有し、通常時は折り畳まれてシート状を呈しているが、使用時に平坦な底部を有する角筒状を形成できる構成で、内側に離型処理を施した非誘電加熱性材料製かつ紙製の熱処理容器」が記載されている。
そうしてみると、この刊行物2に記載された事項の中に、上記(イ)、(ロ)の点はすべて記載されているところ、刊行物1発明で用いている熱処理容器に替えて、収納した食品を誘電加熱機を用いて誘電加熱処理するためのものである、刊行物2に記載の容器を用いることは、当業者が適宜なし得るところといえるから、これらの点を採用することは、刊行物2の記載に接した当業者にとって格別困難なことではない。

(4-2)相違点(ハ)について
刊行物2には、「折返線によって形成されるフラップ部を折り返すことにより、包装具の収納部の露出を規制することもできる」と記載され(記載事項2g)、具体的には図8にも示され(記載事項2i)、この図からも明らかなように、フラップ部を折り返せば当然にそこには錐状の空間部が生じる。
そして、折り畳んだ部分を粘着テープで貼着することは極めて普通のことであり、また、蒸気用の開き口は、蒸気が上昇することを考えると特段の事情がない限り、なるべく上部に設けようとするものであるから、「開口部の側を折り畳んで前記熱処理容器の上部に錐状の空間部を形成でき、かつ前記蒸気吹出穴口を前記錐状の空間部の頂部に残した状態となるようにして閉じ、次いで、前記折り畳んだ部分を前記熱処理容器に粘着テープで貼着」することも、刊行物2の記載に接した当業者にとって格別困難なことではない。

(4-3)本願補正発明の効果について
本願補正発明の効果は、明細書の段落【0058】に記載されるように、「この発明によれば、誰でもが手軽に電子レンジを用いて餅を作ることができ、かつ餅を作る熱処理容器に餅が付着することがなく使い捨てができるので、後処理も楽である。」というものであるところ、「誰でもが手軽に電子レンジを用いて餅を作ることができ」という効果は刊行物1において既に示されており(記載事項1b、1d)、また、「餅を作る熱処理容器に餅が付着することがなく使い捨てができるので、後処理も楽である」という効果は、刊行物2に示された包装具が紙製であって、簡便なものであることから(記載事項2d)、既に示されるところである。
そうすると、本願補正発明の効果も、刊行物1及び刊行物2の記載から、当業者が予測をし得る程度のものである。

(4-4)請求人の主張
請求人は、平成18年12月29日付け回答書において、
(i)「本願発明のものは、最初から加熱処理すべき材料が熱処理容器内に封入されているのではなく、餅を作る専用の熱処理容器であり、しかも調理をする場所で作った餅の原料と水の混合液を熱処理容器の中に入れ、その後熱処理容器の開口部を封ずるために、開口部を折り畳んでゆく際に、蒸気吹出口を錐状の空間部の頂部に同時に形成できるというものであり、常套手段を示す各公報に記載のものとは、その目的、構成、及び効果が明らかに異なっています。」旨、
(ii)「熱処理容器内の餅の原料を電磁加熱することによって生じた蒸気は、錐状の頂部に集まり、そこに設けた蒸気吹出口よりスムーズに外部へ排出され、内部圧力が高まって紙製の熱処理容器が破裂してしまうのを有効に防止することができているものであります。」旨、主張し、さらに、本願明細書には、蒸気吹出孔について、
(iii)「熱処理用容器5,25,27,30及び35内へ収容した餅の原料の上部には空間部が形成され、この空間部は餅の原料に対し誘電加熱が加えられる時に発生する蒸気の蒸気溜りとなり、この蒸気によって誘電加熱された餅を蒸すことができ、また、蒸気吹出孔は熱処理用容器内に必要な内圧を生じさせることができる機能を営むものである。」(明細書の段落【0052】)と記載されている。
これを検討するに、(i)については、開口部を折り畳んでゆく際に、蒸気吹出口を錐状の空間部の頂部に同時に形成できても同時には形成できなくても、蒸気吹出口の役割としては何ら変わるところはなく、設計的事項であるといえる。また、(ii)については、内部圧力の高まりを防止するには、開口部があれば足りるから、これも設計的事項といえる。(iii)については、刊行物1発明においても容器上部の空間で蒸気が溜まり餅を蒸すことができているものと考えられ、仮に、「生じた空間部が蒸気溜りとなり、この蒸気によって誘電加熱された餅を蒸すことができ」ることが本願補正発明の特徴だとしても、それにより製造された餅の特性については明細書に何ら記載されておらず、餅の味、食感等が刊行物1発明で製造された餅に比べて格段に優れるものとすることはできないから、この主張にも格別の意味は見出せない。
よって、請求人の主張はいずれも当を得ていない。

(4-5)まとめ
本願補正発明は、本願出願前に頒布された刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反するものであるから、その余のことを検討するまでもなく、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成18年3月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?10に係る発明(以下、「本願発明1?10」という。)は、平成17年11月28日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1及び9に係る発明は、以下のとおりのものである。
「上部に開口部と蒸気吹出口を有し、通常時は折り畳まれてシート状を呈しているが、使用時に平坦な底部を有する角筒状を形成できる構成で、内側に離型処理を施した非誘電加熱性材料製かつ紙製の熱処理容器を用い、まず、粉状又は粉粒状を呈した餅の原料と水とを良く混ぜ合わせた混合液を作り、この混合液を前記平坦な底部を有する角筒状を形成できるように開いた前記熱処理容器内部の前記開口部より上部に空間部が形成できるように注ぎ込み、次いで、前記開口部を前記熱処理容器の上部に錐状の空間部ができかつ前記蒸気吹出穴口を前記錐状の空間部の頂部に残した状態となるようにして閉じ、次いで該熱処理用容器ごと誘電加熱機を用いて誘電加熱処理を施して餅を製造することを特徴とする、餅の製造方法。」
「請求項1、4及び7に各記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする、餅。」
(以下、それぞれ、「本願発明1」、「本願発明9」という。)

(1)原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
(i)請求項9に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない、
(ii)請求項1?10に係る発明は、引用文献1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、
というものであり、引用文献1?3は以下のものである。
引用文献1:特開昭63-152952号公報
(上記「2.(2)」の刊行物1に同じ。
以下、「刊行物1」という。)
2:特開2001-58680号公報
(同刊行物3に同じ。以下、「刊行物3」という。)
3:特開2001-146275号公報
(同刊行物2に同じ。以下、「刊行物2」という。)

(2)刊行物に記載された事項
上記「2.(2)」に記載のとおりである。

(3)判断
(3-1)本願発明1について
本願発明1は、上記「2.(1)」に示したように、本願補正発明から一部の発明特定事項を除いたものに相当するから、本願補正発明を包含するものであるところ、本願補正発明は、上記「2.(4)(4-5)」に示したとおり、刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明を包含する本願発明1も、同様の理由により、本願出願前に頒布された刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明1は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。

(3-2)本願発明9について
刊行物1には、上記「2.(3)」に「刊行物1発明」として示した餅の製造方法の発明が記載されると同時に、該製造方法により製造された餅、すなわち、「餅粉に水を添加して均質に混練した上、その混練された練り餅粉を耐レンジ容器に入れて電子レンジで加熱して糊化するようにして製造した即席餅」の発明も記載されているといえるところ、該即席餅と本願発明9において特定される餅とは、餅として区別できない。
そうしてみると、本願発明9は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明1及び9は特許を受けることができないから、本願に係る他の請求項については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-07 
結審通知日 2008-01-15 
審決日 2008-01-30 
出願番号 特願2003-426700(P2003-426700)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A23L)
P 1 8・ 121- Z (A23L)
P 1 8・ 113- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 晴絵  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 鈴木 紀子
安藤 達也
発明の名称 餅の製造方法及び餅の製造セット並びに熱処理用容器及び餅  
代理人 伊藤 捷雄  

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