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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1188453
審判番号 不服2006-19843  
総通号数 109 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-07 
確定日 2008-11-28 
事件の表示 特願2000- 49379「画像形成装置、及び画像形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 9月 7日出願公開、特開2001-242682〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年2月25日に出願したものであって、平成17年6月8日付けの拒絶理由の通知に対し、同年8月10日付けで明細書に係る手続補正がなされたが、平成18年7月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月7日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月5日付けで明細書に係る手続補正がなされた後、当審において平成20年7月3日付けで拒絶理由通知がなされ、それに対して、同年9月1日付けで明細書に係る手続補正がなされたものである。

本願の請求項1?13に係る発明は、平成18年10月5日付けの手続補正により補正された請求項1?13に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「 少なくとも電子写真感光体、帯電、露光、現像、転写及びクリーニングの各手段を有し、且つ該感光体上にトナー像を作製後、転写材に転写する画像形成装置において、前記帯電手段が電子写真感光体表面に接触配置された帯電部材であり、前記電子写真感光体の表面層が水酸基、或いは加水分解性基を有する有機ケイ素化合物と、下記一般式(1)で示される化合物とを反応させて得られるシロキサン系樹脂を含有する樹脂層であり、下記摩耗試験における前記電子写真感光体の1回転当たりの膜厚減耗量ΔHd(μm)が0≦ΔHd<1×10^(-5)であり、かつ現像手段に使用されるトナーの形状係数の変動係数が16%以下であり、個数粒度分布における個数変動係数が27%以下であることを特徴とする画像形成装置。
一般式(1)
B-(R_(1)-ZH)_(m) 式中、Bは電荷輸送性能を有する構造単位を含む1価又は多価の基を表し、R_(1)は単結合又は2価のアルキレン基を表し、Zは酸素原子、硫黄原子又はNHを表し、mは1?4の整数を表す。
・摩耗試験
常温常湿環境下(20℃、50%RH)駆動部に接続した電子写真感光体に硬度70±1°、反発弾性35±1%、厚さ2±0.1(mm)、自由長9±0.1mmのクリーニングブレードをカウンター方向に当接角10±0.5°、食い込み量1.5±0.2(mm)の条件で当接し、電子写真感光体を1回転0.1?10秒の回転で駆動部により回転させながら電子写真感光体上に0.15±0.05(mg/cm^(2))の付着量で現像されたカサ密度が0.41±0.1g/cm^(3)、且つ個数平均粒径10?40(nm)の粉体が外添剤としてトナーに対して1±0.1質量(%)で混合された体積平均粒径8.5±0.2μmのトナーをクリーニングする。上記条件にて該電子写真感光体が100,000回以上の回転を行った際の電子写真感光体の膜厚変動量を測定し、その値を電子写真感光体の回転数で除した値を1回転当たりの膜厚減耗量とする。」

2.刊行物に記載された発明
(刊行物1について)
原査定の拒絶理由及び当審からの平成20年7月3日付けの拒絶理由に引用された特開平10-254291号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。(下線は当審にて付与した。)

ア.「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、複写機、レーザービームプリンター及び普通紙FAX等の、電子写真応用分野に広く用いることができる画像形成方法に関する。
【0002】【従来の技術】電子写真プロセスを用いる画像形成方法において、帯電手段としては、従来、コロナ放電装置が一般的であった。しかしながら、最近においては、電源の低圧化が図れる、またオゾンの発生が極めて微量である等の長所も有していることから、導電部材を感光体に接触させる直接帯電装置が採用されつつある。」
イ.「【0010】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、上述したような直接帯電とクリーナーレスプロセスにおける感光体表面の汚染、及び、それにより生ずる画像のボケ、流れを防止し、常に安定して高画質が得られる画像形成方法を提供することを目的としている。
【0011】【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、回転する電子写真感光体に電圧を印加した帯電部材を接触させて電荷の直接注入によって該感光体を帯電する工程、かつ転写工程の後に該感光体上に残余するトナーを回収する工程を兼ねた現像工程を含む画像形成方法において、該感光体の表面層が樹脂を含有し、かつ該表面層の摩耗量が感光体10万回転当り0.1?1.0μmであることを特徴とする画像形成方法である。」
ウ.「【0015】そこで、本発明者が鋭意検討した結果、感光体表面の摩耗が感光体10万回転当り0.1?1.0μmに調整することで、高湿環境化でも画像のボケや流れを生じないことを見い出した。
【0016】感光体へ直接電荷注入を行う場合の直接帯電部材としては、高密度に植毛された導電性ブラシ、もしくは円筒状マグネットに磁気拘束された磁性粒子ブラシを用い、これを感光体に接触、回転させることで帯電を行う。」
エ.「【0023】以下、実施例により本発明を説明する。
(実施例1)
感光体作成例:負極性のOPC(有機感光体)を作成した。半導体レーザー光に感度を有するフタロシアニン顔料をブチラール樹脂(商品名BX-1、積水化学工業製)に分散した電荷発生層に、トリフェニルアミン系化合物をビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(商品名Z-200、三菱瓦斯化学製)に溶解した電荷輸送層を積層した。更に注入可能な表面層として、酸化スズとポリ四フッ化エチレンの粉体を重合性アクリルモノマーと溶剤に分散したものを電荷輸送層上に塗布し、光開始剤と共にUV硬化して膜形成した。潤滑剤であるポリ四フッ化エチレンは表面層全体の固形分重量比率で25%とした。
ブチラール樹脂(商品名BX-1、積水化学工業製)
画像形成装置としてレーザーを光源とするデジタル複写機(GP-55;キャノン(株)製)を用意し、帯電器部分及び高圧電源部を改造して電荷注入帯電が行えるようにした。また、クリーナー部を取り外し、その位置にブラシを固定、装着した。
【0024】ブラシの材質としては、一般的な繊維状のものであれば特に制限はなく、感光体に対する機械的な損傷を避けるように設定すればよい。ここでは、長さ5mmのカーボン分散ナイロンの繊維を芯金にロール状に植毛したものを用いた。感光体への侵入量は1mmとした。
【0025】更に現像部分は、非磁性トナーとフェライトキャリアによる二成分現像を行う構成に改造した。
【0026】なお、この装置のデジタル画素密度は400dpiである。
【0027】帯電部材作成例:ポリスチレン樹脂にマグネタイトを100部入れて混練、粉砕し、粒子径30μm、抵抗値1×106 Ωの磁性粒子を得た。これをマグネットローラ上に厚さ1mmでコートして磁気ブラシとした。
【0028】上記の帯電部材は、感光体との間に幅約2mmのニップを設けるように設置される。ブラシの周速は感光体表面の周速に対して2倍の早さで回転するようになっており、感光体との接触の均一性を確保するようにしている。
【0029】この磁気ブラシにDCバイアス-700Vを印加し、更にVpp600V,1000HzのACバイアスを重畳することにより感光体に電荷注入され、-680Vの表面電位を得る。
【0030】このような画像形成装置を用いて連続プリントによる耐久テストを行った。常温常湿環境で1万枚のコピーを繰り返した後、30℃/85%RH環境に放置してコピーサンプルをとった。いずれの時点のサンプルにおいても初期と同等の良好な画像が維持されていた。
【0031】また、この時の感光体表面の摩耗量は、感光体10万回転当り0.5μmであった。」

上記に記載された画像形成方法において、感光体を帯電する手段、現像手段等を備えた、画像形成装置を用いることは自明の事項である。

してみると、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。(以下、刊行物1発明という。)
「回転する電子写真感光体に電圧を印加した帯電部材を接触させて電荷の直接注入によって該感光体を帯電する手段、かつ転写工程の後に該感光体上に残余するトナーを回収する手段を兼ねた現像手段を含む画像形成装置において、該感光体の表面層が樹脂を含有し、かつ該表面層の摩耗量が感光体10万回転当り0.1?1.0μmである画像形成装置。」

(刊行物2について)
原査定の拒絶理由及び当審からの平成20年7月3日付けの拒絶理由に引用された特開平9-179331号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。(下線は当審にて付与した。)

オ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複写機、プリンタ等として用いられる画像形成装置に適用される静電荷潜像現像用トナー、現像剤及び画像形成方法に関するもである。
【0002】
【従来の技術】近年、電子写真現像方式は種々の分野で利用されている。例えば複写機のみならず、コンピューターの出力端末であるプリンタや、カラー複写機、カラープリンタ等の分野でも盛んに利用されるようになった。これら広い範囲での利用が進むにつれ、画像の品質に対する要求が高くなっている。この動向をうけて、トナー自体に対する要求としては、小粒径でありながら帯電性能の良いものが望まれるなど、種々の要求がなされている。」
カ.「【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明の目的は、小粒径化した場合でも弱帯電のトナー発生が少なく、かつ帯電過多となるトナーの発生が少なく、安定した帯電性能を有する静電荷潜像現像用トナーを提供することにある。
【0005】
更に本発明の目的は、長期に亘って使用してもカブリの発生のない、静電荷潜像現像用トナー及び現像剤を提供することにある。」
キ.「【0017】本発明のトナーは、形状係数が1.01?1.50の範囲であり、さらにその標準偏差が0.1以下であることを特徴とするものである。さらに、本発明のトナーは体積平均粒径が2?8μmのトナーであることが望ましく、さらにBET値比表面積が5?100m_(2)/gであることが望ましい。
【0018】本発明の形状係数は、下記算出式で求められるものである。
【0019】形状係数=(周囲長)/(円相当周長)=L/(2π√A/π)
ここにおいてLは周囲長、Aは粒子の投影面積を表す。
【0020】また、この形状係数はいわゆる画像解析装置を用いて求めることができる。具体的に使用される画像解析装置としては、SPICCA(日本アビオニクス社製)等を挙げることができる。この形状係数はトナー粒子50個の各々の形状係数を測定し、その算術平均を示すものである。標準偏差はこの50個のトナー粒子の形状係数のそれを示すものである。
【0021】また、形状係数は1.01?1.50、好ましくは1.05?1.30である。この形状係数がこの範囲よりも小さい場合には、形状が球状となり感光体に対する付着力が増加するため、クリーニング特性が低下する。一方、大きい場合には形状の不定形性が大きくなり、現像器などの撹拌によるストレスで変形を受けやすくなり、特に長期の使用に際しては現像性の変化を発生し、本発明の目的を達成する事が出来ない。
【0022】さらに、標準偏差は0.1以下、好ましくは0.08以下である。この標準偏差を越える場合には本発明の目的である弱帯電性トナーの抑制を防止することができない。この標準偏差の下限については、偏差のバラツキのため0を下限とするが、本発明においては現実的に0.0001である。」

(刊行物3について)
原査定の拒絶理由及び当審からの平成20年7月3日付けの拒絶理由に引用された特開平11-15204号公報(以下、「刊行物3」という。)には、以下の記載がある。(下線は当審にて付与した。)

ク.「【0095】本発明において、トナーの形状は、多数枚の画出しにおけるトナー担持体上のトナー融着や帯電部材表面の汚染を改善する観点から、球形に近い形状であることが好ましい。トナーの形状を示す形状係数SF-1及びSF-2は好ましくはSF-1の値が100<SF-1≦160であり、かつSF-2の値が100<SF-2≦140が良く、さらに好ましくはSF-1の値が100<SF-1≦140であり、かつSF-2の値が100<SF-2≦120であることが、現像性を維持しながら転写性を向上させるために好ましい。
【0096】本発明において、形状係数を示すSF-1及びSF-2は、例えば日立製作所製FE-SEM(S-800)を用い1000倍に拡大した2μm以上のトナー像を100個無作為にサンプリングし、その画像情報はインターフェースを介して、例えばニコレ社製画像解析装置(Luzex III)に導入し解析を行い下式より算出し得られた値を形状係数SF-1、SF-2と定義する。
【0097】
【外7】


(式中、MXLNGは粒子の絶対最大長、PERIは粒子の周囲長、AREAは粒子の投影面積を示す。)
【0098】形状係数SF-1はトナー粒子の丸さの度合いを示し、形状係数SF-2はトナー粒子の凹凸の度合いを示している。
【0099】トナーの形状係数SF-1が160を超えると、球形から離れて不定形に近づき、現像器内でトナーが破砕され易く、粒度分布が変動したり、帯電量分布がブロードになりやすく地カブリや反転カブリが生じやすい。トナーの形状係数SF-2が140を超えると、感光体から転写材への転写時におけるトナー像の転写効率の低下、及び文字やライン画像の転写中抜けを招き好ましくない。
【0100】更に高画質化のため微小な潜像ドットの忠実に現像するために、トナー粒子は、重量平均径が3μm?9μm、好ましくは4μm?8μmであり、個数分布における変動係数が35%以下、好ましくは25%以下であることが良い。重量平均径が3μm未満のトナー粒子においては、転写効率の低下から感光体や中間転写体上に転写残のトナー粒子が多く、さらに、カブリ、転写不良に基づく画像の不均一ムラの原因となりやすい。トナー粒子の重量平均径が9μmを超える場合には、感光体表面、中間転写材等の部材への融着が起きやすい。トナー粒子の個数分布における変動係数が35%を超えると更にその傾向が強まる。
【0101】トナー粒子の個数分布における変動係数Aは下記式から算出される。
【0102】変動係数=〔S/D_(1) 〕×100
〔式中、Sは、トナー粒子の個数分布における標準偏差値を示し、D_(1 )は、トナー粒子の個数平均粒径(μm)を示す。〕」

刊行物2及び3に記載された上記の事項をまとめると、以下の事項が開示されていると認められる。
「電子写真の高画質化を目的として、トナー粒子の形状(形状係数)と、個数分布(変動係数)が着目されている。
まず、トナー粒子の形状に関しては、形状係数の定義には複数あるものの、いずれのものにおいても、トナー粒子の丸さ(円又は球への近さ)の度合いを示すものであり、円(球)に近いほど、形状係数は1(又は100)に近くなるものである。形状係数が大きい場合には形状の不定形性が大きくなり、カブリや転写抜けが生じやすくなる。例えば、刊行物2に記載のものにおいては、形状係数は1.01?1.50、好ましくは1.05?1.30とし、標準偏差は0.1以下、好ましくは0.08以下としている。
トナー粒子の個数分布に関しては、刊行物3に記載のものにおいては、高画質化のため微小な潜像ドットの忠実に現像するため、トナー粒子の個数分布における変動係数は25%以下であることが好ましい。」

(刊行物4について)
当審からの平成20年7月3日付けの拒絶理由に引用された、特許第2575536号公報(平成9年1月29日発行)(以下、「刊行物4」という。)には、以下の記載がある。(下線は当審にて付与した。)

ケ.「〔産業上の利用分野〕
本発明は、一般に電子写真に関し、さらに詳細には、ハイブリッド化合物、薄膜、並びにこれらハイブリッド化合物および薄膜の調製および使用方法に関する。」(第1欄第7?10行)
コ.「〔課題を解決するための手段〕
本発明の上記および他の目的は無機ガラス質サブユニット、可撓性有機サブユニットおよび機能性感光性サブユニットとを加水分解および縮合により化学的に結合させてハイブリッド材料を調製することによって達成される。
本発明のハイブリッド材料は、3つの主要成分:(1)無機ガラス質ネットワークサブユニット;(2)可撓性有機サブユニット;および(3)機能性サブユニットを含む。無機ガラス質ネットワークサブユニットはアルコキシド、酸、ハライドおよびオキサレートのような加水分解および縮合を受け得る任意の多くの無機物質から得ることができる。可撓性有機サブユニットは、例えば、可撓性またはフィルム形成性のようなハイブリッド材料に組み入れることが望ましい機械的性質を有するポリマーであり得る。機能性サブユニットは、はく離特性、誘電特性、望ましい電子写真特性(電荷発生性および電荷輸送性)、電気特性、磁気特性および光学特性(以下、“光応答性”)のような種々の性質を有するように選択され得る。機能性サブユニットと可撓性有機サブユニットは、1つの実施態様においては単一のサブユニットとして組合せ得る。」(第14欄第31行?第15欄第2行)
サ.「本発明の1つの実施態様においては、縮合反応は2つの成分を用いて実施できる。さらに詳細には、所望の高分子特性と所望の機能特性の両方を有する物質を無機ガラス質ネットワークプレカーサーと反応させることができる。換言すれば、機能性サブユニットが所定の高分子特性を有し、無機ガラス質ネットワークプレカーサーと直接反応させ得る場合である。例としては、式:


(式中、Xはハロ、ヒドロキシ、アルコキシ等であり得、R′およびR″はアルキルまたはアリールであり得る)
を有するポリシリレンを無機ガラス質ネットワークプレカーサーと反応させ得る。好ましくは、Xはエトキシであり、R′はフェニルであり、R″はメチルである。ポリシリレンは電子写真像形成部材での正孔輸送性を与えるのに使用できる。ポリニルカルバゾールもまた所望の高分子および機能特性を与えるのに使用できる。第1の実施態様におけるように、誘導を行ってより反応性の物質を得ることができる。
所望の高分子および機能特性を有する他の化合物には、式:


の化合物があり、式中、
m=0、1であり、
Zは、次の群:






および-Ar-(X)_(n)-Arから選ばれ、
Arは、次の群:




から選ばれ、
Rは-CH_(3)、-C_(2)H_(5),-C_(3)H_(7)および-C_(4)H_(9)からなる群より選ばれ、Ar′は、次の群:




から選ばれ、
Xは、次の群:
-CH_(2)-,-C(CH_(3))_(2)-,-O-,-S-,




>N-Ar,および>N-R,
から選ばれ、
Sは0、1または2であり、そして、
Xは2?10個の炭素原子を含有するアルキレンおよびイソアルキレン基からなる群より選ばれたアルキレン基である。誘導もまたより反応性の物質を得るのに行うことができる。」(第20欄第7行?第21欄第46行)

そして、上記摘記事項ク.の「所望の高分子および機能特性を有する他の化合物」の式において、m=0、
Zは、


Arは、


Ar′は、


とすると、「所望の高分子および機能特性を有する他の化合物」は、
「ヒドロキシメチルトリフェニルアミン」となる。

してみると、刊行物4には以下の事項が記載されているといえる。
「ヒドロキシメチルトリフェニルアミンを含む、電荷輸送特性を有する化合物と、シロキサン系化合物とを反応させて、電子写真感光体の薄膜を形成すること。」

3.対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。
刊行物1発明に係る画像形成装置において、電子写真感光体や、帯電手段、現像手段、転写手段に加えて、露光手段を備えることは自明の事項であるから、刊行物1発明における「回転する電子写真感光体に電圧を印加した帯電部材を接触させて電荷の直接注入によって該感光体を帯電する手段、かつ転写工程の後に該感光体上に残余するトナーを回収する手段を兼ねた現像手段を含む画像形成装置」と、本願発明における「少なくとも電子写真感光体、帯電、露光、現像、転写及びクリーニングの各手段を有し、且つ該感光体上にトナー像を作製後、転写材に転写する画像形成装置」とは、「少なくとも電子写真感光体、帯電、露光、現像及び転写の各手段を有し、且つ該感光体上にトナー像を作製後、転写材に転写する画像形成装置」で一致する。
また、刊行物1発明における「該感光体の表面層が樹脂を含有し」との構成は、すなわち、「電子写真感光体の表面層が樹脂層」ということである。
そして、刊行物1発明における「該表面層の摩耗量が感光体10万回転当り0.1?1.0μmである」との構成は、本願発明における「電子写真感光体の1回転当たりの膜厚減耗量ΔHd(μm)が0≦ΔHd<1×10^(-5)」に相当する。
よって、両者は、
「少なくとも電子写真感光体、帯電、露光、現像及び転写の各手段を有し、且つ該感光体上にトナー像を作製後、転写材に転写する画像形成装置において、前記帯電手段が電子写真感光体表面に接触配置された帯電部材であり、前記電子写真感光体の表面層が樹脂層であり、前記電子写真感光体の1回転当たりの膜厚減耗量ΔHd(μm)が0≦ΔHd<1×10^(-5)である、画像形成装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]画像形成装置に関し、本願発明においては、「クリーニング手段」を有するのに対し、刊行物1発明においては、「クリーニング手段」を有しない点。

[相違点2]現像手段に使用されるトナーに関し、本願発明においては、「現像手段に使用されるトナーの形状係数の変動係数が16%以下であり、個数粒度分布における個数変動係数が27%以下である」が82以上であるのに対し、刊行物1発明においては、そのような特定がない点。

[相違点3]電子写真感光体の表面層に関し、本願発明においては、「水酸基、或いは加水分解性基を有する有機ケイ素化合物と、一般式(1)で示される化合物とを反応させて得られるシロキサン系樹脂を含有する樹脂層」であるのに対し、刊行物1発明においては、そのような特定がない点。

[相違点4]電子写真感光体の1回転当たりの膜厚減耗量に関し、本願発明においては、摩耗試験が定義されているが、刊行物1発明においては、摩耗試験の詳細な条件が明確でない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
まず、「クリーニング手段」の有無に関しては、画像形成装置においては、通常クリーニング手段を有するものであり、「クリーニング手段」を不要とした画像形成装置は後発の技術である。
したがって、「クリーニング手段」を不要とした画像形成装置において、表面層の摩耗量を一定程度とした「電子写真感光体」に関する技術を、「クリーニング手段」を有する通常の画像形成装置に適用することは、当業者が適宜為し得る設計上の微差に過ぎない。
(相違点2について)
次に、相違点2については、刊行物2,3に示されるように、電子写真の高画質化のために、現像手段に用いるトナー粒子の形状係数や個数分布が着目されており、特に、刊行物2には、本願発明における「形状係数」とは異なる定義に基づくものであるものの、「形状係数は1.01?1.50、好ましくは1.05?1.30」とし、「標準偏差は0.1以下、好ましくは0.08以下」とすることが記載されており、形状係数の変動係数を小さくすることが示唆されている。また、刊行物3には、「トナー粒子の個数分布における変動係数は25%以下」とする点が記載されている。
したがって、刊行物2及び3には、「トナー粒子の形状及び粒度分布を揃える」という技術的思想が開示されているといえる。
そして、トナー粒子の形状係数や個数分布の最適化を図ることは、当業者の通常の創作能力の発揮である。
よって、刊行物2,3に開示された「現像手段に用いるトナー粒子の形状及び粒度分布を揃える」という技術的思想に基づいて、画像形成装置に用いるトナー粒子の形状係数の変動係数や個数変動係数を適宜の数値範囲とすることに格別の技術的困難性は見出せない。
(相違点3について)
刊行物4に示されるように、電荷輸送特性を有する化合物と、シロキサン系化合物とを反応させて、電子写真感光体の樹脂層を形成することは、従来周知であり、本願発明の実施例で用いられている「ヒドロキシメチルトリフェニルアミン」を包含する化合物群も、電荷輸送特性を有する化合物としてよく知られているから、本願発明のように、「水酸基、或いは加水分解性基を有する有機ケイ素化合物と、一般式(1)で示される化合物とを反応させて得られるシロキサン系樹脂を含有する樹脂層」を採用することは、当業者が周知の事項に基づいて適宜為し得る設計的事項である。
(相違点4について)
摩耗試験に関して、刊行物1発明においては、上記摘記事項エ.のとおり、「連続プリントによる耐久テスト」は、「常温常湿環境で1万枚のコピー」であるから、本願発明の「常温常湿環境下(20℃、50%RH)」と格別異ならない。
また、本願発明において規定された摩耗試験は、例えば、クリーニングブレードに関して、「硬度70±1°、反発弾性35±1%、厚さ2±0.1(mm)、自由長9±0.1mm」と、数値限定に幅を持たせており、特に外添剤は「個数平均粒径10?40(nm)の粉体が外添剤として」と、材質は何ら限定されていないことからも、試験結果が変動することは明らかである。
してみると、摩耗試験自体が変動幅を有するものであるから、本願発明で用いられる画像形成装置と、刊行物1発明で用いられる画像形成装置とで、試験結果が大きく変わり、「電子写真感光体の1回転当たりの膜厚減耗量ΔHd(μm)が0≦ΔHd<1×10^(-5)」という数値範囲が変わってくることも想定できない。
したがって、摩耗試験に係る相違点4については、設計上の微差であって、実質的な相違点ではない。
(本願発明が奏する効果)
そして、請求人が主張する「『細線再現性』、『感光体の偏摩耗量』、『画像ボケ』、『画像欠陥』、『画像濃度』及び『カブリ』の全てを同時に改善する」という効果も、電子写真の高画質化のために、「特定の形状係数の変動係数や個数変動係数を有するトナー粒子」と「特定の摩耗量に調整した感光体」とを採用したことによるものであるから、上記相違点1?4によって本願発明が奏する効果も、当業者が予測し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、相違点1?4に係る構成の変更は、当業者が刊行物1乃至4に記載された発明に基づいて適宜為し得たことである。

5.請求人の主張
請求人は、平成20年9月1日付け意見書において、
「刊行物1は、「直接帯電とクリーナーレスプロセスにおける感光体表面の汚染、及び、それにより生ずる画像のボケ、流れを防止し、常に安定して高画質が得られる画像形成方法の提供」を目的とし、請求項に記載の構成により、これを達成する発明を開示するものであります。・・(中略)・・刊行物1の発明はその課題からもクリーナープロセスが無いことは明らかである上、段落番号(0023)に記載があるように、わざわざクリーニング部を取り外した評価機で評価しております。つまり、本願発明の評価では、刊行物1は本願発明の範囲に入らないことは明らかであり、従って、本願発明をなんら記載するものではありません。」、及び、
「しかしながら、ここに挙げられた刊行物1?4は、共通する技術分野の技術文献として集められたものと思量されますが、これらの挙げられた刊行物には、上記の様に、それぞれは本願発明を想起できる開示も示唆もなく、また、なんら相互にお互いを直接的に結びつける記載もありません。・・(中略)・・つまり、上記「判断」にて示された「電子写真の高画質化のために、・・・とを採用したことによるものである」との理由で、刊行物1?4を選び出されたとすれば、同じ理由でこれら以外の膨大な量の技術文献も選択されなければならないものと思量されます。すなわち、膨大な量の技術群の中から、これら刊行物のみを見い出すことは、当業者であっても極めて困難であると思量されます。」と、
刊行物1は本願発明の範囲に入らない旨(以下、「主張1」という。)、刊行物1?4を選択することは困難である旨(以下、「主張2」という。)、主張している。
(主張1に関して)
まず、「刊行物1は本願発明の範囲に入らない」との主張について検討する。
刊行物1発明と、本願発明とは、「クリーニング手段」の有無の差異はあっても、摩耗量が極めて少ない感光体を採用している点で一致する。
そして、刊行物1発明における「該表面層の摩耗量が感光体10万回転当り0.1?1.0μmである」は、「電子写真感光体の1回転当たりの膜厚減耗量ΔHd(μm)が1×10^(-6)≦ΔHd≦1×10^(-5)」に相当し、刊行物1発明においては、「クリーナーレス」であっても、「クリーナー部」を取り外した位置に、「ブラシ」を固定、装着しており(段落【0023】)、このような「ブラシ」の接触によっても当然ある程度の摩耗は生じていると考えられる。
してみると、例えば、刊行物1発明の下限値の摩耗量(ΔHd(μm)が1×10^(-6))であれば、クリーニング手段(「クリーナー部」を取り外さなかった場合)による摩耗があっても、この上限値(ΔHd(μm)が1×10^(-5))を満たしている蓋然性が高い。
また、本願発明においては、摩耗量の下限値が0であり、摩耗がないものも含まれるのであるから、感光体において摩耗がないという願望を単に構成要件としたに過ぎない。
そして、摩耗によって感光体のクリーニングがなされているといえるから、摩耗量が0で、クリーニングが不可能な感光体も含まれることとなり、不合理である。
さらに、本願発明において、規定された「摩耗試験」は、「感光体に硬度70±1°、反発弾性35±1%、厚さ2±0.1(mm)、自由長9±0.1mmのクリーニングブレードをカウンター方向に当接角10±0.5°、食い込み量1.5±0.2(mm)の条件で当接し」と、「70±1°、反発弾性35±1%、厚さ2±0.1(mm)、自由長9±0.1mmのクリーニングブレード」を前提としているが、本願発明の「画像形成装置」は、「少なくとも電子写真感光体、帯電、露光、現像、転写及びクリーニングの各手段を有し」と、単に「クリーニング手段」とあるのみであるから、「摩耗試験」の内容と、本願発明の特定事項とが対応していない。
したがって、「クリーニング手段」に関して、刊行物1発明と本願発明との差異は、格別のものではないから、「刊行物1は本願発明の範囲に入らない」との主張は採用できない。
(主張2に関して)
「膨大な量の技術群の中から、これら刊行物のみを見い出すことが困難」と主張するが、技術文献が膨大な量であったとしても、公知技術の中から最適な技術や手段を選択することは、当業者の通常の創作能力の発揮であって、この点に進歩性はないとされている。
請求人は、同意見書において、「すなわち、端的に申し上げれば、本願発明は、上記のとおり「クリーニング手段」を有する画像形成装置において(上記1〕の構成)、帯電部材が接触配置され(上記2〕の構成)、特定の膜厚減耗量特性を有し(上記3〕の構成)、且つ特定のトナーを用いる(上記4〕の構成)場合に、本願発明の効果を、特異的に奏するものであると言うことができます。」とも主張しているが、画像形成装置において、摩耗量が極めて少ない、公知の感光体(刊行物1)と、トナー粒子の形状及び粒度分布を揃えた、公知のトナー(刊行物2又は3)とを組み合わせることは、当業者の通常の創作能力の発揮であり、当業者が容易に為し得たことである。
そして、刊行物4に記載の「ヒドロキシメチルトリフェニルアミンを含む、電荷輸送特性を有する化合物と、シロキサン系化合物とを反応させて、電子写真感光体の薄膜を形成する」点を加えることについては、本願明細書記載の実施例4(表4参照、平成20年9月1日付け手続補正書により「参考例」に補正)は、一般式(1)で示される化合物を含んでいないが、一般式(1)で示される化合物を含む、他の実施例(実施例1?3,5?10)と評価が異ならないことから明らかなとおり、一般式(1)で示される化合物を含むことによって格別な効果を奏するものではないから、一般式(1)で示される化合物、すなわち、ヒドロキシメチルトリフェニルアミンを含む点は、単なる公知技術の寄せ集めに過ぎない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は刊行物1乃至4に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-24 
結審通知日 2008-09-30 
審決日 2008-10-14 
出願番号 特願2000-49379(P2000-49379)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 紀史  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 伏見 隆夫
木村 史郎
発明の名称 画像形成装置、及び画像形成方法  

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