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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1189319
審判番号 不服2006-13815  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-29 
確定日 2008-12-18 
事件の表示 平成 9年特許願第283071号「光ディスク装置の検査方法および光ディスク装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 4月23日出願公開、特開平11-110922〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成9年9月30日の出願であって、平成18年3月7日付けの拒絶理由の通知に応答して同年5月8日付けで手続補正がなされたが、同年5月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年6月29日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明について

本願の請求項1乃至16に係る発明は平成18年5月8日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1乃至16に記載されたとおりのものと認められるところ、そのうち請求項8に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「光ディスクを回転させる回転駆動機構と、
前記光ディスクからデータを読み出すための光ピックアップと、
前記光ピックアップにより前記光ディスクから読み出した信号を処理する信号処理手段と、
少なくとも前記回転駆動機構、前記光ピックアップおよび前記信号処理手段の駆動を制御する制御手段と、
C1エラーを検出する検出手段と、
基準光ディスクを装着した際に、所定の時間間隔における当該基準光ディスクからのC1エラーの数を計数する計数手段と、を有する光ディスクを再生または記録・再生する光ディスク装置であって、
前記計数手段は、前記光ディスク装置の製造工程あるいは検査工程でC1エラー計数モードが設定された際に作動可能な状態となり、該計数手段は、前記検出手段からの同期信号が検出されたか否かを判断し、前記同期信号が検出されたと判断した場合にC1エラーの計数を開始することを特徴とする前記光ディスク装置。」

3.刊行物

本願の出願前に頒布された刊行物であって原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-6426号公報(以下「刊行物」という。)には、光ディスク装置及びその診断方法並びに診断用光ディスク媒体に関して、図面とともに次の事項が記載されている。(なお下線は当審で付与した。)

(あ)「【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は可換媒体に対する情報の記録及び再生、又は情報の再生を行う情報記録再生装置または情報再生装置に関し、特に光ディスク装置の診断に適用して有効な技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、光ディスク装置の診断は、光ディスク装置に媒体を装填しておき、ホストコンピュータ等の上位装置から診断コマンドを発行して、該診断コマンドに応答する診断結果を受け取る方法により行われる。或いは、先と同様に上位装置を用いて、該上位装置から通常の記録コマンドを発行したのちに、再生コマンドにより記録結果を読み取って、記録系/再生系の診断を行っている。
【0003】診断コマンドについては、例えばSCSI(Small Computer System Interface) では、診断させる内容およびパラメータを付けて、“SEND DIAGNOSTIC ”コマンドを上位SCSIホストから発行する。光ディスク装置はこのコマンドを契機にしてコマンドにより指定された診断パラメータに従って、内部の診断を実施する。
【0004】診断結果に関しては、例えば上位SCSIホストから“RECEIVE DIAGNOSTIC RESULTS”コマンドを発行し、先の診断結果を上位装置に転送し、その診断結果情報を得ていた。
【0005】なお、診断コマンドについては「SCSI WORKING DRAFT X3T9.2 375R Revision10k 」及びHP社刊行「Technical Guide Optical Drives and Libraries」に詳細な記載がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前述の通り、従来の光ディスク装置の診断では、必ず診断を実施させる上位装置を用い、この上位装置からの診断コマンド、或いは通常の記録/再生コマンドを発行することによってのみ光ディスク装置の品質を確認することができた。このため診断を実施するときには必ずホストコンピュータ等の上位装置やオペレータの介入が必要であった。
【0007】また、ユーザがメーカと同じような品質の確認のための診断を実施するには、メーカと同じ診断環境が必要で、品質の基準となる記録媒体も必要となるため、実際には不可能であった。
【0008】本発明の目的は、ホストコンピュータ等の上位装置の制御下にない状態でも診断を実施することができる光ディスク装置とその診断方法及びその診断に用いる診断用光ディスク媒体を提供することにある。」

(い)「【0029】
【実施例】以下に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0030】図1は本発明の一実施例である診断用光ディスク媒体の一例を示す概念図であり、図2、図3は本実施例の診断用光ディスク媒体に格納されている各種制御情報の一例を示す説明図、図4は診断用光ディスク媒体の診断情報を読み取り、診断を実行する本実施例の光ディスク装置の一例を示す概念図である。
【0031】まず、図4を参照して本実施例の光ディスク装置の構成について説明する。
【0032】本実施例の光ディスク装置は、記録膜2を有する診断用光ディスク媒体1と、この診断用光ディスク媒体1を回転駆動するスピンドルモータ3と、診断用光ディスク媒体1に情報の書き込み及び再生を行う光ヘッド4と、目的位置に光ヘッド4を位置付けるボイスコイルモータ5と、主制御回路6をはじめとする各種制御系から構成される。各種制御系とは、主制御系のもとに機能する位置付け制御系と、情報記録系と、情報再生系と、反射光量検出系とを備えて構成される。
【0033】光ヘッド4に対する位置付け制御系は、光ヘッド4を目的位置に位置付けるボイスコイルモータ5と、主制御回路6からの移動量情報31から該ボイスコイルモータ5に対して移動電流32により位置制御を行う位置付け制御回路18から構成される。
【0034】情報記録系は、記録データ33をクロック回路19により発生させたクロック42と同期化し、例えば、2-7変調符号等のラン長制限符号列の記録コードデータ34に変換する記録制御回路17と、該記録コードデータ34を記録パルス35として半導体レーザ26に伝送するレーザドライバ回路16から構成される。
【0035】情報再生系は、光ヘッド4内の光検出器24により検出された再生出力36を直流アンプ14で増幅して再生コード37を得て、この再生コードをクロック42と同期化し、記録時のコード化と逆の動作をする復調回路から構成される再生制御回路15からなる。再生制御回路15からは、アドレス情報41及び再生データ38を主制御回路に伝送する。」

(う)「【0060】装填された光ディスク媒体が診断用媒体と判別されると、診断処理情報のメモリへの読み込みが実施される(ステップ604)。診断処理情報とは診断する処理の内容、診断する領域、データ記録パラメータ、診断回数等である。
【0061】続いて、診断処理情報に基づいて診断が実行される(ステップ605)。本実施例では消去処理、記録処理、再生処理の全てを0?FFFFブロックまで実施する。記録処理時の記録データパターンは“(AA55Hex)”の繰り返しパターンである。光ディスク装置は、この診断処理実行中は、外部に診断中を知らしめる目的で表示部8を点滅させておく。処理の指定回数が複数回の場合にはこの処理を指定回数繰り返す(ステップ606)。本実施例の場合は指定回数が1回なので上記処理は1度のみ実行する。
【0062】・・・(省略)・・・
【0063】診断処理が終了すると診断結果情報を診断用光ディスク媒体1自身の特定ブロックに記録する(ステップ607)。本実施例での診断結果情報は診断用光ディスク媒体1に記録される。図7は記録された診断結果情報の一例を示す概念図であり、1つの診断ごとに104バイトの情報を記録している例である。ここでは製品名と製造コードと製造レビジョンをASCIIコードで記録し、その後に消去処理したブロック数、記録処理したブロック数、再生処理したブロック数と各々の処理における内部リカバリ発生回数を記録する。
【0064】本実施例では製品名と製造コードと製造レビジョンを記録しているため、製造工程における多数の光ディスク装置の品質検査を連続して行う場合等に、後に診断結果情報を参照したとき不良の光ディスク装置を特定することが容易にでき、作業性を向上させることができる利点も有する。
【0065】・・・(省略)・・・
【0066】なお、診断結果は診断用光ディスク媒体1ではなく、診断情報格納メモリ13を別に設けて、これに記憶させても構わない。
【0067】その後、表示部8の点滅を消灯させ、診断用光ディスク媒体1を排出する(ステップ608)。この診断用光ディスク媒体1を診断無効モードとした再生可能な光ディスク装置に再度装填し、前出の診断結果を記録したブロックからデータを読み出すことで、診断した光ディスク装置の品質を調査することが可能となる。
【0068】また、光ディスク装置の主制御回路6内部に品質のしきい値をあらかじめ持っていて、診断処理のリカバリ率(リカバリ処理したブロック数/処理したブロック数)と比較し(ステップ609)、そのしきい値を越える場合は外部へ知らしめる手段として、表示部8を点灯させる(ステップ611)。通常光ディスク装置は媒体排出状態では表示部8は消灯しているので(ステップ610)、このLED等の点灯によって、光ヘッド4等の清掃を警告することが可能となる。」

(え)「【0075】なお、図11に示すように光ディスク装置に診断有効モードと診断無効モードの二つのモードを設けて、常時は診断有効モードとしておき(ステップ640)、診断無効モードとしておくと診断処理を行わないようにすることもできる。この診断無効モードは、診断用媒体フラグの書換え時に使用することもできる。診断無効モードへの切替方法は、ハード的にたとえばディップスイッチを用いて切り替えることができる。また、ソフト的な切替、たとえばメモリスイッチの切替、又は電源投入時に特定のボタンを同時に押す等の特殊な操作を行うことによる切替等によりモードを切り替えることもできる。」

(お)「【0076】前述の通り、本実施例の光ディスク装置では、本実施例の診断用光ディスク媒体を用いて、本実施例の診断方法を採用することにより、診断が自動的に開始され、ホストコンピュータ等の上位装置の介入を必要としない診断を実現することができた。
【0077】また、診断情報は診断用光ディスク媒体にあらかじめ記録されているので、診断の都度指定する必要が無く、ユーザにおける使用が便利になるばかりでなく、光ディスク装置の製造段階における品質検査等の工程等において製造ライン中の多数の光ディスク装置の各々に単に診断用光ディスク媒体を装填するだけで自動的に診断を行うことができ、作業性を向上させることができた。
【0078】・・・(省略)・・・
【0079】なお、上記実施例では光ディスク装置では、記録機能と再生機能の両方を備えている例を示したが、再生機能のみを備えた装置であっても構わない。この場合、診断情報には、あらかじめ規格化された読み出しレベルが決められた範囲を逸脱した場合に、装置の異常と判断させることができる。また、この場合、診断結果を診断用光ディスク媒体に記録することができないため、診断用光ディスク媒体の排出の有無、LEDの点灯、警告音の発生等により異常を知らせる必要がある。」

(か)上記(え)に記載された、図11に示される実施例においては、「光ディスク装置を診断(有効)モードにする」(ステップ640)の後に「診断実行」(ステップ605)乃至「診断結果情報を記録する」(ステップ607)の一連の動作が行われるのであるから、上記診断が、診断有効モードにされた際に作動可能な状態となることは明らかである。

上記各摘示事項及び図面を総合勘案すると、刊行物には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「光ディスク媒体を回転駆動するスピンドルモータと、
光ディスク媒体に情報の書き込み及び再生を行う光ヘッドと、
光ヘッドにより検出された再生出力から再生データ等を生成する情報再生系とを有し、
装填された光ディスク媒体が診断用媒体と判別されると、消去処理、記録処理、再生処理の全てを0?FFFFブロックまで診断が実行され、
診断結果情報として、消去処理したブロック数、記録処理したブロック数、再生処理したブロック数と各々の処理における内部リカバリ発生回数を記録する、
光ディスクに対する情報の記録及び再生、又は情報の再生を行う光ディスク装置であって、
上記診断は、
製造工程における検査を行う場合を含み、
診断有効モードにされた際に作動可能な状態となる、
光ディスク装置。」(以下「刊行物発明」という。)

4.対比・判断

本願発明と刊行物発明とを対比する。
(i)刊行物発明における「光ディスク媒体を回転駆動するスピンドルモータ」は、本願発明における「光ディスクを回転させる回転駆動機構」に相当する。
(ii)刊行物発明における「光ディスク媒体に情報の書き込み及び再生を行う光ヘッド」は、「光ディスク媒体に情報の」「再生を行う」のであるから、本願発明における「光ディスクからデータを読み出すための光ピックアップ」に相当する。
(iii)刊行物発明における「光ヘッドにより検出された再生出力から再生データ等を生成する情報再生系」は、前記再生データ等の生成は信号の処理に他ならないから、本願発明における「光ピックアップにより前記光ディスクから読み出した信号を処理する信号処理手段」に相当する。
(iv)刊行物発明は、上記「スピンドルモータ」「光ヘッド」及び「情報再生系」を制御する手段を有することは明らかであるから、本願発明における「少なくとも前記回転駆動機構、前記光ピックアップおよび前記信号処理手段の駆動を制御する制御手段」に相当する手段を実質的に有する。
(v)刊行物発明において、内部リカバリが発生するということは、内部においてリカバリを要する事象、すなわち何かしらのエラーが発生したことに他ならず、内部リカバリはエラー発生の指標の一種と言える。
そして刊行物発明は、「診断結果情報として」「各々の処理における内部リカバリ発生回数を記録する」のであるから、診断に際し内部リカバリを検出する手段を実質的に有するものである。
本願発明における「C1エラー」がエラー発生の指標の一種であることは明らかであるから、刊行物発明は、「[エラー発生の指標]を検出する検出手段」を有する点において本願発明と共通する。
(vi)刊行物発明における「診断用媒体」は、診断のための基準となる光ディスク媒体であると言えるから、本願発明における「基準光ディスク」に相当し、刊行物発明における「装填された光ディスク媒体が診断用媒体と判別されると、」は、本願発明における「基準光ディスクを装着した際に、」に相当する。
そして刊行物発明は、「診断結果情報として」「各々の処理における内部リカバリ発生回数を記録する」のであるから、診断に際し内部リカバリの発生回数を計数する手段を実質的に有するものであって、「当該基準光ディスクからの[エラー発生の指標]の数を計数する計数手段」を有する点において本願発明と共通する。
(vii)刊行物発明における「光ディスクに対する情報の記録及び再生、又は情報の再生を行う光ディスク装置」は、本願発明における「光ディスクを再生または記録・再生する光ディスク装置」に相当する。
(viii)刊行物発明は、「製造工程における検査を行う場合」に診断するのであるから、上述した内部リカバリの発生回数を計数する手段は少なくとも上記場合に作動するものである。
そして刊行物発明は、診断が「診断有効モードにされた際に作動可能な状態となる」のであるから、診断のうち特に内部リカバリの発生回数の計数に着目すれば、内部リカバリの発生回数を計数する計数手段は内部リカバリの発生回数を計数するモードにされた際に作動可能な状態となるものである。
よって刊行物発明は、「前記計数手段は、前記光ディスク装置の製造工程あるいは検査工程で[エラー発生の指標]計数モードが設定された際に作動可能な状態となり、」の点において本願発明と共通する。

そうすると、刊行物発明と本願発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「光ディスクを回転させる回転駆動機構と、
前記光ディスクからデータを読み出すための光ピックアップと、
前記光ピックアップにより前記光ディスクから読み出した信号を処理する信号処理手段と、
少なくとも前記回転駆動機構、前記光ピックアップおよび前記信号処理手段の駆動を制御する制御手段と、
[エラー発生の指標]を検出する検出手段と、
基準光ディスクを装着した際に、当該基準光ディスクからの[エラー発生の指標]の数を計数する計数手段と、を有する光ディスクを再生または記録・再生する光ディスク装置であって、
前記計数手段は、前記光ディスク装置の製造工程あるいは検査工程で[エラー発生の指標]計数モードが設定された際に作動可能な状態となる前記光ディスク装置。」である点。

そして、次の点で相違する。
<相違点1>
本願発明では、エラー発生の指標が「C1エラー」であるのに対し、刊行物発明ではそのように特定していない点。
<相違点2>
本願発明では、上記計数を「所定の時間間隔における」ものとするのに対し、刊行物発明ではそのように特定していない点。
<相違点3>
本願発明では、「該計数手段は、前記検出手段からの同期信号が検出されたか否かを判断し、前記同期信号が検出されたと判断した場合に」「計数を開始する」のに対し、刊行物発明ではそのように特定していない点。

上記各相違点について検討する。
相違点1について、
光ディスクを含むデジタル情報記録媒体一般の再生または記録・再生技術において、C1エラーの発生回数を計数する技術は、エラー発生の評価に係る技術として周知(必要ならば、特開平6-349224号公報(原査定の拒絶の理由に引用。【0025】他。)、特開平9-82025号公報(【0014】他)、等参照。)であって、診断用媒体に消去処理、記録処理、再生処理を実施して光ディスク装置の診断を行う刊行物発明において、診断に係るエラー発生の指標としてC1エラーを検出し、計数すること、すなわち、「C1エラーを検出」、「C1エラーの数を計数」、「C1エラー計数モード」及び「C1エラーの計数」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

相違点2について、
本願発明における「所定の時間間隔における当該基準光ディスクからのC1エラーの数を計数する」に関しては、本願の実施例をみても75サブコードフレームという所定領域当たりのC1エラーの数を計数することが示されている(【0170】【0173】等)にすぎず、また、所定の時間間隔におけるエラーの数はエラーレートに比例するのは自明であって、所定の時間間隔におけるエラー数をカウントするものも周知(必要ならば、実願昭62-49326号(実開昭63-157839号)のマイクロフィルム(4頁2乃至7行等)、実願昭63-118175号(実開平2-38839号)のマイクロフィルム(5頁8行等)等を参照。)であるから、0?FFFFブロックという所定領域の診断の際にエラー発生の指標として内部リカバリを計数する刊行物発明において、「所定の時間間隔における」計数を行うことは、当業者が容易に想到し得るものである。

相違点3について、
情報記録媒体の再生または記録・再生技術一般において、各情報を同期信号と共に予め記録しておく又は記録することで、同期信号を検出して情報の取得、エラーの検出、及びエラー訂正等の作業を可能とすることは周知な技術であって、当該周知技術において同期信号を検出してから各種作業を開始することは当然である。刊行物発明においても、「0?FFFFブロック」という所定領域を診断するにあたり上記周知技術を採用すること、すなわち「該計数手段は、」「同期信号が検出されたか否かを判断し、前記同期信号が検出されたと判断した場合に[エラー発生の指標]の計数を開始する」とすることは当業者が適宜なし得ることである。
そして、本願発明における「前記検出手段からの同期信号」との構成は、「前記検出手段」すなわち「C1エラーを検出する検出手段」が「同期信号」の検出手段を兼ねることを示唆するが、当該構成に対応する本願の実施例をみても、「C1ERROR信号」及び「SUBCODE-SYNC信号」が「CDサーボコントローラ21」という単一のブロックで表示される回路要素から出力されることが示されるにすぎない。刊行物発明において同期信号を検出することは上述したように適宜なし得ることであり、その場合同期信号を検出する手段を有するのは当然であって、エラー発生の指標を検出する手段と同期信号を検出する手段とをあわせた回路要素を「エラー発生の指標を検出する検出手段」と呼称すること、つまり上記同期信号をエラー発生の指標を検出する検出手段からのものとすることは、当業者が適宜なし得ることである。
したがって、刊行物発明において「該計数手段は、前記検出手段からの同期信号が検出されたか否かを判断し、前記同期信号が検出されたと判断した場合に」「計数を開始する」とすることは、当業者が適宜なし得ることである。

上記各相違点の判断を総合的に勘案しても、本願発明の奏する効果は刊行物に記載された発明及び周知の事項から当業者が十分予測可能なものであって格別なものとは言えない。
したがって本願発明は、刊行物に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび

以上のとおり、本願の請求項8に係る発明は、刊行物に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-20 
結審通知日 2008-10-21 
審決日 2008-11-05 
出願番号 特願平9-283071
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金子 秀彦小林 大介  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 吉川 康男
小松 正
発明の名称 光ディスク装置の検査方法および光ディスク装置  
代理人 朝比 一夫  

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