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審決分類 審判 全部無効 1項2号公然実施  B01D
管理番号 1189372
審判番号 無効2006-80237  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-11-17 
確定日 2008-11-26 
事件の表示 上記当事者間の特許第3657466号発明「フィルタモジュール」の特許無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 特許第3657466号の請求項1ないし3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は,被請求人の負担とする。 
理由 I 手続の経緯

本件特許第3657466号は,平成11年 7月14日に出願され,平成17年 3月18日に特許権の設定登録がされ,その後,平成18年11月17日に請求人有限会社三洋商会より本件特許の特許無効の審判の請求と証人尋問並びに当事者尋問の申し出がなされ,平成19年 2月19日に被請求人より答弁書が提出され,平成19年 7月 5日に請求人と被請求人の双方より口頭審理陳述要領書が提出され,平成19年 7月 5日,6日に口頭審理と証人尋問並びに当事者尋問による証拠調べがなされ,平成19年 9月 3日に被請求人より上申書が提出され,平成20年 6月 3日付け(発送日:同月 6日)で被請求人に対して無効理由通知書が通知され,これに対して,被請求人からは,当審無効理由通知書が指定する期間内に何らの応答もされなかったものである。

II 本件特許発明

本件特許明細書の請求項1ないし3に係る発明(以下,「本件特許発明1ないし3」という。)は,特許明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定され,次のとおり分説することができる。(以下,その記号に従って「構成要件A1」などという。)

【請求項1】
A1 圧延油が流れる円筒状の筒体の周壁に多数の貫通孔を形成し,前記円筒状の筒体の外周に複数個の円環状のグラスウールのブロックを装着すると共に,前記筒体の両端部に設けた一対の圧縮プレートの間で前記グラスウールのブロックを前記筒体の軸方向に圧縮した状態で前記筒体に固定して,前記グラスウールのブロックの外周面で濾過された圧延油が前記貫通孔を通過して前記筒体内に流れ込むようにしたフィルタモジュールであって,
B1 前記グラスウールを構成する繊維の平均径を5μm以上12μm以下,
C1 前記グラスウールの嵩密度を250kg/m^(3)以上420kg/m^(3)以下に設定すると共に,
D1 下記の(10)式で定義されるグラスウールの捕捉孔の仮想孔径φを15μm?30μmに設定したことを特徴とする
φ^(2)=D^(2)・(2500-M)/M …(10)
M:不織布の嵩密度(kg/m^(3))
D:繊維の平均径(μm)
E1 フィルタモジュール。
【請求項2】
請求項1において,
B2 前記繊維の平均径が6μm以上12μm以下で,
C2 かつ,前記嵩密度が300kg/m^(3)以上420kg/m^(3)以下で,
D2 前記仮想孔径φが16μm以上27μm以下である
フィルタモジュール。
【請求項3】
A’1 圧延油が流れる円筒状の筒体の周壁に多数の貫通孔を形成し,前記円筒状の筒体の外周に複数個の円環状のグラスウールのブロックを装着すると共に,前記筒体の両端部に設けた一対の圧縮プレートの間で前記グラスウールのブロックを前記筒体の軸方向に圧縮した状態で前記筒体に固定して,前記グラスウールのブロックの外周面で濾過された圧延油が前記貫通孔を通過して前記筒体内に流れ込むようにしたフィルタモジュールの設計方法であって,
B1 前記グラスウールを構成する繊維の平均径を5μm以上12μm以下,
C1 前記グラスウールの嵩密度を250kg/m^(3)以上420kg/m^(3)以下に設定すると共に,
D1 下記の(10)式で定義されるグラスウールの捕捉孔の仮想孔径φを15μm?30μmに設定したことを特徴とする
φ^(2) =D^(2) ・(2500-M)/M …(10)
M:不織布の嵩密度(kg/m^(3))
D:繊維の平均径(μm)
E’1 フィルタモジュールの設計方法。

III 当事者の主張

1 請求人の主張の概要

請求人は,「特許第3657466号の特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め,その理由として審判請求書において次の4つの理由を挙げ,およそ次のように主張している。

理由1
本件特許発明1ないし3は,甲第1?20号証及び証人1?4の証言並びに請求人本人の陳述によれば,出願前に公然実施された発明であるから,特許法第29条第1項第2号の規定に該当し特許を受けることができないものであり,本件特許発明1ないし3に係る特許は,同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

理由2
本件特許発明1ないし3は,甲第10,15,18?22号証及び証人1?4の証言並びに請求人本人の陳述により出願前に周知・慣用若しくは少なくとも公知・公用の発明に基づいて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許発明1ないし3に係る特許は,同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。

理由3
本件特許発明2ないし3は,いずれも出願当初の明細書又は図面に記載されていない新規事項を含み,それらは平成16年12月27日付けの手続補正により加入されたものであり,特許法第17条の2第3項の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許発明2ないし3に係る特許は,同法第123条第1項第1号の規定により無効とされるべきものである。

理由4
本件特許発明1ないし3は,いずれも発明特定事項である「繊維の平均径」の記載が不明瞭であるから,特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものであり,また,「繊維の平均径」についての測定方法及び平均方法が特定されていないから,特許法第36条第4項の規定により特許を受けることができないものであり,また,本件特許発明2の特定事項のうち「繊維の平均径,嵩密度及び仮想孔径を特定の数値範囲としたフィルターモジュール」及び本件特許発明3の「フィルターモジュールの設計方法」は,発明の詳細な説明に記載されていないから,特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができないものであり,本件特許発明1ないし3に係る特許は,同法第123条第1項第4号の規定により無効とされるべきものである。

2 被請求人の主張の概要

被請求人は,「本件審判の請求はなりたたない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め,その理由として答弁書において次の4つの理由を挙げ,およそ次のように主張している。

理由1
本件特許発明1ないし3は,出願前に公然実施された発明ではないから,特許法第29条第1項第2号の規定に該当し特許を受けることができないものではなく,本件特許発明1ないし3に係る特許は,同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものではない。

理由2
本件特許発明1ないし3は,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものではないから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではなく,本件特許発明1ないし3に係る特許は,同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものではない。

理由3
本件特許発明2ないし3は,いずれも出願当初の明細書又は図面に記載されていない新規事項を含むものではなく,平成16年12月27日付けの手続補正は出願当初の明細書又は図面に記載されていた事項の範囲から自明な事項の範囲のものであり,特許法第17条の2第3項の規定により特許を受けることができないものではなく,本件特許発明2ないし3に係る特許は,同法第123条第1項第1号の規定により無効とされるべきものではない。

理由4
本件特許発明1ないし3は,いずれも発明特定事項である「繊維の平均径」の記載が当業者に明瞭なものであるから,特許法第36条第6項第第2号の規定により特許を受けることができないものではなく,また,「繊維の平均径」についての測定方法及び平均方法は当業者が容易に理解可能であるから,特許法第36条第4項の規定により特許を受けることができないものではなく,また,本件特許発明2の特定事項のうち「繊維の平均径,嵩密度及び仮想孔径を特定の数値範囲としたフィルターモジュール」及び本件特許発明3の「フィルターモジュールの設計方法」は,発明の詳細な説明に記載されているといえるから,特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができないものではなく,本件特許発明1ないし3に係る特許は,同法第123条第1項第4号の規定により無効とされるべきものではない。

IV 証拠方法

1 請求人の証拠方法

(1)甲第1号証 株式会社岡尾商会が平成11年3月15日付けで作成した有限会社三洋商会への注文書
(2)甲第2号証 有限会社三洋商会が平成11年3月12日付けで作成した河久商事株式会社への注文書
(3)甲第3号証 喜志運送株式会社が平成11年4月19日付けで作成した有限会社三洋商会への請求明細書
(4)甲第4号証 河久商事株式会社が平成11年4月20日付けで作成した有限会社三洋商会への請求書
(5)甲第5号証 喜志運送株式会社が平成11年5月21日付けで作成した有限会社三洋商会への請求明細書
(6)甲第6号証 有限会社三洋商会が平成11年4月21日付けで作成した株式会社岡尾商会への納品書(控)
(7)甲第7号証 有限会社三洋商会が平成11年4月30日付けで作成した株式会社岡尾商会への請求書
(8)甲第8号証 有限会社三洋商会が平成18年2月7日付けで作成した川崎製鉄株式会社への FAX
(9)甲第9号証 JFEスチール株式会社が平成18年2月10日付けで作成した有眼会社三洋商会へのFAX
(10)甲第10号証 三溝善洋が平成10年9月30日?平成12年1月6日の期間において記帳したビジネス手帳の抜粋
(11)甲第11号証 関西空機設備株式会社が平成11年1月5日付けで作成した部品図
(12)甲第12号証 関西空機設備株式会社が平成11年1月6日付けで作成したフイルターセット装置の図面
(13)甲第13号証 三滝善洋が平成18年2月27日に撮影した写真
(14)甲第14号証 株式会社マグが平成18年10月13日付けで作成した有限会社三洋商会への品質証明書
(15)甲第15号証 千葉恭照が平成元年7月26日付けで作成した青木課長へのFAX及びその添付資料である千葉恭照が平成元年6月14日に作成した「スパミック・フィルター(ガラスウール・フィルター)の概要」
(16)甲第16号証 千葉恭照が平成元年6月8日付けで作成した木村課長へのFAXで日金工のガラスフィルターの見積り
(17)甲第17号証 千葉恭照が平成元年6月28日付けで作成した木村課長へのFAXで日金工のガラスフィルターの再見積り
(18)甲第18号証 千葉恭照が平成元年9月27日付けで作成した三溝課長へのFAX及び添付資料である千葉恭照が同日付けで作成した「耐熱不織布ロールに使用しているケブラーの耐薬品性」,「川崎製鉄のガラスウール櫨過シャフト分析結果製造仕様と提供品との比較」
(19)甲第19号証 千葉恭照が平成元年7月18日付けで作成した「ガラスフィルター通気抵抗」
(20)甲第20号証 千葉恭照が平成2年4月18日付けで作成した「日金工相模原納品準備通気テスト」
(21)甲第21号証 株式会社ティアンドティが平成10年8月26日付けで作成した有限会社三洋商会への納品書
(22)甲第22号証 有限会社三洋商会が平成10年8月26日付けで作成した株式会社岡尾商会への納品書(控)
(23)甲第23号証 本件特許掲載公報(特許第3657466号)
(24)甲第24号証 本件特許の拒絶理由通知に対する平成16年12月27日提出の意見書
(25)甲第25号証 本件特許の願書に最初に添付した明細書又は図面
(26)甲第26号証 本件特許の拒絶理由通知に対する平成16年12月27日提出の手続補正書

(参考資料)

(27)参考資料1 本件特許発明1の繊維径,嵩密度及び仮想孔径の関係
(28)参考資料2 訴状
(29)参考資料3 請求人,被請求人間に係属する特許権侵害差止等請求事件(大阪地方裁判所平成18年(ワ)第9352号)で行われた,請求人代表者三溝善洋の本人尋問の本人調書
(30)参考資料3の1ないし参考資料3の21 請求人,被請求人間に係属する特許権侵害差止等請求事件(大阪地方裁判所平成18年(ワ)第9352号)で行われた,請求人代表者三溝善洋の本人尋問で引用された証拠である資料1ないし資料21
(31)参考資料4 請求人,被請求人間に係属する特許権侵害差止等請求事件(大阪地方裁判所平成18年(ワ)第9352号)で行われた,千葉恭照の証人尋問の証人調書
(32)参考資料4の1ないし参考資料4の25 請求人,被請求人間に係属する特許権侵害差止等請求事件(大阪地方裁判所平成18年(ワ)第9352号)で行われた,千葉 恭照の証人尋問で引用された証拠である資料1ないし資料25

(人証)

(33)証人1 中土居 仁(居所 兵庫県西宮市朝凪町1番50号 JFEスチール株式会社東日本製鉄所ステンレス部西宮ステンレス工場内)の証人尋問調書の別添録音テープ
(34)証人2 吉森 賢一(居所 大阪府大阪市中央区備後町3丁目4番1号 備後町山口玄ビル8階 株式会社マグ 関西支店内)の証人尋問調書の別添録音テープ
(35)証人3 中森 孝文(住所 大阪府堺市三原区青南台1-9-18)の証人尋問調書の別添録音テープ
(36)証人4 千葉 恭照(居所 埼玉県桶川市泉2-2-18 三共理化学株式会社内)の証人尋問調書の別添録音テープ
(37)当事者代表者 三溝 善洋(居所 大阪府富田林市梅の里4丁目4番1号有限会社三洋商会内)の当事者尋問調書の別添録音テープ

2 被請求人の証拠方法

(1)乙第1号証 陳述書
(2)乙第2号証 陳述書
(3)乙第3号証 スパミック・フィルター(ガラスウール・フィルター)の概要
(4)乙第4号証 山本内外特許事務所 山本様
(5)乙第5号証 FAX送信票(1年6月5日付け)
(6)乙第6号証 FAX送信票(1年6月14日付け)
(7)乙第7号証 FAX送信票(1年6月21日付け)
(8)乙第8号証 ユニオン化学機械株式会社「圧延油のろ過装置」(仮称)調査に関する件
(9)乙第9号証 ガラスフィルター製造工程と製造仕様
(10)乙第10号証 特許公報(特許第3220442号)
(11)乙第11号証 拒絶理由通知
(12)乙第12号証 意見書
(13)乙第13号証 カタログ「マグボード」
(14)乙第14号証 特開平9-313813号
(15)乙第15号証 特開2001-129320号
(16)乙第16号証 特許電子図書館(http.//www.ipdl.inpit.go.jp/homepg.ipdl )の特許・実用新案の公報テキスト検索の結果
(17)乙第17号証 録音反訳書(証人 中土居 仁)
(18)乙第18号証 録音反訳書(証人 中森 孝文)
(19)乙第19号証 貴社ご所有特許第3657466号に関する申入書(20)乙第20号証 鑑定書
(21)乙第21-1号証 鑑定書添付資料1
(22)乙第21-2号証 鑑定書添付資料2
(23)乙第21-3号証 鑑定書添付資料3
(24)乙第21-4号証 鑑定書添付資料4
(25)乙第21-5号証 鑑定書添付資料5
(26)乙第21-6号証 鑑定書添付資料6
(27)乙第21-7号証 鑑定書添付資料7
(28)乙第21-8号証 鑑定書添付資料8
(29)乙第21-9号証 鑑定書添付資料9

V 当審無効理由

当審より平成20年 6月 3日付け(発送日:同月 6日)で,被請求人に対して無効理由通知書により無効理由(以下,「当審無効理由」という。)を通知した。その無効理由の概要は,以下のとおりである。

1 出願前の公然実施による本件特許の無効理由

1-1 本件特許発明1について

本件特許発明1は,本件特許の特許出願日である平成11年7月14日より前に,ユニオン化学機械株式会社(平成元年ころ),三共理化学株式会社(平成元年7月ころから平成6年ころ),請求人(平成11年3月ころ以降)により,公然実施されていた発明であるから,特許法29条1項2号に該当し,同法123条1項2号の無効理由を有するので,本件特許発明1の特許は,無効とされるべきものと認められる。

1-2 本件特許発明2について

本件特許発明2は,本件特許の特許出願日である平成11年7月14日より前に,三共理化学株式会社(平成元年7月ころから平成6年ころ)により,公然実施されていた発明であるから,特許法29条1項2号に該当し,同法123条1項2号の無効理由を有するので,本件特許発明2の特許は,無効とされるべきものと認められる。

1-3 本件特許発明3について

本件特許発明3は,本件特許の特許出願日である平成11年7月14日より前に,ユニオン化学機械株式会社(平成元年ころ),三共理化学株式会社(平成元年7月ころから平成6年ころ),請求人(平成11年3月ころ以降)により,公然実施されていた発明であるから,特許法29条1項2号に該当し,同法123条1項2号の無効理由を有するので,本件特許発明3の特許は,無効とされるべきものと認められる。

2 出願前に公然実施された発明からの容易性による本件特許の無効理由

2-1 本件特許発明1について

本件特許発明1は,本件特許の特許出願日である平成11年7月14日より前に,ユニオン化学機械株式会社(平成元年ころ),三共理化学株式会社(平成元年7月ころから平成6年ころ),請求人(平成11年3月ころ以降)により,公然実施されていた発明から容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けられないものであり,同法123条1項2号の無効理由を有するので,本件特許発明1の特許は,無効とされるべきものと認められる。

2-2 本件特許発明2について

本件特許発明2は,本件特許の特許出願日である平成11年7月14日より前に,ユニオン化学機械株式会社(平成元年ころ),三共理化学株式会社(平成元年7月ころから平成6年ころ),請求人(平成11年3月ころ以降)により,公然実施されていた発明から容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けられないものであり,同法123条1項2号の無効理由を有するので,本件特許発明2の特許は,無効とされるべきものと認められる。

2-3 本件特許発明3について

(1)公然実施された「物」の発明からの容易性

本件特許発明3は,本件特許の特許出願日である平成11年7月14日より前に,ユニオン化学機械株式会社(平成元年ころ),三共理化学株式会社(平成元年7月ころから平成6年ころ),請求人(平成11年3月ころ以降)により,公然実施されていたフィルターモジュールの発明から容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けられないものであり,同法123条1項2号の無効理由を有するので,本件特許発明3の特許は,無効とされるべきものと認められる。

(2)公然実施された「物の設計方法」の発明からの容易性

本件特許発明3は,本件特許の特許出願日である平成11年7月14日より前に,ユニオン化学機械株式会社(平成元年ころ),三共理化学株式会社(平成元年7月ころから平成6年ころ),請求人(平成11年3月ころ以降)により,公然実施されていたフィルターモジュールの「物に関する特定事項」のみを特徴とするフィルターモジュールの設計方法の発明から容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けられないものであり,同法123条1項2号の無効理由を有するので,本件特許発明3の特許は,無効とされるべきものと認められる。

これに対して,被請求人からは,当審無効理由通知書が指定する期間内に何らの応答もなかったものである。

VI 当審の判断

1 出願前の公然実施による本件特許の無効理由の有無について

1-1 本件特許発明1についての検討

(1)ユニオン化学機械株式会社(以下,「ユニオン」という。)による実施について

ア 証拠(各事実の末尾に記載した。なお,参考資料3,4の後のページ数は尋問調書のページである。また、関連する平成18年(ワ)第9352号判決での証拠についても各事実の末尾に併せて記載した。)によれば,次の事実が認められる(本項目において特に年の記載がない日付の年はすべて平成元年である。)。

(ア)日本金属工業株式会社(以下,日金工という。)から三共理化学株式会社(以下,「三共理化学」という。)への依頼
三共理化学名古屋営業所の木村営業課長(以下「木村課長」という。)は,平成元年初めころ,担当の営業先である日金工衣浦工場の担当者から,当時,日金工がユニオンから購入し,巻替作業を依頼していた濾過フィルターについて,同種のものの安価での製造,巻替えの可否について相談を受けた(参考資料4,2,4ページ,参考資料4の25:Q2,4ページ,乙33)。
そこで,木村課長は,三共理化学桶川工場の須藤技術部長(以下「須藤部長」という。)に対し,圧延油の濾過フィルターの製造販売の可否について相談し,須藤部長は,千葉恭照に対し,濾過フィルターの製造の可否について検討するよう指示した(参考資料4,3ページ,参考資料4の25:Q3ページ,乙33)。

(イ)三共理化学における千葉恭照の調査
千葉恭照は,濾過フィルターの現状を調査し,文献を収集すると共に(参考資料4,4ないし6,45ページ,参考資料4の2,3:Q4ないし6,45ページ,乙35,36),日金工衣浦工場及び日金工相模原工場に納入されているユニオン製の濾過フィルターをサンプルとして入手し,分析した(参考資料4,4,5,7,33ページ,参考資料4の25:Q4,5,7,33ページ,乙33)。当時,日金工衣浦工場及び日金工相模原工場が使用していた濾過フィルターはすべてユニオン製であり,千葉恭照の調査によれば,当時,同様な形状の濾過フィルターを製造しているメーカーはユニオンだけであった(参考資料3,18ページ,参考資料4,5ページ,参考資料4の25:被告代表者18ページ,Q5ページ,乙33)。

(ウ)千葉恭照の分析によるユニオン製サンプルの形状
千葉恭照は,2月22日,ユニオン製サンプルについて,2種類の硬度計による硬度,サイズ,重量を計測し,同月28日,ガラスウールの分析を市川毛織株式会社(以下「市川毛織」という。)に依頼した(参考資料4,8,9ページ,参考資料5の1・2,25:Q8,9ページ,乙2の1・2,33)。
ユニオン製サンプルの形状は,ドーナツ状のガラスウールをそのドーナツの穴をステンレスパイプが通るようにして,ステンレスパイプの通る方向に圧縮してステンレスパイプに充填し,その両端をフランジで止めてあるもので,ステンレス製のパイプには多数の孔があって,濾過される圧延油がグラスウールを通過し,ステンレスパイプの穴を通過してステンレスパイプの管内に流入することができるようになっていた。1つのドーナツ状ガラスウールの厚さは20mm,直径は55mm,ステンレスパイプ管の外径が21.7mm,長さが400mm,使用されているガラスウールの重量は,1回目に日金工衣浦工場から支供されたもので355g/本であった(参考資料4,11,34,46ページ,参考資料4の5の1,1,25:Q11,34,46ページ,乙2の1,7,33)。
グラスウール充填量は,サンプルによってばらつきがあり,2回目,3回目に日金工衣浦工場から支供されたサンプルは,それぞれ290g/本,255g/本であった(参考資料4,8,11,23,48,49ページ,参考資料3の13,参考資料4の8,25:Q8,11,23,48,49ページ,甲8の17,乙5,33)。千葉恭照が,7月20日に日金工相模原工場から入手したユニオン製サンプルは319g/本であった(参考資料4,22,24,25ページ,参考資料4の9:Q22,24,25ページ,乙31)。
市川毛織は,3月15日,三共理化学技術部に対し,濾過フィルターの分析結果について,繊維の種類はガラス繊維,繊維の織度は2デニール,長さは測定不可という内容の結果を送付した(参考資料4,9ページ,参考資料4の6:Q9ページ,乙3)。

(エ)グラスウールの繊維径の測定
市川毛織では,ガラス繊維は扱っていないとのことであったため,千葉恭照は,ガラスウールの仕入先を探すこととし,建物の断熱材として使用する板状のガラスウールを使用することを考えたところ,三共理化学内には日本無機株式会社(以下,「日本無機」という。)と旭ファイバーグラス株式会社(以下,「旭ファイバー」という。)の断熱材の板状ガラスウールのサンプルがあったため,日本無機にユニオン製サンプルのうち濾過フィルターから抜き取ったドーナツ状のガラスウール1個を渡し,サンプルの提供を依頼した(参考資料4の25:乙33)。
千葉恭照は,4月10日,(1)ユニオン製サンプル,(2)日本無機から届いたサンプル,(3)三共理化学内にあった旭ファイバーのサンプルを電子顕微鏡を使用して拡大写真を撮り,各繊維の繊維径を測定し,平均値を計算した(参考資料4,10ページ,参考資料4の7,25:Q10ページ,乙4,33)。
その結果,各ガラスウールの繊維の平均径は,(1)ユニオン製サンプルが11.2μm,(2)日本無機のサンプルが10.9μm,(3)旭ファイバーのサンプルが12.7μmであった(乙4)。各サンプルについて,ガラスウールの平均径に大差はなかったので,千葉恭照は,日本無機から仕入れることとした(参考資料4,10,11ページ,参考資料4の25:Q10,11ページ,乙33)。

(オ)通気抵抗の測定
濾過フィルターの能力は,その通気抵抗を測定することにより知ることができるので,千葉恭照は,7月18日,同月20日,ユニオン製サンプルについて通気抵抗の実験をした(参考資料4,12ページ,参考資料4の9,25:Q12ページ,乙31,33)。このときのユニオン製サンプルのグラスウールの充填量は290g/本と319g/本であった(参考資料4の9,25:甲8の19,乙31,33)。なお,千葉恭照は,平成2年4月18日にも,日金工相模原工場に納入する濾過フィルターについての通気抵抗試験を行っている(甲第20号証:甲8の20)。

(カ)川崎製鉄株式会社(以下,「川鉄」という。)において使用されていたユニオン製フィルターの分析
川鉄に営業を行っていた当時の三共理化学大阪営業所の三溝営業課長(現在は請求人代表者。以下「三溝善洋」という。)は,川鉄に営業した結果,ユニオンより価格が安く品質的に問題なく互換性があれば三共理化学からの購入も検討するとのことだったので,品質を分析するため,川鉄からサンプルを入手し,千葉恭照に送付した(参考資料3,18,19ページ,参考資料4の22:被告代表者18,19ページ,乙9)。
千葉恭照は,9月27日,三溝善洋に依頼されて,川鉄から提供を受けた濾過フィルターを分析し,三共理化学のサンプルと比較したところ,川鉄のサンプル(ユニオン製)は,繊維径11.8μm,フィルターサイズ22mm× 55mm×400mm,充填重量340g/本であり,三共理化学のものは繊維径10.1μm,充填重量300g/本であった。(参考資料4,27,28 ページ,参考資料4の22,25:Q27,28 ページ,甲8の18,乙9,33)なお,当時の繊維径の計測方法は,電子顕微鏡で繊維の一部の拡大写真を撮り,その写真の繊維を測定して平均値を出すという方法であったため,測定時の誤差が生じることがあった(参考資料4,28ページ,参考資料4の25,参考資料3の4:Q28ページ,乙33,34)。

(キ)三溝善洋の所持していたグラスウールの分析
三溝善洋は,平成10年12月ころ,請求人において濾過フィルターを開発するにあたり,三溝善洋が三共理化学に勤務していた当時,川鉄から入手したユニオン製の濾過フィルターのグラスウールを数個所持していたので,グラスウールメーカーの株式会社マグ(以下,「マグ」という。)にその分析を依頼した。マグの分析結果は,旭ファイバー製で,密度が32kg/m^(3)というものであった。(参考資料3,2,3ページ:被告代表者2,3ページ)

イ ユニオンによる実施の有無

(ア)ユニオンが製造販売していた濾過フィルターの仕様等
上記アで認定した事実からすれば,平成元年当時,日金工衣浦工場,日金工相模原工場,川鉄は,ユニオン製の濾過フィルターを使用しており,その形状は,いずれも全体として直径55mm×長さ400mmの円筒形で,内部に直径約22mmの金属管が入っており,金属管には多数の孔があって,濾過される圧延油が金属管の孔を通過して金属管内に流入することができるようになっていること,ガラスウール部分は,ドーナツ状のガラスウールをドーナツの穴に上記の金属管が通るようにして金属管と平行な方向に圧縮する形で金属管に充填されたもので,その両端がフランジで止めてあるものであったことが認められる。
また,各濾過フィルターのガラスウール部分の重量は,日金工衣浦工場から3回にわたって入手したサンプルについては,(1)355g/本,(2)290g/本,(3)255g/本,(4)平成元年7月20日に日金工相模原工場から入手したサンプルについては319g/本,(5)平成元年9月ころに川鉄から入手したサンプルについては340g/本であったこと,ガラスウールの繊維径は,日金工衣浦工場から入手したもの(上記(1)(2)(3))が11.2μmであり,川鉄から入手したもの(上記(5))が11.8μmであったことが認められる。
そして,各濾過フィルターの形状により計算されるガラスウール部分の体積は797.87cm^(3) であるから(計算式:(2.75×2.75-1.1×1.1)×3.14×40.0=797.87 …),各濾過フィルターの嵩密度は,(1)重量355g/本のものが444.93kg/m^(3) ,(2)重量290g/本のものが363.47kg/m^(3),(3)重量255g/本のものが319.60kg/m^(3) ,(4)重量319g/本のものが399.81kg/m^(3) ,(5)重量340g/本のものが426.13kg/m^(3) であると計算される(計算式:(1) 355 ÷ 797. 87=0.44493 …,(2) 290 ÷ 797.87=0.36347 …,(3)255 ÷ 797.87=0.31960 …,(4)319 ÷ 797.87=0.39981 …,(5)340 ÷ 797.87=0.42613 …)。

(イ)ユニオン製濾過フィルターの構成の分説
以上を前提に,ユニオン製濾過フィルターの構成を分説すると,次のとおりとなる。
a1* 圧延油が流れる円筒状の筒体の周壁に多数の貫通孔を形成し,前記円筒状の筒体の外周に複数個の円環状のグラスウールのブロックを装着すると共に,前記筒体の両端部に設けた一対の圧縮プレートの間で前記グラスウールのブロックを前記筒体の軸方向に圧縮した状態で前記筒体に固定して,前記グラスウールのブロックの外周面で濾過された圧延油が前記貫通孔を通過して前記筒体内に流れ込むようにしたフィルタモジュールであって,
b1* 前記グラスウールを構成する繊維の平均径を11.2μm(上記(1)(2)(3)について。なお,(4)は不明),11.8μm(上記(5)について),
c1* 前記グラスウールの嵩密度を(1)444.93kg/m^(3) ,(2)363.47kg/m^(3) ,(3)319.60kg/m^(3),(4)399.81kg/m^(3),(5) 426.13kg/m3に設定すると共に,
d1* 下記式で定義されるグラスウールの捕捉孔の仮想孔径φを(2)27.15μm,(3)29.25μm,(4)25.67μm((1)(5)は記載を省略) に設定した
φ^(2)=D^(2)・(2500-M)/M
M:不織布の嵩密度(kg/m^(3)) D:繊維の平均径(μm)
【(2)363.47kg/m^(3)】
φ^(2)=11.2×11.2×(2500-363.47)/363.47=737.35
φ=27.15
【(3)319.60kg/m^(3)】
φ^(2)=11.2×11.2×(2500-319.60)/319.602 =855.79
φ=29.25
【(4)399.81kg/m^(3)】
ただし,繊維の平均径が日金工衣浦工場と同じ11.2μmの場合。
φ^(2)=11.2×11.2×(2500-399.81)/399.812 =658.93
φ=25.67
【(1)(5)は記載を省略】
e1* フィルタモジュール。

(ウ)各濾過フィルターの構成要件の充足
上記(1)(5)の各構成c1*は,いずれも,少なくとも本件特許発明1の構成要件C1を充足していないので,本件特許発明1と同一ではない。
上記(2)ないし(3)の各構成a1*ないしe1*は,いずれも本件特許発明1の構成要件A1ないしE1を充足しており,本件特許発明1と同一である。
上記(4)は,繊維の平均径が日金工衣浦工場と同じ11.2μmの場合の場合は,本件特許発明1の各構成要件を充足することとなるが,証拠上,繊維の平均径が不明であるから,本件特許発明1と同一であるとはいえない。

(エ)まとめ
以上からすれば,ユニオンは,平成元年当時,本件特許発明1と同一の濾過フィルター(上記(2)(3))を製造して,少なくとも日金工衣浦工場に販売していたことが認められるので,本件特許発明1は,平成元年当時,ユニオンにより,公然実施されていた発明であると認められる。

そして,また,本件の証人4の証人尋問録音テープ及び当事者代表者の当事者尋問録音テープと各証拠に基づいても,上記と同様な認定ができ,この点からしても,ユニオンは,平成元年当時,本件特許発明1と同一の濾過フィルター(上記(2)(3))を製造して,少なくとも日金工衣浦工場に販売していたことが認められるので,本件特許発明1は,平成元年当時,ユニオンにより,公然実施されていた発明であると認められる。

ウ 被請求人の主張について

被請求人は,この点につき縷々主張を述べているが,いずれの主張も,前記に認定した事実を覆すに足りる根拠となるものではない。

(2) 三共理化学による実施について

ア 証拠(各事実の末尾に記載した。なお,参考資料3,4の後のページ数は尋問調書のページである。また、関連する平成18年(ワ)第9352号判決での証拠についても各事実の末尾に併せて記載した。)によれば,次の事実が認められる(本項目において特に年の記載がない日付の年はすべて平成元年である。)。

(ア)三共理化学における仕様の決定
5月下旬から6月上旬ころ,三共理化学における濾過フィルター製造の目処が立ち,形状は,ユニオン製のものと同じで,穴の開いているステンレスパイプに,ドーナツ状のガラス繊維をそのドーナツの穴にステンレスパイプが通るようにしてステンレスパイプと平行な方向に圧縮して充填し,ガラス繊維の両端をフランジで止め,片方のフランジは固定フランジとし,他方のフランジはナットで押さえたもので,濾過される圧延油がガラス繊維を通過し,ステンレスパイプの穴を通過してステンレスパイプ管内に流入することができるようになっているもの,仕様は,グラスウール充填量300g/本,繊維径11μm,充填密度376kg/m^(3),サイズ(内径3×外径×長さ)22mm×55mm×400mmと決定した(参考資料4,12,13,49ページ,参考資料4の1,8,25:Q12,13,49ページ,乙5,7,33)。なお,三共理化学では,グラスウールを圧縮するために,空気圧のプレスの機械を準備した(参考資料4,36,42ページ:Q36,42ページ)。

(イ)知的財産権関係の調査
千葉恭照は,ユニオンの知的財産権の出願の有無について,山本弁理士(以下「山本弁理士」という。)に調査を依頼した(参考資料4,4,13,1,38,39,51,52ページ,参考資料4の25:Q4,13,1,38,39,51,52ページ,乙33)。
山本弁理士は,6月5日,昭和62年から平成元年3月分までで公開されているユニオンを出願人とする出願の中に濾過フィルターの出願はなく,粘度測定装置に関する実用新案が1件あったのみであるとの回答をした(参考資料4,14ページ,参考資料4の10,25:Q14ページ,乙22,33)。
また,山本弁理士は,6月14日,特公昭49-27014号公報(「各種鋼板製造工程中における水,油,薬液等の絞取ローラー」)等の発明を指摘し,ユニオン製サンプルは,積層の部分も含めて公知技術であって,仮に出願しても許可されないとの見解を示した(参考資料4,15ページ,参考資料の4の11,25:Q15ページ,乙23,33)。千葉恭照は,山本弁理士に,本件新商品説明会で使用した資料(参考資料4の1:乙7)から作成した三共理化学製フィルターの仕様についての資料(参考資料4の14:乙38)を送付した(参考資料4,15ページ:Q15ページ)。
さらに,山本弁理士は,同月21日,「圧延機における圧延油再生用フィルターの洗浄方法及びその装置」等の発明を指摘し,ユニオン製フィルターにより近い発明がある旨の報告をし(参考資料4の12,25:乙24,33),同月23日,昭和55年から平成元年4月15日までの間で濾過フィルターに関するユニオンの出願はない旨の調査結果を示した(参考資料4,15ページ,参考資料4の13,25:Q15ページ,乙25,33)。

(ウ)日金工衣浦工場に対する最初の見積り
6月上旬ころ,日金工衣浦工場から,濾過フィルターの見積りをしてほしいとの依頼があり,千葉恭照は,同月8日,シャフトを受領して充填のみ行う場合は100本単位で2380円/本,4000本単位で1850円/本,フィルター部分の抜取後充填する場合は100本単位で2530円/本,4000本単位で2000円/本という見積りを木村課長に連絡した(参考資料4,17ページ,甲第16号証,参考資料4の15,25:Q17ページ,甲8の16,乙27,33)。

(エ)本件新商品説明会
千葉恭照は,須藤部長から,濾過フィルターの販売を開始するにあたって,6月に開催される営業会議の後で,説明会を開催するよう指示を受け,同月14日,本件新商品説明会が三共理化学桶川工場において開催された(参考資料4,37ページ,参考資料4の25,参考資料3の4:Q37ページ,乙33,34)。
本件新商品説明会においては,千葉恭照は,「スパミック・フィルター(ガラスウール・フィルター)の概要」と題する資料(参考資料4の1:乙7)を配布し,本商品が,セイジマーミルという圧延装置の圧延油を濾過するフィルターであること,「繊維径11μm,充填密度376kg/m^(3) ,サイズ(内径×外径×長さ)22mm×55mm×400mm」で,充填量は300g/本という仕様であること,本商品は汚濁オイルの中に入れて,本商品の開口部より吸引すると,オイルはガラス繊維の積層外側からガラス繊維を通過し,ステンレスパイプに設けられた孔を通過して吸引されるという仕組みでフィルター槽が8本あり,各2000本のフィルターがセットされ,8本のフィルター槽を順次使用していくという使用方法について,実物のサンプルを示しながら説明した(参考資料3,18ページ,参考資料4,13,16,37,38,49ないし52ページ,参考資料4の1,25,26,参考資料3の4:被告代表者18ページ,Q13,16,37,38,49ないし52ページ,甲8の15,乙7,33,34)。
見積価格については,当初の見積りより下げてほしいと名古屋営業所から話があったため,須藤部長は,使用済みガラスウールの取出しを含める場合は,「100本以上の単位で2150円/本,詰替えのみの場合は,100本以上の単位で2000円/本である」と説明した(参考資料4,17,18ページ,参考資料4の1,25:Q17,18ページ,乙7,33)。
千葉恭照は,説明会後,希望する営業所に,濾過フィルターの現物を送付した(参考資料3,18ページ,参考資料4,49ないし51ページ,参考資料4の25,参考資料3の4:被告代表者18ページ,Q49ないし51ページ,乙33,34)。なお,カタログは作成されなかった(参考資料4,32ページ:Q32ページ)。

(オ)日金工衣浦工場に対する再見積り
木村課長が,ユニオンより安価でなければ参入は困難であると指摘したので,千葉恭照は,6月28日,木村課長に対し,「シャフトのみの支給の場合,1000本単位で1750円/本,使用済みグラスウール抜きを含める場合,1000本単位で1870円/本」という再見積りを送付した(参考資料4、18ページ,参考資料3の13、参考資料4の8,25:Q18ページ,甲8の17,乙5,33)。
なお,上記の再見積りを記載した書面(参考資料3の13、参考資料4の8:甲8の17,乙5)には,グラスウール充填量が1本あたり300gであること,ユニオン製サンプルは,290g/本,255g/本とばらつきがあったことが記載されている(参考資料4,8,11ページ,参考資料3の13、参考資料4の8,25:Q8,11ページ,甲8の17,乙5,33)。

(カ)日金工衣浦工場の濾過フィルターの巻替え
その後,日金工衣浦工場に納入する濾過フィルターについては,上記(オ)の再見積内容の価格で,前記の三共理化学の仕様(300g/本)の濾過フィルターの巻替えの契約が成立し,7月5日,日金工衣浦工場から三共理化学に対し,巻替えのため濾過フィルター用鉄芯150本が送付された(参考資料4,19ないし22ページ,参考資料4の16ないし18,25:Q19ないし22ページ,乙28ないし30,33)。

(キ)日金工相模原工場の濾過フィルターの巻替え
三共理化学は,7月25日,日金工相模原工場から,濾過フィルター2650本を,8月23日に更に1箱を巻替えのために受領し(参考資料4,26ページ,参考資料4の20の1・2,25:Q26ページ,乙8の1・2,33),9月7日に「ガラスフィルター」の名称で出荷した(参考資料4,19,27ページ,参考資料4の21の1・2,25:Q19,27ページ,乙32の1・2,33)。
ユニオン製サンプルは,日金工相模原工場のものが充填量319g/本,日金工衣浦工場のものが充填量250ないし290g/本とばらつきがあったため,日金工相模原工場に納品するにあたり,再度,同工場から現状品のサンプルを入手しようとしたが,同工場は夏期休暇中でサンプルの入手ができなかったため,出荷分は充填量300g/本で充填した(参考資料4,24ないし26ページ,参考資料4の19:Q24ないし26ページ,乙6)。
日金工相模原工場からは,ユニオンとの関係上,三共理化学が他社に対して営業する際に,日金工で実績があることを口外しないでほしいと依頼された(参考資料4,7,8ページ,参考資料4の4:Q7,8ページ,乙37)。

(ク)三共理化学製の濾過フィルターの名称
三共理化学製フィルターは,種類としては1種類であったが,三共理化学においては「ガラスフィルター」「ガラスウール・フィルター」などと呼ばれ,ユーザーにおいては「ゼンジマーフィルター」「ZRフィルター」などと呼ばれていた(参考資料4,1,2,39,40ページ:Q1,2,39,40ページ)。

(ケ)川鉄に対する見積り
前記のとおり,川鉄に営業を行っていた当時の三共理化学大阪営業所の三溝善洋は,川鉄に営業した結果,ユニオンより価格が安く品質的に問題なく互換性があれば三共理化学からの購入も検討するとのことだったので,品質を分析するため,川鉄からサンプルを入手して千葉恭照に送付し,千葉恭照は,川鉄が使用していたユニオン製フィルターのサンプルの分析をした(参考資料3,18,19ページ,参考資料3の18:被告代表者18,19ページ,乙9)。
その後,千葉恭照は,見積価格として,1000本以上で,使用済みの抜きありの場合2050円/本,詰め替えのみの場合1850円/本と伝えた。(参考資料4,27,28ページ,参考資料4の22,25:Q27,28ページ,甲8の18,乙9,33)
結局,三共理化学は,川鉄に,三共理化学製フィルターを販売することができた(参考資料3,19ページ:被告代表者19ページ,甲18,乙45)。

(コ)日立金属株式会社(以下,「日立金属」という。)安来工場への販売 三溝善洋は,高林商事株式会社(以下,「高林商事」という。)を通じて,日立金属安来工場で使用している濾過フィルターの製造元の調査を依頼したところ,ユニオン製であり,巻替価格は2700円/本ないし3000円/本程度であるとの報告があり,同時に三共理化学で製造販売する濾過フィルターの仕様や価格を尋ねられたので,9月28日,2200円/本で巻替をすることを伝えた。その後,三共理化学から日立金属安来工場へ前記の三共理化学の仕様(300g/本)の濾過フィルターの納入が決定し,三共理化学は,日立金属に対し,その後も継続的に濾過フィルターを販売した。(参考資料3,19,20ページ,参考資料3の4:被告代表者19,20ページ,乙34)

(サ)三共理化学における濾過フィルターの製造工程
平成3年3月当時,三共理化学における濾過フィルターの製造工程は,(1)入荷した使用後のシャフトからガラスフェルト部分を外す,(2)シャフトのナットを外し,管内のスラッジを除去し,溶剤等で洗浄する,(3)450mm×920mmのガラスウールボードを治具を使用して円環状に打ち抜く,(4)洗浄済みシャフトをガイドシャフトにつないで,円環状ガラスウールを所定量充填し,フランジを入れる,(5)(4)をシャフトのネジ部分が現れるまでプレスする,(6)ガイドシャフトから外して,ナットをセットし,ガラスダストを除去する,というものであった。(参考資料4,29ページ,参考資料4の23:Q29ページ,乙39)

(シ)仕様の変更(日金工相模原工場及び日立金属安来工場)
円環状ガラスウールの充填量は,三共理化学が製造販売を開始した平成元年は,いずれの納入先についても前記の三共理化学の仕様(300g/ 本)であったが,その後,客先によって変更があった。
日金工相模原工場向けのものは,平成3年3月当時,変更されて305g/本(充填する長さは400mm),平成5年5月当時は更に変更されて,290ないし295g/本であった。
日立金属安来工場向けのものは,平成4年度は,変更されて295g/本,平成5年6月には更に変更されて305ないし310g/本(参考資料4の23には「310g/m 」と記載されているが,「310g/本」の記載誤りと思われる。)であった。(参考資料3,20ページ,参考資料4,29ページ,参考資料4の23:被告代表者20ページ,Q29ページ,乙39)

(ス)三共理化学の濾過フィルターの製造中止
三共理化学では,平成6年ころから製造コストが上昇し,販売価格を維持することができなくなったため,濾過フィルターの製造の中止を決定した。(参考資料3,21ページ,参考資料4,30,32ページ,参考資料3の4:被告代表者21ページ,Q30,32ページ,乙34)

イ 三共理化学による実施の有無

(ア)三共理化学が製造販売していた濾過フィルターの仕様等
上記アで認定した事実からすれば,三共理化学は,平成元年7月ころから平成6年ころまで,日金工衣浦工場,日金工相模原工場,川鉄,日立金属安来工場に自社製の濾過フィルターを販売していたこと,その形状は,ステンレスパイプの周囲にガラス繊維を積層させた円筒状のもので,ステンレスパイプには複数の孔があって,濾過されるオイルはガラス繊維及びステンレスパイプの孔を通過してステンレスパイプの管内に流入することができるもので,ガラス繊維はドーナツ状のものをステンレスパイプに通してステンレスパイプと平行な方向に圧縮したもので,ガラス繊維はその両端をフランジで固定されており,全体のサイズは内径×外径×長さ=22mm×55mm×400mmであって,ガラス繊維の充填量は300g/本,ガラス繊維の1本の繊維径は11μm,ガラス繊維の充填の嵩密度は0.376g/cm^(3 )すなわち376kg/m^(3)であったことが認められる。そして,計算上も,上記のサイズ(ガラス繊維の体積),ガラス繊維の充填量(重量),嵩密度は合致する(計算式:300 ÷ 797.87=0.3760 …)。

(イ)三共理化学製濾過フィルターの構成の分説
以上を前提に,三共理化学製濾過フィルターの構成を分説すると,次のとおりとなる。
a2* 圧延油が流れる円筒状の筒体の周壁に多数の貫通孔を形成し,前記円筒状の筒体の外周に複数個の円環状のグラスウールのブロックを装着すると共に,前記筒体の両端部に設けた一対の圧縮プレートの間で前記グラスウールのブロックを前記筒体の軸方向に圧縮した状態で前記筒体に固定して,前記グラスウールのブロックの外周面で濾過された圧延油が前記貫通孔を通過して前記筒体内に流れ込むようにしたフィルタモジュールであって,
b2* 前記グラスウールを構成する繊維の平均径を11μm,
c2* 前記グラスウールの嵩密度を376kg/m^(3)に設定すると共に,
d2* 下記式で定義されるグラスウールの捕捉孔の仮想孔径φを26.14μmに設定した
φ^(2)=D^(2)・(2500-M)/M
M:不織布の嵩密度(kg/m^(3) ) D:繊維の平均径(μm)
φ^(2)=11×11×(2500-376)/376=683.52
φ=26.14
e2* フィルタモジュール。

(ウ) 三共理化学製濾過フィルターの構成要件の充足
上記の構成a2*ないしe2*は,いずれも件特許発明1の構成要件A1ないしE1を充足しており,本件特許発明1と同一である。

(エ) まとめ
以上からすれば,三共理化学は,平成元年7月ころから平成6年ころまで,本件特許発明1と同一の濾過フィルターを製造して,日金工衣浦工場,日金工相模原工場,川鉄,日立金属安来工場に販売していたことが認められるので,本件特許発明1は,平成元年7月ころから平成6年ころまで,三共理化学により公然実施されていた発明であると認められる。

そして,また,本件の証人4の証人尋問録音テープ及び当事者代表者の当事者尋問録音テープと各証拠に基づいても,上記と同様な認定ができ,この点からしても,三共理化学は,平成元年7月ころから平成6年ころまで,本件特許発明1と同一の濾過フィルターを製造して,日金工衣浦工場,日金工相模原工場,川鉄,日立金属安来工場に販売していたことが認められるので,本件特許発明1は,平成元年7月ころから平成6年ころまで,三共理化学により公然実施されていた発明であると認められる。

ウ 被請求人の主張について

被請求人は,この点につき縷々主張を述べているが,いずれの主張も,前記に認定した事実を覆すに足りる根拠となるものではない。

(3)請求人による実施について

ア 証拠(各事実の末尾に記載した。なお,参考資料3,4の後のページ数は尋問調書のページである。また、関連する平成18年(ワ)第9352号判決での証拠についても各事実の末尾に併せて記載した。)によれば,次の事実が認められる。

(ア)三共理化学の濾過フィルターの製造中止
三共理化学では,平成6年ころ,濾過フィルターの製造の中止を決定した。(参考資料3,21ページ,参考資料4,30,32ページ,参考資料3の4:被告代表者21ページ,Q30,32ページ,乙34)
これに伴い,三溝善洋は,三共理化学に代わって濾過フィルターを製造する業者を探すよう指示された。(参考資料3,21ページ,参考資料3の4:被告代表者21ページ,乙34)

(イ)三共理化学の株式会社ティアンドティ(以下,「ティアンドティ」という。)からのフィルターの仕入れ
三溝善洋は,不織布やフィルターに関する詳細な知識を有していなかったので,矢裂氏から,精研株式会社大阪営業所の小田氏が不織布について詳しいと聞き,三共理化学が製造していた濾過フィルターと同様のものを安価に製造する方法について相談した。(参考資料3,1ページ,参考資料3の4:被告代表者1ページ,乙34)
小田氏は,濾過材には,耐熱性の観点からグラスウールを使用する必要があること,日本無機が製造しているグラスウールをパイプに巻き付けることでフィルターユニットを製造できるかもしれないことを教示した。三溝善洋は,日本無機に対し,日本無機製のグラスウールをバームクーヘン状にパイプに巻き付ける方法でのフィルターユニットの製造(以下「バームクーヘン型」という。)の可否を相談したところ,可能であるとの回答を得た。
(参考資料3,1,21ページ,参考資料3の4:被告代表者1,21ページ,乙34)
そこで,三溝善洋は,小田氏に,バームクーヘン型濾過フィルターの試作を依頼し,小田氏が平成7年ころに再就職したティアンドティに製造を依頼した。
以上の経緯を経て,三共理化学は,日本無機からグラスウールを購入してティアンドティに販売し,ティアンドティはバームクーヘン型濾過フィルターを製造し,これを三共理化学が購入して,鉄鋼会社に販売していた。(参考資料3,1,21ページ,参考資料3の4:被告代表者1,21ページ,乙34)

(ウ)請求人による製造販売の開始
三溝善洋は,平成8年3月,三共理化学を退職し,同年5月,請求人を設立した(参考資料3,21ページ,参考資料3の4:被告代表者21ページ,乙34)。
小田氏は,請求人代表者に対し,三共理化学時代の人脈を利用して,川鉄に対し,ティアンドティ製の濾過フィルターを販売してほしいと依頼した(参考資料3,1ページ,参考資料3の4:被告代表者1ページ,乙34)。 ティアンドティで製造する濾過フィルターは,遅くとも平成10年8月ころまでには,バームクーヘン型から円環状ないしドーナツ状のグラスウールを積層して圧縮するタイプ(以下「ドーナツ型」という。)に変更されていた(参考資料3の4:乙34)。
請求人は,平成10年8月26日,岡尾商会を通じて,ティアンドティ製の濾過フィルター2352本(チャンバー付き,サイズ22mm×55mm×400mm)を川鉄西宮工場に販売した(参考資料3,2,26ページ,甲第21、22号証,参考資料3の4:被告代表者2,26ページ,甲8の21・22,乙10,11,34)。
その後,請求人は,株式会社岡尾商会(以下、「岡尾商会」という。)から,販売価格の値下げを要請され,小田氏に尋ねたところ,小田氏は承諾しなかった。すると,岡尾商会は,請求人に対し,請求人において同様の濾過フィルターを安価に製造してはどうかと打診してきた。請求人代表者は,三共理化学時代は営業を担当し,技術職ではなかったが,濾過フィルターを約5年間販売し,その形状,機能等は熟知していたので,請求人において製造することを決意した(参考資料3,2,27ページ,参考資料3の4:被告代表者2,27ページ,乙34)。

(エ)請求人における濾過フィルター製造装置の設置
三共理化学製濾過フィルターは,積層した円環状のグラスウールを圧縮し,ナットで固定するドーナツ型のものだったので,三溝善洋は,まず,グラスウールを圧縮する装置の制作を依頼することとし,平成10年12月ころから,有限会社関西空機設備(以下,「関西空機」という。)との打合せを開始し,平成11年1月下旬に上記装置は完成し,請求人は,関西空機に代金を支払った(参考資料3,5ページ,甲第12号証,参考資料3の5の資料5,参考資料3の1の25,40ページ,参考資料3の2,4:被告代表者5ページ,甲8の12,乙1の資料5,乙12,13の25,40ページ,乙14,34)。

(オ)請求人におけるグラスウールの仕入れ
請求人代表者は,請求人製濾過フィルターの仕様を決定するにあたり,形状,機能,手触りのみによって圧縮の程度等を把握していた。
請求人代表者は,平成10年12月ころ,グラスウールの仕入先を探し,グラスウールメーカーでトップシェアであると聞いていたマグに相談し,前記のとおり,川鉄から入手して所持していたユニオン製の濾過フィルターのグラスウールの分析の結果を前提に,マグ製の嵩密度48kg/m^(3) と64kg/m^(3) の2種類のグラスウールをサンプルとして入手した。
次いで,請求人代表者は,これらの2種類の嵩密度のグラスウールを金属パイプに通して圧縮する円環状グラスウールの個数を変更しながら濾過フィルターを試作し,完成した試作品の手触りの感覚と三共理化学時代に扱っていた三共理化学製フィルターの手触りの感覚とを比較して試行錯誤した。その結果,平成11年2月ころ,64kg/m^(3) の円環状グラスウールを70個詰めて圧縮したものが,その手触りとしては三共理化学時代に扱っていたものに一番近いことが判明したので,マグ製の繊維径7μm,嵩密度64kg/m^(3) ,厚さ25mmのグラスウールボードを充填するグラスウールとして使用することとした。(参考資料3,3,4,28ないし30ページ,甲第14号証,参考資料3の5の資料6,参考資料3の1の8,11ページ,参考資料3の4:被告代表者3,4,28ないし30ページ,甲8の14,乙1の資料6,乙13の8,11ページ,乙16,34,48)
ドーナツ状のグラスウールの製造については,平成11年3月,請求人は,河久商事株式会社(以下,「河久商事」という。)にボード状のグラスウールを円環状に打ち抜いてもらい,河久商事から打抜後の円環状グラスウール(外径55φ,内径22φ,厚さ25mm)を購入することとした(甲第4号証,参考資料3の5の資料7,参考資料3の1の11,24ページ,参考資料3の3,4:甲8の4,乙1の資料7,乙13の11,24ページ,乙15,34)。

(カ)請求人による川鉄への販売
請求人は,平成11年2月16日,岡尾商会の仲介により,川鉄の担当者に対し,請求人製フィルターのサンプルを持参して商品説明をしたところ,同月26日には,請求人が川鉄のフィルター交換(巻替え)を行うことが確実になったので,同年3月12日,円環状グラスウール12万個を河久商事に発注し,円環状ガラスウールは,同月20日及び同年4月2日に,6万個ずつ納入された(参考資料3,5ないし7ページ,甲第2号証,参考資料3の5の資料7,参考資料3の1の27,33,38,39,53ページ,参考資料3の3,4:被告代表者5ないし7ページ,甲8の2,乙1の資料7,乙13の27,33,38,39,53ページ,乙15,34)。
川鉄西宮工場は,同年3月15日,請求人に対し,岡尾商会を通じて濾過フィルター1680本を発注し,巻替えをする使用済み濾過フィルターを送付した(参考資料3,8ページ,甲第1・3・5ないし9、18号証,参考資料3の5の資料1ないし4,参考資料3の1の45,48,51ページ,参考資料3の4、6,7:被告代表者8ページ,甲8の1・3・5ないし9,甲18,乙1の資料1ないし4,乙13の45,48,51ページ,乙17,18,34,45)。
請求人は,同年4月21日,川鉄へ納品する濾過フィルター1680本の巻替えを完成させて川鉄に納品し,岡尾商会を通じて代金の支払を受けた(参考資料3,9,26ページ,参考資料3の5の資料3,4,参考資料3の13,4:被告代表者45,48,51ページ,乙1の資料3,4,乙19,34)。同年8月ころにも巻替えの注文を受け,納品した(参考資料3の1の94,101ページ:乙13の94,101ページ)。

(キ)請求人による日立金属安来工場への販売
請求人代表者は,三共理化学時代の人脈を利用して,平成11年3月5日,日立金属に営業を行い,日立金属は,高林商事を通じて請求人から請求人製濾過フィルターを,巻替だけではなくシャフト部分も含めて新品のものを購入することとなった。そこで,請求人は,同年4月22日,シャフト部分400本の作成を関西空機に依頼し(参考資料3,11,31ページ,参考資料3の5の資料5,参考資料3の8:被告代表者11,31ページ,乙1の資料5,乙40),新品のシャフトを用意した。請求人は,河久商事にグラスウール約2万5000個を注文し(参考資料3,10ページ:被告代表者10ページ),同年5月13日,日立金属安来工場に納品する濾過フィルター350本を完成させて納品し,高林商事を通じて代金の支払を受けた(参考資料3,9,11,12ページ,参考資料3の1の43,44,67,74ページ,参考資料3の4,9の1・2,14:被告代表者9,11,12ページ,乙13の43,44,67,74ページ,乙20の1・2,34,41)。

(ク)日新製鋼株式会社(以下,「日新製鋼」という。)への販売
請求人は,テラダ産業株式会社(以下,「テラダ産業」という。)からの紹介で,平成11年5月19日,日新製鋼を訪れてサンプルを用いて濾過フィルターの営業を行い,同月28日には日新製鋼から補助タンクの濾過フィルター35本の巻替えを受注できる目処が立ち,同年7月2日,巻替えをする濾過フィルター35本を引き取り,河久商事にグラスウール2520個を注文して納品を受け,同月14日,巻替えを完了した濾過フィルター35本をテラダ産業を通じて日新製鋼に納品し,代金の支払を受けた(参考資料3,12,13,15ページ,参考資料3の1の76,79,81,82,87,109,110ページ,参考資料3の4,9の1・2,10,15:被告代表者12,13,15ページ,乙13の76,79,81,82,87,109,110ページ,乙21の1・2,34,42,43)。

(ケ)請求人製濾過フィルターの仕様
請求人製濾過フィルターは,形状も仕様も,三共理化学製フィルターとほぼ同じものとなるよう設計したものであり,形状は,外径55mm×内径22mm×長さ400mmの円筒形で,中心に金属管が通してあり,その金属管には多数の孔が開いていて,濾過された圧延油が金属管の孔を通過して金属管内に流入することができるようになっており,金属管の周囲には,金属管と平行な方向に圧縮されたドーナツ状のガラスウールがそのドーナツの穴に金属管が通るようにして充填され,ガラスウールの両端はフランジで止めてあるものであった。
仕様は,前記のとおり,具体的に充填されたガラスウールの嵩密度を測定,計算等して仕様を決定したものではなく,手触りの感覚で,三共理化学製濾過フィルターの手触りと同じになるようにして決定したものであるが,製造開始から平成11年8月24日までは嵩密度64kg/m^(3) ,厚さ325mmの円環状グラスウール70個を400mmの長さのパイプに通して圧縮して1本の濾過フィルターを制作することとしていたのであり,充填されたガラスウールの嵩密度は280kg/m^(3) (参考資料3,4,5,136ページ,参考資料3の5の資料8,参考資料3の1の89ページ,参考資料3の4:被告代表者4,5,136ページ,甲19,乙1の資料8,乙13の89ページ,乙34,46),シャフトも含めた1本の重さは550g,シャフト(325g)を除いた重量は225g/本であった(参考資料3の5の資料9,参考資料3の1の77ページ:乙1の資料9,乙13の77ページ)。
平成11年8月24日以降は,嵩密度80kg/m^(3) の円環状グラスウール65個を同じく400mmの長さのパイプに通して圧縮して1本の濾過フィルターを制作している(参考資料3の4:乙34,48)。
なお,請求人代表者がテラダ産業を通じて入手した平成11年当時のユニオン製の濾過フィルターは,嵩密度48kg/m^(3) ,厚さ25mmのグラスウールを94個を400mmの長さに積層したもので嵩密度は282kg/m^(3) ,ティアンドティの濾過フィルターは,嵩密度80kg/m^(3) ,厚さ25mmのグラスウールを62ないし65個を400mmの長さに積層したもので嵩密度は325kg/m^(3)ないし310kg/m^(3) であった(参考資料3,4ページ,参考資料3の1の89ページ:被告代表者4ページ,乙13の89ページ)。

(コ)請求人から被請求人への濾過フィルターの貸与
請求人は,被請求人から,平成11年4月当時及び現在販売している請求人製の濾過フィルターのサンプルを貸与してほしいといわれ,平成18年6月1日,株式会社トクヤマエムテックに嵩密度64kg/m^(3) と80kg/m^(3) のグラスウールを発注し,平成11年4月に販売開始した請求人製フィルターと平成18年6月当時の改良後被告製フィルターのサンプルを作成し,被請求人に渡した。(参考資料3の16,17ページ,参考資料3の16:被告代表者16,17ページ,甲5,乙44)

イ 請求人による実施の有無

(ア)請求人が製造販売していた濾過フィルターの仕様等
上記アで認定した事実からすれば,請求人は,平成11年3月ころから同年7月14日までに,川鉄西宮工場,日立金属安来工場,日新製鋼に対し,圧延油の洗浄のための濾過フィルターを製造,販売したこと,その形状は,直径55mm×長さ400mmの円筒形で,内部は直径22mmの金属製のパイプがあり,パイプには圧延油を吸引するための孔が複数開けられ,濾過された圧延油はパイプの孔を通過してパイプ内に流入できるようになっており,金属製パイプの周囲には円環状のグラスウールが積層し金属パイプと平行な方向に圧縮して充填され,その両端はフランジで止められており,グラスウールは,嵩密度64kg/m^(3) ,厚さ25mmのグラスウールを70個使用したもので,グラスウールの1本の繊維径は7μmであったことが認められる。そして,充填されたグラスウールの嵩密度は280kg/m^(3)であると計算される(計算式:64 × 70 × 25 ÷ 400=280)。

(イ)請求人製濾過フィルターの構成の分説
以上を前提に,請求人製濾過フィルターの構成を分説すると,次のとおりとなる。
a3* 圧延油が流れる円筒状の筒体の周壁に多数の貫通孔を形成し,前記円筒状の筒体の外周に複数個の円環状のグラスウールのブロックを装着すると共に,前記筒体の両端部に設けた一対の圧縮プレートの間で前記グラスウールのブロックを前記筒体の軸方向に圧縮した状態で前記筒体に固定して,前記グラスウールのブロックの外周面で濾過された圧延油が前記貫通孔を通過して前記筒体内に流れ込むようにしたフィルタモジュールであって,
b3* 前記グラスウールを構成する繊維の平均径を7μm,
c3* 前記グラスウールの嵩密度を280kg/m^(3) に設定すると共に,
d3* 下記式で定義されるグラスウールの捕捉孔の仮想孔径φを19.71μmに設定した
φ^(2)=D^(2)・(2500-M)/M
M:不織布の嵩密度(kg/m^(3) ) D:繊維の平均径(μm)
φ^(2)=7×7×(2500-280)/280=338.50
φ=19.71
e3* フィルタモジュール。

(ウ)請求人製濾過フィルターの構成要件の充足
上記の構成a3*ないしe3*は,いずれも本件特許発明1の構成要件A1ないしE1を充足しており,本件特許発明1と同一である。

(エ)まとめ
以上からすれば,請求人は,平成11年3月ころから本件特許の特許出願日である同年7月14日までの間に,本件特許発明1と同一の濾過フィルターを製造して,川鉄西宮工場,日立金属安来工場,日新製鋼に販売していたことが認められるので,本件特許発明1は,平成11年3月ころから本件特許の特許出願の前までに,請求人により公然実施されていた発明であると認められる。

そして,また,本件の証人1ないし4の証人尋問録音テープ及び当事者代表者の当事者尋問録音テープと各証拠に基づいても,上記と同様な認定ができ,この点からしても,請求人は,平成11年3月ころから本件特許の特許出願日である同年7月14日までの間に,本件特許発明1と同一の濾過フィルターを製造して,川鉄西宮工場,日立金属安来工場,日新製鋼に販売していたことが認められるので,本件特許発明1は,平成11年3月ころから本件特許の特許出願の前までに,請求人により公然実施されていた発明であると認められる。

ウ 被請求人の主張について

被請求人は,この点につき縷々主張を述べているが,いずれの主張も,前記に認定した事実を覆すに足りる根拠となるものではない。

(4)小括

以上のとおり,本件特許発明1は,本件特許の特許出願日である平成11年7月14日より前に,ユニオン(平成元年ころ),三共理化学(平成元年7月ころから平成6年ころ),請求人(平成11年3月ころ以降)により,公然実施されていた発明であるから,特許法29条1項2号に該当し,同法123条1項2号の無効理由を有するので,本件特許発明1の特許は,無効とされるべきものと認められる。

1-2 本件特許発明2についての検討

(1) ユニオンによる実施について

(ア)ユニオンによる実施については1-1の項で検討したとおりであり,ユニオン製濾過フィルターの構成の分説は1-1の項で検討した次のとおりである。
(イ)ユニオン製濾過フィルターの構成の分説
以上を前提に,ユニオン製濾過フィルターの構成を分説すると,次のとおりとなる。
a1* 圧延油が流れる円筒状の筒体の周壁に多数の貫通孔を形成し,前記円筒状の筒体の外周に複数個の円環状のグラスウールのブロックを装着すると共に,前記筒体の両端部に設けた一対の圧縮プレートの間で前記グラスウールのブロックを前記筒体の軸方向に圧縮した状態で前記筒体に固定して,前記グラスウールのブロックの外周面で濾過された圧延油が前記貫通孔を通過して前記筒体内に流れ込むようにしたフィルタモジュールであって,
b1* 前記グラスウールを構成する繊維の平均径を11.2μm(上記(1)(2)(3)について。なお,(4)は不明),11.8μm(上記(5)について),
c1* 前記グラスウールの嵩密度を(1)444.93kg/m^(3) ,(2)363.47kg/m^(3) ,(3)319.60kg/m^(3),(4)399.81kg/m^(3),(5) 426.13kg/m^(3)に設定すると共に,
d1* 下記式で定義されるグラスウールの捕捉孔の仮想孔径φを(2)27.15μm,(3)29.25μm,(4)25.67μm((1)(5)は記載を省略) に設定した
φ^(2)=D^(2)・(2500-M)/M
M:不織布の嵩密度(kg/m^(3)) D:繊維の平均径(μm)
【(2)363.47kg/m3】
φ^(2)=11.2×11.2×(2500-363.47)/363.47=737.35
φ=27.15
【(3)319.60kg/m^(3)】
φ^(2)=11.2×11.2×(2500-319.60)/319.602 =855.79
φ=29.25
【(4)399.81kg/m^(3)】
ただし,繊維の平均径が日金工衣浦工場と同じ11.2μmの場合。
φ^(2)=11.2×11.2×(2500-399.81)/399.812 =658.93
φ=25.67
【(1)(5)は記載を省略】
e1* フィルタモジュール。

(ウ)各濾過フィルターの構成要件の充足
上記(1)(5)の各構成c1*は,いずれも,少なくとも本件特許発明2の構成要件C2を充足していないので,本件特許発明2と同一ではない。
上記(2)ないし(3)の各構成d1*は,いずれも,少なくとも本件特許発明2の構成要件D2を充足しておらず,本件特許発明2と同一ではない。 上記(4)は,繊維の平均径が日金工衣浦工場と同じ11.2μmの場合の場合は,本件特許発明2の各構成要件を充足することとなるが,証拠上,繊維の平均径が不明であるから,本件特許発明2と同一であるとはいえない。

(エ)まとめ
以上からすれば,ユニオンは,平成元年当時,本件特許発明2と同一の濾過フィルターを製造していたとはいえないので,少なくとも日金工衣浦工場に販売していたことが認められるが,本件特許発明2は,平成元年当時,ユニオンにより,公然実施されていた発明であると認められない。

そして,また,本件の証人4の証人尋問録音テープ及び当事者代表者の当事者尋問録音テープと各証拠に基づいても,上記と同様な認定ができ,この点からしても,ユニオンは,平成元年当時,本件特許発明2と同一の濾過フィルターを製造していたとはいえないので,少なくとも日金工衣浦工場に販売していたことが認められるが,本件特許発明2は,平成元年当時,ユニオンにより,公然実施されていた発明であると認められない。

(2) 三共理化学による実施について

(ア)三共理化学による実施については1-1の項で検討したとおりであり,三共理化学製濾過フィルターの構成の分説は1-1の項で検討した次のとおりである。

(イ)三共理化学製濾過フィルターの構成の分説
以上を前提に,三共理化学製濾過フィルターの構成を分説すると,次のとおりとなる。
a2* 圧延油が流れる円筒状の筒体の周壁に多数の貫通孔を形成し,前記円筒状の筒体の外周に複数個の円環状のグラスウールのブロックを装着すると共に,前記筒体の両端部に設けた一対の圧縮プレートの間で前記グラスウールのブロックを前記筒体の軸方向に圧縮した状態で前記筒体に固定して,前記グラスウールのブロックの外周面で濾過された圧延油が前記貫通孔を通過して前記筒体内に流れ込むようにしたフィルタモジュールであって,
b2* 前記グラスウールを構成する繊維の平均径を11μm,
c2* 前記グラスウールの嵩密度を376kg/m^(3)に設定すると共に,
d2* 下記式で定義されるグラスウールの捕捉孔の仮想孔径φを26.14μmに設定した
φ^(2)=D^(2)・(2500-M)/M
M:不織布の嵩密度(kg/m^(3) ) D:繊維の平均径(μm)
φ^(2)=11×11×(2500-376)/376=683.52
φ=26.14
e2* フィルタモジュール。

(ウ) 三共理化学製濾過フィルターの構成要件の充足
上記の構成a2*ないしe2*は,いずれも本件特許発明2の構成要件A1,B2ないしD2,E1を充足しており,本件特許発明2と同一である。

(エ) まとめ
以上からすれば,三共理化学は,平成元年7月ころから平成6年ころまで,本件特許発明2と同一の濾過フィルターを製造して,日金工衣浦工場,日金工相模原工場,川鉄,日立金属安来工場に販売していたことが認められるので,本件特許発明2は,平成元年7月ころから平成6年ころまで,三共理化学により公然実施されていた発明であると認められる。

そして,また,本件の証人4の証人尋問録音テープ及び当事者代表者の当事者尋問録音テープと各証拠に基づいても,上記と同様な認定ができ,この点からしても,三共理化学は,平成元年7月ころから平成6年ころまで,本件特許発明2と同一の濾過フィルターを製造して,日金工衣浦工場,日金工相模原工場,川鉄,日立金属安来工場に販売していたことが認められるので,本件特許発明2は,平成元年7月ころから平成6年ころまで,三共理化学により公然実施されていた発明であると認められる。

(オ) 被請求人の主張について

被請求人は,この点につき縷々主張を述べているが,いずれの主張も,前記に認定した事実を覆すに足りる根拠となるものではない。

(3)請求人による実施について

(ア)請求人による実施については1-1の項で検討したとおりであり,請求人製濾過フィルターの構成の分説は1-1の項で検討した次のとおりである。

(イ)請求人製濾過フィルターの構成の分説
以上を前提に,請求人製濾過フィルターの構成を分説すると,次のとおりとなる。
a3* 圧延油が流れる円筒状の筒体の周壁に多数の貫通孔を形成し,前記円筒状の筒体の外周に複数個の円環状のグラスウールのブロックを装着すると共に,前記筒体の両端部に設けた一対の圧縮プレートの間で前記グラスウールのブロックを前記筒体の軸方向に圧縮した状態で前記筒体に固定して,前記グラスウールのブロックの外周面で濾過された圧延油が前記貫通孔を通過して前記筒体内に流れ込むようにしたフィルタモジュールであって,
b3* 前記グラスウールを構成する繊維の平均径を7μm,
c3* 前記グラスウールの嵩密度を280kg/m に設定すると共に,
d3* 下記式で定義されるグラスウールの捕捉孔の仮想孔径φを19.71μmに設定した
φ^(2)=D^(2)・(2500-M)/M
M:不織布の嵩密度(kg/m^(3) ) D:繊維の平均径(μm)
φ^(2)=7×7×(2500-280)/280=338.50
φ=19.71
e3* フィルタモジュール。

(ウ)請求人製濾過フィルターの構成要件の充足
上記の構成c3*は,少なくとも本件特許発明2の構成要件C2を充足しておらず,本件特許発明2と同一ではない。

(エ)まとめ
以上からすれば,請求人は,本件特許発明2と同一の濾過フィルターを製造していたとはいえないので,平成11年3月ころから本件特許の特許出願日である同年7月14日までの間に,濾過フィルターを製造して,川鉄西宮工場,日立金属安来工場,日新製鋼に販売していたことが認められるが,本件特許発明2は,平成11年3月ころから本件特許の特許出願の前までに,請求人により公然実施されていた発明であると認められない。

そして,また,本件の証人1ないし4の証人尋問録音テープ及び当事者代表者の当事者尋問録音テープと各証拠に基づいても,上記と同様な認定ができ,この点からしても,請求人は,本件特許発明2と同一の濾過フィルターを製造していたとはいえないので,平成11年3月ころから本件特許の特許出願日である同年7月14日までの間に,濾過フィルターを製造して,川鉄西宮工場,日立金属安来工場,日新製鋼に販売していたことが認められるが,本件特許発明2は,平成11年3月ころから本件特許の特許出願の前までに,請求人により公然実施されていた発明であると認められない。

(4)小括
以上のとおり,本件特許発明2は,本件特許の特許出願日である平成11年7月14日より前に,三共理化学(平成元年7月ころから平成6年ころ)により,公然実施されていた発明であるから,特許法29条1項2号に該当し,同法123条1項2号の無効理由を有するので,本件特許発明2の特許は,無効とされるべきものと認められる。

1-3 本件特許発明3についての検討

(1)「物の設計方法」の発明の公然実施について

ア 1-1の項で検討したとおり,本件特許の特許出願日である平成11年7月14日より前に,ユニオン(平成元年ころ),三共理化学(平成元年7月ころから平成6年ころ),請求人(平成11年3月ころ以降)により,フィルターの発明がそれぞれ公然実施されていた。

イ 「物」の発明が存在するためには,その前提として,その「物」の「物に関する特定事項」のみを構成要件とする「物の設計方法」の発明が先行して存在していなければならず,また,「物」の「物に関する特定事項」のみを特徴とする「物の設計方法」は「物」の発明と「物に関する特定事項」の点で共通し「物」の発明であるか「設計方法」という「方法」の発明であるかのカテゴリーの点でのみことなるもので,両者の発明は実質的には同一の発明と解されることからすると,その「物」の発明が公然実施されていたと認定できる場合においては,その「物に関する特定事項」のみを特徴とする「物の設計方法」の発明も公然実施されていたと解するのが相当であると認められる。

(2)ユニオンによる実施について

ア 1-1の項で認定したとおりのフィルタモジュールがユニオンにより公然実施されていたことからすると、その「物に関する特定事項」のみを特徴とする「物の設計方法」も公然実施されていたといえる。

イ ユニオンによる実施の有無

(ア)ユニオン製濾過フィルターの設計方法の構成の分説
以上を前提に,ユニオン製濾過フィルターの設計方法の構成を分説すると,次のとおりとなる。
a'1* 圧延油が流れる円筒状の筒体の周壁に多数の貫通孔を形成し,前記円筒状の筒体の外周に複数個の円環状のグラスウールのブロックを装着すると共に,前記筒体の両端部に設けた一対の圧縮プレートの間で前記グラスウールのブロックを前記筒体の軸方向に圧縮した状態で前記筒体に固定して,前記グラスウールのブロックの外周面で濾過された圧延油が前記貫通孔を通過して前記筒体内に流れ込むようにしたフィルタモジュールの設計方法であって,
b1* 前記グラスウールを構成する繊維の平均径を11.2μm(上記(1)(2)(3)について。なお,(4)は不明),11.8μm(上記(5)について),
c1* 前記グラスウールの嵩密度を(1)444.93kg/m^(3) ,(2)363.47kg/m^(3) ,(3)319.60kg/m^(3),(4)399.81kg/m^(3),(5) 426.13kg/m^(3)に設定すると共に,
d1* 下記式で定義されるグラスウールの捕捉孔の仮想孔径φを(2)27.15μm,(3)29.25μm,(4)25.67μm((1)(5)は記載を省略) に設定した
φ^(2)=D^(2)・(2500-M)/M
M:不織布の嵩密度(kg/m^(3)) D:繊維の平均径(μm)
【(2)363.47kg/m^(3)】
φ^(2)=11.2×11.2×(2500-363.47)/363.47=737.35
φ=27.15
【(3)319.60kg/m^(3)】
φ^(2)=11.2×11.2×(2500-319.60)/319.602 =855.79
φ=29.25
【(4)399.81kg/m^(3)】
ただし,繊維の平均径が日金工衣浦工場と同じ11.2μmの場合。
φ^(2)=11.2×11.2×(2500-399.81)/399.812 =658.93
φ=25.67
【(1)(5)は記載を省略】
e'1* フィルタモジュールの設計方法。

(イ)各濾過フィルターの設計方法の構成要件の充足
上記(1)(5)の各構成c1*は,いずれも,少なくとも本件特許発明3の構成要件C1を充足していないので,本件特許発明3と同一ではない。
上記(2)ないし(3)の各構成a'1*ないしe'1*は,いずれも本件特許発明3の構成要件A’1ないしE’1を充足しており,本件特許発明3と同一である。
上記(4)は,繊維の平均径が日金工衣浦工場と同じ11.2μmの場合の場合は,本件特許発明3の各構成要件を充足することとなるが,証拠上,繊維の平均径が不明であるから,本件特許発明3と同一であるとはいえない。

(ウ)まとめ
以上からすれば,ユニオンは,平成元年当時,本件特許発明3と同一の濾過フィルターの設計方法(上記(2)(3))で濾過フィルターを製造して,少なくとも日金工衣浦工場に販売していたことが認められるので,本件特許発明3は,平成元年当時,ユニオンにより,公然実施されていた発明であると認められる。

そして,また,本件の証人4の証人尋問録音テープ及び当事者代表者の当事者尋問録音テープと各証拠に基づいても,上記と同様な認定ができ,この点からしても,ユニオンは,平成元年当時,本件特許発明3と同一の濾過フィルターの設計方法(上記(2)(3))で濾過フィルターを製造して,少なくとも日金工衣浦工場に販売していたことが認められるので,本件特許発明3は,平成元年当時,ユニオンにより,公然実施されていた発明であると認められる。

(3)三共理化学による実施について

ア 1-1の項で認定したとおりのフィルタモジュールが三共理化学により公然実施されていたことからすると、その「物に関する特定事項」のみを特徴とする「物の設計方法」も公然実施されていたといえる。

(ア)三共理化学製濾過フィルターの設計方法の構成の分説
以上を前提に,三共理化学製濾過フィルターの設計方法の構成を分説すると,次のとおりとなる。
a'2* 圧延油が流れる円筒状の筒体の周壁に多数の貫通孔を形成し,前記円筒状の筒体の外周に複数個の円環状のグラスウールのブロックを装着すると共に,前記筒体の両端部に設けた一対の圧縮プレートの間で前記グラスウールのブロックを前記筒体の軸方向に圧縮した状態で前記筒体に固定して,前記グラスウールのブロックの外周面で濾過された圧延油が前記貫通孔を通過して前記筒体内に流れ込むようにしたフィルタモジュールであって,
b2* 前記グラスウールを構成する繊維の平均径を11μm,
c2* 前記グラスウールの嵩密度を376kg/m^(3)に設定すると共に,
d2* 下記式で定義されるグラスウールの捕捉孔の仮想孔径φを26.14μmに設定した
φ^(2)=D^(2)・(2500-M)/M
M:不織布の嵩密度(kg/m^(3) ) D:繊維の平均径(μm)
φ^(2)=11×11×(2500-376)/376=683.52
φ=26.14
e'2* フィルタモジュール。

(イ) 三共理化学製濾過フィルターの構成要件の充足
上記の構成a'2*ないしe'2*は,いずれも本件特許発明3の構成要件A’1ないしE’1を充足しており,本件特許発明3と同一である。

(ウ) まとめ
以上からすれば,三共理化学は,平成元年7月ころから平成6年ころまで,本件特許発明3と同一の濾過フィルターの設計方法で濾過フィルターを製造して,日金工衣浦工場,日金工相模原工場,川鉄,日立金属安来工場に販売していたことが認められるので,本件特許発明3は,平成元年7月ころから平成6年ころまで,三共理化学により公然実施されていた発明であると認められる。

そして,また,本件の証人4の証人尋問録音テープ及び当事者代表者の当事者尋問録音テープと各証拠に基づいても,上記と同様な認定ができ,この点からしても,三共理化学は,平成元年7月ころから平成6年ころまで,本件特許発明3と同一の濾過フィルターを製造して,日金工衣浦工場,日金工相模原工場,川鉄,日立金属安来工場に販売していたことが認められるので,本件特許発明3は,平成元年7月ころから平成6年ころまで,三共理化学により公然実施されていた発明であると認められる。

(4)請求人による実施について

ア 1-1の項で認定したとおりのフィルタモジュールが請求人により公然実施されていたことからすると、その「物に関する特定事項」のみを特徴とする「物の設計方法」も公然実施されていたといえる。

イ 請求人による実施の有無

(ア)請求人製濾過フィルターの設計方法の構成の分説
以上を前提に,請求人製濾過フィルターの設計方法の構成を分説すると,次のとおりとなる。
a'3* 圧延油が流れる円筒状の筒体の周壁に多数の貫通孔を形成し,前記円筒状の筒体の外周に複数個の円環状のグラスウールのブロックを装着すると共に,前記筒体の両端部に設けた一対の圧縮プレートの間で前記グラスウールのブロックを前記筒体の軸方向に圧縮した状態で前記筒体に固定して,前記グラスウールのブロックの外周面で濾過された圧延油が前記貫通孔を通過して前記筒体内に流れ込むようにしたフィルタモジュールの設計方法であって,
b3* 前記グラスウールを構成する繊維の平均径を7μm,
c3* 前記グラスウールの嵩密度を280kg/m^(3) に設定すると共に,
d3* 下記式で定義されるグラスウールの捕捉孔の仮想孔径φを19.71μmに設定した
φ^(2)=D^(2)・(2500-M)/M
M:不織布の嵩密度(kg/m^(3) ) D:繊維の平均径(μm)
φ^(2)=7×7×(2500-280)/280=338.50
φ=19.71
e'3* フィルタモジュールの設計方法。

(イ)請求人製濾過フィルターの設計方法の構成要件の充足
上記の構成a'3*ないしe'3*は,いずれも本件特許発明3の構成要件A’1ないしE’1を充足しており,本件特許発明3と同一である。

(ウ)まとめ
以上からすれば,請求人は,平成11年3月ころから本件特許の特許出願日である同年7月14日までの間に,本件特許発明3と同一の濾過フィルターの設計方法で濾過フィルターを製造して,川鉄西宮工場,日立金属安来工場,日新製鋼に販売していたことが認められるので,本件特許発明3は,平成11年3月ころから本件特許の特許出願の前までに,請求人により公然実施されていた発明であると認められる。

そして,また,本件の証人1ないし4の証人尋問録音テープ及び当事者代表者の当事者尋問録音テープと各証拠に基づいても,上記と同様な認定ができ,この点からしても,請求人は,平成11年3月ころから本件特許の特許出願日である同年7月14日までの間に,本件特許発明3と同一の濾過フィルターの設計方法で濾過フィルターを製造して,川鉄西宮工場,日立金属安来工場,日新製鋼に販売していたことが認められるので,本件特許発明3は,平成11年3月ころから本件特許の特許出願の前までに,請求人により公然実施されていた発明であると認められる。

(5)小括

以上のとおり,本件特許発明3は,本件特許の特許出願日である平成11年7月14日より前に,ユニオン(平成元年ころ),三共理化学(平成元年7月ころから平成6年ころ),請求人(平成11年3月ころ以降)により,公然実施されていた発明であるから,特許法29条1項2号に該当し,同法123条1項2号の無効理由を有するので,本件特許発明3の特許は,無効とされるべきものと認められる。

2 出願前に公然実施された発明からの容易性による本件特許の無効理由の有無について

2-1 本件特許発明1についての検討

(1) 上記1-1の項で認定した通り,本件特許発明1は公然実施された発明である。
そして,公然実施された発明においては,
・グラスウールを構成する繊維の平均径が7μm,11μm,11.2μmのもの
・グラスウールの嵩密度が280kg/m^(3) ,319.60kg/m^(3) ,363.47kg/m^(3) ,376kg/m^(3) のもの
が使用されている。
そして,グラスウールを用いるフィルタモジュールにおいては,繊維径を一定とすれば,嵩密度が大きくなれば補足効率が大きくかつ繊維の抜けが少なく,目詰まりしやすいものであり,補足効率を大きく・繊維の抜けを少なくすることと,目詰まりとはトレードオフの関係にあることは当業者の技術常識である。
また,繊維径を変える場合,繊維の平均径が大きくなれば補足効率を落とさないために嵩密度を大きくする必要があり,繊維径が小さくなれば繊維の抜け及び目詰まりが起こりやすくなることは当業者の技術常識である。
してみると,グラスウールを用いるフィルタモジュールにおいては,補足効率が大きくかつ繊維の抜けが少なくすることと目詰まりとのトレードオフの関係における最適のバランスを見出すべく,グラスウールを構成する繊維の平均径とグラスウールの嵩密度の数値範囲を調整することは,当業者が適宜になしえることである。
そうすると,上記の範囲のグラスウールを構成する繊維の平均径とグラスウールの嵩密度が公然実施されているのであるから,それらの数値を参酌して,それらの数値の間の数値やそれらの数値の近傍の数値に設定することは,当業者が容易に想到することである。
そして,参考資料1を参酌すれば,これらの当業者が容易に想到することができる繊維の平均径とグラスウールの嵩密度の組み合わせのものの大半は本件特許発明1の構成要件D1を充当すると認められるものである。
そして,また,これらの当業者が容易に想到することができる繊維の平均径とグラスウールの嵩密度の組み合わせのもので,かつ,本件特許発明1の構成要件D1を充当すると認められるものは,公然実施された発明と同様の作用効果を奏するものであるから,公然実施された発明と比べて格別顕著な効果を奏するものではない。
したがって,本件特許発明1は,その数値範囲の全領域において,上記公然実施されていた発明から容易に発明することができたものである。

(2)小括

以上のとおり,本件特許発明1は,本件特許の特許出願日である平成11年7月14日より前に,ユニオン(平成元年ころ),三共理化学(平成元年7月ころから平成6年ころ),請求人(平成11年3月ころ以降)により,公然実施されていた発明から容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けられないものであり,同法123条1項2号の無効理由を有するので,本件特許発明1の特許は,無効とされるべきものと認められる。

2-2 本件特許発明2についての検討

(1) 本件特許発明2は本件特許発明1に含まれるものである。
そして,上記1-1の項で認定した通り,本件特許発明1は,その数値範囲の全領域において,上記公然実施されていた発明から容易に発明することができたものである。
したがって,本件特許発明2は,その数値範囲の全領域において,上記公然実施されていた発明から容易に発明することができたものである。

(2)小括

以上のとおり,本件特許発明2は,本件特許の特許出願日である平成11年7月14日より前に,ユニオン(平成元年ころ),三共理化学(平成元年7月ころから平成6年ころ),請求人(平成11年3月ころ以降)により,公然実施されていた発明から容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けられないものであり,同法123条1項2号の無効理由を有するので,本件特許発明2の特許は,無効とされるべきものと認められる。

2-3 本件特許発明3についての検討

(1)公然実施された「物」の発明からの容易性についての検討

ア 1-1の項で認定したとおり,ユニオン,三共理化学,請求人の3者によりフィルタモジュールが公然実施されている。
そうすると、係る「物」の発明を認識できる当業者は,係る「物」の「物に関する特定事項」に着目することができるので,係る「物」の「物に関する特定事項」のみを特徴とする「物の設計方法」を容易に想到することができるものと認められる。
したがって,「ユニオン,三共理化学,請求人の3者により公然実施されたフィルタモジュールについての設計方法」は,当業者が容易に発明をすることができたものである。
また,2-1の項で認定したとおり,「ユニオン,三共理化学,請求人の3者により公然実施されたフィルタモジュール」のそれぞれの数値を参酌して,それらの数値の間の数値やそれらの数値の近傍の数値に設定することも当業者が適宜になしえることである。
そして,参考資料1を参酌すれば,これらの当業者が容易に想到することができる繊維の平均径とグラスウールの嵩密度の組み合わせのものの大半は本件特許発明3の構成要件D1を充当すると認められるものである。
そして,また,これらの当業者が容易に想到することができる繊維の平均径とグラスウールの嵩密度の組み合わせのもので,かつ,本件特許発明3の構成要件D1を充当すると認められるものは,公然実施された発明と同様の作用効果を奏するものであるから,公然実施された発明と比べて格別顕著な効果を奏するものではない。
したがって,本件特許発明3は,その数値範囲の全領域において,上記公然実施されていた発明から容易な発明から容易に発明することができたものである。

イ 小括
以上のとおり,本件特許発明3は,本件特許の特許出願日である平成11年7月14日より前に,ユニオン(平成元年ころ),三共理化学(平成元年7月ころから平成6年ころ),請求人(平成11年3月ころ以降)により,公然実施されていた発明から容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けられないものであり,同法123条1項2号の無効事由を有するので,本件特許発明3の特許は,無効とされるべきものと認められる。

(2)公然実施された「物の設計方法」の発明からの容易性についての検討
上記1-3の項で認定した通り,ユニオン,三共理化学,請求人の3者により,公然実施されたフィルタモジュールの「物に関する特定事項」のみを特徴とする「物の設計方法」の発明が公然実施されている。
また,2-1の項で認定したとおり,「ユニオン,三共理化学,請求人の3者により公然実施されたフィルタモジュール」のそれぞれの数値を参酌して,それらの数値の間の数値やそれらの数値の近傍の数値に設定することも当業者が適宜になしえることである。
そして,参考資料1を参酌すれば,これらの当業者が容易に想到することができる繊維の平均径とグラスウールの嵩密度の組み合わせのものの大半は本件特許発明3の構成要件D1を充当すると認められるものである。
そして,また,これらの当業者が容易に想到することができる繊維の平均径とグラスウールの嵩密度の組み合わせのもので,かつ,本件特許発明3の構成要件D1を充当すると認められるものは,公然実施された発明と同様の作用効果を奏するものであるから,公然実施された発明と比べて格別顕著な効果を奏するものではない。
したがって,本件特許発明3は,その数値範囲の全領域において,上記公然実施されていた発明から容易な発明から容易に発明することができたものである。

イ 小括
以上のとおり,本件特許発明3は,本件特許の特許出願日である平成11年7月14日より前に,ユニオン(平成元年ころ),三共理化学(平成元年7月ころから平成6年ころ),請求人(平成11年3月ころ以降)により,公然実施されていた発明から容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けられないものであり,同法123条1項2号の無効理由を有するので,本件特許発明3の特許は,無効とされるべきものと認められる。

VII むすび

以上のとおりであるから,本件特許発明1ないし3は,甲第1?26号証及び参考資料1ないし参考資料4の25及び証人1?4の証言並びに請求人本人の陳述によれば,出願前に公然実施された発明であるから,特許法第29条第1項第2号の規定に該当し特許を受けることができないものであり,本件発明1ないし3に係る特許は,同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。
また,本件特許発明1ないし3は,甲第1?26号証及び参考資料1ないし参考資料4の25及び証人1?4の証言並びに請求人本人の陳述によれば,出願前に公然実施された発明に基づいて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件発明1ないし3に係る特許は,同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-30 
結審通知日 2008-10-02 
審決日 2008-10-15 
出願番号 特願平11-200085
審決分類 P 1 113・ 112- Z (B01D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 服部 智  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 大黒 浩之
中村 敬子
登録日 2005-03-18 
登録番号 特許第3657466号(P3657466)
発明の名称 フィルタモジュール  
代理人 石井 義人  
代理人 村林 隆一  
代理人 井上 裕史  
代理人 内山 邦彦  
代理人 杉本 勝徳  
代理人 石田 大輔  
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