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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1189732
審判番号 不服2006-4483  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-09 
確定日 2008-12-17 
事件の表示 平成 8年特許願第229328号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月24日出願公開、特開平10- 52539〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成8年8月12日の出願であって、平成18年2月7日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年3月9日付けで本件審判請求がされるとともに、同月20日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成18年3月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正事項及び補正目的
本件補正は特許請求の範囲の補正を含んでおり、本件補正後の記載は次のとおりである(下線部が補正箇所)。
【請求項1】 複数列の変動表示部にそれぞれ複数の図柄を可変表示可能な可変表示装置を備え、始動口への遊技球の入賞により抽出される大当り乱数によって大当り判定を行うとともに、当該大当り判定に基づいて前記可変表示装置における停止図柄を決定し、前記可変表示装置における可変表示遊技の結果が特別停止態様となったことに基づき、特別変動入賞装置の開閉扉を開放する特別遊技状態を発生可能な遊技機において、
前記図柄は複数の通常図柄と複数の確率変動図柄とから成り、
前記特別停止態様の発生が前記確率変動図柄での特別停止態様の発生であった場合に、前記特別停止態様の発生確率が通常より高い確率変動遊技状態を発生させる特別遊技状態発生容易化手段と、
前記確率変動遊技状態において、再度前記確率変動図柄での特別停止態様の発生があった場合に、前記確率変動遊技状態を継続して発生させる特別遊技状態発生容易化継続手段と、
前記確率変動遊技状態が継続して発生している間において、特別停止態様の総数に対応する特図乱数の数と確率変動図柄の数とにより演算される確率変動図柄発生率を減少させて前記確率変動遊技状態の継続を抑制する継続抑制手段と、を備え、
前記継続抑制手段は、前記確率変動遊技状態が継続して発生している間に確率変動図柄が特別停止態様になる毎に、前記特図乱数の数を1つ減算すると共に確率変動図柄の数を1つ減算して確率変動図柄発生率を減少させ、該確率変動図柄発生率の減少に伴って一度特別停止態様になった確率変動図柄を各変動表示部から削除して当該確率変動図柄を除いた図柄により特別停止態様を決定することを特徴とする遊技機。
【請求項2】 前記継続抑制手段による特別停止態様の決定は、前記確率変動図柄により前記特別停止態様を発生させた場合に一度特別停止態様になった確率変動図柄として記憶され、且つ、前記通常図柄で特別停止態様を発生させた場合にクリアされる確率変動図柄削除データに基づいて行われ、
前記可変表示装置による可変表示は、前記確率変動図柄削除データに基づく確率変動図柄を除いて行われることを特徴とする請求項1に記載の遊技機。

本件補正は、補正前の「継続抑制手段」を限定することにより特許請求の範囲を減縮するものと認める。そこで、本件補正後の請求項1,2に係る発明については、独立特許要件の判断を行う。

2.新規事項追加
上記請求項1の記載によれば、「継続抑制手段」は「確率変動遊技状態が継続して発生している間に・・・一度特別停止態様になった確率変動図柄を各変動表示部から削除」する機能を有している。
願書に最初に添付した明細書(以下、添付図面を含めて「当初明細書」という。)には、「ステップS178で確変削除図柄情報をセットする。これは、特別図柄表示装置4の表示部4a(例えば、LCD)に大当り発生の可能性がある図柄を表示する際に、確変削除図柄を除いて表示するために、情報のセットを行うものである(図8参照)。これにより、遊技者は確変削除図柄を容易に認識することが可能になる。」(段落【0049】)等の記載があるから、遊技機全体として「確率変動遊技状態が継続して発生している間に・・・一度特別停止態様になった確率変動図柄を各変動表示部から削除」する機能を有することが、当初明細書に記載されていることは認める。
しかし、「継続抑制手段」は「確率変動図柄発生率を減少させて前記確率変動遊技状態の継続を抑制する」手段であるから、「確変削除図柄情報をセットする」機能が継続抑制手段の機能であることは当初明細書の記載から理解できるけれども、削除された図柄を「各変動表示部から削除」する機能まで有していることまでは、当初明細書の記載からは読み取れない。
したがって、本件補正が当初明細書に記載された範囲でされたと認めることはできず、平成14年法律第24号による改正前の特許法17条の2第3項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。

3.独立特許要件欠如その1
上記のとおり、請求項1の記載によれば、「継続抑制手段」は「確率変動遊技状態が継続して発生している間に・・・一度特別停止態様になった確率変動図柄を各変動表示部から削除」する機能を有しており、それは請求項1を引用する請求項2にも当てはまる。
ところが、請求項2は「継続抑制手段による特別停止態様の決定」及び「可変表示装置による可変表示」についてそれぞれ請求項1を限定するところ、後者について「前記確率変動図柄削除データに基づく確率変動図柄を除いて行われる」と限定しているのだから、「確率変動図柄削除データに基づく確率変動図柄を除」くのは「継続抑制手段」以外であると解するのが自然であり、それは請求項1の記載と整合しない。
そうすると、一度特別停止態様になった確率変動図柄を各変動表示部から削除することを司る手段が2つあることになり、同一機能の手段が2つ必要とは考えられないから、請求項2の発明を認定する上で、特許請求の範囲の記載は著しく不明確であり、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。請求項2の記載が正しいのだとすると、請求項1の記載が誤記であり、そのため請求項1,2の発明を認定する上でも、特許請求の範囲の記載は著しく不明確である。
したがって、本件補正後の請求項1,2に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は平成18年法律第55号による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。

4.独立特許要件欠如その2
(1)補正発明の認定
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は、本件補正後の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定されるべきものであるが、本件補正後の特許請求の範囲には前項及び前々項で指摘した問題点があるため、次のように認定する。仮に、この認定が正しくないとすれば、前項又は前々項の理由により、本件補正は却下される。
「複数列の変動表示部にそれぞれ複数の図柄を可変表示可能な可変表示装置を備え、始動口への遊技球の入賞により抽出される大当り乱数によって大当り判定を行うとともに、当該大当り判定に基づいて前記可変表示装置における停止図柄を決定し、前記可変表示装置における可変表示遊技の結果が特別停止態様となったことに基づき、特別変動入賞装置の開閉扉を開放する特別遊技状態を発生可能な遊技機において、
前記図柄は複数の通常図柄と複数の確率変動図柄とから成り、
前記特別停止態様の発生が前記確率変動図柄での特別停止態様の発生であった場合に、前記特別停止態様の発生確率が通常より高い確率変動遊技状態を発生させる特別遊技状態発生容易化手段と、
前記確率変動遊技状態において、再度前記確率変動図柄での特別停止態様の発生があった場合に、前記確率変動遊技状態を継続して発生させる特別遊技状態発生容易化継続手段と、
前記確率変動遊技状態が継続して発生
している間において、特別停止態様の総数に対応する特図乱数の数と確率変動図柄の数とにより演算される確率変動図柄発生率を減少させて前記確率変動遊技状態の継続を抑制する継続抑制手段と、を備え、
前記継続抑制手段は、前記確率変動遊技状態が継続して発生している間に確率変動図柄が特別停止態様になる毎に、前記特図乱数の数を1つ減算すると共に確率変動図柄の数を1つ減算して確率変動図柄発生率を減少させ、該確率変動図柄発生率の減少に伴って一度特別停止態様になった確率変動図柄を除いた図柄により特別停止態様を決定し、
前記可変表示装置による可変表示は、前記確率変動遊技状態が継続して発生している間に一度特別停止態様になった確率変動図柄を各変動表示部から削除して行われる遊技機。」

(2)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-802号公報(以下「引用例」という。)には、以下のア?シの記載が図示とともにある。
ア.「可変表示装置の表示結果が予め定めた特定表示結果となったことに基づいて特定遊技状態となって遊技者に所定の遊技価値を付与する弾球遊技機において、
予め定められた所定条件の成立に基づいて前記可変表示装置の表示結果が前記特定表示結果を表示する確率をその後の所定回数の特定遊技状態が生起されるまで向上する確率向上手段と、
該確率向上手段によって向上された確率向上期間中に再度前記所定条件が成立したときに、前記所定回数の値を更新する確率向上回数更新手段と、
前記確率向上手段により向上された回数の累計が所定値であるか否かを判定する判定手段と、
該判定手段の判定結果に応じて確率向上に関する制御を抑制する抑制手段と、を備えたことを特徴とする弾球遊技機。」(【請求項1】)
イ.「前記抑制手段は、前記所定条件の成立確率を抑制する所定条件成立抑制手段であることを特徴とする請求項1記載の弾球遊技機。」(【請求項4】)
ウ.「可変表示部材38a?38cは、複数(3つ)の識別情報(図柄)を表示することが可能な回転ドラム38a?38cで構成され、後述する始動口装置4の始動入賞口5又は電動始動入賞口6に打玉が入賞したことに基づいて可変表示し、その表示結果が予め定めた大当り図柄の組合せ(特定表示結果)となったときに、特定遊技状態となって、後述する可変入賞球装置10の開閉板11を所定の態様で開放駆動する。」(段落【0009】)
エ.「可変表示装置30の下方には、複数の回転ドラム38a?38cが設けられている。この回転ドラム38a?38cが特定遊技状態の発生に直接的に関係する特別図柄表示装置を構成するものである。・・・各回転ドラム38a?38cに表示される図柄のうち、3つの図柄を遊技者が視認できるようになっており、このそれぞれ3つの図柄合計9個の図柄のうち、後述する図15に示すように、中央横ライン及び斜め(対角線)ラインの合計3つのライン上に並んだ図柄によって当りか否かが決定される。」(段落【0017】)
オ.「回転ドラム38a?38cの外周面に描かれる図柄は、図3に示す図柄シール41a?41cを貼付することによって形成されている。図3は、図柄シール41a?41cの展開図である。本実施例における図柄シール41a?41cには、「7(CHANSE)」「7(赤)」「7(緑)」「BIG」「BAR・BAR(二段表示)」「JP」の6種類の文字情報と「▽」の12個の図形情報とが形成され、このうち、同一の文字情報及び「7(赤)・7(緑)・7(赤)」「7(緑)・7(赤)・7(緑)」の8通りの組合せが中央横当りラインと斜め当りラインとに表示された場合に特定遊技状態となる。つまり、特定遊技状態となる態様は、全部で24通りとなる。なお、この24通りの特定遊技状態のうち、「7(CHANSE)」及び「BIG」で特定遊技状態となった場合には、回転ドラム38a?38c及び普通図柄用可変表示器35が特定表示結果を表示する確率が向上するようになっている。したがって、「7(CHANSE)」及び「BIG」は、特別大当り図柄を構成することになる。」(段落【0018】)
カ.「始動入賞口5及び電動始動入賞口6に打玉が入賞して始動入賞玉検出器8、9をONさせ、始動信号S1が導出されると、その始動信号S1の立ち上がり時にランダム1及びランダム2又はランダム3からそれぞれ1つの値が抽出される。ランダム1は、図10に示すように、大当り図柄か否かを決定するためのランダム数であり、後述する図16に示すように、電源投入後割り込み処理毎に「0?247」の248通りの数値が刻々と変動しており、ランダム2は、大当り図柄の配列パターンを決定するためのランダム数であり、電源投入後割り込み処理毎及びその割り込み処理の余り時間毎に「0?23」の24通りの数値が刻々と変動」(段落【0026】)
キ.「回転ドラム38a?38cの停止時に表示される図柄が大当り図柄の組合せとなる態様は、図15に示す3つの当りライン?を考慮にいれた場合には前記したように24通りあり、この24通りの組合せ態様が図14に示すように「0?23」のランダム2に対応せしめられている。そして、その大当り組合せ態様のうち、「7(CHANSE)」及び「BIG」の特別大当り図柄で特定遊技状態となった場合(どの当りラインでもよい)には、普通図柄用可変表示器35及び回転ドラム38a?38cが特定表示結果を表示する確率が向上するよう制御される。」(段落【0033】)
ク.「大当りが発生し、その大当りが確率を向上せしめる確変図柄(特別大当り表示結果)であるときには、確率変動カウンタC1の値が常時変動されるようになっているため、確率向上期間中に確変図柄が表示される限りは、確率向上期間が無制限に延長される現象も生じる。このような無制限の延長をなくすために次の図18のフロー図に説明するように、確率変動を規制する処理がなされる。・・・S330で確率変動規制カウンタC2の値が「6以上」であるか否かを判別する。・・・確率変動規制カウンタC2の値が「6以上」であると判別されたときには、許容された累計の範囲を超したとして、S360で確率変動規制カウンタC2の値を「0」にリセットすると共に、S370で確率変動カウンタC1の値も「0」にリセットしてサブルーチンを終了する。このS370で確率変動カウンタC1の値が「0」にされると、以後の処理において高確率に変更されないで低確率のままで回転ドラム38a?38cの変動動作が実行されることとなり、確率向上期間が延長されることはない。」(段落【0037】)
ケ.「上記した実施例では、確率向上を抑制する手段として、確率変動規制カウンタC2の値が所定の累積数に到達したときに確率変動カウンタC1を「0」にリセットして直ちに確率向上期間の延長を禁止するものを示したが、確率向上の原因となる確変図柄の出現を禁止又は抑制することにより、確率向上を抑制するようにしても良い。」(段落【0039】)
コ.「確変図柄の出現を抑制する動作について図21を参照して説明すると、S500で大当りか否かが判別され、大当りでなければ、以下の処理を実行することなくサブルーチンを終了し、大当りであれば、S510でランダム2の値が一部の確変図柄に対応する「18,20,21,23」のいずれかであるか否かが判別され、そうでなければ、以下の処理を実行することなくサブルーチンを終了し、いずれかの値であれば、S520で確率変動規制カウンタC2の値が「6以上」か否かが判別される。「6以上」でない場合には、未だ累積計数値が予定値を超えていないので、以下の処理を実行することなくサブルーチンを終了し、「6以上」であれば、累積計数値が予定値を超えているので、S530でランダム2の値「18,20,21,23」が確変図柄に対応しない「6,8,12,14」にそれぞれ書き換えられてサブルーチンを終了する。このように、図21に示す処理は、累積計数値が予定値を超えた場合に、確変図柄による大当りの出現確率を下げている(完全に出ない訳ではない)ので、確率向上期間の延長を抑制することができる。」(段落【0040】)
サ.「可変表示器91a,91bは、ドット・マトリックスLEDで構成され、左側の可変表示器91aは、0?9の10種類の数字を順次変動表示し、右側の可変表示器91bは、0?9までの数字とFの英文字の11種類の数字を順次変動表示するようになっている。そして、それらの停止時の図柄の組合せ(表示結果)が「同一数字のゾロ目」の組合せとなったときには、特定表示結果が表示されたと判定されて前記したように玉受部材75を一定時間開放する。・・・通常の遊技状態においては、1/330の低確率で特定表示結果が導出され、権利発生遊技状態の発生が特定表示結果のうちの「3・3」「5・5」及び「7・7」のゾロ目によって発生したときに1/33の高確率に変更され、・・・」(段落【0049】)
シ.「上記した実施例に係る可変表示装置113の停止時に表示される図柄が特定表示結果せとなる態様は、同一数字のゾロ目であるため、0?9の10通りあるが、そのうち、「3・3・3」「5・5・5」及び「7・7・7」の特別表示結果(確変図柄)で権利発生遊技状態となった場合には、可変表示装置113が特定表示結果を表示する確率が向上するよう制御される。したがって、可変表示装置113の表示結果が確変図柄を表示する限り、確率向上期間が延長されるので、短い時間間隔で権利発生遊技状態が連続的に発生するので、遊技場に多大な損害を与えることとなるが、そのような不利益を防止するために、可変表示装置113の制御において、前記した図18,図20,図21と同様な処理を行えば、短い時間間隔での権利発生遊技状態の連続的発生を防止して遊技場に多大な損害を与えることがないようにすることができる。」(段落【0057】)

(3)引用例記載の発明の認定
記載ウ,サ等によれば、記載アの「可変表示装置」は、複数の可変表示部材又は可変表示器(以下では「可変表示器」と総称する。)、からなり、それぞれの可変表示器は複数の図柄(図柄には数字・英文字を含む。)を変動表示するものである。そして、記載ウ,カによれば、始動入賞口又は電動始動入賞口(以下「始動口」と総称する。)に打玉が入賞したことに基づいて、各可変表示器は変動表示(「可変表示」と表現される場合もあるが、同義と認める。)し、「ランダム1」によって、その表示結果が予め定めた大当り図柄の組合せ(記載アの「特定表示結果」)となるかどうかが決定される。
記載アの「予め定められた所定条件の成立」の具体例は、記載カ,キ,シにあるように、「ランダム2」によって決定される「大当り図柄の配列パターン」が特定のパターン(記載キの「7(CHANSE)」及び「BIG」の特別大当り図柄又は記載シの「3・3・3」「5・5・5」及び「7・7・7」の特別表示結果)になることである。
したがって、引用例には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「複数の図柄を変動表示する複数の可変表示器からなる可変表示装置の表示結果が予め定めた特定表示結果となったことに基づいて、可変入賞球装置の開閉板を所定の態様で開放駆動する特定遊技状態となる弾球遊技機において、
始動口に打玉が入賞したことに基づいて、ランダム1及びランダム2を抽出するとともに、各可変表示器は変動表示し、ランダム1によって、その表示結果が予め定めた特定表示結果となるかどうかが決定される仕組みになっており、
特定表示結果となる場合の図柄配列パターンはランダム2によって決定され、その結果が特定のパターンになるという所定条件が成立した場合に、前記可変表示装置の表示結果が前記特定表示結果を表示する確率をその後の所定回数の特定遊技状態が生起されるまで向上する確率向上手段と、
該確率向上手段によって向上された確率向上期間中に再度前記所定条件が成立したときに、前記所定回数の値を更新する確率向上回数更新手段と、
前記確率向上手段により向上された回数の累計が所定値であるか否かを判定する判定手段と、
該判定手段の判定結果に応じて、前記所定条件の成立確率を抑制する所定条件成立抑制手段とを備えた弾球遊技機。」(以下「引用発明」という。)

(4)補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
引用発明の「複数の図柄を変動表示する複数の可変表示器」は補正発明の「複数列の変動表示部」に相当するから、補正発明と引用発明の「可変表示装置」には何の相違もない。
引用発明の「打玉」及び「ランダム1」は、補正発明の「遊技球」及び「遊技球の入賞により抽出される大当り乱数」に相当し、引用発明では「ランダム1によって、その表示結果が予め定めた特定表示結果となるかどうかが決定される仕組み」になっているのだから、「大当り乱数によって大当り判定を行」っており、「特別停止態様」(補正発明)と「特定表示結果」(引用発明)には表現上の相違しかない。そして、引用発明の「可変入賞球装置の開閉板を所定の態様で開放駆動する特定遊技状態」と補正発明の「特別変動入賞装置の開閉扉を開放する特別遊技状態」にも相違はない。
引用発明における「可変表示装置の表示結果が前記特定表示結果を表示する確率を・・・向上」した状態と、補正発明の「特別停止態様の発生確率が通常より高い確率変動遊技状態」に相違はなく、引用発明の図柄には「特定のパターン」を構成する図柄(補正発明の「確率変動図柄」に相当)とそれ以外の図柄(補正発明の「通常図柄」に相当)があり、実施例(記載オ又は記載サ)ではそれぞれ複数あるから、「前記図柄は複数の通常図柄と複数の確率変動図柄とから成」ることは、補正発明と引用発明の一致点として扱う。当然、引用発明の「特定のパターン」が補正発明の「確率変動図柄での特別停止態様」に相当するとともに、引用発明は「特別遊技状態発生容易化手段」を備えている。
さらに、引用発明では「該確率向上手段によって向上された確率向上期間中に再度前記所定条件が成立したときに、前記所定回数の値を更新」しており、更新すれば「確率変動遊技状態」は継続されるから、引用発明の「確率向上回数更新手段」と補正発明の「特別遊技状態発生容易化継続手段」にも相違はない。ここで、更新又は継続の条件である「確率向上期間中に再度前記所定条件が成立」(引用発明)と「確率変動遊技状態において、再度前記確率変動図柄での特別停止態様の発生」にも表現上の相違しかない。
引用発明の「所定条件の成立確率を抑制する所定条件成立抑制手段」は、その具体的抑制内容は別として、補正発明でいう「前記確率変動遊技状態が継続して発生している間において、・・・確率変動図柄発生率を減少させて前記確率変動遊技状態の継続を抑制する継続抑制手段」に相当する。
そして、引用発明の「弾球遊技機」が補正発明の「遊技機」に含まれることはいうまでもない。
したがって、補正発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
〈一致点〉「複数列の変動表示部にそれぞれ複数の図柄を可変表示可能な可変表示装置を備え、始動口への遊技球の入賞により抽出される大当り乱数によって大当り判定を行うとともに、当該大当り判定に基づいて前記可変表示装置における停止図柄を決定し、前記可変表示装置における可変表示遊技の結果が特別停止態様となったことに基づき、特別変動入賞装置の開閉扉を開放する特別遊技状態を発生可能な遊技機において、
前記図柄は複数の通常図柄と複数の確率変動図柄とから成り、
前記特別停止態様の発生が前記確率変動図柄での特別停止態様の発生であった場合に、前記特別停止態様の発生確率が通常より高い確率変動遊技状態を発生させる特別遊技状態発生容易化手段と、
前記確率変動遊技状態において、再度前記確率変動図柄での特別停止態様の発生があった場合に、前記確率変動遊技状態を継続して発生させる特別遊技状態発生容易化継続手段と、
前記確率変動遊技状態が継続して発生している間において、確率変動図柄発生率を減少させて前記確率変動遊技状態の継続を抑制する継続抑制手段と、を備えた遊技機。」
〈相違点1〉継続抑制に当たり、補正発明では「特図乱数の数を1つ減算すると共に確率変動図柄の数を1つ減算して確率変動図柄発生率を減少させ、該確率変動図柄発生率の減少に伴って一度特別停止態様になった確率変動図柄を除いた図柄により特別停止態様を決定」するのに対し、引用発明ではそのようにしていない点。
〈相違点2〉同じく継続抑制に当たり、補正発明では「前記確率変動遊技状態が継続して発生している間に確率変動図柄が特別停止態様になる毎に、・・・確率変動図柄発生率を減少させ」るのに対し、引用発明では「確率向上手段により向上された回数の累計が所定値である」場合にのみ継続抑制を行う点。
〈相違点3〉補正発明では「前記可変表示装置による可変表示は、前記確率変動遊技状態が継続して発生している間に一度特別停止態様になった確率変動図柄を各変動表示部から削除して行われる」のに対し、引用発明ではそのようにしていない点。

(5)相違点の判断及び補正発明の独立特許要件の判断
〈相違点1について〉
引用例の記載キにあるように、引用発明の実施例では、ランダム2(補正発明の「特図乱数」に相当)の数と特定表示結果となる場合の図柄配列パターン数が一致しており、より具体的には、24のパターンのうち6パターンが「特定のパターン」となっている。これは、24本のくじから当たりくじ(6本)を引くくじ引き抽選と同じ原理である。
原審における拒絶理由及び拒絶査定で指摘したとおり、くじ引き抽選においては、当たりくじを元に戻さない手法が多く採用されており、くじ総数及び当たり総数が極めて多い場合は別として、当たりくじが出ることにより、当たり確率が減少することは誰もが知っている事実である。
そして、引用発明は、長期間に亘って確率向上期間が延長されることを防ぐために「所定条件成立抑制手段」、すなわち、確率変動図柄発生率を減少させる手段を採用したのであるから、同手段としては、確率変動図柄発生率を減少させる手段としていかなる手段を採用してもよいことは明らかであり、上記のとおりくじ引き抽選に多く採用されている手法を採用し、特図乱数の数(ランダム2の総数)及び特定のパターンの数(特定のパターンの数)を、それぞれ1つ減算することにより、確率変動図柄発生率を減少することに困難性はない。
次に「一度特別停止態様になった確率変動図柄を除いた図柄により特別停止態様を決定」する点につき検討する。引用発明の実施例(記載キ)における「確率変動図柄」は「7(CHANSE)」及び「BIG」の2つであり、それぞれに対して当りラインが3通り用意されている(引用例の【図14】参照。)。この実施例において、「確率変動図柄を除いた図柄により特別停止態様を決定」すれば、一気に特定のパターンの数を3減算することになる。しかし。引用例には別の実施例(記載シ)も記載されており、この実施例では同一数字のゾロ目を特定表示結果(特別停止態様)とし、特別の数字(3,5及び7)を「確率変動図柄」としている。そして、この実施例であっても、記載キの実施例同様、ランダム2の数と特定表示結果となる場合の図柄配列パターン数(補正発明の「確率変動図柄の数」に等しい。)は一致していると考えるべきであり、この実施例であれば、特定表示結果(特別停止態様)と図柄は1対1に対応しているため、「確率変動図柄を除いた図柄により特別停止態様を決定」しても、ランダム2の数と特定表示結果となる場合の図柄配列パターン数はそれぞれ1減算されるだけである。
そして、上記くじ引き抽選では、一度当たったくじが再度当選することはないから、記載シの実施例を出発点として、くじ引き抽選同様、「一度特別停止態様になった確率変動図柄を除いた図柄により特別停止態様を決定」することにも困難性はない。
以上のとおりであるから、相違点1に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

〈相違点2について〉
引用例には、引用発明における「所定条件成立抑制手段」を備えず、その代わりに、確率向上期間の延長を禁止するものや、確率向上の原因となる確変図柄の出現を禁止するものも記載されている。これらにおいては、「確率向上手段により向上された回数の累計が所定値である」ことを延長禁止又は出現禁止の条件としなければ、「所定回数の特定遊技状態が生起され」た後まで、確率向上期間を延長することができなくなる。
しかし、所定条件成立抑制手段を備え、確変図柄の出現を抑制する場合には、抑制の度合いが強くなければ、「確率向上手段により向上された回数の累計が所定値である」ことを出現抑制の条件としなくとも、「所定回数の特定遊技状態が生起され」た後まで、確率向上期間を延長することができるから、確変図柄の出現を抑制する場合にまで、「確率向上手段により向上された回数の累計が所定値である」ことを出現抑制の条件としなければならない理由はない。
そして、相違点1に係る補正発明の構成を採用した場合には、確率変動図柄発生率は特図乱数の数と確率変動図柄の数とにより演算、より具体的には確率変動図柄の数と特図乱数の数の比となるところ、確率変動図柄の数及び特図乱数の数を1減算しても、その比は大きくは変動しないといえる。
そうであれば、「確率向上手段により向上された回数の累計が所定値である」ことを出現抑制の条件とせず、確率変動遊技状態が継続して発生している間に確率変動図柄が特別停止態様になる毎に確率変動図柄発生率を減少すること、すなわち、相違点2に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易といわざるを得ない。

〈相違点3について〉
引用発明の「可変表示器」として、引用例には「回転ドラム」(記載ウ等)及び「ドット・マトリックスLED」(記載サ)が例示されているところ、前者であれば「一度特別停止態様になった確率変動図柄を各変動表示部から削除」することは技術的に困難であるが、後者であれば、それを実現するために克服すべき技術的困難性は皆無である。すなわち、ここで問題にすべきは、「一度特別停止態様になった確率変動図柄を各変動表示部から削除」しようとする発想の容易性のみである。
例えば、本件出願前に頒布された特開平7-619号公報(以下「周知例」という。)に「図柄表示器で表示される図柄の、当たり図柄の占める割合(当たり図柄の割合)と、実際の当たり確率に大きな格差がある場合があり、遊技者としては心理的に納得しがたく、遊技の興趣を損なうものであった。」(段落【0008】)及び「高確率が選択されている時の図柄表示装置の当たり図柄の割合を、低確率が選択されている時の当たり図柄の割合よりも相対的に高くなるようにした制御内容を備える制御指令手段を具備する」(段落【0010】)と記載されているように、遊技者の心理を考慮して、当たり図柄の割合と実際の当たり確率を一致させることは周知技術と認める。もっとも、周知例に記載されているのは、補正発明の用語を用いると、特別停止態様となる図柄の割合と大当り乱数による大当り判定確率を一致させることであって、特別停止態様であることを条件とした上での、確率変動図柄の割合と実際の確率変動図柄発生率を一致させることではないが、遊技者の心理を考慮するならば、確率変動図柄の割合と実際の確率変動図柄発生率を一致させることの有用性は周知技術と同じである。
そして、相違点1,2に係る補正発明の構成を採用した場合には、確率変動遊技状態が継続して発生している間に特別停止態様となった確率変動図柄は、特図乱数の数にも確率変動図柄の数にも勘定されないのであるから、そのような図柄を各変動表示部に表示したのでは、確率変動図柄の占める割合と実際の確率変動図柄発生率に格差が生じること、及び「確率変動遊技状態が継続して発生している間に一度特別停止態様になった確率変動図柄を各変動表示部から削除」することにより、上記格差を解消できることは明らかである。
そうである以上、「一度特別停止態様になった確率変動図柄を各変動表示部から削除」しようとする発想に困難性はない。
したがって、相違点3に係る補正発明の構成を採用することも当業者にとって想到容易である。

〈補正発明の独立特許要件の判断〉
相違点1?3に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は引用発明、一般的なくじ引き抽選の手法及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は平成18年法律第55号による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。。

[補正の却下の決定のむすび]
以上のとおりであるから、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年9月14日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「複数列の変動表示部にそれぞれ複数の図柄を可変表示可能な可変表示装置を備え、始動口への遊技球の入賞により抽出される乱数によって大当り判定を行うとともに、当該大当り判定に基づいて前記可変表示装置における停止図柄を決定し、前記可変表示装置における可変表示遊技の結果が特別停止態様になったことに基づき、特別変動入賞装置の開閉扉を開放する特別遊技状態を発生可能な遊技機において、
前記図柄は複数の通常図柄と複数の確率変動図柄とから成り、
前記特別停止態様の発生が前記確率変動図柄での特別停止態様の発生であった場合に、前記特別停止態様の発生確率が通常より高い確率変動遊技状態を発生させる特別遊技状態発生容易化手段と、
前記確率変動遊技状態において、再度前記確率変動図柄での特別停止態様の発生があった場合に、前記確率変動遊技状態を継続して発生させる特別遊技状態発生容易化継続手段と、
前記確率変動遊技状態が継続して発生している間において前記確率変動遊技状態の継続を抑制する継続抑制手段と、を備え、
前記継続抑制手段は、前記複数の確率変動図柄のうち、前記確率変動遊技状態が継続して発生している間に一度特別停止態様になった確率変動図柄を除いた図柄により特別停止態様を決定することを特徴とする遊技機。」

2.本願発明の進歩性の判断
「第2[理由]4(2)?(4)」で述べたことを踏まえると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
〈一致点〉「複数列の変動表示部にそれぞれ複数の図柄を可変表示可能な可変表示装置を備え、始動口への遊技球の入賞により抽出される乱数によって大当り判定を行うとともに、当該大当り判定に基づいて前記可変表示装置における停止図柄を決定し、前記可変表示装置における可変表示遊技の結果が特別停止態様になったことに基づき、特別変動入賞装置の開閉扉を開放する特別遊技状態を発生可能な遊技機において、
前記図柄は複数の通常図柄と複数の確率変動図柄とから成り、
前記特別停止態様の発生が前記確率変動図柄での特別停止態様の発生であった場合に、前記特別停止態様の発生確率が通常より高い確率変動遊技状態を発生させる特別遊技状態発生容易化手段と、
前記確率変動遊技状態において、再度前記確率変動図柄での特別停止態様の発生があった場合に、前記確率変動遊技状態を継続して発生させる特別遊技状態発生容易化継続手段と、
前記確率変動遊技状態が継続して発生している間において前記確率変動遊技状態の継続を抑制する継続抑制手段と、を備えた遊技機。」
〈相違点〉継続抑制手段につき、本願発明が「前記複数の確率変動図柄のうち、前記確率変動遊技状態が継続して発生している間に一度特別停止態様になった確率変動図柄を除いた図柄により特別停止態様を決定する」と限定しているのに対し、引用発明にはかかる限定がない点。

そこで、この相違点について検討するに、相違点に係る本願発明の構成を限定したものが相違点1及び相違点2に係る補正発明の構成であるところ、相違点1及び相違点2に係る補正発明の構成を採用することが当業者にとって想到容易であることは、「第2[理由]4(5)」で述べたとおりであるから、同じ理由により相違点に係る本願発明の構成を採用することの当業者にとって想到容易である。また、相違点に係る本願発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明及び一般的なくじ引き抽選の手法に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-21 
結審通知日 2008-10-22 
審決日 2008-11-05 
出願番号 特願平8-229328
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 561- Z (A63F)
P 1 8・ 537- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 森 雅之
池谷 香次郎
発明の名称 遊技機  
代理人 鹿嶋 英實  
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