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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01S
管理番号 1189863
審判番号 不服2006-19799  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-07 
確定日 2008-12-22 
事件の表示 特願2004- 84591「無線局位置推定装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月 6日出願公開、特開2005-274205〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年3月23日に特許出願されるともに特許法第30条第1項の適用の申請がなされたものであり、平成18年8月1日付け(発送日:同月8日)で拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年10月10日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成18年10月10日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年10月10日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 平成18年10月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容
本件補正は、以下の(1)に示される本件補正前の特許請求の範囲を、以下の(2)に示される本件補正後の特許請求の範囲に補正することを含むものである。
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
無線局からの電波を実際に受信した観測データに基づいて、当該電波の入射角度及び角度広がりを推定する観測データ解析処理部と、
地図データ上で前記無線局の候補となる位置を選択し、当該候補について伝播解析により解析する伝播解析処理部と、
前記伝播解析処理部における解析の結果に基づいて得られた複数の到来波について、所定の値以下のパワーの到来波を削除することにより有効な到来波を抽出し、前記有効な到来波において、各々の入射角度が相互に近い値である複数の到来波を1個のグループとすることにより複数のグループを構成し、前記複数のグループの各々について、当該グループを代表する入射角度及び当該グループを特徴付ける角度広がりに相当するパラメータを算出するパラメータ処理部と、
前記推定した入射角度及び角度広がりと算出したパラメータとを比較して、前記無線局の位置を推定するマッチング処理部とを備える
ことを特徴とする無線局位置推定装置。
【請求項2】
前記観測データは、前記無線局からの電波を1個のアレーアンテナで受信したデータであり、
前記地図データは2次元又は3次元の地図データであり、
前記観測データは2次元又は3次元の観測データである
ことを特徴とする請求項1記載の無線局位置推定装置。
【請求項3】
前記無線局の候補となる位置は直線沿いに所定の間隔に選択された複数の疑似送信点からなり、前記複数の疑似送信点の各々について前記伝播解析により解析し、当該解析の結果に基づいて構成した前記複数のグループの各々について、予め求めた前記入射角度及び角度広がりをデータベースに格納し、前記マッチング処理部により前記推定した入射角度及び角度広がりと前記データベースに格納したパラメータとを比較する
ことを特徴とする請求項1記載の無線局位置推定装置。
【請求項4】
前記角度広がりは、第k到来波の角度広がりをσ_(k) と表し、ライス係数をK_(k) と表すとき、送受信点が見通し内の場合には、(π/2)^(1/2 )×(σ_(k) /(K_(k) )^(1/2) )と表され、見通し外の場合には、σ_(k) /(K_(k) +1)^(1/2)と表される
ことを特徴とする請求項1記載の無線局位置推定装置。
【請求項5】
無線局からの電波を実際に受信した観測データに基づいて、当該電波の入射角度及び角度広がりを推定し、
地図データ上で前記無線局の候補となる位置を選択し、当該候補について伝播解析により解析し、
前記伝播解析における解析の結果に基づいて得られた複数の到来波について、所定の値以下のパワーの到来波を削除することにより有効な到来波を抽出し、前記有効な到来波において、各々の入射角度が相互に近い値である複数の到来波を1個のグループとすることにより複数のグループを構成し、前記複数のグループの各々について、当該グループを代表する入射角度及び当該グループを特徴付ける角度広がりに相当するパラメータを算出し、
推定した入射角度及び角度広がりと算出したパラメータとを比較して、前記無線局の位置を推定する
ことを特徴とする無線局位置推定方法。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
無線局からの電波を実際に受信した観測データに基づいて、当該電波の入射角度及び角度広がりを推定する観測データ解析処理部と、
地図データ上で前記無線局の候補となる位置を選択し、当該候補について伝播解析により解析する伝播解析処理部と、
前記伝播解析処理部における解析の結果に基づいて得られた複数の到来波について、所定の値以下のパワーの到来波を削除することにより有効な到来波を抽出し、前記有効な到来波において、各々の入射角度が相互に近い値である複数の到来波を1個のグループとすることにより複数のグループを構成し、前記複数のグループの各々について、当該グループを代表する入射角度及び当該グループを特徴付ける角度広がりに相当するパラメータを算出するパラメータ処理部と、
前記推定した入射角度及び角度広がりと算出したパラメータとを比較して、前記無線局の位置を推定するマッチング処理部とを備え、 前記角度広がりは、第k到来波の角度広がりをσ_(k) と表し、ライス係数をK_(k) と表すとき、送受信点が見通し内の場合には、(π/2)^(1/2)×(σ_(k) /(K_(k) )^(1/2) )と表され、見通し外の場合には、σ_(k) /(K_(k) +1)^(1/2 )と表される ことを特徴とする無線局位置推定装置。
【請求項2】
前記観測データは、前記無線局からの電波を1個のアレーアンテナで受信したデータであり、
前記地図データは2次元又は3次元の地図データであり、
前記観測データは2次元又は3次元の観測データである
ことを特徴とする請求項1記載の無線局位置推定装置。
【請求項3】
前記無線局の候補となる位置は直線沿いに所定の間隔に選択された複数の疑似送信点からなり、前記複数の疑似送信点の各々について前記伝播解析により解析し、当該解析の結果に基づいて構成した前記複数のグループの各々について、予め求めた前記入射角度及び角度広がりをデータベースに格納し、前記マッチング処理部により前記推定した入射角度及び角度広がりと前記データベースに格納したパラメータとを比較する
ことを特徴とする請求項1記載の無線局位置推定装置。
【請求項4】
無線局からの電波を実際に受信した観測データに基づいて、当該電波の入射角度及び角度広がりを推定し、
地図データ上で前記無線局の候補となる位置を選択し、当該候補について伝播解析により解析し、
前記伝播解析における解析の結果に基づいて得られた複数の到来波について、所定の値以下のパワーの到来波を削除することにより有効な到来波を抽出し、前記有効な到来波において、各々の入射角度が相互に近い値である複数の到来波を1個のグループとすることにより複数のグループを構成し、前記複数のグループの各々について、当該グループを代表する入射角度及び当該グループを特徴付ける角度広がりに相当するパラメータを算出し、
推定した入射角度及び角度広がりと算出したパラメータとを比較して、前記無線局の位置を推定し、 前記角度広がりは、第k到来波の角度広がりをσ_(k) と表し、ライス係数をK_(k) と表すとき、送受信点が見通し内の場合には、(π/2)^(1/2) ×(σ_(k) /(K_(k) )^(1/2) )と表され、見通し外の場合には、σ_(k) /(K_(k) +1)^(1/2) と表される ことを特徴とする無線局位置推定方法。」
なお、アンダーラインは、補正箇所を示すために請求人が付したものである。

2 本件補正についての当審の判断
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「角度広がり」に関して、「前記角度広がりは、第k到来波の角度広がりをσ_(k) と表し、ライス係数をK_(k) と表すとき、送受信点が見通し内の場合には、(π/2)^(1/2)×(σ_(k) /(K_(k) )^(1/2) )と表され、見通し外の場合には、σ_(k) /(K_(k) +1)^(1/2 )と表される」との限定を付加するとともに、補正前の請求項2、請求項3及び請求項5についても同様の限定を付加し、補正前の請求項4を削除して請求項5を繰り上げ新たな請求項4とするものである。
したがって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮及び請求項の削除を目的とするものと認められ、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号及び第2号の規定を満たすものである。

(1)本願補正発明
そこで、本件補正後の請求項4に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。
なお、本件補正後の請求項4には、「(π/2)^(1/2) ×(σ_(k) /(K_(k) )^(1/2) )」と記載されているが、本願明細書の式(5)、式(10)、式(11)、式(17)からみて、「(π/4)^(1/2) ×(σ_(k) /(K_(k) )^(1/2) )」の誤記であると認め、本願補正発明を以下のとおりに認定した。

「無線局からの電波を実際に受信した観測データに基づいて、当該電波の入射角度及び角度広がりを推定し、
地図データ上で前記無線局の候補となる位置を選択し、当該候補について伝播解析により解析し、
前記伝播解析における解析の結果に基づいて得られた複数の到来波について、所定の値以下のパワーの到来波を削除することにより有効な到来波を抽出し、前記有効な到来波において、各々の入射角度が相互に近い値である複数の到来波を1個のグループとすることにより複数のグループを構成し、前記複数のグループの各々について、当該グループを代表する入射角度及び当該グループを特徴付ける角度広がりに相当するパラメータを算出し、
推定した入射角度及び角度広がりと算出したパラメータとを比較して、前記無線局の位置を推定し、
前記角度広がりは、第k到来波の角度広がりをσ_(k) と表し、ライス係数をK_(k) と表すとき、送受信点が見通し内の場合には、(π/4)^(1/2) ×(σ_(k) /(K_(k) )^(1/2) )と表され、見通し外の場合には、σ_(k) /(K_(k) +1)^(1/2) と表される
ことを特徴とする無線局位置推定方法。」

(2)引用刊行物
(2a)引用刊行物1
請求人は、特許法第30条第1項の規定の適用を受ける申請をしているが、審査官は、上記規定の適用を受けることができないと判断した。
そこで、その点について検討する。
平成16年4月22日付け新規性の喪失の例外証明書提出書に添付した、菊池、辻、三浦、佐野、「マルチパス環境における無線局の位置推定」、2003年ソサイエティ大会講演論文集、社団法人電子情報通信学会、平成15年9月10日発行、B-1-123、p.123(以下、「引用刊行物1」という。)の頒布日は平成15年9月10日であり、一方、本願の出願日は平成16年3月23日である。
してみると、本願は、上記引用刊行物1が頒布された日から六月以内になされた特許出願ではないから、本願に係る発明についての特許法第30条第1項の規定の適用を認めることができない。
そして、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である上記引用刊行物1には、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「マルチパス環境における無線局の位置推定
・・・
1 まえがき
近年無線局の位置情報サービスや非常電話,違法局の取締りなどのために,無線局の位置を正確に推定する必要性が高まっている。本研究ではアレーアンテナにより測定した屋外伝搬実験データと,高精度な三次元地形データを用いたレイトレーシング(RT)解析結果とを組み併せて,無線局の位置を推定する手法を提案する。」

イ 「2 受信信号モデル
図1左に横須賀市庁舎周辺の実験地,および送受信点の場所を表す。受信点(Rx)は8素子の直線アレーアンテナを用い,高さ15mのビルの屋上に設置された。送信点(Tx)は高さ1.5mであり,受信点から見通し内(Tx1)および見通し外(Tx2)の地点にそれぞれ設置され,搬送波周波数2.335GHz,DQPSK変調された信号を送信した。実験の詳細については文献〔1〕を参照されたい。本研究では,図1右のような伝搬環境を想定し,受信信号を複数の周辺散乱モデルの重ね合わせとして一次近似を用いて次式のように表す〔1〕。
x(t)≒Σ_(k=1,K) [a(θ_(k))+ρ_(k)d(θ_(k))]s?_(k)(t)+n(t) (1)
(当審注:略等しいことを表す記号として≒を用いた。Σの上下の添え字を、Σの後に下の添え字、カンマ、上の添え字の順に並べて記載した。また、記号の上の添え字?を、記号の後に記載した。以下、同じ。)

ここでKは図1左の仮想信号源の数,a(θ)は方向ベクトル,n(t)は雑音である。本研究ではまず式(1)の信号の到来方向θ_(k),散乱パラメータρ_(k)の推定値を求める。さらにRT解析結果との比較により無線局の位置を推定するために,到来散乱波の角度広がりを求める。

3 パラメータ推定
パラメータを推定するために,まずは信号源の数KをCapon法の波形より決定し,到来方向θ?_(k)をMODE法により推定した。散乱パラメータρ?_(k)は文献〔1〕と同様に求めた。また,これらを用いて空間的に分割した受信信号x_(k)(t)の推定値を以下のように求めた。
x?_(k)(t)=[a(θ?_(k))+ρ?_(k)d(θ?_(k))]s?_(k)(t) (2)

これにより文献〔2〕で提案されている最尤推定法を用いて散乱源ごとにk番目の信号の角度広がりσ?_(θk)を求めた。式(2)により空間的な分割を図ることで従来の極小値問題を解決している。また,式(2)の精度は信号の品質を表す散乱パラメータの絶対値|ρ?_(k)|の値に依存することを確認した〔1〕。表1にTx1,Tx2における各パラメータの推定値を示す。」

ウ 「4 レイトレーシングを併用した位置推定
位置推定のために,実験値解析から得られる表1のパラメータを用いておおよその推定範囲を決定し,RTシミュレータで推定範囲に5m間隔で置かれた複数の擬似送信点より得られる到来方向,角度広がりを表1の結果と比較して位置を推定した。図2左は直接波方向のみの角度広がりの比較,右は送信点の真値を原点にPath1における角度広がりを比較した結果である。横軸は位置座標,縦軸は実験値とRTによる結果の誤差の逆数である。
結果より,位置推定の誤差を約10mまでに抑えることができ本手法の有効性が確認された。」

エ 表1には、各パラメータの推定値として、到来方向θ?_(k)、角度広がりσ?_(θk)等の推定値が、見通し内の送信点Tx1からの2つのパスPath1、Path2、見通し外の送信点Tx2からのパスPath1、Path2のそれぞれについて示されている。

上記摘記事項ア?エ及び図面の記載から次のことが読み取れる。
・摘記事項アから、アレーアンテナにより測定した屋外伝搬実験データと、高精度な三次元地形データを用いたレイトレーシング(RT)解析結果とを組み併せて、無線局の位置を推定する手法。
・摘記事項イ?エ及び表1から、実験値解析から、到来方向θ?_(k)及び角度広がりσ?_(θk)等の推定値を得ること、また、これらのパラメータを用いておおよその推定範囲を決定し、RTシミュレータで推定範囲に5m間隔で置かれた複数の擬似送信点より得られる到来方向、角度広がりを求め、該到来方向、角度広がりを、実験値解析から得られた到来方向θ?_(k)及び角度広がりσ?_(θk)の推定値と比較して無線局の位置を推定すること。

したがって、引用刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「アレーアンテナにより測定した屋外伝搬実験データと、高精度な三次元地形データを用いたレイトレーシング(RT)解析結果とを組み併せて、無線局の位置を推定する手法において、
上記屋外伝搬実験データの実験値解析から、到来方向θ?_(k)及び角度広がりσ?_(θk)等を推定し、
これらのパラメータを用いておおよその推定範囲を決定し、RTシミュレータで推定範囲に5m間隔で置かれた複数の擬似送信点より得られる到来方向、角度広がりを求め、
該到来方向、角度広がりを、実験値解析から得た到来方向θ?_(k)及び角度広がりσ?_(θk)の推定値と比較して無線局の位置を推定する手法。」

(2b)引用刊行物2
本願の出願前に頒布された刊行物であるK.Yamada and H.Tsuji, "Using a model of scattering in a low-intersymbol-interference channel for array beamforming," XI European Signal Processing Conference, 2002, Volume I, p.97-100. (以下、「引用刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。



上記摘記事項及び図面の記載から次のことが読み取れる。
・角度広がりを推定するためのパラメータ|ρ_(i)|に代えて新たに導入したパラメータη_(i)は、
(i)ライス係数K_(i)≫1のとき、
η_(i)=(π/4)^(1/2) ×(δ_(i) /(K_(i) )^(1/2) )
(ii)A_(i)≒B_(i)のとき、
η_(i)=δ_(i) /(K_(i) +1)^(1/2)
と表されること。
・上記式中のδ_(i)は、第i散乱円中の各到来波の到来方向の標準偏差であるから、第i到来波の角度広がりを表すパラメータであること。
そして、上記パラメータη_(i)は上記(i)及び(ii)のいずれにおいてもδ_(i)に比例するから、上記パラメータη_(i)は第i到来波の角度広がりを表すパラメータであるといえること。
・ライス係数K_(i)は、主波と散乱波とのパワー比であるから、ライス係数K_(i)≫1のときとは、到来波のパワーがほとんど主波のパワーのみである、すなわち、送受信点が見通し内の場合であるということ。
・上記A_(i)は、主波の振幅であり、上記B_(i)は、散乱波の振幅であるから、A_(i)≒B_(i)のときとは、主波と散乱波の振幅がほぼ等しい、すなわち、送受信点が見通し外の場合であるということ。

以上のことから、引用刊行物2には、角度広がりを表すパラメータη_(i)が、第i到来波の角度広がりを表すパラメータをδ_(i)とし、ライス係数をK_(i) と表すとき、送受信点が見通し内の場合には、(π/4)^(1/2) ×(δ_(i) /(K_(i) )^(1/2) )、見通し外の場合には、δ_(i) /(K_(i) +1)^(1/2) と表されることが記載されていると認められる。

(3)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
・引用発明の「実験値」、「到来方向θ?_(k)」、「角度広がりσ?_(θk)」は、それぞれ、本願補正発明の「無線局からの電波を実際に受信した観測データ」、「電波の入射角度」、「電波の角度広がり」に相当する。
・引用発明の「複数の擬似送信点」、「到来方向」、「角度広がり」、は、それぞれ、本願補正発明の「無線局の候補となる位置」、「入射角度に相当するパラメータ」、「角度広がりに相当するパラメータ」に相当し、引用発明の「RTシミュレータ」は、本願補正発明の「伝搬解析」に相当する解析を行うものである。
また、引用発明の「RTシミュレータ」は、「高精度な三次元地形データを用いたレイトレーシング(RT)解析」を行うものであるから、「RTシミュレータで推定範囲に5m間隔で置かれた複数の擬似送信点」は、本願補正発明の「無線局の候補となる位置」と同様に「地図データ上で」「選択し」たものである。

したがって、本願補正発明と引用発明とは、
「無線局からの電波を実際に受信した観測データに基づいて、当該電波の入射角度及び角度広がりを推定し、
地図データ上で前記無線局の候補となる位置を選択し、当該候補について伝播解析により解析し、
前記伝播解析における解析の結果に基づいて得られた複数の到来波について、入射角度及び角度広がりに相当するパラメータを算出し、
推定した入射角度及び角度広がりと算出したパラメータとを比較して、前記無線局の位置を推定することを特徴とする無線局位置推定方法。」
である点で一致し、次の相違点1及び2で相違する。

[相違点1] 伝播解析における解析の結果に基づいて得られた複数の到来波について算出される「入射角度及び角度広がりに相当するパラメータ」が、本願補正発明では、「所定の値以下のパワーの到来波を削除することにより有効な到来波を抽出し、前記有効な到来波において、各々の入射角度が相互に近い値である複数の到来波を1個のグループとすることにより複数のグループを構成し、前記複数のグループの各々について」算出される「当該グループを代表する入射角度及び当該グループを特徴付ける角度広がりに相当するパラメータ」であるのに対し、引用発明にはこのような限定がない点。
[相違点2] 角度広がりが、本願補正発明では、「第k到来波の角度広がりをσ_(k) と表し、ライス係数をK_(k) と表すとき、送受信点が見通し内の場合には、(π/4)^(1/2) ×(σ_(k) /(K_(k) )^(1/2) )と表され、見通し外の場合には、σ_(k )/(K_(k) +1)^(1/2) と表される」のに対し、引用発明にはこのような限定がない点。

上記相違点1及び2について検討する。
[相違点1]について
データ解析において、所定値以下のデータを削除して有意なデータのみに基づいて解析を行うことは常套手段である。
そして、引用発明では、RTシミュレータの解析により得られた、広範囲の方向から入射してくる多数の到来波のデータの中から、各散乱源毎の到来方向及び角度広がりを算出するのであるから、まず、各散乱源に属する到来波を抽出するために入射角度が相互に近いものをまとめてグループ化し、次いで、それらの各グループについて到来方向及び角度広がりを求めればよいことは明らかである。
したがって、引用発明において、上記相違点1に係る本願補正発明のごとく構成することは当業者が容易になし得たことである。

[相違点2]について
引用刊行物2には、角度広がりを表すパラメータη_(i)が、第i到来波の角度広がりを表すパラメータをδ_(i)とし、ライス係数をK_(i) と表すとき、送受信点が見通し内の場合には、(π/4)^(1/2) ×(δ_(i) /(K_(i) )^(1/2) )と表され、見通し外の場合には、δ_(i) /(K_(i) +1)^(1/2) と表されることが記載されている。
したがって、引用発明に引用刊行物2の記載事項を適用して、上記相違点2に係る本願補正発明のごとく構成することは当業者が容易になし得たことである。

そして、本願補正発明の奏する効果は、引用刊行物1及び2の記載事項から当業者が予測し得る範囲内のものであり、格別のものではない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用刊行物2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
平成18年10月10日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成18年6月21日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項5に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2」の「1」の「(1)」の本件補正前の特許請求の範囲の請求項5に記載されたとおりのものである。

第4 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物1及びその記載事項は、上記「第2」の「2」の「(2a)」の「ア」ないし「エ」に記載したとおりのものである。

第5 本願発明と引用発明との対比・判断
本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明の発明特定事項から発明を特定するために必要な事項についての上記限定を省いたものである。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「無線局からの電波を実際に受信した観測データに基づいて、当該電波の入射角度及び角度広がりを推定し、
地図データ上で前記無線局の候補となる位置を選択し、当該候補について伝播解析により解析し、
前記伝播解析における解析の結果に基づいて得られた複数の到来波について、入射角度及び角度広がりに相当するパラメータを算出し、
推定した入射角度及び角度広がりと算出したパラメータとを比較して、前記無線局の位置を推定することを特徴とする無線局位置推定方法。」
である点で一致し、次の相違点で相違する。

[相違点] 伝播解析における解析の結果に基づいて得られた複数の到来波について算出される「入射角度及び角度広がりに相当するパラメータ」が、本願発明では、「所定の値以下のパワーの到来波を削除することにより有効な到来波を抽出し、前記有効な到来波において、各々の入射角度が相互に近い値である複数の到来波を1個のグループとすることにより複数のグループを構成し、前記複数のグループの各々について」算出される「当該グループを代表する入射角度及び当該グループを特徴付ける角度広がりに相当するパラメータ」であるのに対し、引用発明にはこのような限定がない点。

上記相違点については、上記「第2」の「2」の「(3)」の「[相違点1]について」において検討したとおり、引用発明において、相違点に係る本願発明のごとく構成することは当業者が容易になし得たことである。
そして、本願発明の奏する効果は、引用刊行物1の記載事項から当業者が予測し得る範囲内のものであり、格別のものではない。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
そして、本願発明(請求項5に係る発明)が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項1ないし4に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-08 
結審通知日 2008-10-14 
審決日 2008-10-29 
出願番号 特願2004-84591(P2004-84591)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01S)
P 1 8・ 121- Z (G01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮川 哲伸大和田 有軌川瀬 徹也  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 山下 雅人
下中 義之
発明の名称 無線局位置推定装置及び方法  
代理人 重久 啓子  
代理人 渡部 章彦  
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