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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J
管理番号 1189887
審判番号 不服2006-1008  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-16 
確定日 2009-01-09 
事件の表示 平成 9年特許願第502469号「放電ランプ用フードテープの製造方法、放電ランプ用フードテープ、放電ランプおよび放電ランプの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 1月 3日国際公開、WO97/00532、平成10年 4月14日国内公表、特表平10-504132〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は平成8年5月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1995年6月16日、ドイツ)を国際出願日とする出願であって、本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成17年5月18日付の手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1ないし11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。
「1.担持体テープ(1)が放電ランプ内に封入すべき少なくとも1種類の材料、特に水銀合金(2)及び/又はゲッタ材料(3)で被覆されている放電ランプ用フードテープの製造方法において、担持体テープ(1)からその長手方向(LB)に直角に、放電ランプ用フードテープ(4)又はこのフードテープの一部を形成しその全幅(BT)に亘って少なくとも1種類の材料で被覆された部品(5)が切断され、担持体テープ(1)における直角方向はフードテープ(4)又はこのフードテープの一部として使用される部品(5)の長手方向(LT)になることを特徴とする放電ランプ用フードテープの製造方法。」

2.刊行物記載の発明・記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された刊行物である特開平6-76796号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。

ア 「【0003】よって、最少必要量の水銀をランプ内に供給するためZr-Ti-Hg合金を金属板上に塗布した水銀ディスペンサを外部より高周波加熱することにより、水銀を放出させる方法が用いられる。・・・
【0006】本発明の目的は、水銀ディスペンサを電極部囲いとして用いた場合に点灯外観を損なわず十分な水銀量を確保する低圧放電灯を提供することにある。」(段落【0003】?【0006】)
イ 「【0016】水銀ディスペンサは、幅5mmのニッケル板7に、幅2mmでZr-Ti-Hg合金8を塗布したものを使用し、フィラメント9の周囲を囲むようにリング状にして溶接し固定する。
【0017】ところで、水銀ディスペンサはZr-Ti-Hg合金の塗布部分では溶接出来ないために、図2a,bのように上下に幅1.5mm の溶接しろを設けてある。溶接によって固定する以上、この幅を小さくすることは困難であり、水銀ディスペンサの幅を5mm以下にすると、Zr-Ti-Hg合金を塗布する幅は、2mm以下になって、ランプの種類によっては、水銀量を確保することが困難となる。よって、図2c,dのように一部にZr-Ti-Hg合金を塗布した水銀ディスペンサを用いることが有効である。」(段落【0016】?【0017】)
ウ 「【0018】図3に、囲いの幅を変えて作成したランプの、囲いの部分の輝度の相対値を示す。囲いがないランプを100%としている。幅5mm以上では影による輝度の低下が無視出来なくなる。
【0019】図4に、囲いの幅を変えて作成したランプの、一千時間点灯時における黒化の発生割合を示す。幅4mm以下では、幅を小さくするほど黒化発生率が高い。」(段落【0018】?【0019】)
エ 図面の図2(c)(d)には、フィラメント9の周囲を囲んで設けられた水銀ディスペンサを構成するニッケル板7には、その全幅に亘ってZr-Ti-Hg合金が塗布され、ニッケル板7の長手方向を屈曲させることによりフィラメント9の周囲を囲んでいる構成が記載されている。

したがって上記刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認める。
<刊行物1記載の発明>
「ニッケル板7が低圧放電灯内に十分な水銀量を供給するための材料であるZr-Ti-Hg合金で塗布され、フィラメント9の周囲を囲むようにリング状に固定される水銀ディスペンサの製造方法において、ニッケル板7の全幅に亘ってZr-Ti-Hg合金が塗布された水銀ディスペンサの製造方法。」

3.対比
本願発明1と刊行物1記載の発明とを対比する。
その技術的意義からみて、後者の「低圧放電灯」、「低圧放電灯内に十分な水銀量を供給するための材料であるZr-Ti-Hg合金」、「フィラメント9の周囲を囲むようにリング状に固定される水銀ディスペンサ」は、それぞれ、前者の「放電ランプ」、「放電ランプ内に封入すべき少なくとも1種類の材料、特に水銀合金(2)」、「放電ランプ用フードテープ」に相当する。
また、後者における「ニッケル板7」は、それ自体が「フィラメント9の周囲を囲むようにリング状にして溶接し固定」(上記摘記事項「2.イ」の【0006】)することで水銀ディスペンサとなるための部品であることから、後者の「部品(5)」に相当し、また、同「ニッケル板7」と後者における「担持体テープ(1)」とは、「板状部材」である限りで一致する。
更に、後者における、ニッケル板7がZr-Ti-Hg合金で「塗布され」ることは、結果としてZr-Ti-Hg合金でニッケル板7が被覆されることとなるのであるから、前者の、担持体テープ(1)が水銀合金(2)で「被覆され」ていることに相当する。
してみると、本願発明1と刊行物1記載の発明とは次の一致点及び相違点を有する。

<一致点>
「板状部材が放電ランプ内に封入すべき少なくとも1種類の材料、特に水銀合金で被覆されている放電ランプ用フードテープの製造方法において、部品の全幅に亘って少なくとも1種類の材料で被覆された放電ランプ用フードテープの製造方法。」
<相違点>
前者においては、「担持体テープ(1)からその長手方向(LB)に直角に、放電ランプ用フードテープ(4)又はこのフードテープの一部を形成」する「部品(5)が切断され」、「担持体テープ(1)における直角方向はフードテープ(4)又はこのフードテープの一部として使用される部品(5)の長手方向(LT)になる」のに対し、後者においては、水銀ディスペンサとなるための部品であるニッケル板7は、その全幅に亘ってZr-Ti-Hg合金が塗布されているものの、当該ニッケル板自体を製造する方法については不明であり、したがって、切断された部品の長手方向の向きについても不明である点。

4.判断
上記相違点について検討する。
原査定の拒絶の理由に引用された本願優先日前に頒布された刊行物である特開平6-302267号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は冷陰極蛍光ランプの電極に関するものであり、詳細にはその製造方法に係るものである。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種の電極90の構成の例を示すものが図6であり、前記電極90は鉄にニッケル鍍金を施した板状部材で形成された電極本体91に、ジルコンなどで構成されるゲッター材92と、水銀及びチタンによる水銀アマルガム材93とが混和されたものの適宜量が保持させられたものであり、前記電極本体91は一対が、ニッケル線94a及びデュメット線94bで成る導入線94に両面からスポット溶接などにより取付けられている。
【0003】この電極90を形成するときには、予めにニッケル鍍金が施された帯状の鉄板に、ゲッター材92と水銀アマルガム材93とが混和されたものを所定幅で塗布したものを形成しておき、この帯状部材を蛍光ランプの管の内径に合わせて所定幅Dとして切断し、これにより得られる電極本体91を前記導入線94に溶接することで製造するものである。」(段落【0001】?【0003】)
イ 図面の図6より、屈曲される前の電極本体91の形状は略長方形である構成、及び、電極本体91の幅Dの全幅に亘ってゲッター材92と水銀アマルガム材93とが設けられている構成が記載されている。

当該摘記事項から、ゲッター材92と水銀アマルガム材93とが混和されたものを所定幅で塗布した帯状部材(帯状の鉄板)を蛍光ランプの管の内径に合わせて所定幅Dとして板状部材切断する製造方法が読み取れる。そして、帯状部材から所定幅Dとして切断して形状が略直方形の板状部材を製造するには、その切断方向を帯状部材の長手方向に対して直角とすることは通常に採用される技術である。
したがって、刊行物2には、「ゲッター材と水銀アマルガム材とが混和されたものを所定幅で塗布した帯状部材(本願発明1の「担持体テープ(1)」に相当する)を、その長手方向に直角に切断して水銀を放出する機能を有する、全幅に亘ってゲッター材92と水銀アマルガム材93とが設けられた板状部材(本願発明1の「部品(5)」に相当する)とする技術」が記載されている。
そして、刊行物1記載の発明においては、ニッケル板7の全幅に亘ってZr-Ti-Hg合金が塗布されており、そのニッケル板7はフィラメント9の周囲を囲むようにリング状に固定されて水銀ディスペンサとなるのであり、なお且つ、上記摘記事項「2.エ」より、全幅に亘ってZr-Ti-Hg合金が塗布される幅方向とは直角の方向が長手方向となるのであるから、当該ニッケル板7に対して上記の刊行物2に記載の技術を適用することにより、相違点に係る技術事項を得ることは当業者が容易に想到し得たものといえる。
そして、本願発明1の作用効果は、刊行物1記載の発明及び刊行物2に記載の技術から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別なものではない。

5.むすび
よって、本願請求項1に係る発明は、上記刊行物1記載の発明及び刊行物2に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2ないし11に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-09-28 
結審通知日 2007-10-04 
審決日 2007-10-16 
出願番号 特願平9-502469
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 亮  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 山川 雅也
上原 徹
発明の名称 放電ランプ用フードテープの製造方法、放電ランプ用フードテープ、放電ランプおよび放電ランプの製造方法  
代理人 山口 巖  

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