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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1190216
審判番号 不服2005-2894  
総通号数 110 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-02-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-17 
確定日 2009-01-05 
事件の表示 特願2002-148208「Web3Dによる催物会場検索システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年12月 5日出願公開、特開2003-346026〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯

本願は,平成14年5月22日の出願であって,平成16年8月3日付けで拒絶理由が通知され,平成16年10月12日に手続補正書が提出され,平成17年1月14日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成17年2月17日に審判請求がされるとともに,平成17年3月22日に手続補正書が提出されたものである。

2 平成17年3月22日に提出された手続補正書による補正(以下,「本件補正」という。)についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成17年3月22日に提出された手続補正書による補正を却下する。

[理由]

2-1 本件補正の内容について

本件補正は,平成16年10月12日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲(全請求項数1。以下,「補正前の特許請求の範囲」という。)の記載を,以下のとおりの特許請求の範囲(全請求項数1。以下,「補正後の特許請求の範囲」という。)の記載に補正する補正内容を含むものである。

《補正前の特許請求の範囲》

【請求項1】「広域ネットワークを介してユーザーが希望する催物会場の検索・予約を行うシステムであって,
広域ネットワーク上に不特定多数のユーザーを対象に双方向型のWeb3D画像による催物会場のHPを開設して閲覧を受付けるWebサーバーと,催物会場の検索・予約のための各種3D画像を格納しユーザーからの予約情報を登録するデータベースと,を有する会場予約センターのサーバーシステムと,
Webブラウザを用いて希望する催物会場の検索・予約を行うユーザー端末と,から少なくとも構成され,
前記サーバーシステムは,
前記催物会場を構成する撮像データ等の各種画像をモデリングにより生成・編集した3D画像を基に,Webブラウザ上でユーザー操作により移動,回転,拡大・縮小が可能な双方向型Web3D画像として表示させるための3Dシーン情報及び該3Dシーンを描画するための3Dアプレットに変換する3D画像生成手段と,
前記ユーザー端末のWebブラウザと前記Webサーバーとの通信によりユーザーが前記Web3D画像を用いて編集した催物会場レイアウトを前記データベースに保持する会場レイアウト変更手段と,
前記ユーザー端末から予約を受付け受信した予約情報を前記データベースに登録する予約登録手段と,
予約を受付けた催物会場の使用代金をクレジットカード,電子マネー等を用いた電子決済により徴収する課金手段と,を備え,
前記会場レイアウト変更手段は,ユーザーが前記Web3D画像により催物会場レイアウトを表示するための3Dシーン情報及び3Dアプレットをサーバー側からユーザー端末にダウンロードし該催物会場レイアウトを編集してアップロードした催物会場のレイアウト情報を予約情報の一部として前記データベースに保持することを特徴とするWeb3Dによる催物会場検索システム。」

《補正後の特許請求の範囲》(下線は,当審で付与したものである。)

【請求項1】「広域ネットワークを介してユーザーが希望する催物会場の検索・予約を行うシステムであって,
広域ネットワーク上に不特定多数のユーザーを対象に双方向型のWeb3D画像による催物会場のHPを開設して閲覧を受付けるWebサーバーと,催物会場の検索・予約のための各種3D画像を格納しユーザーからの予約情報を登録するデータベースと,を有する会場予約センターのサーバーシステムと,
Webブラウザを用いて希望する催物会場の検索・予約を行うユーザー端末と,から少なくとも構成され,
前記サーバーシステムは,
前記催物会場を構成する分割撮像データ等の各種画像をモデリングにより合成・生成した3D画像に,マテリアル,テクスチュアマッピング,カメラ,ライティング,アニメーション等の各種編集処理を行ってVRMLファイル形式に変換し,変換されたVRMLファイル及びその各種ノードより,Webブラウザ上でユーザー操作により移動,回転,拡大・縮小が可能な双方向型Web3D画像として表示させるためのツールバーファイル,3Dシーン情報,及び3Dシーンを読込み描画するためのHTMLドキュメントに埋め込まれて実行される3Dアプレットに書換え変換する3D画像生成手段と,
前記ユーザー端末のWebブラウザと前記Webサーバーとの通信によりユーザーが前記Web3D画像を用いて編集した催物会場レイアウトを前記データベースに保持する会場レイアウト変更手段と,
前記ユーザー端末から予約を受付け受信した予約情報を前記データベースに登録する予約登録手段と,
予約を受付けた催物会場の使用代金をクレジットカード,電子マネー等を用いた電子決済により徴収する課金手段と,を備え,
前記会場レイアウト変更手段は,ユーザーが前記Web3D画像により催物会場レイアウトを表示するための3Dシーン情報,3Dアプレット,及びツールバーファイルをサーバー側からユーザー端末にダウンロードし該催物会場レイアウトを編集してアップロードした催物会場のレイアウト情報を予約情報の一部として前記データベースに保持することを特徴とするWeb3Dによる催物会場検索システム。」

2-2 本件補正の目的について

補正後の請求項1は,「3D画像生成手段」が有する機能について,(1)3D画像をVRMLファイル形式に変換すること,及び,(2)Web3D画像として表示させるためのツールバーファイル,3Dシーン情報,及び3Dシーンを読込み描画するためのHTMLドキュメントに埋め込まれて実行される3Dアプレットに書換え変換することを,より具体的に限定したものである。

したがって,本件補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから,特許法17条の2第4項2号の規定に適合する。
そこで,次に,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて,検討する。

2-3 独立特許要件について

(1)引用刊行物の記載内容と引用発明について

(1-1)審査手続の拒絶理由で引用された,本願の出願前日本国内において頒布された刊行物である,特開2001-297240号公報(以下,「引用刊行物」という。)には,図1,2,9?13とともに,次の記載がある。(下線は,当審で付加したものである。)

ア 発明の属する技術分野について
【0001】
「この発明は,インターネットを利用することで,主催者側の条件にあった会場を時間の制限を受けることなく予約でき,また会場のレイアウトを自由に変更することができ,催しの趣旨にあった設営ができるとともに,さらに,会場提供者は予約を受ける際の手間を省くことができ,かつ広範囲に会場申込依頼受付が可能となるようにしたインターネットを利用したパーティ会場および宴会場予約方法に関する。」

イ 発明が解決しようとする課題
【0003】
「・・・FAXにより会場の予約をする場合には,会場のレイアウトを作成するために手間がかかり,変更が発生した場合にも,変更することを会場側に説明しなければならないため,この場合も不便さが伴う。さらに,主催者が実際に会場に出向く場合には,手間がかかる上に見てみないと条件に合うかどうか分からないという不便さがあった。」
【0004】
「この発明は,上記従来の課題を解決するためになされたもので,主催者は自分が主催したいパーティ会場の予約を時間の制限を受けることなくできるとともに,会場レイアウトを自由に変更することができ,主催者の要望を取り入れることができ,かつその予約内容を確認でき,会場提供者は,予約を受ける際の手間,会場レイアウトを決めるまでの手間を省くことができ,パーティ会場の情報をインターネットで提供して,広い範囲からの申し込みが見込めるインターネットを利用したパーティ会場および宴会場予約方法を提供することを目的とする。

ウ 実施の形態
【0008】
「図1において,インターネット1に接続された主催者が使用するユーザ端末としてのパーソナルコンピュータ2(以下,パソコンと略称する)と,同じくインターネット1に接続され,かつ会場情報データベース3と,サービスメニューデータベース4と,会場レイアウト図面データベース5と,予約情報データベース6とそれぞれのデータベースに入出力を行える情報提供サーバ7とで構成されている。・・・」
【0010】
「標準レイアウト情報として,会場の標準レイアウト図面,テーブル,いすなどの備品の標準設置数量,最大設置個数などの詳細情報を保持しており,ユーザ側では変更ができない。予約情報データベース6では,ユーザが変更した会場のレイアウト図面情報を含む会場の予約に関する詳細の情報が管理されており,ユーザ側で変更することができる。」
【0011】
「次ぎに,この発明のよる第1実施の形態の動作について図2のフローチャートならびに図3ないし図16に示す表示画面を参照して説明する。まず,パーティ主催者(以下,単に主催者という)は,パソコン2をインターネット1に接続し,情報提供サーバ7が提供するホームページを開く。ホームページには,図3に示すように,会場データを検索する会場情報検索画面10が表示されている(ステップA1)。」
【0012】
「この会場情報検索画面10を見ながら主催者は,パーティの実施場所として,「都道府県名」,「市町村名」があり,また開催日時として,「年,月,日,時から,」があり,使用時間として,「何時から」,人数として「何人」等の条件を入力するための入力事項が表示されている。主催者は,これらの入力事項に必要条件を入力して「送信」をクリックすることにより,情報提供サーバ7にインターネット1経由で送信する。
【0013】この送信を情報提供サーバ7が受信すると,情報提供サーバ7は入力された条件を満たす会場のデータを,会場情報データベース3と予約情報データベース6を検索して,図4に示す会場検索結果画面11を表示手段に表示する(ステップA2)。主催者はこの会場検索結果画面11を見て条件を満たすデータが無い場合には,図5に示すようにデータが無い旨を示す検索結果画面12を表示して,検索条件入力画面10に戻る(ステップA3)。」
【0017】
「情報提供サーバ7は,主催者からの送信された氏名,連絡先を受信することにより,図9に示すように,会場予約受付画面16を表示する。主催者はこの会場予約受付画面16を見て,条件,日時,使用時間,合計掛金,申込者氏名などのその表示内容の確認を行って,確認したことを情報提供サーバ7に通知する。」
【0018】
「情報提供サーバ7は主催者の確認を受け取り次第,会場レイアウト図面データベース5を検索し,会場の標準レイアウト情報と選択された設備機器などの内容を示す図10に示すような会場レイアウト表示画面17を表示する。主催者は,この会場レイアウト表示画面17に示す内容から標準レイアウト情報を基にテーブル,いすなどの備品および移動可能な設備を自由に配置して変更し(ステップA12),図11に示すように変更した会場レイアウト変更画面18を情報提供サーバ7に送信する。」
【0019】
「また,主催者は必要に応じて最大設置数量の範囲内で,備品の個数の増減を行う図12に示すような会場レイアウト拡張画面19を表示させることができ,備品の追加・削減を行う(ステップA13)。主催者によるこの会場レイアウト拡張画面19の表示により,情報提供サーバ7で,変更されたレイアウトが実現可能かどうかを判定し(ステップA14),この判定の結果,変更されたレイアウトが実現可能な場合には,予約を受け付ける(ステップA15)。」
【0020】
「上記判定の結果,変更したレイアウトが実現できない場合には,ステップA14からステップA12の処理に戻り,図14に示すように,情報提供サーバ7はレイアウトが実現できるレイアウトに変更を促す会場レイアウト変更画面21を表示し,主催者が変更した図11で示した会場レイアウト変更画面18の表示にに戻る。主催者はこの会場レイアウト変更画面18の内容から予約が確定した場合には,情報提供サーバ7は,予約番号およびパスワードを発行して,図13に示すように主催者に会場予約確定画面20を表示し(ステップA16),予約情報データベース6を更新する。」

エ 発明の効果
【0022】
「以上のように,この発明によれば,主催者のパーティおよび宴会開催条件に対して情報提供サーバが提供する会場情報データベースと予約情報データベースとの検索結果から主催者の意図する会場を情報提供サーバに送信し,情報提供サーバがサービスメニューデータベースを検索して表した会場で提供可能のサービス内容から主催者が必要サービス内容を選択し,情報提供サーバはこの必要サービス内容を基に算出して提示した予算案に対して,主催者が承知して予約意向を情報提供サーバに送信すると,情報提供サーバは予約意向に対して予約受付表示を行って,情報提供サーバが主催者から連絡先を入力し,主催者の確認を受け取り次第,会場レイアウト図面データベースを検索して会場の標準レイアウト情報と選択された設備機器の内容を表示し,主催者は標準レイアウト情報を基に備品と移動可能設備を配置および変更したレイアウト図面を情報提供サーバに送信することにより,情報提供サーバが変更したレイアウト画面が実現可能と判断すると,予約を確定して予約番号とパスワードを主催者に発行し,予約情報データベースを更新して予約情報を予約情報データベースで管理するとともに,会場提供者は予約情報データベースに保存された予約情報を基にパーティまたは宴会当日の準備をするようにしたので,主催者は,自分が主催したいパーティ会場または宴会会場の予約を時間の制限を受けることなく,また会場レイアウトを自由に変更することができる。したがって,主催者の要望を取り入れることができ,かつその予約内容を確認できる。さらに,会場提供者は,予約を受ける際の手間,会場レイアウトを決めるまでの手間を省くことができる。また,パーティー会場の情報をインターネットで提供するため,広い範囲からの申し込みが見込めるなどの効果を奏する。」

(1-2)引用発明について

上記ア?エの摘記事項から,引用刊行物には,

「インターネットを介してユーザが希望するパーティ等の会場の検索・予約を行うシステムであって,
インターネット上に不特定多数のユーザーを対象に会場のレイアウト画面を含む画像によるパーティ等の会場のホームページを開設して閲覧を受付けるWebサーバと,パーティ等の会場の検索・予約のための各種画像を格納しユーザーからの予約情報を登録するためのデータベースと,を有する情報提供サーバと,
Webブラウザを用いて希望する会場の検索・予約を行うユーザー端末と,から構成され,
前記情報提供サーバは,
前記会場を構成する各種図面を合成・生成したレイアウト画像を,ユーザー操作により移動,回転,拡張表示等が可能なように,Webブラウザ上に表示する,画像生成手段と,
前記ユーザー端末のWebブラウザと前記情報提供サーバとの通信によりユーザーが前記レイアウト画像を用いて編集した会場レイアウトを前記データベースに保存する会場レイアウト変更手段と,
前記ユーザー端末から予約を受け付け受信した予約情報を前記データベースに登録する予約登録手段と,
前記会場レイアウト変更手段は,ユーザがWeb上の画像により会場レイアウトを編集して作成したレイアウト情報を,予約情報の一部として前記データベースに保存するようにした,Web画面によるパーティ等の会場検索システム。」の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(2)対比

本件補正発明と引用発明を対比すると,引用発明の「インターネット」,「パーティ等の会場」,「情報提供サーバ」は,本件補正発明の「広域ネットワーク」,「催物会場」,「会場予約センターのサーバーシステム」に相当するから,両者は,

「広域ネットワークを介してユーザが希望する催物会場の検索・予約を行うシステムであって,
広域ネットワーク上に不特定多数のユーザーを対象に会場のレイアウト画面を含む画像によるパーティ等の会場のホームページを開設して閲覧を受付けるWebサーバと,催物会場の検索・予約のための各種画像を格納しユーザーからの予約情報を登録するためのデータベースと,を有する会場予約センターのサーバーシステムと,
Webブラウザを用いて希望する催物会場の検索・予約を行うユーザー端末と,から構成され,
前記サーバーシステムは,
前記会場を構成する各種図面を合成・生成したレイアウト画像を,ユーザー操作により移動,回転,拡張表示等が可能なように,Webブラウザ上に表示する,画像生成手段と,
前記ユーザー端末のWebブラウザと前記Webサーバーとの通信によりユーザーが前記レイアウト画像を用いて編集した会場レイアウトを前記データベースに保存する会場レイアウト変更手段と,
前記ユーザー端末から予約を受け付け受信した予約情報を前記データベースに登録する予約登録手段と,
前記会場レイアウト変更手段は,ユーザがWeb上の画像により会場レイアウトを編集して作成したレイアウト情報を,予約情報の一部として前記データベースに保持することを特徴とする,Web画面による催物会場検索システム。」

の点で一致し,次の点で相違する。

[相違点]
(相違点1)
本件補正発明では,前記サーバーシステムには,各種3D画像が格納され,
催物会場を構成する分割撮像データ等の各種画像をモデリングにより合成・生成した3D画像に,マテリアル,テクスチュアマッピング,カメラ,ライティング,アニメーション等の各種編集処理を行ってVRMLファイル形式に変換し,変換されたVRMLファイル及びその各種ノードより,Webブラウザ上でユーザー操作により移動,回転,拡大・縮小が可能な双方向型Web3D画像として表示させるためのツールバーファイル,3Dシーン情報,及び3Dシーンを読込み描画するためのHTMLドキュメントに埋め込まれて実行される3Dアプレットに書換え変換する3D画像生成手段と,
ユーザー端末のWebブラウザと前記Webサーバーとの通信によりユーザーがWeb3D画像を用いて編集した催物会場レイアウトを前記データベースに保持する会場レイアウト変更手段とを備え,
会場レイアウト変更手段は,上記の3D画像生成手段を用いてユーザーが編集してアップロードした情報を予約情報の一部としてデータベースに保持するのにであるのに対し,
引用発明では,レイアウト画像は平面画像であり,Web3D画像の生成やその編集については何も記載がない点。

(相違点2)
本件補正発明では,予約を受付けた催物会場の使用代金をクレジットカード,電子マネー等を用いた電子決済により徴収する課金手段を備えているのに対し,引用発明では,料金の表示や確認が行えるようになっているものの,課金手段については,記載がない点。

(3)判断
(3-1)相違点1について
(3-1-1)当審判合議体は,相違点1に係る構成とすることは,Web3Dに関する周知技術に照らして,引用発明に接した当業者が容易になし得る設計変更の範囲内のものと判断する。その理由は,以下のとおりである。

(3-1-2)Web3Dに関する周知技術について
ア 審査手続の拒絶理由においてWeb3D技術が周知であることを示すために引用された,本願の出願前日本国内において頒布された刊行物である,サンディー レスラー著「Web3Dの海外最新動向 VRMLを越えるために新しい動きが始まった」,NIKKEI COMPUTER GRAPHICS,166号(日経BP社,2000年7月発行),120?125頁には,「Shout Interractive」に関連して,次の記載がある。

(ア)「Web3Dの中心的存在へ
Web3D技術「Shout3D」の開発元である米Shout Interractive社は,Web3Dの世界で中心的な存在となりつつあるベンダーだ。最近ではShoutはポータルサイトのExciteが運営する,将来のWebの姿を見せるショーケース的なサイト「Excite Extreme」やデパートのMacy'sと提携し,バーチャル・ファッションショー(図1)やクリスマスプレゼントのためのショッピングサイトで大きな成功を収めている。
元々ShoutはVRMLコンテンツ作成を請け負う企業として長い歴史を持っている。VRMLの勢いは以前ほどないが,ShoutはさらにVRMLに力を入れようとしている。その象徴といえる動きが,次世代のVRMLと位置づけられている「X3D」の標準仕様策定作業に参加したことだ。X3Dの使用を提案しており,そのためのツール開発も行っている。
この開発状況において重要なことは,自分たちが提案している使用に準拠したJavaベースのレンダラを開発したこと。これにより,プラグインを使わずにコンテンツを表示することを可能にした。プラグインを必要としない技術を実現したことは,後述する通り非常に重要は意味を持つ。」(121頁右欄下から4行?122頁左欄23行)

(イ)「プラグインをなくす
Shout Interractiveはこうした問題を認識し,上述の通りShout3DをJavaで作成したレンダラ(アプレット)を開発した。VRMLレンダラをJavaで作成すると,やっかいなプラグインの問題を回避することができる。つまり,プラグインのことを気にせずに済むということは,非常に大事なことである。
ほとんどの人々はWeb3Dで提供される機能に慣れていないため,どんなメリットをもたらすのかよく理解していない。このため,プラグインのインストールにかかる時間をがまんできない人の方が多いだろう。
解決策として,2つの方法が考えられる。その1つはプラグインをやめてしまうこと。つまり上述したShout,ほかにもBlaxxumが採用している方法だ。・・・」(123頁中欄下から13行?右欄7行)

(ウ)「Web3Dがあって当然になる
将来,Web3Dは至る所に存在するようになるだろう。我々がその存在を特別に意識することもなく,そこに(そのWebページに)あって当たり前というものになると思われる。そのうち商品の3D表示,対話を機能を備えていない店舗(のWeb)に対し,ユーザーが非常にがっかりしてしまうようになっていくのではないだろうか。
また,Web3DはWebページとよりシームレスに融合されていくことが期待されている。3Dと相互作用するテキスト,Webページは,限りない可能性を秘めている。・・・」(125頁中欄9行?右欄7行)

イ このほか,本願の出願前日本国内において頒布された刊行物である,福島隆之著「Web3D技術の建築室内空間デザインへの適用」データベースとWeb情報システムに関するシンポジウム(DBWeb2001)論文集(情報処理学会,平成13年12月5日発行)301?306頁には,図1?4とともに,次の記載がある。

(ア)はじめに
「住宅の購入を考えいている人々にとって,最も効果的な情報収集法は実際の物件を見学することであろう。しかし,時間的空間的制約や,新築では物件そのものがないなどの理由から・・・インターネットなどのメディアを通し,文字,図面やパース,映像によって伝えれられるのが普通である。しかしこれら2次元情報だけでは,実際の間取りのスケール感覚や,家具を配置したときの「イメージを掴むのは難しいといった問題がある。」
これらの問題を解決するには,インターネット上で住宅内部を3次元表現できる仕組みが非常に有効である。・・・
上記の観点から,筆者はインターネット上で動作する住空間バーチャルリアリティ(VR)システム「ルームナビ」の開発を行った。本稿では,この「ルームナビ」のねらいと構成,およびその技術内容,運用事例について述べる。」(301頁左欄2?22行)

(イ)開発技術の概要
「「3Dビューア」システムは以下のような構成となっている。(図4)
(1)3次元画像描画アプレット 住空間の3次元データを読み取って画像として描画するアプレットである。描画エンジンにはBlaxxum3DまたはShout3Dを使用している。
(2)視点操作インタフェイス・アプレット 利用者からの操作を受けたのに,3次元空間にアクセスして所定の画面を描くように描画アプレットに命令するアプレットである。
(3)インテリア・シミュレーション・アプレット 家具などの一覧を表示し,選択されたものを3次元空間内に配置するとともに,その移動,交換,削除などをつかさどるアプレットである。これらのアプレットはそれぞれ独立したコンポーネントであるため,利用用途に応じたカスタマイズが容易である。また,全てのコンポーネントがJAVAアプレットであるため,利用者のパソコンにプラグイン等のソフトウエアのインストールが不要である。」(302頁左欄18?末行)

なお,日経デジケン2000Vol.7(日経BP社,2000年5月20日発行)23頁には,「ルームナビ」のソフトウエアが2000年3月1日に発売されたとの案内記事が掲載されている。

ウ さらに,本願の出願前日本国内において頒布された刊行物である,松下電工技報No.76(2001年12月31日発行)4?8頁にも,「インタネット対応型住空間VRシステム「ルームナビ」」と題して,上記イと同様の内容の記事が掲載されている。

エ 上記イ,ウの刊行物に記載の「ルームナビ」の「視点操作アプレット」は,Webブラウザ上でユーザーの操作により,画像の移動,回転,拡大,縮小を行うものであるから,画像を操作するための「ツールバー」を生成するためのものといえる。

オ したがって,VRMLファイル形式に変換した三次元構造物の3Dデータ(必要に応じてマテリアルマッピング処理などが施されている)を,Webブラウザ上で表示し,これを操作するために,HTMLドキュメントに埋め込まれて実行されるアプレット群(ツールバーのアプレットを含む)を用意し,Webブラウザ上でユーザーが容易に三次元構造物の配置等を操作可能とする技術は,本願出願前にすでに周知の技術であり,実際に利用されていたものと認められる。

(3-1-3)
そうすると,相違点1に係る構成には,本願出願前に周知となっていたWeb3D技術を引用発明に適用したという以上の内容を見出すことができず,相違点1に係る構成は,引用発明に接した当業者(Web3D技術の知識を有している)が容易になし得る設計変更の範囲内のものと判断される。

本願の明細書の記載を見ても,Web3D技術の具体的な適用については,次の記述があるだけで,上記(3-1-2)ア,イ,ウの刊行物の開示内容を超えるものは見出せない。このことによっても,上記判断が妥当であることが裏付けられる。
段落【0012】
「・・・先ず,3D画像生成手段9によるHPに掲載する会場レイアウトの3D画像生成のモデリングは,レンジファインダー等の距離測定方式,3Dカメラによる撮影方式等,色々なケースが考えられるが,図2に示すように,3Dデータ入力手段21から,会場全体の分割3D画像データ等を入力して,3D画像作成手段22のモデリングにより合成して3D会場画像を生成する。3D画像編集手段23では,マテリアル,テクスチュアマッピング,カメラ,ライティング,レンダリング,アニメ処理などの編集処理を行い,生成した3D会場画像をインターネットで3D表現できるファイル形式に変換する。例えば,3DStudioMAX(商品名),ViewpointSceneBuilder(商品名)等が利用できる。」
段落【0013】
「次に,インターネットブラウザに対応する組合せにするためにデータ変換手段24により,例えば,PhotoShop(商品名)等を使用してイメージファイルを編集し,ノード,フィールドで表すVRMLファイル形式に変換する。これで,VRML対応のビューワを有するWebブラウザで3D表示が可能であるが,更に,VRMLのビューワを持たない通常のブラウザでも表示できるように,HTMLドキュメントに埋込まれてWebブラウザ上で実行されるJava(R)アプレット(3DAアプレットと呼ぶ)形式に書替える。これによってブラウザ側では,Web上に3Dシーンを表示するためのツールバーファイル(オブジェクトの回転,拡大・縮小,移動,命令等を含む)と,3DAアプレットによる3DAファイルを,Webサーバー8側からダウンロードして実行することにより,3Dビューワ無しに3D画像の表示・編集が可能になる。」

(3-2)相違点2について
ネットワークを介して情報サービスを行うシステムに,電子決済による課金手段を設けることは,当業者が必要に応じて行っていることであり,設計事項といえる。

(3-3)以上のとおり,相違点1,2に係る構成は,当業者が容易に想到できたものといえる。本件補正発明の効果についても,引用発明及び周知技術から予測される範囲のものである。

したがって,本件補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-4 まとめ
以上の次第で,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法第126条5項の規定に違反するので,同法159条1項ににおいて読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明

平成17年3月22日に提出された手続補正書による補正は,上記のとおり,却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成16年10月12日に提出された手続補正書により補正された,次のとおりのものである。

「広域ネットワークを介してユーザーが希望する催物会場の検索・予約を行うシステムであって,
広域ネットワーク上に不特定多数のユーザーを対象に双方向型のWeb3D画像による催物会場のHPを開設して閲覧を受付けるWebサーバーと,催物会場の検索・予約のための各種3D画像を格納しユーザーからの予約情報を登録するデータベースと,を有する会場予約センターのサーバーシステムと,
Webブラウザを用いて希望する催物会場の検索・予約を行うユーザー端末と,から少なくとも構成され,
前記サーバーシステムは,
前記催物会場を構成する撮像データ等の各種画像をモデリングにより生成・編集した3D画像を基に,Webブラウザ上でユーザー操作により移動,回転,拡大・縮小が可能な双方向型Web3D画像として表示させるための3Dシーン情報及び該3Dシーンを描画するための3Dアプレットに変換する3D画像生成手段と,
前記ユーザー端末のWebブラウザと前記Webサーバーとの通信によりユーザーが前記Web3D画像を用いて編集した催物会場レイアウトを前記データベースに保持する会場レイアウト変更手段と,
前記ユーザー端末から予約を受付け受信した予約情報を前記データベースに登録する予約登録手段と,
予約を受付けた催物会場の使用代金をクレジットカード,電子マネー等を用いた電子決済により徴収する課金手段と,を備え,
前記会場レイアウト変更手段は,ユーザーが前記Web3D画像により催物会場レイアウトを表示するための3Dシーン情報及び3Dアプレットをサーバー側からユーザー端末にダウンロードし該催物会場レイアウトを編集してアップロードした催物会場のレイアウト情報を予約情報の一部として前記データベースに保持することを特徴とするWeb3Dによる催物会場検索システム。」

3-1 審査手続の拒絶理由で引用された刊行物の記載内容及び引用発明は,前記2-3(1)認定したとおりである。

3-2 対比・判断
前記2-2で検討したように,本件補正発明は,本願発明における「3D画像生成手段」が有する機能について,(1)3D画像をVRMLファイル形式に変換すること,及び,(2)Web3D画像として表示させるためのツールバーファイル,3Dシーン情報,及び3Dシーンを読込み描画するためのHTMLドキュメントに埋め込まれて実行される3Dアプレットに書換え変換することを,より具体的に限定したものである。したがって,逆に言えば,本願発明は,本件補正発明からこのような限定をなくしたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,これをより具体的に限定したものである本件補正発明が,前記2-3(3)において検討したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものということができる。

4 むすび

以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-10-31 
結審通知日 2008-11-04 
審決日 2008-11-17 
出願番号 特願2002-148208(P2002-148208)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 575- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 篠原 功一宮久保 博幸  
特許庁審判長 相田 義明
特許庁審判官 後藤 彰
清田 健一
発明の名称 Web3Dによる催物会場検索システム  
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所  

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