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審決分類 |
審判 判定 同一 属する(申立て成立) H01B |
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管理番号 | 1190613 |
判定請求番号 | 判定2008-600037 |
総通号数 | 110 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2009-02-27 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2008-07-29 |
確定日 | 2008-12-18 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3942104号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号写真に示す「フラットケーブルセット」は、特許第3942104号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属する。 |
理由 |
第1 請求の趣旨 本件判定請求の趣旨は、イ号写真に示す「フラットケーブルセット」(以下、「イ号物件」という。)が請求人所有の特許第3942104号の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属するとの判定を求めたものである。 第2 本件特許発明 本件特許発明は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その構成要件を分説すると次のとおりである。 (a)建造物の室内の商用電源の電圧を降圧する降圧手段と、 (b)前記降圧手段の電力を前記建造物の他の室内又は屋外(以下屋外等と称する)に給電する給電手段と、 (c)前記給電手段の電力を前記屋外等で前記商用電源の電圧に相応する電圧に昇圧する昇圧手段とを備え、 (d)前記給電手段は、前記室内と屋外等との間を開閉する開閉体と前記開閉体が閉じたときに対向する対向面との間の隙間を通ることができる3導体以上の隙間貫通部分を有し、 (e)前記隙間貫通部分は、低抵抗化多導体可撓性扁平部であること (f)を特徴とする電源装置。 第3 イ号物件 イ号物件の構成は、イ号写真から読み取れる用語を用い、判定請求書中のイ号物件の説明を参酌して、本件特許発明の分説と対応するように分説すると、次のとおりである。 なお、イ号物件の構成の認定について、請求人と被請求人との間に争いがあったので、審判合議体は、平成20年11月19日に特許庁審判廷において口頭審理を行い、イ号物件が以下のとおりの構成を具備することを確認するとともに、請求人、被請求人もこれに同意した。(「第1回口頭審理調書」参照。) (イ)室内用電源の電圧を降圧する降圧用トランスと、 (ロ)前記降圧用トランスの電力を屋外等に給電する給電コード及びフラットケーブルと、 (ハ)前記給電コード及びフラットケーブルの電力を前記屋外等で100Vに昇圧する昇圧用トランスとを備え、 (ニ)前記給電コード及びフラットケーブルは、前記室内と屋外等との間を開閉するサッシと前記サッシが閉じたときに対向する対向面との隙間を通ることができる20本の導体のフラットケーブルを有し、 (ホ)前記フラットケーブルは、多導体可撓性扁平部である (ヘ)フラットケーブルセット。 第4 対比・判断 次に、イ号物件の各構成(イ)?(ヘ)がそれぞれ本件特許発明の各構成要件(a)?(f)を充足するものであるか否かについて検討する。 1 構成要件(a)について イ号物件の構成(イ)と本件特許発明の構成要件(a)とを対比すると、構成(イ)の「室内用電源」及び「降圧用トランス」が、構成要件(a)の「建造物の室内の商用電源」及び「降圧手段」にそれぞれ相当する。 したがって、イ号物件の構成(イ)は、本件特許発明の構成要件(a)を充足している。 2 構成要件(b)について イ号物件の構成(ロ)と構成要件(b)とを対比すると、構成(ロ)の「給電コード及びフラットケーブル」が構成要件(b)の「給電手段」に相当する。 したがって、イ号物件の構成(ロ)は、本件特許発明の構成要件(b)を充足している。 3 構成要件(c)について イ号物件の構成(ハ)と構成要件(c)とを対比すると、構成(ハ)の「100V」及び「昇圧用トランス」が、構成要件(c)の「商用電源の電圧に相当する電圧」及び「昇圧手段」にそれぞれ相当する。 したがって、イ号物件の構成(ハ)は、本件特許発明の構成要件(c)を充足している。 4 構成要件(d)について イ号物件の構成(ニ)と構成要件(d)とを対比すると、構成(ニ)の「サッシ」及び「20本の導体のフラットケーブル」が、構成要件(d)の「開閉体」及び「3導体以上の隙間貫通部分」にそれぞれ相当する。 したがって、イ号物件の構成(ニ)は、本件特許発明の構成要件(d)を充足している。 5 構成要件(e)について 本件特許発明の構成要件(e)において、「低抵抗化」という用語は、一義的に明確ではないので、明細書等の記載を参酌してこの用語を解釈することとする。 本件特許の明細書には次のように記載されている。 ・「【0016】 給電手段の隙間貫通部分は、3導体以上の多導体から成っているため、低電圧によって高くなる高電流を低い抵抗で通電するので、電力の損失を少なくして高い効率で給電することができる。」 ・「【0019】 本発明の幾つかの実施形態による電源装置を添付の図面を参照して以下に詳細に述べる。図1は、本発明に係わる電源装置10の概略系統を示し、同図に示すように、本発明の電源装置10は、基本的には、家屋、ビルディング、マンション等の建造物BLの室内の商用電源(電源コンセント12)から給電されて商用電源の電圧(100V)を適宜の低電圧、例えば、12Vに降圧する降圧手段20と、この降圧手段20の電力を建造物BLの他の室内又は屋外(以下屋外等と称する)に給電する給電手段30と、この給電手段30からの電力を屋外等で商用電源の電圧に相応する電圧(100V)に昇圧する昇圧手段40とを備えている。」 上記【0019】の記載によれば、本件特許発明の「建造物の室内の商用電源」とは、一般的な家屋等で使用する100Vの商用電源の電源コンセントであると解される。そして、このような電源コンセントは2本の導電路により給電されており、また、「降圧手段」により降圧した後も、特殊な事情がない限り導電路の数を変化させないことが技術常識といえる。 更に、上記【0016】及び【0019】によれば、その2本の導電路が接続される「隙間貫通部分は、3導体以上の多導体からなっているため、低電圧によって高くなる高電流を低い抵抗で通電することができ」るものであるから、本件特許発明の構成要件(e)における「低抵抗化」とは、2本の導電路が接続される隙間貫通部分を3導体以上の多導体で構成すること、と解釈できる。 すなわち、構成要件(e)の「低抵抗化」とは、隙間貫通部分を3導体以上の多導体とすることにより奏される作用効果を説明するものであるといえる。 そこで、イ号物件の構成(ホ)と本件特許発明の構成要件(e)とを対比する。 イ号物件の構成(ホ)における「多導体可撓性扁平部」は、構成(ニ)で定義されている20本の導体のフラットケーブルであり、第1回口頭審理調書によれば、給電コードからの電流は当該フラットケーブルにおいて20導体に分流されているから、イ号物件のフラットケーブルは、3導体以上の多導体で構成することによって「低抵抗化」されているものであるといえる。 以上のことから、構成(ホ)の「多導体可撓性扁平部」は、構成要件(d)の「低抵抗化多導体可撓性扁平部」に相当する。 したがって、イ号物件の構成(ホ)は、構成要件(e)を充足する。 なお、被請求人は、「多導体=低抵抗化」という解釈は、特許請求の範囲からは解釈し難いと主張している。 しかし、特許請求の範囲から解釈し難い場合、即ち、本件特許発明の構成要件中に一義的に明確でない用語がある場合には、明細書等の記載を参酌してその用語を解釈した上で、イ号物件の構成と対比することとなる。そして、本件特許発明における「低抵抗化」についての解釈及び対比は上述したとおりである。 また、被請求人は、本件特許発明の構成要件(e)における「低抵抗化多導体可撓性扁平部」は、通常の多導体よりも低い抵抗の多導体にしたもので、「銀」や「高温超伝導材料」からなる多導体可撓性扁平部である、とも主張している。 しかし、特許請求の範囲に「銀」や「特殊な高温超電導合金」を使用するという記載がないばかりか、明細書等の記載全体を見てもそのように解さなければならない事情はない。 したがって、被請求人の上記主張を採用することはできない。 6 構成要件(f)について イ号物件の構成(ヘ)と構成要件(f)とを対比すると、構成(ヘ)の「フラットケーブルセット」が構成要件(f)の「電源装置」に相当する。 したがって、イ号物件の構成(ヘ)は、本件特許発明の構成要件(f)を充足している。 第5 むすび 以上のとおり、イ号物件の各構成(イ)?(ヘ)は、それぞれ本件特許発明の各構成要件(a)?(f)を充足するため、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属するものである。 よって、結論のとおり判定する。 イ号写真 |
判定日 | 2008-12-05 |
出願番号 | 特願2006-19197(P2006-19197) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
YA
(H01B)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 矢島 伸一 |
特許庁審判長 |
大河原 裕 |
特許庁審判官 |
仁木 浩 小川 恭司 |
登録日 | 2007-04-13 |
登録番号 | 特許第3942104号(P3942104) |
発明の名称 | 電源装置 |
代理人 | 菊池 新一 |
代理人 | 杉本 勝徳 |
復代理人 | 内山 邦彦 |
代理人 | 菊池 徹 |