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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02P |
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管理番号 | 1191499 |
審判番号 | 不服2006-23972 |
総通号数 | 111 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-10-23 |
確定日 | 2009-01-22 |
事件の表示 | 特願2003-379630「ファンモータの回転速度制御回路」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 2月17日出願公開、特開2005- 45991〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件出願(以下「本願」という。)は、平成15年11月10日(優先権主張2003年7月22日、台湾)の出願であって、平成18年7月18日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年10月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされた後、当審における平成20年4月15日付けの拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)通知に対し、同年7月22日に特許請求の範囲、明細書及び図面についての補正がなされたものである。 2.本願発明について 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年7月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「ファンモータの回転速度を制御するために入力されるパルス幅変調信号を受信して電圧信号に変換するデジタル/アナログ変換ユニットと、 前記デジタル/アナログ変換ユニットに直列に接続され、前記電圧信号を受信し、かつ25KHZ以上の高周波信号を出力して第1所定電圧と該第1所定電圧よりも小さい第2所定電圧とを提供する駆動ユニットとを備えたファンモータの回転速度制御回路であって、 前記駆動ユニットは、前記電圧信号のレベルと前記第1所定電圧及び第2所定電圧のレベルとを比較して、前記電圧信号のレベルが前記第1所定電圧のレベルよりも高い場合には、前記ファンモータが所定の低回転速度を有し、前記電圧信号のレベルが前記第1所定電圧のレベルよりも低くかつ前記第2所定電圧のレベルよりも高い場合には、前記ファンモータが可変回転速度を有し、前記電圧信号のレベルが前記第2所定電圧のレベルよりも低い場合には、前記ファンモータが所定の高回転速度を有するように、ファンモータを制御するものとされ、 前記デジタル/アナログ変換ユニットは、トランジスタとダイオードと容量と複数の抵抗とのみからなることを特徴とするファンモータの回転速度制御回路。」 3.引用例 一方、当審拒絶理由に引用した特開平9-233881号公報(以下「引用例」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は印加電圧を可変して回転数制御する、例えば空調機に使用するDCブラシレスファンモータの制御回路に関する。」 ・「【0008】 【課題を解決するための手段】この発明のDCブラシレスファンモータの制御回路は、ファンモータの回転数を決定する速度制御指令機能と速度制御指令に基づきPWM信号を発生する機能を有したマイコンと、前記PWM信号をアナログ信号に変換すると共に変化応答時間を遅らせる機能を有した積分器と、三角波発生回路と、前記積分器のアナログ信号と三角波をと比較してデューティ可変出力信号を生成する比較器と、この比較器より出力されるデューティ可変出力信号により直流電源をDC/DC変換して出力電圧を決定するDC/DC変換器と、直流電源から疑似交流電源を生成するインバータと、回転子の位置を検出する位置検出器と、この位置検出信号から前記インバータの駆動信号を生成する制御器を備え、DCブラシレスモータの回転数決定部を前記マイコンに設けたものである。」 ・「【0021】次に、図4、図5を用いてこの発明における積分器の構成を説明する。トランジスタTR41のエミッタには電源が接続され、コレクタは抵抗R142の片側に接続されている。抵抗R142の他の端子には抵抗R243とコンデンサC44の片側が接続され、抵抗R243とコンデンサC44の他の端子はGNDに接続されている。ここで、トランジスタTR41のベースにはマイコン2から出力されるデューティ可変のPWM信号が入力され、トランジスタTR41はこのPWM信号に基づいてオンオフ動作を繰り返す。また、抵抗R142、抵抗R243、コンデンサC44の接続部がアナログ電圧の出力端子部であり、比較器7に入力される。」 ・「【0033】実施の形態2.以下、この発明の実施の形態2を図6のブロック図で説明する。図において、DCブラシレスモータ1はインバータ3並びに位置検出器4に接続されている。インバータ3は、制御器5より入力される制御信号と直流電源10より、任意電圧、任意周波数の疑似交流電源を出力し、DCブラシレスモータ1を駆動する。位置検出部4は、DCブラシレスモータ1のロータ位置からロータ磁束のゼロクロスタイミング、すなわちロータの位置検出波形を生成し、制御器5に出力する。制御器5は、比較器7、位置検出器4、インバータ3と接続され、三角波発生器8と積分器9からのアナログ入力信号を比較して得られたデューティ可変のPWM信号によってインバータ3から出力する電圧を決定するとともに、位置検出波形入力に基づき出力相を切換え、インバータ3を介して疑似交流波形を生成し、DCブラシレスモータを駆動する。マイコン2には、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリ11が接続され、この不揮発性メモリ11に予め記憶された回転数データを読出し、それに基づいたPWM信号を生成し積分器9に入力される。積分器9は、マイコン2から出力されるPWM信号を積分しアナログ電圧信号を生成し、PWMのデューティ比により電圧値が決定される。結果、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリ11に設定された回転数データに基づいたデューティ可変のPWM信号により、疑似交流波形の電圧、周波数が制御され、DCブラシレスモータ1が駆動される。 【0034】図7はこの実施の形態2の各部の動作を表すタイミング図で、以降上記実施の形態1と同様に、DCブラシレスモータ1への印加電圧を制御する動作を説明する。図7において、波形aはマイコン2から出力されるPWM出力、波形bは積分器9の出力、波形cは三角波発生器8の出力、波形dは比較器7の出力であり、波形eがインバータ3に入力されるDC電源波形を、それぞれ時間経過で示している。 【0035】図7において、時間t0にて、PWM出力波形aはHi一定である。時間t1にて、PWM信号が出力され、積分器出力波形bは上昇をはじめt1aにて安定する。比較器7は、三角波波形c(注:「の三角波波形c」は誤記)と積分器出力波形bを比較し、比較器出力波形dに示されるPWM信号を生成する。比較器出力波形dは、積分器出力波形bの上昇に比例して時間t1からパルス幅が変化(ここではHiのデューティ比率が高くなるよう示している)し、時間t1aにて等幅のPWMになる。 【0036】インバータ出力波形gは、インバータ3の出力電圧波形を示し、インバータ入力電圧波形eの電圧値の振幅をもつPWM変調による疑似交流波形が出力される。積分器出力電圧が低いときには、同疑似交流波形のパルス幅が細く、図において点線で示した様に平均電圧が低く出力されている。時間t2にて、回転数を変化させるべく(ここでは上げる例で示す)マイコン2がPWM出力を変化させ、PWM出力波形aに示す様にLoのデューティ比率を高くすると、前述のように積分器出力bが上昇し、比較器出力dのPWMのHiのデューティ比率が高くなり、インバータ3出力波形のパルス幅が太くなり平均電圧が高く出力され電圧を高くした分、出力電圧の周波数が高くなり、モータ回転数は高くなっている。 【0037】インバータ入力電圧波形fは、インバータ3の入力電流波形で、インバータ出力電圧、並びにDCブラシレスモータの回転数に準じた電流が流れている。 【0038】以上のように、マイコン2のPWMのデューティ比率を変化させる事により、インバータ3の出力電圧を制御でき、DCブラシレスモータ1への印加電圧を制御できるので、DC/DC変換器6を用いない例、すなわち、制御器5とインバータ3に出力電圧の制御機能を持たせた場合にも、実施の形態1と同様の効果が得られる。」 ・図6には、比較器7が、積分器9に直列に接続されていることが示されている。 ・図7の「c.」には、三角波が、三角波の頂点位置における電圧に該当する「頂点電圧」と、該頂点電圧よりも小さい、三角波の底辺位置における電圧に該当する「底辺電圧」とを有することが示されている。 ・図7には、図6及び明細書の【0034】ないし【0037】の記載内容を参酌すると、制御器5が、アナログ電圧信号(図7の「b.」の積分器出力)のレベルが三角波(図7の「c.」)の頂点電圧のレベルよりも低くかつ三角波の底辺電圧のレベルよりも高い場合には、DCブラシレスモータ1(DCブラシレスファンモータ)が可変回転数を有するように、DCブラシレスモータ1を制御することが示されているといえる。 これらの記載事項及び図示内容によれば、引用例には、 「DCブラシレスファンモータの回転数を制御するために入力されるPWM信号を入力してアナログ電圧信号を生成する積分器と、 前記積分器に直列に接続され、前記アナログ電圧信号を受信する比較器と、三角波を出力して頂点電圧と該頂点電圧よりも小さい底辺電圧とを提供する三角波発生器と、制御器とを備えたDCブラシレスファンモータの回転数制御回路であって、 前記比較器は、前記アナログ電圧信号のレベルと前記三角波のレベルとを比較して、前記制御器は、前記アナログ電圧信号のレベルが前記頂点電圧のレベルよりも低くかつ前記底辺電圧のレベルよりも高い場合には、前記DCブラシレスファンモータが可変回転数を有するように、DCブラシレスファンモータを制御するものとされ、 前記積分器は、トランジスタとコンデンサと複数の抵抗とからなるDCブラシレスファンモータの回転数制御回路。」 という事項を含む発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認定することができる。 4.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「DCブラシレスファンモータ」は、本願発明の「ファンモータ」に相当する。 また、引用発明の「回転数を制御」することは、引用例の【0008】に「ファンモータの回転数を決定する速度制御指令機能」との記載があることから明らかなように、本願発明の「回転速度を制御」することに相当する。 次に、引用発明の「PWM信号を入力」する態様は本願発明の「パルス幅変調信号を受信」する態様に相当し、以下同様に、「アナログ電圧信号を生成」する態様は「電圧信号に変換」する態様に、「積分器」はデジタル信号であるPWM信号をアナログ電圧信号に変換するものであるから「デジタル/アナログ変換ユニット」に、それぞれ相当する。 続いて、引用発明の「三角波を出力」する態様と、本願発明の「25KHZ以上の高周波信号を出力」する態様とは、「周期信号を出力」する態様という概念で共通する。 さらに、引用発明の「頂点電圧」及び「底辺電圧」は、それぞれ、本願発明の「第1所定電圧」及び「第2所定電圧」に相当する。 そうすると、引用発明の、積分器に直列に接続され、アナログ電圧信号を受信し、かつ、アナログ電圧信号のレベルと三角波のレベルとを比較する「比較器」と、本願発明の、デジタル/アナログ変換ユニットに直列に接続され、電圧信号を受信し、かつ、電圧信号のレベルと第1所定電圧及び第2所定電圧のレベルとを比較する「駆動ユニット」とは、「比較手段」という概念で共通する。なお、本願発明の「電圧信号のレベルと第1所定電圧及び第2所定電圧のレベルとを比較」することについては、本願の願書に最初に添付された明細書(以下「当初明細書」という。)の【0013】の「次に、制御素子232は、このしきい値電圧のレベルV_(TH)と、発振素子231が出力する高周波数信号(図3Bを参照)の高電圧レベルV_(H)及び低電圧レベルV_(L)との違いを比較する。」との記載、並びに、本願の図3Bに示される高周波数信号が三角波であり、その高電圧レベル及び低電圧レベルとはそれぞれ三角波の頂点の電圧及び底辺の電圧に相当するものとして図示されていること、及び、当初明細書又は図面に何ら説明はされていないものの、本願発明の実施に際しては、電圧信号(【0013】での「しきい値電圧のレベルV_(TH)」)と図3Bの高周波数信号(三角波)とを比較して、ファンモータの回転速度制御のための信号を生成しているものと解されること、を総合すると、実質的に「電圧信号のレベルと高周波信号(三角波)とを比較」することを意味するものと解される。そうなると、引用発明の「アナログ電圧信号のレベルと三角波のレベルとを比較」する態様は、本願発明の「電圧信号のレベルと第1所定電圧及び第2所定電圧のレベルとを比較」する態様に、実質的に相当する。 そして、引用発明の、三角波を出力して頂点電圧と該頂点電圧よりも小さい底辺電圧とを提供する「三角波発生器」と、本願発明の25kHz以上の高周波信号を出力して第1所定電圧と該第1所定電圧よりも小さい第2所定電圧とを提供する「駆動ユニット」とは、「周期信号発生手段」という概念で共通する。 また、引用発明のDCブラシレスファンモータを制御する「制御器」と、本願発明のファンモータを制御する「駆動ユニット」とは、「制御手段」という概念で共通する。 そして、引用発明の「可変回転数」は、実質的に、本願発明の「可変回転速度」に相当する。 最後に、引用発明の「コンデンサ」は本願発明の「容量」に相当するから、引用発明の「トランジスタとコンデンサと複数の抵抗とからなる」構成は、本願発明の「トランジスタとダイオードと容量と複数の抵抗とのみからなる」構成と、「少なくともトランジスタと容量と複数の抵抗とからなる」構成という概念で共通する。 そうすると、両者は、 「ファンモータの回転速度を制御するために入力されるパルス幅変調信号を受信して電圧信号に変換するデジタル/アナログ変換ユニットと、 前記デジタル/アナログ変換ユニットに直列に接続され、前記電圧信号を受信する比較手段と、周期信号を出力して第1所定電圧と該第1所定電圧よりも小さい第2所定電圧とを提供する周期信号発生手段と、制御手段とを備えたファンモータの回転速度制御回路であって、 前記比較手段は、前記電圧信号のレベルと前記第1所定電圧及び第2所定電圧のレベルとを比較して、前記制御手段は、前記電圧信号のレベルが前記第1所定電圧のレベルよりも低くかつ前記第2所定電圧のレベルよりも高い場合には、前記ファンモータが可変回転速度を有するように、ファンモータを制御するものとされ、 前記デジタル/アナログ変換ユニットは、少なくともトランジスタと容量と複数の抵抗とからなるファンモータの回転速度制御回路。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 ・相違点1 周期信号が、本願発明では「25KHZ以上の高周波信号」と特定されるのに対し、引用発明では単に「三角波」とされている点。 ・相違点2 比較手段、周期信号発生手段、及び、制御手段が、本願発明では「駆動ユニット」として一体に構成されているのに対し、引用発明では、それぞれ「比較器」、「三角波発生器」、及び、「制御器」として別体に構成されている点。 ・相違点3 制御手段について、本願発明では「電圧信号のレベルが第1所定電圧のレベルよりも高い場合には、ファンモータが所定の低回転速度を有」するように制御するものと特定されているのに対し、引用発明ではかかる特定がされていない点。 ・相違点4 制御手段について、本願発明では「電圧信号のレベルが第2所定電圧のレベルよりも低い場合には、ファンモータが所定の高回転速度を有」するように制御するものと特定されているのに対し、引用発明ではかかる特定がされていない点。 ・相違点5 デジタル/アナログ変換ユニットに関し、本願発明ではトランジスタと「ダイオード」と容量と複数の抵抗と「のみ」からなるものであると特定されるのに対し、引用発明ではトランジスタと容量(コンデンサ)と複数の抵抗とからなるものである点。 5.相違点についての判断 ・相違点1について ファンモータの回転速度制御に際し、制御を低騒音に行うべく、制御に用いる周期信号として可聴周波数の範囲を超えた20kHz以上の周波数をもつ信号を採用することは、周知の技術である(例えば、特開平10-65504号公報の【0001】の「本発明は、チョッパ制御によりファンモータ等の可変速制御を行うパルス幅変調回路に関するものである。」及び【0030】の「このように、タイミングコンデンサCtは一定の周期で充放電を繰り返し、図3(a)に示すように、その端子間には鋸歯状の電圧波が生じる。この電圧波の周波数は、タイミングコンデンサCtの放電をダイオードD2により急速に行うことによって、可聴周波数の範囲を超えた20kHz以上の周波数となる。」という記載等を参照)。 また、25kHz以上という値についても、前記「20kHz以上」に包摂されるものであることはもちろんであるし、可聴周波数の範囲を超えた周波数として、25kHzは適宜選択されてきた値であり周知の技術といえるものである(適宜選択された値である例として、国際公開01/52675号の22ページ1ないし2行の「the controller 118 turns the power supply 70 ON and OFF at an inaudible rate, for example 25 kHz.」(当審による和訳:「コントローラ118は、例えば25kHzの非可聴周波数で、電源70をON、OFFする。」)という記載や、特開平10-319700号公報【0059】の「騒音を発生しない25kHz以上の超音波領域」という記載等を参照)。 そうすると、低騒音化というモータの制御における一般的な課題を解決すべく、引用発明における「三角波」の周波数を、25kHz以上のものにすることは、当業者が容易に想到できたことである。 したがって、引用発明において、前記周知の技術を参酌することで、相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。 ・相違点2について いくつかの手段を、ユニットとして一体化して構成するか、手段毎に別体として構成するかは、例示するまでもなく、当業者が通常の創作活動の一環として適宜設定する設計的事項といえるものである。 そうすると、引用発明に基づいて、相違点2に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。 ・相違点3及び4について 引用発明において、アナログ電圧信号(「電圧信号」に相当)のレベルが三角波の頂点電圧(「第1所定電圧」に相当)のレベルよりも高い場合、及び、三角波の底辺電圧(「第2所定電圧」に相当)のレベルよりも低い場合、についてはどのように制御するのか具体的な説明がなされていない。しかし、引用例の図7をみると、アナログ電圧信号のレベルが三角波の頂点電圧のレベルよりも高い場合は、図7の「d.」において常に信号が出ている状態(すなわちデューティ比が100%の状態)になり、底辺電圧のレベルよりも低い場合は、図7の「d.」のようなパルス状の信号がでない状態(すなわちデューティ比が0%の状態)になるものと解される。 ところで、電圧信号と三角波とを比較することで信号を得る場合、引用例では、図7の「b.」の積分器出力(「電圧信号」に相当)のレベルが高くなるほど、同図「d.」のパルス状の信号の幅が大きくなるようにしているが、逆に、積分器出力のレベルが高くなるほどパルス状の信号の幅を小さくすることもでき、どちらを選択するかは当業者にとっては適宜取り決めればよい設計的事項に属する程度のものであるし、しかも、電圧信号のレベルが高くなるほどパルス状の信号の幅を小さくすることは周知の技術でもある(例えば、特開平4-49886号公報の第3図には、速度制御回路の信号V(「電圧信号」に相当)のレベルが三角波信号Voscに対して高くなるほどパルス状の信号の幅を小さくすることが示されていること等を参照)。 また、デューティ比が100%の状態では、所定の高回転速度でモータを回転させること、及び、デューティ比が0%の状態では、所定の低回転速度でモータを回転させること、はいずれも周知の技術である(例えば、特開平5-91746号公報【0001】の「本発明は、例えば交流ファンモータ等の交流負荷を可変制御するPWM交流電力制御装置に関し」という記載、及び、同【0021】の「図示しない外部のCPUボード等から例えばファンモータの回転数指令信号等である低周波PWM制御パルスが入力端子11,12を介して供給されると、この低周波PWM制御パルスは抵抗13および入力回路3を介して低周波PWMパルス平滑回路4に供給され、低周波PWM制御パルスのデューティに比例したアナログ信号に変換されて、高周波PWMパルス出力回路5に供給される。高周波PWMパルス出力回路5は低周波PWMパルス平滑回路4からのアナログ信号に対応したデューティの高周波PWMパルスを出力し、この高周波PWMパルスでスイッチングトランジスタ6を駆動する。スイッチングトランジスタ6は高周波PWMパルスのデューティに応じたデューティでオン/オフ動作し、これにより交流負荷1を駆動する。この結果、交流負荷1は高周波PWMパルスのデューティ、ひいては低周波PWM制御パルスのデューティに対応した交流電力を交流電源2から供給されることになり、該低周波PWM制御パルスのデューティを可変することにより、交流負荷1に供給する交流電力を無段階に可変制御することができる。すなわち、低周波PWM制御パルスのデューティを0%にすると、交流負荷1であるファンモータ等を停止することができ、また低周波PWM制御パルスのデューティを100%にすると、交流負荷1を100%動作させることができる。」という記載からみて、低周波PWM制御パルスのデューティ比が100%であれば高周波PWMパルスのデューティ比も100%になりファンモータを出力全開で回転させること、及び、デューティ比が0%のときは所定の低回転速度(この場合、速度ゼロ)になることを参照。また、前掲特開平4-49886号公報の第3図のVdcの波形に示されるように、速度制御回路の信号Vが三角波信号Voscの頂点のレベルよりも高い場合でも、所定の低回転速度でモータを回転させることが実質的に示されていることを参照)。 前記した全ての周知の技術を考慮すると、引用発明において、アナログ電圧信号のレベルが三角波の頂点電圧のレベルよりも高い場合にデューティ比が0%の状態として所定の低回転速度でモータを回転させ、底辺電圧のレベルよりも低い場合にデューティ比が100%の状態として所定の高回転速度でモータを回転させるように設定することは、当業者にとって格別の困難を伴うことなく実施できたことである。 そうすると、引用発明において、前記周知の技術を参酌することで、相違点3及び4に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。 ・相違点5について デジタル/アナログ変換をする積分回路を、トランジスタとダイオードと容量と複数の抵抗とのみからなるものとして構成することは、周知の技術である(例えば、特開平4-252388号公報の図4及び【0004】の「図4は従来のPWM波積分回路の構成を回路図で示す。図において、PWM波を発生するマイクロコンピュータ(以下、マイコンと称す)1の出力端子2に積分回路の入力端子3が接続され、入力端子3がダイオードD1と抵抗R2の並列回路を介してトランジスタQ1のベースに接続されるとともに、抵抗R1で電源VCCに接続される。トランジスタQ1のベースがコンデンサC1でアースに、エミッタが抵抗R3でアースに、コレクタが前記電源VCCに接続される。PWM波を積分した電圧がトランジスタQ1のエミッタから出力される。」という記載等を参照)。 そして、同等の機能を発揮する限りにおいて、回路構成を適宜のものにすることは当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない。 そうすると、引用発明において、前記周知の技術を参酌することで、相違点5に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。 また、本願発明の全体構成から奏される作用効果も、引用発明及び前記周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用発明及び前記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである 6.むすび 以上のとおりであるから、本願発明については、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、特許法49条2号の規定に該当し、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-08-19 |
結審通知日 | 2008-08-26 |
審決日 | 2008-09-08 |
出願番号 | 特願2003-379630(P2003-379630) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H02P)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 天坂 康種 |
特許庁審判長 |
大河原 裕 |
特許庁審判官 |
本庄 亮太郎 仁木 浩 |
発明の名称 | ファンモータの回転速度制御回路 |
代理人 | 二宮 克也 |
代理人 | 藤田 篤史 |
代理人 | 井関 勝守 |
代理人 | 竹内 宏 |
代理人 | 前田 弘 |
代理人 | 嶋田 高久 |
代理人 | 竹内 祐二 |
代理人 | 原田 智雄 |
代理人 | 今江 克実 |