ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F |
---|---|
管理番号 | 1191700 |
審判番号 | 不服2006-2999 |
総通号数 | 111 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-02-17 |
確定日 | 2009-01-26 |
事件の表示 | 平成11年特許願第235066号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月 6日出願公開、特開2001- 58023〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は平成11年8月23日の出願であって、平成18年1月16日付けで拒絶の査定がされた(同日付けで平成17年12月2日付けの手続補正が却下された。)ため、これを不服として平成18年2月17日付けで本件審判請求がされるとともに、同年3月17日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成18年3月17日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正内容 本件補正は特許請求の範囲の補正を含んでおり、請求項数を補正前の4から1に減少する(3つの請求項が削除されている。)とともに、請求項1を次のように補正するものである(下線部は請求人が付した補正箇所を示す。)。 「遊技に必要な複数種類の図柄を変動表示する変動表示手段と、 前記図柄の変動表示を開始させるための開始手段と、 遊技者に操作可能に設けられ、変動表示中の前記図柄を停止させるための停止手段と、 遊技に関連する複数種類の遊技情報を表示可能な遊技情報表示手段とを備え、 前記図柄が所定の停止表示態様を構成した場合に遊技者に対して利益を付与する遊技機において、 前記遊技情報表示手段に表示される遊技情報を切り替えるための遊技情報切替手段を設け、 前記遊技情報表示手段に表示される遊技情報は、複数の表示モードにグループ化されるとともに、遊技進行の段階によって表示を許可されるモードと許可されないモードとが設定され、 前記複数の表示モードにグループ化された遊技情報は、エラー発生時にエラーの状況を表示するエラー表示モードと、メダル投入後からメダル払い出しまでの期間にゲーム演出に関する表示を行うゲーム演出モードと、遊技メダル投入前に各種データ及び遊技機の仕様を表示するためのメニューモードの3種類のモードから構成されており、 前記メニューモードは、遊技が進行しているうちは表示されず、次回のゲームを受け付ける状態でのみ表示が許可され、前記エラー表示モードは、前記開始手段により開始された場合、前記図柄が全て停止表示されるまでは表示されないように設定され、 前記複数の表示モードは、如何なる表示モードの内容が表示されているときに、エラーが発生した場合最優先で前記エラー表示モードに移行し、前記メニューモードの内容が表示されているときに、前記遊技メダルが投入された場合、優先して前記ゲーム演出モードに移行するという、前記エラー表示モードが第1順位、前記ゲーム演出モードが第2順位、前記メニューモードが第3順位となる、表示に関しての優先順位を有し、 前記グループ化された遊技情報は、少なくとも1以上のグループにおいて、階層構造を持たせて構築され、 前記メニューモード中に、所定のウエイトタイム内にいずれかの下位階層のモードを選択・決定しなかった場合に、ロゴ表示及びオープニングのデモアニメーション表示を行う上位モードに移行することを特徴とする遊技機。」 2.補正目的の検討 3つの請求項を削除することは請求項削除を目的とするものと認める。残存する請求項(補正後の請求項1)については、「前記メニューモードは、遊技が進行しているうちは表示されず、次回のゲームを受け付ける状態でのみ表示が許可され、前記エラー表示モードは、前記開始手段により開始された場合、前記図柄が全て停止表示されるまでは表示されないように設定され、」に下線が付されていないが、補正前のどの請求項にも存在しない記載である。そしてこの記載と、上記下線部の記載は、形式的には複数の表示モードの優先順位等に関する限定である。 本件補正は、複数の表示モードに関し、「エラー表示モードは、前記開始手段により開始された場合、前記図柄が全て停止表示されるまでは表示されないように設定され」という事項と「如何なる表示モードの内容が表示されているときに、エラーが発生した場合最優先で前記エラー表示モードに移行し」という事項をともにつけ加えるものであるが、後者を採用するのであれば、「前記開始手段により開始された場合、前記図柄が全て停止表示されるまで」にエラーが発生した場合にも、エラー表示モードに移行しなければならないから、これら2つの事項は整合性を欠き、複数の表示モードの優先順位等をどのように限定するのか理解できず、そのような場合には形式的には特許請求の範囲の減縮に該当するとしても、実質的にそうであると認めることはできない。 また、本件補正後の請求項1の補正事項が、誤記の訂正又は明りようでない記載の釈明に該当すると認めることもできない。 したがって、本件補正は、平成14年法律24号による改正前の特許法17条の2第4項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。 3.独立特許要件欠如 仮に、本件補正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとしても、前項で述べたとおり、「エラー表示モードは、前記開始手段により開始された場合、前記図柄が全て停止表示されるまでは表示されないように設定され」という事項と「如何なる表示モードの内容が表示されているときに、エラーが発生した場合最優先で前記エラー表示モードに移行し」という事項は整合せず、どのように理解すればよいのか見当がつかないから、本件補正後の請求項1の記載は特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。 また、どのようにすれば、これら2つの事項をともに満たすのか、発明の詳細な説明は当業者にとって実施可能な程度に記載されていないし、これら2つの事項をともに満たす遊技機が発明の詳細な説明に記載されていると認めることもできないから、本件補正後の請求項1の記載は平成14年法律24号による改正前の特許法36条4項及び6項1号に規定する要件も満たしていない。 したがって、本件補正後の請求項1に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができず、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。 [補正の却下の決定のむすび] 以上のとおりであるから、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求についての判断 1.本願発明の認定 平成17年12月2日付けの手続補正は原審において、本件補正は当審においてそれぞれ却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年8月8日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「遊技に必要な複数種類の図柄を変動表示する変動表示手段と、 前記図柄の変動表示を開始させるための開始手段と、 遊技者に操作可能に設けられ、変動表示中の前記図柄を停止させるための停止手段と、 遊技に関連する複数種類の遊技情報を表示可能な遊技情報表示手段とを備え、 前記図柄が所定の停止表示態様を構成した場合に遊技者に対して利益を付与する遊技機において、 前記遊技情報表示手段に表示される遊技情報を切り替えるための遊技情報切替手段を設け、 前記遊技情報表示手段に表示される遊技情報は、複数の表示モードにグループ化されるとともに、遊技進行の段階によって表示を許可されるモードと許可されないモードとが設定され、 前記複数の表示モードにグループ化された遊技情報は、エラー発生時にエラーの状況を表示するエラー表示モードと、メダル投入後からメダル払い出しまでの期間にゲーム演出に関する表示を行うゲーム演出モードと、遊技メダル投入前に各種データ及び遊技機の仕様を表示するためのメニューモードとの3種類のモードから構成されている、ことを特徴とする遊技機。」 2.引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-47346号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?クの記載が図示とともにある。 ア.「前面に操作パネルが設けられた筐体と、 前記筐体の前記操作パネルの上方に設けられた主表示手段と、 前記操作パネル内に設けられた副表示手段と、を備えたことを特徴とするスロットマシン。」(【請求項1】) イ.「【発明の実施の形態】図1は本発明が適用されたスロットマシンの全体を構成を示す斜視図である。この図に示すように、スロットマシン1は、縦長の筐体2を有している。筐体2は、本体3と、その上部に取り付けられるトップボックス4と、本体3の前面に開閉自在に取り付けられる扉5とを有している。本体3の前面中央にはCRTを利用したメインディスプレイ(主表示手段)7が収容され、その下方には操作パネル8が設けられている。操作パネル8はスロットマシン1の前方に向かって下り勾配をなすように傾けられた状態で扉5に取り付けられている。操作パネル8の下方、およびトップボックス4の前面には、スロットマシン1のタイトルその他に関する図柄、文字等が描かれた装飾パネル9a、9bが取り付けられる。」(段落【0025】) ウ.「操作部20には、押し込み操作可能な4つの押ボタンスイッチ21、22、23、24が設けられている。これらの押ボタンスイッチ21?24は、特にゲーム中の操作頻度が高いものとして選ばれて操作パネル8に設けられている。例えば左下の押ボタンスイッチ23はプレイを開始する際に操作されるものである。但し、操作部20に設ける押ボタンスイッチの個数および各押ボタンスイッチに割り当てられるべき機能は適宜変更してよい。」(段落【0027】 エ.「副表示部30には、液晶パネルにて構成されたサブディスプレイ(副表示手段)31と、そのサブディスプレイ31の下辺に沿って並べられた押し込み操作可能な4つの押ボタンスイッチ32、33、34、35とが設けられている。」(段落【0028】) オ.「図6はサブディスプレイ31上に初期画面として表示されるメインメニュー画面Pcを示すものである。メインメニュー画面Pcには、操作ボタン32、33、34、35にそれぞれ隣接して配置されたボタン機能表示部80、81、82、83と、操作ボタン32、33、34にてそれぞれ設定可能な項目をボタン機能表示部80?82にそれぞれ対応付けて表示する項目表示部84、85、86とが含まれる。」(段落【0036】) カ.「メインメニュー画面Pcが表示された状態では、操作ボタン32?34が項目表示部84?86に表示された項目の設定画面に移行するための操作スイッチとして機能しており、そのためにボタン機能表示部80?82には設定画面を開く操作を意味する“OPEN”の語が表示されている。操作ボタン35には何の機能も割り当てられていないため、ボタン機能表示部83は空白である。」(段落【0037】) キ.「メインメニュー画面Pcが表示された状態から操作ボタン32を押し下げ操作するとプレイ金額および時間の限界値の設定が可能となり、操作ボタン33を押し下げ操作するとスロットマシン1の各部の詳細を表示することが可能となり、操作ボタン34を押し下げ操作するとゲームの記録や履歴の表示が可能となる。これらの機能はメインディスプレイ7上に表示されるゲームの進行とは直接の関連性を有しない。」(段落【0038】) ク.「CPU50には、例えばスロットマシン1の各部に設けられた電装部品の診断機能を付加させることができる。その場合、異常の発見に対応して異常個所およびその異常の内容や修復方法をサブディスプレイ31に表示して、エラーからの迅速な復帰を実現できる。図10にそのエラー表示画面Piの一例を示す。このエラー表示画面Piは、筐体を模した図形内に丸印95aと矢印95bとでエラー個所を表示する位置表示部95と、エラーを生じた部品名を表示する品名表示部96と、修復方法を表示するガイダンス部97とで構成されている。そして、操作ボタン34は次画面を開くための操作ボタンとして、操作ボタン35はメインメニュー画面Pcに復帰するための操作ボタンとしてそれぞれ機能し、ボタン機能表示部82には“NEXT PAGE”の語が、ボタン機能表示部83には“MAIN MENU”の語がそれぞれ表示される。」(段落【0050】) 3.引用例1記載の発明の認定 記載エに「サブディスプレイ(副表示手段)31」とあるように、引用例1では「サブディスプレイ」と「副表示手段」は同じ意味で用いられている。 記載キ,クによれば、副表示手段には、メインメニュー画面及び「スロットマシン1の各部の詳細」や「ゲームの記録や履歴」並びに異常時の「異常個所およびその異常の内容や修復方法」を表示する。そして、「異常個所およびその異常の内容や修復方法」は別として、それ以外の表示内容は、操作ボタンを操作することにより切り替えられる。 したがって、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。 「前面に操作パネルが設けられた筐体と、前記筐体の前記操作パネルの上方に設けられた主表示手段と、前記操作パネル内に設けられた副表示手段及びプレイを開始する際に操作される押ボタンスイッチとを備えたスロットマシンであって、 前記副表示手段には、メインメニュー画面及びスロットマシンの各部の詳細、ゲームの記録や履歴等並びに異常時の異常個所及びその異常の内容や修復方法を表示し、異常時の異常個所及びその異常の内容や修復方法以外は操作ボタンを操作することにより切り替えられるように構成したスロットマシン。」(以下「引用発明1」という。) 4.本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定 引用発明1は「スロットマシン」(「遊技機」の一種である。)であるから、特段の記載がなくとも「主表示手段」は「遊技に必要な複数種類の図柄を変動表示」すると理解すべきであり、そうである以上引用発明1の「主表示手段」及び「プレイを開始する際に操作される押ボタンスイッチ」は、本願発明の「変動表示手段」及び「前記図柄の変動表示を開始させるための開始手段」に相当する。 また、スロットマシンである以上、「図柄が所定の停止表示態様を構成した場合に遊技者に対して利益を付与する」ことは当然であり、これは本願発明と引用発明1の一致点である。仮に、相違点と認定しても、せいぜい設計事項であり、進歩性判断を左右しない。 引用発明1の「副表示手段」に表示される「メインメニュー画面及びスロットマシンの各部の詳細、ゲームの記録や履歴等」は「遊技に関連する複数種類の遊技情報」ということができるから、引用発明1の「副表示手段」は本願発明の「遊技に関連する複数種類の遊技情報を表示可能な遊技情報表示手段」に相当し、「遊技情報表示手段に表示される遊技情報を切り替えるための遊技情報切替手段」は引用発明1にも備わっている。さらに、引用発明1の同情報と本願発明の「各種データ及び遊技機の仕様」には格別の相違がない。 また、本願発明においては、「エラーの状況」も「遊技情報」とされているところ、エラーの発生は遊技進行の妨げになるから、遊技を滞りなく実行できるかどうかの情報は「遊技情報」に含まれると解すべきであり、引用発明1の「異常時の異常個所及びその異常の内容や修復方法」も「遊技情報」であり、本願発明の「エラー発生時に」表示される「エラーの状況」と異ならない。 そして、引用発明1の副表示手段には、「メインメニュー画面及びスロットマシンの各部の詳細、ゲームの記録や履歴等」と「異常時の異常個所及びその異常の内容や修復方法」のどちらかが表示されるから、「前記遊技情報表示手段に表示される遊技情報は、複数の表示モードにグループ化される」ことも本願発明と引用発明1の一致点であり、「複数の表示モード」に「エラー発生時にエラーの状況を表示するエラー表示モード」及び「各種データ及び遊技機の仕様を表示するためのメニューモード」が含まれることも本願発明と引用発明1の一致点である。 したがって、本願発明と引用発明1の一致点及び相違点は次のとおりである。 〈一致点〉 「遊技に必要な複数種類の図柄を変動表示する変動表示手段と、 前記図柄の変動表示を開始させるための開始手段と、 遊技に関連する複数種類の遊技情報を表示可能な遊技情報表示手段とを備え、 前記図柄が所定の停止表示態様を構成した場合に遊技者に対して利益を付与する遊技機において、 前記遊技情報表示手段に表示される遊技情報を切り替えるための遊技情報切替手段を設け、 前記遊技情報表示手段に表示される遊技情報は、複数の表示モードにグループ化され、 前記複数の表示モードにグループ化された遊技情報は、エラー発生時にエラーの状況を表示するエラー表示モードと、各種データ及び遊技機の仕様を表示するためのメニューモードを含む遊技機。」 〈相違点1〉本願発明が「遊技者に操作可能に設けられ、変動表示中の前記図柄を停止させるための停止手段」を備えるのに対し、引用発明1がかかる手段を備えるとはいえない点。 〈相違点2〉本願発明の「各種データ及び遊技機の仕様を表示するためのメニューモード」は「遊技メダル投入前に」表示する表示モードであるのに対し、引用発明1のそれは「遊技メダル投入前に」限られず表示される点。 〈相違点3〉本願発明の「複数の表示モード」は、「エラー発生時にエラーの状況を表示するエラー表示モード」及び「各種データ及び遊技機の仕様を表示するためのメニューモード」に「メダル投入後からメダル払い出しまでの期間にゲーム演出に関する表示を行うゲーム演出モード」を加えた「3種類のモードから構成」されており、「遊技進行の段階によって表示を許可されるモードと許可されないモードとが設定され」ているのに対し、引用発明1の「複数の表示モード」は「エラー発生時にエラーの状況を表示するエラー表示モード」及び「各種データ及び遊技機の仕様を表示するためのメニューモード」の2種類であり、「遊技進行の段階によって表示を許可されるモードと許可されないモードとが設定され」ていない点。 5.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断 (1)相違点1について スロットマシンは、「開始手段」操作により図柄が変動表示し、それがいずれ停止することにより停止表示態様が定まるものであるが、変動表示を停止させるに当たり、一定の時間経過により停止するものも、遊技者が「変動表示中の前記図柄を停止させるための停止手段」を操作することにより停止するものも、どちらも周知である。 本願発明は後者を採用しただけのことであり、後者を採用、すなわち、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは設計事項というべきである。 (2)相違点2,3について 原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-206960号公報(以下「引用例2」という。)には、以下のケ?サの各記載がある。 ケ.「遊技に必要な図柄を表示する可変表示装置の作動開始から終了までの間に、遊技者に何らかの表示(別表示)を行うことで、可変表示装置で行われる遊技の結果を待つまでの単調さを解消すると共に、可変表示に注目している遊技者にとって見易い別表示を与えることができる遊技機を提供する。」(【要約】の【課題】欄) コ.「液晶表示器6自体が表示制御部としてCPUを備えている場合には、遊技制御手段としてのCPU21は、上記のリール停止制御を行う時、遊技者が「大当り」、「小当り」又は「ハズレ」の発生を予想できる演出パターンを液晶表示器6に表示させる指令を、液晶表示器6のCPUに送る。これに応じて、液晶表示器6のCPUが表示画像を決定し、それを画面に表示する。」(段落【0038】) サ.「本発明における表示手段の一例の液晶表示器6には、本来の遊技の可変表示制御状態の表示或いは別遊技のための表示画像が表示されるが、これらの表示のほかに、過去の遊技結果の履歴、すなわち既に消化された遊技における入賞やハズレの発生回数もしくは発生率を示す画像を表示してもよい。このため、図1のスロットマシンの正面の適当な場所(例えば、液晶表示器6の横側)に表示切替えボタンを設け、遊技中の任意の時点で、遊技者がこれを押すと、液晶表示器6の画面は、入賞やハズレの発生回数もしくは発生率の表示に切り替えられ、遊技者が再度ボタンを押すと、前の画面に復帰するようにする。上記の履歴表示により、遊技者は、遊技を始めようとする遊技機が当たりの出やすい台かどうかを判断できる。」(段落【0060】) 記載サの「過去の遊技結果の履歴、すなわち既に消化された遊技における入賞やハズレの発生回数もしくは発生率を示す画像」は、引用発明1の「ゲームの記録や履歴等」と格別異ならず、それを表示する手段(引用発明1の「副表示手段」、引用例2記載の「液晶表示器6」)に、「遊技に必要な図柄を表示する可変表示装置の作動開始から終了までの間に、遊技者に何らかの表示(別表示)を行う」ことが引用例2に記載されており、ここでいう「遊技者に何らかの表示(別表示)」は、記載ケ,コからみて「ゲーム演出に関する表示」ということができる。 引用発明1においても、「可変表示装置で行われる遊技の結果を待つまでの単調さを解消すると共に、可変表示に注目している遊技者にとって見易い別表示を与えることができる」ように、引用例2記載の技術を採用し、「遊技に必要な図柄を表示する可変表示装置の作動開始から終了までの間」に「ゲーム演出に関する表示」を行うこと、換言すれば「複数の表示モード」を「ゲーム演出に関する表示を行うゲーム演出モード」を加えた「3種類のモードから構成」することは当業者にとって想到容易である。 残る検討項目は、次の諸点である。 a.本願発明の「ゲーム演出に関する表示」は「メダル投入後からメダル払い出しまでの期間」とされているのに対し、引用例2のそれは「遊技に必要な図柄を表示する可変表示装置の作動開始から終了」までであるから、引用発明1に引用例2記載の技術を採用しても、「ゲーム演出に関する表示」の始期及び終期が異なる点。 b.メニューモードが「遊技メダル投入前に」表示され、「遊技進行の段階によって表示を許可されるモードと許可されないモードとが設定され」るかどうかの点。 そこでまずaの点について検討するに、「メダル投入」から「遊技に必要な図柄を表示する可変表示装置の作動開始」までは通常ごく短い時間であるだけでなく、「メダル投入」をした時点の遊技者は「スロットマシンの各部の詳細、ゲームの記録や履歴等」よりも、これから実行するゲームに関心を寄せると考えられるから、「ゲーム演出に関する表示」の始期をメダル投入時点まで早めることは設計事項というべきである。また、変動表示が所定の停止表示態様を構成した場合(この場合のみ「メダル払い出し」が行われる。)には、「可変表示装置の作動終了」(変動表示が停止)からメダル払い出しまでは通常ごく短い時間であるだけでなく、本件出願当時、入賞のファンファーレ演出をすることや変動停止後に各種演出をすることが周知である。そうである以上、「ゲーム演出に関する表示」の終期を「メダル払い出しまで」とすることも設計事項である。 次にbの点について検討する。引用例2の記載サには、「遊技中の任意の時点で、遊技者がこれを押すと、液晶表示器6の画面は、入賞やハズレの発生回数もしくは発生率の表示に切り替えられ、遊技者が再度ボタンを押すと、前の画面に復帰するようにする。」とあり、それを妨げる理由はないかもしれないが、遊技中(「可変表示装置の作動開始から終了までの間」又は「メダル投入後からメダル払い出しまでの期間」)の遊技者が、「ゲーム演出に関する表示」よりも「スロットマシンの各部の詳細、ゲームの記録や履歴等」により大きな関心を寄せるとは考えづらく、逆に遊技中以外の期間に「ゲーム演出に関する表示」をする必要性はない。また、多くのテレビゲームでは、メニュー画面やチュートリアル画面を表示可能な状態(ゲーム開始前などがこれに当たる。)と表示不可能な状態(例えば、RPGゲームでのバトル中などがこれに当たる。)があるように、同一の表示手段に「複数の表示モード」の1つを選択的に表示する場合には、遊技進行の段階によって表示を許可されるものと許可されないものを区別し、許可されるものだけを表示することは周知である。そうであれば、遊技中であるかどうかによって、遊技者が関心を寄せるであろう表示モードだけを表示許可することも設計事項というよりない。すなわち、遊技中以外の「遊技メダル投入前」にメニューモードの表示を許可、ゲーム演出モードの表示を不許可とし、遊技中にメニューモードの表示を不許可、ゲーム演出モードの表示を許可することは設計事項である。 以上のとおり、aの点もbの点も設計事項であるから、相違点2,3に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。 (3)本願発明の進歩性の判断 相違点1?3に係る本願発明の構成を採用することは設計事項であるか又は当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、本願発明は引用発明1及び引用例2記載の技術並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-11-25 |
結審通知日 | 2008-11-27 |
審決日 | 2008-12-09 |
出願番号 | 特願平11-235066 |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F) P 1 8・ 572- Z (A63F) P 1 8・ 536- Z (A63F) P 1 8・ 121- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井海田 隆 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
川島 陵司 有家 秀郎 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 川野 宏 |