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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1192035
審判番号 不服2006-19289  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-31 
確定日 2009-02-05 
事件の表示 特願2001-583402「流通支援方法及び流通支援システム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月15日国際公開、WO01/86529〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、2001年5月10日(優先権主張2000年5月12日,日本国)を国際出願日とする出願であって、
平成18年7月27日付けで拒絶査定がなされ(発送日同年8月1日)、これに対し、平成18年8月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成18年9月29日付けで手続補正がなされたものである。



2.本願発明の認定

本願の請求項1乃至4に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項3】
ユーザ用端末,ディーラ用端末及び流通支援サーバがネットワークを介して接続されており、前記ユーザ用端末を利用するユーザ及び前記ディーラ用端末を利用するディーラ間で試薬販売を行わせる流通支援システムであって、
前記流通支援サーバは、前記ユーザ用端末を利用するユーザに必要な試薬の検索又は選定を行わせる試薬検索選定手段と、
前記ユーザによって選定された試薬に応じて発注情報を登録する発注情報登録手段と、
前記ユーザを担当しているディーラの利用する前記ディーラ用端末に、登録された前記発注情報を送信する発注情報送信手段と、
前記ディーラ用端末から、受注条件情報の付加された発注情報を受信して登録する受注条件情報登録手段と、
前記ユーザ用端末を利用するユーザに前記受注条件情報の付加された発注情報を通知する受注条件情報通知手段とを有し、
前記ディーラ用端末は、メーカ,他のユーザまたは他のディーラに知られることなく前記発注情報に対する受注条件情報の付加を前記ディーラに行わせる受注条件情報付加手段と、
前記受注条件情報の付加された発注情報を前記流通支援サーバに送信する受注条件情報送信手段とを有し、
前記発注情報登録手段は、前記試薬を購入し得るユーザに付与された前記発注情報を登録するためのユーザ識別情報及び暗証情報の有無を確認した上で、前記発注情報を登録し、
前記受注条件情報付加手段は、前記発注情報に対する受注条件情報として前記試薬の納期情報の付加を前記ディーラに行わせる
ことを特徴とする流通支援システム。」

ただし、
「ユーザ用端末,ディーラ用端末及び流通支援サーバがネットワークを介して接続されており、前記ユーザ用端末を利用するユーザ及び前記ディ-ラ用端末を利用するディ-ラ間で試薬販売を行わせる流通支援システム」は、
「ユーザ用端末,ディーラ用端末及び流通支援サーバがネットワークを介して接続されており、前記ユーザ用端末を利用するユーザ及び前記ディーラ用端末を利用するディーラ間で試薬販売を行わせる流通支援システム」
の誤記(長音記号とすべきところをハイフンとする誤記)と認め、上記の如く認定する。



3.引用例の認定

原査定の拒絶の理由に引用された、特開平11-31184号公報(以下、「引用例」という)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

(ア)
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、通信手段を介して相互に接続可能なユーザー用機器、ディーラー用機器、及びネットワークセンター用のコンピュータシステムを利用して構成される流通支援設備に関するものである。」

(イ)
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の流通支援設備によれば、商品の直送等による合理化により、ディーラーに対するマージンを低下させることなしに各ユーザーに対する一律値下げが可能になる余地はあるが、実際の商売に適用し難い面が多く、限られた取引にしか使用することができないという問題がある。
【0005】
すなわち、実際の商活動においては、各ディーラーが種々の取引条件を提示して個別ユーザーに商談を持ちかけるのが一般的であり、取引量等に応じて値引率なども種々異なったものになるのが通常である。また、特定のユーザーに対して複数のディーラーが入札を行う場合には、各ディーラーの取引条件がそれぞれ異なったものになるのは当然のことである。
【0006】
しかしながら、前述した従来の流通支援設備を使用した場合には、全てのユーザーが対等に扱われ、各ディーラーにも定率のマージンが支払われることになるため、各ディーラーが適性に競争することが不可能になり、以上説明したような種々の商業活動に対処することができないという問題が生じる。また、このような流通支援設備を用いると、各ユーザーとディーラーとが直接商談する必要性もなくなり、各ユーザーはディーラーの存在を意識することなしに必要な物品を購入することが可能になる。そのため、ディーラーは単なる紹介者としての地位に脱落することになり、会員獲得競争が一段落した段階でディーラーの活力が急速に減退するおそれもある。
【0007】
本発明は、以上のような従来の不具合をことごとく解消することができ、ユーザー、ディーラー、及びネットワークセンターのそれぞれに種々の現実的メリットを享受してもらうことができ、ひいては、前記ネットワークセンターに直接又は間接的に関係するメーカーや配送会社等にも、製造管理や在庫管理等に関する貴重な情報を迅速かつ継続的に提供することが容易になる実用性の高い流通支援設備を提供することを目的としている。」

(ウ)
「【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上のような目的を達成するために、ユーザーがそれぞれ使用するユーザー用機器と、各ユーザーと商談を行う立場にあるディ-ラ-がそれぞれ使用するディ-ラ-用機器と、これらディーラー用機器および前記ユーザー用機器とそれぞれ通信可能なネットワークセンター用のコンピュータシステムとを利用する。そして、前記ディーラー用機器と前記コンピュータシステムとの間の交信内容に基いて少なくとも各ディーラーの各ユーザ-に対する個別取引条件を特定するユーザー管理手段と、前記ユーザー用機器から前記コンピュータシステムに接続操作が行われた場合にユーザーおよびこのユーザーに対応するディーラーを特定し、このディーラー特有の応答信号を前記ユーザー用機器に返信する受注代行手段と、前記ユーザー用機器から前記コンピュータシステムに発信された発注情報に基いてユーザーが発注した商品を特定し、その商品を前記個別取引条件に見合う態様で前記ユーザーに提供できるようにするための処理を行う情報処理手段とを具備してなるものとする。
【0009】
ユーザー管理手段は、ディ-ラ-とユーザーとの商談等により取り決められた個別取引条件で取引を成立させるために、少なくともその条件を特定しておくためのものである。特定した個別取引条件を流通の運用全般に亘り円滑に反映させるには、その個別取引条件を商品関連データに付加してユーザー別商品データを作成しておくのが望ましい。なお、ユーザー別商品データは、予め作成しておいてもよいが、必要に応じて逐次生成するようにしてもよい。また、ユーザー別商品データは必ずしも全てのユーザーに1対1で対応させる必要はない。
【0010】
受注代行手段は、実際にはネットワークセンターとコンタクトをとっているユーザーに、あたかも商談を行ったディーラーと直接取引しているかのような感覚を与えるためのものであり、この受注代行手段により、ディーラーの存在をユーザーに継続的に認識させることが可能となる。そして、ディーラーの活力を低下させることなしに、実質的な購買データをネットワークセンターに効率よく集めることが可能となる。」

(エ)
「【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に係る流通支援設備は、図1に示すようにユーザーがそれぞれ使用するパーソナルコンピュータやファクシミリ等のユーザー用機器1と、各ユーザーと商談を行う立場にあるディ-ラ-がそれぞれ使用するパ-ソナルコンピュータ等のディ-ラ-用機器2と、これらディーラー用機器2および前記ユーザー用機器1とそれぞれ一般の電話回線やインターネットあるいは専用線等を介して通信可能なネットワークセンター用のコンピュータシステム3とを利用するものである。
【0015】
ここでユーザーとは、企業、企業に属する事業所、部、課、個人の全部または一部を含む概念である。ディーラーとは、ユーザーと商談を行う立場にある個人または法人を含むものであり、現存する一般小売店や特約店等がその典型である。ネットワークセンターは、必ずしも一定場所に存在する現存組織でなくてもよく、前記コンピュータシステム3が分散配置されている場合には、コンピュータネットワーク内に構築された仮想的な組織となることもある。また、ネットワークセンターは、特定のメーカーに属するものであってもよいし、あるいは、メーカーから独立したものであってもよい。」

(オ)
「【0016】
そして、この流通支援設備は、前記ディーラー用機器2と前記コンピュータシステム3との間の交信内容に基いて各ディーラーの各ユーザ-に対する個別取引条件を特定するユーザー管理手段aと、前記ユーザー用機器1から前記コンピュータシステム3に接続操作が行われた場合にユーザーおよびこのユーザーに対応するディーラーを特定し、このディーラー特有の応答信号を前記ユーザー用機器1に返信する受注代行手段bと、前記ユーザー用機器1から前記コンピュータシステム3に発信された発注情報に基いてユーザーが発注した商品を特定し、その商品を前記個別取引条件に見合う態様で前記ユーザーに提供できるようにするための処理を行う情報処理手段cとを具備してなることを特徴としている。
【0017】
通常は、前記コンピュータシステム3を構成するハードウエアとソフトウエアとに、これらユーザー管理手段a、受注代行手段b、及び情報処理手段cとしての役割を担わせるのがよいが、これら機能要素の一部をハード的な専用回路により構成してもよいのは勿論である。より具体的には、本発明の流通支援設備は、ディーラー用機器2とコンピュータシステム3との間の交信内容に基いて各ディーラーの各ユーザ-に対する個別取引条件を特定し、その個別取引条件を商品関連データに付加してユーザー別商品データnを作成するユーザー管理手段aと、前記ユーザー用機器1から前記コンピュータシステム3に接続操作が行われた場合にユーザーおよびこのユーザーに対応するディーラーを特定し、このディーラー特有の応答信号dを前記ユーザー用機器1に返信する受注代行手段bと、前記ユーザー用機器1から前記コンピュータシステム3に発信された発注情報に基いてユーザーが発注した商品を特定し、その商品を前記個別取引条件に見合う態様で前記ユーザーに提供できるようにするための処理を行う情報処理手段cとを具備してなり、前記受注代行手段bによる応答信号dが、少なくとも特定ディーラーのウエルカム画面1300を対応するユーザー用機器1のディスプレーに表示させるための信号と、対応するユーザー別商品データnに対する商品検索用画面1500、1600、1700を前記ディスプレーに表示させるための信号を含んでいることを特徴としている。」

(カ)
「【0040】
・・・(中略)・・・
次にユーザーが商品を発注するのに用いるアプリケーションソフトウェアについて説明する。ここで用いるアプリケーションソフトウェアは、ユーザー発注プログラムと称し、前述の受注代行手段の機能を担うものである。このユーザー発注プログラムは、概略的には図11に示すような画面フローにしたがって作動するものである。
【0041】
詳述すると、このプログラムは、ユーザーがまずユーザー用機器1でコンピュータシステムに接続(アクセス)し、引き続いてユーザー用機器1のディスプレイに表示されるログイン画面1200(図12)上で、ユーザーが事業所ID121、自分のユーザーID122およびパスワード123を入力することにより作動する。
【0042】
このプログラムはまず最初に、ログインしたユーザーに対し、応答信号dを発し、対応するディーラーの名称等を表示したウェルカム画面1300(図13)を表示する。なお、このプログラムにおいて、画面のすべてには、上部に図示しない“進む”、“戻る”等のWWWブラウザ特有のボタンが設けられており、過去に表示した画面についてこれら“進む”、“戻る”ボタン等により、自由に画面を切り替えることができるようになっている。」

(キ)
「【0043】
本論に戻って、ユーザーがこのウェルカム画面上でOKボタン1301をクリックして先に進むと、メイン画面1400(図14)が表示される。このメイン画面1400では、ディーラーからの簡単なお知らせ欄1401と、次に進むべき画面を選択する複数のアイコンとを表示する。具体的には、これらアイコンは、商品カテゴリ検索アイコン1402、商品条件検索アイコン1403、商品機能別検索アイコン1404、オーダーエクスプレスアイコン1405、値引きキャンペーン情報アイコン1406、サービスメニューアイコン1407、ご意見箱アイコン1408、発注履歴参照アイコン1409、パスワード変更アイコン1410、およびEXITアイコン1411から構成している。なお、これらアイコンの名称が次に進む画面名称を示している。ここで、ユーザーが所望の商品を検索する場合には、商品カテゴリ検索アイコン1402、商品条件検索アイコン1403、商品機能別検索アイコン1404のいずれかを選択し、その画面に移行する。」

(ク)
「【0044】
商品カテゴリ検索画面1500では、ユーザーが図15に示すように大きく分類された商品カテゴリ欄1501に示されたカテゴリを選んで、徐々に小さなカテゴリ欄1502、1503に遷移させていくことにより所望商品をユーザー別商品データnに登録してある商品の中から検索できる。商品条件検索画面1600では、図16に示すように商品条件を特定する商品名欄1601、メーカー品番欄1602、メーカー名欄1603、仕様欄1604および内容入力欄1605に入力する2つの項目欄1609、1610が設けてあり、この2つの項目欄1609、1610のAND条件で特定した所望の商品をユーザー別商品データnに登録してある商品の中から絞り込むことができる。そして、該当商品は結果欄1611に表示されるので、ユーザーはその中から所望の商品を検索できる。
【0045】
商品機能別検索画面1700では、図17に示すように大きく分類された商品機能欄1701に示された商品機能を選んで、徐々に小さな商品機能欄1702、1703に遷移させていくことより所望商品をユーザー別商品データnに登録してある商品の中から検索できる。これらの画面1500、1600、1700には、いずれも最終的に絞り込まれた商品のうち、“単品表示”ボタン1504、1606、1704あるいは“複数比較”ボタン1505、1607、1705を表示している。ユーザーが、このいずれかをクリックすると、その選択にしたがって複数商品比較画面1800、あるいは単品表示画面1900に移行する。」

(ケ)
「【0046】
複数商品比較画面1800では、図18に示すように、一画面内にJPEG形式で表示された該当商品群の写真画面と、その商品名、メーカー品番、標準小売価格、そのユーザーに対する提供価格(実売価格)の情報を最大6つ、欄1801に表示する。もちろん選択した商品が6つ以上の場合は、“前へ”ボタン1802あるいは“次へ”ボタン1803で次々画面を切り替えることができる。そしてユーザーが、この複数商品比較画面1800上で、所望の商品を表示する写真画面をクリックすると当該商品の単品表示画面1900に移行する。なお、前述の各検索画面1500、1600、1700上で単品表示ボタン1504、1606、1704を選んだ場合も、単品表示画面1900に移行することになる。」

(コ)
「【0047】
単品表示画面1900では、図19に示すように、JPEG形式で表示された商品の写真画面を欄1901に表示し、商品名、メーカー品番、商品説明を欄1902に、さらに、NNC品番、標準小売価格、提供価格、値引率を欄1905に表示する。その他にも画面下部の欄1909にクロスプロモーション商品を写真表示する。そして、“バスケットに入れる”ボタン1906、“関連商品表示”ボタン1907、“オーダーエクスプレス登録”ボタン1908のうち、ユーザーが選択したボタンに応じて処理を行う。すなわち“バスケットに入れる”ボタン1906をクリックすると、数量入力画面(図示しない)を表示した後、バスケット画面2000に移行する。また、“関連商品表示”ボタン1907をクリッすると、この商品に関連する商品を表示する関連商品表示画面(複数表示画面と同様の画面なので詳細画面図は省略する)に移行する。そして“オーダーエクスプレス登録”ボタン1908をクリックすると、この商品をオーダーエクスプレス登録する。なお、オーダーエクスプレス登録については後述する。
【0048】
バスケット画面2000では、種々の商品の各単品表示画面1900において、過去に“バスケットに入れる”ボタンを押された商品を表示する。具体的には、図20に示すように各商品毎に数量、提供価格、小計価格等を示す表2001と、これら商品の合計価格、および特別割引、配送料を含んだ価格表2002とを表示するものである。このような画面を設けて、所望の商品が一定量貯まった時点で、実際に発注することができるようにしている。この時“発注処理へ”ボタン2004をクリックすると発注画面2100へ移行する。なお、この画面上にはこの他のボタンとして、この画面上で数量を変更した時に再計算させる“再計算”ボタン2003、単品表示画面1900に戻る“単品表示”ボタン2005、表上の一部または全部の商品を削除する“明細削除”ボタン2006、および“全てクリア”ボタン2007を設けている。」

(サ)
「【0049】
発注画面2100では、図21に示すように商品の直送先、代金請求先等を入力する表2101、2102と、バスケット画面2000において表示していた発注商品毎の数量、提供価格、小計価格等を示す表2103と、これら商品の合計価格、および特別割引、配送料を含んだ価格合計とを示す表2104とを表示する。ここでユーザーが商品の直送先、代金請求先等を入力し、商品の確認をして“続行”ボタンをクリックすると、図22に示す最終確認画面2200および発注了承画面2210に移行する。なお直送先、代金請求先のそれぞれに直送先ID、代金請求先IDを入力する欄2105、2106を表示している。この直送先IDおよび代金請求先IDは、ユーザー毎にディーラーが予め登録するIDで、配送や、代金請求時にこのIDをキーにして迅速に処理できるようにするためのものである。また、欄2107に予算管理単位を入力する欄2107を設けているが、この予算管理単位については後述する。
【0050】
最終確認画面2200では、図22に示すように発注確認メッセージ2202を表示する。そしてユーザーがその下部の“OK”ボタン2201をクリックすると、発注了承画面2210に移行し、受領確認メッセージ2213と発注番号を欄2211に表示するとともに、ネットワークセンターに商品の発注データをオンラインで送りつける。そして、この画面上で“OK”ボタン2212をクリックすると、このユーザー発注プログラムは終了する。このように発注された商品データは、その発注日時、発注番号、ユーザー名称などのデータと共に、ネットワークセンターのデータベース装置4内に受注明細テーブルデータとして一旦貯えられる。」

(シ)
「【0054】
次に、上述の発注システムにより発注された商品が実際に配送手配されるまでに用いられるアプリケーションソフトウェアについて説明する。本実施例では発注された全ての商品は、担当ディーラーの確認、許可を得た後、実際の配送手配が行われる。ここで用いられるアプリケーションソフトウェアは、その際にディーラーが利用するもので、ディーラー受注プログラムと称し、前述の情報処理手段のうち受注状況確認手段の機能を担うものである。このディーラー受注プログラムは、概略的には図24に示すような画面フローにしたがって作動するものである。
【0055】
具体的には、ディーラーがまずディーラー用機器2でコンピュータシステムに接続(アクセス)する。その結果、発注システムで述べたのと同様のログイン画面(図12)がディーラー用機器2のディスプレイに表示されるので、この画面上でディーラーは、自分のディーラーID124およびパスワード125を入力する。その後、図25に示すメイン画面2500が表示され、ディーラーが、この画面に設けられた“受注状況確認”ボタン2501をクリックすると受注状況確認画面2600に移行する。なお、このメイン画面2500には、その他に“受注履歴詳細”ボタン2502や“ご意見箱参照”ボタン2503、あるいは各情報の登録、変更、削除を行う画面に移行する種々のボタンが配置してある欄2504が設けられているがこれらについては後述する。
【0056】
受注状況確認画面2600では、図26に示すように、ユーザーのバスケット発注単位を一行として、発注番号と、発注日、発注時刻、発注したユーザー名、および手配済みかどうかを示すステータスを表したデータ表2601を表示する。また、それぞれの行毎にチェックボックス2602を表示し、画面下部には“手配”ボタン2603等を配置している。ディーラーは、ステータスを見て手配済みでないバスケット発注商品のチェックボックス2602を選択し、さらに“手配”ボタン2603をクリックすることにより、受注手配画面2700に移行する。」


以上の引用例の記載によれば、引用例には以下の事項が開示されていると認められる。

(a)
引用例の上記(イ)の「このような従来の流通支援設備によれば、商品の直送等による合理化により、ディーラーに対するマージンを低下させることなしに各ユーザーに対する一律値下げが可能になる余地はあるが、実際の商売に適用し難い面が多く、限られた取引にしか使用することができないという問題がある。・・・(中略)・・・すなわち、実際の商活動においては、各ディーラーが種々の取引条件を提示して個別ユーザーに商談を持ちかけるのが一般的であり、取引量等に応じて値引率なども種々異なったものになるのが通常である。・・・(中略)・・・本発明は、以上のような従来の不具合をことごとく解消することができ、ユーザー、ディーラー、及びネットワークセンターのそれぞれに種々の現実的メリットを享受してもらうことができ、ひいては、前記ネットワークセンターに直接又は間接的に関係するメーカーや配送会社等にも、製造管理や在庫管理等に関する貴重な情報を迅速かつ継続的に提供することが容易になる実用性の高い流通支援設備を提供することを目的としている。」という記載、
(当該記載から「流通支援設備」が商品販売を行わせるためのものであることは明らかである。)

引用例の上記(エ)の「本発明に係る流通支援設備は、図1に示すようにユーザーがそれぞれ使用するパーソナルコンピュータやファクシミリ等のユーザー用機器1と、各ユーザーと商談を行う立場にあるディ-ラ-がそれぞれ使用するパ-ソナルコンピュータ等のディ-ラ-用機器2と、これらディーラー用機器2および前記ユーザー用機器1とそれぞれ一般の電話回線やインターネットあるいは専用線等を介して通信可能なネットワークセンター用のコンピュータシステム3とを利用するものである。」という記載から、

引用例には、「ユーザーが使用するユーザー用機器、ディ-ラ-が使用するディ-ラ-用機器、及びネットワークセンター用のコンピュータシステムがインターネットあるいは専用線等を介して通信可能とされており、前記ユーザー用機器を利用するユーザー及び前記ディーラー用機器を利用するディーラー間で商品販売を行わせる流通支援設備」 が開示されていると認められる。


(b)
上記(a)の「ユーザーが使用するユーザー用機器、ディ-ラ-が使用するディ-ラ-用機器、及びネットワークセンター用のコンピュータシステムがインターネットあるいは専用線等を介して通信可能とされており、前記ユーザー用機器を利用するユーザー及び前記ディーラー用機器を利用するディーラー間で商品販売を行わせる流通支援設備」という開示、

引用例の上記(オ)の「通常は、前記コンピュータシステム3を構成するハードウエアとソフトウエアとに、これらユーザー管理手段a、受注代行手段b、及び情報処理手段cとしての役割を担わせるのがよいが、これら機能要素の一部をハード的な専用回路により構成してもよいのは勿論である。」という記載、
(すなわち、(「流通支援設備」の一構成要素である)「コンピュータシステム」は「受注代行手段」を具備していることを開示している。)

引用例の上記(カ)の「次にユーザーが商品を発注するのに用いるアプリケーションソフトウェアについて説明する。ここで用いるアプリケーションソフトウェアは、ユーザー発注プログラムと称し、前述の受注代行手段の機能を担うものである。」という記載、
(すなわち、「ユーザーが商品を発注するのに用いるアプリケーションソフトウェア」は、(「コンピュータシステム」の構成要素である)「受注代行手段」によって実行されることを開示している。)

引用例の上記(ク)の「商品カテゴリ検索画面1500では、ユーザーが図15に示すように大きく分類された商品カテゴリ欄1501に示されたカテゴリを選んで、徐々に小さなカテゴリ欄1502、1503に遷移させていくことにより所望商品をユーザー別商品データnに登録してある商品の中から検索できる。商品条件検索画面1600では、図16に示すように商品条件を特定する商品名欄1601、メーカー品番欄1602、メーカー名欄1603、仕様欄1604および内容入力欄1605に入力する2つの項目欄1609、1610が設けてあり、この2つの項目欄1609、1610のAND条件で特定した所望の商品をユーザー別商品データnに登録してある商品の中から絞り込むことができる。そして、該当商品は結果欄1611に表示されるので、ユーザーはその中から所望の商品を検索できる。・・・(中略)・・・商品機能別検索画面1700では、図17に示すように大きく分類された商品機能欄1701に示された商品機能を選んで、徐々に小さな商品機能欄1702、1703に遷移させていくことより所望商品をユーザー別商品データnに登録してある商品の中から検索できる。これらの画面1500、1600、1700には、いずれも最終的に絞り込まれた商品のうち、“単品表示”ボタン1504、1606、1704あるいは“複数比較”ボタン1505、1607、1705を表示している。ユーザーが、このいずれかをクリックすると、その選択にしたがって複数商品比較画面1800、あるいは単品表示画面1900に移行する。」という記載、
(すなわち、商品カテゴリ検索画面、商品条件検索画面、商品機能別検索画面を用いてユーザーに必要な商品の検索を行なわせ、「単品表示画面1900」等に移行することが開示されている。)

引用例の上記(コ)の「単品表示画面1900では、図19に示すように、JPEG形式で表示された商品の写真画面を欄1901に表示し、商品名、メーカー品番、商品説明を欄1902に、さらに、NNC品番、標準小売価格、提供価格、値引率を欄1905に表示する。その他にも画面下部の欄1909にクロスプロモーション商品を写真表示する。そして、“バスケットに入れる”ボタン1906、“関連商品表示”ボタン1907、“オーダーエクスプレス登録”ボタン1908のうち、ユーザーが選択したボタンに応じて処理を行う。すなわち“バスケットに入れる”ボタン1906をクリックすると、数量入力画面(図示しない)を表示した後、バスケット画面2000に移行する。・・・(中略)・・・バスケット画面2000では、種々の商品の各単品表示画面1900において、過去に“バスケットに入れる”ボタンを押された商品を表示する。具体的には、図20に示すように各商品毎に数量、提供価格、小計価格等を示す表2001と、これら商品の合計価格、および特別割引、配送料を含んだ価格表2002とを表示するものである。このような画面を設けて、所望の商品が一定量貯まった時点で、実際に発注することができるようにしている。この時“発注処理へ”ボタン2004をクリックすると発注画面2100へ移行する。」という記載から、
(なお、“バスケットに入れる”ことをさせることによってユーザーに必要な商品の選定を行わせていることは明らかである。)

引用例には、「前記コンピュータシステムは、前記ユーザー用機器を利用するユーザーに必要な商品の検索又は選定を行わせる手段」を具備することが開示されていると認められる。


(c)
上記(b)の「前記コンピュータシステムは、前記ユーザー用機器を利用するユーザーに必要な商品の検索又は選定を行わせる手段」を具備するという開示、

引用例の上記(ウ)の「本発明は、以上のような目的を達成するために、ユーザーがそれぞれ使用するユーザー用機器と、各ユーザーと商談を行う立場にあるディ-ラ-がそれぞれ使用するディ-ラ-用機器と、これらディーラー用機器および前記ユーザー用機器とそれぞれ通信可能なネットワークセンター用のコンピュータシステムとを利用する。そして、・・・(中略)・・・、前記ユーザー用機器から前記コンピュータシステムに発信された発注情報に基いてユーザーが発注した商品を特定し、その商品を前記個別取引条件に見合う態様で前記ユーザーに提供できるようにするための処理を行う情報処理手段とを具備してなるものとする。」という記載、
(すなわち、「発注情報」が「ユーザー用機器」から「コンピュータシステム」に発信されることが開示されている。)

引用例の上記(カ)の「次にユーザーが商品を発注するのに用いるアプリケーションソフトウェアについて説明する。ここで用いるアプリケーションソフトウェアは、ユーザー発注プログラムと称し、前述の受注代行手段の機能を担うものである。・・・(中略)・・・詳述すると、このプログラムは、ユーザーがまずユーザー用機器1でコンピュータシステムに接続(アクセス)し、引き続いてユーザー用機器1のディスプレイに表示されるログイン画面1200(図12)上で、ユーザーが事業所ID121、自分のユーザーID122およびパスワード123を入力することにより作動する。・・・(中略)・・・このプログラムはまず最初に、ログインしたユーザーに対し、応答信号dを発し、対応するディーラーの名称等を表示したウェルカム画面1300(図13)を表示する。」という記載、

引用例の【図11】には、「ログイン画面1200」、「ウェルカム画面1300」、・・・を経て、「バスケット画面2000」に至る画面フローが図示されていること、
引用例の上記(コ)の「すなわち“バスケットに入れる”ボタン1906をクリックすると、数量入力画面(図示しない)を表示した後、バスケット画面2000に移行する。・・・(中略)・・・バスケット画面2000では、種々の商品の各単品表示画面1900において、過去に“バスケットに入れる”ボタンを押された商品を表示する。具体的には、図20に示すように各商品毎に数量、提供価格、小計価格等を示す表2001と、これら商品の合計価格、および特別割引、配送料を含んだ価格表2002とを表示するものである。このような画面を設けて、所望の商品が一定量貯まった時点で、実際に発注することができるようにしている。この時“発注処理へ”ボタン2004をクリックすると発注画面2100へ移行する。」という記載、

引用例の上記(サ)の「発注画面2100では、図21に示すように商品の直送先、代金請求先等を入力する表2101、2102と、バスケット画面2000において表示していた発注商品毎の数量、提供価格、小計価格等を示す表2103と、これら商品の合計価格、および特別割引、配送料を含んだ価格合計とを示す表2104とを表示する。ここでユーザーが商品の直送先、代金請求先等を入力し、商品の確認をして“続行”ボタンをクリックすると、図22に示す最終確認画面2200および発注了承画面2210に移行する。・・・(中略)・・・最終確認画面2200では、図22に示すように発注確認メッセージ2202を表示する。そしてユーザーがその下部の“OK”ボタン2201をクリックすると、発注了承画面2210に移行し、受領確認メッセージ2213と発注番号を欄2211に表示するとともに、ネットワークセンターに商品の発注データをオンラインで送りつける。そして、この画面上で“OK”ボタン2212をクリックすると、このユーザー発注プログラムは終了する。このように発注された商品データは、その発注日時、発注番号、ユーザー名称などのデータと共に、ネットワークセンターのデータベース装置4内に受注明細テーブルデータとして一旦貯えられる。」という記載から、

引用例には、「前記ユーザーによって選定が行われた商品に応じて発注情報を貯える手段であって、当該手段は、前記商品を購入し得るユーザーに付与された前記発注情報を登録するためのユーザーが事業所ID、自分のユーザーIDおよびパスワードを入力してログインした後に、前記発注情報を貯える手段」を具備することが開示されていると認められる。


(d)
上記(a)の「ユーザーが使用するユーザー用機器、ディ-ラ-が使用するディ-ラ-用機器、及びネットワークセンター用のコンピュータシステムがインターネットあるいは専用線等を介して通信可能とされており、前記ユーザー用機器を利用するユーザー及び前記ディーラー用機器を利用するディーラー間で商品販売を行わせる流通支援設備」という開示、

上記(b)の「前記コンピュータシステムは、前記ユーザー用機器を利用するユーザーに必要な商品の検索又は選定を行わせる手段」を具備するという開示、

上記(c)の「前記ユーザーによって選定が行われた商品に応じて発注情報を貯える手段であって、当該手段は、前記商品を購入し得るユーザーに付与された前記発注情報を登録するためのユーザーが事業所ID、自分のユーザーIDおよびパスワードを入力してログインした後に、前記発注情報を貯える手段」を具備するという記載、

引用例の上記(シ)の「次に、上述の発注システムにより発注された商品が実際に配送手配されるまでに用いられるアプリケーションソフトウェアについて説明する。本実施例では発注された全ての商品は、担当ディーラーの確認、許可を得た後、実際の配送手配が行われる。ここで用いられるアプリケーションソフトウェアは、その際にディーラーが利用するもので、ディーラー受注プログラムと称し、前述の情報処理手段のうち受注状況確認手段の機能を担うものである。このディーラー受注プログラムは、概略的には図24に示すような画面フローにしたがって作動するものである。・・・(中略)・・・具体的には、ディーラーがまずディーラー用機器2でコンピュータシステムに接続(アクセス)する。・・・(中略)・・・受注状況確認画面2600では、図26に示すように、ユーザーのバスケット発注単位を一行として、発注番号と、発注日、発注時刻、発注したユーザー名、および手配済みかどうかを示すステータスを表したデータ表2601を表示する。」という記載から、

引用例には、「前記ユーザーを担当しているディーラーの利用する前記ディ-ラ-用機器に、貯えられた前記発注情報を送信する手段」を具備することが開示されていると認められる。


以上の引用例の記載によれば、引用例には下記の発明(以下、「引用例発明」という。)が開示されていると認められる。

「ユーザーが使用するユーザー用機器、ディ-ラ-が使用するディ-ラ-用機器、及びネットワークセンター用のコンピュータシステムがインターネットあるいは専用線等を介して通信可能とされており、前記ユーザー用機器を利用するユーザー及び前記ディーラー用機器を利用するディーラー間で商品販売を行わせる流通支援設備であって、
前記コンピュータシステムは、前記ユーザー用機器を利用するユーザーに必要な商品の検索又は選定を行わせる手段と、
前記ユーザーによって選定が行われた商品に応じて発注情報を貯える手段であって、当該手段は、前記商品を購入し得るユーザーに付与された前記発注情報を登録するためのユーザーが事業所ID、自分のユーザーIDおよびパスワードを入力してログインした後に、前記発注情報を貯える手段と、
前記ユーザーを担当しているディーラーの利用する前記ディ-ラ-用機器に、貯えられた前記発注情報を送信する手段とを有する
ことを特徴とする流通支援設備。」



4.本願発明と引用例発明との対比

(1)
引用例発明の
「ユーザー」、
「ユーザーが使用するユーザー用機器」、
「ディ-ラ-」、
「ディ-ラ-が使用するディ-ラ-用機器」、
「ネットワークセンター用のコンピュータシステム」、
「インターネットあるいは専用線等を介して通信可能」、
「流通支援設備」、
「自分のユーザーID」
「パスワード」は、

それぞれ、

本願発明の
「ユーザ」、
「ユーザ用端末」、
「ディーラ」、
「ディーラ用端末」、
「流通支援サーバ」、
「ネットワークを介して接続」、
「流通支援システム」、
「ユーザ識別情報」、
「暗証情報」に相当する。


(2)
引用例発明の「ユーザーが使用するユーザー用機器、ディ-ラ-が使用するディ-ラ-用機器、及びネットワークセンター用のコンピュータシステムがインターネットあるいは専用線等を介して通信可能とされており、前記ユーザー用機器を利用するユーザー及び前記ディーラー用機器を利用するディーラー間で商品販売を行わせる流通支援設備」と、

本願発明の「ユーザ用端末,ディーラ用端末及び流通支援サーバがネットワークを介して接続されており、前記ユーザ用端末を利用するユーザ及び前記ディーラ用端末を利用するディーラ間で試薬販売を行わせる流通支援システム」とは、

「ユーザ用端末,ディーラ用端末及び流通支援サーバがネットワークを介して接続されており、前記ユーザ用端末を利用するユーザ及び前記ディーラ用端末を利用するディーラ間で商品販売を行わせる流通支援システム」である点で一致し、

本願発明における流通支援の対象は「試薬」であるのに対し、引用例発明における流通支援の対象は「商品」である点、で相違する。


(3)
引用例発明の「前記コンピュータシステムは、前記ユーザー用機器を利用するユーザーに必要な商品の検索又は選定を行わせる手段」と、

本願発明の「前記流通支援サーバは、前記ユーザ用端末を利用するユーザに必要な試薬の検索又は選定を行わせる試薬検索選定手段」とは、

「前記流通支援サーバは、前記ユーザ用端末を利用するユーザに必要な商品の検索又は選定を行わせる商品検索選定手段」である点で一致し、

本願発明における流通支援の対象は「試薬」であるのに対し、引用例発明における流通支援の対象は「商品」である点、で相違する。


(4)
引用例発明の「前記ユーザーによって選定が行われた商品に応じて発注情報を貯える手段であって、当該手段は、前記商品を購入し得るユーザーに付与された前記発注情報を登録するためのユーザーが事業所ID、自分のユーザーIDおよびパスワードを入力してログインした後に、前記発注情報を貯える手段」と、

本願発明の「前記ユーザによって選定された試薬に応じて発注情報を登録する発注情報登録手段」であって「前記発注情報登録手段は、前記試薬を購入し得るユーザに付与された前記発注情報を登録するためのユーザ識別情報及び暗証情報の有無を確認した上で、前記発注情報を登録し」ていることとは、

・引用例発明では「ユーザーが事業所ID、自分のユーザーIDおよびパスワードを入力してログイン」(なお、「自分のユーザーIDおよびパスワード」の入力(すなわち、「自分のユーザーIDおよびパスワード」が『有』)がなされたことを契機として、入力された「自分のユーザーIDおよびパスワード」によるログイン処理が行われるのであるから、当然に、「自分のユーザーIDおよびパスワード」の有無を確認する処理を含むことになる。)を前提として発注情報を登録していること、

・本願発明では、「ユーザ」と「ユーザを担当しているディーラ」とを関連付ける具体的方法を規定していないないことから、どのような関連付けの方法を採用するかは問題としていないこと、
(すなわち、引用例のように、ユーザに「事業所ID」を明示的に入力させる方法であっても良いことになる。)

・本願発明は、本願明細書に記載されているような、「ユーザ識別情報及び暗証情報の有無を確認」することによって、「一般ユーザ(一見客ユーザ)」用の「一般向け処理」と、(ユーザ登録された)「ユーザ」用の「ユーザ向け処理」とに振り分けることを規定していないこと、
(すなわち、本願発明は、「ユーザ識別情報及び暗証情報」が「無」であることを確認した結果、「一般ユーザ(一見客ユーザ)」用の「一般向け処理」を行う、という構成を含まないものも包含している。)

の3点を参酌すると、

「前記ユーザによって選定された商品に応じて発注情報を登録する発注情報登録手段」であって「前記発注情報登録手段は、前記商品を購入し得るユーザに付与された前記発注情報を登録するためのユーザ識別情報及び暗証情報の有無を確認した上で、前記発注情報を登録し」ている点で一致し、

・本願発明における流通支援の対象は「試薬」であるのに対し、引用例発明における流通支援の対象は「商品」である点、で相違する。


(5)
引用例発明の「前記ユーザーを担当しているディーラーの利用する前記ディ-ラ-用機器に、貯えられた前記発注情報を送信する手段」は、

本願発明の「前記ユーザを担当しているディーラの利用する前記ディーラ用端末に、登録された前記発注情報を送信する発注情報送信手段」に相当する。


(6)
したがって、本願発明と引用例発明とは、

「ユーザ用端末,ディーラ用端末及び流通支援サーバがネットワークを介して接続されており、前記ユーザ用端末を利用するユーザ及び前記ディーラ用端末を利用するディーラ間で商品販売を行わせる流通支援システムであって、
前記流通支援サーバは、前記ユーザ用端末を利用するユーザに必要な商品の検索又は選定を行わせる商品検索選定手段と、
前記ユーザによって選定された商品に応じて発注情報を登録する発注情報登録手段と、
前記ユーザを担当しているディーラの利用する前記ディーラ用端末に、登録された前記発注情報を送信する発注情報送信手段とを有し、
前記発注情報登録手段は、前記商品を購入し得るユーザに付与された前記発注情報を登録するためのユーザ識別情報及び暗証情報の有無を確認した上で、前記発注情報を登録している
ことを特徴とする流通支援システム。」

という点で一致し、

(相違点1)
本願発明における流通支援の対象は「試薬」であるのに対し、引用例発明における流通支援の対象は「商品」である点、

(相違点2)
本願発明では、ディーラが、ユーザにより発注された商品の納期情報をユーザに伝えるための構成、すなわち、
「前記ディーラ用端末は、前記発注情報に対する受注条件情報の付加を前記ディーラに行わせる受注条件情報付加手段と、
前記受注条件情報の付加された発注情報を前記流通支援サーバに送信する受注条件情報送信手段とを有し、
前記受注条件情報付加手段は、前記発注情報に対する受注条件情報として前記試薬の納期情報の付加を前記ディーラに行わせる」構成、
及び、「流通支援サーバ」が「前記ディーラ用端末から、受注条件情報の付加された発注情報を受信して登録する受注条件情報登録手段と、
前記ユーザ用端末を利用するユーザに前記受注条件情報の付加された発注情報を通知する受注条件情報通知手段」という構成、
を具備しているのに対し、
引用例発明では、そのような開示はない点、

(相違点3)
本願発明の「ディーラ用端末」は、「メーカ,他のユーザまたは他のディーラに知られることなく」情報の付加をディーラに行わせるのに対し、引用例発明では、そのような開示はない点、

で相違する。



5.相違点の判断

(1)相違点1について

引用例発明は、引用例の上記(イ)に記載されているように、ディーラの存在意義に配慮した、商品の流通支援に関する発明であり、本願発明と共通した解決課題を有している。

そして、ディーラの存在意義がある商品の流通支援分野として、試薬販売に関する分野があることは、ビジネス上の一般常識である。

しかも、試薬販売を、インターネット等のネットワークを通じて行うこと自体は、例えば、

・日米で拡大する「エレクトロニック・ビジネス」 商談から決裁までインターネット上で完結,日経マルチメディア,日経BP社,No.26,p.58-p.67(1997.08.15)
(特に、第64頁第3欄第10行から第65頁第3欄第13行の、試薬をWWWサーバー上で販売する「同仁化学研究所」の事例を参照)

・取引できないモノはない 最先端の5事例を徹底解説,日経ネットビジネス,日経BP社,No.58,p.98-p.105(2000.04.15)
(特に、第102頁第3欄第16行から第103頁第3欄第13行の、試薬をインターネットで販売する米ケムデックス社のe-マーケットプレイス「Chemdex」の事例を参照)

に挙げられるように、ビジネス上の一般常識である。

したがって、ユーザとディーラとの間の流通支援を行う引用例発明における流通支援の対象を「商品」から「試薬」に限定することは、当業者が容易に想到し得ることである。


(2)相違点2について

発注された商品の納期情報は、一般的に、生産状況、在庫状況、発注状況、流通状況等によって日々変化する性質のある情報であるため、
商品が発注された時の納期情報と、商品の発注を受ける以前の過去の納期情報とが同一でなかったり、
商品が発注された時点では納期情報が不明であったりすることがあることは、
商品が試薬か否かに依存しない、ビジネス上の一般常識である。

そのため、商品の発注後に、発注を受けた側が発注をした側に対して納期情報を通知する必要が生じ得ることも、
商品が試薬か否かに依存しない、ビジネス上の一般常識である。
(ちなみに、休日に百貨店等の小売店舗において、店舗に置いていない商品を注文した場合、商品の納入元が休日のため、後日、納品可否を含めた納期情報を電話連絡するという『商談』が行われることは、一般消費者も経験することである。)

つまり、引用例の上記(ウ)には「特定した個別取引条件を流通の運用全般に亘り円滑に反映させるには、その個別取引条件を商品関連データに付加してユーザー別商品データを作成しておくのが望ましい。なお、ユーザー別商品データは、予め作成しておいてもよいが、必要に応じて逐次生成するようにしてもよい。」という記載があるものの(なお、引用例には、「個別取引条件」に納期情報が含まれていることは明示されていない。)、
上記ビジネス上の一般常識を参酌すれば、引用例発明においても、(仮に、事前に納期情報を通知していたとしても)商品が発注された後に、発注された商品の納期情報をユーザに通知する必要が生じ得ることは明らかである。

また、引用例発明においては、「流通支援サーバ」(コンピュータシステム)を介して、ユーザとディーラとの間で情報の授受を行っているのであるから、
ディーラからユーザに情報を通知するためには、
「ディーラ用端末」(ディ-ラ-用機器)によって入力された情報を「流通支援サーバ」に送信し、「流通支援サーバ」が当該情報を受信して登録し、「流通支援サーバ」が当該情報を「ユーザ用端末」(ユーザー用機器)に通知すれば良いことは明らかである。

しかも、受注条件などを『商談』により決定するコンピュータシステムは、例えば、
・顧客(本願の「ユーザ」に対応)からの商談引合情報データ(本願の「発注情報」に略対応)に対して納期等(本願の「受注条件情報」及び「納期情報」に対応)を付加して顧客に回答するコンピュータシステムが開示された、特開2000-113039号公報
(特に、段落【0012】乃至【0014】,【0041】)を参照)

原査定の拒絶の理由に引用された引用例2乃至5、すなわち、

・特開平10-261026号公報

・桑原里恵,mySAP.comが果たす役割 新たなビジネス機会を創出へ,日経コンピュータ,日本,日経BP社,1999年10月25日,第481号,第32-35頁

・小林暢子,日本の企業間EC,導入はどこまで進んだ?,日経コンピュータ,日本,日経BP社,1998年10月12日,第454号,第94-95頁

・永井学,福利厚生、会計などをアウトソース-1兆円の市場がネットに眠る企業向けビジネス続々誕生,日経ネットビジネス,日本,日経BP社,1999年 9月15日,第51号,第83-89頁

に挙げられるように、情報処理分野における周知技術である。

したがって、引用例発明に対して、ユーザに納期情報を通知できるようにするべく、
「ディーラ用端末」に、「前記発注情報に対する受注条件情報の付加を前記ディーラに行わせる受注条件情報付加手段と、
前記受注条件情報の付加された発注情報を前記流通支援サーバに送信する受注条件情報送信手段とを有し、
前記受注条件情報付加手段は、前記発注情報に対する受注条件情報として前記試薬の納期情報の付加を前記ディーラに行わせる」構成、
及び、「流通支援サーバ」に、「前記ディーラ用端末から、受注条件情報の付加された発注情報を受信して登録する受注条件情報登録手段と、
前記ユーザ用端末を利用するユーザに前記受注条件情報の付加された発注情報を通知する受注条件情報通知手段」という構成、
を付加せしめることは、当業者が容易に想到し得ることである。


(3)相違点3について

一般的に、ディーラ固有の情報(いわば、当該ディーラの情報資産)を無償で競合者又は第三者に知らしめたい、という動機は存在しないこと(むしろ、秘匿しておきたいという動機が存在すること)は、ビジネス上の一般常識であることを鑑みれば、
「ディーラ用端末」を用いた情報の付加などの情報入力という行為は、「メーカ,他のユーザまたは他のディーラ」の監視下で行われなければならない性質の行為ではないことは明らかである。

したがって、引用例発明において、
「ディーラ用端末」は、「メーカ,他のユーザまたは他のディーラに知られることなく」情報の付加をディーラに行わせる、
というように構成することは、当業者が容易に想到し得ることである。



6.むすび

したがって、本願発明は、引用例に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-01 
結審通知日 2008-12-02 
審決日 2008-12-15 
出願番号 特願2001-583402(P2001-583402)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 篠原 功一岩間 直純  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 和田 財太
手島 聖治
発明の名称 流通支援方法及び流通支援システム  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠彦  

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