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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) A61H
管理番号 1192198
判定請求番号 判定2008-600041  
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2009-03-27 
種別 判定 
判定請求日 2008-09-19 
確定日 2009-02-10 
事件の表示 上記当事者間の特許第3080953号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号写真及びイ号の取扱説明書に示す「歩行補助車」は、特許第3080953号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 1.請求の趣旨
本件判定請求の趣旨は、イ号写真及びイ号の取扱説明書に示す歩行補助車(以下、「イ号物件」という。)は、特許第3080953号発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

2.本件特許発明
本件特許第3080953号発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項3に記載された事項により特定されるとおりのものであって、請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明1」という。)を構成要件に分説すると、次のとおりである。なお、構成要件の分説は、便宜上請求人の判定請求書における分説に従った。
A 上端にハンドルを下端に前輪を有する左右一対の前脚杆と、該前脚杆に連結されると共に、下端に後輪を有する左右一対の後脚杆と、から成る老人車において、
B その前面に袋部4を着脱自在に取りつけることが可能であると共に、後面に座席部5を有する枠杆3を、左右の前脚杆1にわたり起倒自在に取りつけたこと、
C 座席部5を枠杆3上をスライド可能にすると共に、枠杆3と座席部5にわたり引き張りバネ8を取り付け、座席部5に対して引き張り力を与えると共に、前脚杆1にカム板6を取り付け、該カム板6及び座席部に取りつけたピン7により、枠杆3を起した状態及び倒した状態をロックできるようにしたこと、
D を特徴とするショッピングカート的な形態を有する老人車。

3.イ号物件
イ号物件を、判定請求書における「6[4](原文は○の中に4、以下同じ。)イ号の説明」を参考に記載すれば、一応次のとおりのものといえる。
a 上部にハンドル杆14’を回動可能に連結し、下端に前輪15’を有する左右一対の前脚杆1’と、前脚杆1’に回動可能に連結されると共に下端に後輪16’を有する左右一対の後脚杆2’とから成る歩行補助車において、
b その前面に袋部4’を着脱自在に取りつけることが可能であると共に、後面に座席部5’を有する枠杆3’を、左右の前脚杆1’にわたり起倒自在に取りつけ、
c 二本の連結板18’18’を並行させ、その基端を前脚杆1’を挟むようにして回動可能に取り付けると共に、基端を枠杆3’に回動可能に取り付けた一本の連結板18’の先端を、二本の連結板18’の先端に連結軸6’で一体的に連結した、
d 歩行補助車。
なお、これらa?dの記載内容については被請求人も認めているところである。
しかしながら、さらにイ号の取扱説明書によれば、座面の使用方法として、図面とともに、次の記載がある。
「駐車ブレーキがかかっていることを確認してから、背もたれ横の面ファスナーを外し、座面を下へ倒して中央に座って下さい。折りたたむ際は、座面を上げ、面ファスナーで固定して下さい。」
上記記載からみて、イ号物件は、「面ファスナーにより枠杆3’を起こした状態でハンドル杆14’に固定しうる」ものであることは明らかであるから、この点を加味してイ号物件を記載すれば、次のとおりのものである。
a 上部にハンドル杆14’を回動可能に連結し、下端に前輪15’を有する左右一対の前脚杆1’と、前脚杆1’に回動可能に連結されると共に下端に後輪16’を有する左右一対の後脚杆2’とから成る歩行補助車において、
b その前面に袋部4’を着脱自在に取りつけることが可能であると共に、後面に座席部5’を有する枠杆3’を、左右の前脚杆1’にわたり起倒自在に取りつけ、
c 二本の連結板18’18’を並行させ、その基端を前脚杆1’を挟むようにして回動可能に取り付けると共に、基端を枠杆3’に回動可能に取り付けた一本の連結板18’の先端を、二本の連結板18’の先端に連結軸6’で一体的に連結し、
c’面ファスナーにより枠杆3’を起こした状態でハンドル杆14’に固定しうる
d 歩行補助車。

4.対比、判断
(1)イ号物件が、本件特許発明1の各構成要件を充足するか否かの判断
イ号物件の前脚杆1’は上部にハンドル杆14’を回動可能に連結するものであるが、上端にハンドルを有する点では本件特許発明の前脚杆と一致している。またイ号物件の歩行補助車が老人車として用いられることは明らかであるとともに、袋部4’を有しているから、ショッピングカート的な形態を有するということもできる。
そうすると、イ号物件の構成a、b、dはそれぞれ本件特許発明1の構成要件A、B、Dに相当する。
しかしながら、イ号物件の構成を示すa?dのいずれにも、本件特許発明1の構成要件Cにおける、座席部5をスライド可能とする点、引き張りバネ8を設けた点、カム板6及びピン7により枠杆3を起した状態及び倒した状態をロックできる点に対応した構成はない。
そうすると、イ号物件は、本件特許発明1の構成要件A、B、Dに相当する構成は備えているが、構成要件Cに相当する構成を備えていない。
よって、イ号物件は、少なくとも文言上、本件特許発明1の各構成要件を充足しない。

(2)均等の判断
請求人は、判定請求書において、イ号物件の本件特許発明1と異なる部分について均等の主張を行っているので、この点について検討する。
請求人は、判定請求書6[5](4)において、イ号物件の構成cについて、「品物を入れ稍後方へ傾かせた状態の袋部4’を連結板18’、18’と前脚杆1’とのピンによる締め付け具合を回動可能程度に固く締め付けて袋部4’が前方へ倒れないようにした作用効果は本件特許発明の奏する作用効果と同一であるが、・・・」と記載し、構成cにより袋部4’及びそれを取りつけた枠杆3’を起こした状態にロックできるとしている。
しかしながら、イ号写真及びイ号の取扱説明書をみても、「連結板18’、18’と前脚杆1’とのピンによる締め付け具合を回動可能程度に固く締め付けて袋部4’が前方へ倒れないようにした」との記載はなく、それを示唆する記載もない。構成cは、連結軸6’が前脚杆1’と当接することにより、袋部4’及びそれを取りつけた枠杆3’の回動範囲を制限する機能は有すると認められるが、当接した状態でロックする機能まで有するものと認めることはできない。
したがって、イ号物件の構成cと構成要件Cとはその機能を含め一致するところはない。
一方イ号物件の構成c’の面ファスナーは枠杆3’を起こした状態でハンドル杆14’に固定しうるものであるから、本件特許発明1の構成要件Cにおける枠杆3を起した状態にロックできるようにしたという機能の点においては共通している。
そうすると、本件特許発明1とイ号物件の異なる部分は、構成要件Cのうち、枠杆3を起した状態にロックできるようにしたという機能の点を除く部分となる。
請求人は、イ号物件の本件特許発明1と異なる部分は発明の本質的な部分ではないと主張している。
しかしながら、構成要件Cのうち、機能に関する点のみについてみても、この機能は、発明が解決しようとする課題である、老人車に使用するロック機構を提供することに対応するものであるから、発明の本質的な部分とするのが相当であり、その場合の本質的な部分は、枠杆3を起した状態にロックできるようにしたという機能だけでなく、倒した状態にロックできるようにしたという機能をも含むものである。
さらに、構成要件Cは、審査過程において、平成12年2月3日付け拒絶理由通知書に記載された拒絶理由を回避するためになされた平成12年4月10日付け手続補正によって追加された部分である。そして、該拒絶理由に示された引用例2(乙第5号証)の段落【0029】には、座席を起こした状態及び倒した状態にロックするための、本件特許発明1とは異なる具体的構成である、係止ピンや突起部を用いたロック機構が示されていることからみれば、上記手続補正により、拒絶理由を回避するために引用例2とは異なる具体的構成が追加されたものと認められる。そうすると、構成要件Cのうち本質的な部分には、単に枠杆3を起こした状態及び倒した状態にロックする機能のみでなく、そのための具体的構成、すなわち座席部5をスライド可能とする点、引き張りバネ8を設けた点、カム板6及びピン7を設けた点をも含まれるとするのが相当である。
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件特許発明1と発明の本質的な部分において構成が異なるものであり、均等を判断するための他の要件を判断するまでもなく、イ号物件が、本件特許発明1の構成と均等なものであるということはできない。

5.むすび
以上のとおり、イ号物件は、本件特許発明1の技術的範囲に属しない。
また、本件特許第3080953号発明の請求項2及び3に係る発明(以下、本件特許発明2及び3という。)は、本件特許発明1を引用するものであるから、イ号物件が本件特許発明1の技術的範囲に属しない以上、本件特許発明2及び3の技術的範囲にも属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲






イ号の説明(判定請求書中の「6[4]イ号の説明」)
a 上部にハンドル杆14’を回動可能に連結し、下端に前輪15’を有する左右一対の前脚杆1’と、前脚杆1’に回動可能に連結されると共に下端に後輪16’を有する左右一対の後脚杆2’とから成る歩行補助車において、
b その前面に袋部4’を着脱自在に取りつけることが可能であると共に、後面に座席部5’を有する枠杆3’を、左右の前脚杆1’にわたり起倒自在に取りつけたこと、
c 二本の連結板18’18’を並行させ、その基端を前脚杆1’を挟むようにして回動可能に取り付けると共に、基端を枠杆3’に回動可能に取り付けた一本の連結板18’の先端を、二本の連結板18’の先端に連結軸6’で一体的に連結したこと、
e?i (省略)
j 歩行補助車。
 
判定日 2009-01-29 
出願番号 特願平11-225433
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (A61H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 元人  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 八木 誠
蓮井 雅之
登録日 2000-06-23 
登録番号 特許第3080953号(P3080953)
発明の名称 ショッピングカート的な形態を有する老人車  
代理人 伊藤 晃  
代理人 築山 正由  
代理人 田中 光雄  

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