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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A63F
管理番号 1192499
審判番号 無効2004-80262  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-12-20 
確定日 2009-01-19 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3537630号「遊技機の回転リールユニット」の特許無効審判事件についてされた平成18年3月7日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成18年(行ケ)第10169号 平成18年8月25日決定)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3537630号の請求項1,2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願からの主立った経緯は次のとおりである。
・平成9年4月18日 本件出願
・平成16年3月26日 特許第3537630号として設定登録(請求項1及び2)
・同年12月20日 石井豪より、請求項1,2の特許に対して無効審判請求
・平成17年3月18日 被請求人より答弁書提出
・平成18年3月7日付け 無効とすべき審決
・同年7月7日 本件特許について訂正審判請求(後に、特許法134条の3第4項の規定によりみなし取り下げ)
・同年8月25日 知的財産高等裁判所において差し戻し決定
・同年10月16日 被請求人より訂正請求書提出(特許法134条の3第3項の規定により、上記訂正審判の訂正明細書を援用)
・同年12月21日 請求人より弁駁書提出
・平成19年2月8日付け 当審において訂正拒絶理由及び職権審理結果を通知
・同年3月16日 被請求人より意見書及び手続補正書提出
・同日付け 請求人より意見書提出
・同年10月4日 当事者双方より口頭審理陳述要領書提出、第1回口頭審理実施、当審より訂正拒絶理由を通知
・同月31日 請求人より意見書提出
・同日 被請求人より意見書及び手続補正書提出

第2 当事者の主張
1.請求人の主張
平成18年10月16日付けでされた訂正請求は違法である。
請求項1,2に係る発明は、本件出願前に頒布された以下の甲第1号証?甲第12号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1,2に係る特許は特許法29条2項の規定に違反してされた特許であり、同法123条1項2号の規定により無効とされるべきである。
甲第1号証:特開平9-75506号公報
甲第2号証:特開平7-100241号公報
甲第3号証:特開平4-90777号公報
甲第4号証:特開平4-108468号公報
甲第5号証:特開平6-98964号公報
甲第6号証:実願昭60-175597号(実開昭62-84485号)のマイクロフィルム(審判請求書には「実開昭62-84485号」とあるが、実際に提出されたのはマイクロフィルムの写しである。)
甲第7号証:必勝パチスロファン 平成6年8月号抜粋
甲第8号証:必勝パチスロファン 平成7年4月号抜粋
甲第9号証:必勝パチスロファン 平成7年10月号抜粋
甲第10号証:パチスロ攻略マガジン 平成7年7月号抜粋
甲第11号証:パチスロ攻略マガジン 平成7年10月号抜粋
甲第12号証:パチスロ攻略マガジン 平成9年1月号抜粋

2.被請求人の主張
平成19年3月16日付けの手続補正及び同年10月31日付けの手続補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではない。
訂正前の請求項1,2に係る発明又は訂正後(補正されたものを含む)の請求項1,2に係る発明は何れも、第1号証?甲第12号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、被請求人は以下の乙第1号証?乙第3号証を提出している。
乙第1号証:特開昭59-186580号公報
乙第2号証:実願昭60-74971号(実開昭61-191081号)のマイクロフィルム
乙第3号証:特開平6-114140号公報

第3 訂正の許否の判断
1.手続補正書について
本件では、平成18年10月16日付けの訂正請求書について、平成19年3月16日付け手続補正書(以下「第1補正」という。)及び同年10月31日付け手続補正書(以下「第2補正」という。)が提出されている。
そして、2つの手続補正書は、それぞれ上記訂正請求書を補正するという、独立した手続補正書であり、第2補正は第1補正により補正された訂正請求書の補正ではない。
そうすると、2つの手続補正書の双方を採用した場合、結果的に、2つの異なる訂正請求書が併存することとなる。特許法は、「第一項の訂正の請求がされた場合において、その審判事件において先にした訂正の請求があるときは、当該先の請求は、取り下げられたものとみなす。」(134条の2第4項)と規定しており、複数の訂正請求が併存することを認めていない。
ここで、補正が採用されるかどうかはあくまでも審理の結果であり、採用される可能性がある以上、1つの訂正請求書に対して、2つの異なる手続補正書が存在することを、特許法は予定していないというべきである。
そこで、第1補正及び第2補正による訂正事項の推移を見ることにより、補正された訂正請求書がどちらであるべきなのかを検討することとする。

2.訂正事項の推移
(1)平成18年10月16日付け訂正請求書(補正前)の訂正事項
平成18年10月16日付けの訂正請求書(補正前)は、特許請求の範囲に限れば、【請求項1】を、「円筒状をしたリールドラムと、このリールドラムの外周に設けられる,種々の図柄が描かれたリール帯と、これら図柄を背後から照らす光源とを備えて構成される遊技機の回転リールユニットにおいて、前記リール帯は、異なる種類の複数の特定図柄の一部分が、それぞれ透明または半透明に形成され、かつ、前記リールドラムの回転方向に直交する方向において異なる位置に配されていることを特徴とする遊技機の回転リ一ルユニット。」から「円筒状をしたリールドラムと、このリールドラムの外周に設けられる,種々の図柄が描かれたリール帯と、これら図柄を背後から照らす光源とを備えて構成される遊技機の回転リールユニットにおいて、前記リール帯は、異なる種類の複数の特定図柄の一部分が、それぞれ半透明に形成され、かつ、それぞれ異なる色に着色されており、前記リールドラムの回転方向に直交する方向において異なる位置に配され、当該異なる位置がリール帯の幅方向の右方及び左方であることを特徴とする遊技機の回転リ一ルユニット。」と訂正するものである。
この訂正事項は、次の3つの個別訂正事項からなっている。
個別訂正事項1:「それぞれ透明または半透明に形成され」を「それぞれ半透明に形成され」と訂正、すなわち、異なる種類の複数の特定図柄の一部分が透明に形成されることを排除する旨の限定。
個別訂正事項2:「異なる種類の複数の特定図柄の一部分」につき、「それぞれ異なる色に着色されており」との限定を加える。
個別訂正事項3:「異なる種類の複数の特定図柄の一部分」につき、「当該異なる位置がリール帯の幅方向の右方及び左方である」との限定を加える。

(2)第1補正の補正事項
第1補正後の訂正された【請求項1】は「円筒状をしたリールドラムと、このリールドラムの外周に設けられる,種々の図柄が描かれたリール帯と、これら図柄を背後から照らす光源とを備えて構成される遊技機の回転リールユニットにおいて、前記リール帯は、異なる種類の複数の特定図柄の一部分が、それぞれ半透明に形成され、前記リールドラムの回転方向に直交する方向において異なる位置に配され、当該異なる位置がリール帯の幅方向の右方及び左方であることを特徴とする遊技機の回転リ一ルユニット。」となっている。
要するに、特許請求の範囲に限れば、第1補正は個別訂正事項2を削除するというものである。
すなわち、第1補正後の訂正事項は、個別訂正事項1及び個別訂正事項3となる。

(3)第2補正の補正事項
第2補正後の訂正された【請求項1】は「上下方向に回転可能な円筒状をしたリールドラムと、このリールドラムの外周に設けられる,種々の図柄が描かれたリール帯と、これら図柄を背後から照らす光源とを備えて構成される遊技機の回転リールユニットにおいて、前記リール帯は、異なる種類の複数の特定図柄それ自体の一部分が、それぞれ半透明に形成され、前記リールドラムの回転方向に直交する方向において異なる位置に配され、当該異なる位置がリール帯の幅方向の右方及び左方であることを特徴とする遊技機の回転リ一ルユニット。」となっている。
要するに、特許請求の範囲に限れば、第2補正は個別訂正事項2を削除するとともに、「円筒状をしたリールドラム」を「上下方向に回転可能な円筒状をしたリールドラム」と限定(以下「個別訂正事項4」という。)し、「異なる種類の複数の特定図柄の一部分」を「異なる種類の複数の特定図柄それ自体の一部分」と訂正(以下「個別訂正事項5」という。)するものである。
すなわち、第2補正後の訂正事項は、個別訂正事項1、個別訂正事項3?5となる。

(4)第1補正と第2補正の関係
(2)及び(3)によれば、第2補正は第1補正をすべて含み(上記では具体的に述べていないが、発明の詳細な説明についてもそうである。)、さらなる補正事項を加えていると認めることができる。
すなわち、被請求人が意図した訂正請求書の補正は、すべて第2補正に盛り込まれていることになるから、第2補正こそが本件で検討されるべき補正であると認める。

(5)第2補正の採否
知財高判平成17年(行ケ)第10706号(平成18年10月25日判決言渡)は、「審判における審理対象の拡張変更による審理遅延を防止するとの特許法131条の2第1項の立法趣旨等にも照らすと「要旨の変更」に当たるかどうかは単に請求の趣旨や理由が変更されたかどうかを形式的に判断するのではなく補正前の訂正事項と補正後の訂正事項の内容を対比検討し,訂正審判における審理の範囲が当該補正により実質的に拡張・変更されるかどうかに基づいて判断すべきである。」と判示しており、これは訂正審判の補正についての判示であるが、訂正請求の補正についても妥当すると解されるから、当審もこれに従う。
第2補正は、個別訂正事項2を削除し、新たに個別訂正事項4及び個別訂正事項5を加えるというものであるが、個別訂正事項2の削除は訂正事項の一部削除と捉えることができ、訂正請求書の要旨の変更には当たらない。そこで、追加された訂正事項について検討する。
個別訂正事項4は一見すると、請求項1に新たな限定を加えるものであるが、補正前の請求項1には個別訂正事項3として「当該異なる位置がリール帯の幅方向の右方及び左方である」との限定が既にある。この限定によれば、「リール帯の幅方向」が左右方向であることは明らかであり(口頭審理時に通知した訂正拒絶理由はこれに反するものであるから撤回する。)、そうであれば、「円筒状をしたリールドラム」が「上下方向に回転可能」なことも明らかであって、個別訂正事項4はそのことをより明確にしただけであり、訂正請求における審理の範囲を実質的に拡張・変更するものではない。
個別訂正事項5については、「それ自体」との文言がなくとも、「特定図柄の一部分」といえば「特定図柄それ自体の一部分」と解すべきであるから、訂正請求における審理の範囲を実質的に拡張・変更するものではない。
第2補正は、特許請求の範囲以外にも訂正事項を補正しているので、これについても検討する。具体的には次のとおりである。なお、被請求人は後記補正事項2?5につき、既にした訂正事項(訂正請求書において「訂正事項c」と表記されている事項)の補正であると主張しているが、実質的には訂正事項の追加であることが明らかである。

補正事項1:段落【0013】の訂正につき、補正前は「上記リール帯は、異なる種類の複数の特定図柄の一部分が、それぞれ半透明に形成され、かつ、リールドラムの回転方向に直交する方向において異なる位置に配され、当該異なる位置がリール帯の幅方向の右方及び左方であることを特徴とするものである。」と訂正するとしていたものを、「上記リール帯は、異なる種類の複数の特定図柄それ自体の一部分が、それぞれ半透明に形成され、かつ、リールドラムの回転方向に直交する方向において異なる位置に配され、当該異なる位置がリール帯の幅方向の右方及び左方であることを特徴とするものである。」と訂正する旨補正する。
補正事項2:段落【0016】の「本実施形態による回転リールユニット41は」を「本参考実施形態による回転リールユニット41は」と訂正することを追加する。
補正事項3:段落【0017】の「本実施形態」を「本参考実施形態に」と訂正することを追加する。
補正事項4:段落【0023】及び【0025】の「上記実施形態」を「上記参考実施形態」と訂正することを追加する。
補正事項5:【図面の簡単な説明】の【図1】に「本発明の一実施形態および他の実施形態」とあるのを「参考例および一実施形態」と訂正すること、【図面の簡単な説明】の【図2】に「他の実施形態」とあるのを「一実施形態」と訂正すること、及び【図面の簡単な説明】の【図3】に「一実施形態」とあるのを「参考例」と訂正することを追加する。
補正事項6:「願書添付明細書段落【0024】に「図1(b)は他の実施形態による回転リールユニットに用いられるリール帯31の平面図である。」とあるのを「図1(b)は本実施形態による回転リールユニットに用いられるリール帯31の平面図である。」と訂正する。」としていたものを、「願書添付明細書段落【0023】に「図1(b)は他の実施形態による回転リールユニットに用いられるリール帯31の平面図である。」とあるのを「図1(b)は本実施形態による回転リールユニットに用いられるリール帯31の平面図である。」と訂正する。」と補正する。

そこで検討するに、補正事項1は特許請求の範囲における訂正事項の補正と整合させるための補正であるから、訂正請求における審理の範囲を実質的に拡張・変更するものではない。
補正事項6は、補正前に「段落【0024】」が「段落【0023】」とあったのが自明な誤記であったため、これを正すものであり、訂正請求における審理の範囲を実質的に拡張・変更するものではない。
補正事項2?5は、段落【0016】?【0022】に記載され、【図1】に示された2つのリール体のうち【図1】(b)のみが本件特許発明の実施例であって、【図1】(a)は実施例でないという、本来ならば特許前に補正しておくべきであった事項を、訂正事項として追加するものであるが、当事者双方が確認しているように、訂正前の記載が特許請求の範囲に整合していないことは明らかであることを考慮すると、訂正事項としては無条件に認められる事項であるから、訂正請求における審理の範囲を実質的に拡張・変更するものではない。
以上のとおりであるから、第2補正を採用する。

3.第2補正後の訂正事項
第2補正を採用した上での訂正事項は以下のとおりである。
訂正事項1:【請求項1】記載の「円筒状をしたリールドラム」を「上下方向に回転可能な円筒状をしたリールドラム」と訂正する。
訂正事項2:【請求項1】記載の「異なる種類の複数の特定図柄の一部分が、それぞれ透明または半透明に形成され」を「異なる種類の複数の特定図柄それ自体の一部分が、それぞれ半透明に形成され」と訂正する。
訂正事項3:【請求項1】記載の「前記リールドラムの回転方向に直交する方向において異なる位置に配されている」を「前記リールドラムの回転方向に直交する方向において異なる位置に配され、当該異なる位置がリール帯の幅方向の右方及び左方である」と訂正する。
訂正事項4:段落【0013】の「上記リール帯は、異なる種類の複数の特定図柄の一部分が、それぞれ透明または半透明に形成され、かつ、リールドラムの回転方向に直交する方向において異なる位置に配されていることを特徴とするものである。」を「上記リール帯は、異なる種類の複数の特定図柄それ自体の一部分が、それぞれ半透明に形成され、かつ、リールドラムの回転方向に直交する方向において異なる位置に配され、当該異なる位置がリール帯の幅方向の右方及び左方であることを特徴とするものである。」と訂正する。
訂正事項5:段落【0016】記載の「図3は本実施形態による回転リールユニット41の斜視図であり」及び「本実施形態による回転リールユニット41は」を、「図3は本発明の参考例による回転リールユニット41の斜視図であり」及び「本参考実施形態による回転リールユニット41は」と、それぞれ訂正する。
訂正事項6:段落【0017】記載の「本実施形態」を「本参考実施形態」と訂正する。
訂正事項7:段落【0023】記載の「他の実施形態」及び「上記実施形態」を、「本実施形態」及び「上記参考実施形態」とそれぞれ訂正する。
訂正事項8:段落【0025】記載の「上記実施形態」を「上記参考実施形態」と訂正する。
訂正事項9:段落【0026】を削除する。
訂正事項10:【図面の簡単な説明】の【図1】に「本発明の一実施形態および他の実施形態」とあるのを「参考例および一実施形態」と、同【図2】に「他の実施形態」とあるのを「一実施形態」と、及び同【図3】に「一実施形態」とあるのを「参考例」とそれぞれ訂正する。

4.訂正目的の検討
訂正事項1?3のうち「それ自体」の文言追加は明りようでない記載の釈明を目的とし、それ以外については特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。訂正事項4及び訂正事項9は、特許請求の範囲との整合を図るものであるから、その訂正目的は訂正事項1?3に準ずる。
訂正事項5?8及び訂正事項10は、本来実施例でないものを実施例であるかのように記載していたことを正すものであるから、明りようでない記載の釈明又は誤記の訂正を目的とするものと認める。
したがって、第2補正により補正された訂正請求は特許法134条の2第1項ただし書きの規定に適合する。

5.新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1につき、「上下方向に回転可能」との直接文言記載は願書に添付した明細書(以下「特許明細書」という。)にはないけれども、「リールドラム12の回転方向に直交する方向、つまりリール帯31の幅方向において異なる位置に配されている。すなわち、セブン32のシンボルではこの幅方向の右方に半透明部分32aが位置しており」(段落【0027】)との記載によれば、「回転方向に直交する方向」が左右方向であるから、リールドラムが上下方向に回転可能なことは自明である。そのことは、特許明細書に添付した【図3】からも明らかである。
訂正事項2は、特許明細書の「セブン32およびウルフ33の2つの各特定シンボルの図柄の一部分に、それぞれ円形の半透明部分32aおよび33aが形成されている。・・・ウルフ33のシンボルでは、図2(b)の拡大図に示すように、目の部分に円形半透明部分33aが形成されている。」(段落【0024】)並びに【図1】(b)及び【図2】に基づくものであり、新規事項には当たらない。なお、平成19年2月8日付け訂正拒絶理由は、個別訂正事項2が第2補正で削除されたことにより解消しており、口頭審理時に通知した訂正拒絶理由は、「リール帯の幅方向の右方及び左方」との記載を看過することにより誤った訂正拒絶理由であるから撤回する。
訂正事項4及び訂正事項9は、訂正事項1?3に付随するから、これも新規事項には当たらない。
訂正事項5?8及び訂正事項10については、直接的な記載は特許明細書にも願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。)にも存在しないが、当初明細書においては請求項は1?3あり、このうち請求項1がその後の補正により削除されている。そして、「参考例」又は「参考実施形態」と訂正されたものが、当初明細書の請求項1に対応した実施例であり、特許明細書の請求項1又は請求項2に対応した実施例でないことは明らかである(そのことは当事者双方が認めている。)から、直接的な記載がなくとも、自明な事項として扱われるべきであり、新規事項には当たらない。
また、訂正事項1?10が、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更すると認めることもできない。
すなわち、訂正事項1?10は、特許法134条の2第5項で準用する同法126条3項及び4項の規定に適合する。

6.訂正の許否の判断の結論
以上のとおりであるから、第2補正により補正された訂正請求書による訂正請求を認める。

第4 本件審判請求についての判断
1.本件発明の認定
第2補正により補正された訂正請求書による訂正請求が認められるから、本件の請求項1及び請求項2に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、第2補正に添付された全文訂正明細書(以下、単に「訂正明細書」という。)の特許請求の範囲【請求項1】及び【請求項2】に記載された事項によって特定されるものであり、これら請求項の記載は次のとおりである。
【請求項1】上下方向に回転可能な円筒状をした円筒状をしたリールドラムと、このリールドラムの外周に設けられる,種々の図柄が描かれたリール帯と、これら図柄を背後から照らす光源とを備えて構成される遊技機の回転リールユニットにおいて、
前記リール帯は、異なる種類の複数の特定図柄それ自体の一部分が、それぞれ半透明に形成され、かつ、前記リールドラムの回転方向に直交する方向において異なる位置に配され、当該異なる位置がリール帯の幅方向の右方及び左方であることを特徴とする遊技機の回転リ一ルユニット。
【請求項2】前記遊技機はスロットマシンまたは弾球遊技機であることを特徴とする請求項1記載の遊技機の回転リールユニット。

2.甲第2号証の記載事項
甲第2号証(以下「甲2」と略記する。他の甲号証についても同様。)には、以下のア?キの記載が図示とともにある。
ア.「複数の回転リールを横方向に並列し、各回転ドラムの外周の表面に複数のシンボルマークを所定間隔で表示し、各回転ドラムを回転させてシンボルマークを移動表示するスロットマシンにおいて、
上記複数の回転リールのうち、少なくとも1個の回転リールには、その複数のシンボルマークのうち少なくとも1個のシンボルマークの位置に形成され、当該回転リールの内外に光を通過可能な少なくとも1個の透光窓と、この透光窓を照明するとともに、当該回転リールの内部に配置された発光源とを備えたことを特徴とするスロットマシン。」(【請求項1】)
イ.「本発明は、スロットマシンに関し、特に初心者でも特定のシンボルマークを狙い易くしたものである。」(段落【0001】)
ウ.「従来、この種のスロットマシンとしては、複数の回転リールを横方向に並列し、各回転ドラムの外周の表面に複数のシンボルマークを所定間隔で表示し、各回転ドラムを回転させてシンボルマークを移動表示していた。」(段落【0002】)
エ.「3個の回転リール40?42は、図3に示すように、スロットマシン10の内部に収容されたリールユニット50に組み込まれている。上記リールユニット50は、図3に示すように、中空な筐体51と、この筐体51の内部を縦割りに3つに仕切る3枚の支持板52と、これらの支持板52に個々に固定され、各回転リール40?42をそれぞれ回転する3個のリールモータ53とを備える。」(段落【0012】)
オ.「各回転リール40?42は、図3に示すように、上記各リールモータ53により回転される回転ドラム60と、この回転ドラム60の外周に貼着される帯状のリールテープ70とから構成されている。上記リールテープ70の表面は、図3,4に示すように、複数のシンボルマークが所定間隔で表示されている。そして、リールテープ70には、その複数のシンボルマークのうち少なくとも1個のシンボルマークの位置に、表裏面に光を通過可能な少なくとも1個の透光窓71が形成されている。」(段落【0013】)
カ.「透光窓71を貫通孔より構成したが、貫通孔に限らず、透光性を有していれば足り、例えば透光窓71の位置だけ透明乃至は半透明として、他の箇所を黒等に着色してマスクしてもよい。一方、前記回転ドラム60の内部には、図1に示すように、リールテープ70の透光窓71を照明する発光源としてのランプ80を配置している。」(段落【0015】)
キ.「ビッグボーナスは、例えば「7」のシンボルマークが有効ライン上に3個揃うことにより達成される。」(段落【0018】)

3.甲2記載の発明の認定
記載カの「黒等に着色してマスク」した部分は、「透明乃至は半透明」部分の背景となる部分であり、「透明乃至は半透明」は「半透明」であることを含む。
したがって、甲2には、リールユニットとして次のようなものが記載されていると認めることができる。
「3個の回転リールを横方向に並列し、各回転リールをそれぞれ回転する3個のリールモータを備えたスロットマシンのリールユニットであって、
各回転リールは回転ドラムとその外周に貼着される帯状のリールテープから構成され、リールテープの表面は、複数のシンボルマークが所定間隔で表示されており、
少なくとも1個の回転リールには、その複数のシンボルマークのうち少なくとも1個のシンボルマークの位置に関して、黒等に着色してマスクした背景中に半透明部分を配し、回転ドラムの内部には、リールテープの前記半透明部分を照明する発光源としてのランプを配置したリールユニット。」(以下「甲2発明」という。)

4.本件発明1と甲2発明の一致点及び相違点の認定
甲2発明の「回転リール」、「シンボルマーク」及び「帯状のリールテープ」は、本件発明1の「円筒状をしたリールドラム」、「図柄」及び「リール帯」にそれぞれ相当し、「表示されて」いることと「描かれた」ことに相違はない。また、甲2発明では「3個の回転リールを横方向に並列」しているから、回転リールは上下方向に回転可能である(そのことは、第3図からも明らかである。)。
本件発明1の「図柄を背後から照らす光源」について検討する。訂正明細書には、「本実施形態」と称して、【図1】(b)に図示されるリール帯31が示されている(【図1】(a)に図示されるリール帯31が、本件発明1,2の実施例でないことは、訂正明細書に「参考例」又は「参考実施形態」と記載されていることから明らかであるばかりか、口頭審理において当事者双方が認めている。)。リール帯31については、「セブン32およびウルフ33の2つの各特定シンボルの図柄の一部分に、それぞれ円形の半透明部分32aおよび33aが形成されている。・・・各シンボルは上記参考実施形態と同様にリール帯31を形成する透明フィルム材の裏面に光透過性有色インキが印刷されて描かれているが、各半透明部分32aおよび33aにはこの有色インキが印刷されていない。その後の光透過性白色インキによる背景印刷は全面に対して行われ、最後の遮光性銀色インキによるマスク処理は各半透明部分32aおよび33aを除く領域に対して行われている。」(段落【0024】?【0025】)との説明があり、これによれば半透明部分以外の部分は遮光性銀色インキによるマスク処理が施されるのだから、背後に存する光源は図柄を照らすことができない(半透明部分を除く。)。これ以外に、本件発明1の実施例はないから、「図柄を背後から照らす光源」を文言どおり解釈すれば、本件発明1の実施例が存在しないことになり、明らかに特許法36条6項1号に規定する要件(サポート要件)を満たさないことになる。訂正明細書の記載がサポート要件を満たすとの前提のもとでは、「図柄を背後から照らす光源」については、「図柄相当部分のリール帯を背後から照らす光源」又は「リール帯を背後から照らす光源」の意味に解さざるを得ない。その意味においては、甲2発明の「発光源としてのランプ」も「図柄を背後から照らす」といえ、スロットマシンは「遊技機」の一つであるから、本件発明1の前提部分である「上下方向に回転可能な円筒状をしたリールドラムと、このリールドラムの外周に設けられる,種々の図柄が描かれたリール帯と、これら図柄を背後から照らす光源とを備えて構成される遊技機の回転リールユニット」は、本件発明1と甲2発明の一致点である。以上のことは、口頭審理において、被請求人も認めている。
甲2発明の「少なくとも1個のシンボルマーク」及び「半透明部分」は、本件発明1の「特定図柄」及び「半透明に形成され」た「一部分」にそれぞれ相当し、それらが特定図柄の位置に関係して配されている点で、本件発明1と甲2発明は一致する。
したがって、本件発明1と甲2発明とは、
「上下方向に円筒状をしたリールドラムと、このリールドラムの外周に設けられる,種々の図柄が描かれたリール帯と、これら図柄を背後から照らす光源とを備えて構成される遊技機の回転リールユニットにおいて、
前記リール帯は、特定図柄のの位置に関係して、半透明に形成された一部分を配した遊技機の回転リ一ルユニット。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉半透明に形成された一部分と特定図柄の位置関係について、本件発明1では、「特定図柄それ自体の一部分」としているのに対し、甲2発明にはその特定がない点。
〈相違点2〉半透明に形成された一部分と特定図柄種類の関係につき、本件発明1では「異なる種類の複数の特定図柄」に関係して「リールドラムの回転方向に直交する方向において異なる位置に配され、当該異なる位置がリール帯の幅方向の右方及び左方である」のに対し、甲2発明ではそもそも「異なる種類の複数の特定図柄」に関係しているとはいえない点。

5.相違点の判断及び本件発明1の進歩性の判断
(1)相違点1について
甲2発明では、黒等に着色してマスクした背景中に半透明部分を配している。背景を黒等に着色することの技術的意義が甲2に明確に記載されているわけではないが、背景が白地であったのでは、リール回転中に半透明部分を認識することが困難、すなわち、半透明部分からの光の視認性が低下することは明らかであり、またそのことが明らかであるからこそ、甲2に記載されていないと解すべきである。
甲6には、「第5図(2)は、・・・ドラム1aの周面中央部に縦線状のマーク16を一連に付することによって、・・・タイミング付与手段(審決注;本件発明1及び甲2発明の「半透明に形成された一部分」もタイミング付与手段の1つであると認める。)を形成した」(7頁13?17行)との記載があり、第5図(2)からは縦線状のマーク16が、3つの絵柄(本件発明1の「図柄」に相当)部分と重複していることが読み取れる。
甲4には、「絵柄を透した光透過部を形成すると共に、リールの内部に表示窓に対応しかつ前記光透過部に対向した発光面を有する光源を配設した」(【請求項1】)との記載がある。ここでいう光透過部は、特定の図柄を狙い易くするため、すなわちタイミング付与手段として設けられたものではないが、絵柄(本件発明1の「図柄」に相当)の一部分を光透過部とする点では本件発明1と一致する構成が記載されているといえ、甲4の記載からみても、図柄の一部分を半透明に形成することの阻害要因がないことは明らかである。
他方、図柄(甲2発明のシンボルマーク)は、通常白地に対して着色(着色には黒色も含む。)されて形成されるものであるから、図柄には着色部分があると考えられる。そして、甲6の上記記載・図示からは、タイミング付与手段と図柄が重複することを容認することが読み取ることができ、さらに甲4には図柄の一部分を光透過性にする構成が記載されており、図柄の着色部分自体の一部を半透明とすれば、半透明部分の視認性が向上することは明らかである。
そうである以上、甲2発明を出発点として、白地に対して着色処理によりシンボルマークを形成するとの通常の処理を維持し、半透明部分の視認性を確保するために着色部である図柄それ自体の一部分を半透明部分とすること、すなわち相違点1に係る本件発明1の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(2)相違点2について
甲第9号証には、
「コンドルの目押しは羽根を見ながら押せ
クランキーコンドルは目押しをする機会が多い。ボーナス絵柄をそろえる時はもちろんのこと、ビッグ中の小役ゲームにも目押しは必要だ。
その中にあって、一番目押しする回数が多いのはコンドルである。レギュラーの時には、必ずこの絵柄の目押しをするからである。
コンドルの目押しのポイントは羽根の部分を見ながら狙うとよい。コンドルは黒い絵柄だし、右側にはみ出た羽根の形は他のものにはない。目立つはずだ。
ちなみに、赤7は切れ目押し。青7は直視だと見やすい。」(7頁左下欄)との記載があり、同記載がスロットマシン遊技についての記載であることは明らかである。
上記記載によれば、遊技者が目押し対象とする絵柄(本件発明1の「図柄」に相当)が複数種類あることは明らかである。
また、甲9によらずとも、甲2記載キの「ビッグボーナス」相当図柄が複数種類存するスロットマシンは周知であり、その場合には当然複数の図柄が目押し対象となる。
そうであれば、甲2発明を出発点として、半透明部分の配置対象となるシンボルマーク(図柄)を複数種類とすることは当業者にとって想到容易である。
もっとも、そのようにした場合でも、複数種類の図柄を区別せず、同一性状の半透明部分を配し、どの図柄が目押し対象となるかを遊技者の視認力又は偶然に任せることも一案であるが、遊技者の便宜を図り、複数種類の図柄の半透明部分を区別可能とすることも一案であり、どちらを採用するかは設計事項である。そして、後者を採用する場合、さまざまな区別手法が想定できる。区別手法として、あるものを類似の他のものと区別又は識別するために、位置の相違を用いることは、例えば、特開平7-141472号公報に「連続する文字列情報があるかという情報に基ずいてカーソル、マ-クの形状を変化させた一例である。このようにすれば、前もって使用者が分かるので使い勝手は向上する。また、形を変化させる方法だけでなく、色、表示位置により区別してもよく」(段落【0033】)と、特開平5-81290号公報に「A領域およびB領域については、点灯位置により区別がつく」(段落【0023】)と、特開昭64-26925号公報に「障害表示手段7と画面表示手段8は、ディスプレイ端末装置上での表示領域として予め設定した位置により区別しておく(2頁左下欄6?9行)と、特開平8-178198号公報に「カメラ等のセンサの監視視野内に複数の異常発生箇所が生じる可能性がある場合には、例えばカメラの視野内の位置により識別したり」(段落【0006】)と、特開平4-43358号公報に「各チップ毎の異なる位置に同形のパターン5を形成し、その形成位置により識別する方法等が用いられている。」(2頁左上欄14?17行)と、特開昭62-68034号公報に「モータのコイルの抵抗値のちがいをリード線の取り出し口の位置により識別することができ」(2頁左下欄1?3行)と、及び特公平7-56726号公報に「第3図に示すディスクと異なる点は判別マーク14にある。・・・ディスクの種類はこのマークの個数或いは位置により識別できるようになっている。」(4欄6?11行)とそれぞれ記載されているように周知である。
そうであれば、甲2発明を出発点として、複数種類の図柄を区別するために、複数種類の図柄における半透明部分の位置を互いに異ならせることは図柄区別に当たっての設計事項というべきである。さらに、高速回転中に異なる半透明部分を位置において区別しようとすれば、「リールドラムの回転方向に直交する方向(審決注;左右方向に同じと認める。)において異なる位置に配」することは当然採用すべき事項にすぎず(リールドラムの回転方向の位置を異ならせても、高速回転であるがゆえに区別困難となる。)、異なる位置が離れているほど区別しやすいことは自明であるから、「当該異なる位置がリール帯の幅方向(審決注;左右方向に同じと認める。)の右方及び左方」とすることも設計事項というべきである。
そればかりか、甲9の「コンドルの目押しのポイントは羽根の部分を見ながら狙うとよい。コンドルは黒い絵柄だし、右側にはみ出た羽根の形は他のものにはない。」との記載からは、特定図柄(甲9記載の例では「コンドル」)を他の図柄と区別するために、左右方向における同特定図柄特有の位置を利用することが読み取れるから、甲2発明を出発点として複数種類の図柄を区別するに当たって、複数種類の図柄それぞれにおいて、左右方向における各図柄特有の位置を持たせる(当然、「リール帯の幅方向の右方及び左方」とすることが有利である。)ことは当業者が難なく採用できる構成というべきである。そして、甲2発明を出発点とする場合には、各図柄特有の位置となるべきものが、各図柄における半透明部分であることは当然であるから、この点からみても相違点2に係る本件発明1の構成に至ることに困難性はない。
したがって、相違点2に係る本件発明1の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(3)本件発明1の進歩性の判断
相違点1,2に係る本件発明1の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本件発明1は甲2発明、甲4,甲6及び甲9記載の技術並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきであるから、請求項1の特許は特許法29条2項の規定に反してされた特許である。

6.本件発明2の進歩性の判断
本件発明2は、本件発明1の「遊技機」を「スロットマシンまたは弾球遊技機である」と限定したものであるが、甲2発明は「スロットマシンのリールユニット」であるから、上記限定は甲2発明との新たな相違点を構成しない。
したがって、本件発明2も甲2発明、甲4,甲6及び甲9記載の技術並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきであるから、請求項2の特許は特許法29条2項の規定に反してされた特許である。

第4 むすび
以上述べたとおり、請求項1及び請求項2の特許は特許法29条2項の規定に反してされた特許であるから、同法123条1項2号に該当し、無効とされるべきである。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定において準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
遊技機の回転リールユニット
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に回転可能な円筒状をしたリールドラムと、このリールドラムの外周に設けられる、種々の図柄が描かれたリール帯と、これら図柄を背後から照らす光源とを備えて構成される遊技機の回転リールユニットにおいて、前記リール帯は、異なる種類の複数の特定図柄それ自体の一部分が、それぞれ半透明に形成され、かつ、前記リールドラムの回転方向に直交する方向において異なる位置に配され、当該異なる位置がリール帯の幅方向の右方及び左方であることを特徴とする遊技機の回転リールユニット。
【請求項2】
前記遊技機はスロットマシンまたは弾球遊技機であることを特徴とする請求項1記載の遊技機の回転リールユニット。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はスロットマシンや弾球遊技機といった遊技機に用いられる回転リールユニットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の遊技機の回転リールユニットとしては、例えば、図4に示すスロットマシン1に用いられている図5(a)に示す回転リールユニット11がある。
【0003】回転リールユニット11はリールドラム12の外周にリール帯13が張り付けられて構成されている。このリール帯13の周囲には図示しない種々の図柄(シンボル)が描かれている。これらシンボルは、各リールドラム12の内部に設けられた図5(b)に示すバックランプ14によって背後から映し出され、スロットマシン1の各窓2から観察される。バックランプ14はリールドラム12の内部に固定される基板18に3個取り付けられている。投入口3にメダルが投入されてスタートレバー4が操作されると、ブラケット15に取り付けられたモータ16が駆動され、各リールドラム12が回転する。従って、各窓2には高速に移動するシンボルが観察される。
【0004】遊技者によってストップスイッチ5が押圧操作されると各リールドラム12は停止制御される。この停止制御は、ホトセンサによって遮蔽板17の通過が検出されることにより行われ、また、遊技者による各ストップスイッチ5の操作タイミングに応じて行われる。従って、遊技者は高速に移動する特定のシンボルの通過を目印にストップスイッチ5を操作し、各リールドラム12の停止時に所定のシンボル組合せがペイライン6上に停止表示されるのを狙う。ペイライン6上に所定のシンボル組合せが停止表示されると入賞が生じ、払出口7から所定枚数のメダルが受け皿8に払い出される。
【0005】このようなストップスイッチ5の操作タイミングは熟練者でないと判別がつかず、初心者は高速で回転する各シンボルの相違を識別することが困難である。従って、従来、ストップスイッチ5の操作タイミングを初心者に教える様々な手段が提案されている。
【0006】例えば、特開平7?100241号公報には、リール帯の特定シンボルに近接する位置に孔を開け、この孔から漏れる内部ランプの光によってストップスイッチの操作タイミングを遊技者に報知する手段が開示されている。
【0007】また、特開平6?327808号公報には、リール帯の特定シンボルが描かれた帯領域に光透過性を持たせ、特定シンボルが窓に出現すると内部ランプの光によってその特定シンボルを目立たせる手段が開示されている。遊技者は目立たせられたこの特定シンボルの出現によってストップスイッチの操作タイミングを掴むことが出来る。
【0008】また、特開平6?269535号公報には、リール帯の特定シンボルを蛍光物質で描き、この特定シンボルに光を照射してその特定シンボルを目立たせる手段が開示されている。このような特定シンボルの出現によってもストップスイッチの操作タイミングを掴むことが出来る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来のいずれの遊技機の回転リールユニットにおいても、内部光や蛍光物質によって識別させることの出来る特定シンボルは1種類である。従って、上記従来のいずれの遊技機の回転リールユニットによっても、リール帯の円周方向に描かれた複数種類の特定シンボルの通過を遊技者に識別させることは出来なかった。
【0010】遊技機の入賞態様には様々な態様があり、特定シンボルを含むシンボル組合せによって生じる入賞態様と、異なる種類の特定シンボルを含むシンボル組合せによって生じる入賞態様とでは、遊技内容や、それに伴う価値付与も異なる。遊技者の好む入賞態様も人様々であり、停止表示させたい特定シンボルの種類も遊技者によって異なる。従来の遊技機の回転リールユニットでは、表示窓を通過するこのような異種の特定シンボルを初心者に識別させることは上記のように出来なかった。このため、遊技機の持つ興趣を初心者は従来十分に味わうことが出来なかった。
【0011】
【0012】
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、上記リール帯は、異なる種類の複数の特定図柄それ自体の一部分が、それぞれ半透明に形成され、かつ、リールドラムの回転方向に直交する方向において異なる位置に配されていることを特徴とするものである。
【0014】本構成においては、リールドラムが回転すると、異なる種類の特定図柄は、リールドラムの回転方向に直交する方向において異なる位置で発光する。従って、遊技者は発光部の通過位置の相違から特定図柄の種類を識別することが出来る。
【0015】
【発明の実施の形態】次に、本発明による遊技機の回転リールユニットを前述したスロットマシンに適用した一実施形態について説明する。
【0016】図3は本発明の参考例による回転リールユニット41の斜視図であり、図1(a)はこの回転リールユニット41に用いられているリール帯21の平面図である。本参考実施形態による回転リールユニット41は、このリール帯21以外の構成は図5に示す回転リールユニット11の構成と同じであり、図3において図5と同一または相当する部分には同一符号を付している。
【0017】リール帯21は円筒状をしたリールドラム12の外周に沿って曲げられ、その外周面に貼られている。リール帯21の表面には種々のシンボルが描かれており、本参考実施形態ではそのうちのセブン22およびウルフ23を特定シンボルとしている。すなわち、本参考実施形態ではこれらセブン22およびウルフ23の異種シンボルの識別を容易化する。
【0018】リール帯21は透明フィルム材からなり、各シンボルはこの透明フィルム材の裏面に光透過性有色インキで印刷されて描かれている。この際、リール帯21上の各セブン22の図柄部分はそれぞれ光透過性赤色インキで着色され、各ウルフ23の図柄部分はそれぞれ光透過性青色インキで着色されている。リール帯21はこの光透過性有色インキによる各シンボルの印刷後、光透過性白色インキで背景が印刷される。最後に、セブン22およびウルフ23の図柄領域を除き、遮光性銀色インキが印刷されてマスク処理が施されている。
【0019】このような過程を経て、図1(a)に示すリール帯21が得られている。すなわちリール帯21は、セブン22およびウルフ23の異なる2つの特定シンボルの図柄部分だけが、それぞれ半透明に形成され、かつ、それぞれ異なる色に着色されている。なお、セブン22の図柄領域に付された格子は赤色を表し、ウルフ23の図柄領域に付された斜線は青色を表している。また、光透過性白色インキによる背景印刷をセブン22,ウルフ23の特定図柄領域を除く領域に対して行い、セブン22,ウルフ23の特定図柄領域を半透明ではなく、透明に形成しても良い。
【0020】このような構成において、モータ16が駆動されてリールドラム12が回転すると、リールドラム12の外周に貼られたリール帯21も回転する。リールドラム12の内部に設けられた基板18に取り付けられたバックランプ14は、常時点灯している。このため、リール帯21が回転してセブン22のシンボルがバックランプ14の照射部前部を通過すると、セブン22はバックランプ14の出射光を背後に浴びて赤色に発光する。また、ウルフ23のシンボルがバックランプ14の照射部前部を通過すると、ウルフ23はバックランプ14の出射光を背後に浴びて青色に発光する。
【0021】これらセブン22の赤色発光やウルフ23の青色発光はスロットマシン1の窓2から観察される。従って、窓2から観察される赤色の発光により、セブン22のシンボルが窓2を通過するタイミングを判別することが出来、また、窓2から観察される青色の発光により、ウルフ23のシンボルが窓2を通過するタイミングを判別することが出来る。
【0022】よって、遊技者はこの発光色の相違から特定シンボルの種類を識別することが出来、所望の特定シンボルがペイライン6上に停止表示されるのを狙ってストップスイッチ5を操作することが可能となる。この結果、初心者であっても、ペイライン6上にセブン22のシンボルを並べたり、ウルフ23のシンボルを並べることが容易に行える。
【0023】図1(b)は本実施形態による回転リールユニットに用いられるリール帯31の平面図である。本実施形態によるその他の構成は上記参考実施形態の構成と同じである。
【0024】本実施形態のリール帯31では、セブン32およびウルフ33の2つの各特定シンボルの図柄の一部分に、それぞれ円形の半透明部分32aおよび33aが形成されている。つまり、セブン32のシンボルでは、図2(a)の拡大図に示すように、ウルフの足跡部分に円形半透明部分32aが形成されている。また、ウルフ33のシンボルでは、図2(b)の拡大図に示すように、目の部分に円形半透明部分33aが形成されている。
【0025】各シンボルは上記参考実施形態と同様にリール帯31を形成する透明フィルム材の裏面に光透過性有色インキが印刷されて描かれているが、各半透明部分32aおよび33aにはこの有色インキが印刷されていない。その後の光透過性白色インキによる背景印刷は全面に対して行われ、最後の遮光性銀色インキによるマスク処理は各半透明部分32aおよび33aを除く領域に対して行われている。
【0026】
【0027】セブン32のシンボルに形成された半透明部分32aと、ウルフ33のシンボルに形成された半透明部分33aとは、リールドラム12の回転方向に直交する方向、つまりリール帯31の幅方向において異なる位置に配されている。すなわち、セブン32のシンボルではこの幅方向の右方に半透明部分32aが位置しており、ウルフ33のシンボルではこの幅方向の左方に半透明部分33aが位置している。
【0028】このような本実施形態において、リールドラム12が回転するとリールドラム12の外周に貼られたリール帯31が回転し、各半透明部分32a,33aも回転する。本実施形態においても、リールドラム12の内部に設けられたバックランプ14は常時点灯しているため、リール帯31が回転して各半透明部分32a,33aがバックランプ14の照射部前部を通過すると、各半透明部分32a,33aからバックランプ14の出射光が漏れ、各半透明部分32a,33aは発光する。
【0029】これら各半透明部分32a,33aの発光はスロットマシン1の窓2から観察される。この際、セブン32のシンボルに形成された半透明部分32aはリール帯31の幅方向の右側に観察され、ウルフ33のシンボルに形成された半透明部分33aはリール帯31の幅方向の左側に観察される。
【0030】すなわち、窓2の右方に観察される半透明部分32aの発光により、セブン32のシンボルが窓2を通過するタイミングを判別することが出来、また、窓2の左方に観察される半透明部分33aの発光により、ウルフ33のシンボルが窓2を通過するタイミングを判別することが出来る。
【0031】よって、遊技者はこの発光位置の相違から特定シンボルの種類を識別することが出来、所望の特定シンボルがペイライン6上に停止表示されるのを狙ってストップスイッチ5を操作することが可能となる。この結果、本実施形態による回転リールユニットにおいても、初心者であっても、ペイライン6上にセブン32のシンボルを並べたり、ウルフ33のシンボルを並べることが容易に行える。
【0032】なお、上記実施形態では本発明をスロットマシンの回転リールユニットに適用した場合について説明したが、パチンコ機やピンボールゲーム機,スマートボールゲーム機といった弾球遊技機の回転リールユニットに適用することも可能であり、上記実施形態と同様な効果が奏される。
【0033】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、リールドラムが回転すると、異なる種類の特定図柄は、リールドラムの回転方向に直交する方向において異なる位置で発光する。従って、遊技者は、発光部の通過位置の相違から特定図柄の種類を識別することが出来る。
【0034】このため、初心者であっても容易に高速に移動する特定図柄の識別を行うことが可能となり、初心者であっても遊技機の持つ興趣を十分堪能することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の参考例および一実施形態による遊技機の回転リールユニットに用いられるリール帯の平面図である。
【図2】図1(b)に示す一実施形態によるリール帯に描かれている特定シンボルを拡大して示す平面図である。
【図3】図1(a)に示す参考例によるリール帯を用いて構成される回転リールユニットの斜視図である。
【図4】一般的なスロットマシンの斜視図である。
【図5】従来の遊技機の回転リールユニットを示す斜視図である。
【符号の説明】
21,31…リール帯
22,32…セブン(特定図柄)
23,33…ウルフ(特定図柄)
32a,33a…半透明部分
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-02-20 
結審通知日 2007-11-15 
審決日 2006-03-07 
出願番号 特願平9-116101
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 池谷 香次郎  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 太田 恒明
伊藤 陽
登録日 2004-03-26 
登録番号 特許第3537630号(P3537630)
発明の名称 遊技機の回転リールユニット  
代理人 佐藤 玲太郎  
代理人 中込 秀樹  
代理人 今井 博紀  
代理人 佐藤 武史  
代理人 中山 俊彦  
代理人 長沢 美智子  
代理人 今井 博紀  
代理人 松永 暁太  
代理人 長沢 美智子  
代理人 田中 康久  
代理人 清水 俊介  
代理人 中山 俊彦  
代理人 小野寺 隆  
代理人 進藤 利哉  
代理人 正林 真之  
代理人 佐藤 玲太郎  
代理人 岩渕 正紀  
代理人 小野寺 隆  
代理人 小椋 崇吉  
代理人 小椋 崇吉  
代理人 田中 康久  
代理人 八木沢 史彦  
代理人 井口 嘉和  
代理人 松永 暁太  
代理人 進藤 利哉  
代理人 佐藤 武史  
代理人 松尾 憲一郎  
代理人 松尾 憲一郎  
代理人 中込 秀樹  
代理人 長沢 幸男  
代理人 長沢 幸男  
代理人 清水 俊介  
代理人 正林 真之  
代理人 岩渕 正紀  
代理人 八木沢 史彦  
代理人 岩渕 正樹  
代理人 岩渕 正樹  
代理人 黒田 博道  
代理人 井口 嘉和  

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