• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04F
管理番号 1192731
審判番号 不服2007-9494  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-05 
確定日 2009-02-12 
事件の表示 特願2000-236312「リフォーム壁面に対するサッシ窓枠の補修部材」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月16日出願公開、特開2001-317193〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成12年8月4日の出願(国内優先権 平成12年3月1日)であって、平成19年2月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年5月7日付けで手続補正がなされ、平成20年9月5日に前置報告についての審尋がなされ、同年11月10日に回答書が提出されたものである。

第2.平成19年5月7日付けの手続補正について
[補正の却下の決定の結論]
平成19年5月7日付けの手続補正を却下する。
[理由]
[1]補正の概要
平成19年5月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を
「【請求項1】 既設壁面上に設けられた下地材に、既設サッシ窓枠の四周に沿って配置固定される帯板状基部と、該帯板状基部のサッシ窓枠側端より前記既設サッシ窓枠方向へ伸びる接合用延出片と、前記帯板状基部のサッシ窓枠側端からリフォーム壁面表面より突出して延出される縁部材とを備え、サッシ窓枠の上枠辺および下枠辺に対応する補修部材に、サッシ窓枠の横枠辺に対応する補修部材をビス止めするための筒状部を形成したことを特徴とするリフォーム壁面に対するサッシ窓枠の補修部材。
【請求項2】 既設サッシ窓枠の上枠辺に対応する補修部材の縁部材が帯板状基板上のリフォーム壁板下端位置からリフォーム用壁板表面側へと下降斜面を形成して突出するように延出され、この縁部材の延出端から下方へ延出される前垂れ部よりなる請求項1に記載のリフォーム壁面に対するサッシ窓枠の補修部材。
【請求項3】 既設サッシ窓枠の下枠辺に対応する補修部材の接合用延出片とこれに連なる縁部材とが前記既設サッシ窓枠の下枠辺より下降傾斜面を形成してリフォーム用壁板表面側へと延出され、前記縁部材の延出端から下方へ延出される前垂れ部よりなる請求項1又は2に記載のリフォーム壁面に対するサッシ窓枠の補修部材。
【請求項4】 既設サッシ窓枠方向へ伸びる接合用延出片と、既設サッシ窓枠との接触面間に防水シール材が介挿されてなる請求項1、2または3に記載のリフォーム壁面に対するサッシ窓枠の補修部材。
【請求項5】 リフォーム壁面の端面と、縁部材との間にバックアップ材で保持されたシーリング材が充填介挿されてなる請求項1、2、3または4に記載のリフォーム壁面に対するサッシ窓枠の補修部材。
【請求項6】 既設サッシ窓枠と縁部材との接合部外表面間にシーリング材が盛り付けられてなる請求項1、2、3、4または5に記載のリフォーム壁面に対するサッシ窓枠の補修部材。」から、
「【請求項1】
既設壁面上に設けられた下地材に、既設サッシ窓枠の四周に沿って配置固定される帯板状基部と、該帯板状基部のサッシ窓枠側端より前記既設サッシ窓枠方向へ伸びて既設サッシ窓枠の外縁に当接する接合用延出片と、前記帯板状基部のサッシ窓枠側端からリフォーム壁面表面より突出して延出される縁部材とを備え、サッシ窓枠の上枠辺および下枠辺に対応する補修部材に、サッシ窓枠の横枠辺に対応する補修部材をビス止めするための筒状部を形成したことを特徴とするリフォーム壁面に対するサッシ窓枠の補修部材。
【請求項2】
サッシ窓枠の上枠辺および下枠辺に対応する補修部材と、サッシ窓枠の横枠辺に対応する補修部材とをビス止めして一体に組み合わせ、接合用延出片で既設サッシ窓枠の外縁を囲む一つの枠となすことを特徴とする請求項1に記載のリフォーム壁面に対するサッシ窓枠の補修部材。
【請求項3】
下地材として既設壁面上にブロック状ないしは細板状スペーサを取付け、前記スペーサに帯状基板を固定すると共に新規壁板を前記帯状基板上に固定することを特徴とする請求項2に記載のリフォーム壁面に対するサッシ窓枠の補修部材。
【請求項4】
既設壁板上に帯状基板と同方向に下地材として胴縁を配置し、前記胴縁にねじを用いて前記帯状基板を固定すると共に、前記帯状基板に沿ってもう一つの胴縁を配置し、この胴縁に新規壁板を取り付けることを特徴とする請求項2に記載のリフォーム壁面に対するサッシ窓枠の補修部材。
【請求項5】
既設サッシ窓枠の上枠辺に対応する補修部材の縁部材が帯板状基板上のリフォーム壁板下端位置からリフォーム用壁板表面側へと下降斜面を形成して突出するように延出され、
この縁部材の延出端から下方へ延出される前垂れ部よりなることを特徴とする請求項1に記載のリフォーム壁面に対するサッシ窓枠の補修部材。
【請求項6】
既設サッシ窓枠の下枠辺に対応する補修部材の接合用延出片とこれに連なる縁部材とが前記既設サッシ窓枠の下枠辺より下降傾斜面を形成してリフォーム用壁板表面側へと延出され、前記縁部材の延出端から下方へ延出される前垂れ部よりなることを特徴とする請求項1に記載のリフォーム壁面に対するサッシ窓枠の補修部材。」と補正しようとすることを含むものである。
(以下、本件補正前の請求項1?6を、それぞれ「旧請求項1?6」と、
本件補正後の請求項1?6を、それぞれ「新請求項1?6」という。)

[2]補正の適否-補正の目的(第17条の2第4項)
以下、特許法第17条の2第4項各号を、それぞれ「第1号」等という。

1.第2号
本件補正が、第2号に規定された「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」に該当するか否かを検討する。
第2号にいう「特許請求の範囲の減縮」とは、補正前の請求項と補正後の請求項との対応関係が明白であって、かつ、補正後の請求項が補正前の請求項を限定した関係になっていることが明確であることが要請されるものであり、補正前の請求項と補正後の請求項とは、一対一又はこれに準ずるような対応関係に立つものでなければならない。そうであってみれば、補正後の各請求項の記載により特定される各発明が、全体として、補正前の請求項の記載により特定される発明よりも限定されたものとなっているとしても、上述したような一対一又はこれに準ずるような対応関係がない限り、同号にいう「特許請求の範囲の減縮」には該当しない。

本件補正は、旧請求項1を補正して、新請求項1,2,3,4とし、旧請求項2,3を繰り下げてそれぞれ、新請求項5,6とし、旧請求項4,5,6を削除するものであり、新たな請求項を3つ増やすものであるところ、旧請求項1と新請求項1,2,3,4とは一対一に対応するものとはいえず、旧請求項1を補正して、新請求項1,2,3,4とする補正は、特許請求の範囲の減縮とはいえない。
よって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮(第2号)を目的とするものとはいえない。

2.第1号,第3号,第4号
本件補正における、旧請求項1を補正して、新請求項1,2,3,4とする補正は、請求項の削除(第1号)、誤記の訂正(第3号)、明りょうでない記載の釈明(第4号)のいずれに該当するものとはいえないことは明らかである。

3.むすび
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成19年5月7日付けの手続補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1?6に係る発明は、平成18年10月23日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「既設壁面上に設けられた下地材に、既設サッシ窓枠の四周に沿って配置固定される帯板状基部と、該帯板状基部のサッシ窓枠側端より前記既設サッシ窓枠方向へ伸びる接合用延出片と、前記帯板状基部のサッシ窓枠側端からリフォーム壁面表面より突出して延出される縁部材とを備え、サッシ窓枠の上枠辺および下枠辺に対応する補修部材に、サッシ窓枠の横枠辺に対応する補修部材をビス止めするための筒状部を形成したことを特徴とするリフォーム壁面に対するサッシ窓枠の補修部材。」

2.刊行物とそれに記載された事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平6-299708号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】既存建築物の外壁を乾式の外装材で改修する際、開口部廻りの納めに用いる部材で、既存壁上の新規胴縁上に固定するための固定部、固定部を前方に屈曲延長した新規外装材端部を覆うための見切り部、見切り部背面から延長して、開口抱き廻りを覆うための天板を支える天板受け部からなる額縁部材において、天板受け部の位置が見切り部頂点から天板の板厚分低いところにあることを特徴とする建築用部材。
【請求項2】請求項1に記載した建築用部材と接合する天板で、開口抱き廻りを覆う方形の平面板の一側端を下方に折曲げて開口サッシと境界部をシーリングしろとしたことを特徴とする開口廻り建築用部材。
【請求項3】請求項1に記載した建築用部材と、請求項2に記載した建築用部材との接合によってなることを特徴とする建築物改修工事における開口抱き廻り構造。」
(1b)「【0002】
【従来の技術】従来、既存建築物の外壁を改修する際、特に新規外装材として乾式の建築用パネルで行う際に開口部廻りを覆う部材に関し、外壁面から建具までのいわゆる抱き廻りの納めは、以下のようであった。
1(原文は丸付き数字)新規外装材の端部を覆う見切縁部材と抱き廻り部を覆う平坦な部材とを兼ねた一体物の部材をオーダーメイドで製作したもの。
2(原文は丸付き数字)新規胴縁上への取付面と、抱き廻りを覆う天板から断面が概ねL字状の部材と、新規外装材の端部を覆う見切縁部材とを組み合わせたもの。」
(1c)「【0003】
【発明が解決しようとする問題点】しかしながら、1(原文は丸付き数字)の部材は、
ア、現場の採寸作業が必要であること、
イ、現場採寸、工場製作、現場搬入、取付の各作業の工程を経ることになるので管理が必要である。
ウ、さらに特注品であるため、現場採寸が誤るとどうしても納まらず、作り直しするしかない。
エ、現場毎の特注品となることから予め製作しておくことができず、コストアップとなる。
オ、新規下地胴縁と既存壁面との距離が常に同一でない場合、下地取付後の採寸作業となり、工程の遅延原因となる。
等の欠点があった。」
(1d)「【0004】また、2(原文は丸付き数字)の部材にしても、
カ、L字状の部材と、見切縁部材との境界が目立ち美観に劣る。
キ、その境界は雨仕舞い上欠点となるので、シーリングが必要となり、コストが増大する。等の問題点を有していた。」
(1e)「【0006】
【実施例】この発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明による部材の実施例を示す断面図であり、額縁部材10は固定辺11、見切り辺12、天板受け辺13からなり、天板受け辺は、見切り辺の頂点よりも天板の板厚分低いところから延長している。このために天板14を接合しても見切り辺と天板とが同一面となり一体ものの部材と同様の美観が得られる。図1に示した部材は主に開口部の下側、及び両脇での実施形態で、上側への実施形態としては水切りを兼ねて図2に示すものも考えられる。・・・」
(1f)「【0007】本願発明による外壁改修構造を図4に示す。下地は既存建物の外壁の開口部周辺に新規胴縁3をアンカーボルト等によって取付けたものである。本願発明による部材は該下地上にある。天板はリベット等で額縁材に連結されるもので、既存の開口サッシとの隙間にシーリングを施す。なお本部材にビス止め用下穴を施すことによって、下地への取付以前に上下、両脇の部材を接合組み立てが可能となり、開口額縁ユニットとして完成させた後、下地に取り付ければさらに施工能率はアップする。」
(1g)「【0008】
【発明の効果】上記のように本願発明は、
1(原文は丸付き数字)新規外装材と建具との間部分、いわゆる抱き廻り部分の寸法が物件によって異っていても調整化粧部材を幅詰めすることによって対応できる。
2(原文は丸付き数字)抱き廻りを覆う天板と額縁材との接合が同一面となるから美観に優れたものとなる。
3(原文は丸付き数字)開口の上下、両脇の部材、さらに天板をも地上で予め組み立ててユニット化することが可能となり施工効率を大幅にアップすることができる。
等の優れた効果を発揮する。」
(1h)図4には、見切り辺12が新規外装材表面より突出して延出されることが示されている。

これらの記載によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

(刊行物1記載の発明)
「既存外壁1の表面上に設けられた新規胴縁3に、既存の開口サッシ2の上下、両脇に配置固定される固定辺11と、前記固定辺11の開口サッシ2側端より前記開口サッシ2方向へ伸びる天板受け辺13と、前記固定辺11を前方に屈曲して延長して新規外装材4端部を覆い開口サッシ2側端から新規外装材4表面より突出して延出される見切り辺12とを備える額縁部材10と、前記天板受け辺13に接合されて前記開口サッシ2方向へ伸びる天板14とからなり、ビス止め用下穴を施して上下、両脇の部材の接合組み立てが可能とされた、既存外壁1を新規外装材4で改修する際、既存の開口サッシ2等からなる開口部廻りの納めに用いる部材。」

3.対比・判断
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明における「既存外壁1の表面」,「新規胴縁3」,「新規外装材4表面」,「見切り辺12」は、それぞれ、本願発明における「既設壁面」,「下地材」,「リフォーム壁面表面」,「縁部材」に相当する。
刊行物1記載の発明における「既存の開口サッシ2」と、本願発明における「既設サッシ窓枠」とは、「既設サッシ枠」で共通し、刊行物1記載の発明における「上下、両脇」,「固定辺11」は、それぞれ、本願発明における「四周」,「帯板状基部」に相当し、該固定辺11を前方に屈曲して延長して新規外装材4端部を覆う見切り辺12が既存の開口サッシ2の上下、両脇に沿うように設けられると同様に、「固定辺11」も既存の開口サッシ2の上下、両脇に沿うように設けられているといえる。
刊行物1記載の発明における「天板14」はシーリング材を介して既設サッシ枠と接合されるものであるから、刊行物1記載の発明における「天板14」と、本願発明における「接合用延出片」とは、「接合用延出部」である点で共通する。
刊行物1記載の発明における「ビス止め用下穴」と、本願発明における「(ビス止めするための)筒状部」とは、「ビス止め部」である点で共通する。
刊行物1記載の発明における「上下、両脇の部材」は、既存の開口サッシ2の上下、両脇に沿って配置されており、上下、両脇の部材は開口サッシ2の上下、両脇の枠辺に対応しているといえるから、刊行物1記載の発明における「ビス止め用下穴を施して上下、両脇の部材の接合組み立てが可能とされた」と、本願発明における「サッシ窓枠の上枠辺および下枠辺に対応する補修部材に、サッシ窓枠の横枠辺に対応する補修部材をビス止めする」とは、「サッシ枠の上枠辺、下枠辺および横枠辺に対応する補修部材同士をビス止めする」点で共通する。
刊行物1記載の発明における「(額縁部材10と天板14とからなる、)既存外壁1を新規外装材4で改修する際、既存の開口サッシ2等からなる開口部廻りの納めに用いる部材」は、本願発明における「リフォーム壁面に対するサッシ窓枠の補修部材」に相当する。

以上の点をふまえると、本願発明と刊行物1記載の発明とは、「既設壁面上に設けられた下地材に、既設サッシ枠の四周に沿って配置固定される帯板状基部と、該帯板状基部のサッシ枠側端より前記既設サッシ枠方向に伸びるように設けられた接合用延出部と、前記帯板状基部のサッシ枠側端からリフォーム壁面表面より突出して延出される縁部材とを備え、サッシ枠の上枠辺、下枠辺および横枠辺に対応する補修部材同士をビス止めするためのビス止め部を形成した、リフォーム壁面に対するサッシ枠の補修部材。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明は、接合用延出部が、帯板状基部の側端から伸びるように形成されており、補修部材が全体として一体の部材であるのに対し、刊行物1記載の発明は、接合用延出部(天板14)が天板受け辺13に接合されており、天板受け辺13から一体に伸びるように形成されているものではなく、補修部材が額縁部材10と天板14を接合したものである点。
<相違点2>
既設サッシ枠が、本願発明は、窓枠であり、帯板状基部がサッシ窓枠の四周に沿って配置固定され、接合用延出片が帯板状基部のサッシ窓枠側端より伸び、縁部材が帯板状基部のサッシ窓枠側端から延出され、補修部材がサッシ窓枠の上枠辺、下枠辺及び横枠辺に対応するのに対し、刊行物1記載の発明は、既存の開口サッシが窓枠であるか否か不明であり、帯板状基部、接合用延出片、縁部材がサッシ窓枠に対して上記のように形成されたものか不明であり、補修部材がサッシ窓枠に対応したものか否か不明な点。
<相違点3>
補修部材のビス止め部が、本願発明では、サッシ窓枠の上枠辺および下枠辺に対応する補修部材に、サッシ窓枠の横枠辺に対応する補修部材をビス止めするための筒状部であるのに対し、刊行物1記載の発明は、ビス止め用下穴は有するものの、その形状や設けた位置は不明な点。

以下、上記相違点について検討する。
<相違点1について>
上記記載事項(1b)によれば、刊行物1には、従来技術として、(ア)新規外装材の端部を覆う見切縁部材と抱き廻り部を覆う平坦な部材とを兼ねた一体物としたもの、が記載されており、新規外装材の端部を覆う見切縁部材と抱き廻り部を覆う平坦な部材とを一体に形成することが示唆されているといえる。
また、上記記載事項(1b)?(1d)によれば、刊行物1には、上記の従来技術に加えて、(イ)新規胴縁上への取付面と、抱き廻りを覆う天板から断面が概ねL字状の部材と、新規外装材の端部を覆う見切縁部材とを組み合わせたものが記載され、(ア)については、採寸作業が必要である等の欠点が存し、(イ)については、組み合わせる部材の境界の美観に劣る等の問題点があることが指摘されている。
そして、刊行物1記載の発明は、見切縁部材(固定辺11と、天板受け辺13と、見切り辺12とを備える額縁部材10)と抱き廻り部を覆う部材(天板14)とを接合したものであるが、新規外装材の端部を覆う見切縁部材と抱き廻り部を覆う部材とを一体に形成することは、刊行物1において従来技術(ア)として示唆されているように、従来から行われているものであり、また、見切縁部材と抱き廻り部を覆う部材とを一体とする場合及び別体とする場合は、刊行物1に記載されるように、それぞれ長所短所を有するものであり、見切縁部材と抱き廻り部を覆う部材とを一体とするか別体とするかは、いずれの条件を優先させるかにより適宜選択しうるものといえ、刊行物1記載の発明において、接合用延出部(天板14)を帯板状基部の側端に一体に形成して、帯板状基部を含む額縁部材10と接合用延出部(天板14)とを一体に形成することは当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。
<相違点2について>
建築物の外壁に設けられるサッシ枠として、窓枠、ドア枠等のサッシ枠は一般的なものであり、刊行物1記載の発明において、リフォーム壁面の既設サッシ枠を窓枠とすることは当業者が容易になし得るものであり、「帯板状基部がサッシ窓枠の四周に沿って配置固定され、接合用延出片が帯板状基部のサッシ窓枠側端より伸び、縁部材が帯板状基部のサッシ窓枠側端から延出され、補修部材がサッシ窓枠の上枠辺、下枠辺及び横枠辺に対応する」ようにすることは、サッシ枠を窓枠とすることから容易に導き出される事項である。
<相違点3について>
刊行物1記載の発明は、上下、両脇の部材の接合組み立てを可能とするビス止め部(ビス止め用下穴)が形成されているものであり、また、枠状部材をビス止めするために、枠状部材の上下の枠部材に、左右の枠部材をビス止めするための筒状部を形成することは周知技術にすぎず(例えば、査定時に周知例として挙げられた実願昭53-141329号(実開昭55-56871号)のマイクロフィルム(明細書2頁15?18行、第1図)、実公昭63-13355号公報(第3図,第5図)等を参照されたい。)、刊行物1記載の発明において、ビス止め部の具体的な構成として上記周知技術を用いて、サッシ窓枠の上枠片及び下枠片に対応する補修部材に、サッシ窓枠の横枠片に対応する補修部材をビス止めするための筒状部を形成することは当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。

そして、本願発明の奏する、既設のサッシ窓枠とリフォーム用壁板との間の水密性が得られる、縁部材が新規壁板表面より突出するので外観が良くなる、簡単な工事で防水施工とサッシ窓枠の外観保持の施工が同時に可能となるという効果は、刊行物1記載の発明から容易に予測できる効果であり、また、補修部材の構造が簡単になるという効果及び本願発明全体の奏する作用効果も、刊行物1記載の発明及び上記周知技術から容易に予測できるものであり、格別なものとはいえない。

以上のとおり、本願発明は刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

なお、請求人は、平成20年11月10日付け回答書により補正の用意があることを示しているが、補正案として提示されている「接合用延長片を外縁に当接」させることにより補修部材を正確に配置することに加えて、「接合用延出片と既設サッシ窓枠との間に防水シールを介挿させ」たものとは、どのようなものか不明りょうである(防水シールを介挿すると、接合用延出片は外縁に当接しないものとなる。また、防水シールを介挿すると共に接合用延出片は外縁に当接させた態様は明細書等に記載されていない。)。また、上記補正案中に「(請求項1の記載事項)」として記載された「既設サッシ窓枠の外縁に当接する接合用延長片」という事項は、特開平8-120892号公報の記載からみて、格別のものとはいえない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-04 
結審通知日 2008-12-09 
審決日 2008-12-25 
出願番号 特願2000-236312(P2000-236312)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大谷 純  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 石川 好文
五十幡 直子
発明の名称 リフォーム壁面に対するサッシ窓枠の補修部材  
代理人 森本 義弘  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ