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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1192886
審判番号 不服2008-12979  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-22 
確定日 2009-02-20 
事件の表示 特願2001-513139「電気光学装置及びその製造方法並びに電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月 1日国際公開、WO01/08128〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は、平成12年7月21日(特許法41条に基づく優先権主張:平成11年7月22日、出願番号:特願平11-207907号)を国際出願日とする特願2001-513139号の出願であって、平成18年8月29日付けで拒絶理由が通知され、同年10月3日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成20年4月17日付けで拒絶査定がされたため、これを不服として同年5月22日付けで本件審判請求がされたものである。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年10月3日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。

「対向して配置された第1及び第2の基板と、
前記第1の基板における前記第2の基板に対向する面に形成された配線と、
前記第2の基板を貫通して設けられた導電部材と、
前記第2の基板における前記第1の基板とは反対側に、前記配線とオーバーラップするように配置された導電体と、
を有し、
前記第1及び第2の基板の間で、前記導電部材と前記配線とが電気的に接続され、
前記導電体は、前記導電部材に電気的に接続されてなる電気光学装置。」


第2 当審の判断
1 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平3-276186号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の(ア)ないし(エ)の記載が図示とともにある。

(ア)「2.特許請求の範囲
1. 電極が形成された表示装置用の基板であって、該基板には該基板を貫通する空孔が設けられていて、かつ該空孔には導線の一端が接続され、前記電極と電気的に接続されていることを特徴とする表示装置用基板。」(公報1頁左下欄4?9行)

(イ)「〔発明の利用分野〕
本発明は液晶表示装置、EL等の特に大型画面の表示装置に用いる基板に関する。」(公報1頁左下欄11?13行)

(ウ)「だが、これらユニットLCDを複数個用いて大画面の表示装置を作製すると、各ユニットLCDを駆動するためのICの出力と、ユニットLCDパネルの電極とを接続するための場所が必要となる。そのために従来は第2図に示すように5mm程度の基板の重なっていない部分(表示に寄与しない部分)(1)を必要としていた。この表示に寄与しない部分は、表示の際に黒いラインが入り、大画面を不自然に分割してしまう線となっていた。
また、特に液晶表示装置にはTN型,STN型等があるが、第3図に示すように、どれもデューティ数が増加すると表示のコントラストが低下して、表示品質が低下してしまう。
また、大画面の表示装置を仮に1枚の基板上に作製しようとすると、電極の配線抵抗が増加し、表示を行うために高い電圧が必要となってしまい消費電力が増加してしまう。
〔発明の目的〕
本発明は上記問題点を解決し、大画面の表示においても画面を不自然に分割する線をなくし、見やすい画面を得ることを目的とする。
さらに本発明は、大画面の表示装置の配線抵抗を低下させ、消費電力の低下を実現するものである。」(公報1頁右下欄9行?2頁左上欄12行)

(エ)「〔実施例1〕
本実施例においては大型画面の液晶表示装置をユニットLCDの組み合わせにより作製した場合について述べる。第4図(a)はユニットLCDの平面図,第4図(b),(c)はそれぞれ第4図(a)の断面図である。
一対のガラス基板(5),(8)上(以下,基板(5)を上部基板、基板(8)を下部基板と称する。)にITO電極(7)をスパッタ法によりメタルマスクを用いて3mmの幅(間隔は0.1mm)に81本形成した。ただし、下部基板(8)には第4図(a)に示すように隣り合う2辺に沿って3.1mmピッチで貫通する穴(6)(直径0.3mm)を設けてある。そして、穴(6)にCuからなる導線(4)(太さ0.3mm)をITO電極(7)と接続した。そして、配向膜塗布,ラビング,スペーサー(9)散布,シール剤印刷工程を経て、基板(5),(8)を貼り合わせた。そして、液晶を注入し、注入口を封止した。
この後、TAB法によって液晶駆動用IC(10)と前記導線とを接続した(第4図(d),(e))。この方法は、IC(10)が搭載されたポリイミド製のベースフィルム(11)上に形成された銅箔よりなる配線(12)と前記導線(4)とを半田(13)を用いて接続したものである。用いたベースフィルムの厚さは0.3mm,銅箔の厚さは0.1mmであった。
こうして作製したユニットLCDを縦に10個,横に15個,計150個用いて大型のLCD表示装置を作製した。すると、表示画面内における表示に寄与しない部分は、個々のユニットLCDのシール剤の部分のみ(基板の穴の部分も含まれる)であって、個々のシール剤の幅は1mm以下にすることができたので、従来5mm幅の表示に寄与しない部分があったのと比較すると、表示に寄与しない部分を大幅に減らすことができた。
本実施例においては、第4図(c)に示すように上部基板からパネルの裏側に導線を導くために銀ペースト(14)を用いて下部基板(8)の穴(6)に設けられた導線と接続した。」(公報2頁左下欄16行?3頁左上欄13行)

2 引用例1記載の発明の認定
(1)上記記載事項(エ)(特に、公報2頁右下欄2?5行)及び第4図(a),(b)から、上部基板(5)における下部基板(8)に対向する面にストライプ状のITO電極(7)が、また、下部基板(8)における上部基板(5)に対向する面にストライプ状のITO電極(7)が、それぞれ形成されていると認められる。

(2)上記記載事項(エ)(特に、公報3頁左上欄3?13行)及び第4図(c)から、上部基板(5)における下部基板(8)に対向する面に形成されたストライプ状のITO電極(7)と前記下部基板(8)を貫通する穴(6)に設けられた導線(4)とが、前記ストライプ状のITO電極(7)の表示に寄与しない部分において、銀ペースト(14)を用いて接続されていると認められる。

(3)上記記載事項(エ)(特に、公報2頁右下欄14?19行)及び第4図(e)から、液晶駆動用IC(10)が搭載されたベースフィルム(11)上に形成された配線(12)は、下部基板(8)における上部基板(5)と反対側に配置されていると認められる。

(4)したがって、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。

「上部基板(5)と、下部基板(8)と、前記上部基板(5)における前記下部基板(8)に対向する面に形成されたストライプ状のITO電極(7)と、前記下部基板(8)における前記上部基板(5)に対向する面に形成されたストライプ状のITO電極(7)と、前記上部基板(5)及び前記下部基板(8)の間に注入された液晶とを有する液晶表示装置において、
前記下部基板(8)には前記下部基板(8)を貫通する穴(6)が設けられ、
前記穴(6)に導線(4)が設けられ、
前記下部基板(8)における前記上部基板(5)と反対側に配置され、かつ、液晶駆動用IC(10)が搭載されたベースフィルム(11)上に形成された配線(12)と前記導線(4)とが半田を用いて接続され、
前記上部基板(5)における前記下部基板(8)に対向する面に形成された前記ストライプ状のITO電極(7)と前記下部基板(8)を貫通する前記穴(6)に設けられた前記導線(4)とが、前記ストライプ状のITO電極(7)の表示に寄与しない部分において、銀ペースト(14)を用いて接続された、液晶表示装置。」(以下、「引用発明1」という。)

3 本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
(1)引用発明1の「上部基板(5)」、「下部基板(8)」は、それぞれ、本願発明の「第1の基板」、「第2の基板」に相当する。
また、引用発明1の「上部基板(5)」と「下部基板(8)」との間には「液晶」が介在するから、引用発明1の「上部基板(5)」及び「下部基板(8)」が互いに対向して配置されたものであることは明らかである。

(2)引用発明1の「前記上部基板(5)における前記下部基板(8)に対向する面に形成された前記ストライプ状のITO電極(7)」の「表示に寄与しない部分」は、本願発明の「前記第1の基板における前記第2の基板に対向する面に形成された配線」に相当する。

(3)引用発明1の「前記下部基板(8)を貫通する穴(6)」に設けられた「導線(4)」は、本願発明の「前記第2の基板を貫通して設けられた導電部材」に相当する。

(4)引用発明1の「前記下部基板(8)における前記上部基板(5)と反対側に配置され」「た配線(12)」と本願発明の「前記第2の基板における前記第1の基板とは反対側に、前記配線とオーバーラップするように配置された導電体」とは、「前記第2の基板における前記第1の基板とは反対側に配置された導電体」である点で一致する。

(5)引用発明1の「前記上部基板(5)における前記下部基板(8)に対向する面に形成された前記ストライプ状のITO電極(7)と前記下部基板(8)を貫通する前記穴(6)に設けられた前記導線(4)とが、前記ストライプ状のITO電極(7)の表示に寄与しない部分において、銀ペースト(14)を用いて接続された」ことは、本願発明の「前記第1及び第2の基板の間で、前記導電部材と前記配線とが電気的に接続され」たことに相当する。

(6)引用発明1の「前記下部基板(8)における前記上部基板(5)と反対側に配置され、かつ、液晶駆動用IC(10)が搭載されたベースフィルム(11)上に形成された配線(12)と前記導線(4)とが半田を用いて接続され」ることは、本願発明の「前記導電体は、前記導電部材に電気的に接続されてなる」ことに相当する。

(7)引用発明1の「液晶表示装置」は、本願発明の「電気光学装置」に相当する。

(8)したがって、本願発明と引用発明1とは、

「対向して配置された第1及び第2の基板と、
前記第1の基板における前記第2の基板に対向する面に形成された配線と、
前記第2の基板を貫通して設けられた導電部材と、
前記第2の基板における前記第1の基板とは反対側に配置された導電体と、
を有し、
前記第1及び第2の基板の間で、前記導電部材と前記配線とが電気的に接続され、
前記導電体は、前記導電部材に電気的に接続されてなる電気光学装置。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

〈相違点〉
本願発明の「導電体」は「前記配線とオーバーラップするように配置された」ものであるのに対し、引用発明1の「配線(12)」の配置態様について上記の限定がない点。

4 相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点についての判断
ア まず、本願発明の「導電体」が「前記配線とオーバーラップするように配置された」ものであることの意味を検討する。
この点、請求人は、平成18年10月3日付けの意見書において、「請求項1の『第2の基板における前記第1の基板とは反対側に、前記配線とオーバーラップするように配置された導電体』は、本願に係る国際公開公報第11頁第5段落の『導電体60(及び基板62)は、第2の基板20における第1の基板10とは反対側に配置されている。』という記載と、国際公開公報第11頁第6段落の『導電部材40は、第2の基板20を貫通しているので、導電体60を第2の基板20の側方に引き出さなくてもよい。したがって、導電体60によって占有する空間が小さいので、液晶パネルを組み込んだ装置を小型化することができる。』という記載と、図2の記載から自明です。」と主張している。また、本願に係る国際公開公報第11頁第5段落には、「導電体60及び基板62によって配線基板(例えばフレキシブル配線基板)が構成される。」と記載されているから、本願発明の「導電体」が配線基板上に形成されたものであることは明らかである。
かかる請求人の主張と本願の明細書の記載に照らすと、本願発明の「導電体」が「第2の基板における前記第1の基板とは反対側に、前記配線とオーバーラップするように配置された」ものであるとは、本願発明の「導電体」が形成された配線基板(基板62)と「配線」が形成された「第1基板」及び「第2基板」とが、前記「第2の基板」の裏側において、互いに平面的に重なりあうように前記配線基板を配置して、前記配線基板上に形成された前記「導電体」と前記「第1の基板」に形成された前記「配線」とが互いにオーバーラップすることを意味すると解するのが相当である。

イ そして、一対の上側基板及び下側基板の間に液晶層を有する液晶表示装置の分野において、前記液晶表示装置に接続される配線基板と前記上側基板及び前記下側基板とが、前記下側基板の裏側において互いに平面的に重なりあうように前記配線基板を配置して、前記配線基板上に形成された導電体と前記上側基板に形成された配線とが互いにオーバーラップするようなものとすることは、本願の優先日前において当業者に周知の技術的事項である(原査定で引用された特開平2-921号公報(3頁右上欄14行?左下欄5行、第3図)、実願昭61-156299号(実開昭63-62823号)のマイクロフィルム(明細書の4頁9行?5頁8行、第3図)を参照。特開平2-921号公報の透明電極13のエラスティックコネクタとの接続部を含み、かつ、上側透明基板11のうち下側透明基板10からはみ出した領域(第1図の幅Aの領域)に形成された透明電極13及び実願昭61-156299号(実開昭63-62823号)のマイクロフィルムのセグメント電極端子1’を含み、かつ、上基板3のうち下基板4からはみ出した領域に形成されたセグメント電極1が、それぞれ、本願発明の「配線」に相当する。また、特開平2-921号公報の「プリント基板18」及び実願昭61-156299号(実開昭63-62823号)のマイクロフィルムの「駆動回路基板9」に本願発明の「導電体」に相当するものが形成されていることは技術常識に照らし明らかである。)。
すると、上記周知技術に基づいて、引用発明1の「液晶駆動用IC(10)が搭載され」かつ「配線(12)」が形成された「ベースフィルム(11)」と「上部基板(5)」及び「下部基板(8)」とが、「下部基板(8)」の裏側において互いに平面的に重なりあうように前記「ベースフィルム(11)」を配置して、前記「ベースフィルム(11)」上に形成された「配線(12)」と「前記上部基板(5)における前記下部基板(8)に対向する面に形成された前記ストライプ状のITO電極(7)」の「表示に寄与しない部分」とが互いにオーバーラップするようなものとすることは、当業者にとって容易に想到し得ることである。
したがって、引用発明1に上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を採用することは当業者にとって想到容易である。

(2)本願発明の進歩性の判断
以上検討したとおり、引用発明1に上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を採用することは当業者にとって想到容易である。
また、本願発明の効果も、引用例1に記載された発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。
したがって、本願の請求項1に係る発明は引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は引用例1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そして、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-11 
結審通知日 2008-12-17 
審決日 2009-01-07 
出願番号 特願2001-513139(P2001-513139)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河原 英雄  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 村田 尚英
日夏 貴史
発明の名称 電気光学装置及びその製造方法並びに電子機器  
代理人 伊奈 達也  
代理人 大渕 美千栄  
代理人 永田 美佐  
代理人 布施 行夫  

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