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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1193093
審判番号 不服2006-26278  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-22 
確定日 2009-02-19 
事件の表示 平成 8年特許願第204186号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月 3日出願公開、特開平10- 28764〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯
本願は平成8年7月16日の出願であって、平成18年10月20日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年11月22日付けで本件審判請求がされるとともに、同年12月21日付けで明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。


第2 補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成18年12月21日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1.補正内容

本件補正は特許請求の範囲の補正を補正事項に含んでおり、特許請求の範囲に限ってみると、本件補正の前後における記載は下記のとおりである(ただし、(補正前)については下線部を省略した)。

(補正前)
「【請求項1】
遊技領域に、視差を利用することにより画像を立体的に表示可能な表示装置を備え、前記表示装置の画像表示部に複数の図柄を可変表示して特別遊技を行い、該特別遊技の停止図柄が特別図柄となった場合に大当りを発生させる遊技機において、
前記表示装置は、
前記画像表示部に、前記した複数の図柄を可変表示して特別遊技を行う主図柄領域と、遊技の進行に関与しない装飾図柄領域と、を含ませて表示
し、
前記主図柄領域で可変表示される複数の図柄のうち一部の図柄を立体的に表示可能とし、他の図柄自体を視認補助表示画像として表示することで、前記した一部の図柄が立体的に見える立体視認可能位置を視認補助表示画像の見え具合で調整可能としたことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
遊技領域に、視差を利用することにより画像を立体的に表示可能な表示装置を備え、前記表示装置の画像表示部に複数の図柄を可変表示して特別遊技を行い、該特別遊技の停止図柄が特別図柄となった場合に大当りを発生させる遊技機において、
前記表示装置は、
前記画像表示部に、前記した複数の図柄を可変表示して特別遊技を行う主図柄領域と、遊技の進行に関与しない装飾図柄領域と、を含ませて表示
し、
前記主図柄領域で可変表示される複数の図柄をそれぞれ立体的に表示可能とし、
該複数の図柄の背景中には、図柄の停止ラインを兼ねて水平方向の帯線を視認補助表示画像として当該複数の図柄の後方に重なるように表示することで、前記した複数の図柄が立体的に見える立体視認可能位置を視認補助表示画像の見え具合で調整可能としたことを特徴とする遊技機。
【請求項3】
前記特別遊技中に大当りとなる可能性の高いリーチ状態が発生した場合
に、前記した一部の図柄をリーチ状態で可変表示中の図柄とし、前記した他の図柄を停止している図柄としたことを特徴とする請求項1に記載の遊技
機。」

(補正後)
「【請求項1】
遊技領域に、視差を利用することにより画像を立体的に表示可能な表示装置を備え、前記表示装置の画像表示部に複数の図柄を可変表示して特別遊技を行い、該特別遊技の停止図柄が特別図柄となった場合に大当りを発生させる遊技機において、
前記表示装置は、
前記画像表示部に、前記した複数の図柄を可変表示して特別遊技を行う主図柄領域と、遊技の進行に関与しない装飾図柄領域と、を含ませて表示
し、
前記主図柄領域に可変表示される複数の図柄のうち一部の図柄を立体的に表示可能とし、他の図柄自体を視認補助表示画像として表示することで、前記した一部の図柄が立体的に見える立体視認可能位置を視認補助表示画像の見え具合で調整可能とし、
前記視認補助表示画像は、
遊技者の左目に対応する画像である左目用画像と、該左目用画像と区別可能な遊技者の右目に対応する画像である右目用画像とで構成して、
前記左目用画像と右目用画像の見え具合で前記立体視認可能位置を調整可能とし、
前記特別遊技中に大当りとなる可能性の高いリーチ状態が発生した場合
に、
当該リーチ状態において可変表示中の前記一部の図柄を立体的に表示
し、
該一部の図柄以外であって、当該リーチ状態を形成する停止図柄である他の図柄自体を前記視認補助表示画像として表示するようにしたことを特徴とする遊技機。 」

(補正後)の請求項1は、
(i)(補正前)の請求項1に対して、(補正前)請求項3の記載事項を加え、そのうえで記載を整理し、さらに「視認補助表示画像」が「区別可能」な「右目用画像」と「左目用画像」とで構成されて両者の見え具合を用いるものである旨の限定を加えたもの、
(ii)(補正前)の請求項3を独立形式として記載を整理し、そのうえで「視認補助表示画像」について(i)と同様の限定を加えたもの、
という、どちらにも解釈できるが、いずれとしても「視認補助表示画像」について、上に述べたとおりに発明を限定しており、その点においては、本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的としたものということができる。
ここでは、(ii)の解釈を採り、(補正前)の請求項1及び2を削除した点については請求項の削除を目的としたものと認め、「前記主図柄領域で」を「前記主図柄領域に」と補正した点、及びその他の記載の整理については、誤記の訂正を目的としたものと認める。
本件補正は、(補正前)の請求項3に記載された発明を限定して(補正後)の請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)としたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認め、補正発明について、特許出願の際独立して特許を受けることができたかを検討することとする。
なお、(i)の解釈を採ったとしても、前述のとおり、「視認補助表示画像」について(補正前)請求項1記載の発明を限定した点で、本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認められるから、補正発明の独立特許要件を検討したうえでこれが否定されれば、本件補正は不適法なものとなる。

2.補正発明の認定

補正発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される、「1.補正内容」において(補正後)【請求項1】として示したとおりのものと認める。

3.引用刊行物に記載される事項の認定

本願出願前に頒布された刊行物であり、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平8-141169号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の記載がされている。

ア.「図1は遊技盤1を示す正面図である。図1において、遊技領域の周囲には弾発された玉を遊技領域の上方部まで案内したり、後述のアウト玉回収口42まで案内するなどの機能を有するレール11が配置されている。また、遊技領域のほぼ中央部には立体画像を表示可能な可変表示装置(いわゆる役物装置)2が配置されている。」(段落【0010】)
イ.「可変表示装置2は立体画像を表示可能なものが使用されており、その詳細な構成は後述する。可変表示装置2は立体画像を表示する画像表示部3を有しており、画像表示部3は図2に示すように、3列の図柄(例えば、「777」)を表示可能なように構成され、普通電動始動口12に玉が入賞したとき(ただし、始動記憶の範囲内)、表示した可変表示図柄の内容を変化させ、その図柄が特別図柄(例えば、大当りのゾロ目状態:「777」など)になると、変動入賞装置(アタッカー)13が開放するようになっている。なお、可変表示装置2の画像表示部3に表示可能な図柄は数字、記号に限らず、画像やキャラクタを用いたものでもよい。表示図柄は、左→中→右の順にスクロールして停止するが、これに限らず、例えば左→右→中の順にスクロールして停止させてもよい。このとき、リーチスクロールも行われ
る。ここで、リーチスクロールとは、例えば1個目の左図柄および2個目の中図柄が停止したときリーチ状態の出目(例えば、「77X」)が発生し、3個目の右図柄を停止させるときに通常速度と異なる緩やかな速度で、3個目の図柄表示を変化(スクロール)させるような制御をいう。これにより、遊技者はリーチがかかっているから大当り(例えば、「777」)になる期待感を持ち、ゲームの臨場感が高まる。」(段落【0011】-【0012】)
ウ.「次に、画像表示部3の詳細な構成および立体画像の原理について説明する。・・・・液晶パネル221の前面側にはパララックスバリア部210が配置され、パララックスバリア部210はバリア210Bとスリット210Sを交互に持っており、バリア210Bは閉鎖部分で画像を見ることができず、スリット210Sは開口部分で画像を見ることができるものである。そして、スリット210Sは等間隔に形成されている。したがって、スリット210Sとスリット210Sとの間がバリア210Bとなって画像の一部を遮るようになり、遊技者の目を所定の位置におくことにより、右目222には右目用の画像Rだけが見え、左目223には左目用の画像Lだけが見えることになる。このとき、前述した「両眼視差法」の原理により2つの画像を左右の眼に見せることで、人工的に立体感が生み出される。すなわち、ものを見たときに感じる奥行や遠近感など、いわゆる立体感が左右の眼で異なる画像を見ることによって得られることになる。」(段落【0026】-【0027】)
エ.「これは、ホールの管理装置138からのコマンドにより画像表示部3に特定の表示(例えば、打ち止め表示、サービスタイムの表示等)を行う処理を実行するものである。」(段落【0039】)
オ.「なお、本実施例の制御形態ではなく、例えばリーチ発生の場合に可変表示装置2の画像表示部3に表示される画像の一部を別の形態で立体画像で表現してもよく、具体的にはリーチ発生時に最終停止図柄の可変表示を立体的に表示し、既に停止している図柄を平面画像で表示するようにしてもよい。平面画像を立体画像にするとき、例えば左図柄と右図柄の画像を平面画像から徐々に立体画像にずらすような制御を行ってもよい。このようにすると、遊技者にとって眼のピント切り換えが容易になり、ピントを合わせやすいという利点がある。立体画像の例としては、前述した図2、3に示したものに限定されず、他のいろいろな画像を立体画像に切り換えるようにしてもよい。」(段落【0044】)

4.引用刊行物記載の発明の認定

記載事項ア.にあるとおり、引用例1には「遊技領域」に「立体画像を表示可能な可変表示装置2」を備える装置が開示されており、この装置は明らかに「遊技機」である。
記載事項イ.にあるとおり、「可変表示装置2」は「画像表示部3」を有しており、「画像表示部3」は「3列の図柄」を「可変表示図柄」として表示可能であり、「普通電動始動口12に玉が入賞したとき」に「可変表示図柄の内容を変化」させ、「その図柄が特別図柄」である「大当りのゾロ目状態:「777」など」になると「変動入賞装置(アタッカー)13が開放」される。
記載事項ウ.によると、「画像表示部3」における「立体画像」の表示は「パララックスバリア部210」を用いた「両眼視差法」の原理によるものである。
記載事項エ.によると、「画像表示部3」には「例えば打ち止め表示、サービスタイムの表示等」の「ホールの管理装置138からのコマンドによる特定の表示」を行ってもよい。
記載事項イ.に戻れば、「可変表示図柄の内容の変化」においては、「1個目」と「2個目」の図柄が停止したとき「リーチ状態の出目(例えば、「77X」)となる場合があり、そのときには「3個目の図柄表示」の「変化」について、「遊技者」に「大当り(例えば、「777」)になる期待感」を持たせるような「制御」を行っている。「立体表示」に関して、記載事項オ.の態様をとる場合、「リーチ発生時」には「最終停止図柄の可変表示を立体的に表示」し、「既に停止している図柄を平面画像で表示」する。

以上をまとめると、引用例1には、

「遊技領域に、パララックスバリア部210を用いた「両眼視差法」の原理による立体画像を表示可能な可変表示装置2を備え、可変表示装置2の画像表示部3に3列の図柄を可変表示図柄として表示可能であり、普通電動始動口12に玉が入賞したときに可変表示図柄の内容を変化させ、その図柄が大当りのゾロ目状態:「777」などになると変動入賞装置(アタッカー)13が開放される遊技機において、
画像表示部3には、例えば打ち止め表示やサービスタイムの表示等、ホールの管理装置138からのコマンドによる特定の表示を行ってよく、
可変表示図柄の内容の変化においては、1個目と2個目の図柄が停止したとき、リーチ状態の出目(例えば、「77X」)となる場合があり、そのときには3個目の図柄表示の変化について、遊技者に大当り(例えば、「777」)になる期待感を持たせる制御を行い、
立体表示としては、リーチ発生時には最終停止図柄の可変表示を立体的に表示し、既に停止している図柄を平面画像で表示する、遊技機。 」

の発明(以下「引用発明1」という)が記載されている。

5.補正発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定

引用発明1における「パララックスバリア部210を用いた「両眼視差法」の原理による立体画像」は、明らかに補正発明における「視差を利用することにより画像を立体的に」したものに該当する。引用発明1における「可変表示装置2」、「画像表示部3」は、それぞれ補正発明における「表示装置」、「画像表示部」に相当する。引用発明1における「図柄」は、「7」やそれ以外のものが「可変表示」されるものであるから、補正発明において「可変表示」される「複数の図柄」に相当する。
引用発明1において「可変表示図柄の内容」の変化は、「普通電動始動口12に玉が入賞したとき」という特別な場合に生じるものであり、「大当り」の結果や、あるいはそれとは異なる結果に至るものであるから、ここにおける一連の過程は、補正発明において「複数の図柄を可変表示」する「特別遊技」に相当する。そして、引用発明1において「1個目と2個目の図柄」及び「最終停止図柄」が停止して、「その図柄が大当りのゾロ目状態:「777」などになると、変動入賞装置(アタッカー)13が開放される」ことは、補正発明において「該特別遊技の停止図柄が特別図柄となった場合に大当りを発生させる」ことに相当する。
すなわち、引用発明1と補正発明とは「遊技領域に、視差を利用することにより画像を立体的に表示可能な表示装置を備え、前記表示装置の画像表示部に複数の図柄を可変表示して特別遊技を行い、該特別遊技の停止図柄が特別図柄となった場合に大当りを発生させる遊技機」である点で一致する。

引用発明1の「可変表示装置2」は、「画像表示部3」に「3列の図柄」を可変表示する領域を有しているから、その他の領域も併せて有するかはさておき、補正発明が「前記表示装置は、前記画像表示部に、前記した複数の図柄を可変表示して特別遊技を行う主図柄領域」を有する点は、引用発明1との一致点である。また引用発明1の「可変表示装置2」は、「リーチ発生時には最終停止図柄の可変表示を立体的に表示し、既に停止している図柄を平面画像で表示する」から、補正発明に「前記主図柄領域に可変表示される複数の図柄のうち一部の図柄を立体的に表示可能」とある点も、引用発明1との一致点である。さらに引用発明1において、「リーチ」は「可変表示図柄の内容の変化」の過程で生じる場合があるものであり、また「遊技者」に「大当り」の「期待感を持たせる」のみならず、実際に「大当り」となる可能性が高いことは明らかである。そのため、引用発明1において「リーチ発生時には最終停止図柄の可変表示を立体的に表示」する点は、補正発明における「前記特別遊技中に大当りとなる可能性の高いリーチ状態が発生した場合に、当該リーチ状態において可変表示中の前記一部の図柄を立体的に表示し」に相当する。
そして、引用発明1において、「リーチ」のときに「既に停止している図柄」は、補正発明における「該一部の図柄以外であって、当該リーチ状態を形成する停止図柄である他の図柄自体」に相当する。ここで、これらリーチ状態で停止中の図柄について、引用発明1における「平面画像で表示」と、補正発明における「前記視認補助表示画像として表示」とは、「立体的に表示している可変表示中の図柄とは異なる態様の画像として表示」という限度で一致する。
すなわち、引用発明1と補正発明とは、「前記表示装置は、前記画像表示部に、前記した複数の図柄を可変表示して特別遊技を行う主図柄領域を有し、前記主図柄領域に可変表示される複数の図柄のうち一部の図柄を立体的に表示可能とし、前記特別遊技中に大当りとなる可能性の高いリーチ状態が発生した場合に、当該リーチ状態において可変表示中の前記一部の図柄を立体的に表示し、該一部の図柄以外であって、当該リーチ状態を形成する停止図柄である他の図柄自体を、立体的に表示している可変表示中の図柄とは異なる態様の画像として表示するようにした、遊技機」である点で一致する。

以上をまとめると、補正発明と引用発明1は、

「遊技領域に、視差を利用することにより画像を立体的に表示可能な表示装置を備え、前記表示装置の画像表示部に複数の図柄を可変表示して特別遊技を行い、該特別遊技の停止図柄が特別図柄となった場合に大当りを発生させる遊技機において、
前記表示装置は、
前記画像表示部に、前記した複数の図柄を可変表示して特別遊技を行う主図柄領域を有し、
前記主図柄領域に可変表示される複数の図柄のうち一部の図柄を立体的に表示可能とし、
前記特別遊技中に大当りとなる可能性の高いリーチ状態が発生した場合
に、
当該リーチ状態において可変表示中の前記一部の図柄を立体的に表示
し、
該一部の図柄以外であって、当該リーチ状態を形成する停止図柄である他の図柄自体を、立体的に表示している可変表示中の図柄とは異なる態様の画像として表示するようにした、遊技機」

である点で一致し、以下の各点で相違する。

<相違点1>
補正発明においては「画像表示部」に、「主図柄領域」と「遊技の進行に関与しない装飾図柄領域」とを「含ませて表示」しているのに対して、引用発明1においてはそう記載されていない点。

<相違点2>
補正発明においては「一部の図柄を立体的に表示可能」とするとともに、「他の図柄自体を視認補助表示画像として表示することで、前記した一部の図柄が立体的に見える立体視認可能位置を視認補助表示画像の見え具合で調整可能」としているのに対し、引用発明1では「一部の図柄を立体的に表示可能」であっても、「視認補助表示画像」を有さない点
また、補正発明では「前記視認補助表示画像」として、「遊技者の左目に対応する画像である左目用画像と、該左目用画像と区別可能な遊技者の右目に対応する画像である右目用画像とで構成して、前記左目用画像と右目用画像の見え具合で前記立体視認可能位置を調整可能」とするものを採用しているのに対し、引用発明1ではそうなっていない点。
さらに、補正発明では「リーチ状態において可変表示中の前記一部の図柄を立体的に表示」する際に「当該リーチ状態を形成する停止図柄である他の図柄自体」を「前記視認補助表示画像」としているのに対して、引用発明1ではリーチ状態において可変表示中の図柄を立体的に表示し、そのときの停止済み図柄を「立体的に表示」とは異なる態様として表示しているが、当該停止済み図柄を「視認補助表示画像」とはしていない点。

6.相違点の判断及び補正発明の独立特許要件の判断

(1)相違点1について
引用発明1においても、画像表示部3に「打ち止め表示やサービスタイムの表示」といった表示を行うことが示されている。こういったお知らせ等が生じた場合にも、図柄の可変表示によるゲーム自体の進行は妨げることなく、当該お知らせ等の表示を行えるよう、画像表示部3に、可変表示図柄の表示領域と遊技の進行に関与しない装飾的な図柄表示領域とを含ませて表示しておき、後者の領域にゲームの進行とは関係のない表示を行わせることとして、相違点1に係る補正発明の構成を得ることは、設計事項程度である。

(2)相違点2について
引用例1においても、記載事項オ.にあるように、視差を原理とする立体表示における観察者への配慮として「平面画像を立体画像にするとき」の「眼のピント切り換えの容易」について考慮しているところ、特開平7-319446号公報(以下、「引用例2」という。)に「このようなメガネ無し方式の立体映像表示装置では、観察者は左眼には左眼用画素からの光が入光し、右眼には右眼用画素からの光が入光する位置(以下、適視位置という)に頭部を位置させる必要がある。」(段落【0004】-【0005】)と記載され、これに該当する方式の立体映像表示装置として「レンチキュラレンズを用いた構成」及び「パララックスバリアを用いた構成」(段落【0063】)が示されているように、「適視位置」の問題は、視差を用いるレンチキュラレンズ方式あるいはパララックスバリア方式の立体表示に、原理的に付随するものとして知られている事項である。また、このような「適視位置」の問題は、そこに正確に視点を置かなければ立体画像を適切に見ることができないのであるから、これらの立体表示に実際に接したことがある者であれば、直ちに認識される事項である。
そうであれば、視差を用いるパララックスバリア方式の立体表示を用いる引用発明1を出発点とした場合においても、原理的かつ必須的に存在することが知られた「適視位置」の問題に関して、既に公知である何れかの配慮技術を組み込むことは、当然に思いつくことができ、また適宜自由に検討すべき事項と言わざるを得ない。
そのような「適視位置」に関する公知の配慮策として、同引用例2には「映像表示部に適視位置マークを表示する」(段落【0018】)手法が示されており、ここにおける「適視位置マーク」は補正発明における「視認補助表示画像」に相当する。そして、同引用例2においては「適視位置マーク」として、「左眼用適視位置マークと右眼用適視位置マークとが異なる色で表示されるため、観察者は左眼用適視位置マークと右眼用適視位置マークとが混じっている状態及び混じっていない状態を容易に識別することが出来、容易に適視位置を見つけ出すことが出来る」(段落【0026】)ものを用いることが記載されている。加えて、「適視位置マーク」を表示する信号については、「左眼用映像信号及び右眼用映像信号に予め・・・・・表示するような信号が形成されているソフトを映像源として用いても良い。」(段落【0062】)として、映像源の信号に最初から含ませておくことも示されている。さらに、「映像表示部に入力する映像信号が平面映像を表示するための信号である場合に、前記映像表示部に適視位置マークが表示することを阻止する」(段落【0020】)とも記載されており、立体映像表示を行わないときには適視位置マークがそもそも不要であることについても、示唆がされている。
ここで引用発明1に立ち帰ると、引用発明1では「リーチ発生時」に「最終停止図柄の可変表示を立体的」にしているところ、このときの「立体」表示にも、先に述べたとおり公知の「適視位置」の問題が、原理的かつ必須的に付随することは明らかである。そうであれば、かような公知事項についての公知の対処法として、上記引用例2に示される対処法を採用し、
(i)「適視位置マーク」を「立体表示」実施中に併せて表示可能とすること、
(ii)該「適視位置マーク」として、「異なる色」の「左眼用適視位置マーク」と「右眼用適視位置マーク」とで構成され、両者が混じって見えるかどうかで適視位置の調整を可能とするものを採用すること、
(iii)「適視位置マーク」を表示する信号は、立体表示を実行する映像源の信号、すなわちリーチ中の図柄可変表示の映像信号に最初から含めておくこと、
は、これまでに述べた事情からすれば、困難性のない事項である。
その際、引用発明1のリーチ中における映像信号部分のうち、立体表示中であり可変表示中である最終停止図柄の部分を除いたその余の映像信号部分から、いずれの部分を「適視位置マーク」化するかは、適宜自由に選択できる事項であるところ、引用発明1ではそのとき必ず「立体的に表示」でない映像信号部分として存在している、当該リーチ時に「既に停止している図柄」の部分があるのであるから、ここを「適視位置マーク化」することは、十分になし得た選択と言わざるを得ない。
すなわち、引用発明1において、パララックスバリア方式の立体表示に必須的に付随することが知られた「適視位置」の問題に配慮し、その配慮策として引用例2に示された公知の「適視位置マーク」の手法を採用し、その際に立体化部分を含む映像信号中で「適視位置マーク」化しておく映像信号部分を選択するに際しては、既に引用発明1においてリーチ時の立体化部分と併存している映像信号部分である停止済み図柄の部分を割り当てることにより、相違点2に係る補正発明の構成を得ることは、自明である。

(3)補正発明の独立特許要件の判断
相違点1-2の構成上の容易想到性は上述のとおりであり、これら相違点に係る補正発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は、引用発明1及び引用例2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
すなわち、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第5項で準用する同法第126条5項の規定に違反している。

[補正の却下の決定のむすび]

以上述べたとおり、本件補正は平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条5項の規定に違反しているので、同法第159条1項で読み替えて準用する同法第53条1項の規定により、却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件審判請求についての判断

1.本願発明の認定

平成18年2月21日付け手続補正は当審において却下されたから、本願の請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年8月22日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲における、【請求項1】を引用する【請求項3】に記載された事項によって特定されるものと認める。なお、その記載は、「第2 補正の却下の決定」の「1.補正内容」において(補正前)【請求項1】及び【請求項3】に示したとおりである。

2.引用刊行物記載の発明の認定、本願発明との対比、及び相違点の判断
本願出願前に頒布された刊行物である、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1には、「第2 補正の却下の決定」の「4.引用刊行物記載の発明の認定」において認定したとおりの引用発明1が記載されている。
本願発明は、「第2 補正の却下の決定」の「1.補正内容」で検討したとおり、補正発明に対して「前記視認補助表示画像」が「右目用画像」と「左目用画像」とで構成される限定を有さないものであるから、より限定された補正発明が「第2 補正の却下の決定」の「2.」?「6.」で検討したとおりに進歩性を有さない以上、同じ理由で進歩性を有さない。
すなわち、本願発明は引用発明1及び引用例2に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。


第4 むすび

本件補正が却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもな
く、本願は拒絶を免れない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-17 
結審通知日 2008-12-24 
審決日 2009-01-06 
出願番号 特願平8-204186
審決分類 P 1 8・ 572- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 納口 慶太  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 有家 秀郎
川島 陵司
発明の名称 遊技機  
代理人 津久井 照保  

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