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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A45C
管理番号 1193235
審判番号 不服2006-17335  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-09 
確定日 2009-02-23 
事件の表示 特願2000-350202号「果実型弁当、およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月28日出願公開、特開2002-153312号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年11月16日の出願であって、平成18年6月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年8月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年4月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「果実の下部形状を象った容器本体の底部に、一口サイズに切り分けた後、適宜保存処理を施した加工果実の幾つかをデザート用に盛り付けると共に、その上部に略水平状且つ着脱自在に閉鎖するようにして仕切り板を装着し、該仕切り板上に、適量のご飯や五目飯、炊込み飯等の主食物と適宜副食物を盛り付けた上、該容器本体の開口部周縁に蓋体開口部周縁を嵌合状に組み合わせて密閉状とし、全体の外郭形状を一個の果実状となるようにしたことを特徴とする果実型弁当。」

3.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である実願昭62-103731号(実開昭64-7822号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「全体が球形の弁当箱であって、上下に分割された複数の器体からなり、上下器体には互いに係合するネジ部を設けて成る弁当箱。」(実用新案登録請求の範囲、請求項1)
(イ)「この考案は弁当箱に関する。」(明細書第1頁第12行)
(ウ)「そこで、この考案は、上下に分割された複数の器体を結合して球体弁当箱を構成することにより、弁当箱の奇抜性を増すと共に、球体の全面に図柄を処理し得、使用者をして弁当の楽しさを増大し得る新規な弁当箱を提供することを目的とする。」(明細書第2頁第2行?7行)
(エ)「上記目的を達成するための、この考案の手段を説明すると、この考案は全体が球形の弁当箱であって、上下複数の機体からなり、上下器体間には互いに係合するネジ部を設けたものである。」(明細書第2頁第9行?13行)
(オ)「上下器体の何れか一方にご飯、他方におかずを容れ、ネジ部にてこれを一体に結合することにより、奇抜な形状の球形弁当箱となり、弁当箱それ自体が食事の楽しみを増すという効果を奏する。
また、この考案によると、球面の全面にキャラクター或いは図柄を表し得、考案目的を達成した効果を奏する。」(明細書第2頁第15行?第3頁第2行)
(カ)「第1図,第2図はこの考案の一実施例にかかる弁当箱を示している。
本考案の弁当箱1は、全体形状が球形の弁当箱であって、上下に分割された器体1a,1bから成る。各器体1a,1bは、合成樹脂剤の成形体であって、それぞれ半球形をなして内部に収容部10,口周縁に互いに係合するネジ部11が形成され、ネジ部11を係合して器体1a,1bを結合したとき球形弁当箱1が形成される。両器体1a,1bの開口面には、落し込み式またはネジ込み式の内蓋21,31を設け、一方をご飯収容部2,他方をおかず収容部3となしている。」(明細書第3頁第4行?16行)
(キ)「第3図,第4図は、この考案にかかる弁当箱の第2実施例を示す。この実施例も前述例と同様に全体形状が球形の弁当箱1であって、上下3段の器体1a,1b,1cに分割され、上下器体1a,1b,1c間には、互いに係合するネジ部11を設けて結合している。
この実施例の場合、中段器体1bの構造が前述例と異なるもので、弁当箱1の球面をなす外殻部12の上縁に、内部を仕切壁14で縦横に仕切ったおかず容れ用の内容器13、内容器13の上周縁にネジ部11が一体に形成されており、ネジ部11に上段器体1cを係合してある。上段器体1cは弁当箱1の球面の一部をなし、小皿として利用される。
該実施例の場合、下段器体1a内には、ご飯収容のための蓋付きの内容器20が出入れ可能に設けられ、内容器20の下側に保温用の発熱体の収容空間22を作ってある。」(明細書第3頁第17行?第4頁第14行)
(ク)「第7図はすいか、第8図はオレンジ様の模様4を表してある。」(明細書第5頁第3行?4行)
(ケ)「然して、弁当箱1の使用に際しては、上下器体1a,1bの一方にご飯、他方におかずを容れた後、両器体1a,1bのねじ部11を係合して結合することにより球形となる。」(明細書第5頁第9行?12行)
(コ)「この考案は上記の如く、全体が球形の弁当箱であって、上下に分割された複数の器体からなり、上下器体間に互いに係合するネジ部を設けたから、上下器体の一方にご飯、他方におかずを容れ、これを結合することにより奇抜な形状の球形の弁当箱となり、コンパクト形状で大容量の食物を収容し得る機能を有す。また、弁当箱の球面全体にキャラクター、或いは図柄を表し得、以て、弁当箱自体が食事の楽しさを増大する等、実用上の幾多の効果を奏する。」(明細書第5頁第18行?第6頁第7行)
(サ)第4図には、内蓋21を器体1a,1bの底部の上部に略水平状且つ着脱自在に閉鎖するように装着した点が図示されている。また、第7図及び第8図には、すいかやオレンジの果実の下部形状を象った器体1a,1bを有し、全体の外郭形状をすいかやオレンジの1個の果実状となるようにした果実型の弁当箱が図示されている。
また、上記(ケ)及び(コ)の記載より、弁当箱にご飯とおかずを容れた弁当が記載されていることは自明である。

以上の記載事項及び図示内容を総合すると、上記引用刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「すいかやオレンジの果実の下部形状を象った器体1a,1bの底部の上部に略水平状且つ着脱自在に閉鎖するようにして内蓋21を装着し、該内蓋21上に、ご飯またはおかずを収容した上、該器体1a,1bの開口部周縁に上段器体1c開口部周縁をネジ部により係合し、全体の外郭形状をすいかやオレンジの一個の果実状となるようにした果実型弁当。」

また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である実願平1-75661号(実開平3-13816号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(シ)「略球形の容器を少なくとも上下2段の部分に分割し、上段部分は蓋とし、下段部分は容器としたことを特徴とする弁当容器。」(実用新案登録請求の範囲、請求項1)
(ス)「図面において、
1は上面が球面の蓋、2は下面が球面の容器であり、該容器2は更に上段容器2aと下段容器2bとに分割される。
そして、前記蓋1と前記上段容器2aと下段容器2bは螺合して略球形のてまり型の弁当容器Aとなる。この弁当容器の直径は15?16センチメートル程度が適当である。
前記下段容器2bの下部には底板4を設け下部空間bを形成した。」(明細書第2頁第19行?第3頁第8行)
(セ)「また、蓋と1段の容器との2段に分割できる構成としても良く、4段以上の多段に分割できる構成としても良い。
または、前記下部空間6に発熱体若しくは吸熱体を収納し、弁当を加温もしくは冷却するように構成しても良い。」(明細書第4頁第2行?7行)
(ソ)第1図には、底板4が環状突部に載置されている点が図示されている。
4.対比・判断
本願発明と引用発明を対比すると、その機能及び構成からみて、引用発明の「すいかやオレンジの果実」は本願発明の「果実」に、「器体1a,1b」は「容器本体」に、「内蓋21」は「仕切り板」に、「上段器体1c」は「蓋体」に、及び「全体の外郭形状をすいかやオレンジの一個の果実状となるようにした果実型弁当」は「全体の外郭形状を一個の果実状となるようにした果実型弁当」に、それぞれ相当する。
また、後者の「ご飯またはおかずを収容した」と前者の「適量のご飯や五目飯、炊込み飯等の主食物と適宜副食物を盛り付けた」とは、「適量のご飯や五目飯、炊込み飯等の主食物あるいは適宜副食物を盛り付けた」の概念で共通する。
また、後者の「該器体1a,1bの開口部周縁に上段器体1c開口部周縁をネジ部により係合し」と前者の「該容器本体の開口部周縁に蓋体開口部周縁を嵌合状に組み合わせて密閉状とし」とは、「該容器本体の開口部周縁に蓋体開口部周縁を組み合わせ」の範囲で共通する。

そうすると、両者は
「果実の下部形状を象った容器本体の底部の上部に略水平状且つ着脱自在に閉鎖するようにして仕切り板を装着し、該仕切り板上に、適量のご飯や五目飯、炊込み飯等の主食物あるいは適宜副食物を盛り付けた上、該容器本体の開口部周縁に蓋体開口部周縁を組み合わせ、全体の外郭形状を一個の果実状となるようにした果実型弁当。」
の点で一致しており、以下の点で相違している。

(相違点1)
本願発明は、一口サイズに切り分けた後、適宜保存処理を施した加工果実の幾つかをデザート用に盛り付けるのに対し、引用発明は、そのような構成を有しない点。
(相違点2)
本願発明は、容器本体の底部に果実をデザート用に盛り付け、その上部の仕切り板上に適量のご飯や五目飯、炊込み飯等の主食部と適宜副食物を盛り付けているのに対し、引用発明は、器体の中蓋21より上部にはご飯あるいはおかずを収納している点。
(相違点3)
本願発明は、該容器本体の開口部周縁に蓋体開口部周縁を嵌合状に組み合わせて密閉状としているの対し、引用発明は、該器体1a,1bの開口部周縁に上段器体1c開口部周縁をネジ部により係合している点。

上記相違点について検討する。
(相違点1について)
弁当に入れる果実を、一口サイズに切り分けた後、適宜保存処理を施し盛り付ける点は、従来一般に広く行われている周知の技術にすぎないから(例えば、リンゴを切り食塩水につける処理をして色が変わらないようにして弁当に入れる等)、上記周知技術を引用発明に適用して上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。
(相違点2について)
引用刊行物2には、容器の底部(下段容器2bの下部)には仕切り板(底板4)を設け、物品を収納する下部空間を形成した点が記載されており、弁当箱が複数の空間に分割されている場合、どの空間に主食部あるいは副食部、デザートを盛り付けるかは、当業者が適宜なし得る事項にすぎないから、引用刊行物2に記載された発明を引用発明に適用して上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。
(相違点3について)
容器本体の開口部周縁に蓋体開口部周縁を嵌合状に組み合わせて密閉状としている点は、弁当において周知の技術にすぎず(例えば、特開平10-245054号公報、特開2000-118548号公報参照)、その周知技術を引用発明に適用して上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明による効果も、引用発明、引用刊行物2に記載された発明及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

よって、本願発明は、引用発明、引用刊行物2に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、審判請求書で
「今般の審判請求と同時にした手続補正書によって元の特許請求の範囲の請求項1を削除し、同請求項2以下の項番を繰り上げ補正をしました。
今回の補正後の特許請求の範囲請求項1に記載の発明は、以下に示すとおり、
「(請求項1) 果実の下部形状を象った外郭形状で、その開口部から所定距下がった箇所の内周壁面に、その全周内側に向けて環状突部を形成するか、あるいは同所の全周適宜間隔置きとなる3箇所以上から、夫々突条部もしくは瘤状突部を形成するかして仕切り受け部を有するものに形成された容器本体の底部に、一口サイズに切り分けた後、適宜保存処理を施した加工果実の幾つかをデザート用に盛り付けると共に、その上部に、周縁を容器本体内周壁面に形成された仕切り受け部に載置状または係合状とし、略水平状且つ摘み片と係合手段とを併用した着脱自在に仕切り板が組み合わされ、該仕切り板上に、適量のご飯や五目飯、炊込み飯等の主食物と適宜副食物を盛り付けた上、該容器本体の開口部周縁に蓋体開口部周縁を嵌合状に組み合わせて密閉状とし、全体の外郭形状を一個の果実状となるようにし、据置き安定用に厚紙からなる包装紙内に収容したことを特徴とする果実型弁当。」
を必須の構成要件とするものである。
これに対し、引用文献1ないし4の何れの先行文献にも、上記したこの発明の必須の構成要件、特に、容器本体の各部構成の中、
A その開口部から所定距離下がった箇所の内周壁面に、その全周内側に向けて環状突部を形成するか、あるいは同所の全周適宜間隔置きとなる3箇所以上から、夫々突条部もしくは瘤状突部を形成するかして仕切り受け部を有するものに形成した点(元の段落0011ないし0013に記載)
B 周縁を、上記容器本体内周壁面に形成された仕切り受け部に載置状または係合状とし、略水平状且つ摘み片と係合手段とを併用した着脱自在に仕切り板が組み合わされるようにした点(元の段落0011ないし0013に記載)
C 全体の外郭形状を一個の林檎状となるようにし、据置き安定用に厚紙からなる包装紙内に収容した点(元の段落0031に記載)
の構成要件について一切記載がないばかりか、それを示唆する記載箇所すらも見出すことができない。
そして、この発明の果実型弁当は、その特異且つ新規な構成によって、段落0010ないし0012(元の段落0011ないし0013)の記載、段落0032(元の段落0033)および段落0037(元の段落0038) 段落0038(元の段落0039)のとおりの機能、作用効果を奏して所期の目的を確実に達成することになる。
よって、本願発明の要旨認定を過ったままに成された特許法第29条第2項の規定の適用による今般の拒絶査定は、明らかに根拠を欠いていて違法である と言わざるを得ないものである。 」
と主張しているが、上記主張の根拠となるべき手続補正はなされていないので、上記主張は採用できないものである。

しかしながら、請求人の意図を考慮し、仮に、請求項1が審判請求人の主張どおり補正されたものとした判断も示しておく。
(Aの点について)
引用刊行物2(第1図)においても、開口部から所定距離下がった箇所の内周壁面に、その全周内側に向けて環状突部を形成して仕切り(底板)受け部を有するものに形成した点が記載されている。
(Bの点について)
着脱自在な部材に摘み片を設けることは、弁当において周知の手段にすぎ(例えば、実願平5-27696号(実開平6-84922号)のCD-ROM参照)、それを仕切り板に適用してBの点のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。
(Cの点について)
不安定な形状の容器を据置き安定用に厚紙からなる包装紙内に収容することは、駅弁において、従来広く行われている周知の手段にすぎず、その包装紙の適用に際して、全体の外郭形状を特定の物を模して形成することは、当業者が適宜なしうる事項にすぎない。

よって、請求項1が審判請求人の主張どおり補正されたものとしても、補正された請求項1に係る発明は、引用発明、引用刊行物2に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、 特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、この補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきである。
したがって、請求項1が審判請求人の主張どおり補正されたものとしても、上記結論が変更されるものではない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用刊行物2に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-28 
結審通知日 2008-12-09 
審決日 2008-12-24 
出願番号 特願2000-350202(P2000-350202)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A45C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村山 睦  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 蓮井 雅之
八木 誠
発明の名称 果実型弁当、およびその製造方法  
代理人 佐々木 實  

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