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審決分類 |
審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正しない E05B 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正しない E05B 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない E05B 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正しない E05B 審判 訂正 2項進歩性 訂正しない E05B |
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管理番号 | 1193391 |
審判番号 | 訂正2008-390012 |
総通号数 | 112 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-04-24 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2008-01-29 |
確定日 | 2009-03-13 |
事件の表示 | 特許第2135142号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 1.本件特許第2135142号に係る発明は、昭和61年10月21日に特許出願(特願昭61-250209号)したものであって、平成7年3月8日に出願公告(特公平7-21264号)され、平成10年2月27日にその特許の設定登録がなされた。 2.その後、平成17年10月27日に、本件特許の請求項1に係る発明の特許について無効審判が請求され(無効2005-80303、以下、単に「無効審判」という。)、平成18年9月27日付けで「本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との第1次審決がなされた。 3.無効審判の請求人は、知的財産高等裁判所に平成18年11月8日付けで上記第1次審決取消を求める訴え(平成18年(行ケ)10499号)を提起したところ、平成19年4月25日に審決を取り消すとの判決が言い渡され、これに対し、被請求人は、平成19年5月10日付けで上告受理申立をしたが、平成19年9月20日に上告受理却下の決定(平成19年(行ヒ)227号)がなされ、上記判決は確定した。 4.上記無効審判に対し、平成19年11月26日付けで「特許第2135142号の発明についての特許を無効とする。」との第2次審決がなされたところ、無効審判の被請求人(本件訂正審判請求人)より平成19年12月26日に上記第2次審決の取消を求める訴え(平成19年(行ケ)10424号)が提起された。 5.平成20年1月29日に本件審判が請求され、当審において、平成20年3月12日付けで訂正拒絶理由を通知したところ、平成20年4月16日付けで意見書が提出された。 第2 請求の要旨及び訂正内容 本件審判請求は、特許第2135142号の明細書を、審判請求書に添付した訂正明細書(以下「訂正明細書」という)のとおりに訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は次のとおりである。 [訂正事項1] 特許請求の範囲の請求項1の 「前記つまみ部に内蔵され前記送信スイッチが操作されると予め定められたコード信号を送信する送信機と、」を、 「前記つまみ部に内蔵される電池と、 前記つまみ部に内蔵され前記送信スイッチが操作されると前記電池を電源として予め定められたコード信号を送信する送信機と、」と訂正する。 [訂正事項2] 特許請求の範囲の請求項1の 「前記送信機から送信されるコード信号を受信して、ドアロックアクチュエータを制御する受信機とを備える無線式ドアロック制御装置において、」を、 「自動車に搭載され、車載バッテリから電源を供給されて、前記送信機から送信されるコード信号を受信して、ドアロックアクチュエータを制御する受信機とを備える無線式ドアロック制御装置において、」と訂正する。 [訂正事項3] 特許請求の範囲の請求項1の 「前記キープレートが前記キーシリンダに挿入されているとき所定の検出信号を発生する検出手段と、」を、 「前記送信スイッチが設けられた前記つまみ部が操作されて前記キープレートが前記キーシリンダに挿入されているとき所定の検出信号を発生する検出手段と、」と訂正する。 [訂正事項4] 特許請求の範囲の請求項1の 「この検出手段が前記検出信号を発生すると、前記無線式ドアロック制御装置の作動を禁止する禁止手段」を、 「この検出手段が前記検出信号を発生すると、前記キーシリンダに挿入された前記キープレートの一端の前記つまみ部を操作する時、前記送信スイッチを押して前記送信機が前記電池を電源として前記コード信号を送信しても、前記車載バッテリを電源とする前記受信機による前記無線式ドアロック制御装置の作動を禁止する禁止手段」と訂正する。 [訂正事項5] 同請求項2を削除し、請求項3を請求項2に、請求項4を請求項3に夫々訂正する。 [訂正事項6] 明細書の〔産業上の利用分野〕の 「本発明は、車両や家屋に使用される扉の錠を無線信号にて、施錠(ロック)、解錠(アンロック)するためのものである。」(本件特許公報である特公平7-21264号公報(以下、単に「公報」という。)2頁3欄1?3行)を、 「本発明は、車両に使用される扉の錠を無線信号にて、施錠(ロック)、解錠(アンロック)するためのものである。」と訂正する。 [訂正事項7] 明細書の〔問題点を解決するための手段〕の 「キーシリンダM1に挿入され、各種機器を作動させるキープレートM2と(当審注:審判請求書8頁3行の「挿入さ各種機器」は誤記と認める。)、 このキープレートM2の一端に設けられ、このキープレートを操作するためのつまみ部M3と、 このつまみM3に設けられる送信スイッチM4と、 前記つまみ部M3に内蔵され前記送信スイッチM4が操作されると予め定められたコード信号を送信する送信機M5と、 送信機から送信されるコード信号を受信して、ドアロックアクチュエータM6を制御する受信機M7とを備える無線式ドアロック制御装置M8において、 前記キープレートM2が前記キーシリンダM1に挿入されているとき所定の検出信号を発生する検出手段M9と、 この検出手段が前記検出信号を発生すると、前記無線式ドアロック制御装置M8の作動を禁止する禁止手段M10と」(公報2頁3欄28?42行)を、 「キーシリンダM1に挿入され、各種機器を作動させるキープレートM2と、 このキープレートM2の一端に設けられ、このキープレートを操作するためのつまみ部M3と、 このつまみ部M3に設けられる送信スイッチM4と、 前記つまみ部M3に内蔵される電池と、 前記つまみ部M3に内蔵され前記送信スイッチM4が操作されると前記電池を電源として予め定められたコード信号を送信する送信機M5と、 自動車に搭載され、車載バッテリから電源を供給されて前記送信機から送信されるコード信号を受信して、ドアロックアクチュエータM6を制御する受信機M7とを備える無線式ドアロック制御装置M8において、 前記送信スイッチM4が設けられた前記つまみ部M3が操作されて前記キープレートM2が前記キーシリンダM1に挿入されているとき所定の検出信号を発生する検出手段M9と、 この検出手段が前記検出信号を発生すると、前記キーシリンダM1に挿入された前記キープレートM2の一端の前記つまみ部M3を操作する時、前記送信スイッチM4を押して前記送信機M5が前記電池を電源として前記コード信号を送信しても、前記車載バッテリを電源とする前記受信機M7による前記無線式ドアロック制御装置M8の作動を禁止する禁止手段M10と」と訂正する。 [訂正事項8] 明細書の〔作用〕の 「検出手段は、キープレートがキーシリンダに挿入されていることを検出して検出信号を発生する。」(公報2頁3欄50行?4欄1行)を、 「検出手段は、送信スイッチが設けられたつまみ部が操作されてキープレートがキーシリンダに挿入されていることを検出して検出信号を発生する。」と訂正する。 [訂正事項9] 明細書の〔作用〕の 「そして、禁止手段は、検出信号に応じて本発明の無線式ドアロック制御装置の作動を禁止するのである。この禁止により、無線式ドアロック制御装置は作動しなくなり、ドアロックの施錠、解錠は行われない。」(公報2頁4欄2?5行)を、 「そして、禁止手段は、キーシリンダに挿入されたキープレートの一端のつまみ部を操作する時、つまみ部に設けられた送信スイッチを押して送信機がコード信号を送信しても、受信機による無線式ドアロック制御装置の作動を禁止するのである。この禁止により、つまみ部に内蔵された送信機のコード信号送信と車両側受信機のコード受信による本発明の無線式ドアロック制御装置は作動しなくなり、ドアロックの施錠、解錠は行われない。」と訂正する。 [訂正事項10] 明細書の〔実施例〕の 「また、検出手段と禁止手段とを送信機に設けてもよい。例えば、つまみ部のキープレートが突出している端面にスイッチあるいは電極を設け、このスイッチあるいは電極がキーシリンダの入口面と当接すると、送信機の電源をカットするようにしてもよく、キープレートに所定の信号を加えて、送信機の電源をカットするようにしてもよい。こうして、送信機の送信を禁止することで、送信機の電池の寿命を引き伸ばすことができ、長期間電池交換なしで使えるようになる。」(公報3頁6欄3?11行)を削除する。 第3 訂正後の請求項1ないし3に係る発明 訂正明細書の請求項1ないし3に係る発明は、次のとおりのものである。 「【請求項1】キーシリンダに挿入され、各種機器を作動させるキープレートと、 このキープレートの一端に設けられ、このキープレートを操作するためのつまみ部と、 このつまみ部に設けられる送信スイッチと、 前記つまみ部に内蔵される電池と、 前記つまみ部に内蔵され前記送信スイッチが操作されると前記電池を電源として予め定められたコード信号を送信する送信機と、 自動車に搭載され、車載バッテリから電源を供給されて、前記送信機から送信されるコード信号を受信して、ドアロックアクチュエータを制御する受信機とを備える無線式ドアロック制御装置において、 前記送信スイッチが設けられた前記つまみ部が操作されて前記キープレートが前記キーシリンダに挿入されているとき所定の検出信号を発生する検出手段と、 この検出手段が前記検出信号を発生すると、前記キーシリンダに挿入された前記キープレートの一端の前記つまみ部を操作する時、前記送信スイッチを押して前記送信機が前記電池を電源として前記コード信号を送信しても、前記車載バッテリを電源とする前記受信機による前記無線式ドアロック制御装置の作動を禁止する禁止手段とを備えることを特徴とする無線式ドアロック制御装置。 【請求項2】前記禁止手段は、前記受信機の作動を禁止することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の無線式ドアロック制御装置。 【請求項3】前記禁止手段は、所定時間のタイマ手段を備え前記検出手段の前記検出信号が発生しなくなると、前記タイマ手段を起動し、その所定時間後、無線式ドアロック制御装置の作動の禁止を解除することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の無線式ドアロック制御装置。」 第4 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の実質的な拡張・変更の有無の判断 1.訂正事項1は、「送信機」について、つまみ部に内蔵される電池により駆動されるものに限定しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 2.訂正事項2は、「受信機」について、自動車に搭載され、車載バッテリから電源を供給されるものに限定しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 3.訂正事項3について検討する。 訂正前の請求項1に係る発明の「検出手段」について、訂正前の明細書には、次のように記載されている。 「検出手段は、キープレートがキーシリンダに挿入されていることを検出して検出信号を発生する。」(公報2頁3欄50行?4欄1行)、 「およびキーシリンダにキープレートが挿入されたことを検出するキースイッチ4から構成されている。」(公報2頁4欄20?22行)、 「キーシリンダ30には、キープレート21を検出するためのキースイッチ4が設けられている。」(公報2頁4欄49行?3頁5欄1行)、 「…キースイッチ4が閉じているか否かでキーシリンダのキーの有無を判別し、」(公報3頁5欄6?7行)。 また、本件特許の図面第3図(上記公報参照)には、キーシリンダ30の底部にキースイッチ4を設けることが記載されている。 これらの記載によれば、訂正前の請求項1に係る発明の「検出手段」は、キーシリンダ内にキーが挿入されているときに検出信号を発生するもの、すなわちキーシリンダ内にキーが挿入されている状態を検出するものであり「送信スイッチが設けられたつまみ部が操作され」たか否かを検出するものではない。 請求人は、訂正事項3は、キーシリンダ内にキーが挿入されている状態がどうして生じたのかを明確にしたものであって、キーをキーシリンダ内に挿入されている状態とするにはキーをキーシリンダ内に挿入するという行為が必要であり、その行為はキープレートのつまみ部を持って行う操作であるので、その旨を明らかにすべく、「前記つまみ部が操作されて」の限定を追加した旨主張する(意見書2頁11?19行)。 しかし、「前記つまみ部が操作されて」との動作を付加したことにより、訂正後の請求項1に係る発明において「検出手段」が「検出信号を発生する」のは、「キーシリンダ内にキーが挿入されている」状態のときか、「つまみ部が操作されてキーシリンダ内にキーが挿入される」動作が行われたときか、あるいは「つまみ部が操作された」動作の結果「キーシリンダ内にキーが挿入されている」状態になったときに限定されたものか不明りょうとなり、訂正事項3は、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正とも、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正ともいえない。 また、訂正事項3は、誤記の訂正を目的とする訂正でもない。 したがって、訂正事項3は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、同法による改正前の特許法(以下、「平成6年改正前特許法」という。)第126条第1項ただし書各号のいずれにも該当しない。 上記訂正事項3が、「検出信号を発生する」条件として、訂正前の請求項1に係る発明の「キープレートがキーシリンダに挿入されている」に、「送信スイッチが設けられたつまみ部が操作されて」との限定を付加するもの、すなわち、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるとすると、訂正事項3により「検出手段」の内容は、訂正前の「キーシリンダ内にキーが挿入されているとき」に検出信号を発生するものから、「送信スイッチが設けられたつまみ部が操作され」かつ「キーシリンダ内にキーが挿入されているとき」に検出信号を発生するものに変更されることになるから、訂正事項3は、特許請求の範囲を実質的に変更するものであって、平成6年改正前特許法第126条第2項の規定に適合しない。 4.訂正事項4は、「無線式ドアロック制御装置の作動を禁止する禁止手段」について、キーシリンダに挿入されたキーの一端のつまみ部を操作する時に送信スイッチを押して送信機がコード信号を送信しても、車載バッテリを電源とする受信機による無線式ドアロック制御装置の作動を禁止するものに限定しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 5.訂正事項5は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 6.訂正事項7は、訂正事項3と同様の訂正をしようとするものであるから、訂正事項3と同様の理由により、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明、又は誤記の訂正を目的とするものではない。 以上のとおり、本件審判請求における、訂正事項3、7は、平成6年改正前特許法第126条第1項ただし書各号のいずれにも該当しないか、あるいは同条第2項の規定に適合しない。 第4 独立特許要件の判断 上記のとおり訂正事項1、2、4及び5は特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 仮に、訂正事項3が、請求人が主張するように、単に訂正前の請求項1に係る「前記キープレートが前記キーシリンダに挿入されている」状態の原因を明確にしたものであるとすると、訂正後の請求項1及び請求項1を引用する訂正後の請求項2、3に係る発明は、訂正事項1、2、4及び5により減縮されることとなる。 そこで、訂正後の請求項1、2に係る発明(以下、「訂正発明1」、「訂正発明2」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。 1.刊行物の記載事項 (1)訂正拒絶理由で引用され、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭59-199303号(実開昭61-115466号)のマイクロフイルム(以下、「刊行物1」という。)には、「車両用遠隔解施錠装置」に関して、図面とともに、次の事項が記載されている。 (1a)「(1) 車両の解施錠手段に対する解錠又は施錠を指令する信号を送信する送信機と、車両に搭載され送信機からの送信信号を受信し解施錠手段に解錠信号又は施錠信号を出力する受信機と、を有する車両用遠隔解施錠装置において、送信機にイグニツシヨンキーを一体的に装着したことを特徴とする車両用遠隔解施錠装置。 (2) 前記イグニツシヨンキーにアンテナコイルを形成し、このアンテナコイルから送信機の出力信号を送信することを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項記載の車両用遠隔解施錠装置。」(実用新案登録請求の範囲) (1b)「本考案は、前記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、イグニツシヨンキーと送信機とを別々に所持する不便さを解消することができる車両用遠隔解施錠装置を提供することにある。」(明細書3頁6?10行) (1c)「本実施例は、第1図に示されるように、送信機10に、メカニカル式イグニツシヨンキー30を一体的に装着したものであり、受信機の構成は従来のものと同様であるので、受信機の構成の説明は省略する。 送信機10は、第2図に示されるように、アツパーケース32、ロアケース34、スイツチ16、マイクロコンピユータを構成するLSI36、赤外線LED38,40などを有し、スイツチ16、LSI36、LED38,40が回路基板42上に実装されている。回路基板42はねじ44によりロアケース34に固定されている。この回路基板42とロアケース34の側壁との空間部には電池46,48,50が収納されており、接点52を介してLSI36などに電力が供給されている。回路基板42上のスイツチ16には操作ボタン16aが装着される。」(明細書4頁2?18行) (1d)「そして、スイツチ16がON操作されるとスイツチSW_(1)?SW_(4)の操作に基づくキーコードが赤外線LED38,40から送信される。」(明細書6頁1?3行) (1e)「本実施例は、第4図に示されるように、イグニツシヨンキー30の基端部に矩形状のアンテナコイル30Aが形成されている。そして、このイグニツシヨンキー30を収納するために、ロアケース34には平板状の仕切板64が配設されており、仕切板64の底部には収納室66が形成されている。この収納室66はロアケース34に固定されたイグニツシヨンキー30を収納可能なスペースとされている。またアンテナコイル30Aにはねじ孔30B,30Cが刻設されており、仕切板64には貫通孔64a,64bが刻設されている。このため、仕切板64上に回路基板42を装着し、さらにアツパーケース32を装着した後アツパーケース32のねじ孔32b,32cからねじ60を挿入し、アツパーケース32をロアケース34に固定すれば、キーホルダー30を仕切板64に固定することができる。」(明細書6頁10行?7頁6行) (1f)「また本実施例においては、第5図に示されるように、トランジスタTr_(1)、赤外線LED38,40などの赤外線送信回路の代りに、電波送信部70が回路基板42上に実装されており、アンテナコイル30Aが電波送信部70に接続され、アンテナコイル30Aから専用のキーコードが送信されるように構成されている。」(明細書7頁7?13行) 上記記載事項並びに図面に示された内容を総合すると、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。 「キーシリンダに挿入され、各種機器を作動させるイグニツシヨンキー30と、 このイグニツシヨンキー30の一端に設けられ、このイグニツシヨンキー30を操作するための、アツパーケース32とロアケース34から成るキーケースと、 このキーケースに設けられる操作ボタン16aと、 キーケースに内蔵される電池46,48,50と、 前記キーケースに内蔵され前記操作ボタン16aがON操作されると、スイッチSW_(1)?SW_(4)の操作に基づき前記電池46,48,50を電源として予め定められたキーコードを送信する電波送信部70と、 前記電波送信部70から送信されるキーコードを受信して、ドアロック装置を制御する受信機を備える車両用遠隔解施錠装置。」 (2)同じく、特開昭60-261873号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「車両用無線式解錠制御装置」の発明に関して、図面とともに次の事項が記載されている。 (2a)「(1)所定の操作子を備え、この操作子の操作に応答して、以後、固有コード信号を繰り返し無線送信する携帯機と; 常時受信待機状態に設定され、かつ前記携帯機が車両ドア、トランク等の開閉体に接近したときに限り、前記携帯機からの固有コード信号を受信可能な車載受信機と; 前記受信された携帯機側の固有コードを、予め設定された車体側固有コードと照合するコード照合手段と; 前記コード照合手段で両コードの一致が照合されるのに応答して、前記開閉体の錠機構を解錠する解錠制御手段とからなることを特徴とする車両用無線式解錠制御装置。」(特許請求の範囲第1項) 《産業上の利用分野》として (2b)「この発明は、機械式キーを用いることなくドアロック等の施解錠を行なう車両用無線式解錠制御装置に関する。」(2頁左上欄4?6行) 《発明の背景》として (2c)「本出願人は、先に特開昭59-24075号公報において「電波式キーシステム」を提案した。 この電波式キーシステムは、例えば車両のドアロックの施解錠あるいはトランクロックの解錠…等を行なうものである。」(2頁左上欄8?13行) (2d)「このシステムによれば、携帯機の所持者は、交信可能エリア内において起動スイッチをONさせるのみで施解錠制御を行なうことができるため、従来のように機械式キーをいちいち取り出す必要がなく、さらに、機械式キーを車室内へ置き忘れた場合でも施解錠を行なうことができ、大変便利である。 ところで、…前記起動スイッチの操作の必要性を解消するとさらに便利性が向上する。」(2頁右上欄12行?左下欄3行) 《発明の目的》として (2e)「この発明は、携帯機側…に設けられた所定の操作子を操作した場合には、起動スイッチを操作することなくドアロックの解錠あるいはトランクロックの解錠を可能とし、前述した便利性の向上を実現することを目的とする。」(2頁左下欄11?15行) 《発明の構成》として (2f)「第1図(A)は、第1の発明の構成を示すクレーム対応図である。 同図において、携帯機100は、所定の操作子101を備え、この操作子101の操作に応答して、以後固有コード信号を繰り返し無線送信する。 車載受信機102は、常時受信待機状態に設定され、かつ携帯機100が、車両ドア、トランク等の開閉体に接近したときに限り、携帯機100からの固有コード信号を受信することができる。 コード照合手段103は、受信された携帯機100側の固有コードを、予め設定された車体側固有コードと照合する。 解錠制御手段104は、コード照合手段103で両コードの一致が照合されるのに応答して、開閉体の錠機構を解錠する。」(2頁左下欄17行?右下欄11行) 《実施例の説明》として (2g)「第2図は、第1の発明の一実施例における携帯機の構成を示す回路図、第3図は、同車体側制御装置の構成を示す回路図である。 携帯機30は、…運転者が従来の機械式キーとともに携帯する。また、携帯機30の外面所定位置にはタイマスイッチ…18が設けられている。 携帯機30は、受信用ループアンテナ1と送信用ループアンテナ2とを備えており、…」(3頁左上欄12行?右上欄2行) (2h)「また、マイクロコンピュータ8には、固有コード記憶回路9が接続されており、この固有コード記憶回路9は、…固有コードデータをマイクロコンピュータ8へ供給する。 さらに、マイクロコンピュータ8は、前記固有コードデータをシリアルなパルス列信号として出力する動作を行ない、この固有コード信号dは、…送信用ループアンテナ2へ供給される。 タイマスイッチ18は、携帯機30の外面所定位置に設けられた押釦スイッチであり…、このスイッチがON操作されると、時定数回路19、インバータ20を介し“H”レベルのタイマ信号eがマイクロコンピュータ8に供給される。」(3頁右上欄14行?左下欄10行) (2i)「一方、車載機40は、第3図に示す如く、マイクロコンピュータ(以下、CPU)53を中心として構成されている。… ループアンテナ41a,41bは、各々車体のトランクロックの近傍…に所定間隔をおいて配置されている。 他の一対のループアンテナ41c,41dは、第16図に示すように、運転席側ドア近傍に配置され…設けられている。」(3頁左下欄14行?右下欄7行) (2j)「キースイッチ59は、イグニッションキーシリンダ内にキーが挿入された状態でONとなり、キーを抜き取った状態でOFFとなるスイッチである。」(4頁左上欄8?11行) (2k)「第4図は、第1の発明の一実施例における携帯機30内のマイクロコンピュータ8で実行される処理内容を示すフローチャート、第5図?第8図は、同車載機40内のCPU53で実行される処理内容を示すフローチャートである。 第4図のフローチャートが開始…されると、まずステップ(400)のイニシャル処理でフラグFが”0”にリセットされる。… 次いで、信号受信か否かが判定され(ステップ401)、信号受信なしの場合には、ステップ(405)へ進んで、タイマスイッチが“H”か否かが判定される。 タイマスイッチ18が“H”の場合、すなわちタイマ所定時間経過前であれば、次いでフラグFが“0”か否かが判定され(ステップ406)フラグFが“0”であれば、固有コード信号を1回送信する処理が実行される(ステップ407)。… 固有コード信号が送信されると、マイクロコンピュータ8内のタイマがスタートし、タイマ時間T経過後に再びステップ(401)へ戻り、上述した処理が繰り返される。」(4頁右上欄20行?右下欄9行) (2l)「一方、第5図に示す車載機40側のメインルーチンにおいて、イグニッションキーが抜き取られる(ステップ500)と、以後受信待機状態となり、この状態では、変調器49,発振器50等で構成される送信系回路を除いて、すべての回路が作動状態となっている。 また、この状態では、CPU53からアンテナ切換信号S_(1)が常時、切換回路46a,46bに供給されており、受信アンテナをドアロック制御用アンテナ41a,41b側…へ切換えて、固有コード信号の受信待機をしている。 まず、ステップ(501)で、受信アンテナがドアロック制御アンテナ41a、41b側へセットされ、固有コード信号の受信可否が判定される(ステップ502)。… 固有コード信号が受信されると、マルチブレクサ69から車体側の固有コードが読込まれ、受信固有コードとの照合が成される(ステップ507,508)。 両コードが一致しない場合は、携帯機30がこの車両と一致しないため、施解錠制御が行なわれない。 一方、両コードが“一致”と判定されると、次いでフラグF2の内容が“0”か“1”かが判定される。 フラグF2が“0”でかつドアロック施錠状態であれば(ステップ510の判別結果がYES)、ステップ(511)へ進み、ドアロック解錠処理がなされ、ドアロックは解錠される。 これは、CPU53からドアロック解錠信号S_(6)が出力され、これにより、…リレー67が作動し、施解錠用モータを正転させて解錠する処理である。」(4頁右下欄13行?5頁右上欄12行) (2m)「このように、この発明においては、携帯機30のタイマスイッチ18をONすることによって、以後、間欠的に繰り返し固有コード信号が送信されるため…携帯機30の所持者が車両ドアあるいはトランクロックに近付くだけで自動的にロック解錠がなされるのである。」(5頁左下欄4?10行) (2n)「また、前記メインルーチンが実行されている間に、スイッチ57?64の何れかが操作されると、その都度車載機40側では、第6図以下に示す割込処理がなされる。」(5頁右下欄1?4行) (2o)「第8図のサブルーチンが開始されると、まずイグニッションキーが抜き取られているか否かが判定され(ステップ800)、キーが挿入中であれば運転者が乗車中であるとし、以下の施解錠処理は行われない。」(5頁右下欄17行?6頁左上欄1行) (2p)第2図には、マイクロコンピュータ8等に+3Vの電圧が印加されることが記載され、携帯機に電源が内蔵されていることが示されている。 (2q)第5図には、メインルーチンにおいて、ステップ500でイグニッションキーが抜出されていないことが判別された場合、リターンすることが示されている。 刊行物2記載の車載受信機40が車載バッテリを電源としていることは自明であるから、上記記載事項並びに図面に示された内容を総合すると、刊行物2には次の発明が記載されていると認められる。 「タイマスイッチ18(操作子)を有し、電源が内蔵されていて、前記タイマスイッチ18が操作されると予め定められた固有コード信号を送信する携帯機30と、 自動車に搭載され、車載バッテリから電源を供給されて、前記携帯機30から送信される固有コード信号を受信して、ドアロックアクチュエータ等を制御する車載受信機40とを備える車両用無線式解錠制御装置において、 イグニッションキーがキーシリンダに挿入されていることを検出するキースイッチ59と、 このキースイッチ59が、イグニッションキーがキーシリンダに挿入されていることを検出すると、前記タイマスイッチ18を押して前記携帯機30が固有コード信号を送信しても、前記車載受信機40による前記車両用無線式解錠制御装置の作動を禁止する禁止手段とを備える車両用無線式解錠制御装置。」 (3)同じく、特開昭61-221475号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (3a)「(1)運転者が携帯する送信器から発信される解錠コード信号を受信する受信部と、該解錠コード信号が受信されたかどうかを判別するコード判別部と、コード判別部出力にてトラツクの荷台のドアロツク用電気錠の解錠を制御する解錠制御部とよりなるドアロツク解錠装置において、トラツクが運転状態にあるかどうかを検出する運転検出手段を設けるとともに、運転検出信号が得られたとき解錠動作を停止させて電気錠を施錠状態に保持せしめる解錠阻止手段を設けたことを特徴とするトラツクの荷台のドアロツク解錠装置。」(特許請求の範囲) (3b)「このような従来例にあつては、トラツク(A)が運転状態のときに、送信器(1)が動作状態になつていると、送信器(1)から発せられる解錠コード信号が常に受信部(2)にて受信され、ドア(7)の電気錠(5)が解錠されたままトラツク(A)が運転されることになり、走行中の安全性に問題があつた。」(1頁右下欄16行?2頁左上欄2行) (3c)「〔発明の目的〕 本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、トラツクが運転状態のときに荷台のドアロツクが解錠されることがなく、走行中の安全性を高くすることができるトラツクの荷台のドアロツク装置を提供することにある。」(2頁左上欄3?9行) (3d)「運転検出手段(8)は、例えば、第2図に示すようにエンジンキー(10)の位置を検出して運転状態であるか否かを判別する」(2頁左上欄18?20行) 2.対比・判断 (1)訂正発明1について 訂正発明1と刊行物1記載の発明とを対比すると、その機能ないし構造から見て、刊行物1記載の発明における「イグニツシヨンキー30」、「キーケース」、「操作ボタン16a」、「キーコード」、「電波送信部70」、「ドアロック装置」、「車両用遠隔解施錠装置」は、それぞれ訂正発明1における「キープレート」、「つまみ部」、「送信スイッチ」、「コード信号」、「送信機」、「ドアロックアクチュエータ」、「無線式ドアロック制御装置」に相当する。 そうすると、両者は、 「キーシリンダに挿入され、各種機器を作動させるキープレートと、 このキープレートの一端に設けられ、このキープレートを操作するためのつまみ部と、 このつまみ部に設けられる送信スイッチと、 前記つまみ部に内蔵される電池と、 前記つまみ部に内蔵され前記送信スイッチが操作されると前記電池を電源として予め定められたコード信号を送信する送信機と、 前記送信機から送信されるコード信号を受信して、ドアロックアクチュエータを制御する受信機とを備える無線式ドアロック制御装置。」 である点で一致し、次の点で相違する。 相違点:訂正発明1が、「送信スイッチが設けられたつまみ部が操作されてキープレートがキーシリンダに挿入されているとき所定の検出信号を発生する検出手段」と「この検出手段が検出信号を発生すると、キーシリンダに挿入されたキーの一端の前記つまみ部を操作する時、前記送信スイッチを押して送信機が電池を電源として前記コード信号を送信しても、車載バッテリを電源とする受信機による無線式ドアロック制御装置の作動を禁止する禁止手段」とを備えるのに対して、刊行物1記載の発明はこのような検出手段及び作用手段を備えていない点。 上記相違点について検討する。 刊行物2には、訂正発明1、刊行物1記載の発明と同様に、固有コード信号を受信してドアロックアクチュエータ等を制御する無線式解錠制御装置に関する発明が記載されており、刊行物2記載の発明における「携帯機30」と訂正発明1の「送信機」とは、「コード送信装置」である点で共通し、刊行物2記載の発明の「イグニッションキー」、「タイマスイッチ(操作子)18」、「携帯機から送信される固有コード信号を受信して、ドアロックアクチュエータ等を制御する車載受信機40」、「車両用無線式解錠制御装置」は、それぞれ訂正発明1の「キープレート」、「送信スイッチ」、「送信機から送信されるコード信号を受信して、ドアロックアクチュエータを制御する受信機」、「受信機を備える無線式ドアロック制御装置」に相当する。 また、刊行物2記載の発明の「イグニッションキー」は、つまみ部を持ってキーシリンダに挿入するものであることは明らかである。 そうすると、刊行物2記載の発明の「イグニッションキーがキーシリンダに挿入されていることを検出するキースイッチ59」、「このキースイッチが、イグニッションキーがキーシリンダに挿入されていることを検出すると、タイマスイッチを押して携帯機が固有コード信号を送信しても、車載受信機による車両用無線式解錠制御装置の作動を禁止する禁止手段」は、それぞれ、訂正発明1の「つまみ部が操作されてキープレートがキーシリンダに挿入されているとき所定の検出信号を発生する検出手段」、「この検出手段が検出信号を発生すると、送信スイッチを押して送信機が電池を電源としてコード信号を送信しても、車載バッテリを電源とする受信機による無線式ドアロック制御装置の作動を禁止する禁止手段」に相当する。 刊行物2記載の発明は、イグニッションキーと携帯機が別体であるため、キーシリンダに挿入されたキーの一端のつまみ部を操作する時、送信スイッチを押すおそれはないが、一般に、スイッチが露出して設けられている場合、意図しない接触等により、スイッチの誤操作が生じ得ることは、経験則上明らかな事項であり、例えば、実願昭58-110621号(実開昭60-17863号)のマイクロフィルム及び実願昭58-112117(実開昭60-19649号)のマイクロフィルムに、イグニッションキーなどに発光素子を取り付けた照明付キーにおいて、操作ボタンがつまみ部の平面部分に位置するため、誤って操作ボタンを押下する場合が多いことが問題点として指摘されていることからも、明らかである。 したがって、露出して設けられているスイッチによって施錠したり解錠したりする構造のものにおいては、スイッチの無意識的な誤操作によりロックが解除されるという事態が起こり得ることは、技術常識というべきであり、その対策が、当該技術における当然の技術課題となることは明らかである。 また、刊行物3には「このような従来例にあつては、トラツク(A)が運転状態のときに、送信器(1)が動作状態になつていると、送信器(1)から発せられる解錠コード信号が常に受信部(2)にて受信され、ドア(7)の電気錠(5)が解錠されたままトラツク(A)が運転されることになり、走行中の安全性に問題があった。」(記載事項(3b)))との記載があり、送信器(1)から発せられる解錠コード信号によりドアの解錠を行うものにおいて、運転者が意図しないときに、送信器(1)が動作状態になつて、ロックが解除された状態となることが起こり得るという技術常識を前提に、この課題をどのように解決するかを問題としていることが認められる。 なお、請求人は、刊行物3の送信器にはスイッチが無い旨主張するが(意見書9頁18?31行)、刊行物3には「送信器(1)が動作状態になつていると」との記載があり、送信器(1)は、動作状態と非動作状態の切り換え可能なものといえる。 上記技術常識を勘案すると、刊行物1記載の発明において、イグニッションキーを携帯する使用者がその操作ボタンを誤操作して、解錠のための起因となるべき信号が発信されるという不具合が存在し、スイッチの無意識的な誤操作によりロックが解除されるという事態が起こり得ることは、技術常識というべきであり、その対策が、当該技術における当然の技術課題となることは明らかである。 一方、刊行物2記載の発明は、携帯機のスイッチからの送信によって施錠したり解錠したりする構造のものにおいては、携帯機のスイッチの無意識的な誤操作によりロックが解除された状態となることが起こり得るという技術常識を前提にしており、そのための対策として、携帯機と機械式キーを携帯した運転者が、イグニッションキーをキーシリンダに挿入することで、ドアロック等の車体所定部位の錠の施錠・解錠を、意識的に禁止する技術を示しているものであり、運転者が意図しないときに、スイッチの無意識的な誤操作によりロックが解除された状態となることが起こるとの課題に対する解決策を提供するものである。 そうすると、刊行物1記載の発明と刊行物2記載の発明とは、いずれも、車両のドアロックの施錠・解錠を、無線を利用して行うというものであって、技術分野を共通にしており、また、スイッチの誤操作による解錠を防ぐという技術課題も共通しているから、刊行物1記載の発明において、キーシリンダに挿入されたキーの一端のつまみ部を操作する時、送信スイッチを誤って押してしまうとの技術課題を解決するために、刊行物2記載の発明を適用し、つまみ部を操作する時に送信スイッチを押して送信機がコード信号を送信しても、受信機による無線式ドアロック制御装置の作動を禁止するように構成することは当業者が容易に想到しうることである。 なお、請求人は、意見書において、「訂正により明確になった本件発明は、キープレートをキーシリンダに挿入された状態でつまみ部を操作したときに、つまみ部に設けられた送信スイッチを誤って押しても送信機を作動させないようにしたものである。」旨主張するが、訂正発明1は、送信スイッチを誤って押しても受信機による無線式ドアロック制御装置の作動を禁止するものであって、送信機を作動させないようにしたものではない。 そして、訂正発明1の作用効果である、つまみ部を操作する時送信スイッチを押して送信機がコード信号を送信しても、受信機による無線式ドアロック制御装置の作動を禁止することができるとの効果は、刊行物1及び2記載の発明から予測することができるものである。 したがって、訂正発明1は、刊行物1、2に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)訂正発明2について 訂正発明2は、訂正発明1において、「禁止手段」が「受信機の作動を禁止する」ものに限定した発明であり、本件訂正明細書には、「受信機の作動を禁止する」手段として、「キースイッチと電源スイッチを連動させて、キープレートを検出すると、受信機の電源をカットする」(訂正明細書6頁7?9行)と記載されている。 刊行物2には、上記(1)で述べたとおり、イグニッションキーをキーシリンダに挿入すると、受信機による無線式ドアロック制御装置の作動を禁止する技術が記載されている。 刊行物2には、無線式ドアロック制御装置の作動を禁止する具体的な手段としては、キーが挿入されている(抜き出されていない)状態を検出するとメインルーチンをリターンすることが記載されているだけであるが(記載事項(2q))、受信機による無線式ドアロック制御装置の作動を禁止する手段として、受信機の電源をカットすることは当業者が適宜なしうることである。 したがって、訂正発明2は、刊行物1、2に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.独立特許要件についての判断のむすび 以上のとおり、訂正発明1及び2は、刊行物1、2に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 第4 むすび 以上のとおり、本件審判の請求は、平成6年改正前特許法第126条第1項ただし書各号のいずれにも該当しないか、あるいは同条第2項の規定に適合しない。 また、本件訂正発明1及び2は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件審判の請求は、同法第126条第3項の規定に適合しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-05-23 |
結審通知日 | 2008-05-28 |
審決日 | 2008-06-11 |
出願番号 | 特願昭61-250209 |
審決分類 |
P
1
41・
853-
Z
(E05B)
P 1 41・ 851- Z (E05B) P 1 41・ 121- Z (E05B) P 1 41・ 856- Z (E05B) P 1 41・ 855- Z (E05B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鉄 豊郎 |
特許庁審判長 |
山口 由木 |
特許庁審判官 |
家田 政明 砂川 充 伊波 猛 岡田 孝博 |
登録日 | 1998-02-27 |
登録番号 | 特許第2135142号(P2135142) |
発明の名称 | 無線式ドアロツク制御装置 |
代理人 | 碓氷 裕彦 |
代理人 | 伊藤 高順 |