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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) F16L
管理番号 1193737
判定請求番号 判定2008-600042  
総通号数 112 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2009-04-24 
種別 判定 
判定請求日 2008-09-22 
確定日 2009-03-05 
事件の表示 上記当事者間の特許第2650176号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 イ号図面,イ号写真及びその説明書に示す「配管結合装置」は,特許第2650176号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 1.請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は,イ号図面,イ号写真及びその説明書に示す配管結合装置(以下「イ号物件」という。)は,特許第2650176号発明の技術的範囲に属する,との判定を求めるものである。

2.本件特許発明
本件特許の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)を構成要件に分説すると,次のとおりのものと認める。
「(a)一方の配管の端部に形成され,内側に設けられた環状平面部と該環状平面部より先端側で円周方向に沿って配設された複数のスリットとを有する拡管部と,
(b)他方の配管の端部に形成され,該拡管部の内側に挿入される先端直管部と,
(c)該先端直管部の付根部に外側に膨出して形成され,前記環状平面部に当接する環状の屈曲膨出部と,
(d)該拡管部と該直管部との間に圧縮状態で介装される環状シール材とを備え,
(e)他方の配管の端部を一方の配管の該拡管部に挿入した状態で,各スリットの先端側の拡管部をかしめて内側へ折り込み,
(f)該スリットの側壁部を該屈曲膨出部の側面に係止させて両配管が結合された
(g)ことを特徴とする配管結合装置。」

なお,請求項1の(a)には,「一方の端部」と記載されているが,これは以下の理由により,「一方の配管の端部」の誤記と認め,請求項1に係る発明を上記のように認定した。すなわち,請求項1の(e)に「一方の配管の該拡管部に・・」との記載があること,(f)に「両配管が結合された」と記載されていること,明細書及び図面の全体を参酌すると,「拡管部」が形成されるのは「配管の端部」であると解されること等から,「一方の端部」は「一方の配管の端部」の誤記であることが明らかである。

3.イ号物件
これに対し,イ号図面,イ号写真及びその説明書の記載によれば,イ号物件の構成を本件発明の構成要件の分説と対応するよう分説すると,次のとおりのものと認められる。
「(A)暖房用熱交換器のタンクに設けられた口金の端部に形成され,内側に設けられた環状平面部と該環状平面部より先端側で円周方向に沿って配設された複数のスリットとを有する拡管部と,
(B)パイプの端部に形成され,該拡管部の内側に挿入される先端直管部と,
(C)該先端直管部の付根部に外側に膨出して形成され,前記環状平面部に当接する環状の屈曲膨出部と,
(D)該拡管部と該直管部との間に圧縮状態で介装されるOリングとを備え,
(E)パイプの端部を該口金の該拡管部に挿入した状態で,各スリットの先端側の拡管部をかしめて内側へ折り込み,
(F)該スリットの側壁部を該屈曲膨出部の側面に係止させてパイプと口金とが結合された
(G)ことを特徴とするパイプと口金の結合装置。」

4.対比・判断
(1)構成要件(a)について
本件発明の構成要件(a)とイ号物件の構成(A)とを対比すると,構成要件(a)の「一方の配管の端部」と構成(A)の「暖房用熱交換器のタンクに設けられた口金の端部」とが文言上相違し,それ以外は一致している。
そして,構成(A)の「暖房用熱交換器のタンク」は「口金」の設置場所を特定するものであるから,構成要件(a)の「一方の配管」と対比されるべきものは「口金」である。
そこで,構成要件(a)の「一方の配管」と構成(A)の「口金」との異同について検討する。
(ア)「配管」について
「配管」の意味について,本件特許明細書には特段の定義は記載されていないから,普通の意味のものとして解すべきである。
「配管」とは一般的に「流体を導くための管やパイプのシステム」(マグローヒル科学技術用語大辞典,改訂第3版)等を表す用語である。すなわち,少なくとも(1)「流体を導く」機能を有し,かつ(2)「管」であることを要すると解される。
また,「管」とは,「円く細長く,中のうつろなもの」(広辞苑)や,「中空部を有する長い円筒状物体,とくに流体の輸送に用いられる」(マグローヒル科学技術用語大辞典,改訂第3版)等を意味するものと解される。
(イ)「口金」との異同について
これに対し,「口金」とは一般的に「器物の口にはめる金具」(広辞苑第5版)等を表す用語である。
また,イ号物件の「口金」は,(1)タンクとパイプとを接続するための接続具であって,流体を導くものとはいえないし,(2)イ号写真等によれば,最小直径より軸方向長さが短く,細長い形状とはいえないから,「管」ともいい難い。
したがって,イ号物件の「口金」は,「配管」ということはできない。
そうすると,イ号物件の「口金」は,構成要件(a)の「一方の配管」とは別異のものというべきである。
したがって,構成(A)は構成要件(a)を充足しない。
(ウ)請求人の主張について
請求人は,(α)イ号物件においては,口金(3)とパイプ(11)は,タンク(2)とパイプ(11)間で流体が流通する状態を維持しながら結合している。これは,口金(3)が流体を導く機能を有しているから実現できるものである。なぜなら,口金(3)に流体を導く機能がなければ,口金(3)で流体の流れが遮断され,タンクとパイプ間で流体が流通しないからである。
(β)暖房用熱交換器を含む熱交換器に関して,そのタンク部に設けられ外部との間で流体の流出入を許容する筒状の部位を「配管」と称することは,当業者が用いる技術用語として出願前から現在に至るまで本件特許発明の属する技術分野において通常認識されている,例えば,特開昭63-96495号公報,実開平1-157963号公報,特開平5-1893号公報,特開平5-26539号公報,特開2006-17276号公報等に示されている。
(γ)本件発明の実施例の「下流側の配管2」とイ号物件の「口金3」とを対比すると,(1)拡管されている段数が異なる点,(2)上流側の配管1と下流側の配管2とが下流側の配管2の拡管部で重なるのに対し,イ号物件ではパイプ11と口金3とが口金3の略全範囲で重なる点で相違するが,いずれの点も,本件発明の請求項1には限定のない構成であるから相違点にならないし,作用効果の点で差異を生じるものでもない旨主張する。
しかし,(α’)口金が流体の流れを遮断しないことと,流体を導く機能を有することとは同義ではない。流体を導くためには,案内面が必要であるが,口金(3)は,流体を導くための案内面を有しているとはいえない。すなわち,口金(3)の内面は,タンク(2)とパイプ(11)とを接続するための構造を有するものであり,直接流体を導くことを想定して作られたものではない。したがって,口金(3)は,流体を導く機能を有しているとはいえない。
また,(β’)請求人が提示した上記の各文献に記載される「配管」は,いずれもその内部に流体を案内する機能を有するものであり,イ号物件の「口金」とは機能・構造が相違するから,請求人の上記主張は採用できない。
さらに,(γ’)請求人が主張する本件発明の実施例とイ号物件との構成上の差異は,そもそも被請求人も主張していないものであり,この点の判断がイ号物件の「口金」と本件発明の「配管」との異同の判断に影響するものではない。また,「口金」と「配管」との異同は,両者の機能,構造を考慮して判断すべきであり,単に作用効果の差異がないことをもって同一のものということはできない。
したがって,請求人の上記主張はいずれも採用できない。

(2)構成要件(b)について
本件発明の構成要件(b)とイ号物件の構成(B)とを対比すると,構成(B)の「パイプ」は「管」ということもできるから,構成要件(b)の「他方の配管」と実質的に同一である。
したがって,構成(B)は構成要件(b)を充足する。

(3)構成要件(c)について
本件発明の構成要件(c)とイ号物件の構成(C)とを対比すると,両者は文言上一致する。
したがって,構成(C)は構成要件(c)を充足する。

(4)構成要件(d)について
本件発明の構成要件(d)とイ号物件の構成(D)とを対比すると,構成(D)の「Oリング」は「断面がO形(円形)の環型をした密封用(シール用)機械部品」であり,構成要件(d)の「環状シール材」と実質的に同一である。
したがって,構成(D)は構成要件(d)を充足する。

(5)構成要件(e)について
本件発明の構成要件(e)とイ号物件の構成(E)とを対比すると,構成(E)の「パイプ」が構成要件(e)の「他方の配管」に相当することは,上記(2)で検討したとおりである。
また,構成(E)の「口金」は,構成要件(e)の「一方の配管」とは別異のものであることは,上記(1)で検討したとおりである。
したがって,構成(E)は構成要件(e)を充足しない。

(6)構成要件(f)について
本件発明の構成要件(f)とイ号物件の構成(F)とを対比すると,構成要件(f)の「両配管」とは「一方の配管と他方の配管」を意味することが明らかであるところ,構成(F)の「口金」が構成要件(f)の「一方の配管」とは別異のものであることは,上記(1)で検討したとおりである。
したがって,構成(F)は構成要件(f)を充足しない。

(7)構成要件(g)について
本件発明の構成要件(g)とイ号物件の構成(G)とを対比すると,構成要件(g)の「配管」は「一方の配管と他方の配管」を意味することが明らかであるところ,構成(G)の「口金」が構成要件(g)の「一方の配管」とは別異のものであることは,上記(1)で検討したとおりである。
したがって,構成(G)は構成要件(g)を充足しない。

(8)まとめ
以上のとおりであるから,イ号物件の構成(A)(E)(F)(G)は,それぞれ本件発明の構成要件(a)(e)(f)(g)を充足しない。
したがって,イ号物件は,本件発明の技術的範囲に属しない。

5.むすび
以上のとおりであるから,イ号物件は,本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって,結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2009-02-23 
出願番号 特願平4-222992
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小菅 一弘谷口 耕之助  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 米山 毅
田良島 潔
登録日 1997-05-16 
登録番号 特許第2650176号(P2650176)
発明の名称 配管結合装置及び配管結合方法  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 永井 聡  
代理人 井口 亮祉  
代理人 窪田 卓美  

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