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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B21D
審判 全部無効 2項進歩性  B21D
管理番号 1194174
審判番号 無効2008-800142  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-08-01 
確定日 2009-02-27 
事件の表示 上記当事者間の特許第3400767号発明「鋼管曲げ加工装置及び方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3400767号の請求項1ないし4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
平成12年 2月28日 本件出願
平成15年 2月21日 設定登録(特許第3400767号)
平成20年 8月 1日 無効審判請求
平成20年 9月10日 手続補正書
平成20年11月17日 答弁書
平成20年12月19日 両者・口頭審理陳述要領書
平成21年 1月 9日 口頭審理

第2.本件発明
本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下「本件発明1ないし4」という。)は、以下のとおりである。
ただし、請求項1の「前記相対移動速度」は、「鋼管の軸線方向へ相対移動させる移動手段」の相対移動速度のことである(口頭審理調書「被請求人 3」参照)。

【請求項1】 鋼管の周囲をその軸線を中心軸として環状に加熱する加熱手段と、加熱手段による環状加熱部を鋼管の軸線を中心軸として環状に冷却する冷却手段と、鋼管の偏心軸線上に設定した、前記環状加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与する引張り力付与手段と、前記鋼管と加熱手段と冷却手段とを鋼管の軸線方向へ相対移動させる移動手段とよりなる鋼管曲げ加工装置において、前記引張り力を可変する引張力可変手段と、前記相対移動速度を制御する移動速度制御手段とを設けたことを特徴とする鋼管曲げ加工装置。
【請求項2】 鋼管の周囲をその軸線を中心軸として環状に加熱する加熱手段と、加熱手段による環状加熱部を鋼管の軸線を中心軸として環状に冷却する冷却手段と、鋼管の偏心軸線上に設定した、前記環状加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与する引張り力付与手段と、前記鋼管と加熱手段と冷却手段とを鋼管の軸線方向へ相対移動させる移動手段とよりなる鋼管曲げ加工装置において、前記引張り力を可変する引張力可変手段と、前記相対移動速度を制御する移動速度制御手段と、逐次段階的に行う鋼管の曲げ加工における各段階の予め設定した計画曲げ量を基準として、実際の曲げ加工を行ったときの前記各段階における実行曲げ量を測定する曲げ量測定手段とを設けたことを特徴とする鋼管曲げ加工装置。
【請求項3】 鋼管の周囲にその軸線を中心軸とする環状の局部加熱部を形成し、この局部加熱部と鋼管をその軸線方向へ相対移動させながら、鋼管の偏心軸線上に設定した、前記局部加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与することにより鋼管の曲げ加工をする際に、前記引張り力と、前記局部加熱部と鋼管の相対移動速度を制御することを特徴とする鋼管曲げ加工方法。
【請求項4】 鋼管の周囲にその軸線を中心軸とする環状の局部加熱部を形成し、この局部加熱部と鋼管をその軸線方向へ相対移動させながら、鋼管の偏心軸線上に設定した、前記局部加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与することにより鋼管の曲げ加工をする際に、逐次段階的に行う鋼管の曲げ加工における各段階の予め設定した計画曲げ量を基準として前記各段階における実行曲げ量を測定し、その実行曲げ量の計画曲げ量を基準とする変位量に応じて、前記引張り力と、前記局部加熱部と鋼管の相対移動速度を制御することを特徴とする鋼管曲げ加工方法。」

第3.請求人の主張
請求人は、本件発明1ないし4を無効とするとの審決を求めている。
その理由の概要は、第1に、本件発明1ないし4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、第2に、本件発明1ないし4は不明確であり、特許法第36条第4項又は第6項第2号に規定する要件を満たしていない、第3に、本件発明1ないし4の特許を受ける権利は共有に係り、本件特許出願は特許法第38条の規定に違反してされたものであるから、無効とすべきである、というものである。
これら理由のうち、甲第11ないし13号証(枝番を含む)に基づく特許法第29条第2項の主張、及び特許法第38条の主張(甲第2ないし10号証)は、口頭審理において取り下げられた(口頭審理調書「請求人 3」参照)。

したがって、請求人の主張する無効理由は、以下のとおりである。
理由1:日本国内において頒布された刊行物である甲15号証(特開2000-15350号公報)、及び甲16号証(特開昭54-128970号公報)に記載された発明に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができるものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由2:本件特許出願は、特許法第36条第4項又は第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
具体的には、以下に摘記したとおりである。なお、本審決において、原文の丸囲み数字は「丸1」のように置き換えた。

ア.請求書第9ページ第8行?第10ページ第26行
「丸1 甲15号証には、特許請求の範囲に、
『鋼管の周囲をその軸線を中心軸として環状に加熱する加熱手段と、加熱手段による環状加熱部を鋼管の軸線を中心軸として環状に冷却する冷却手段と、鋼管の偏心軸線上に設定した前記環状加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与する引張り力付与手段と、前記鋼管と加熱手段と冷却手段とを鋼管の軸線方向へ相対移動させる駆動手段とよりなることを特徴とする鋼管曲げ加工装置。』
が記載されている(請求項1、図1)。
また、この甲15号証には、
『加熱コイル10の温度と駆動装置22の移動と冷却水12の温度及び量と油圧シリンダ25aの油圧の制御は、図外の制御手段によってなされる。』
旨が開示されている(段落番号0045、0055、63)。
さらに、作用効果について、甲15号証には、『鋼管の曲げ加工による伸びを抑え、鋼管の減肉を抑制することができる』点、及び『装置が小型、軽量になり、装置の施工現場への運搬、据え付けが容易になる。このため、工事の進行、設計変更に即応した効率のよい鋼管の曲げ加工が可能になる。』点が開示されている。
丸2 一方、甲16号証には、
金属条材31の周囲をその軸線を中心軸として環状に加熱する加熱装置43と、
金属条材31の偏心軸線上に設定した、環状の加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与する油圧シリンダ39と、
前記金属条材31と加熱装置43とを金属条材31の軸線方向へ相対移動させる台車50と
が開示されている(コラム25?26、コラム29、及び第5図?第8図)。
なお、甲16号証には、環状の加熱装置を冷熱兼用に構成する点も開示されている(コラム21)。
また、甲16号証では、加熱装置50の移動手段を構成するねじ52は、速度を任意に制御できる駆動装置により回転させられ、加熱装置の相対移動速度を制御する点、また、油圧シリンダ39による引張装置も引張速度を任意に制御し、引張力を可変する駆動手段によって駆動されるようにする点にも言及している(コラム29)。
さらに、甲16号証には、実際の曲げ加工を行ったときの各段階における曲げ半径の円弧の長さSとθを測定し、この測定値を引張速度dL/dtにフィードバックして、引張速度を修正する点、プログラムによって各段階の予め設定されたプログラム値と、測定値とが一致するように相対速度や引張速度を制御する点も開示されている(コラム32?33)。
発明の作用効果についても、甲16号証には、圧縮によって曲げ外側の減肉を防止できる点、装置の機械重量を軽減し、可搬式にも構成できる点についても言及している(コラム45、46)。また、この甲16号証には、曲げ半径の円弧の長さや角度をフィードバックしながら加熱装置の相対速度や引張速度を修正することによって、精度の高い平均半径を得られる点にも言及している(コラム33)。」

イ.請求書第20ページ下から8行?第22ページ第16行
「丸1 本件特許の請求項1に係る鋼管曲げ加工装置では、
『鋼管の偏心軸線上に設定した前記環状加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与する引張り力付与手段』
とあり、また、請求項3に係る鋼管曲げ加工方法では、
『鋼管の偏心軸線上に設定した、前記局部加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与することにより鋼管の曲げ加工をする』
とある。
しかしながら、「鋼管の偏心軸」がいずれに位置するのかが不明であるため、これによって定義されている「偏心軸線上に設定した環状の環状加熱部(局部加熱部)」及び「環状加熱部を挟んでその両側の力の作用点」がいずれに位置するのかが不明である。
丸2 一般的に「偏心軸」を解するのであれば、鋼管の中心軸線から外れた軸線である。曲げモーメントを、作用点の間に引張力を付与することにより加えるとあることからも、偏心軸の両端点(作用点)が、鋼管の中心軸線から、偏心距離分だけ離れて(ずれている)いることは明らかである。このとき、鋼管が曲げられる前の状態であれば、その中心軸線は直線であり、偏心軸も直線である。
丸3 また、被請求人は、本特許の出願審査において、拒絶理由に対する意見書(甲17号証)で、引用文献との比較のために、本発明の特徴とするところは、「鋼管の偏心軸線上に設定した力の作用点の間に付与する引張力を制御する」点にあるとし、本発明では、力の作用点が鋼管の内部に設定されている旨、主張している(意見書第1頁(2))。
丸4 ところが、鋼管の曲げ加工が進行すると、前述した説明図に示すように、鋼管が湾曲され、その中心軸線も曲線を描くこととなる。
この場合、中心軸線と偏心軸との関係が不明確となり、さらには、偏心軸と局部加熱部との関係も不明確となる。すなわち、本件特許発明では、「偏心軸線上に設定した環状の環状加熱部」とあるが、鋼管の曲げが進行すると、偏心軸が直線であるか否か、或いは鋼管の内部に限定されるのか否かの解釈如何で、その位置関係に矛盾を生じることとなる。
丸5 作用点の間に引張力を付与することにより曲げモーメントを加えるという目的だけを考えるのであれば、偏心軸は、作用点同士を最短距離で繋いだ直線であってもよいという解釈になり、そうとすれば、前記説明図に示したように、偏心軸は、曲げが進行した鋼管の外に位置してもよいということになる。
この結果、油圧シリンダー等の引張力付与手段は、偏心軸上に位置されることから、鋼管外に配設されてもよいということとなる。
ところが、このように偏心軸を直線と解すると、曲げが進行した鋼管においては、環状加熱部が偏心軸上から外れることとなり、「偏心軸線上に設定した環状の環状加熱部」という特許請求の範囲の記載と矛盾を生じることとなる。
すなわち、環状加熱部(局部加熱部)は、加熱された鋼管の部位を指し示す文言であり、鋼管の外部に存在し得るものではない。逆に言えば、環状加熱部が鋼管の部位であり、それが偏心軸線上に設定されているためには、偏心軸が常に鋼管の内部になければならないこととなる。
このように、偏心軸が常に偏心軸上になければならないと解釈すれば、上記偏心軸は、曲げられた鋼管の中心軸と同様に、鋼管の曲げに沿って湾曲していなければならないことを意味する。
この結果、油圧シリンダーやワイヤー等の引張力付与手段は、鋼管の内壁面に沿って湾曲した偏心軸上に位置されることから、偏心軸が鋼管の曲げに沿って湾曲するものであれば、引張力付与手段も常に鋼管内に配設されなければならないこととなる。
丸6 いずれにしても、その根拠となる記載が本件明細書には見あたらず、本件発明は、依然として不明確であると言わざるを得ない。」

ウ.口頭審理陳述要領書第3ページ下から4行?第4ページ第6行
「丸1 要するに被請求人は、答弁書において、本請求の[理由2]に関し、
「鋼管の偏心軸」の位置は、『鋼管の偏心軸上に設定した環状加熱部』及び『鋼管1の軸線を通る平面上に設定した偏心軸線』によって明確にされている、としている。
丸2 しかしながら、上記『鋼管1の軸線を通る平面上に設定した偏心軸線』については、現在の特許請求の範囲にその記載がなく、依然として、偏心軸と、鋼管の中心軸線との関係が不明確である。
仮に、発明の詳細な説明にある上記記載を参酌したとしても、「軸線を通る平面」の定義が不明であり、これをもって、偏心軸と、鋼管の中心軸線との関係を特定することは困難である。」

エ.口頭審理調書
「2 被請求人が口頭審理陳述要領書で示した訂正案を採用したとしても、特許法第29条第2項の理由は解消されず、結論に変わりはないから、被請求人に訂正の機会を与える必要はない。
(略)
5 被請求人の主張する「制御内容の差違」、「測定内容の差違」は請求項の記載からは読み取れない。読み取れたとしても容易である。」

第4.被請求人の主張
これに対し、被請求人は、本件審判請求は成り立たないとの審決を求めている。
その理由(当審が平成20年12月12日にファクシミリで送付した「事前連絡メモ」に対する意見を含む)の概要は、以下のとおりである。

ア.答弁書第6ページ下から2行?第7ページ第24行
「甲15号証の請求範囲には,本特許発明の曲げ半径制御装置に関する記述と曲げ半径制御方法の記述は一切ありません。
・9頁27行目?10頁5行目(当審注、対応する請求書の箇所を示し、本項目において同様。)(略)
・10頁15?19行目 「さらに,甲16号証には・・・・点も開示されている」との記述ですが,甲16号証は,「曲げ半径の円弧の長さS(鋼管の曲がり部分の中心軸の軸方向長さ)」の測定が曲げ半径を制御する上で欠くべからざる絶対要件です。これに対して本特許は,「曲げ半径の円弧の長さS」は測定しておらず,本特許は段落【0045】「鋼管の前端部に取り付けた金具と旋回中心点との距離の変化」を測定しますから制御の思想が違います。
・10頁21?22行目「発明の効果についても,甲16号証には,圧縮によって曲げ外側の減肉を防止できる点,・・・・」との請求書記述ですが,甲16号証には制御に関する詳しい理論記述があり,これによると実際には曲げ外側の減肉を防止できないことが理論的に了解できます(後述します)。
本特許は段落【0035】に『鋼管の偏心軸線上に設定した2つの力の作用点の間に引張り力を付与し,鋼管を長さ方向に圧縮するから,鋼管の曲げ加工による減肉を防止することができる』と明記しています。従って発明の効果についても本発明は甲16号証とは全く異なります。
・10頁23?26行目 「甲16号証には,曲げ半径の円弧の長さや角度をフィードバックしながら・・・・」との記述ですが,本特許発明は,「曲げ半径の円弧の長さ」は全く測定しておらず,角度についても甲16号証は角速度(dθ/dt)としての利用をしていますが,本特許は単に角度として利用するだけであって,角速度に換算した利用はしていません。従って,本発明は甲16号証と異なる計測方法と制御方法です。」

イ.答弁書第8ページ第17?20行
「曲げ半径制御を含まない甲15号証に開示された装置と,これに本特許とは全く異なる制御思想の甲16号証と,(略)を組み合わせることはできません。」

ウ.答弁書第9ページ下から15?10行
「・(e-1)本特許は引張り力を可変する引張り力可変手段であって,甲16号証は速度の可変手段ですから,本特許と甲16号証は異なります。
・(e-2)本特許は相対移動速度を制御するのに対して,甲16号証は角速度dθ/dtを制御するものですから,本特許と甲16号証は異なります。
・(j)本特許は相対移動速度を制御するのに対して,甲16号証は角速度dθ/dtを制御するものですから,本特許と甲16号証は異なります。」

エ.答弁書第10ページ第10?16行
「本特許は,段落【0045】「鋼管の前端部に取り付けた金具と旋回中心点との距離の変化」を読み取るのですが,甲16号証は「曲げ半径の円弧の長さ(鋼管の曲がり部分の中心軸の軸方向長さ)」を読み取るという大きな違いがあります。また,本特許は角度についても単に角度として利用しているだけであって,甲16号証のように角速度(dθ/dt)としての利用はしていません。従って本特許は甲16号証と全く違う制御思想ですから構成要件を満たしていません。」

オ.答弁書第14ページ下から4行?第16ページ第16行
「次に,本特許明細書記載の偏心軸線の位置を説明します。
丸1 本特許請求項各項に『鋼管の偏心軸上に設定した環状加熱部』
丸2 本特許段落【0024】に『鋼管1の軸線を通る平面上に設定した偏心軸線』。という2つの文言で偏心軸線の位置を明確に示しています。
(略)
以上により偏心軸線の位置は明瞭ですから,図2で説明します。
(図2略)
前頁図2aの側面図には,1.『鋼管の偏心軸上に設定した環状加熱部』,2.『鋼管1の軸線を通る平面上に設定した偏心軸線』の2つの条件で偏心位置を特定しており,図2aの図はそれら全てが満足してます。そして図2bの図は,2つの条件のうちどれ一つが欠けても全てが満足できなくなることを示しています。また本特許は甲16号証の如き鋼管の両端を把持するクランプを有しておらず,単に挟圧板で鋼管を圧縮しているだけですから,図2bのように,「鋼管の偏心軸上に設定しない環状加熱部」および「鋼管1の軸線を通らない平面上に設定した偏心軸線」という請求人が唱える異説にあっては,引張り力を作用させると挟圧板と鋼管が分離しますので,鋼管に圧縮力が作用しなくなり,曲げることすらできなくなります。
請求人は,このような図2bの例(請求書19頁の図)も,本特許明細の記載事項に合致し得るから本特許は無効である,と主張しておりますが,本特許明細を否定する文言(鋼管の偏心軸上に設定しない環状加熱部」,「鋼管1の軸線を通らない平面上に設定した偏心軸線」)とそれを否定する記述が無いから本特許は不明瞭(否定の否定がなされていないから記載不明瞭)であるという請求人の論理は成り立ちません。」

カ.口頭審理陳述要領書第2ページ第5行?第3ページ第7行
「ア.本特許請求項1発明と甲15発明の相違点1
本特許請求項1発明は「引張り力を可変する引張力可変手段と、前記相対移動速度を制御する移動速度制御手段」が設けられているが,甲15発明はかかる手段を有しない。相違点1の検討において,甲15号においても適切な曲げを行うためには,「引張り力付与手段」,「移動手段」を適切に制御する必要があることは明かである。甲15発明においては,曲率が等しい曲げを行う場合に,その進行に応じ「引張り力」,「移動手段」を適切に制御するものとして,「引張り力可変手段」,「移動速度制御手段」を採用することに困難性は認められない。
とのご見解(当審注、当審が「事前連絡メモ」で示したもの)につきまして。
甲15が曲率制御の機能を有しているとまでは請求項から読み取れません。仮に甲15に「引張り力可変手段」と「移動速度制御手段」を採用したとしても,甲15には曲げ量測定手段が無いので計画曲げ量を基準とした「曲率が等しい曲げ」を実行することができませんから,ランダムな曲率の曲げ加工となる可能性があります。本来,甲15は「曲率が等しい曲げ」を実行するための「引張り力可変手段」,「移動速度制御手段」が備わっていないことによるものです。甲15に無かった曲率制御を本特許において達成するために,甲15の引張り力付与手段には引張り力可変手段を,甲15の相対移動手段には移動速度制御手段を,それぞれ設けたことを特徴としているのが本特許です。
甲15発明の曲げ装置において「引張り力を可変」,「移動速度を可変」するとしても,それは,曲げようとする鋼管の外径や肉厚の大小あるいは材質による変形抵抗の違いに応じて,曲げるに必要十分な引張り力を発生させるための「引張り力可変」であり,加熱装置と冷却装置の能力の大小に応じて曲げるに適正な加熱温度と冷却速度を得るための移動速度を選定するための「移動速度可変」と考えるのが妥当であって,曲率を制御することはできません。しかし本特許は甲15には無かった「引張り力可変手段」と「移動速度制御手段」を持っていますから,本特許請求項2の曲げ量測定手段によって得られた実行曲げ量と計画曲げ量との誤差を知ることにより,「引張り力可変手段」と「移動速度制御手段」を適切に制御して「曲率が等しい曲げ」を実行することができます。従って甲15発明の曲げ装置においては「曲率が等しい曲げ」は困難と考えるのが妥当です。曲げ加工中に「曲率が等しい曲げ」を実行するためには本発明が必要となる所以です。」

キ.口頭審理陳述要領書第3ページ下から11行?第4ページ第18行
「作用効果については,機構が同一である甲15発明が本来有する作用効果にすぎず,かかる作用効果を適切に発揮させるために,甲15発明に対し,適切な制御を行うことは当然のことである。仮に甲16が適用できないとしても,甲15に一般的な「制御手段」を付加することに困難性は認められない。したがって,請求項1発明は,甲15発明,周知技術から容易に発明できたものである。とのご見解(当審注、「事前連絡メモ」で示したもの)につきまして。
先ず,作用効果につきまして,肉厚減少を抑制する作用効果は本特許および甲15は同じですが,曲率を制御する作用効果に関しては本特許にのみ存在し甲15は曲率制御ができません。その理由は前記「曲率が等しい曲げ」を行う場合についての記述でご説明しました。
次に「甲15に一般的な制御手段を付加する」につきまして。「一般的制御手段」としては3つ考えられます。1番目は甲15において引張り力と移動速度を変化させることですが,この場合,曲げ加工中の曲率計測手段がないので計画通りの曲率に曲げられませんから「制御手段」とは言えません。2番目は曲げ半径設定方法として一般に周知の,(甲16もまた同じですが)鋼管の中心軸線から横方向に直角に伸ばした曲げ腕の先端までの長さを曲げ半径として機械的に設定する方法です。曲げ半径に等しい長さの曲げ腕で鋼管の両端を把持し,お互いの曲げ腕の先端を引張ることにより,鋼管が曲げ腕の長さの曲げ半径で曲がるというもので,甲16の第1図がその方法です。鋼管を曲げ半径Rで曲げたいときは,長さがRの曲げ腕で曲げるという方法です。
ところが,本発明および甲15は,曲げ腕を用いない構成ですから,一般的に周知の曲げ半径制御手段である「曲げ腕の長さの曲げ半径で曲げる」という方法は甲15には適用できません。3番目は特願昭46-22744の曲げ半径制御方法で,鋼管の側部を押しローラで加圧して押し曲げることにより曲げる方法に於いて,ローラの押し込み量によって曲げ半径を制御するというものです。しかし本特許は押しローラを用いませんから3番目の方法は本特許に適用できません。
したがって,請求項1発明は,甲15発明および周知技術から容易に発明できません。」

ク.口頭審理陳述要領書第5ページ下から11?2行
「また,本特許と甲16は「曲げ量」そのものに違いがあり,答弁書にも述べましたように両者違う「曲げ量」を計測していますから,甲16の「曲げ量測定手段」を甲15に適用しても本特許とはなりません。請求項の比較において本特許は鋼管内部の力の作用点の引張り力と移動速度を制御することにより曲げ半径を制御するものであるのに対して,甲16号の制御方法は,曲げ管中心軸の軸長さを測定しながら,曲げ腕先端部の引張り速度と移動速度と曲げ角速度を制御することにより曲げ半径を制御しようとするものです。本特許は引張り力であるのに対して甲16号は引張り速度を制御していますから,請求項記載事項の比較においても本特許と甲16号の制御から本特許を容易に想到できるとも思えません。」

ケ.口頭審理陳述要領書第6ページ第14行?第7ページ第14行
「5.2 36条 記載不備
「、」の問題。
甲1号 本特許請求の記載は,
『鋼管の偏心軸線上に設定した、前記環状加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与する引張り力付与手段と,』であります。
甲15号請求の記載は,
『鋼管の偏心軸線上に設定した前記環状加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与する引張り力付与手段と,』であります。
本特許請求には『鋼管の偏心軸線上に設定した、前記環状加熱部・・・・』と,「、」があるのに対して,甲15号請求は「、」がありません。
「、」の有無とその意味の議論において,本特許は甲15号の利用特許であり,制御思想(力の作用点の位置)が同じですから甲15号の「、」のない文言を優先して考えるのが妥当と思われます。
従って「鋼管の偏心軸線上に設定した」は「環状加熱部」および「環状加熱部を挟んでその両側の力の作用点」に掛かりますから,環状加熱部および作用点の位置は鋼管の偏心軸線上に設定されています。
もし「鋼管の偏心軸線上に設定した」は「環状加熱部」に掛からず「力の作用点」だけに掛かると解釈しても,「鋼管の偏心軸線上」における「の」は文字通り鋼管の偏心軸線上を指し示していますから,鋼管の外部の偏心軸線ではなく,鋼管の内部の偏心軸線と環状加熱部は交差しています。
いずれにおいても請求人の主張する「鋼管の偏心軸線上に設定しない環状加熱部」および「鋼管の偏心軸線上に設定しない力の作用点」という異説は本特許請求記述に相容れません。本特許の力の作用点が鋼管の内部にあることの説明は,既に甲17号証(意見書)において「力の作用点」が「鋼管の内部」にあると説明しております。
なお,このことを本特許請求項で明確にするために,「鋼管の偏心軸線上に設定した」の文言を,既に甲17号証(意見書)を引用して「鋼管内の偏心軸線上に設定した」と訂正する予定です。」

コ.口頭審理調書
「2 口頭審理陳述要領書で示した訂正案によれば特許法第36条の理由は解消される。仮に訂正案が採用されないとしても、審査経過及び明細書、図面の記載により、「鋼管内」であることは明かである。
(略)
4 甲第15号証の段落【0045】の「制御」は、移動速度の制御をするものであり、また、「油圧の制御」は曲げに必要な当初の油圧を制御するためのものであるが、いずれも所定の製品精度を出すための制御を意図したものではない。」

第5.当審の判断
1.理由1(第29条第2項)について
(1)本件発明
本件発明1ないし4は、下記2.のとおり、「作用点」の位置が、鋼管の内部か外部か不明確である。
しかし、図1、図2等の記載からみて、少なくとも、「作用点」の位置が鋼管の内部であるものを含むことは明らかであるから、かかる前提のもとで、上記第2.のとおりと認められる。

(2)刊行物記載の発明
本件発明1ないし4と、同一発明者に係るものである甲第15号証には、以下の記載がある。

ア.請求項1
「鋼管の周囲をその軸線を中心軸として環状に加熱する加熱手段と、加熱手段による環状加熱部を鋼管の軸線を中心軸として環状に冷却する冷却手段と、鋼管の偏心軸線上に設定した前記環状加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与する引張り力付与手段と、前記鋼管と加熱手段と冷却手段とを鋼管の軸線方向へ相対移動させる駆動手段とよりなることを特徴とする鋼管曲げ加工装置。」

イ.段落0040?0049
「【0040】図1において、1は炭素鋼の鋼管、2は鋼管1を支持するサポートローラーである。10は加熱コイル、11は加熱装置で、従来例1,2におけるものと同じ構造と機能を有している。細部構成は図6に示すとおりである。加熱コイル10は、レール21上を移動する駆動装置22に取り付けられ、この装置の移動によって、銅管1の軸線方向へ移動するようになっている。
【0041】23と24は、それぞれ鋼管1の前端部と後端部に被着した前部挟圧板と後部挟圧板である。
【0042】25は、油圧シリンダ25aとチェーン25bとで構成されたチェーン引張り装置である。油圧シリンダ25aのロッドbは後部挟圧板24に固定され、チェーン25bの前端部aは前部挟圧板23に固定されている。
【0043】ロッドbと固定点とチェーンの固定点は、鋼管1の偏心軸線上にあり、加熱コイル10による環状加熱部kを挟んでその両側に位置するように設定されている。両固定点は、油圧シリンダ25aを駆動して前、後部挟持板23,24を引き寄せるときのチェーン引張り装置25による引張り力の作用点となる。
【0044】26は、後部挟持板24部分において鋼管1を固定する保持台である。保持台による鋼管1の固定状態においては、加熱コイル10の中心軸は、鋼管1のそれと一致するようになっている。
【0045】加熱コイル10の温度と駆動装置22の移動と冷却水12の温度及び量と油圧シリンダ25aの油圧の制御は、図外の制御手段によってなされる。
【0046】次に、上記構成に基づく作用を説明する。
【0047】(1)油圧シリンダ25aを駆動して、チェーン引張り装置25の両端の固定点の間に引張り力を加えると、両固定点は鋼管1の偏心軸線上にあるから、鋼管1はその偏心軸線方向の圧縮力を受けながら、順次移動する環状の局部加熱部K(図6参照)において、連続して固定点側へ曲がっていく。
【0048】このように、実施例1においては、局部加熱部Kに曲げモーメントを加える際に、銅管1にその偏心軸方向に働く圧縮力を加えるから、鋼管1が曲がるときの減肉を低減することができる。
【0049】(2)鋼管に曲げモーメントを加える際に、チェーン引張り装置25で引張り力のみをを加える構成となっているから、装置が小型となり、重量も軽くなり、運搬し易くなる。したがって、施工現場の近くに運んで据え付けることができる。」

これら記載事項を、技術常識を勘案しつつ、本件発明1ないし4に照らして整理すると、甲第15号証には、以下の発明(以下「甲15発明」という。)が記載されていると認める。

「鋼管の周囲をその軸線を中心軸として環状に加熱する加熱手段と、加熱手段による環状加熱部を鋼管の軸線を中心軸として環状に冷却する冷却手段と、鋼管の偏心軸線上に設定した、前記環状加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与する引張り力付与手段と、前記鋼管と加熱手段と冷却手段とを鋼管の軸線方向へ相対移動させる駆動手段と、前記引張り力付与手段の制御手段と、前記駆動手段の制御手段とよりなる鋼管曲げ加工装置。」

(3)対比・判断
ア.本件発明1
(ア)対比
本件発明1と甲15発明とを対比すると、両者の一致点、相違点は、以下のとおりである。なお、この点は、口頭審理調書記載のとおり、両当事者間に争いはない。

「鋼管の周囲をその軸線を中心軸として環状に加熱する加熱手段と、加熱手段による環状加熱部を鋼管の軸線を中心軸として環状に冷却する冷却手段と、鋼管の偏心軸線上に設定した、前記環状加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与する引張り力付与手段と、前記鋼管と加熱手段と冷却手段とを鋼管の軸線方向へ相対移動させる駆動手段とよりなる鋼管曲げ加工装置。」

そして、以下の点で相違する。
相違点1:本件発明1は、「引張り力を可変する引張力可変手段と、相対移動速度を制御する移動速度制御手段」が設けられているが、甲15発明は、かかる手段を有しない点。

(イ)判断
相違点1について検討する。
甲15発明は、上記のとおり「引張り力を付与する引張り力付与手段」、「駆動手段」を作動させて曲げ加工を行うものであり、「引張り力付与手段」、「駆動手段」の「制御手段」を有している。
これら「制御手段」の具体的内容は不明であり、被請求人は、これら「制御手段」は、「所定の製品精度を出すための制御を意図したものではない」と主張する。
しかし、製品として、「曲率が等しい曲げ」が求められることは、甲第16号証の第7ページ右下欄第14?17行に「加熱装置(43)と条材(31)の相対速度と引張装置(39)?(42)の引張速度との比を適宜制御して曲げ半径を自由に選択できるようにした」と記載されているごとく、一般的な課題であって、適切な曲げを行うためには、甲15発明において、曲げを行うための「作動部分」である、「引張り力付与手段」、「駆動手段」を適切に制御する必要があることは明らかである。
甲15発明においては、「曲率が等しい曲げ」を行う場合に、曲げの進行に応じ、必要な「引張り力」、「相対移動速度」が変化しうることは予想されるところであるから、「引張り力付与手段」、「移動手段」を適切に制御するものとして、「引張り力を可変する引張力可変手段」、「相対移動速度を制御する移動速度制御手段」を採用することに困難性は認められない。
作用効果についても、機構が同一である甲15発明が本来有する作用効果、及び「曲率が等しい曲げ」を行うための「制御手段」を採用したことにより予想される作用効果にすぎず、格別なものとは認められない。
なお、被請求人が主張する「甲15と甲16とは、制御思想が異なるから、適用できない」点(上記第4.のア?エ)については、前記のとおり、甲第16号証を、「製品として「曲率が等しい曲げ」が求められることが一般的課題であること」の一例として用いたにすぎないから、被請求人の主張は採用できない。

したがって、本件発明1は、甲15発明から容易に発明できたものである。

(ウ)被請求人の訂正案について
被請求人は、口頭審理陳述要領書において、請求項1の「鋼管の偏心軸線上に設定した」を「鋼管内の偏心軸線上に設定した」と訂正を行う意思を表明している(上記第4.のケ、コ)。
しかし、訂正を請求することができる期間は、特許法第134条の2に規定されており、その期間外において、当然に請求することができるものではない。
よって、訂正案を前提とした被請求人の主張は根拠がない。
仮に被請求人の訂正請求を認めたとしても、甲第15号証記載のものも、「鋼管内の偏心軸線上に設定した」ものであるから、第29条第2項の判断を左右するものではない。

イ.本件発明2
(ア)対比
本件発明2と甲15発明とを対比すると、両者の一致点、相違点1は、本件発明1と同様であり、さらに以下の相違点2があると認める。なお、この点は、口頭審理調書記載のとおり、両当事者間に争いはない。

相違点2:本件発明2は、「逐次段階的に行う鋼管の曲げ加工における各段階の予め設定した計画曲げ量を基準として、実際の曲げ加工を行ったときの前記各段階における実行曲げ量を測定する曲げ量測定手段」を有するが、甲15発明は、かかる手段を有しない点。

(イ)判断
相違点1については、上記第5.の1.(3)ア.(イ)のとおりである。

相違点2について検討する。
甲15発明においても、製品として、「曲率が等しい曲げ」が求められることは、上記第5.の1.(3)ア.(イ)のとおり一般的課題である。
製品加工においては、加工後にもとに戻すことは、一般に困難である。そのため、加工中に、加工量を測定し、測定量に基づき加工制御を行うことは、甲第16号証の第9ページ右上欄第12?15行にもみられるごとく、周知である。そして、加工、測定を連続的に行うか、逐次段階的に行うかは、適宜選択すべき事項である。
したがって、甲15発明において、「曲率が等しい曲げ」を確実なものとするため、逐次段階的に、実際の曲げ量を測定しつつ曲げを行うこと、すなわち「逐次段階的に行う鋼管の曲げ加工における各段階の予め設定した計画曲げ量を基準として、実際の曲げ加工を行ったときの前記各段階における実行曲げ量を測定する曲げ量測定手段」を付加し、相違点2に係るものとすることは、必要に応じてなしうる設計的事項にすぎない。
作用効果についても、かかる「曲げ量測定手段」を付加することにより予想される作用効果にすぎず、格別なものとは認められない。

被請求人は、本件発明2は、「鋼管の前端部に取り付けた金具と旋回中心点との距離」を測定するが、甲第16号証のものは「曲げ半径の円弧の長さ」を測定するものであり、測定部位が異なる旨、主張する(上記第4.のア、エ、ク)。
しかし、測定部位については、請求項2において特定されていないことから、請求人の主張は、根拠がない。
仮に、特定されていたとしても、以下のとおり、困難性は認められない。
甲15発明は、本件発明2と同様に、甲第16号証のものが有する「曲げ腕」がなく「曲げ半径」が拘束されるものではないから、「曲げ半径の円弧の長さ」を測定したとしても、「曲率が等しい曲げ」が、確実になるものではない。
よって、「曲率が等しい曲げ」を確実なものとするために、必要な部位を測定することは、曲げ機構に応じて、選択すべき設計的事項であり、「鋼管の前端部に取り付けた金具と旋回中心点との距離」を測定することに困難性は認められない。

また、これら相違点を総合しても、格別な技術的意義が生じるとは認められない。
したがって、本件発明2は、甲15発明、周知技術から容易に発明できたものである。

ウ.本件発明3?4
本件発明3?4は、本件発明1?2と、カテゴリーが異なるにすぎないものであり、この点は、口頭審理調書記載のとおり、両当事者間に争いはない。
よって、本件発明3は、本件発明1と同様の理由により、甲15発明から、本件発明4は、本件発明2と同様の理由により、甲15発明、周知技術から、いずれも容易に発明できたものである。

2.理由2(第36条第4項又は第6項第2号)について
請求人は、本件発明1?4の「作用点」の位置が、鋼管の内部か外部か不明確と主張している。
これに対し、被請求人は、(ア)「環状加熱部」が「鋼管の偏心軸線上に設定」されること、(イ)「本特許は挟圧板で鋼管を圧縮しているだけ」であること、(ウ)審査における意見書(甲第17号証)に「鋼管の内部」とあること、から、「作用点」は、鋼管の「内部」であることは明らかとしている(上記第4.のオ、ケ)。
しかし、(ア)については、請求項1ないし4の記載上「鋼管の偏心軸線上に設定した、前記環状加熱部を挟んでその両側の力の作用点の間に引張り力を付与する」という記載であり、「、」があることから、「鋼管の偏心軸線上に設定した」は、「環状加熱部」ではなく「作用点」にかかると解することが自然である。
被請求人は、「本特許は甲15号の利用特許であり,制御思想(力の作用点の位置)が同じですから甲15号の「、」のない文言を優先して考えるのが妥当と思われます」(上記第4.のケ)と主張する。
しかし、本件発明1?4と、甲第15号証に係る特許とは、独立したものであるから、被請求人の主張は根拠がない。
仮に、甲第15号証に係る特許との関係を考慮したとすると、甲第15号証に係る特許は「、」がないが、本件発明1?4は「、」があること、甲第15号証に係る特許は、別件無効審判事件(無効2007-800216号、平成20年3月25日審決、甲第19号証)により「鋼管内の偏心軸線上に設定した」と訂正されたが、本件においては、答弁書提出期間内に訂正請求がなされなかったこと、から被請求人の主張は不自然である。
被請求人は、また、「もし「鋼管の偏心軸線上に設定した」は「環状加熱部」に掛からず「力の作用点」だけに掛かると解釈しても,「鋼管の偏心軸線上」における「の」は文字通り鋼管の偏心軸線上を指し示していますから,鋼管の外部の偏心軸線ではなく,鋼管の内部の偏心軸線と環状加熱部は交差しています。」と主張する(上記第4.のケ)。
しかし、「鋼管の偏心軸」が「鋼管内の偏心軸」を直ちに意味するとは認められない。
(イ)については、請求項1ないし4の記載上、根拠がない。
(ウ)については、かかる記載が、「鋼管の内部」のみを意味するとは解されない。
そして、「鋼管外の偏心軸」であっても、「曲げ」が不可能とまでは言えないから、被請求人の主張は採用できない。
したがって、依然として、「作用点」の位置が、鋼管の内部か外部か、不明確である。
なお、被請求人が、口頭審理陳述要領書において示した訂正案(上記第4.のケ)によれば、「作用点」の位置が、鋼管の内部であることは明確となる。
しかし、上記第5.の1.(3)ア.(ウ)のとおり、訂正案には、法的根拠はなく、仮に訂正請求を認めたとしても、審決の結論を左右するものではない。

第6.むすび
以上、本件発明1、3は、甲15発明に基づいて、本件発明2、4は、甲15発明、周知技術に基づいて、いずれも当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1?4についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
さらに、本件発明1?4の「作用点」の位置が、鋼管の内部か外部か不明確であるから、本件発明1?4に係る特許出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、本件発明1?4についての特許は、特許法第123条第1項第2号及び第4号の規定に該当するので、無効とすべきものである。
審判費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2009-01-16 
出願番号 特願2000-51208(P2000-51208)
審決分類 P 1 113・ 537- Z (B21D)
P 1 113・ 121- Z (B21D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小松 竜一  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 菅澤 洋二
尾家 英樹
登録日 2003-02-21 
登録番号 特許第3400767号(P3400767)
発明の名称 鋼管曲げ加工装置及び方法  
代理人 佐々木 敦朗  
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