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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20056282 審決 特許
不服200627219 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B32B
審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  B32B
審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備  B32B
管理番号 1194277
審判番号 無効2007-800075  
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-04-17 
確定日 2009-02-24 
事件の表示 上記当事者間の特許第3002042号発明「持続的な蛍光を示す製品」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認めない。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3002042号発明の出願は、平成3年12月5日(優先権主張 平成2年12月6日)を出願日とする出願であって、平成11年11月12日にその特許権の設定の登録がされたところ、平成19年4月17日に請求人日本カーバイド工業株式会社より請求項1?6に対して無効審判請求がされ、該無効審判請求書に対し同年5月14日付けで手続補正指令書(方式)が送付され、これに対して同年6月12日に手続補正書(方式)が提出された。
そして、同年9月21日に被請求人より審判事件答弁書が提出されると同時に訂正請求がされ、同年11月5日に請求人より弁駁書が提出され、平成20年2月21日に特許庁第1審判廷において第1回口頭審理がされ、同日に請求人、被請求人双方より口頭審理陳述要領書が提出された。
その後、同年2月28日に被請求人より上申書が、同年3月6日に請求人より上申書が、同年3月13日に被請求人より上申書が提出された。
そして、同年3月27日付けで被請求人に対し訂正拒絶理由が通知され(以下、「訂正拒絶理由通知1」と称す。)、また、同年3月27日付けで請求人に対し職権審理結果が通知されたのに対し、同年4月30日に請求人より意見書が、また、同年5月19日に被請求人より意見書と手続補正書(訂正請求書)が提出された。
そして、手続補正書(訂正請求書)に対して、同年6年25日付けで被請求人に対し訂正拒絶理由が通知され(以下、「訂正拒絶理由通知2」と称す。)、また、同年6年25日付けで請求人に対し職権審理結果が通知されたのに対し、同年8月20日に被請求人より意見書が提出された。

第2 訂正の適否
1.平成20年5月19日付けの手続補正書(訂正請求書)の補正の採否
平成19年9月21日付けの訂正請求は、平成20年5月19日付けの手続補正書(訂正請求書)により補正されているので、まず、この補正が採用すべきものか否か検討する。
(1)補正の内容
平成19年9月21日付けの訂正請求は、請求項1を訂正し(訂正事由1)、請求項3を訂正し(訂正事由2)、請求項6を訂正し(訂正事由3)、明細書の段落【0007】を訂正する(訂正事由4)ものであるところ、平成20年5月19日付けの手続補正書(訂正請求書)の補正の内容は、前記訂正事項2を削除し、これに伴い訂正事項3を訂正事項2とし、訂正事項4を訂正事項3とするものである。
(2)補正の採否
そうすると、平成20年5月19日付けの手続補正書(訂正請求書)による補正は、平成19年9月21日付けの訂正請求の訂正事項の一部を削除するものであり、訂正請求書の要旨を変更するものではないから、特許法第134条の2第5項で準用する特許法第131条の2第1項の規定により、平成20年5月19日付けの手続補正書(訂正請求書)は採用する。

2.訂正の認否
(1)訂正の内容
以上のとおり、平成20年5月19日付けの手続補正書(訂正請求書)は採用されるから、被請求人が求めている訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、本件特許明細書を、平成20年5月19日付けの手続補正書(訂正請求書)で補正された訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正すること、すなわち、以下の訂正事項1?3のとおりである。

i)訂正事項1
本件特許明細書(以下、「明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1の、
「【請求項1】第1および第2側面を有する着色層と該着色層の第1側面に設けられたスクリーン層とを有することを特徴とする蛍光性製品であって、
a)該着色層がポリマーマトリックス中に溶解された日光蛍光性染料を含有し、該蛍光性染料がチオキサンテン染料、チオインジゴイド染料、ベンズオキサゾールクマリン染料またはペリレンイミド染料の1種以上を包含し; 該マトリックスがポリカーボネート、ポリアクリルイミド、ポリエステルまたはポリスチレンの1種以上であり; そして
b)該スクリーン層が可視光に対して実質的に透明であり、入射紫外線の実質的な部分を遮ぎる手段を有する;
蛍光性製品。」
を、
「【請求項1】第1および第2側面を有する着色層と該着色層の第1側面に設けられたスクリーン層とを有することを特徴とする蛍光性製品であって、 a)該着色層がポリマーマトリックス中に溶解された日光蛍光性染料を含有し、該蛍光性染料がチオキサンテン染料、チオインジゴイド染料、ベンズオキサゾールクマリン染料またはペリレンイミド染料の1種以上を包含し; 該マトリックスがポリカーボネート、ポリアクリルイミドまたはポリエステルの1種以上であり; そして
b)該スクリーン層が可視光に対して実質的に透明であり、340nmを下回る波長を有する入射紫外光の少なくとも10%を遮ぎる手段を有する;
蛍光性製品。」
と、訂正する。

ii)訂正事項2
本件明細書の特許請求の範囲の請求項6の、
「【請求項6】第1および第2側面を有する着色層と該着色層の第1側面に設けられたスクリーン層とを有することにより特徴づけられる蛍光性逆反射性製品であって、
a)該着色層がポリマーマトリックス中に溶解された蛍光性染料を必然的に含有し、該蛍光性染料がチオキサンテン染料、チオインジゴイド染料、ベンズオキサゾールクマリン染料またはペリレンイミド染料の1種以上を必然的に包含し;該マトリックスがポリカーボネート、ポリアクリルイミド、ポリエステルまたはポリスチレンの1種以上を必然的に包含し;そして
b)該スクリーン層が可視光に対して実質的に透明であり、入射紫外線の実質的な部分を遮ぎる手段を有し;
該着色層の第2側面上に逆反射性エレメントを有するか、または該着色層の第2側面上に設けられた逆反射性ベースシートを有する
蛍光性逆反射性製品。」
を、
「【請求項6】第1および第2側面を有する着色層と該着色層の第1側面に設けられたスクリーン層とを有することにより特徴づけられる蛍光性逆反射性製品であって、
a)該着色層がポリマーマトリックス中に溶解された蛍光性染料を必然的に含有し、該蛍光性染料がチオキサンテン染料、チオインジゴイド染料、ベンズオキサゾールクマリン染料またはペリレンイミド染料の1種以上を必然的に包含し;該マトリックスがポリカーボネート、ポリアクリルイミドまたはポリエステルの1種以上を必然的に包含し;そして
b)該スクリーン層が可視光に対して実質的に透明であり、340nmを下回る波長を有する入射紫外光の少なくとも10%を遮ぎる手段を有し;
該着色層の第2側面上に逆反射性エレメントを有するか、または該着色層の第2側面上に設けられた逆反射性ベースシートを有する
蛍光性逆反射性製品。」
と、訂正する。

iii)訂正事項3
明細書の段落【0007】の、
「簡単に言えば、本発明の蛍光性製品は第1および第2側面を有する着色層と上記着色層の第1側面に設けられたスクリーン層とを有しており、
a)上記着色層が定められたポリマーマトリックス中に溶解した定められた蛍光性染料を含有し、そして
b)上記スクリーン層が可視光に対して実質的に透明であり、入射紫外線の実質的な部分を遮ぎる(screening)手段を有する、蛍光性製品である。
上記着色層とスクリーン層とは上で定義のように並べた状態でもよく、または直接もしくは中間接着剤層で、相互にラミネートされてもよい。」
を、
「簡単に言えば、本発明の蛍光性製品は第1および第2側面を有する着色層と上記着色層の第1側面に設けられたスクリーン層とを有しており、
a)上記着色層が定められたポリマーマトリックス中に溶解した定められた蛍光性染料を含有し、そして
b)上記スクリーン層が可視光に対して実質的に透明であり、340nmを下回る波長を有する入射紫外光の少なくとも10%を遮ぎる(screening)手段を有する、蛍光性製品である。
上記着色層とスクリーン層とは上で定義のように並べた状態でもよく、または直接もしくは中間接着剤層で、相互にラミネートされてもよい。」
と、訂正する。

(2)訂正の認否の判断
ア.訂正事項1について
(ア)被請求人(審決注:補正した訂正請求書の請求人)の主張する訂正の目的
被請求人は、訂正事項1は、訂正前の請求項1の、
「該マトリックスがポリカーボネート、ポリアクリルイミド、ポリエステルまたはポリスチレンの1種以上であり」を、
特許請求の範囲の減縮を目的として、
「該マトリックスがポリカーボネート、ポリアクリルイミドまたはポリエステルの1種以上であり」(訂正事項1-1)と、
「b)該スクリーン層が可視光に対して実質的に透明であり、入射紫外線の実質的な部分を遮ぎる」を、
明りょうでない記載の釈明を目的として、
「b)該スクリーン層が可視光に対して実質的に透明であり、340nmを下回る波長を有する入射紫外光の少なくとも10%を遮ぎる」(訂正事項1-2)と
訂正するものであると主張している(補正した訂正請求書3?4頁の「(4)-1.」の項)。

(イ)訂正事項1の訂正の認否
(イ-1)訂正事項1-1について
訂正事項1-1は、マトリックスを構成する材料として4種の材料から選びうるように記載されていたのを、そのうちの3種に減らすものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(イ-2)訂正事項1-2について
(イ-2-1)訂正事項1-2は、分節して記載すると、「「入射紫外線」の「実質的な部分」を「遮ぎる」」を、「「340nmを下回る波長を有する入射紫外光」の「少なくとも10%」を「遮ぎる」」と訂正するものである。
そうすると、訂正事項1-2は、「入射紫外線」を「340nmを下回る波長を有する入射紫外光」に、「実質的な部分」を「少なくとも10%」に訂正するものと解するのが自然である。すなわち、「入射紫外線」を「340nmを下回る波長を有する入射紫外光」とすることで、遮ぎる紫外線の種類についての訂正をおこない、「実質的な部分」を「少なくとも10%」とすることで、遮ぎる紫外線の量についての訂正をおこなうものと解される。
ところで、訂正前の、「紫外線」は学術用語であって、その意味するところは明りょうである。
また、そもそも訂正事項1-2に係る事項は、入射する紫外線を遮って、入射量を少なくすることにより、着色層の劣化を抑制しようとするためのものであることからみて、「実質的な部分」の意味するところは、着色層の劣化を抑制しえる紫外線の遮断量であり、「ほぼ全部」と解するのが自然であるところ、被請求人も、「「実質的」の意味は、「ほぼ全部」である。」と陳述したことが、本件無効審判の第1回口頭審理の調書に記載されている。 そうすると、「実質的な部分」の意味するところも明りょうである。
以上のとおりであるから、「入射紫外線」も「実質的な部分」も、そもそも明りょうな記載であるから、訂正事項1-2は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものではない。また、誤記の訂正を目的とするものでないことも明らかである。
そこで、訂正事項1-2は特許請求の範囲の減縮を目的とするものなのか否か検討する。
訂正前の「「入射紫外線」の「実質的な部分」を「遮ぎる」」とは、「紫外線に相当する波長範囲の電磁波の全波長域の電磁波を、ほぼ全部、遮ぎる」というものと解せる。
これに対し、訂正後の「「340nmを下回る波長を有する入射紫外光」の「少なくとも10%」を「遮ぎる」」は、「紫外線に相当する波長範囲の電磁波のうち340nmを下回る波長域の電磁波について、少なくとも10%、遮ぎる」と解すべきものである。
そうすると、訂正により、「紫外線に相当する波長範囲の電磁波のうち340nmを上回る波長領域の電磁波」については「「実質的な部分」を「遮ぎる」」であったものが、「何らの特定もされていない」ものとなった。また、「紫外線に相当する波長範囲の電磁波のうち340nmを下回る波長領域の電磁波」についても、「「実質的な部分」を「遮ぎる」」が「「少なくとも10%」を「遮ぎる」」と特定されることとなった。
つまり、訂正事項1-2に係る事項は入射する紫外線を遮って、着色層の劣化を抑制しようとするものであるところ、訂正事項1-2の訂正は、遮ぎる紫外線の波長域を狭め、併せて、遮ぎる程度を緩和するものであることから、「入射紫外線を遮ぎる」という事項についての要件を拡張するものである。
したがって、訂正事項1-2は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものではない。また、上記したところであるが、「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものでも、「誤記の訂正」を目的とするものでもない。
しかもかかる訂正は実質上特許請求の範囲を拡張するものである。

(イ-2-2)上記したように、訂正事項1-2は、「「入射紫外線」の「実質的な部分」を「遮ぎる」」を、「「340nmを下回る波長を有する入射紫外光」の「少なくとも10%」を「遮ぎる」」と訂正するものであり、「入射紫外線」を「340nmを下回る波長を有する入射紫外光」とすることで、遮ぎる紫外線の種類についての訂正をおこない、「実質的な部分」を「少なくとも10%」とすることで、遮ぎる紫外線の量についての訂正をおこなうものと解されることは(イ-2-1)に記したとおりである。
しかし、被請求人は、「「入射紫外線の実質的な部分」の意味は、本件明細書段落【0018】に記載されている意味である。」とも主張しているので(第1回口頭審理調書 被請求人 2 の項)、明細書段落【0018】の記載を参酌して、訂正事項1-2が特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明あるいは誤記の訂正を目的とするものか否か検討する。
段落【0018】には、「地上レベルの日光は約290nm波長を有する電磁波を包含する。典型的には、約400?約700nmの範囲の波長を有する光が可視光範囲とされる。低波長を有する光が着色層中の染料の蛍光持続性に最も弊害を与えられると考えられている。したがって、スクリーン層は実質的な一部(すなわち、少なくとも約10%、さらに好ましくは少なくとも50%、そしてさらに好ましくは実質的にすべて)の約340nm、さらに好ましくは370nm、そしてさらに好ましくは約400nmを下回る波長を有する入射光を遮断(block)することが好ましい。」と記載されている。
しかし、該段落の記載は、訂正事項1-2に係る「実質的な部分」を定義しているものではないから、段落【0018】の記載を参酌しても、訂正事項1-2が特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明あるいは誤記の訂正を目的とするものだということが自ずと明らかになるものではない。
また、仮に、該段落の記載が訂正事項1-2に係る「実質的な部分」を定義しているものだとしても、段落【0018】の「実質的な一部(すなわち、少なくとも約10%、さらに好ましくは少なくとも50%、そしてさらに好ましくは実質的にすべて)の約340nm、さらに好ましくは370nm、そしてさらに好ましくは約400nmを下回る波長を有する入射光」との記載はその意味するところが明りょうではないから、段落【0018】の記載を参酌しても、訂正事項1-2が特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明あるいは誤記の訂正を目的とするものだということが自ずと明らかになるものでもない。

(イ-2-3)なお、念のために、段落【0018】には入射光の遮断すべき波長についての記載がなされているので、訂正事項1-2の訂正前の「入射紫外線の実質的な部分」の「実質的な部分」が遮断すべき波長について特定しているものと解して、訂正事項1-2が特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明あるいは誤記の訂正を目的とするものかも検討する。
「実質的な部分」が遮断すべき波長について特定しているものと仮定すると、訂正事項1-2の訂正前の「「入射紫外線」の「実質的な部分」を「遮ぎる」」は紫外線に相当する波長の電磁波のほぼ全部の波長域の電磁波を遮ぎると解されるところ、訂正後の「「340nmを下回る波長を有する入射紫外光」の「少なくとも10%」を「遮ぎる」」は紫外線に相当する波長の電磁波のうち、340nmを下回る波長域の電磁波についての遮断量を特定するものと解される。
そうすると、「実質的な部分」が遮断すべき波長について特定しているものと仮に解した場合でも、訂正事項1-2は、遮ぎる紫外線の波長域を狭め、併せて、遮ぎる量を特定するもので、「入射紫外線を遮ぎる」という事項についての要件を拡張するものであって、減縮するものではない。
また、「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものでも、「誤記の訂正」を目的とするものでもない。

(イ-3)訂正事項1の訂正の認否のまとめ
訂正事項1-1及び訂正事項1-2については「(イ-1)」及び「(イ-2)」に述べたとおりに判断される。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものでも、明りょうでない記載の釈明を目的とするものでも、また、誤記の訂正を目的とするものでもなく、特許請求の範囲を拡張するものであるといえる。

イ.訂正事項2について
(ア)被請求人の主張する訂正の目的
被請求人は、訂正事項2は、訂正前の請求項6の、
「該マトリックスがポリカーボネート、ポリアクリルイミド、ポリエステルまたはポリスチレンの1種以上であり」を、
特許請求の範囲の減縮を目的として、
「該マトリックスがポリカーボネート、ポリアクリルイミドまたはポリエステルの1種以上であり」(訂正事項2-1)と、
「b)該スクリーン層が可視光に対して実質的に透明であり、入射紫外線の実質的な部分を遮ぎる」を、
明りょうでない記載の釈明を目的として、
「b)該スクリーン層が可視光に対して実質的に透明であり、340nmを下回る波長を有する入射紫外光の少なくとも10%を遮ぎる」(訂正事項2-2)と
訂正するものであると主張している(補正した訂正請求書4頁「(4)-2.」の項)。

(イ)訂正事項2の訂正の認否
訂正事項2-1の訂正内容は訂正事項1-1の訂正内容と、また、訂正事項2-2の訂正内容は訂正事項1-2の訂正内容と全く同じである。
そうすると、訂正事項2-1及び訂正事項2-2についての訂正の認否は、訂正事項1-1及び訂正事項1-2についての訂正の認否と同じに判断される。
したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものでも、明りょうでない記載の釈明を目的とするものでも、また、誤記の訂正を目的とするものでもなく、特許請求の範囲を拡張するものであるといえる。

ウ.訂正事項3について
(ア)被請求人の主張する訂正の目的
被請求人は、訂正事項3は、訂正前の段落【0007】の、
「b)上記スクリーン層が可視光に対して実質的に透明であり、入射紫外線の実質的な部分を遮ぎる」を、
明りょうでない記載の釈明を目的として、
「b)上記スクリーン層が可視光に対して実質的に透明であり、340nmを下回る波長を有する入射紫外光の少なくとも10%を遮ぎる」(訂正事項3-II)と
訂正するものであると主張している(補正した訂正請求書5頁「(4)-3.」の項)。

(イ)訂正事項3の訂正の認否
訂正事項3-IIの訂正内容は訂正事項1-2の訂正内容と全く同じである。
そうすると、訂正事項3-IIについての訂正の認否は、訂正事項1-2についての訂正の認否と同じに判断される。
したがって、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものでも、明りょうでない記載の釈明を目的とするものでも、また、誤記の訂正を目的とするものでもなく、特許請求の範囲を拡張するものであるといえる。

(3)訂正拒絶理由通知2に対する被請求人の主張について
被請求人は、平成20年8月20日付けの意見書により、「訂正事項1-2を、「入射紫外線」を「340nmを下回る波長を有する入射紫外光」に、「実質的な部分」を「少なくとも10%」に訂正するものと解し、これらを恰も個別の訂正事項であるかのような取り扱いのもとでなされる検討は、そもそも、その手法において誤りであるというべきである。」(意見書4頁15?18行)、「そして、当該訂正は、明細書の段落【0018】の記載に基づいて、訂正前の請求項1の「入射紫外線の実質的な部分」なる記載の意味をより明確にするために「340nmを下回る波長を有する入射紫外光の少なくとも10%」とするものであることが、訂正請求書において明らかにされている。」(意見書4頁23?26行)、「『実質的な部分』とは、本件明細書段落【0018】の『実質的な一部』の意味で用いられて」いる・・・「したがって、『実質的』なる文言が、『入射紫外線の実質的な部分を遮る』という文脈においても、『ほぼ全部』を意味するというわけでは」ないことを上申している」(意見書5頁15?23行)と主張し(以下、「主張I」という。)、また、
「被請求人も、『「実質的」の意味は、「ほぼ全部」である。』と陳述したことが、本件無効審判の第1回口頭審理の調書に記載されている。・・・しかし、そもそも、当該調書の記載部分は、請求項1の「実質的に透明」の部分に関連したものであって、「訂正事項1-2」に関連する「実質的な部分」とは無関係なものである。」(意見書6頁8?15頁)と主張し(以下、「主張II」という。)、また、
「「『紫外線』を『紫外光』とする訂正」が恰も訂正要件違反であるかのような記載も認められるけれども、「紫外光」が紫外部の光を意味するものであることは明らかである」(意見書8頁26?28頁)と主張(以下、「主張III」という。)している。

まず、[主張I]について検討するに、既に「第2 2.(2)ア.(イ)(イ-2)」で判断したとおり、訂正前の請求項1の記載「入射紫外線の実質的な部分を遮る」が意味するところは明確であり、しかも、段落【0018】は請求項1の「実質的な部分」という用語とは異なる用語である「実質的な一部」によって技術事項が説明されていることから、請求項1の「実質的な部分」を定義するものではないところ、該段落の記載は意味するところが明確でない。そうすると、段落【0018】を参酌して請求項1を解する必然性もなく、また、仮に該段落に記載される事項を参酌したとしても、訂正前の請求項1が訂正後の請求項1の技術事項を意味していると解することはできないから、訂正事項1-2は、被請求人が主張するところの明りょうでない記載の釈明を目的とするものとは認められない。
次いで[主張II]について検討すると、同じ明細書中の同じ技術用語「実質的」は同じ意味を有すると解するのが自然であり、技術用語「実質的」が「実質的に透明」と「実質的な部分」とで意味が異なるという被請求人の主張は合理的なものではない。
最後に[主張III]について検討すると、『紫外光』の意味するところが明確か否かが訂正の認否の要件として必要なのではなく、『紫外線』の意味するところが明確か否かが訂正の認否の要件としては必要なのである。そして、『紫外線』の意味するところは明確であるから、本件訂正(訂正事項1-2、訂正事項2-2、訂正事項3-II)において、明りょうでない記載の釈明を目的として『紫外線』を訂正することは、訂正の目的違反である。

(4)まとめ
以上のとおりであって、訂正事項1?訂正事項3は、特許法第134条の2第1項ただし書の各号に掲げる事項を目的とせず、また、同法同条第5項において準用する同法第126条第4項の規定にも適合しないから、本件訂正は認められない。

第3 本件発明
本件訂正については以上のとおりであるから、本件請求項1?6に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明6」という。)は、本件明細書の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりの以下のものである。
【請求項1】第1および第2側面を有する着色層と該着色層の第1側面に設けられたスクリーン層とを有することを特徴とする蛍光性製品であって、 a)該着色層がポリマーマトリックス中に溶解された日光蛍光性染料を含有し、該蛍光性染料がチオキサンテン染料、チオインジゴイド染料、ベンズオキサゾールクマリン染料またはペリレンイミド染料の1種以上を包含し; 該マトリックスがポリカーボネート、ポリアクリルイミド、ポリエステルまたはポリスチレンの1種以上であり; そして
b)該スクリーン層が可視光に対して実質的に透明であり、入射紫外線の実質的な部分を遮ぎる手段を有する;
蛍光性製品。
【請求項2】以下のa)?d)の少なくとも一によりさらに特徴づけられる、
請求項1記載の製品:
a)前記着色層が約0.01?約1.0重量%の前記染料を含有する; または
b)前記着色層が約0.05?約0.3重量%の前記染料を含有する; または
c)前記着色層が約50?約625μmの厚さである; または
d)前記着色層が追加の着色剤をさらに含有する。
【請求項3】以下のa)?d)の少なくとも一によりさらに特徴づけられる、請求項1記載の製品:
a)前記スクリーン層が約340nmを下回る波長を有する電磁波を実質的に遮断する; または
b)前記スクリーン層が約370nmを下回る波長を有する電磁波を実質的に遮断する; または
c)前記スクリーン層が約400nmを下回る波長を有する電磁波を実質的に遮断する; または
d)前記スクリーン層が入射紫外線の少なくとも50%を遮ぎる。
【請求項4】前記着色層の第2側面上に設けられた逆反射性ベースシートをさらに有することによりさらに特徴づけられる、請求項1記載の製品。
【請求項5】前記着色層が前記第2側面上に形成された逆反射性エレメントを有することによりさらに特徴づけられる、請求項1記載の製品。
【請求項6】第1および第2側面を有する着色層と該着色層の第1側面に設けられたスクリーン層とを有することにより特徴づけられる蛍光性逆反射性製品であって、
a)該着色層がポリマーマトリックス中に溶解された蛍光性染料を必然的に含有し、該蛍光性染料がチオキサンテン染料、チオインジゴイド染料、ベンズオキサゾールクマリン染料またはペリレンイミド染料の1種以上を必然的に包含し;該マトリックスがポリカーボネート、ポリアクリルイミド、ポリエステルまたはポリスチレンの1種以上を必然的に包含し;そして
b)該スクリーン層が可視光に対して実質的に透明であり、入射紫外線の実質的な部分を遮ぎる手段を有し;
該着色層の第2側面上に逆反射性エレメントを有するか、または該着色層の第2側面上に設けられた逆反射性ベースシートを有する蛍光性逆反射性製品。

第4 請求人の主張
請求人は、特許第3002042号の請求項1?6に係る発明についての特許を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、証拠として審判請求書に添付して甲第1?5号証を提出し、以下の無効理由1(無効理由1-1?無効理由1-6)及び無効理由2(無効理由2-1?無効理由2-5)を主張し、本件の請求項1?6に係る発明についての特許は、特許法第123条第1項第2号又は同条同項第4号の規定により無効とすべきであると主張している。また、平成20年4月30日付けの意見書に添付して参考資料1を提出している。

無効理由1
「本件発明1?6は、甲第1号証?甲第5号証に開示された発明に基づいて、その発明に属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。」【無効審判請求書8頁】

そして、本件発明1については、「甲第1号証には、本件発明の要件1の「第1および第2側面を有する着色層と該着色層の第1側面に設けられたスクリーン層とを有する」ものであって、しかも、本発明の要件4の「b)該スクリーン層が可視光に対して実質的に透明であり、入射紫外線の実質的な部分を遮ぎる手段を有」し、しかも本件発明の要件5を充足する「蛍光性製品」が開示されていることは明らかである。・・・甲第2号証には、本件発明の要件1の「第1および第2側面を有する着色層と該着色層の第1側面に設けられたスクリーン層とを有するものであって」、本発明の要件4の「b)該スクリーン層が可視光に対して実質的に透明であり、入射紫外線の実質的な部分を遮ぎる手段を有する」ものが開示されていることは明らかである。・・・甲第3号証・・・には、・・・本件特許発明の要件2の「a)該着色層がポリマーマトリックス中に溶解された日光蛍光性染料を含有し、該蛍光性染料がチオキサンテン染料、チオインジゴイド染料、ベンズオキサゾールクマリン染料またはペリレンイミド染料の1種以上を包含し; 」及び本件特許発明の要件3の「該マトリックスがポリカーボネート、ポリアクリルイミド、ポリエステルまたはポリスチレンの1種以上であ」るものが開示されていることは明らかである。・・・甲第4号証には、本件特許発明の要件2の「a)該着色層がポリマーマトリックス中に溶解された日光蛍光性染料を含有し、該蛍光性染料がチオキサンテン染料、チオインジゴイド染料、ベンズオキサゾールクマリン染料またはペリレンイミド染料の1種以上を包含し; 」及び本件特許発明の要件3の「該マトリックスがポリカーボネート、ポリアクリルイミド、ポリエステルまたはポリスチレンの1種以上」であるものが開示されていることはあきらかである。・・・上記のとおり、甲第1号証及び甲第2号証には、本件特許発明の要件1、4及び5が開示されており、また甲第3号証及び甲第4号証には、本件発明の要件2及び3が開示されているから、本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証、甲第4号証に開示された要件を単に寄せ集めたに過ぎないものであり、これらの甲号証の開示に基づいて、その発明に属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。」【無効審判請求書11?15頁】(以下、「無効理由1-1」という。)と主張し、

本件発明2については、「甲第3号証の請求項1には、「基体合成樹脂に、種類の異なる蛍光剤が二種以上組み合せ配合されてなる・・・蛍光能の耐久性が改善された合成樹脂組成物」が記載されている。これは、・・・本件特許発明の請求項2のd)が開示されていることに他ならないから、本件特許の請求項2の発明は、甲第3号証に開示されており、」【無効審判請求書18頁】と主張し、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証、甲第4号証の開示に基づいて、その発明に属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである(以下、「無効理由1-2」という。)旨主張し、

本件発明3については、「甲第1号証の請求項1には、『370nmの光の透過率が30%以上、340nmの光の透過率が20%以下である透明乃至半透明樹脂層と、蛍光着色材含有層とを積層してなる層状構造を有している・・・蛍光発色シート』が記載され・・・、甲2号証・・・には、「・・・紫外線吸収性物質は290と400nmの間のすべての輻射線の少なくとも90%を吸収し、400と780nmの間のすべての輻射線の少なくとも90%は透過・・・するのに充分な量で存在しなければならない」と記載されている。以上述べたとおり、甲第1号証及び甲第2号証には、本件特許の請求項3の発明は、・・・開示されている。」【無効審判請求書19頁】と主張し、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証、甲第4号証の開示に基づいて、その発明に属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである(以下、「無効理由1-3」という。)旨主張し、

本件発明4については、甲第5号証の請求項1及び請求項2の記載を摘記して、「甲第5号証の以上の記載によれば、本件特許の請求項4の発明もまた当業者であれば容易に類推することができる程度に甲第5号証に開示されていると言える。」【無効審判請求書20頁】と主張し、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証の開示に基づいて、その発明に属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである(以下、「無効理由1-4」という。)旨主張し、

本件発明5については、「甲第5号証・・・には、「体部分10は・・・蛍光橙色および赤色染料組成を含む物質から形成されている。」と記載されているとおり、体部分10が着色されていることは極めて自明である。・・・甲第5号証の以上の記載によれば、本件特許の請求項5に記載された発明は、当業者であれば容易に類推することが出来るといえる」【無効審判請求書21頁】と主張し、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証の開示に基づいて、その発明に属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである(以下、「無効理由1-5」という。)旨主張し、

本件発明6については、「本件特許の請求項1の発明に下記の要件5’が付加されたものである。要件5’・・・該着色層の第2側面上に・・・逆反射性エレメントを有するか、または該着色層の第2側面上に設けられた逆反射性ベースシートを有する蛍光性逆反射性製品。」【無効審判請求書10頁】と主張し、さらに、甲第5号証の請求項1及び請求項2の記載を摘記して、甲第5号証には、本件特許の請求項6の発明の要件5’が開示されていることは明らかである旨主張し、「本件特許の要件1ないし4及び5’から成る請求項6の発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証に開示された発明に基づいて、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。」【無効審判請求書16?17頁】(以下、「無効理由1-6」という。)と主張している。

無効理由2
「本件特許の請求項1、2及び3に係る発明は記載が不明瞭である。」【無効審判請求書21頁】

そして、請求項1については、「入射紫外線の如何なる部分をどの程度遮るかが何等特定されていないから、不明瞭であり、特許法第36条第5項第2号及び第6項に規定する要件を満たしていない。」【無効審判請求書22頁】(以下、「無効理由2-1」という。)と主張すると共に、

「「染料」の添加量の特定無くしては、本件発明の効果は不明瞭であり、特許法第36条第5項第2号及び第6項に規定する要件を満たしていない。」【無効審判請求書22頁】(以下、「無効理由2-2」という。)と主張している。

請求項2については、染料の添加量について「0.3重量%を超える範囲については、本件発明の効果が得られるかどうかは全く不明であるから、本件明細書は記載が不明瞭であり、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。」【無効審判請求書23頁】(以下、「無効理由2-3」という。)と主張すると共に、

「本件発明における染料の添加は、少なくとも実施例で開示されている0.3重量%以下、さらには、実施例で効果が確認されている0.2重量%以下に限定されるべきであるから、本件明細書は特許法第36条第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない。」【無効審判請求書23頁】(以下、「無効理由2-4」という。)と主張している。

請求項3については、「段落【0018】には、「・・・少なくとも約10%・・・の約340nm・・・を下回る波長を有する入射光を遮断する(block)することが好ましい。」』と記載されているが、比較資料2-Aにおいては、・・・が示されている。したがって、上記の一般記載の「少なくとも約10%・・・の約340nm・・・を下回る波長を有する入射光を遮断する(block)する」に比較資料が含まれているから、本件明細書は記載が不明瞭であり、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。」【無効審判請求書24頁】(以下、「無効理由2-5」という。)と主張している。

(証拠方法)
・甲第1号証:特開平2-16042号公報
・甲第2号証:特開昭53-121100号公報
・甲第3号証:特開昭57-177054号公報
・甲第4号証:特開昭57-189号公報
・甲第5号証:特開昭50-47591号公報
・参考資料1:新村出編 広辞苑 株式会社岩波書店 1998年11月
11日第5版第1刷発行 1141頁 「しがいせん【紫外線】」 の項

第5 被請求人の答弁
被請求人は答弁書にて、以下の答弁をしている。
また、被請求人は平成20年3月13日付けの上申書に添付して参考資料1?4を提出している。

無効理由1に対して
「甲1乃至5号証は何れも、それらの組み合わせによっても本件特許発明の無効理由1を主張する基礎とはなり得ないものであって、本件特許発明の技術的思想は各甲号証の何れにも開示も示唆もされていない。よって、これら各甲号証の開示内容に基づいては当業者が本件特許発明を容易に想到することができたとすることはできない。」【答弁書2?3頁】
無効理由2に対して
「本件明細書には本件発明1乃至3が実施可能な程度に記載されており、本件発明1乃至3に係る本件明細書の記載が不明瞭であって無効理由2を有するとすることもできない。」【答弁書3頁】
請求人の主張に対して
「従って、本件特許発明が特許法第123条第1項第2号又は第4号に該当し、無効とされるべきであるとの請求人の主張には理由がない。よって、本件審判の請求は成り立たない。」【答弁書3頁】

(証拠方法)
・参考資料1:米国特許第4406974号明細書
・参考資料2:「Clariant Pigments & Additives Division Edition 2007/05/16」、「Product Data Sheet-Dyes for Plastics Hostasol Red 5B Vat Red41」「http://pa.clariant.com/C1256A2A001CDFF0/wvb... 2008/03/05」との印字のある印字物
・参考資料3:「Technical Information TI/p 3201e(9125) November 1997」、「Lumogen^(R) F」(審決注:「^(R)」は、参考資料においては「○で囲まれたR」 として表記されている。参考資料4についても同じ。)、「BASF」と記載された印刷物
・参考資料4:「Technical Information TI/p 2532e August 1994(JWF) Supersedes edition of February 1990 」、「Sudan^(R) dyes」、「Fluorol^(R) dyes」 、「BASF」と記載された印刷物

第6 甲各号証に記載された事項
甲第1号証:特開平2-16042号公報
甲1-1.「(1)370nmの光の透過率が30%以上、340nmの光の透過率が20%以下、及び全光線透過率が40%以上である透明乃至半透明樹脂層と、蛍光着色剤含有層とを積層してなる層状構造を有していることを特徴とする蛍光発色シート」(特許請求の範囲の請求項1)
甲1-2.「本発明の目的は、蛍光着色剤の性能を発揮させることができると共に、優れた耐候性をも備えた蛍光発色シートを提供することにある。」(1頁右下欄13?15行)
甲1-3.「〔課題を解決するための手段〕 本発明者等は種々検討した結果、意外にも蛍光発色シートを構成する透明乃至半透明樹脂層(以下、単に透明樹脂層ともいう)の紫外線に対する特性を特定の範囲内に制御することにより、上記目的が達成されることを知見した。」(1頁右下欄16行?2頁左上欄1行)
甲1-4.「本発明の蛍光発色シートを構成する透明樹脂層は、・・・370nmの光の透過率が30%未満の場合は、蛍光発色性が失われる傾向にあり好ましくない、また、上記340nmの光の透過率が20%を超える場合は蛍光発色シートの耐候性が悪くなる傾向にあり好ましくない、そして、上記全光線透過率が40%未満の場合は、蛍光着色剤の発色が阻害される傾向にあり好ましくない。
また、上記透明樹脂層の各光線に対する透過特性を調整する方法には特に制限はないが、該透明樹脂層に、例えば紫外線吸収剤を含有させる」(2頁右上欄3?20行)
甲1-5.「本発明の蛍光発色シートの製造に用いられる蛍光着色剤としては特に制限はなく、有機系又は無機系の各種蛍光着色剤を利用することができ、実際には希望する発色特性等を考慮して適切な蛍光着色剤の選定が行われる。尚、上記選定に当たっては、上記透明樹脂層によりその発色性が阻害される蛍光着色剤を避ける必要があることはいうまでもない。」(2頁右下欄17?2頁左上欄4行)
甲1-6.「上記のようにして選定した蛍光着色剤を前述の透明樹脂層に組合せる方法を、前記第一の発明及び第二の発明それぞれについて説明する。第一の発明の場合は、蛍光着色剤を含有する蛍光着色剤含有層を透明樹脂層に積層することにより蛍光発色シートの作成が行われる。この積層方法としては特に制限はないが、例えば、バインダーになる樹脂を溶剤に溶かした溶液中に蛍光着色剤を混合分散させてなる混合液を、剥離紙上に塗布乾燥して作成した薄膜に、透明樹脂層を貼り合わせて積層する方法、又は上記混合液を透明樹脂層に直接塗布乾燥して積層する方法等を挙げることができる。上記バインダー用の樹脂としては特に制限はなく、蛍光発色シートの性能を損なわないものであれば任意に利用することができる。」(2頁左上欄8?同頁右上欄2行)
甲1-7.「本発明の蛍光発色シートにおいては、前述の如く光制御された透明樹脂層は、蛍光着色剤含有層からの蛍光着色剤の発色を阻害せずに、該蛍光着色剤含有層を保護する層として機能し(第一の発明)、又は蛍光着色剤を包含してその担持層及び保護層として機能し(第二の発明)ているものである。また、本発明の蛍光発色シートにおいて、蛍光着色剤は、制御された光線を受け、その中の紫外線等の光により発生する蛍光を伴う独特の発色をし、蛍光発色シー、トに特殊な発色機能を付与するものである。」(3頁右下欄10行?4頁左上欄1行)
甲1-8.「実施例1 粘着剤・・・に、蛍光発色剤(大日精化工業(株)製:商品名ハイブライト16)を・・・混合して・・・得た・・・混合液を剥離紙・・・上に塗布、乾燥させ・・・蛍光着色層を造った。・・・この蛍光発色層の上に・・・370nmの光の透過率が50%、340nmの光の透過率が0%、及び全光線透過率が89%である紫外線吸収剤含有塩化ビニル系フィルム・・・を圧着ラミネートの方法により貼り合わせて蛍光発色シートを作成した。」(4頁右上欄7行?4頁左下欄1行)
甲1-9.


上記表1より、本発明の蛍光発色シートは優れた蛍光発色性と耐候性を有していることが明らかである。」(5頁左下欄7?末行)

甲第2号証:特開昭53-121100号公報
甲2-1.「本発明は、紫外線、摩耗、及び/又は汚染による損傷をうけ易い基質上に使用する為の耐摩耗性及び耐ブルーム性被膜に関するものである。」(2頁左下欄下から5行?下から3行)
甲2-2「実施例1 次の方法で被覆用配合物(A)を調製した。・・・ガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを部分加水分解し、・・・1,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテルを加え、・・・ビス(トリフルオロメチル-スルホニル)フェニルメタン・・・不活性の弗化オリゴマー均展剤・・・酢酸エチル・・・2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン・・・を加えた。第二の被覆用配合物(B)を紫外線吸収剤を加えなかった外は、Aと同様にして調製した。配合物AとBとを・・・カラー写真に夫々塗布した。皮膜を・・・硬化せしめ、・・・水銀紫外線ランプの下に置いた。・・・皮膜Bを塗布した写真は褪色し、・・・配合物Aを塗布したカラー写真は、褪色がみとめられなかった。」(10頁左上欄13行?右上欄13行)
甲2-3.「実施例2 下記の紫外線吸収剤を下記の量で使用した外は、実施例1と同様にして被覆用配合物を調製した。
配合物 紫外線吸収剤
B なし
C 0.2g(2%)のI
D 0.2g(2%)のII
E 0.2g(2%)のIV

・・・白地に純粋のシアン、マゼンタ及びイエロー部分をもつカラープリントにこの塗膜を塗布した。これら塗布された写真を・・・GE太陽灯の下に・・・置いた。2日間照射した後、Bを塗布したプリントのシアンの部分が褪色し、白地が黄変したことがみとめられた。C、D及びEを塗布したプリントはほとんど変化を示さなかった。」(10頁左下欄1行?下から2行)
甲2-4.「反応性物質の記載の中には含まれない紫外線吸収性物質(一部は共重合中に反応してもなほ紫外線吸収力をもっているものであってもよいが)は、290と400nmの間のすべての輻射線の少なくとも90%を吸収し、400と780nmの間のすべての輻射線の少なくとも90%は透過し、400と780nmの間のどの50nmについても75%より少なくない透過率で透過するのに充分な量で存在しなければならない」(2頁右下欄下から6行?3頁左上欄3行)

甲第3号証:特開昭57-177054号公報
甲3-1.「(1)基本合成樹脂に、種類の異なる螢光剤が二種以上組み合わせ配合されてなることを特徴とする、螢光能の耐久性が改善された合成樹脂組成物」(特許請求の範囲第1項)
甲3-2.「本発明は、蛍光能の耐久性が改善された合成樹脂組成物に関するものであり、更に詳しくは、屋外で長期間使用しても蛍光能の低下しない成形品が得られる合成樹脂組成物に関するものである。」(1頁左欄下から7-下から3行)
甲3-3.「「本発明において合成樹脂とは、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、・・・ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアクリル酸アルキルエステル類、ポリメタアクリル酸アルキルエステル類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド類、ポリアセタール、ポリスチレン、・・・ポリ酢酸ビニル等の熱可塑性樹脂をいう。合成樹脂は、上に例示されたものに限られるものではない。」(2頁右上欄下から3行?同頁左下欄下から6行)
甲3-4.「本発明において蛍光剤としては、ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体、ジスチルベンゼンの誘導体のようなスチルベン型蛍光剤;ベンジジン誘導体、ベンジジンスルホン系誘導体、ジアミノフルオレン系誘導体のようなジアミノジフェニル型蛍光剤;イミダゾール型蛍光剤;イミダゾロン型蛍光剤;トリアゾール型蛍光剤;チアゾール型蛍光剤;オキサゾール型蛍光剤;クマリン型蛍光剤;カルボスチル型蛍光剤、ナフタールイミド型蛍光剤;ピラゾリン系蛍光剤及びジヒドロピリジン系蛍光剤のように、現在市販されている有機蛍光剤があげられる。・・・蛍光剤はこれら例示されたものに限定されるものではない。本発明においては、種類の異なる蛍光剤を、二種以上組み合わせ配合する。組み合せは、種類が異なればよく・・・種々に組み合わせることができる。」(2頁左下欄下から5行?右下欄下から1行)
甲3-5.「



〔註〕・・・*2・・・昭和化学(株)製螢光剤、PY-2000(最大励起を示す波長370mμ)
*3・・・ヘキスト社製螢光剤、HOSTARSOL RED GG(最大励起を示す波長350mμ)」(4頁左上欄1行?右上欄7行)

甲第4号証:特開昭57-189号公報
甲4-1.「1.溶解性パラメーターが9以上の重合体中に、2種もしくはそれ以上の有機蛍光体が溶解されており、各蛍光体は吸光スペクトルと発光スペクトルがそれぞれ異なり、しかも発光スペクトルと吸光スペクトルが互いに少なくとも部分的に重複するような組合せであって、蛍光体は
(i)全蛍光体の合計濃度が3重量%以下
(ii)それぞれの濃度は0.001重量%以上、かつ
(iii)発光スペクトルと吸光スペクトルが少なくとも部分的に重複している2種の蛍光体の合計濃度は0.004重量%以上
を満足する濃度で溶解されている光波長変換可能な成形体。」(特許請求の範囲第1項)
甲4-2.「該有機蛍光体の少なくとも1種は、アントラキノン系蛍光体、チオインジゴ系蛍光体ペリノン系蛍光体およびペリレン系蛍光体よりなる群から選ばれたものである・・・該重合体は、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスチレンおよびポリスルフオンからなる群から選ばれた少なくとも1種である・・・成形体」(特許請求の範囲第4、5項)
甲4-3.「本発明の目的は、短波長部の光をより長波長部の光へ効率よく変換し得る成形体を提供することにある。本発明の他の目的は、耐候性の優れた・・・成形体を提供することにある。」(2頁1行?6行)
甲4-4.「本発明によれば、或る程度の透明性を有する特定の重合体中にそれ自体固体状態では殆んど蛍光を示さないか、或いはあったとしても極く僅かの蛍光しか示さない有機建染染料として知られている顔料が溶解し、それにより、蛍光性を持たせることができこれを前記光波長変換に利用することによって広範囲の短波長部の光を一層長波長部の光へ変換することができ、その効率もよく、しかも耐候性も優れている成形体を提供することが出来る。・・・本発明者らの研究によれば、蛍光増白剤及び蛍光染料のかわりに建染染料系顔料が或る特定の重合体には溶解すること、これらの数種を特定濃度および特定割合で溶解すると、耐候性が非常に優れた光波長変換可能な成型体を得られることがわかった。」(2頁右下欄2行?3頁左上欄12行)
甲4-5.「本発明ではこのフェダーズの方法によって算出された溶解性パラメーター(SP値)が9以上の重合体が使用され、かくすることにより前記有機蛍光体が良好に溶解され、波長変換作用を呈する成形体を得ることができる。かようなSP値が9以上の重合体の例としては、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリスルフオンあるいはこれらの2種以上の混合物が好適なものとして挙げられる。」(3頁左下欄7?16行)
甲4-6.「実施例1 ポリエチレンテレフタレートチップ・・・に・・・ペリノン染料 CI Val Orange7・・・及びチオインジブ系顔料CI Vat Red41をドライブレンドし、・・・溶融し、・・・延伸フィルムを得た。・・・このフィルムの発光スペクトルを測定したところ、・・・ CI Val Orange7の吸収極大波長である450nmの光で・・・励起した蛍光スペクトルは550nm付近に極大値のある CI Val Orange7の発光はみられず、595nm付近に極大値のあるCI Vat Red41の発光のみがみられた。」(6頁右下欄14行?7頁右上欄1行)、

甲第5号証:特開昭50-47591号公報
甲5-1.「逆反射物質をもった種々の昼夜彩色作用を行う逆反射表示器において、
(a)前面と、
(b)合成プラスチック樹脂の体部分と、
(c)前記前面の内方に記載された反射形成物と、
(d)前記反射形成物の前方で前記逆反射物質内に配置された透明蛍光性染色組成物で、前記逆反射物質が前記前面に入り前記染色組成物を通して前記反射形成物へ通る光線に対して透明であり、前記染色組成物が第1波長帯の光を蛍光化し第2波長帯の光を伝導する透明蛍光性染色組成物とをもち、それにより日光の紫外線電磁放射特性が前記表示器に前記第1波長帯を表わす着色光を蛍光化させ、夜光の円柱状白熱性電磁放射特性が前記表示器に前記第2波長帯を表わす着色光を逆反射させることを特徴とする逆反射表示器。」(請求項1)
甲5-2.「特許請求の範囲第1項による逆反射表示器において、前記前面が実質的に平面状で前記反射形成物が透明な前記体部分の樹脂から間隔を取って置かれ更に前記染色組成物が前記体部分に配置されていることを特徴とする逆反射表示器」(請求項2)
甲5-3.「昼間と夜間共に高度の注意喚起能力をもって使用できる一面反射体をもつ新規な逆反射表示器を製造することが本発明の目的である。」(3頁右上欄下から3?下から1行)
甲5-4.「目的は透明蛍光染料複合物を逆反射物質中に作込むこと」(3頁左下欄10-12行)
甲5-5.「体部分10は以下詳しく記載するような蛍光燈色および赤色染料組成を含む物質から形成されている。」(3頁右下欄下から2行目?4頁左上欄1行)
甲5-6.「もし光線Rが染料組成を含む体部10を通った時、日光のような紫外線波長帯または紫外線を含む波長帯の代りにされた時は、紫外線帯はその中の蛍光染料によって吸収されるであろう。このように刺激を受けた蛍光染料は刺激を救済するために蛍光化し、それにより明るい橙色光をあらゆる方向に放射し、・・・」(4頁右上欄9-15行参照)
甲5-7.「染料組成物はある波長帯(着色)の光を蛍光化する透明蛍光染料を含み他の波長帯(着色)の光を伝送する。(蛍光化とは紫外線帯の光を吸収しまた励起放射により変位された電子の一層安定した位置への帰還による異った普通低側帯の光を放射することを意味する)。」(5頁左上欄下から6?下から1行)
甲5-8.「透明蛍光染料組成物は、反射要素12(例えば立方体隅部、レンズ、またはガラスビード反射要素)を形成する物質中に混入するだけで良い。」(5頁右下欄第4?6行)
甲5-9.図2には、符合10の体部分(染色組成物が配置されている)の側面に符合12として立方体隅部形成物(本件のエレメントに相当)を形成した構成が説明されている。
甲5-10.「



」(図面第1図、第2図)


第7 当審の判断
1.無効理由1-1:本件発明1の甲第1?4号証からの容易推考性(特許法第29条第2項)
(1)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、「370nmの光の透過率が30%以上、340nmの光の透過率が20%以下、及び全光線透過率が40%以上である透明乃至半透明樹脂層と、蛍光着色剤含有層とを積層してなる層状構造を有していることを特徴とする蛍光発色シート」(記載事項(甲1-1))と記載され、
蛍光着色剤については、「蛍光着色剤としては特に制限はなく、有機系又は無機系の各種蛍光着色剤を利用することができ、実際には希望する発色特性等を考慮して適切な蛍光着色剤の選定が行われる。尚、上記選定に当たっては、上記透明樹脂層によりその発色性が阻害される蛍光着色剤を避ける必要があることはいうまでもない。」(記載事項(甲1-5))と記載され、
蛍光着色剤含有層については、「蛍光着色剤を含有する蛍光着色剤含有層を透明樹脂層に積層することにより蛍光発色シートの作成が行われる。この積層方法としては特に制限はないが、例えば、バインダーになる樹脂を溶剤に溶かした溶液中に蛍光着色剤を混合分散させてなる混合液を、剥離紙上に塗布乾燥して作成した薄膜に、透明樹脂層を貼り合わせて積層する方法、又は上記混合液を透明樹脂層に直接塗布乾燥して積層する方法等を挙げることができる。上記バインダー用の樹脂としては特に制限はなく、蛍光発色シートの性能を損なわないものであれば任意に利用することができる。」(記載事項(甲1-6))と記載され、
そして、その積層してなる層状構造を有していることを特徴とする蛍光発色シートの唯一の実施例である実施例1には、「粘着剤・・・に、蛍光発色剤(大日精化工業(株)製:商品名ハイブライト16)を・・・混合して・・・得た・・・混合液を剥離紙・・・上に塗布、乾燥させ・・・造った・・・蛍光発色層の上に・・・370nmの光の透過率が50%、340nmの光の透過率が0%、及び全光線透過率が89%である紫外線吸収剤含有塩化ビニル系フィルム・・・を圧着ラミネートの方法により貼り合わせて蛍光発色シートを作成した」(記載事項(甲1-8))こと、すなわち、粘着シートを作成したことが記載されている。

そうすると、甲第1号証には、
「370nmの光の透過率が30%以上、340nmの光の透過率が20%以下、及び全光線透過率が40%以上である透明乃至半透明樹脂層と、透明乃至半透明樹脂層によりその発色性が阻害されない蛍光着色剤をバインダーになる樹脂に混合分散させてなる蛍光着色剤含有層とを積層してなる層状構造を有している蛍光発色シート」 (以下、「甲1発明」という。)、
という発明が記載されているといえる。

(2)本件発明1と甲1発明との対比
甲第1号証の実施例1の記載(記載事項(甲1-8))からみて、甲1発明の「透明乃至半透明樹脂層と、蛍光着色剤含有層とを積層してなる層状構造を有している蛍光発色シート」において、蛍光着色剤含有層は、第1および第2側面を有することは自明であり、また、該蛍光着色剤含有層の第1側面に透明乃至半透明樹脂層は設けられていることも自明であるから、甲1発明の「透明乃至半透明樹脂層と、蛍光着色剤含有層とを積層してなる層状構造を有している蛍光発色シート」は、「第1および第2側面を有する蛍光着色剤含有層と該蛍光着色剤含有層の第1側面に設けられた透明乃至半透明樹脂層とを有する蛍光発色シート」と言い得るものである。
また、本件発明1の「蛍光性製品」について本件明細書中では特に定義しておらず、しかも、甲1発明の「蛍光発色シート」の実施例である粘着シートを本件発明1の「蛍光性製品」は排除するものではないから、甲1発明の「蛍光発色シート」は、本件発明1の「蛍光性製品」に包含される。
また、甲1発明の「370nmの光の透過率が30%以上、340nmの光の透過率が20%以下、及び全光線透過率が40%以上である透明乃至半透明樹脂層」は特定波長に対しての透過率、換言すると遮断率で規定されていることから、本件発明1の「スクリーン層」と共に、「電磁波を遮断する層」といい得るものである。
また、甲1発明の「透明乃至半透明樹脂層によりその発色性が阻害されない蛍光着色剤」も、本件発明1の「日光蛍光性染料」も共に、蛍光を発することにより着色する「蛍光性着色剤」といい得るものである。
また、甲1発明の「バインダーになる樹脂」も、本件発明1の「ポリマーマトリックス」も共に、蛍光性着色剤を溶解乃至分散して含有する「樹脂マトリックス」といい得るものである。
また、甲1発明の「混合分散」も、本件発明1の「溶解」も共に、「蛍光性着色剤」を「樹脂マトリックス」に均一に含有させるための操作であって、甲1発明の「混合分散」は、本件発明1の「溶解」に相当する。

そうすると、 両者は、
「第1および第2側面を有する「蛍光性着色剤含有層」と
該蛍光性着色剤含有層の第1側面に設けられた「電磁波を遮断する層」とを有することを特徴とする
蛍光性製品であって、
a)該「蛍光性着色剤含有層」が
「樹脂マトリックス」中に溶解された
「蛍光性着色剤」を含有し;そして
b)該「電磁波を遮断する層」が
「特定波長の電磁波に対して実質的に透明であり、入射する特定波長の電磁波の実質的な部分を遮ぎる手段を有する」;
蛍光性製品」である点で一致し、
下記の点で相違する。

(I)「蛍光性製品の、
第1および第2側面を有する「蛍光性着色剤含有層」と
該「蛍光性着色剤含有層」の第1側面に設けられた「電磁波を遮断する層」とが、
本件発明1では、
「ポリマーマトリックス中に溶解された日光蛍光性染料を含有する層」と、
「可視光に対して実質的に透明であり、入射紫外線の実質的な部分を遮ぎる手段を有する層」との組み合わせであるのに対し、
甲1発明では、
「透明乃至半透明樹脂層によりその発色性が阻害されない蛍光着色剤をバインダーになる樹脂に混合分散させてなる蛍光着色剤含有層」と、
「370nmの光の透過率が30%以上、340nmの光の透過率が20%以下、及び全光線透過率が40%以上である透明乃至半透明樹脂層」との組み合わせである点(以下、「相違点(I)」という。)

(II)「蛍光性着色剤含有層」を構成する「樹脂マトリックス」及び「蛍光性着色剤」が、
本件発明1では、
「ポリマーマトリックス」であって、「ポリマーマトリックスがポリカーボネート、ポリアクリルイミド、ポリエステルまたはポリスチレンの1種以上であり、」
「日光蛍光性染料」であって、「日光蛍光性染料がチオキサンテン染料、チオインジゴイド染料、ベンズオキサゾールクマリン染料またはペリレンイミド染料の1種以上を包含し、」とされているのに対し、
甲1発明では、
「バインダーになる樹脂」であって、樹脂化合物は特に規定されないものであり、
「透明乃至半透明樹脂層によりその発色性が阻害されない蛍光着色剤」であって、蛍光着色剤化合物は特に規定されないものである点(以下、「相違点(II)」という。)

(3)相違点についての検討
ア.相違点(I)について
本件明細書の段落【0013】には「日光蛍光性染料である蛍光性染料(すなわち、可視波長の光に露光することにより可視光を発光する染料)」と記載され、また、本件明細書の段落【0018】には「典型的には、約400?約700nmの範囲の波長を有する光が可視光範囲とされる。」と記載されているから、本件発明1の「着色層」と「スクリーン層」との組み合わせからなる蛍光性製品は、スクリ-ン層を透過する約400nm以上の波長の可視光線により着色層が蛍光を発色するものである。

そこで、甲1発明の「透明乃至半透明樹脂層によりその発色性が阻害されない蛍光着色剤含有層」と、「370nmの光の透過率が30%以上、340nmの光の透過率が20%以下、および全光線透過率が40%以上である透明乃至半透明樹脂層」(以下、「透明乃至半透明樹脂層」は、「透明樹脂層」という。)との組み合わせから成る蛍光性製品について、透明樹脂層を透過する電磁波の波長と蛍光着色剤を発色させる電磁波の波長について考えてみると、甲1発明では、「透明乃至半透明樹脂層は370nmの光の透過率が30%以上」とされているところ、甲第1号証には、透過率が低いと蛍光発色性が失われる旨記載されていることから(記載事項(甲1-4))、甲1発明においては、370nmの波長の電磁波が透明樹脂層を透過し、透過した該波長の電磁波により「透明樹脂層によりその発色性が阻害されない蛍光着色剤」は蛍光を発色するものであるので、換言すると、370nmの紫外線を透過させる透明樹脂層と370nmの紫外線により発色される蛍光着色剤との組み合わせにより発色するものである。

そうすると、本件発明1と甲1発明との相違点Iは、換言すると、本件発明1が、『スクリーン層を紫外線を遮断するものとし、紫外線によらずに可視光線により蛍光発色する着色層とするという技術思想』の発明の構成としているのに対し、甲1発明は、透明樹脂層を紫外線を遮断せずに透過させるものとし、その透過した紫外線により蛍光着色剤含有層を蛍光発色させるという技術思想の発明の構成としている点であるといえる。
そこで、甲1発明の、透明樹脂層を紫外線を遮断せずに透過させるものとし、その透過した紫外線により蛍光着色剤含有層が蛍光発色させるという技術思想から、『スクリーン層を紫外線を遮断するものとし、紫外線によらずに可視光線により蛍光発色する着色層とするという技術思想』が、甲第2?4号証に記載される発明から想起することができるのか否か検討する。
甲第2号証には、紫外線、磨耗、及び/又は汚染による損傷をうけ易い基質、具体的には、カラー写真、カラープリントに使用するための耐摩耗性及び耐ブルーム性皮膜に関する発明が記載されており(記載事項(甲2-1))、その実施例には、エポキシ末端シランと、脂肪族ポリエポキシドと、エポキシ又はシランと重合しうるコモノマーと、紫外線吸収剤とからなる被覆用配合物をカラー写真或いはカラープリントに塗布し、硬化させることが記載されている(記載事項(甲2-2)(甲2-3))のみで、『蛍光性製品』についての記載はなく、ましてや、『スクリーン層を紫外線を遮断するものとし、紫外線によらずに可視光線により蛍光発色する着色層とするという技術思想』は記載も示唆もされていない。

甲第3号証には、「基本合成樹脂に、種類の異なる螢光剤が二種以上組み合わせ配合されてなることを特徴とする、螢光能の耐久性が改善された合成樹脂組成物」(記載事項(甲3-1))が記載され、その螢光剤について多数の例が例示されるとともに(記載事項(甲3-4))、「螢光剤はこれら例示されたものに限定されるものではない。本発明においては、種類の異なる螢光剤を、二種以上組み合わせ配合する。組み合せは、種類が異なればよく・・・種々に組み合わせることができる。」(記載事項(甲3-4))と記載されていて、唯一の実施例である実施例1では、最大励起を示す波長が370nmと350nmの螢光剤AとBとの組み合わせが記載されている(記載事項(甲3-5))が、これは可視光により螢光発色するものではなく、また、スクリーン層を有するものでもないから、『スクリーン層を紫外線を遮断するものとし、紫外線によらずに可視光線により蛍光発色する着色層とするという技術思想』は記載も示唆もされていない。

甲第4号証には、「1.溶解性パラメーターが9以上の重合体中に、2種もしくはそれ以上の有機蛍光体が溶解されており、各蛍光体は吸光スペクトルと発光スペクトルがそれぞれ異なり、しかも発光スペクトルと吸光スペクトルが互いに少なくとも部分的に重複するような組合せであって、蛍光体は
(i)全蛍光体の合計濃度が3重量%以下
(ii)それぞれの濃度は0.001重量%以上、かつ
(iii)発光スペクトルと吸光スペクトルが少なくとも部分的に重複している2種の蛍光体の合計濃度は0.004重量%以上
を満足する濃度で溶解されている波長変換可能な成形体。」(記載事項(甲4-1))が記載されるところ、その実施例に、ポリエチレンテレフタレートすなわちポリエステルにチオインジブ系顔料とペリノン顔料とを併せ含有させて製造したフィルムは、ペリノンの吸収極大波長(450nm)で励起すると、ペリノンの発光(550nm)は見られずに、チオインジゴの発光(595nm)のみが見られたと記載(記載事項(甲4-8))されていることから、実施例に記載されるフィルムは、可視光により蛍光発色する蛍光性製品ではある。
しかし、スクリーン層を有するものではないから、『スクリーン層を紫外線を遮断するものとし、紫外線によらずに可視光線により蛍光発色する着色層とするという技術思想』は記載も示唆もされていない。

そうしてみると、甲1発明の、透明樹脂層を紫外線を遮断せずに透過させるものとし、その透過した紫外線により蛍光着色剤含有層を蛍光発色させるという技術思想の発明の構成を、『スクリーン層を紫外線を遮断するものとし、紫外線によらずに可視光線により蛍光発色する着色層とするという技術思想』の発明の構成に代えてみることは、甲第2?4号証に記載される発明に基づいて当業者が想起し得るものではない。
したがって、相違点Iは、甲第1?4号証に記載される発明に基づいて、当業者が容易に着想し得たものではない。

イ.相違点(II)について
上記「ア.」で述べたように、可視光線で励起されて蛍光を発色する蛍光性着色剤含有材料についての記載があるのは甲第4号証のみである。
しかし、甲第4号証に記載されるのは、「1.溶解性パラメーターが9以上の重合体中に、2種もしくはそれ以上の有機蛍光体が溶解されており、各蛍光体は吸光スペクトルと発光スペクトルがそれぞれ異なり、しかも発光スペクトルと吸光スペクトルが互いに少なくとも部分的に重複するような組合せであって、蛍光体は
(i)全蛍光体の合計濃度が3重量%以下
(ii)それぞれの濃度は0.001重量%以上、かつ
(iii)発光スペクトルと吸光スペクトルが少なくとも部分的に重複している2種の蛍光体の合計濃度は0.004重量%以上
を満足する濃度で溶解されている光波長変換可能な成形体。」(記載事項(甲4-1))という発明であり、その実施例に記載されるのも、ポリエチレンテレフタレートすなわちポリエステルにチオインジブ系顔料とペリノン顔料とを併せ含有させて製造したフィルムで(記載事項(甲4-6))、該フィルムは、ペリノンの吸収極大波長(450nm)で励起すると、ペリノンの発光(550nm)は見られず、チオインジゴの発光(595nm)のみが見られたというものである(記載事項(甲4-6))。
すなわち、甲第4号証に記載されるものは、有機蛍光体は2種もしくはそれ以上を併用することが必須であって、なおかつ、併用する各蛍光体は吸光スペクトルと発光スペクトルがそれぞれ異なり、しかも発光スペクトルと吸光スペクトルが互いに少なくとも部分的に重複し、さらに、(i)(ii)(iii)の要件を満たすように特定の組合せにすることも必須で、それにより可視光で励起されたペリノンは発光が見られないものとなるというものである。
そうすると、甲第4号証に、実施例として、可視光により蛍光発色する特定の組み合わせの顔料をポリエステルに溶解させること、及び、顔料の片方にチオインジブ系の顔料が使用されたことが記載され、そして、そのチオインジブ系の顔料を本件発明1のチオジンジゴイド染料に相当するものと解したとしても、該実施例に記載の可視光により蛍光発色する特定の組み合わせの顔料の一方のペリノン顔料を含めないこととして、紫外線によらずに可視光線により蛍光発色する着色層材料としてみようとすることは、当業者が容易に想起し得ることではない。
したがって、相違点IIは、甲第1?4号証に記載される発明に基づいて、当業者が容易に着想し得たものではない。

(4)本件発明1の効果について
本件明細書に記載される【実施例1】の「試料1-1」《ベンゾトリアゾール紫外線吸収剤(チヌビン)をポリメチルメタクリレートに1.2%配合したものをスクリーン層とし、チオキサンテン染料(ホスホタルレッドGG)をポリカーボネートに含有させたものを着色層としている。該スクリーン層は【実施例2】の試料2-4(ポリメチルメタクリレートにチヌビンを1.2%配合したスクリーン層である)の370nm波長の透過率が0%であることからみて、370nmの波長の紫外線を100%遮断し、400nmの波長の電磁波を56%透過するものである。該チオキサンテン染料の吸収波長域は、被請求人の提出した参考資料1によれば420-560nmである。》と、「比較試料1-A」《スクリーン層は紫外線吸収剤を配合していないポリメチルメタクリレートで、該スクリーン層は370nmの波長の紫外線を81%透過するものである》の表Iに示される露光後の性能値の比較により、本件発明1において、『スクリーン層を紫外線を遮断するものとし、紫外線によらずに可視光線により蛍光発色する着色層とするという技術思想』に基づく発明の構成とすることにより、ピーク保持性、デルタE、蛍光保持性等の蛍光持続性効果が奏されていることが認められる。また、同様の効果は、「試料1-2」と「比較試料1-B」、「試料1-3」と「比較試料1-C」、「試料1-4」と「比較試料1-D」との比較からも認められる。

また、「試料1-2」、「試料1-3」、「試料1-4」、「比較試料1-I」、「比較試料1-K」はスクリーン層は同じもので、着色層に配合する日光蛍光性染料も同じもので、唯一異なる点は、ポリマーマトリックスが、「試料1-2」、「試料1-3」、「試料1-4」では各々ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリスチレンであるのに対し、「比較試料1-I」、「比較試料1-K」では各々アクリルウレタン、ポリ塩化ビニルであるという点である。
そして、「試料1-2」、「試料1-3」、「試料1-4」と「比較試料1-I」、「比較試料1-K」の表Iに示される露光後の性能値を比較すると、本件発明1において特定のポリマーマトリックスにしたことにより、ピーク保持性、デルタE、蛍光保持性等の蛍光持続性効果が奏されていることが認められる。

さらに、実施例5の「試料5-1」、「試料5-2」、「試料5-3」、「試料5-4」、「試料5-5」、「比較試料5-H」は、ポリマーマトリックスが何れも本件発明1で特定するポリカーボネートであるが、使用する蛍光性染料が異なるもので、これらの比較から蛍光性染料が本件発明1に特定したものにすることにより、ピーク保持性、デルタE、蛍光保持性等の蛍光持続性効果が奏されていることが、表Vから認められる。
また、表Vからは、「比較試料5-H」と「比較試料5-I」との比較により、蛍光性染料に本件発明1に特定したものを使用しない場合には、1.2%のチヌビンを添加したスクリーン層すなわち370nmの波長を殆ど遮断するものを使用すると、デルタE、蛍光保持性等の蛍光持続性効果が、かえって損なわれることも認められる。

以上のとおり、本件発明1においては、
(I)「蛍光性製品の、
第1および第2側面を有する「蛍光性着色剤」含有層と
該「蛍光性着色剤」含有層の第1側面に設けられた「電磁波を遮断する層」とを、
「ポリマーマトリックス中に溶解された日光蛍光性染料を含有する層」と、
「可視光に対して実質的に透明であり、入射紫外線の実質的な部分を遮ぎる手段を有する層」との組み合わせとし、
(II)「蛍光性着色剤」含有層を構成する「樹脂マトリックス」及び「蛍光性着色剤」を、
「ポリマーマトリックスがポリカーボネート、ポリアクリルイミド、ポリエステルまたはポリスチレンの1種以上であり、」
「日光蛍光性染料がチオキサンテン染料、チオインジゴイド染料、ベンズオキサゾールクマリン染料またはペリレンイミド染料の1種以上を包含し、」とすることにより、
優れた効果が奏されている。

(5)まとめ
相違点(I)、(II)及び本件発明1の効果については以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第1?4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
したがって、無効理由1-1には理由がない。

2.無効理由1-2及び無効理由1-3について:本件発明2及び本件発明3の甲第1?4号証からの容易推考性(特許法第29条第2項)
本件発明2及び本件発明3は、いずれも請求項1を引用して記載される請求項であることから、本件発明2と甲1発明、本件発明3と甲1発明とを対比すると、「1.(2)」に既述した相違点(I)及び(II)と同じ相違点が相違点の一部としてある。
そして、上記相違点については、「1.(3)」に既述した判断と同じに判断されるから、本件発明2及び本件発明3は何れも、甲第1?4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
したがって、無効理由1-2及び無効理由1-3には理由がない。

3.無効理由1-4及び無効理由1-5について:本件発明4及び本件発明5の甲第1?5号証からの容易推考性(特許法第29条第2項)
本件発明4及び本件発明5は、いずれも請求項1を引用して記載される請求項であることから、本件発明4と甲1発明、本件発明5と甲1発明とを対比すると、「1.(2)」に既述した相違点(I)及び(II)と同じ相違点が相違点の一部としてある。
さて、請求人は、無効理由1-4及び無効理由1-5を主張するに当たって、甲第1?4号証に加えて、甲第5号証をあげて、甲第1?5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとの主張をしているので、甲第5号証についての検討をする。

甲第5号証には、「逆反射物質をもった種々の昼夜彩色作用を行う逆反射表示器において、
(a)前面と、
(b)合成プラスチック樹脂の体部分と、
(c)前記前面の内方に記載された反射形成物と、
(d)前記反射形成物の前方で前記逆反射物質内に配置された透明蛍光性染色組成物で、前記逆反射物質が前記前面に入り前記染色組成物を通して前記反射形成物へ通る光線に対して透明であり、前記染色組成物が第1波長帯の光を蛍光化し第2波長帯の光を伝導する透明蛍光性染色組成物とをもち、それにより日光の紫外線電磁放射特性が前記表示器に前記第1波長帯を表わす着色光を蛍光化させ、夜光の円柱状白熱性電磁放射特性が前記表示器に前記第2波長帯を表わす着色光を逆反射させることを特徴とする逆反射表示器。」(記載事項(甲5-1))と、さらに、「染料組成物はある波長帯(着色)の光を蛍光化する透明蛍光染料を含み他の波長帯(着色)の光を伝送する。(蛍光化とは紫外線帯の光を吸収しまた励起放射により変位された電子の一層安定した位置への帰還による異った普通低側帯の光を放射することを意味する)。」(記載事項(甲5-7))と記載されているのみで、
(I)「蛍光性製品の、
第1および第2側面を有する「蛍光性着色剤」含有層と
該「蛍光性着色剤」含有層の第1側面に設けられた「電磁波を遮断する層」とが、
「ポリマーマトリックス中に溶解された日光蛍光性染料を含有する層」と、
「可視光に対して実質的に透明であり、入射紫外線の実質的な部分を遮ぎる手段を有する層」との組み合わせであるとも、
(II)「蛍光性着色剤」含有層を構成する「樹脂マトリックス」及び「蛍光性着色剤」が、
「ポリマーマトリックス」であって、「ポリマーマトリックスがポリカーボネート、ポリアクリルイミド、ポリエステルまたはポリスチレンの1種以上であり、」
「日光蛍光性染料」であって、「日光蛍光性染料がチオキサンテン染料、チオインジゴイド染料、ベンズオキサゾールクマリン染料またはペリレンイミド染料の1種以上を包含」するものであるとも記載されていない。

そうすると、甲第1?4号証に記載される事項および甲第5号証に記載される事項に基づいても、上記相違点I及び相違点IIについては、「1.(3)」に既述した判断と同じに判断されるから、本件発明4及び本件発明5は、甲第1?5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
したがって、無効理由1-4及び無効理由1-5には理由がない。

4.無効理由1-6について:本件発明6の甲第1?5号証からの容易推考性(特許法第29条第2項)
本件発明6は、蛍光性逆反射性製品で、本件発明1の発明構成要件に加えて、「着色層の第2側面上に逆反射性エレメントを有するか、または該着色層の第2側面上に設けられた逆反射性ベースシートを有する」ことを発明構成要件とするものである。
そこで、本件発明6と甲1発明とを対比すると、「1.(2)」に既述した相違点I、及び相違点IIを相違点の一部として含むものである。
請求人は、無効理由1-6を主張するに当たって、甲第1?4号証に加えて、甲第5号証をあげて、甲第1?5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとの主張をしているので、この相違点I、IIを甲第1?4号証に加えて、甲第5号証に基づいて容易か否か検討する。
そうすると、甲第1?4号証に記載される事項及び甲第5号証に記載される事項に基づいても、上記相違点I及び相違点IIについては、「3.」に既述した判断と同じに判断されるから、本件発明6は、甲第1?5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
したがって、無効理由1-6には理由がない。

5.無効理由1についてのまとめ
無効理由1-1?無効理由1-6は、「1.」?「4.」のとおりに判断されるから、無効理由1については理由がない。

6.無効理由2-1について:本件明細書の特許請求の範囲の請求項1の明確性について(平成6年改正前特許法(以下、「旧特許法」という。)第36条第5項第2号及び第6項)
請求項1のスクリ-ン層の「紫外線の実質的な部分を遮る」の意味するところは、「第2 2.(2)ア.(イ)(イ-2)(イ-2-1)」に既述したところであるが、「紫外線に相当する波長範囲の電磁波の全波長域の電磁波を、ほぼ全部、遮る」であることは明りょうであり、「紫外線」の波長域も、本件明細書の段落【0018】に定義されており、しかも、該定義は請求人が提出した参考資料1に記載される紫外線の意味とも軌を一にするものである。
そうすると、請求人の、「入射紫外線の実質的な部分を遮る」という記載では「入射紫外線の如何なる部分をどの程度遮るかが何等特定されていないから不明瞭であり、特許法第36条第5項第2号及び第6項に規定する要件を満たしていない。」との主張には、無効とすべき理由はない。

7.無効理由2-2について:本件明細書の特許請求の範囲の請求項1の明確性について(旧特許法第36条第5項第2号及び第6項)
請求項1の日光蛍光性染料を含有させた着色層は、スクリーン層を透過した可視光により励起されて蛍光を発して発色するものであって、本件発明はこれにより高い視認性のある蛍光性製品を得ることを目的とするもの(本件明細書段落【0002】)であり、本件明細書には、染料の含量が少なすぎる場合は所望の鮮明な蛍光性が得られないこと(本件明細書段落【0014】)と併せて、「多量の蛍光性染料を含有する着色層は自己消光現象を示す」(本件明細書段落【0014】)ことも記載されている。
したがって、本件請求項1の着色層中に日光蛍光性染料を含有させる量は、着色層の蛍光発色が視認できるものにし得る量であることは本件発明の目的からみて自明であり、個々の日光蛍光性染料毎に最適化量を決定し、該量で実施することにより得られる効果も明りょうである。
そうすると、請求人の、「「染料」の添加量の特定無くしては、本件の効果は不明瞭であり、特許法第36条第5項第2号及び第6項に規定する要件を満たしていない。」との主張には、無効とすべき理由はない。

8.無効理由2-3、及び、無効理由2-4について:本件明細書の特許請求の範囲の請求項2に関連する本件明細書の記載の不備、及び、本件明細書の特許請求の範囲の請求項2の明確性について(旧特許法第36条第4項、旧特許法第36条第5項第2号及び第6項)
「7.」に既述したように、本件請求項1の着色層中に日光蛍光性染料を含有させる量は着色層の蛍光発色が視認できるものにし得る量であって、個々の染料毎に、所望の鮮明な蛍光性が得られるように含有量は少な過ぎないように、また、自己消光現象を示さないように多量過ぎないように最適量を決める旨のことが、本件明細書段落【0014】に記載されている。また、本件明細書の実施例には、本件の請求項1?6に記載される4種の日光蛍光性染料の全染料について例があることから、日光蛍光性染料の含有量について、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載したものといえる。
また、実施例で採用されている含有量は、「0.2重量%」「0.12重量%」「0.01重量%」「0.1重量%」「0.3重量%」であるが、これをもって、「0.3重量%を超える範囲については、本件発明の効果が得られるかどうかは不明であるとはいえず、また、請求項2に記載する含有量の上限値を「0.3重量%」としないと発明が明りょうでないともいえない。
そうすると、請求人の、「0.3重量%を超える範囲については、本件発明の効果が得られるかどうかは全く不明であるから、本件明細書は記載が不明瞭であり、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。」及び「本件発明における染料の添加は、少なくとも実施例で開示されている0.3重量%以下、さらには、実施例で効果が確認されている0.2重量%以下に限定されるべきであるから、本件明細書は特許法第36条第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない。」との主張には、無効とすべき理由はない。

9.無効理由2-5について:本件明細書の特許請求の範囲の請求項3に関連する本件明細書の記載の不備について(旧特許法第36条第4項)
本件明細書段落【0058】の表IIaの「比較試料2-A」は、340nmの電磁波を69%透過すなわち31%遮断する「比較試料」である。
ところで、本件明細書の段落【0018】の記載「少なくとも約10%・・・の約340nm・・・を下回る波長を有する入射光を遮断する(block)する」と、上記の「比較試料2-A」とに記載される「波長」と「透過%」の数値とを対比すると、本件明細書の段落【0018】に記載される事項に上記の比較資料が含まれるように一見解せる。
しかし、本件明細書の段落【0018】の上記の記載は、「第2 2.(2)ア.(イ)(イ-2)(イ-2-2)」に既述したように、そもそも意味するところが明りょうでないのであるから、本件明細書の段落【0018】の記載と、「比較試料2-A」との関連をもって本件明細書の記載の不備を主張することに意味はない。
なお、「比較試料2-A」が「比較試料」であることは明確であり、本件明細書の段落【0018】の記載に意味するところが明りょうでない部分があっても、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載したものといえる。
また、それによって、請求項3に記載される発明が明りょうでないともいえない。
そうすると、請求人の、
「段落【0018】には、「・・・少なくとも約10%・・・の約340nm・・・を下回る波長を有する入射光を遮断する(block)することが好ましい。」と記載されているが、比較資料2-Aにおいては、・・・が示されている。したがって、上記の一般記載の「少なくとも約10%・・・の約340nm・・・を下回る波長を有する入射光を遮断する(block)する」に比較資料が含まれているから、本件明細書は記載が不明瞭であり、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。」との主張には、無効とすべき理由はない。

10.無効理由2のまとめ
無効理由2-1?無効理由2-5は、「6.」?「9.」のとおりに判断されるから、無効理由2については理由がない。

11.請求人の主張する無効理由についてのまとめ
請求人の主張する無効理由1及び2は、何れも理由がない。

第8 むすび
以上のとおり、請求人の主張する無効理由1及び2はいずれも理由がないから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1?6の特許を無効とすることができない。
また、本件発明1?6の特許を無効とすべきその他の理由もない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-09-29 
結審通知日 2008-10-02 
審決日 2008-10-15 
出願番号 特願平3-321751
審決分類 P 1 113・ 534- YB (B32B)
P 1 113・ 531- YB (B32B)
P 1 113・ 121- YB (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 柳 和子
特許庁審判官 鈴木 紀子
唐木 以知良
登録日 1999-11-12 
登録番号 特許第3002042号(P3002042)
発明の名称 持続的な蛍光を示す製品  
代理人 片山 健一  
代理人 江角 洋治  
代理人 大野 聖二  
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